JP2018145371A - 水性樹脂組成物、コーティング剤、及び該コーティング剤の塗膜を有する物品。 - Google Patents

水性樹脂組成物、コーティング剤、及び該コーティング剤の塗膜を有する物品。 Download PDF

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Abstract

【課題】作業性に優れる1液硬化仕様で、基材追従性、耐温水性及び耐候性等の耐久性に優れる塗膜を形成可能な水性樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリシロキサン複合樹脂(A)及びビニル重合体(B)を含有する樹脂粒子が水系媒体中に分散された水性樹脂組成物であって、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)が親水性基を有するポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂であり、前記樹脂粒子中のポリシロキサン(a3)が4〜50質量%の範囲であり、前記ビニル重合体(B)と前記ポリウレタン(a1)及びビニル重合体(a2)とが相互侵入高分子網目構造を形成していることを特徴とする水性樹脂組成物を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、コーティング剤をはじめとする様々な用途に使用可能な水性樹脂組成物に関するものである。
近年、無機材料と有機材料の特性を兼備させた高機能材料の開発が各産業分野で広く行われており、無機材料は耐候性、耐熱性、耐擦傷性等の耐久性に優れ、有機材料は柔軟性・加工性に富んでいることが一般的に知られている。この中、無機材料と有機材料とを複合化した水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この水性樹脂の塗膜は、比較的硬いため、外力や温度変化等の影響によって変形や伸縮を引き起こしやすい基材の表面被覆に使用した場合、塗膜が基材の変形等に追従できず、塗膜の剥離、屈曲によるクラックの発生等を生じる場合があった。
上記の塗膜の剥離、クラックの発生等を抑制できるものとして、柔軟性に優れたポリウレタンを複合化した材料が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この
ポリウレタンを複合化した材料の塗膜は、高耐候性に加え、耐クラック性に優れ、高伸度で基材追従性を有しているが、高度な耐久性が要求される場合には硬化剤を使用することが必須で、作業性に劣る点が指摘されていた。
そこで、作業性に優れる1液硬化仕様で、耐久性及び基材追従性に優れた塗膜を形成可能な材料が求められていた。
特開平11−279408号公報 特開2010−1457号公報
本発明が解決しようとする課題は、作業性に優れる1液硬化仕様で、耐温水性及び耐候性等の耐久性に優れるとともに、基材追従性にも優れる塗膜を形成可能な水性樹脂組成物、該水性樹脂組成物用いたコーティング剤、及び該コーティング剤が塗布された物品を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリシロキサン複合樹脂及びビニル重合体を含有する特定の樹脂粒子が水系媒体中に分散した水性樹脂組成物が、基材追従性、耐温水性及び耐候性等に優れた塗膜を形成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ポリシロキサン複合樹脂(A)及びビニル重合体(B)を含有する樹脂粒子が水系媒体中に分散された水性樹脂組成物であって、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)が親水性基を有するポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂であり、前記樹脂粒子中のポリシロキサン(a3)が4〜50質量%の範囲であり、前記ビニル重合体(B)と前記ポリウレタン(a1)及びビニル重合体(a2)とが相互侵入高分子網目構造を形成していることを特徴とする水性樹脂組成物に関する。
本発明の水性樹脂組成物は、金属基材、プラスチック基材、無機基材、繊維質基材、布材、紙、木質基材等の様々な基材に対して良好な密着性を有することから、コーティング剤や接着剤に使用することができる。とりわけ、本発明の水性樹脂組成物は、基材追従性、耐温水性、耐候性等に優れた塗膜を形成できることから、各種基材のプライマー層形成用コーティング剤やトップコート層形成用コーティング剤等に好適に使用することができる。
本発明の水性樹脂組成物は、ポリシロキサン複合樹脂(A)及びビニル重合体(B)を含有する樹脂粒子が水系媒体中に分散された水性樹脂組成物であって、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)が親水性基を有するポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂であり、前記樹脂粒子中のポリシロキサン(a3)が4〜50質量%の範囲であり、前記ビニル重合体(B)と前記ポリウレタン(a1)及びビニル重合体(a2)とが相互侵入高分子網目構造を形成しているものである。
まず、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)の水分散体について説明する。前記ポリシロキサン複合樹脂(A)は、親水性基を有するポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂である。
前記ポリシロキサン複合樹脂(A)は、得られる塗膜の基材追従性、耐温水性及び耐候性等の耐久性がより向上することから、ポリシロキサン複合樹脂(A)全体に対して15〜55質量%のポリシロキサン(a3)由来の構造を有することが好ましい。
なお、前記ポリシロキサン(a3)由来の構造とは、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)を構成する親水性基を有するポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)との連結部分を構成する主鎖が酸素原子と珪素原子とからなる構造を指す。また、前記ポリシロキサン(a3)由来の構造の質量割合は、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)の製造に使用する原料の仕込み割合に基づき、ポリシロキサン(a3)等の加水分解縮合反応によって生成しうるメタノールやエタノール等の副生成物の生成を考慮し算出した値である。
また、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)は、前記樹脂粒子が水系媒体中に安定して分散するうえで、親水性基を有することが必須である。
親水性基は、主として前記ポリシロキサン複合樹脂(A)の外層を構成するポリウレタン(a1)中に存在することが必須であるが、必要に応じて、前記ビニル重合体(a2)中に存在していても良い。
前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基を使用できるが、これらの中でもアニオン性基を使用することが好ましい。
前記アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基を使用することが、良好な水分散性を有する樹脂粒子を製造するうえで好ましい。
前記アニオン性基の中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基性化合物等が挙げられる。
前記アニオン性基としてカルボキシレート基を使用する場合、それらはポリシロキサン複合樹脂(A)全体に対して50〜1000mmol/kgの範囲で存在することが、前記樹脂粒子の良好な水分散安定性を維持するうえで好ましい。
また、前記カチオン性基としては、例えば、3級アミノ基等を使用することができる。前記3級アミノ基の一部または全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、マレイン酸などの有機酸や、スルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸、及び、塩酸、硫酸、オルトリン酸、オルト亜リン酸等の無機酸等を単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記3級アミノ基の一部または全てを4級化する際に使用することができる4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸や、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライドなどのハロゲン化アルキル、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のアルキルまたはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物を単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を使用することができる。なかでもオキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレン基を使用することが、親水性をより一層向上させるうえで好ましい。
