JP2004203219A - ハイブリッド駆動装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電動機が前記出力部材に対してトルクを出力していない状態での前記変速機構による変速の際に、ブレーキの伝達トルク容量を所定値以下に維持した状態で前記電動機をその回転数が変速後の同期回転数もしくは同期回転数に基づいて設定した目標回転数になるように制御する電動機回転数制御手段(ステップS04,09)と、前記電動機の回転数が変速後の同期回転数もしくは前記目標回転数に達した後に、変速後の変速状態を設定するための前記係合装置の伝達トルク容量を増大させる係合装置制御手段(ステップS11)とを備えている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の走行のための動力源として二種類の動力源を備えているハイブリッド駆動装置に関し、特に主動力源からトルクが伝達される出力部材に、変速機構を介して、力行および回生の可能な電動機を連結したハイブリッド駆動装置を対象とした制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用のハイブリッド駆動装置は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関とモータもしくはモータ・ジェネレータなどの電動装置とを動力源とするものが一般的であるが、これらの内燃機関と電動装置との組合せの形態は多様であり、また電動装置の使用数も一台に限らず、複数台使用する例もある。その一例を挙げると、特開2002−225578号公報(特許文献1)には、エンジンと第1モータ・ジェネレータとを、シングルピニオン型遊星歯車機構からなる合成分配機構を介して相互に連結するとともに、その合成分配機構から出力部材にトルクを伝達し、さらにその出力部材に変速機構を介して第2モータ・ジェネレータを連結し、その第2モータ・ジェネレータの出力トルクを、いわゆるアシストトルクとして出力部材に付加するように構成されたハイブリッド駆動装置が記載されている。また、その変速機構が、直結状態と減速状態とに切り換えることのできる遊星歯車機構によって構成されており、直結状態では第2モータ・ジェネレータのトルクをそのまま出力部材に付加し、また減速状態では第2モータ・ジェネレータのトルクを増大させて出力部材に付加するように構成されている。
【0003】
上記のハイブリッド駆動装置では、第2モータ・ジェネレータを力行状態あるいは回生状態に制御することにより、正トルクを出力部材に付加し、あるいは負トルクを出力部材に付加することができる。また、変速機構によって減速状態を設定できるので、第2モータ・ジェネレータを低トルク型化あるいは小型化することができる。
【0004】
なお、特開平6−319210号公報(特許文献2)には、電気モータを出力軸に対して変速機を介して連結した電気モータ駆動車両であって、応答遅れを生じることなく、シフトショックを軽減することを目的として、変速状況を判断して電気モータトルクを制御するように構成した発明が記載されている。また、この公報に記載された発明では、変速に関与するクラッチ圧を制御するように構成されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−225578号公報(段落(0021)〜(0034)、図1)
【特許文献2】
特開平6−319210号公報(段落(0032)〜(0056)、図1、図3〜図8)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した公報に記載されている構成の変速機での変速は、モータ・ジェネレータなどの入力側の部材と出力軸などの出力側の部材との回転数の比率を変更する制御であるから、変速の前後では、変速機およびこれに連結されている回転部材の回転数が変化する。その回転数の変化が急激であれば、回転数変化に伴う慣性トルクが大きくなるので、いわゆる変速ショックが悪化する。そのため、例えば従来の一般的な車両用自動変速機では、変速に関与するクラッチなどの摩擦係合装置のトルク容量すなわち係合圧を制御して、出力軸トルクを滑らかに変化させている。
【0007】
しかしながら、上述した特開2002−225578号公報に記載されているように構成されたハイブリッド車におけるアシスト用の第2モータ・ジェネレータのトルクを出力部材に伝達する変速機でいわゆるパワーオフ変速を実行するとした場合、変速に関与するクラッチもしくはブレーキの係合・解放状態を変化させることに伴って第2モータ・ジェネレータの回転数を変化させれば、その回転数変化に伴う慣性トルクがショックとして現れる可能性がある。このようなショックを回避するために、第2モータ・ジェネレータなどの回転要素の回転数が変速後の同期回転数に向けてある程度変化するのを待って係合装置の係合・解放状態を切り替えるとすれば、その回転数の変化が迅速には進行せずに変速の遅れが生じる可能性がある。
