JP2004204017A - 水性塗料組成物及びこれを用いた遮熱断熱塗料並びに塗膜構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】水性塗料、特に遮熱断熱塗料において、骨材や遮熱断熱材の添加によって引き起こされる付着不良、割れ、汚染等の各問題を解決する事のできる塗料組成物並びにこれを用いた遮熱断熱多層塗膜構造を提供するものである。
【解決手段】第一遮熱断熱層(中塗り)と第二遮熱断熱層(上塗り)の少なくとも2層を備えた遮熱断熱多層塗膜であって、両層の塗膜を形成する塗料組成物が特定の水性ウレタンシリコンアクリルエマルションを含む水性塗料用樹脂を必須とする。第一遮熱断熱層(中塗り)の塗料組成物は中空バルーンを必須とし、第二遮熱断熱層(上塗り)の塗料組成物は無機酸化物を必須とする。特定の水性ウレタンシリコンアクリルエマルションは、カルボキシル基および重合性ビニル基を有すポリウレタン樹脂(u−1)と、酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)とを含み、アクリル成分にアルコキシシリル基を含む。
【選択図】 なし
【解決手段】第一遮熱断熱層(中塗り)と第二遮熱断熱層(上塗り)の少なくとも2層を備えた遮熱断熱多層塗膜であって、両層の塗膜を形成する塗料組成物が特定の水性ウレタンシリコンアクリルエマルションを含む水性塗料用樹脂を必須とする。第一遮熱断熱層(中塗り)の塗料組成物は中空バルーンを必須とし、第二遮熱断熱層(上塗り)の塗料組成物は無機酸化物を必須とする。特定の水性ウレタンシリコンアクリルエマルションは、カルボキシル基および重合性ビニル基を有すポリウレタン樹脂(u−1)と、酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)とを含み、アクリル成分にアルコキシシリル基を含む。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜の汚染や割れを同時に解決できる水性塗料用の特定のウレタンシリコンエマルション樹脂に関するものであり、塗料としては特に、中空バルーンや無機酸化物等を加えて成る遮熱断熱塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水性塗料を用いて建造物の屋根や外壁を塗装した場合、塗装後の長期間の暴露により塗膜表面が種々汚染物によって汚れたり、寒冷地の冬季の低温下に曝されることで塗膜にクラックが発生する場合があった。また、建造物の屋根や外壁は太陽光の熱エネルギーを吸収し、建造物内部の温度上昇を引き起こす。このため近年の省エネルギー対策や、ヒートアイランド現象の緩和を目的とし、遮熱断熱効果のある塗材を使用することがある。特許文献1〜5等に示されるように、遮熱断熱材としてガラス、シリカ、セラミック、プラスチック等の中空、真空、或いは多孔質な微粒子や、太陽光反射効果のある酸化チタン、酸化アンチモン等の無機酸化物を加え、目的の遮熱断熱効果を発現させる方法が知られているが、遮熱断熱効果を発現させるために添加されたバルーンや太陽光反射性の無機酸化物等の影響によって塗膜上の不具合を発生させてしまう。
【0003】
塗膜上の不具合としては、塗膜の温度変化に伴うクラックの発生、バルーンや無機酸化物とバインダー間の剥離、さらには基材とバインダー相の剥離が挙げられる。これは、遮熱効果をより発現させるために、バルーンや無機酸化物を増やすことに起因するものであり、即ちバインダー成分の減量が主たる原因となり、このような不具合を引き起こすこととなる。造膜性の向上によるクラックの抑制や付着性の改善方法とすれば、バインダーのガラス転移点(Tg)を下げることで改善させることが可能であるが、一方、軟らかいバインダー成分によって塗膜表面がベタ付き、汚染性を悪くさせる結果を招くこととなる。
【特許文献1】特開2000−73001
【特許文献2】特開2000−186229
【特許文献3】特開2000−186239
【特許文献4】特開平11−323197
【特許文献5】特開平8−127739
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水性塗料、特に遮熱断熱塗料において、骨材や遮熱断熱材の添加によって引き起こされる付着不良、割れ、汚染等の各問題を解決する事のできる塗料組成物並びにこれを用いた遮熱断熱多層塗膜構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記事情に鑑み、付着性、割れ、汚染性と云った所謂相反する課題を一度に解決できる方法を鋭意研究した結果、特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)に遮熱断熱効果のある中空、真空、或いは多孔質微粒子(A)、太陽光反射効果のある無機酸化物(B)とを配合した遮熱(断熱)塗料は、付着、割れ、汚染性に優れ、遮熱断熱効果をも維持できることを見いだし発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、重合性ビニル基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)と酸基を有せずアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)とを含み、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)を反応性乳化剤として、酸基を有せずアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)の存在下、アルコキシシリル基を有するビニル系単量体の少なくとも1種を含むビニル系単量体の混合物を乳化重合して得られる特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)が水性塗料に多く見られた耐汚染性やクラック発生の問題を同時に解決できることを見出し、特に、遮熱断熱材としてガラス、シリカ、セラミック、プラスチック等の中空、真空、或いは多孔質な微粒子等の中空バルーン(A)や、太陽光反射効果のある酸化チタン、酸化アンチモン等の無機酸化物(B)を加えてなる遮熱断熱塗料、特にセラミックバルーンと酸化アンチモンを加えてなる遮熱断熱塗料が、本発明の課題である骨材や遮熱断熱材の添加によって引き起こされる付着、割れ、汚染性の各問題を解決する事のできる塗料組成物を与えることを見いだし本発明を完成させた。なお、本発明において、中空バルーン(A)とは、粒子内空間によって断熱作用を発揮し得る粒子を意味する。
【0007】
本発明の特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)のポリウレタン樹脂は、カルボキシル基を有するもの(u−1)と酸基を有さないもの(u−2)の両者が必須であり、カルボキシル基を有するもの(u−1)は、ビニル系単量体を乳化重合させるための反応性乳化剤として役立たせることが可能で、従来から乳化重合に使用されているアルキルフェノール系、ソルビタン系等のノニオン性界面活性剤や、アニオン性、ノニオン−アニオン系界面活性剤を使わずとも乳化重合が可能となる。このことにより、上記の界面活性剤の存在による耐水性の低下や汚染性の悪化、さらには界面活性剤の塗膜からの流出による環境汚染を抑える効果もある。
【0008】