また、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)としては、得られる塗膜の基材追従性、耐温水性、耐候性等の耐久性がより向上することから、前記親水性基を有するポリウレタン(a1)と前記ビニル重合体(a2)との質量比[(a2)/(a1)]が、20/1〜1/20の範囲であることが好ましく、10/1〜1/10の範囲であることがより好ましく、5/1〜1/5の範囲が特に好ましい。
前記ポリシロキサン複合樹脂(A)としては、得られる塗膜の基材追従性、耐温水性、耐候性等の耐久性がより向上することから、前記親水性基を有するポリウレタン(a1)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記ポリウレタン(a1)が有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との縮合結合であり、前記ビニル重合体(a2)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との縮合結合であることが好ましい。
次に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)を構成する親水性基を有するポリウレタン(a1)について説明する。
前記親水性基を有するポリウレタン(a1)は、優れた基材追従性を本発明の水性複合樹脂組成物に付与するうえで必須成分である。
前記親水性基を有するポリウレタン(a1)としては、各種のものを使用することができるが、例えば、3,000〜100,000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、5,000〜10,000の数平均分子量を有するものを使用することが、基材追従性に優れ、かつ耐久性及び耐候性に優れた塗膜を形成するうえで好ましい。
前記親水性基を有するポリウレタン(a1)は、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)に水分散性を付与する上で親水性基を有することが必須である。親水性基は、前記親水性基を有するポリウレタン(a1)全体に対して、50〜1,000mmol/kgの範囲に存在することが、一層良好な水分散性を付与する上で好ましい。
前記親水性基を有するビニル重合体(a1)としては、得られる塗膜の耐温水性及び耐候性等の耐久性がより向上することから、3,000〜100,000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、5,000〜25,000の数平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。
前記親水性基を有するポリウレタン(a1)としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを使用することができる。前記親水性基を有するポリウレタン(a1)の有する親水性基は、例えば、前記ポリオールを構成する一成分として、親水性基を有するポリオールを使用することによって、前記親水性基を有するポリウレタン(a1)中に導入することができる。
前記親水性基を有するポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリオールとしては、例えば、前記親水性基を有するポリオール及びその他のポリオールを組み合わせ使用することができる。
前記親水性基を有するポリオールとしては、例えば、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を有するポリオールや、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のスルホン酸基を有するポリオールを使用することができる。また、前記親水性基を有するポリオールとしては、前記した低分子量の親水性基を有するポリオールと、例えば、アジピン酸等の各種ポリカルボン酸とを反応させて得られる親水性基を有するポリエステルポリオール等を使用することもできる。
前記親水性基を有するポリオールと組み合わせ使用可能なその他のポリオールとしては、本発明の水性複合樹脂組成物に求められる特性や、水性複合樹脂組成物を適用する用途等に応じて適宜使用することができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール等を使用することができる。
前記ポリエーテルポリオールは、本発明の水性複合樹脂組成物に、特に優れた基材追従性を付与することができるため、前記親水性基を有するポリオールと組み合わせ使用することが好ましい。
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや芳香族ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコ−ル等を使用することができる。
また、前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
また、前記親水性基を有するポリウレタン(a1)の製造に使用できるポリカーボネートポリオールは、本発明の水性複合樹脂組成物のプラスチック基材に対する密着性を格段に向上するうえで好ましい。前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
また、前記親水性基を有するポリウレタン(a1)を製造する際に使用するポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造を有するジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。なかでも、脂肪族環式構造を有するジイソシアネートを使用することが、長期耐候性に優れる塗膜を形成できるため好ましい。
前記親水性基を有するポリウレタン樹脂(a1)は、前記したような親水性基の他に、必要に応じてその他の官能基を有していてもよく、かかる官能基としては、後述するポリシロキサン(a3)と反応しうる加水分解性シリル基、シラノール基や、アミノ基、イミノ基、水酸基等が挙げられ、なかでも加水分解性シリル基であることが、長期耐候性に優れる塗膜を形成できるため好ましい。
前記親水性基を有するポリウレタン(a1)が有していても良い加水分解性シリル基は、加水分解性基が珪素原子に直接結合した官能基であり、例えば、下記の一般式(I)で表される官能基が挙げられる。
Figure 2018145371
(式中、Rはアルキル基、アリール基またはアラルキル基等の1価の有機基を、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基である。また、xは0〜2の整数である。)
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基等が挙げられ、前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
前記アシロキシ基としては、例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、フェニルアセトキシ、アセトアセトキシ等が挙げられ、前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等が挙げられ、前記アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基等が挙げられる。
前記Rは、加水分解によって生じうる一般式ROH等の脱離成分の除去が容易であることから、好ましくはそれぞれ独立してアルコキシ基であることが好ましい。
また、前記親水性基を有するポリウレタン(a1)が有していても良いシラノール基は、水酸基が直接珪素原子に結合した官能基であって、主に前記した加水分解性シリル基が加水分解して生じる官能基である。
次に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)を構成するビニル重合体(a2)について説明する。前記ビニル重合体(a2)は、後述するポリシロキサン(a3)を介して前記親水性基を有するポリウレタン(a1)と結合しうるものである。
前記ビニル重合体(a2)としては、3,000〜100,000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、5,000〜25,000の数平均分子量を有するものを使用することが、基材追従性に優れ、かつ、耐久性及び耐候性に優れた塗膜を形成するうえでより好ましい。
前記ビニル重合体(a2)としては、例えば、各種ビニル単量体を重合開始剤の存在下で重合することによって製造したものを使用することができる。
前記ビニル単量体としては、前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基等と反応しうる官能基を、ビニル重合体(a2)中に導入する観点から、加水分解性シリル基を有するビニル単量体や水酸基を有するビニル単量体等を使用することが好ましい。