【0008】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、力行および回生の各機能のある電動機を出力部材に連結している変速機構でのいわゆるパワーオフ変速を確実に進行させることのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、電動機を出力部材から切り離す方向に制御した状態で電動機の回転数を同期回転数に向けて制御するとともに、同期回転数もしくは同期回転数に基づく回転数に到達した後に電動機を出力部材に接続するように構成したことを特徴とするものである。より具体的には、請求項1の発明は、動力源の出力したトルクが伝達される出力部材に、回転数制御の可能な電動機が、係合装置の係合・解放状態を変更することによって変速を実行する変速機構を介して連結されているハイブリッド駆動装置の制御装置において、前記電動機が前記出力部材に対してトルクを出力していない状態での前記変速機構による変速の際に、前記係合装置の伝達トルク容量を所定値以下に維持した状態で前記電動機をその回転数が変速後の同期回転数もしくは同期回転数に基づいて設定した目標回転数になるように制御する電動機回転数制御手段と、前記電動機の回転数が変速後の同期回転数もしくは前記目標回転数に達した後に、変速後の変速状態を設定するための前記係合装置の伝達トルク容量を増大させる係合装置制御手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0010】
したがって請求項1の発明では、前記電動機が出力部材に向けてトルクを出力していない状態での変速機での変速の際に摩擦係合装置のトルク容量が低下させられ、電動機を出力部材に対して切り離す方向に制御される。その状態で電動機の回転数が、変速後の同期回転数になるように制御される。すなわち、係合装置の係合状態によらずに、電動機の回転数が同期回転数に向けて制御される。そのため、同期回転数に向けた回転数の変化が確実に進行する。そして、同期回転数もしくはこれに基づいて設定した回転数に達した時点で係合装置が完全係合に向けて制御される。そのため、係合装置のトルク容量が増大することに伴う回転数変化が少なくなり、ショックが低減もしくは防止される。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明における前記電動機回転数制御手段が、前記変速中における前記電動機の目標回転数の変化の態様を、変速の進行の度合いと前記電動機に対して放電および/または充電する蓄電装置の状態との少なくともいずれか一方に基づいて変更する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0012】
したがって、請求項2の発明では、変速の進行の度合いあるいは蓄電装置の状態の少なくともいずれかに基づいて電動機の目標回転数の変化状態が制御される。そのため、変速の遅れや蓄電装置に過剰な負担が生じるなどの事態が未然に回避される。
【0013】
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2の発明における前記電動機回転数制御手段が、前記変速中における前記電動機の回転数が前記同期回転数になった後の前記電動機の目標回転数として、前記出力部材における慣性トルクと同方向に前記電動機による慣性トルクが生じる回転数を設定し、その目標回転数となるように電動機を制御する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0014】
したがって請求項3の発明では、電動機が変速後の回転数である同期回転数になった後には出力部材における慣性トルクと同方向に慣性トルクが生じるように目標回転数が設定され、そのため係合装置が係合して変速が終了する際には、いわゆるガタが詰まった状態となっているので、いわゆるガタ打ち音やショックなどが生じることがない。
【0015】
そして、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記変速の際に、前記電動機をその回転数が前記同期回転数となるように制御するか否かを、前記電動機に対して放電および/または充電する蓄電装置の状態に基づいて判定する制御実行判定手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0016】