重合性ビニル基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)は、ポリオール類、カルボキシル基を有するアルコール類、水酸基を有する重合性ビニル単量体とイソシアネート化合物により合成することができる。
【0009】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、さらには、前記グリコールと有機酸とのエステル化反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0010】
ポリエステルポリオールを得るために使用できる有機酸は、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0011】
カルボキシル基を有するアルコール類としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリンやトリメチロールプロパンのような3官能性のアルコール類と、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸等の酸無水物との開環反応により得られたカルボキシル基を有するジオールであったり、ポリエステルジオールの片末端を前記酸無水物によりカルボン酸変性したものも使用できる。
【0012】
水酸基を有する重合性ビニル単量体としては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とグリセリンのモノエステル化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0013】
イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、α、α、α'、α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、さらには、これらのビューレット体やヌレート体等が挙げられ、これらの1種または2種以上の使用ができる。また、芳香族イソシアネートとして、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート、さらにはこれらの誘導体の使用もできるが、耐候性を考慮に入れると使用は避けた方が望ましい。
【0014】
カルボキシル基と重合性ビニル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)は、1分子におおよそ1個の重合性ビニル基を導入するように設計し、2個以上の重合性ビニル基の導入は最終的に得られるウレタンシリコンアクリルエマルションが高粘度となったり、保存性の悪化を招くことがあるので、当該ポリウレタン樹脂(u−1)1分子当たり、0.5〜1.5モル、望ましくは0.8〜1.2モルの重合性ビニル基を導入させるように設計するのがよい。
【0015】
カルボキシル基と重合性ビニル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)の酸価は、20から200mgKOH/gの範囲であり、酸価20mgKOHを下回るとエマルション重合時に汚れが発生したり、最終的に得られるエマルションの低温安定性が悪かったりする。また、200mgKOHを越えると目的の塗料の耐水性が悪くなることから、望ましくは酸価50から100mgKOH/gの範囲がよい。また、当該ポリウレタン樹脂(u−1)の分子量は、数平均分子量として600から5000の範囲がよく、特に、目的のウレタンシリコンアクリルエマルションを低粘度で得たい場合は、数平均分子量は1000〜3000程度が望ましい。
【0016】
カルボキシル基と重合性ビニル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)の合成は、通常40℃から100℃の範囲で行えるが、より短時間に合成が完了し、且つ副生成物を与え難くする為には、60℃から80℃の反応温度が望ましい。また反応は、溶剤の非存在下で行うことが望ましいが、得られる当該ポリウレタン樹脂(u−1)の粘度が高く反応に不都合がでるようであれば、特に水酸基やアミノ基を含まない有機溶剤を加えて行うこともできるし、後に使用するビニル系単量体を溶媒として使用することもできる。
【0017】
次に酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)について説明する。
【0018】
酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)はポリオール、イソシアネート化合物、アミノ基またはイソシアナト基含有のアルコキシシラン化合物から容易に合成できる。
【0019】
使用できるポリオールおよびイソシアネート化合物とすれば、前記ポリウレタン樹脂(u−1)に説明のあるポリオールおよびイソシアネート化合物でよく、アミノ基含有のアルコキシシラン化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。イソシアナト基含有のアルコキシシラン化合物としては、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランや、前記アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と前記イソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアナト基を有するアルコキシシランであってもよい。また、記載したアルコキシシラン化合物はトリアルコキシシランやモノアルキルジアルコキシシラン体でも使用できる。
【0020】
酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)に導入するアルコキシシリル基の量は、1分子当たり少なくとも1個以上であり、望ましくは1分子当たり2個以上である。当該ポリウレタン樹脂(u−2)の分子量は数平均分子量で、1000から10000の範囲であり、数平均分子量が1000を下回ると、遮熱(断熱)塗料にクラックが入り易く、また数平均分子量が10000を越えると後のエマルション重合時に汚れが発生したり、ビニル系単量体の重合率が低下する場合があるので、数平均分子量は2000から6000の範囲がよい。
【0021】
酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)は、さらに、ポリオキシエチレン鎖が導入されていることが望ましい。具体的には、エチレンオキサイドの開環重合から得られる分子量200から3000のポリエチレングリコールや、ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールのブロックポリマーであって、これをイソシアネート化合物を用いて当該ポリウレタン樹脂(u−2)分子内に組み込んだものがよい。
【0022】
特に、当該ポリウレタン樹脂(u−2)の分子量が大きい場合には、ポリオキシエチレン鎖を導入した方がエマルションの貯蔵安定性が高まるし、セラミックバルーン等の遮熱断熱効果のある中空粒子を加えた後の塗料粘度コントロールが容易となったり、低温時の造膜性が向上することからも、ポリオキシエチレン鎖の導入は好都合である。
【0023】