前記加水分解性シリル基を有するビニル単量体としては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等を使用することができ、なかでも、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。
また、前記水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
前記ビニル単量体としては、前記加水分解性シリル基を有するビニル単量体や水酸基を有するビニル単量体等の他に、必要に応じてその他のビニル単量体を併用しても良い。
前記その他のビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートフェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の末端がアルコキシ基又はフェノキシ基で封止されたポリオキシアルキレン基を有するビニル単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有するビニル単量体;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の二級アミノ基を有するビニル単量体;アミノメチルアクリレート等の一級アミノ基を有するビニル単量体等の塩基性窒素原子を有する基を有するビニル単量体;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有するビニル単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸のニトリル化合物;スチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン等のα−オレフィン化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するビニル単量体;(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するビニル単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基及びそのアルコキシ化物を有するビニル単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基を有するビニル単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート等のイソシアナート基及び/またはブロック化イソシアナート基を有するビニル単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を有するビニル単量体;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基を有するビニル単量体;アクロレイン等のカルボニル基を有するビニル単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基を有するビニル単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、もしくはこれらの半エステルまたはこれらの塩等のカルボキシル基を有する単量体等を1種または2種以上使用することができる。
前記ビニル重合体(a2)を製造する際に使用可能な重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等のラジカル重合開始剤や、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。また、前記ラジカル重合開始剤は、例えば、アスコルビン酸等の還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用しても良い。
前記重合開始剤の代表的なものである過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、有機過酸化物として、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等を使用することができる。
重合開始剤の使用量は、重合が円滑に進行する量を使用すれば良いが、ビニル重合体(a2)の製造に使用するビニル単量体の全量に対して、10質量%以下とすることが好ましい。
次に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)を構成するポリシロキサン(a3)について説明する。前記ポリシロキサン(a3)は、前記親水性基を有するポリウレタン(a1)と前記ビニル重合体(a2)との連結部分を構成するものである。
前記ポリシロキサン(a3)は、ケイ素原子と酸素原子とからなる鎖状構造を有するものであって、必要に応じて加水分解性シリル基やシラノール基等を有するものである。前記ポリシロキサン(a3)としては、例えば、下記一般式(II)及び(III)からなる群より選ばれる1種以上の構造を有するポリシロキサンと、アルキル基の炭素原子数が1〜3個であるアルキルトリアルコキシシランの縮合物との反応物等が挙げられる。
Figure 2018145371
Figure 2018145371
(一般式(II)及び(III)中のRはケイ素原子に結合した炭素原子数が4〜12の有機基、R及びRは、それぞれ独立にメチル基またはエチル基を表す。)
前記加水分解性シリル基は、加水分解性基が前記ケイ素原子に直接結合した原子団であって、例えば、前記親水性基を有するポリウレタン(a1)の説明の際に例示した一般式(I)に示されるような構造からなるものを使用することができる。
前記加水分解性基は、水の影響により水酸基を形成しうるものであって、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられ、なかでもアルコキシ基や置換アルコキシ基であることが好ましい。
また、前記シラノール基は、水酸基が前記ケイ素原子に直接結合した原子団を示すものであって、前記加水分解性シリル基が加水分解した際に形成される。
また、前記ポリシロキサン(a3)としては、前記したものの他に、必要に応じてメチル基等のアルキル基やフェニル基等を有しているものを使用することができ、例えば、ポリシロキサン(a3)を構成するケイ素原子に、フェニル基等の芳香族環式構造、炭素原子数1〜3個を有するアルキル基、及び炭素原子数1〜3個を有するアルコキシ基からなる群より選ばれる1種以上が直接結合したものを使用することが、水性複合樹脂組成物の良好な水分散安定性を維持するうえでより好ましい。
前記ポリシロキサン(a3)としては、例えば、後述するシラン化合物を完全にまたは部分的に加水分解縮合して得られるものを使用することができる。
前記シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランもしくはメチルフェニルジメトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン化合物;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシランもしくはジフェニルジクロロシラン等の各種のクロロシラン化合物や、それらの部分加水分解縮合物等を使用することができ、なかでもオルガノトリアルコキシシランやジオルガノジアルコキシシランを使用することが好ましい。これらシラン化合物は、単独使用でも2種類以上の併用でもよい。
また、前記ポリシロキサン(a3)は、ポリシロキサン複合樹脂(A)を製造する工程において、2段階の反応工程を経ることによって形成することが好ましい。具体的には、前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性基等に、フェニルトリメトキシシラン等の比較的低分子量のシラン化合物を反応させることでポリシロキサン構造を形成し、次いで、該反応物と、メチルトリメトキシシランやエチルトリメトキシシラン等の縮合物とを反応させることによって、ポリシロキサン(a3)からなる構造を形成することができる。これにより、より一層、基材追従性に優れ、かつ耐水性や耐候性に優れた塗膜を形成可能な水性樹脂組成物を得ることができる。
前記ポリシロキサン複合樹脂(A)は、例えば、以下の(I)〜(III)の工程によって製造することができる。
(I)の工程は、有機溶剤中で、前記したビニル単量体を前記重合開始剤の存在下で重合することによってビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液を得る工程である。
かかる反応は、例えば、重合開始剤を含む有機溶剤中に、前記ビニル単量体を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
また、(II)の工程は、前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液下で前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基等の反応性官能基と、シラン化合物の有する加水分解性シリル基またはシラノール基との反応と、前記シラン化合物間の加水分解縮合反応とを進行させることによって、ビニル重合体(a2)とポリシロキサン(a3)とが結合したポリシロキサン複合樹脂中間体(A’)の有機溶剤溶液を得る工程である。