したがって請求項4の発明では、蓄電装置の状態が、電動機の回転数制御を実行できる状態の場合に係合装置のトルク容量を低下させて電動機の回転数制御を実行する変速がおこなわれ、蓄電装置の電力で電動機の回転数制御をおこなえない場合には、係合装置のトルク容量を低下させて電動機を出力部材から切り離す状態を設定しないので、いずれの場合であっても変速を確実に進行させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とするハイブリッド駆動装置について説明すると、この発明で対象とするハイブリッド駆動装置は、一例として車両に搭載されるものであって、図3に示すように、主動力源1のトルクが出力部材2に伝達され、その出力部材2からデファレンシャル3を介して駆動輪4にトルクが伝達される。一方、走行のための駆動力を出力する力行制御あるいはエネルギを回収する回生制御の可能なアシスト動力源5が設けられており、このアシスト動力源5が変速機6を介して出力部材2に連結されている。したがってアシスト動力源5と出力部材2との間で伝達するトルクを変速機6で設定する変速比に応じて増減するようになっている。
【0018】
上記の変速機6は、設定する変速比が“1”以上となるように構成することができ、このように構成することにより、アシスト動力源5でトルクを出力する力行時に、アシスト動力源5で出力したトルクを増大させて出力部材2に伝達できるので、アシスト動力源5を低容量もしくは小型のものとすることができる。しかしながら、アシスト動力源5の運転効率を良好な状態に維持することが好ましいので、例えば車速に応じて出力部材2の回転数が増大した場合には、変速比を低下させてアシスト動力源5の回転数を低下させる。また、出力部材2の回転数が低下した場合には、変速比を増大させることがある。
【0019】
そのような変速のうちいわゆるパワーオフ状態での変速では、変速の制御の仕方によってショックが生じたり、あるいは変速が進行しなかったりするので、この発明に係る制御装置は、パワーオフ状態での変速を、係合装置およびアシスト動力源5の両方を制御して円滑に進行させるようになっている。
【0020】
より具体的に説明すると、主動力源1は図4に示すように、内燃機関10と、モータ・ジェネレータ(以下、仮に第1モータ・ジェネレータもしくはMG1と記す)11と、これら内燃機関10と第1モータ・ジェネレータ11との間でトルクを合成もしくは分配する遊星歯車機構12とを主体として構成されている。その内燃機関(以下、エンジンと記す)10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の動力装置であって、スロットル開度(吸気量)や燃料供給量、点火時期などの運転状態を電気的に制御できるように構成されている。その制御は、例えば、マイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(E−ECU)13によっておこなうように構成されている。
【0021】
また、第1モータ・ジェネレータ11は、一例として同期電動機であって、電動機としての機能と発電機としての機能とを生じるように構成され、インバータ14を介してバッテリーなどの蓄電装置15に接続されている。そして、そのインバータ14を制御することにより、第1モータ・ジェネレータ11の出力トルクあるいは回生トルクを適宜に設定するようになっている。その制御をおこなうために、マイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(MG1−ECU)16が設けられている。
【0022】
さらに、遊星歯車機構12は、外歯歯車であるサンギヤ17と、そのサンギヤ17に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ18と、これらサンギヤ17とリングギヤ18とに噛合しているピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持しているキャリヤ19とを三つの回転要素として差動作用を生じる公知の歯車機構である。前記内燃機関10の出力軸がダンパー20を介してそのキャリヤ19に連結されている。言い換えれば、キャリヤ19が入力要素となっている。
【0023】
これに対してサンギヤ17に第1モータ・ジェネレータ11が連結されている。したがってサンギヤ17がいわゆる反力要素となっており、またリングギヤ18が出力要素となっている。そして、そのリングギヤ18が出力部材(すなわち出力軸)2に連結されている。
【0024】