続いて、得られた上記の両ポリウレタン樹脂(u−1)および(u−2)の存在下、ビニル系単量体の混合物を水中にてエマルション重合させる。使用できるビニル系単量体は、アクリル酸やメタクリル酸等の酸基を有さないのもであって、例えば、(メタ)アクリル酸とアルコールから得られるような、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、水酸基を有する重合性ビニル系単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、その他、アクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルや、さらに重合性ビニル基が2個以上有するものとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0024】
さらに、アルコキシシリル基を有する重合性ビニル単量体の使用が本願目的の付着性や耐汚染性の改善に役立ち、具体的には、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの1種または2種以上の使用ができる。アルコキシシリル基を有する重合性ビニル系単量体の量は、重合性ビニル系単量体の総量に対して、0.5%から10%の範囲であり、塗料の性能、保存安定性、経済性等を考慮に入れると、1%から5%の範囲が望ましい。
【0025】
ウレタンシリコンアクリルエマルション中における上記の前者のポリウレタン樹脂(u−1)の使用量は、最終的に得られるウレタンシリコンアクリルエマルションの樹脂酸価によって判断することができ、ウレタンシリコンアクリルエマルションの樹脂酸価が2から10mgKOH/gの範囲がよく、酸価2を下回るとエマルションの貯蔵安定性や機械安定性が悪くなり、また、樹脂酸価10mgKOH/gを上回ると耐水性が悪くなるので、望ましくは、3から8mgKOH/gの範囲がよい。
【0026】
また、ウレタンシリコンアクリルエマルション中における上記の後者のポリウレタン樹脂(u−2)の使用量は、ウレタンシリコンアクリルエマルションの固形分重量中の1から30%程度の範囲であり、1%を下回ると付着性や低温時のクラック発生に繋がったり、30%を上回ると、ビニル系単量体の重合度が低下することがあるので、より望ましくは、3から20%の範囲がよい。
【0027】
ウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂の合成に際しては、後者のポリウレタン樹脂(u−2)およびアルコキシシリル基を有するビニル系単量体とそれ以外のビニル系単量体の混合物を水分散するように前者のポリウレタン樹脂(u−1)の酸価に対して80%から180%程度の塩基を加える。酸価に対して80%未満の塩基の存在下では、この後の乳化重合工程で重合温度に耐えうる十分な安定性を欠くこととなったり、180%を越える塩基の存在は、得られた塗料の耐水性が悪くなることがある。
【0028】
加えられる塩基としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられるが、耐水性の観点から、有機塩基が望ましい。
【0029】
塩基を加えて均一となった混合物は、水に加え所謂プレエマルションを作成する。使用する水の量は、混合物100重量部に対して、30から100重量部程度であり、得られるエマルション樹脂溶液の濃度を高める場合は、水はより少ない方が望ましい。
【0030】
エマルション重合は、先に得られたプレエマルションを75℃から85℃の範囲で加温した水中に重合開始剤と共に滴下しながら行うことができる。重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムが望ましい。
【0031】
重合開始剤の量は、重合性ビニル系単量体の総重量に対して、おおよそ0.2から1%程度であり、より望ましくは、0.3から0.7%の範囲である。
【0032】
プレエマルションの滴下速度は、おおよそ2時間から5時間程度掛けて行い、滴下終了後もさらに1時間から4時間程度同温で撹拌を続けて行う。
【0033】
得られた特定のウレタンシリコンアクリルエマルション(C)を用いて塗料を作成するに当たっては、通常水性塗料に使用できる分散剤、湿潤剤、消泡剤、凍結防止剤、着色顔料、体質顔料、増粘剤、防藻、防カビ剤が適宜使用できる。
【0034】
また、第一遮熱断熱層を構成する遮熱断熱塗料の作成に当たっては、目的の遮熱断熱効果を発現させるために前述の中空バルーン(A)が必須となるが、中空ガラスバルーンや中空アクリルバルーンはバルーンの強度が弱く、塗料作成時の混練操作によりその一部が破壊してしまったり、高価であることから、中空バルーンとしてはセラミックバルーンが望ましい。セラミックバルーンとしては、例えば、太平洋セメント社製のイースフィアーズ(商品名)が挙げられ、粒径10μmから300μmの範囲が塗装作業性の面からよく、より望ましくは、150μm以下の粒子系のものがよい。このセラックバルーンの添加量は、塗料中の2から40重量%の範囲が望ましく、2重量%より少ないと十分な遮熱断熱効果が得られないおそれがある。40重量%より多い場合、付着性や可とう性に不具合がでることがある。この第一遮熱断熱層(中塗り)の乾燥塗膜厚は、2から5mm程度が好ましく、これを下回ると十分な遮熱断熱効果を得られないおそれがあり、これを上回ると乾燥性不良や塗膜形成に問題が生ずるおそれがある。
【0035】
続いて、第二遮熱断熱層の説明をする。第二遮熱断熱層を構成する塗料組成物には太陽光反射性の無機酸化物(B)と上述の特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)とが必須であり、当該無機酸化物(B)としては、酸化チタン、酸化鉄、酸化アンチモン等が挙げられ、特に、濃色系塗料の場合には酸化アンチモンの使用が、太陽光反射能が高いので好都合である。
【0036】
酸化アンチモンの量は、塗料中の2から10重量%の範囲がよく、2重量%より少ない場合、遮熱断熱効果が十分でなかったり、10重量%より多い場合、塗料の貯蔵安定性に問題が発生することがある。この第二遮熱断熱層(上塗り)の乾燥塗膜厚は、特に限定されるものではなく通常の上塗り塗料の膜厚と同様、10から100μm程度とすればよく、特に、十分な遮熱断熱効果を得るには、無機酸化物(B)の配合量にもよるが、30μm以上とすることが好ましい。
【0037】
なお、第一遮熱断熱層を構成する遮熱断熱塗料については、中空バルーン(A)に加えて太陽光反射性の無機酸化物(B)を添加することもでき、第二遮熱断熱層を構成する遮熱断熱塗料については、太陽光反射性の無機酸化物(B)に加えて中空バルーン(A)を添加することもでき、さらに他の遮熱断熱効果を有する骨材や添加剤を付加することもできる。
【0038】
本発明によって得られた塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、刷毛、ヘラ、ローラー、さらにはスプレー塗装等を採用すればよいが、第一遮熱断熱層(中塗り)と第二遮熱断熱層(上塗り)とを本発明の塗料組成物によって形成する場合には、上記中空バルーンを含有する第一遮熱断熱層(中塗り)については、ヘラによる塗装が特に望ましい。層構造に関しては、第一遮熱断熱層と第二遮熱断熱層とが直接接触するように塗布積層させればよいが、両断熱層の間に他の層(断熱作用を奏するか否かを問わない)を介在させてもよく、これらの第一、第二の遮熱断熱層の上下に他の層を配位してもよい。
【0039】
【実施例】
以下に例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
カルボキシル基および重合性ビニル基を含むポリウレタン樹脂(u−1)の合成方法。
【0041】