かかる反応は、例えば、(I)の工程に引き続き、前記ビニル重合体(a2)の有機溶剤溶液中に、前記ポリシロキサン(a3)を形成しうる前記シラン化合物を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
(II)の工程は、更に2段階の反応工程を経ることが好ましい。具体的には前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基またはシラノール基と、前記したフェニルトリメトキシシラン等の比較的低分子量のシラン化合物とを反応させる工程と、次いで、該反応物と、メチルトリメトキシシランやエチルトリメトキシシラン等のメチルトリアルコキシシラン及びエチルトリアルコキシシランを予め縮合させた縮合物とを反応させる工程とを経ることが好ましい。ポリシロキサン(a3)の構造形成を上記のような2段階で行うことで、一層、基材追従性に優れ、かつ耐久性に優れた塗膜を形成可能な水性樹脂組成物を得ることができる。
また、(III)の工程は、前記中間体(A’)と、親水性基を有するポリウレタン(a1)とを混合し加水分解縮合させることにより、前記ビニル重合体(a2)と親水性基を有するポリウレタン(a1)とが前記ポリシロキサン(a3)を介して結合したポリシロキサン複合樹脂(A)の有機溶剤溶液を得る工程である。
前記反応は、例えば、(II)の工程に引き続き、前記中間体(A’)の有機溶剤溶液中に前記親水性基を有するポリオールを含むポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応させることによって得られる親水性基を有するポリウレタン(a1)を逐次供給または一括供給し、次いで、攪拌下、20〜120℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
上記の工程(I)〜(III)によって得られたポリシロキサン複合樹脂(A)の有機溶剤溶液は、下記の工程(IV)によって水性化することが好ましい。
工程(IV)は、例えば、(III)の工程に引き続き、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)の有する親水性基を中和し、該中和物を水系媒体中に分散する工程である。
前記親水性基の中和は、必ずしも行う必要はないが、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)の水分散安定性を向上する観点から、行うことが好ましい。とりわけ前記親水性基がカルボキシル基やスルホン酸基等のアニオン性基である場合には、それらの全部または一部を、塩基性化合物を用いて中和し、カルボキシレート基やスルホネート基とすることが、水分散安定性を一層向上する上で好ましい。
前記中和は、例えば、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)の有機溶剤溶液中に、塩基性化合物等を逐次または一括供給し、攪拌することによって行うことができる。
前記中和後、ポリシロキサン複合樹脂(A)の中和物の有機溶剤溶液中に水系媒体を供給し、次いで、該有機溶剤を除去することによって、本発明で使用するポリシロキサン複合樹脂(A)の水分散体を製造することができる。
前記有機溶剤の除去は、例えば、蒸留によって行うことができる。
また、前記水系媒体としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール化合物;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル化合物;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム化合物、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、または、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
前記ビニル重合体(B)は、基材追従性、耐水性及び耐候性等の耐久性に優れる塗膜を得るうえで、前記ポリウレタン(a1)及びビニル重合体(a2)との間で、相互侵入高分子網目構造を形成していることが重要である。
ここで、相互侵入高分子網目構造とは、2種以上のポリマーが互いに化学結合をつくることなく相互に入り組んだ網目構造をいう。
前記相互侵入高分子網目構造の形成方法としては、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)の水分散体中で、前記ビニル重合体(B)の原料となるビニル単量体(b1)を重合する方法が好ましい。
前記重合方法としては、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)の水分散体中に、前記ビニル単量体(b1)及び重合開始剤を逐次供給または一括供給し、重合反応する方法が挙げられる。
前記ビニル単量体(b1)としては、前記ビニル重合体(a2)の原料として利用可能なものとして例示した単量体を使用することができるが、得られる塗膜の耐温水性及び耐候性等の耐久性がより向上することから、単量体全量中の親水性基を有する単量体は10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満がより好ましい。なお、これらの単量体は単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ビニル単量体(b1)を供給する際には、前記ビニル単量体(b1)をそのまま供給する方法、前記ビニル単量体(b1)を乳化液としてから供給する方法等が挙げられるが、得られる塗膜の耐温水性及び耐候性等の耐久性がより向上することから、乳化液としてから供給する場合の乳化剤量は、前記ビニル単量体(b1)100質量部に対して1.5質量部未満が好ましく、1質量部未満がより好ましく、0.5質量部未満がさらに好ましい。
前記ビニル単量体(b1)を乳化液とする際の乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン系乳化剤、4級アンモニウム塩等のカチオン系乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独使用でも2種類以上の併用でもよい。
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等のラジカル重合開始剤や、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。また、前記ラジカル重合開始剤は、例えば、アスコルビン酸等の還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用しても良い。
前記重合開始剤の代表的なものである過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、有機過酸化物として、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等を使用することができる。
重合開始剤の使用量は、重合が円滑に進行する量を使用すれば良いが、ビニル重合体(a1)の製造に使用するビニル単量体の全量に対して、10質量%以下とすることが好ましい。
また、前記重合反応は攪拌下、20〜100℃の範囲で0.5〜24時間程度行うことが好ましい。
前記ビニル重合体(B)のガラス転移温度は、得られる塗膜の耐温水性及び耐候性等の耐久性がより向上することから、−50〜90℃の範囲内であることが好ましい。なお、本発明において、ガラス転移温度(Tg)とは、下記のFOXの式で計算されるガラス転移温度いう。
FOXの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
(Tg:求めるべきガラス転移温度、W1:成分1の重量分率、Tg1:成分1のホモポリマーのガラス転移温度)
前記樹脂粒子は、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)及び前記ビニル重合体(B)を含有するものであり、前記樹脂粒子中のポリシロキサン(a3)は、4〜50質量%の範囲であるが、水性樹脂組成物の保存安定性と、得られる塗膜の基材追従性、耐温水性及び耐候性等の耐久性とのバランスがより向上することから、5〜40質量%の範囲が好ましい。
また、前記樹脂粒子における前記ポリウレタン(a1)と、前記ビニル重合体(a2)及び前記ビニル重合体(B)からなるビニル重合体成分(V)との質量比[(a1)/(V)]は、得られる塗膜の耐温水性、耐候性等の耐久性がより向上することから、95/5〜5/95の範囲であることが好ましく、90/10〜10/90の範囲がより好ましい。
本発明の水性樹脂組成物の保存安定性、得られる塗膜の耐温水性及び耐候性等の耐久性がより向上することから、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)と前記ビニル重合体(B)との質量比[(A)/(B)]は、5/95〜95/5の範囲が好ましく、20/80〜90/10の範囲がより好ましい。
前記樹脂粒子及び本発明の水性樹脂組成物は、例えば、前記相互侵入高分子網目構造の形成方法として上述したように、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)の水分散体中で、前記ビニル重合体(B)の原料となるビニル単量体(b1)を重合することにより得られる。