一方、変速機6は、図4に示す例では、一組のラビニョ型遊星歯車機構によって構成されている。すなわちそれぞれ外歯歯車である第1サンギヤ21と第2サンギヤ22とが設けられており、その第1サンギヤ21にショートピニオン23が噛合するとともに、そのショートピニオン23がこれより軸長の長いロングピニオン24に噛合し、そのロングピニオン24が前記各サンギヤ21,22と同心円上に配置されたリングギヤ25に噛合している。なお、各ピニオン23,24は、キャリヤ26によって自転かつ公転自在に保持されている。また、第2サンギヤ22がロングピニオン24に噛合している。したがって第1サンギヤ21とリングギヤ25とは、各ピニオン23,24と共にダブルピニオン型遊星歯車機構に相当する機構を構成し、また第2サンギヤ22とリングギヤ25とは、ロングピニオン24と共にシングルピニオン型遊星歯車機構に相当する機構を構成している。
【0025】
そして、第1サンギヤ21を選択的に固定する第1ブレーキB1と、リングギヤ25を選択的に固定する第2ブレーキB2とが設けられている。これらのブレーキB1,B2は摩擦力によって係合力を生じるいわゆる摩擦係合装置であり、多板形式の係合装置あるいはバンド形式の係合装置を採用することができる。そして、これらのブレーキB1,B2は、油圧や電磁力などによる係合力に応じてそのトルク容量が連続的に変化するように構成されている。さらに、第2サンギヤ22に前述したアシスト動力源5が連結され、またキャリヤ26が前記出力軸2に連結されている。
【0026】
したがって、上記の変速機6は、第2サンギヤ22がいわゆる入力要素であり、またキャリヤ26が出力要素となっており、第1ブレーキB1を係合させることにより変速比が“1”より大きい高速段が設定され、第1ブレーキB1に替えて第2ブレーキB2を係合させることにより、高速段より変速比の大きい低速段が設定されるように構成されている。この各変速段の間での変速は、車速や要求駆動力(もしくはアクセル開度)などの走行状態に基づいて実行される。より具体的には、変速段領域を予めマップ(変速線図)として定めておき、検出された運転状態に応じていずれかの変速段を設定するように制御される。その制御をおこなうためのマイクロコンピュータを主体とした電子制御装置(T−ECU)27が設けられている。
【0027】
なお、図4に示す例では、アシスト動力源5として、トルクを出力する力行およびエネルギを回収する回生の可能なモータ・ジェネレータ(以下仮に、第2モータ・ジェネレータもしくはMG2と記す)が採用されている。この第2モータ・ジェネレータ5は、インバータ28を介してバッテリー29に接続されている。そして、マイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(MG2−ECU)30によってそのインバータ28を制御することにより、力行および回生ならびにそれぞれの場合におけるトルクを制御するように構成されている。なお、そのバッテリー29および電子制御装置30は、前述した第1モータ・ジェネレータ11についてのインバータ14およびバッテリー(蓄電装置)15と統合することもできる。
【0028】
上述したトルク合成分配機構としてのシングルピニオン型遊星歯車機構12についての共線図を示せば、図5の(A)のとおりであり、キャリヤ19に入力されるエンジン10の出力するトルクに対して、第1モータ・ジェネレータ11による反力トルクをサンギヤ17に入力すると、出力要素となっているリングギヤ18には、エンジン10から入力されたトルクより大きいトルクが現れる。その場合、第1モータ・ジェネレータ11は、発電機として機能する。また、リングギヤ18の回転数(出力回転数)を一定とした場合、第1モータ・ジェネレータ11の回転数を大小に変化させることにより、エンジン10の回転数を連続的に(無段階に)変化させることができる。すなわち、エンジン10の回転数を例えば燃費が最もよい回転数に設定する制御を、第1モータ・ジェネレータ11を制御することによっておこなうことができる。なお、この種のハイブリッド形式は、機械分配式あるいはスプリットタイプと称されている。
【0029】
また、変速機6を構成しているラビニョ型遊星歯車機構についての共線図を示せば、図5の(B)のとおりである。すなわち第2ブレーキB2によってリングギヤ25を固定すれば、低速段Lが設定され、第2モータ・ジェネレータ5の出力したトルクが変速比に応じて増幅されて出力軸2に付加される。これに対して第1ブレーキB1によって第1サンギヤ21を固定すれば、低速段Lより変速比の小さい高速段Hが設定される。この高速段Hにおける変速比も“1”より小さいので、第2モータ・ジェネレータ5の出力したトルクがその変速比に応じて増大させられて出力軸2に付加される。
【0030】
なお、各変速段L,Hが定常的に設定されている状態では、出力軸2に付加されるトルクは、第2モータ・ジェネレータ5の出力トルクを変速比に応じて増大させたトルクとなるが、変速過渡状態では各ブレーキB1,B2でのトルク容量や回転数変化に伴う慣性トルクなどの影響を受けたトルクとなる。また、出力軸2に付加されるトルクは、第2モータ・ジェネレータ5の駆動状態では、正トルクとなり、被駆動状態では負トルクとなる。