メチルメタクリレート(300.0部)にジメチロールブタン酸(118.7部)を加え、60℃にて完全に溶解させた。これに、イソホロンジイソシアネート(356.0部)を加え、80℃にて4時間反応させた。分子量400のポリプロピレングリコール(160.4部)を加えさらに4時間反応させた。2−ヒドキシエチルメタクリレート(52.1部)を加え2時間反応させた後に、60℃まで冷却し、メタノール(12.8部)を加え、IRスペクトルでイソシアネート基の2270cm−1の吸収が消失するまで反応を行った。得られた樹脂(u−1)の酸価を64mgKOH/gであった。
【0042】
酸基を有せずアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)の合成方法。
【0043】
{(u−2)−1}
分子量1000のポリプロピレングリコール(515.5部)にイソホロンジイソシアネート(57.2部)を加え80℃でIRスペクトルによりイソシアネート基の2270cm−1の吸収が消失するまで反応を続けた。これにメチルメタクリレート(300.0部)を加え、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(127.3部)を加え、IRスペクトルによりイソシアネート基の2270cm−1の吸収が消失するまで反応を続け、目的の(u−2)−1を得た。
【0044】
{(u−2)−2}
水酸基54mgKOH/gのポリプロピレン−ポリエチレンブロックエーテルグリコール(商品名PL−2100:三洋化成社製)(567部)にγ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(133部)を加え、80℃でIRスペクトルによりイソシアネート基の2270cm−1の吸収が消失するまで反応を続け、メチルメタクリレート(300部)を加え目的の(u−2)−2を得た。
【0045】
【実施例1】
ウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)の合成方法。
【0046】
{C−1}
(u−1)(31.3部;ウレタン樹脂成分として)、(u−2)−1(25.0部;ウレタン樹脂成分として)、メチルメタクリレート(180.0部)、n−ブチルアクリレート(150.0部)、2−エチルヘキシルアクリレート(111.5部)と28%アンモニア水(3.3部)とを加え撹拌した。これを、ホモジナイザーにより撹拌した水(286.7部)の中に15分掛けて加え、プレエマルションを作成した。別途、過硫酸ナトリウム(2.2部)と水(30.0部)の開始剤を準備しておき、水(180.0部)を80℃に加温した中にプレエマルションと開始剤水溶液を4時間かけて同速度で滴下した。さらに、3時間加熱撹拌を続けC−1を得た。
【0047】
実施例としてC−2、C−3、C−4、比較例1および比較例2を以下の表1の組成でエマルションを合成した。
【0048】
【表1】
【0049】
第一遮熱断熱塗料の作成
水性エマルションとして、表1で得られた実施例C−1、C−2、C−3、C−4、比較例1で得られたエマルション樹脂、および比較例2で得られたエマルション樹脂を使い、表2に示す組成により相当する第一遮熱断熱塗料の実施例D−1、D−2、D−3、D−4と、比較例D−比1およびD−比2をそれぞれ作成した。
【0050】
【表2】
第一遮熱断熱塗料の組成
【0051】
第二遮熱断熱塗料の作成
水性エマルションとして、表1で得られた実施例C−1、C−2、C−3、C−4、比較例1で得られたエマルション樹脂、および比較例2で得られたエマルション樹脂を使い、表3に示す組成により相当する第二遮熱断熱塗料の実施例E−1、E−2、E−3、E−4と比較例E−比1およびE−比2をそれぞれ作成した。
【0052】
【表3】
【0053】
中空バルーン(A)及び無機酸化物(B)を含有しない実施例
第一遮熱断熱塗料に使用したセラミックバルーンおよび第二遮熱断熱塗料に使用した酸化アンチモンを加えない塗料を表1で得られたC−1により作成し、それぞれ実施例D−0およびE−0とした。
【0054】
評価
前記の通り作成した第一遮熱断熱塗料(D)と第二遮熱断熱層(E)を用いて目的の遮熱断熱塗料層を造った。遮熱断熱層の作成方法は、フレキシブルボードに第一遮熱断熱塗料(D)を乾燥塗膜厚が約3mmとなるように塗装し、乾燥後、第二遮熱断熱塗料(E)を乾燥塗膜厚が40μmとなるように塗装した。得られた遮熱断熱層の遮熱断熱効果を調べる為に、図1の遮熱断熱効果測定装置を用いて、可視光ランプ6の照射前の温度と照射一時間後の温度を測定した。また、塗膜の温冷耐水性と耐汚染性、素地との密着力を評価した。結果を表4に示す。
なお、図1において、1は発泡スチロール製の断熱材、2は試験塗膜を示す。3は、中空バルーン(A)及び無機酸化物(B)を含有しない実施例(D−0およびE−0)による塗膜を示すもので、この遮熱断熱効果の試験としては、当該塗膜をブランク用塗膜として用いたものである。断熱材1と、試験塗膜2並びにブランク用塗膜3によって形成された空間内壁を、黒紙4で被覆してブラックボックスとし、このブラックボックス内の温度を熱伝対5にて測定したものである。
【0055】
【表4】
【0056】
温冷耐水試験方法
▲1▼塗膜を水に1日浸し、▲2▼−20℃に一日放置し、▲3▼40℃に一日放置する、▲1▼から▲3▼のサイクルを10回行った後の塗膜のクラック発生状況を目視で観察した。
【0057】
耐汚染性試験法
塗膜表面に水/カーボン懸濁液を刷毛塗りし、3時間放置後にカーボンを水で洗い流した後の汚れの落ち具合を目視で評価した。
1:殆ど汚れが残らない、2:汚れている、3:かなり汚れている。
【0058】
素地との密着性試験法
モルタル(20×70×150mm)に第一遮熱断熱層をヘラで塗布量1.0〜1.5Kg/m2・回に調整し、室温で1週間放置したものを試験片とし、密着強度を測定した。
【0059】
以上の実施例から、本発明の特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂を用いた塗料は、クラックの発生や汚染を抑制する効果に優れ、これらの性能は、中空バルーン(A)又は無機酸化物(B)を配合した遮熱断熱塗料として実施した場合にあっても充分に発揮されることが確認された。即ち、本発明の遮熱断熱塗料は、遮熱断熱効果が優れることは勿論、特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂の使用により、クラックの発生や汚染を抑制する効果に優れることが明らかになった。
【0060】
【発明の効果】
以上、本発明は、ウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂を用いた水性塗料、特に遮熱断熱塗料において、骨材や遮熱断熱材の添加によって引き起こされる付着不良、割れ、汚染等の各問題を解決する事のできる塗料組成物、並びに遮熱断熱多層塗膜構造を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】遮熱断熱測定装置の説明図である。
【符号の説明】
1 発泡スチロール製の断熱材
2 試験塗膜
3 ランク用塗膜
4 黒紙
5 熱伝対
6 可視光ランプ