本発明の水性樹脂組成物は、前記樹脂粒子が水系媒体中に分散されたものであるが、この水系媒体としては、ポリシロキサン複合樹脂(A)を製造する際に使用可能な水系媒体として例示したものが挙げられ、安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、または、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
本発明の水性樹脂組成物は、製造の際の急激な粘度上昇を抑制し、かつ、水性樹脂組成物の生産性や、その塗工のしやすさや乾燥性等を向上する観点から、20〜65質量%の不揮発分を有するものであることが好ましく、30〜60質量%の範囲であることがより好ましい。
本発明の水性樹脂組成物は、乳化剤を含有していてもよいが、得られる塗膜の耐温水性及び耐候性等の耐久性がより向上することから、樹脂成分100質量部に対し、0.3質量部未満が好ましく、0.2質量部未満がより好ましい。
本発明の水性樹脂組成物には、必要に応じて熱硬化性樹脂を含有させることも可能である。かかる熱硬化性樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、シリコン樹脂、あるいはこれらの変性樹脂等が挙げられる。
本発明の水性樹脂組成物には、必要に応じて粘土鉱物、金属、金属酸化物、ガラス等の各種の無機粒子を使用することができる。金属の種類としては、金、銀、銅、白金、チタン、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、鉄、シリコン、ゲルマニウム、アンチモン、それらの金属酸化物等が挙げられる。
本発明の水性樹脂組成物には、必要に応じて光触媒性化合物や無機顔料、有機顔料、体質顔料、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等の各種の添加剤等を使用することができる。
本発明の水性樹脂組成物は、保存安定性に優れることからコーティング剤や接着剤等の各種用途に使用することができる。なかでも、本発明の水性樹脂組成物は、基材追従性、耐久性及び耐候性に優れた塗膜を形成できることから、コーティング剤に使用することが好ましく、トップ層形成用コーティング剤やプライマー層形成用コーティング剤に使用することがより好ましい。
前記コーティング剤を塗布し塗膜を形成可能な基材としては、例えば、無機質基材、金属基材、プラスチック基材、ガラス基材、紙や木材基材、繊維質基材等が挙げられる。
本発明のコーティング剤は、例えば、それを前記基材表面に直接、塗布し、次いで乾燥、硬化させることによって、曝露試験後の塗膜外観、基材追従性、耐久性及び耐候性等に優れた塗膜を形成することができる。
前記したような種々の基材上に、前記コーティング剤を塗装し、硬化させることによって、塗装物を得ることができる。その際に、(1)前記コーティング剤を基材に直接塗装する、(2)予め基材上に下塗り塗料を塗装してから、前記コーティング剤を上塗り塗料として塗装する、(3)基材に下塗り塗料として前記コーティング剤を塗装し、次いで別の上塗り塗料を塗装し塗膜を形成させる等の塗装方法により塗装物を得ることができる。
本発明のコーティング剤を塗装する方法としては、例えば、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、浸漬塗装、フロー・コーター塗装、ロール・コーター塗装、電着塗装等が挙げられる。
また、前記(2)または(3)の塗装方法で前記コーティング剤からなる塗膜を有する塗装物を得る場合、下塗り塗料や、上塗り塗料として、従来から知られているアクリル樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、脂肪酸変性エポキシ樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料等を使用することができる。
前記乾燥し硬化を進行させる方法としては、常温下で1〜10日程度養生する方法であってもよいが、硬化を迅速に進行させる観点から、50〜250℃の温度で、1〜600秒程度加熱する方法が好ましい。また、比較的高温で変形や変色をしやすいプラスチック基材を用いる場合には、30〜100℃程度の比較的低温下で養生を行うことが好ましい。
本発明のコーティング剤を用いて形成する塗膜の膜厚は、基材の使用される用途等に応じて、0.5〜1,000μmとすることができる。
上記のような方法により、本発明のコーティング剤を用いて形成された塗膜を有する物品としては、例えば、外壁、屋根、ガラス、化粧板等の建築物の内外装材;防音壁、排水溝等の土木部材;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;パソコン、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;プリンター、ファクシミリ等のOA機器の筐体;自動車、鉄道車輌等の各種車輌の内外装材;産業機械等が挙げられる。
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明をする。なお、樹脂の平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
(合成例1:メチルトリメトキシシランの縮合物(a3’−1)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と略記する。)1,421質量部を仕込んで、60℃まで昇温した。次いで、前記反応容器中にiso−プロピルアシッドホスフェート(SC有機化学株式会社製「Phoslex A−3」)0.17質量部と脱イオン水207質量部との混合物を5分間で滴下した後、80℃の温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させた。
上記の加水分解縮合反応によって得られた縮合物を、温度40〜60℃及び40〜1.3kPaの減圧下(メタノールの留去開始時の減圧条件が40kPaで、最終的に1.3kPaとなるまで減圧する条件をいう。以下、同様。)で蒸留し前記反応過程で生成したメタノール及び水を除去することによって、数平均分子量1,000のMTMSの縮合物(a3’−1)を含有する液(有効成分70質量%)1,000質量部を得た。
なお、前記有効成分とは、MTMS等のシランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(質量部)を、縮合反応後の実収量(質量部)で除した値〔シランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(質量部)/縮合反応後の実収量(質量部)〕により算出したものである。
(合成例2:ポリシロキサン複合樹脂中間体(A’−1)の製造)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(以下、「PnP」と略記する。)125質量部、フェニルトリメトキシシラン(以下、「PTMS」と略記する。)168質量部及びジメチルジメトキシシラン(以下、「DMDMS」と略記する。)102質量部を仕込んで、80℃まで昇温した。
次いで、同温度でメチルメタクリレート(以下、「MMA」と略記する。)38質量部、ブチルメタクリレート(以下、「BMA」と略記する。)24質量部、ブチルアクリレート(以下、「BA」と略記する。)36質量部、アクリル酸(以下、「AA」と略記する。)24質量部、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「MPTS」と略記する。)4質量部、PnP 54質量部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(以下、「TBPEH」と略記する。)6質量部を含有する混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下し、滴下終了後、更に同温度で2時間反応させてカルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が10,200のビニル重合体(a2−1)の有機溶剤溶液を得た。
次いで、iso−プロピルアシッドホスフェート(SC有機化学株式会社製「Phoslex A−3」)2.7質量部と脱イオン水76質量部との混合物を、5分間で滴下し、更に同温度で1時間攪拌して加水分解縮合反応させることで、ビニル重合体(a2−1)の有する加水分解性シリル基と、前記PTMS及びDMDMS由来のポリシロキサンの有する加水分解性シリル基及びシラノール基とが結合した複合樹脂中間体(A’’−1)を含有する液を得た。
次いで、前記複合樹脂中間体(A’’−1)を含有する液と合成例1で得られたMTMSの縮合物(a3’−1)を含有する液(有効成分70質量%)291質量部とを混合し、更に、脱イオン水49質量部を添加して同温度で16時間撹拌し、加水分解縮合反応させることによって、前記複合樹脂中間体(A’’−1)とMTMSの縮合物(a3’−1)とが結合したポリシロキサン複合樹脂中間体(A’−1)を含有する液1,000質量部(不揮発分50質量%)を得た。