【0031】
上述したハイブリッド駆動装置は、エンジン10を可及的に効率の良い状態で運転して排ガス量を低減すると同時に燃費を向上させ、またエネルギ回生をおこなってこの点でも燃費を改善することを主な目的としている。したがって大きい駆動力が要求されている場合には、主動力源1のトルクを出力軸2に伝達している状態で、第2モータ・ジェネレータ5を駆動してそのトルクを出力軸2に付加する。その場合、低車速の状態では、変速機6を低速段Lに設定して付加するトルクを大きくし、その後、車速が増大した場合には、変速機6を高速段Hに設定して、第2モータ・ジェネレータ5の回転数を低下させる。これは、第2モータジェネレータ5の駆動効率を良好な状態に維持して燃費の悪化を防止するためである。
【0032】
したがって上記のハイブリッド駆動装置では、第2モータ・ジェネレータ5を動作させている走行中に変速機6による変速を実行する場合がある。その変速は、前述した各ブレーキB1,B2の係合・解放状態を切り換えることにより実行される。例えば低速段Lから高速段Hに切り換える場合には、第2ブレーキB2を係合させていた状態からこれを解放させ、同時に第1ブレーキB1を係合させることにより、低速段Lから高速段Hへの変速が実行される。
【0033】
このような変速は、第2モータ・ジェネレータ5から出力軸2に対してトルクを出力していないいわゆるパワーオフの状態で生じることもある。その場合、低速段側の第2ブレーキB2を解放させ、かつ高速段側の第1ブレーキB1を係合させて第2モータ・ジェネレータ5の回転数を高速段Hでの同期回転数に強制的に低下させるとすれば、第2モータ・ジェネレータ5や変速機6を構成している回転部材の回転数が急激に変化し、それに伴う慣性トルクが出力軸2に現れるので、これがショックの原因となることがある。またパワーオフ状態では、第2モータ・ジェネレータ5は車両の有する慣性エネルギを回生するように制御されているので、パワーオフ変速の際に前記各ブレーキB1,B2を解放するようにその係合圧(トルク容量)を低下させただけでは、第2モータ・ジェネレータ5などのいわゆる入力側の部材の回転数が変速後の回転数である同期回転数に向けて変化せず、もしくはその変化が緩慢になり、その結果、変速が進行しない事態が生じる。そこでこの発明に係る制御装置は、パワーオフ状態での前記変速機6での変速を以下に述べるように実行する。
【0034】
図1はその制御例を示すフローチャートである。図1において、先ず、パワーオフ状態での変速中か否かが判断される(ステップS01)。例えばパワーオフ・アップシフトは、第2モータ・ジェネレータ5の出力トルクがほぼゼロの状態での低速段Lから高速段Hへの変速であり、したがって第2モータ・ジェネレータ5のトルク指令値や変速機6への変速指示信号あるいは変速機用電子制御装置27での変速判断信号に基づいてステップS01の判断をおこなうことができる。
【0035】
パワーオフ状態での変速中であることによりステップS01で肯定的に判断された場合には、バッテリー29からの持ち出し(出力)許可電力Wout が所定値を超えているか否かが判断される(ステップS02)。これは、バッテリー29の充電状態SOCが、第2モータ・ジェネレータ5のトルクを制御できる状態かか否かの判断である。
【0036】
このステップS02で肯定的に判断された場合には、加速要求あるいは回生要求があるか否かが判断される(ステップS03)。言い換えれば、出力軸2のトルクを制御するために第2モータ・ジェネレータ5を使用する状態か否かが判断される。
【0037】
このステップS03で否定的に判断された場合、すなわち出力軸トルクの制御のために第2モータ・ジェネレータ5を使用することが要求されていない場合には、ブレーキの解放指令が出力される(ステップS04)。これは、第2モータ・ジェネレータ5を出力軸2から切り離すための制御であり、上記の各ブレーキB1,B2の係合圧(トルク容量)を低下させるための指令出力である。その具体的内容は後述する。
【0038】
ついで、制御実行タイマが起動される。すなわち上記のステップS04でのブレーキ解放指令出力が、パワーオフ変速の判断成立後の初回の場合にカウンタがクリア(ゼロリセット)される(ステップS05)。なお、この制御実行タイマは、後述するガードタイマに相当している。その後、このカウンタによるカウント値が所定値を超えているか否かが判断される(ステップS06)。
【0039】