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜の汚染や割れを同時に解決できる水性塗料用の特定のウレタンシリコンエマルション樹脂に関するものであり、塗料としては特に、中空バルーンや無機酸化物等を加えて成る遮熱断熱塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水性塗料を用いて建造物の屋根や外壁を塗装した場合、塗装後の長期間の暴露により塗膜表面が種々汚染物によって汚れたり、寒冷地の冬季の低温下に曝されることで塗膜にクラックが発生する場合があった。また、建造物の屋根や外壁は太陽光の熱エネルギーを吸収し、建造物内部の温度上昇を引き起こす。このため近年の省エネルギー対策や、ヒートアイランド現象の緩和を目的とし、遮熱断熱効果のある塗材を使用することがある。特許文献1〜5等に示されるように、遮熱断熱材としてガラス、シリカ、セラミック、プラスチック等の中空、真空、或いは多孔質な微粒子や、太陽光反射効果のある酸化チタン、酸化アンチモン等の無機酸化物を加え、目的の遮熱断熱効果を発現させる方法が知られているが、遮熱断熱効果を発現させるために添加されたバルーンや太陽光反射性の無機酸化物等の影響によって塗膜上の不具合を発生させてしまう。
【0003】
塗膜上の不具合としては、塗膜の温度変化に伴うクラックの発生、バルーンや無機酸化物とバインダー間の剥離、さらには基材とバインダー相の剥離が挙げられる。これは、遮熱効果をより発現させるために、バルーンや無機酸化物を増やすことに起因するものであり、即ちバインダー成分の減量が主たる原因となり、このような不具合を引き起こすこととなる。造膜性の向上によるクラックの抑制や付着性の改善方法とすれば、バインダーのガラス転移点(Tg)を下げることで改善させることが可能であるが、一方、軟らかいバインダー成分によって塗膜表面がベタ付き、汚染性を悪くさせる結果を招くこととなる。
【特許文献1】特開2000−73001
【特許文献2】特開2000−186229
【特許文献3】特開2000−186239
【特許文献4】特開平11−323197
【特許文献5】特開平8−127739
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水性塗料、特に遮熱断熱塗料において、骨材や遮熱断熱材の添加によって引き起こされる付着不良、割れ、汚染等の各問題を解決する事のできる塗料組成物並びにこれを用いた遮熱断熱多層塗膜構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記事情に鑑み、付着性、割れ、汚染性と云った所謂相反する課題を一度に解決できる方法を鋭意研究した結果、特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)に遮熱断熱効果のある中空、真空、或いは多孔質微粒子(A)、太陽光反射効果のある無機酸化物(B)とを配合した遮熱(断熱)塗料は、付着、割れ、汚染性に優れ、遮熱断熱効果をも維持できることを見いだし発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、重合性ビニル基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)と酸基を有せずアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)とを含み、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)を反応性乳化剤として、酸基を有せずアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)の存在下、アルコキシシリル基を有するビニル系単量体の少なくとも1種を含むビニル系単量体の混合物を乳化重合して得られる特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)が水性塗料に多く見られた耐汚染性やクラック発生の問題を同時に解決できることを見出し、特に、遮熱断熱材としてガラス、シリカ、セラミック、プラスチック等の中空、真空、或いは多孔質な微粒子等の中空バルーン(A)や、太陽光反射効果のある酸化チタン、酸化アンチモン等の無機酸化物(B)を加えてなる遮熱断熱塗料、特にセラミックバルーンと酸化アンチモンを加えてなる遮熱断熱塗料が、本発明の課題である骨材や遮熱断熱材の添加によって引き起こされる付着、割れ、汚染性の各問題を解決する事のできる塗料組成物を与えることを見いだし本発明を完成させた。なお、本発明において、中空バルーン(A)とは、粒子内空間によって断熱作用を発揮し得る粒子を意味する。
【0007】
本発明の特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)のポリウレタン樹脂は、カルボキシル基を有するもの(u−1)と酸基を有さないもの(u−2)の両者が必須であり、カルボキシル基を有するもの(u−1)は、ビニル系単量体を乳化重合させるための反応性乳化剤として役立たせることが可能で、従来から乳化重合に使用されているアルキルフェノール系、ソルビタン系等のノニオン性界面活性剤や、アニオン性、ノニオン−アニオン系界面活性剤を使わずとも乳化重合が可能となる。このことにより、上記の界面活性剤の存在による耐水性の低下や汚染性の悪化、さらには界面活性剤の塗膜からの流出による環境汚染を抑える効果もある。
【0008】
重合性ビニル基とカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)は、ポリオール類、カルボキシル基を有するアルコール類、水酸基を有する重合性ビニル単量体とイソシアネート化合物により合成することができる。
【0009】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、さらには、前記グリコールと有機酸とのエステル化反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0010】
ポリエステルポリオールを得るために使用できる有機酸は、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0011】
カルボキシル基を有するアルコール類としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリンやトリメチロールプロパンのような3官能性のアルコール類と、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸等の酸無水物との開環反応により得られたカルボキシル基を有するジオールであったり、ポリエステルジオールの片末端を前記酸無水物によりカルボン酸変性したものも使用できる。
【0012】
水酸基を有する重合性ビニル単量体としては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とグリセリンのモノエステル化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0013】
イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、α、α、α'、α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、さらには、これらのビューレット体やヌレート体等が挙げられ、これらの1種または2種以上の使用ができる。また、芳香族イソシアネートとして、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート、さらにはこれらの誘導体の使用もできるが、耐候性を考慮に入れると使用は避けた方が望ましい。