(合成例3:ポリシロキサン複合樹脂(A−1)の水分散体の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学株式会社製「PTMG−2000」)158質量部、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する。)66質量部を仕込んで100℃まで昇温し、同温度で1時間反応させた。
次いで、温度を80℃に下げ、ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と略記する。)13質量部、ネオペンチルグリコール(以下、「NPG」と略記する。)5質量部、及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)121質量部を、前記反応容器中へ投入した後、更に80℃で5時間反応させた。
次いで、温度を50℃に下げ、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、「APTES」と略記する。)30質量部、及びイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と略記する。)285質量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が7,400のポリウレタン(a1−1)の有機溶剤溶液を製造した。
次いで、前記ポリウレタン(a1−1)の有機溶剤溶液の全量と前記ポリシロキサン複合樹脂中間体(A’−1)を含有する液158質量部とを混合し、攪拌下80℃で1時間、加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(a1−1)が有する加水分解性シリル基と、前記ポリシロキサン複合樹脂中間体(A’−1)が有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂を含有する液を得た。
次いで、この液とトリエチルアミン(以下、「TEA」と略記する。)10質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得た後、該中和物と脱イオン水610質量部とを混合したものを、300〜10mmHgの減圧下で、40〜60℃の条件で4時間蒸留し、生成したメタノールや有機溶媒及び水を除去することで、不揮発分が35質量%のポリシロキサン複合樹脂(A−1)の水分散体1,000質量部を得た。このポリシロキサン複合樹脂(A−1)における質量比[(a2)/(a1)]は、6/77であった。
(合成例4:ポリシロキサン複合樹脂(A−2)の水分散体の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオール骨格を有する数平均分子量2000のポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「UH−200」)123質量部、IPDI 50質量部を仕込んで100℃まで昇温し、同温度で1時間反応させた。
次いで、温度を80℃に下げ、DMPA 10質量部、NPG 4質量部、及びMEK 94質量部を前記反応容器中へ投入した後、更に80℃で5時間反応させた。
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 23質量部、及びIPA 221質量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が7,300のポリウレタン(a1−2)の有機溶剤溶液を製造した。
次いで、前記ポリウレタン(a1−2)の有機溶剤溶液の全量と前記ポリシロキサン複合樹脂中間体(A’−1)を含有する液279部とを混合し、攪拌下80℃で1時間加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(a1−2)が有する加水分解性シリル基と、前記複合樹脂中間体(A’−1)が有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂を含有する液を得た。
次いで、この液とTEA 14質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得た後、該中和物と脱イオン水610質量部とを混合したものを、合成例3と同様の条件で蒸留することによって、不揮発分が35質量%のポリシロキサン複合樹脂(A−2)の水分散体1,000質量部を得た。このポリシロキサン複合樹脂(A−2)における質量比[(a2)/(a1)]は、10/60であった。
(合成例5:ポリシロキサン複合樹脂(A−3)の水分散体の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学株式会社製「PTMG−2000」)61質量部、IPDI 26質量部を仕込んで100℃まで昇温し、同温度で1時間反応させた。
次いで、温度を80℃に下げ、DMPA 5質量部、NPG 2質量部、及びMEK 47質量部を前記反応容器中へ投入した後、更に80℃で5時間反応させた。
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 12質量部、及びIPA 110質量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が7,500のポリウレタン(a1−3)の有機溶剤溶液を製造した。
次いで、前記ポリウレタン(a1−3)の有機溶剤溶液の全量と前記ポリシロキサン複合樹脂中間体(A’−1)を含有する液489部とを混合し、攪拌下80℃で1時間加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(a1−3)が有する加水分解性シリル基と、前記複合樹脂中間体(A’−1)が有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂を含有する液を得た。
次いで、この液とTEA 16質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得た後、該中和物と脱イオン水560質量部とを混合したものを、合成例3と同様の条件で蒸留することによって、不揮発分が35質量%のポリシロキサン複合樹脂(A−3)の水分散体1,000質量部を得た。このポリシロキサン複合樹脂(A−3)における質量比[(a2)/(a1)]は、17/30であった。
(合成例6:ポリシロキサン複合樹脂(A−4)の水分散体の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学株式会社製「PTMG−2000」)122質量部、IPDI 51質量部を仕込んで100℃まで昇温し、同温度で1時間反応させた。
次いで、温度を80℃に下げ、DMPA 10質量部、NPG 4質量部、及びMEK 94質量部を前記反応容器中へ投入した後、更に80℃で5時間反応させた。
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 23質量部、及びIPA 221質量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が7,500のポリウレタン(a1−4)の有機溶剤溶液を製造した。
次いで、前記ポリウレタン(a1−4)の有機溶剤溶液の全量と前記ポリシロキサン複合樹脂中間体(A’−1)を含有する液279部とを混合し、攪拌下80℃で1時間加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(a1−4)が有する加水分解性シリル基と、前記複合樹脂中間体(A’−1)が有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂を含有する液を得た。
次いで、この液とTEA 14質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得た後、該中和物と脱イオン水610質量部とを混合したものを、合成例3と同様の条件で蒸留することによって、不揮発分が35質量%のポリシロキサン複合樹脂(A−4)の水分散体1,000質量部を得た。このポリシロキサン複合樹脂(A−4)における質量比[(a2)/(a1)]は、10/60であった。
(合成例7:ポリシロキサン複合樹脂(A−5)の水分散体の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学株式会社製「PTMG−2000」)171質量部、IPDI 72質量部を仕込んで100℃まで昇温し、同温度で1時間反応させた。
次いで、温度を80℃に下げ、DMPA 14質量部、NPG 5質量部、及びMEK 132質量部を前記反応容器中へ投入した後、更に80℃で5時間反応させた。
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 33質量部、及びIPA 309質量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が7,500のポリウレタン(a1−5)の有機溶剤溶液を製造した。
次いで、前記ポリウレタン(a1−5)の有機溶剤溶液の全量と前記ポリシロキサン複合樹脂中間体(A’−1)を含有する液112部とを混合し、攪拌下80℃で1時間加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(a1−5)が有する加水分解性シリル基と、前記複合樹脂中間体(A’−1)が有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂を含有する液を得た。
次いで、この液とTEA 12質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得た後、該中和物と脱イオン水610質量部とを混合したものを、合成例3と同様の条件で蒸留することによって、不揮発分が35質量%のポリシロキサン複合樹脂(A−5)の水分散体1,000質量部を得た。このポリシロキサン複合樹脂(A−5)における質量比[(a2)/(a1)]は、4/84であった。
(合成例8:ポリシロキサン複合樹脂(A−6)の水分散体の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール(三菱化学株式会社製「PTMG−2000」)27質量部、IPDI 11質量部を仕込んで100℃まで昇温し、同温度で1時間反応させた。
次いで、温度を80℃に下げ、DMPA 2質量部、NPG 1質量部、及びMEK 144質量部を前記反応容器中へ投入した後、更に80℃で5時間反応させた。
次いで、温度を50℃に下げ、APTES 5質量部、及びIPA 49質量部を前記反応容器中へ投入し反応させることで、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が7,400のポリウレタン(a1−6)の有機溶剤溶液を製造した。
次いで、前記ポリウレタン(a1−6)の有機溶剤溶液の全量と前記ポリシロキサン複合樹脂中間体(A’−1)を含有する液112部とを混合し、攪拌下80℃で1時間加水分解縮合反応させることで、ポリウレタン(a1−6)が有する加水分解性シリル基と、前記複合樹脂中間体(A’−1)が有する加水分解性シリル基とが結合した複合樹脂を含有する液を得た。
次いで、この液とTEA 12質量部とを混合することで前記複合樹脂中のカルボキシル基を中和した中和物を得た後、該中和物と脱イオン水610質量部とを混合したものを、合成例3と同様の条件で蒸留することによって、不揮発分が35質量%のポリシロキサン複合樹脂(A−6)の水分散体1,000質量部を得た。このポリシロキサン複合樹脂(A−6)における質量比[(a2)/(a1)]は、22/13であった。
(実施例1:水性樹脂組成物(1)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A−1)の水分散体294質量部、脱イオン水370質量部、及びPnP 10質量部を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度でMMA 99質量部、BMA 99質量部、及び2−エチルヘキシルアクリレート(以下、「2EHA」と略記する。)49質量部を含有する混合物と、過硫酸アンモニウム(以下、「APS」と略記する。)0.3質量部及び脱イオン水79質量部を含有する混合物とを、前記反応容器中へ4時間で並行滴下した後、更に同温度で10時間反応させることによって、不揮発分が35質量%の水性樹脂組成物(1)1,000質量部を得た。この水性樹脂組成物(1)における質量比[(a1)/(V)]は、24/76であった。
(実施例2:水性樹脂組成物(2)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A−1)の水分散体500質量部、脱イオン水265質量部、及びPnP 10質量部を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度でMMA 70質量部、BMA 35質量部、BA 19質量部、及びエチルアクリレート(以下、「EA」と略記する。)52質量部を含有する混合物と、APS 0.3質量部及び脱イオン水50質量部を含有する混合物とを、前記反応容器中へ4時間で並行滴下した後、更に同温度で10時間反応させることによって、不揮発分が40質量%の水性樹脂組成物(2)1,000質量部を得た。この水性樹脂組成物(2)における質量比[(a1)/(V)]は、35/65であった。
(実施例3:水性樹脂組成物(3)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A−2)の水分散体834質量部、脱イオン水78質量部、及びPnP 10質量部を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度でMMA 23質量部、BMA 12質量部、BA 6質量部、及びEA 17質量部を含有する混合物と、APS 0.3質量部及び脱イオン水20質量部を含有する混合物とを、前記反応容器中へ4時間で並行滴下した後、更に同温度で10時間反応させることによって、不揮発分が35質量%の水性樹脂組成物(3)1,000質量部を得た。この水性樹脂組成物(3)における質量比[(a1)/(V)]は、67/33であった。
(実施例4:水性樹脂組成物(4)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A−3)の水分散体913質量部、脱イオン水26質量部、及びPnP 10質量部を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度でMMA 12質量部、BMA 11質量部、2EHA 7質量部を含有する混合物と、APS 0.3質量部及び脱イオン水25質量部を含有する混合物とを、前記反応容器中へ4時間で並行滴下した後、更に同温度で10時間反応させることによって、不揮発分が40質量%の水性樹脂組成物(4)1,000質量部を得た。この水性樹脂組成物(4)における質量比[(a1)/(V)]は、53/47であった。
(実施例5:水性樹脂組成物(5)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A−4)の水分散体668質量部、脱イオン水156質量部、及びPnP10質量部を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度でMMA 23質量部、BMA 9質量部、BA 84質量部を含有する混合物と、APS 0.3質量部及び脱イオン水50質量部を含有する混合物とを、前記反応容器中へ4時間で並行滴下した後、更に同温度で10時間反応させることによって、不揮発分が35質量%の水性樹脂組成物(5)1,000質量部を得た。この水性樹脂組成物(5)における質量比[(a1)/(V)]は、50/50であった。
(実施例6:水性樹脂組成物(6)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A−4)の水分散体668質量部、脱イオン水156質量部、及びPnP10質量部を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度でMMA 46質量部、BMA 22質量部、シクロヘキシルメタクリレート 48質量部を含有する混合物と、APS 0.3質量部及び脱イオン水50質量部を含有する混合物とを、前記反応容器中へ4時間で並行滴下した後、更に同温度で10時間反応させることによって、不揮発分が35質量%の水性樹脂組成物(6)1,000質量部を得た。この水性樹脂組成物(6)における質量比[(a1)/(V)]は、50/50であった。
(比較例1:水性樹脂組成物(R−1))
合成例6で合成したポリシロキサン複合樹脂(A−4)の水分散体を、水性樹脂組成物(R−1)として用いた。
(比較例2:水性樹脂組成物(R−2))
合成例5で合成したポリシロキサン複合樹脂(A−3)の水分散体を、水性樹脂組成物(R−2)として用いた。
(比較例3:水性樹脂組成物(R−3)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A−6)の水分散体922質量部、脱イオン水11質量部、及びPnP 10質量部を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度でMMA 11質量部、BMA 2質量部、BA 14質量部を含有する混合物と、APS 0.3質量部及び脱イオン水30質量部を含有する混合物とを、前記反応容器中へ4時間で並行滴下した後、更に同温度で10時間反応させることによって、不揮発分が40質量%の水性樹脂組成物(R−3)1,000質量部を得た。この水性樹脂組成物(R−3)における質量比[(a1)/(V)]は、95/5であった。
(比較例4:水性樹脂組成物(R−4)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A−2)の水分散体101質量部、脱イオン水505質量部、及びPnP 10質量部を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度でMMA 126質量部、BMA 126質量部、2EHA 63質量部を含有する混合物と、APS 0.3質量部及び脱イオン水70質量部を含有する混合物とを、前記反応容器中へ4時間で並行滴下した後、更に同温度で10時間反応させることによって、不揮発分が40質量%の水性樹脂組成物(R−4)1,000質量部を得た。この水性樹脂組成物(R−4)における質量比[(a1)/(V)]は、6/94であった。
(比較例5:水性樹脂組成物(R−5)の調製)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、前記ポリシロキサン複合樹脂(A−4)の水分散体590質量部を仕込んで、40℃まで昇温した。