【0014】
カルボキシル基と重合性ビニル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)は、1分子におおよそ1個の重合性ビニル基を導入するように設計し、2個以上の重合性ビニル基の導入は最終的に得られるウレタンシリコンアクリルエマルションが高粘度となったり、保存性の悪化を招くことがあるので、当該ポリウレタン樹脂(u−1)1分子当たり、0.5〜1.5モル、望ましくは0.8〜1.2モルの重合性ビニル基を導入させるように設計するのがよい。
【0015】
カルボキシル基と重合性ビニル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)の酸価は、20から200mgKOH/gの範囲であり、酸価20mgKOHを下回るとエマルション重合時に汚れが発生したり、最終的に得られるエマルションの低温安定性が悪かったりする。また、200mgKOHを越えると目的の塗料の耐水性が悪くなることから、望ましくは酸価50から100mgKOH/gの範囲がよい。また、当該ポリウレタン樹脂(u−1)の分子量は、数平均分子量として600から5000の範囲がよく、特に、目的のウレタンシリコンアクリルエマルションを低粘度で得たい場合は、数平均分子量は1000〜3000程度が望ましい。
【0016】
カルボキシル基と重合性ビニル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)の合成は、通常40℃から100℃の範囲で行えるが、より短時間に合成が完了し、且つ副生成物を与え難くする為には、60℃から80℃の反応温度が望ましい。また反応は、溶剤の非存在下で行うことが望ましいが、得られる当該ポリウレタン樹脂(u−1)の粘度が高く反応に不都合がでるようであれば、特に水酸基やアミノ基を含まない有機溶剤を加えて行うこともできるし、後に使用するビニル系単量体を溶媒として使用することもできる。
【0017】
次に酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)について説明する。
【0018】
酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)はポリオール、イソシアネート化合物、アミノ基またはイソシアナト基含有のアルコキシシラン化合物から容易に合成できる。
【0019】
使用できるポリオールおよびイソシアネート化合物とすれば、前記ポリウレタン樹脂(u−1)に説明のあるポリオールおよびイソシアネート化合物でよく、アミノ基含有のアルコキシシラン化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。イソシアナト基含有のアルコキシシラン化合物としては、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランや、前記アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と前記イソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアナト基を有するアルコキシシランであってもよい。また、記載したアルコキシシラン化合物はトリアルコキシシランやモノアルキルジアルコキシシラン体でも使用できる。
【0020】
酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)に導入するアルコキシシリル基の量は、1分子当たり少なくとも1個以上であり、望ましくは1分子当たり2個以上である。当該ポリウレタン樹脂(u−2)の分子量は数平均分子量で、1000から10000の範囲であり、数平均分子量が1000を下回ると、遮熱(断熱)塗料にクラックが入り易く、また数平均分子量が10000を越えると後のエマルション重合時に汚れが発生したり、ビニル系単量体の重合率が低下する場合があるので、数平均分子量は2000から6000の範囲がよい。
【0021】
酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)は、さらに、ポリオキシエチレン鎖が導入されていることが望ましい。具体的には、エチレンオキサイドの開環重合から得られる分子量200から3000のポリエチレングリコールや、ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールのブロックポリマーであって、これをイソシアネート化合物を用いて当該ポリウレタン樹脂(u−2)分子内に組み込んだものがよい。
【0022】
特に、当該ポリウレタン樹脂(u−2)の分子量が大きい場合には、ポリオキシエチレン鎖を導入した方がエマルションの貯蔵安定性が高まるし、セラミックバルーン等の遮熱断熱効果のある中空粒子を加えた後の塗料粘度コントロールが容易となったり、低温時の造膜性が向上することからも、ポリオキシエチレン鎖の導入は好都合である。
【0023】
続いて、得られた上記の両ポリウレタン樹脂(u−1)および(u−2)の存在下、ビニル系単量体の混合物を水中にてエマルション重合させる。使用できるビニル系単量体は、アクリル酸やメタクリル酸等の酸基を有さないのもであって、例えば、(メタ)アクリル酸とアルコールから得られるような、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、水酸基を有する重合性ビニル系単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、その他、アクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルや、さらに重合性ビニル基が2個以上有するものとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0024】
さらに、アルコキシシリル基を有する重合性ビニル単量体の使用が本願目的の付着性や耐汚染性の改善に役立ち、具体的には、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの1種または2種以上の使用ができる。アルコキシシリル基を有する重合性ビニル系単量体の量は、重合性ビニル系単量体の総量に対して、0.5%から10%の範囲であり、塗料の性能、保存安定性、経済性等を考慮に入れると、1%から5%の範囲が望ましい。
【0025】
ウレタンシリコンアクリルエマルション中における上記の前者のポリウレタン樹脂(u−1)の使用量は、最終的に得られるウレタンシリコンアクリルエマルションの樹脂酸価によって判断することができ、ウレタンシリコンアクリルエマルションの樹脂酸価が2から10mgKOH/gの範囲がよく、酸価2を下回るとエマルションの貯蔵安定性や機械安定性が悪くなり、また、樹脂酸価10mgKOH/gを上回ると耐水性が悪くなるので、望ましくは、3から8mgKOH/gの範囲がよい。
【0026】
また、ウレタンシリコンアクリルエマルション中における上記の後者のポリウレタン樹脂(u−2)の使用量は、ウレタンシリコンアクリルエマルションの固形分重量中の1から30%程度の範囲であり、1%を下回ると付着性や低温時のクラック発生に繋がったり、30%を上回ると、ビニル系単量体の重合度が低下することがあるので、より望ましくは、3から20%の範囲がよい。
【0027】
ウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂の合成に際しては、後者のポリウレタン樹脂(u−2)およびアルコキシシリル基を有するビニル系単量体とそれ以外のビニル系単量体の混合物を水分散するように前者のポリウレタン樹脂(u−1)の酸価に対して80%から180%程度の塩基を加える。酸価に対して80%未満の塩基の存在下では、この後の乳化重合工程で重合温度に耐えうる十分な安定性を欠くこととなったり、180%を越える塩基の存在は、得られた塗料の耐水性が悪くなることがある。
【0028】
加えられる塩基としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられるが、耐水性の観点から、有機塩基が望ましい。
【0029】
塩基を加えて均一となった混合物は、水に加え所謂プレエマルションを作成する。使用する水の量は、混合物100重量部に対して、30から100重量部程度であり、得られるエマルション樹脂溶液の濃度を高める場合は、水はより少ない方が望ましい。
【0030】
エマルション重合は、先に得られたプレエマルションを75℃から85℃の範囲で加温した水中に重合開始剤と共に滴下しながら行うことができる。重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムが望ましい。
【0031】
重合開始剤の量は、重合性ビニル系単量体の総重量に対して、おおよそ0.2から1%程度であり、より望ましくは、0.3から0.7%の範囲である。
【0032】
プレエマルションの滴下速度は、おおよそ2時間から5時間程度掛けて行い、滴下終了後もさらに1時間から4時間程度同温で撹拌を続けて行う。
【0033】
得られた特定のウレタンシリコンアクリルエマルション(C)を用いて塗料を作成するに当たっては、通常水性塗料に使用できる分散剤、湿潤剤、消泡剤、凍結防止剤、着色顔料、体質顔料、増粘剤、防藻、防カビ剤が適宜使用できる。
【0034】
また、第一遮熱断熱層を構成する遮熱断熱塗料の作成に当たっては、目的の遮熱断熱効果を発現させるために前述の中空バルーン(A)が必須となるが、中空ガラスバルーンや中空アクリルバルーンはバルーンの強度が弱く、塗料作成時の混練操作によりその一部が破壊してしまったり、高価であることから、中空バルーンとしてはセラミックバルーンが望ましい。セラミックバルーンとしては、例えば、太平洋セメント社製のイースフィアーズ(商品名)が挙げられ、粒径10μmから300μmの範囲が塗装作業性の面からよく、より望ましくは、150μm以下の粒子系のものがよい。このセラックバルーンの添加量は、塗料中の2から40重量%の範囲が望ましく、2重量%より少ないと十分な遮熱断熱効果が得られないおそれがある。40重量%より多い場合、付着性や可とう性に不具合がでることがある。この第一遮熱断熱層(中塗り)の乾燥塗膜厚は、2から5mm程度が好ましく、これを下回ると十分な遮熱断熱効果を得られないおそれがあり、これを上回ると乾燥性不良や塗膜形成に問題が生ずるおそれがある。
【0035】
続いて、第二遮熱断熱層の説明をする。第二遮熱断熱層を構成する塗料組成物には太陽光反射性の無機酸化物(B)と上述の特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)とが必須であり、当該無機酸化物(B)としては、酸化チタン、酸化鉄、酸化アンチモン等が挙げられ、特に、濃色系塗料の場合には酸化アンチモンの使用が、太陽光反射能が高いので好都合である。
【0036】
酸化アンチモンの量は、塗料中の2から10重量%の範囲がよく、2重量%より少ない場合、遮熱断熱効果が十分でなかったり、10重量%より多い場合、塗料の貯蔵安定性に問題が発生することがある。この第二遮熱断熱層(上塗り)の乾燥塗膜厚は、特に限定されるものではなく通常の上塗り塗料の膜厚と同様、10から100μm程度とすればよく、特に、十分な遮熱断熱効果を得るには、無機酸化物(B)の配合量にもよるが、30μm以上とすることが好ましい。
【0037】
なお、第一遮熱断熱層を構成する遮熱断熱塗料については、中空バルーン(A)に加えて太陽光反射性の無機酸化物(B)を添加することもでき、第二遮熱断熱層を構成する遮熱断熱塗料については、太陽光反射性の無機酸化物(B)に加えて中空バルーン(A)を添加することもでき、さらに他の遮熱断熱効果を有する骨材や添加剤を付加することもできる。
【0038】
本発明によって得られた塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、刷毛、ヘラ、ローラー、さらにはスプレー塗装等を採用すればよいが、第一遮熱断熱層(中塗り)と第二遮熱断熱層(上塗り)とを本発明の塗料組成物によって形成する場合には、上記中空バルーンを含有する第一遮熱断熱層(中塗り)については、ヘラによる塗装が特に望ましい。層構造に関しては、第一遮熱断熱層と第二遮熱断熱層とが直接接触するように塗布積層させればよいが、両断熱層の間に他の層(断熱作用を奏するか否かを問わない)を介在させてもよく、これらの第一、第二の遮熱断熱層の上下に他の層を配位してもよい。
【0039】
【実施例】
以下に例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
カルボキシル基および重合性ビニル基を含むポリウレタン樹脂(u−1)の合成方法。
【0041】
メチルメタクリレート(300.0部)にジメチロールブタン酸(118.7部)を加え、60℃にて完全に溶解させた。これに、イソホロンジイソシアネート(356.0部)を加え、80℃にて4時間反応させた。分子量400のポリプロピレングリコール(160.4部)を加えさらに4時間反応させた。2−ヒドキシエチルメタクリレート(52.1部)を加え2時間反応させた後に、60℃まで冷却し、メタノール(12.8部)を加え、IRスペクトルでイソシアネート基の2270cm−1の吸収が消失するまで反応を行った。得られた樹脂(u−1)の酸価を64mgKOH/gであった。
【0042】
酸基を有せずアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)の合成方法。
【0043】
{(u−2)−1}
分子量1000のポリプロピレングリコール(515.5部)にイソホロンジイソシアネート(57.2部)を加え80℃でIRスペクトルによりイソシアネート基の2270cm−1の吸収が消失するまで反応を続けた。これにメチルメタクリレート(300.0部)を加え、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(127.3部)を加え、IRスペクトルによりイソシアネート基の2270cm−1の吸収が消失するまで反応を続け、目的の(u−2)−1を得た。
【0044】
{(u−2)−2}
水酸基54mgKOH/gのポリプロピレン−ポリエチレンブロックエーテルグリコール(商品名PL−2100:三洋化成社製)(567部)にγ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(133部)を加え、80℃でIRスペクトルによりイソシアネート基の2270cm−1の吸収が消失するまで反応を続け、メチルメタクリレート(300部)を加え目的の(u−2)−2を得た。
【0045】
【実施例1】
ウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂(C)の合成方法。
【0046】
{C−1}