次いで、アクリル水分散体(DIC株式会社製「ボンコート SA−6360」)410質量部を添加して撹拌混合し、不揮発分が35%の水性複合樹脂組成物(R−5)1000部を得た。
[保存安定性の評価]
上記で得られた水性樹脂組成物の粘度(初期粘度)と、該水性樹脂組成物を50℃の環境下に30日間放置した後の粘度(経時粘度)とを東機産業株式会社製BM粘度計TVB10形粘度計にて測定し、経時粘度を初期粘度で除した値[経時粘度/初期粘度]で評価した。該値が0.5〜3.0程度であれば、塗料などとして使用可能である。
[評価用硬化塗膜の作製]
上記で得られた水性樹脂組成物を、株式会社エンジニアリングテストサービス製のクロメート処理されたアルミ板上に、硬化塗膜の膜厚が30μmとなるように塗装し、23℃の環境下で1週間乾燥させて評価用硬化塗膜を得た。
[塗膜外観の評価]
上記で得られた硬化塗膜を目視で観察し、下記の基準で塗膜外観を評価した。
○:クラックの発生が認められない。
△:若干のクラックの発生が認められる。
×:クラックの発生が認められる。
[密着性の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜について、JIS K−5600 碁盤目試験法に基づいて測定した。前記硬化塗膜の上にカッターで1mm幅の切込みを入れ碁盤目の数を100個とし、全ての碁盤目を覆うようにセロハンテープを貼り付け、すばやく引き剥がして付着して残っている碁盤目の数を数え、下記の基準で評価した。
○:はがれなし。
△:はがれの面積は、全碁盤目面積の1〜64%。
×:はがれの面積は、全碁盤目面積の65%以上。
[耐温水性(外観)の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜について、50℃の温水に7日間浸漬した後に温水から取り出した直後の外観を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:白化が認められない。
△:白化が認められる。
×:基材からの剥がれが認められる。
[耐温水性(密着性)の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜について、50℃の温水に7日間浸漬した後に温水から取り出し1時間静置した。その後、塗膜の上にカッターで1mm幅の切込みを入れ碁盤目の数を100個とし、全ての碁盤目を覆うようにセロハンテープを貼り付け、すばやく引き剥がして付着して残っている碁盤目の数を数え、下記の基準で評価した。
○:はがれなし。
△:はがれの面積は、全碁盤目面積の1〜64%。
×:はがれの面積は、全碁盤目面積の65%以上。
[耐溶剤性の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜について、エタノールを浸み込ませたフェルトで、硬化塗膜上を往復50回ラビングしたのちの硬化塗膜の状態を、指触及び目視により判定し、下記の基準で評価した。
○:軟化及び光沢低下が認められない。
△:若干の軟化又は光沢低下が認められる。
×:著しい軟化又は光沢低下が認められる。
[耐酸性の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜について、硬化塗膜の一部を5%硫酸水溶液に浸し、25℃で7日間放置した後、硬化塗膜を水洗いし、乾燥した後の硬化塗膜の表面状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:エッチング跡が認められる
△:若干エッチング跡が認められる。
×:エッチングが著しく認められる。
[耐候性(外観)の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜について、デューパネル光ウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、光照射時:30W/m2、70℃;湿潤時:湿度90%以上、50℃、光照射/湿潤サイクル=8時間/4時間)で1,000時間曝露を行なった後の塗膜を目視で観察し、下記の基準で塗膜外観を評価した。
○:クラックの発生が認められない。
△:若干のクラックの発生が認められる。
×:クラックの発生が認められる。
[耐候性(光沢保持率)の評価]
作製直後の評価用硬化塗膜の鏡面反射率(光沢値)(%)と、前記硬化塗膜を、デューパネル光ウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、光照射時:30W/m2、70℃;湿潤時:湿度90%以上、50℃、光照射/湿潤サイクル=8時間/4時間)で1,000時間曝露した後の塗膜の鏡面反射率(光沢値)(%)の、曝露前の硬化塗膜の鏡面反射率(光沢値)に対する保持率(光沢保持率:%)〔(100×暴露後の塗膜の鏡面反射率)/(曝露前の硬化塗膜の鏡面反射率)〕で評価した。保持率の値が大きいほど、耐候性が良好であることを示す。
[耐汚染性の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜について、大阪府高石市のDIC株式会社堺工場内において3か月間曝露を行なった。曝露試験後の未洗浄の塗膜と、曝露試験前の塗膜との色差(ΔE)を、コニカミノルタセンシング株式会社製「CM−3500d」を用いて評価した。前記色差(ΔE)が小さいほど、耐汚染性が良好であることを示す。
[基材追従性の評価]
基材追従性の評価として、塗膜の伸度を測定した。
(塗膜伸度の測定方法)
ポリプロピレンフィルムからなる基材上に上記で得られた水性樹脂組成物を、膜厚が200μmとなるように塗装し、140℃の環境下で5分間乾燥させた後、更に25℃の環境下で24時間乾燥させ、該基材から剥離したものを試験塗膜(10mm×70mm)とした。
前記試験塗膜の伸度の測定は、株式会社島津製作所製「オートグラフAGS−1kNG(チャック間距離;20mm、引っ張り速度;300mm/分、測定雰囲気:22℃、60%RH)」を用いて行い、引張試験前の塗膜に対する伸び率に基づいて評価した。前記伸度は、80%以上であることが実用上好ましい。
上記の実施例1〜6の評価結果を表1に示す。
Figure 2018145371
上記の比較例1〜5の評価結果を表2に示す。
Figure 2018145371
実施例1〜6の本発明の水性樹脂組成物からは基材追従性を兼備し、耐温水性、耐候性等の各種塗膜物性に優れる硬化塗膜が得られることが確認された。
比較例1及び2は、相互侵入高分子網目構造が形成されていないポリシロキサン複合樹脂の水分散体を水性樹脂組成物として用いた例であるが、得られる塗膜の密着性及び耐温水性が不十分であることが確認された。
比較例3は、樹脂粒子中のポリシロキサン(a3)が、本発明の上限である50質量%より多い例であるが、得られる塗膜の耐温水性、耐候性、耐汚染性及び基材追従性が不十分であることが確認された。
比較例4は、樹脂粒子中のポリシロキサン(a3)が、本発明の下限である4質量%より少ない例であるが、得られる塗膜の耐温水性、耐汚染性、耐候性が不十分であることが確認された。
比較例5は、ポリシロキサン複合樹脂の水分散体とアクリル樹脂の水分散体とを混合したものを水性樹脂組成物として用いた例であるが、得られる塗膜の密着性、耐温水性、耐汚染性及び耐候性が不十分であることが確認された。

Claims (6)

  1. ポリシロキサン複合樹脂(A)及びビニル重合体(B)を含有する樹脂粒子が水系媒体中に分散された水性樹脂組成物であって、前記ポリシロキサン複合樹脂(A)が親水性基を有するポリウレタン(a1)とビニル重合体(a2)とがポリシロキサン(a3)を介して結合した複合樹脂であり、前記樹脂粒子中のポリシロキサン(a3)が4〜50質量%の範囲であり、前記ビニル重合体(B)と前記ポリウレタン(a1)及びビニル重合体(a2)とが相互侵入高分子網目構造を形成していることを特徴とする水性樹脂組成物。
  2. 前記親水性基を有するポリウレタン(a1)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記ポリウレタン(a1)が有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との縮合結合であり、前記ビニル重合体(a2)と前記ポリシロキサン(a3)との結合が、前記ビニル重合体(a2)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基と前記ポリシロキサン(a3)の有する加水分解性シリル基及び/またはシラノール基との縮合結合である請求項1記載の水性樹脂組成物。
  3. 前記親水性基を有するポリウレタン(a1)と前記ビニル重合体(a2)との質量比[(a2)/(a1)]が20/1〜1/20の範囲である請求項1又は2記載の水性樹脂組成物。
  4. 前記ポリシロキサン複合樹脂(A)と前記ビニル重合体(B)との質量比[(A)/(B)]が5/95〜95/5の範囲である請求項1〜3のいずれか1項記載の水性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の水性樹脂組成物を含有することを特徴とするコーティング剤。
  6. 請求項5記載のコーティング剤の塗膜を有することを特徴とする物品。
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