(u−1)(31.3部;ウレタン樹脂成分として)、(u−2)−1(25.0部;ウレタン樹脂成分として)、メチルメタクリレート(180.0部)、n−ブチルアクリレート(150.0部)、2−エチルヘキシルアクリレート(111.5部)と28%アンモニア水(3.3部)とを加え撹拌した。これを、ホモジナイザーにより撹拌した水(286.7部)の中に15分掛けて加え、プレエマルションを作成した。別途、過硫酸ナトリウム(2.2部)と水(30.0部)の開始剤を準備しておき、水(180.0部)を80℃に加温した中にプレエマルションと開始剤水溶液を4時間かけて同速度で滴下した。さらに、3時間加熱撹拌を続けC−1を得た。
【0047】
実施例としてC−2、C−3、C−4、比較例1および比較例2を以下の表1の組成でエマルションを合成した。
【0048】
【表1】
【0049】
第一遮熱断熱塗料の作成
水性エマルションとして、表1で得られた実施例C−1、C−2、C−3、C−4、比較例1で得られたエマルション樹脂、および比較例2で得られたエマルション樹脂を使い、表2に示す組成により相当する第一遮熱断熱塗料の実施例D−1、D−2、D−3、D−4と、比較例D−比1およびD−比2をそれぞれ作成した。
【0050】
【表2】
第一遮熱断熱塗料の組成
【0051】
第二遮熱断熱塗料の作成
水性エマルションとして、表1で得られた実施例C−1、C−2、C−3、C−4、比較例1で得られたエマルション樹脂、および比較例2で得られたエマルション樹脂を使い、表3に示す組成により相当する第二遮熱断熱塗料の実施例E−1、E−2、E−3、E−4と比較例E−比1およびE−比2をそれぞれ作成した。
【0052】
【表3】
【0053】
中空バルーン(A)及び無機酸化物(B)を含有しない実施例
第一遮熱断熱塗料に使用したセラミックバルーンおよび第二遮熱断熱塗料に使用した酸化アンチモンを加えない塗料を表1で得られたC−1により作成し、それぞれ実施例D−0およびE−0とした。
【0054】
評価
前記の通り作成した第一遮熱断熱塗料(D)と第二遮熱断熱層(E)を用いて目的の遮熱断熱塗料層を造った。遮熱断熱層の作成方法は、フレキシブルボードに第一遮熱断熱塗料(D)を乾燥塗膜厚が約3mmとなるように塗装し、乾燥後、第二遮熱断熱塗料(E)を乾燥塗膜厚が40μmとなるように塗装した。得られた遮熱断熱層の遮熱断熱効果を調べる為に、図1の遮熱断熱効果測定装置を用いて、可視光ランプ6の照射前の温度と照射一時間後の温度を測定した。また、塗膜の温冷耐水性と耐汚染性、素地との密着力を評価した。結果を表4に示す。
なお、図1において、1は発泡スチロール製の断熱材、2は試験塗膜を示す。3は、中空バルーン(A)及び無機酸化物(B)を含有しない実施例(D−0およびE−0)による塗膜を示すもので、この遮熱断熱効果の試験としては、当該塗膜をブランク用塗膜として用いたものである。断熱材1と、試験塗膜2並びにブランク用塗膜3によって形成された空間内壁を、黒紙4で被覆してブラックボックスとし、このブラックボックス内の温度を熱伝対5にて測定したものである。
【0055】
【表4】
【0056】
温冷耐水試験方法
▲1▼塗膜を水に1日浸し、▲2▼−20℃に一日放置し、▲3▼40℃に一日放置する、▲1▼から▲3▼のサイクルを10回行った後の塗膜のクラック発生状況を目視で観察した。
【0057】
耐汚染性試験法
塗膜表面に水/カーボン懸濁液を刷毛塗りし、3時間放置後にカーボンを水で洗い流した後の汚れの落ち具合を目視で評価した。
1:殆ど汚れが残らない、2:汚れている、3:かなり汚れている。
【0058】
素地との密着性試験法
モルタル(20×70×150mm)に第一遮熱断熱層をヘラで塗布量1.0〜1.5Kg/m2・回に調整し、室温で1週間放置したものを試験片とし、密着強度を測定した。
【0059】
以上の実施例から、本発明の特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂を用いた塗料は、クラックの発生や汚染を抑制する効果に優れ、これらの性能は、中空バルーン(A)又は無機酸化物(B)を配合した遮熱断熱塗料として実施した場合にあっても充分に発揮されることが確認された。即ち、本発明の遮熱断熱塗料は、遮熱断熱効果が優れることは勿論、特定のウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂の使用により、クラックの発生や汚染を抑制する効果に優れることが明らかになった。
【0060】
【発明の効果】
以上、本発明は、ウレタンシリコンアクリルエマルション樹脂を用いた水性塗料、特に遮熱断熱塗料において、骨材や遮熱断熱材の添加によって引き起こされる付着不良、割れ、汚染等の各問題を解決する事のできる塗料組成物、並びに遮熱断熱多層塗膜構造を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】遮熱断熱測定装置の説明図である。
【符号の説明】
1 発泡スチロール製の断熱材
2 試験塗膜
3 ランク用塗膜
4 黒紙
5 熱伝対
6 可視光ランプ
Claims (7)
- 中空バルーン(A)と太陽光反射性の無機酸化物(B)との少なくもと何れか一方を、特定の水性ウレタンシリコンアクリルエマルション(C)に配合した塗料組成物であって、
当該特定の水性ウレタンシリコンアクリルエマルション(C)がカルボキシル基および重合性ビニル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)と、酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)とを含むものであることを特徴とする遮熱断熱塗料組成物。 - 上記の酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)が、数平均分子量200から3000のポリオキシエチレン鎖を骨格に含むものであることを特徴とする請求項1記載の遮熱断熱塗料組成物。
- 上記特定の水性ウレタンシリコンアクリルエマルション(C)は、そのアクリル成分にアルコキシシリル基を含んだビニル系単量体を0.5から10.0%を含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮熱断熱塗料組成物。
- 上記中空バルーン(A)が少なくともセラミックバルーンを含むものであり、上記無機酸化物(B)が少なくとも酸化アンチモンを含むものであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の遮熱断熱塗料組成物。
- 第一遮熱断熱層(中塗り)と第二遮熱断熱層(上塗り)の少なくとも2層を備えた遮熱断熱多層塗膜において、
第一遮熱断熱層(中塗り)は、請求項1から4の何れかに記載の遮熱断熱塗料組成物であって、中空バルーン(A)を必須のものとして含有するものにより形成された層であり、
第二遮熱断熱層(上塗り)は、請求項1から4の何れかに記載の遮熱断熱塗料組成物であって、無機酸化物(B)を必須のものとして含有するものにより形成された層であることを特徴とする遮熱断熱多層塗膜構造。 - 上記の第一遮熱断熱層(中塗り)の乾燥塗膜厚が2から5mmであることを特徴とする請求項5記載の遮熱断熱多層塗膜構造。
- カルボキシル基および重合性ビニル基を有するポリウレタン樹脂(u−1)と、酸基を有せずにアルコキシシリル基を有するポリウレタン樹脂(u−2)とを含む水性ウレタンシリコンアクリルエマルションを、バインダー成分として含有する塗料組成物。
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