パワーオフの変速判断の成立後、初めてこのステップS06の判断を実行する場合には、カウント値が未だ小さいのでステップS06で否定的に判断される。その場合は、既に成立しているモータトルク指令値およびブレーキ油圧指令値が出力される(ステップS07)。すなわち、パワーオフ変速であるから、この時点の第2モータ・ジェネレータ5のトルク指令値はゼロであり、またブレーキ油圧指令値は上記のステップS04で設定された値である。そして、カウンタがインクリメントされ(ステップS08)、その後、リターンする。
【0040】
加速要求や回生要求がないなど、従前の状態が継続していれば、上記のステップS08によりカウント値が増え続けるので、ついにはステップS06で肯定的に判断される。その場合には、第2モータ・ジェネレータ5の回転数制御が実行される(ステップS09)。この回転数制御は、第2モータ・ジェネレータ5の回転数を変速後の同期回転数に一致させるための制御であり、以下のようにして実行される。
【0041】
先ず、変速開始時の回転数から同期回転数に到る過渡期間での目標回転数が設定される。この目標回転数は、第2モータ・ジェネレータ5の回転数が過度に急激に変化することがなく、また反対に過度に緩慢に変化することにならない範囲で変化するように設定され、その目標回転数に向けて制御することにより第2モータ・ジェネレータ5の回転数がスイープ変化する。さらに、その目標回転数あるいは変化勾配は、第2モータ・ジェネレータ5の回転数と目標回転数との偏差すなわち変速の進行度合に応じて変化させることができ、またバッテリー29の充電状態SOCが低下している場合には回転数の変化勾配を低下させるなど充電状態SOCに応じて変化させることもできる。そして、アップシフトの場合は、第2モータ・ジェネレータ5の回転数が同期回転数に達した後の目標回転数として、出力軸回転数より所定値αだけ低い回転数が設定される。これは、ブレーキが完全に係合して変速が終了する際に生じる慣性トルクが、出力軸2における慣性トルクと同一方向とすることにより、いわゆるガタ打ちを回避するためである。したがってダウンシフトの場合は、出力軸回転数より所定値だけ高い回転数が目標回転数として設定される。このように目標回転数を設定して第2モータ・ジェネレータ5の回転数がフィードバック制御される。
【0042】
上記のステップS09の後に前述したステップS07に進み、モータトルクおよびブレーキ油圧の各指令値が出力される。すなわち第2モータ・ジェネレータ5は目標回転数となるようにそのトルクがフィードバック制御される。
【0043】
上記の第2モータ・ジェネレータ5の回転数制御の過程でその回転数が同期回転数に一致すると、高速段H側の第1ブレーキB1の係合圧が次第に増大させられ、この第1ブレーキB1のトルク容量により第2モータ・ジェネレータ5の回転数を維持できる状態になると、第2モータ・ジェネレータ5の回転数フィードバック制御が終了し、要求トルクを出力するように第2モータ・ジェネレータ5が復帰制御される。
【0044】
一方、パワーオフ変速中に加速要求あるいは回生要求があった場合にも復帰制御が実行される。すなわち前述したステップS03で肯定的に判断され、その場合には、既にブレーキの解放制御が実行されているか、もしくは復帰制御の実行中かが判断される(ステップS10)。このステップS10で肯定的に判断された場合には、第2モータ・ジェネレータ5を出力軸2に対して実質的に連結し、かつ出力軸2との間でトルクを授受する必要があるから、解放状態の所定のブレーキを係合させ、かつ第2モータ・ジェネレータ5の回転数制御を終了するとともにそのトルクを目標値にスイープアップさせる復帰制御が実行される(ステップS11)。そして、ステップS07に進んでその復帰制御のためのモータトルク指令値およびブレーキ油圧指令値が出力され、さらにカウンタがインクリメントされる。
【0045】
他方、ステップS10で否定的に判断された場合、すなわちブレーキの解放中でもなく、かつ復帰制御中でもない場合には、ブレーキB1,B2の係合圧を制御することにより第2モータ・ジェネレータ5の回転数を同期回転数に向けて変化させる制御が実行され(ステップS12)、この制御によるモータトルクおよびブレーキ油圧が出力される(ステップS07)。なお、このステップS12の制御は、第2モータ・ジェネレータ5の回転数を電気的に制御できない場合、すなわちバッテリー29からの持ち出し(出力)許可電力Wout が所定値以下であることによりステップS02で否定的に判断された場合にも実行される。さらに、パワーオフ変速でないことにより前記のステップS01で否定的に判断された場合には、第2モータ・ジェネレータ5がトルクを出力しているパワーオン状態での変速制御が実行され(ステップS13)、この制御によるモータトルクおよびブレーキ油圧が出力される(ステップS07)。
【0046】
上記の図1に示す制御に基づいてアップシフトした場合のタイムチャートを図2に示してある。パワーオフ・アップシフトの判断に基づいて変速指令が出力され、変速が開始すると(t1 時点)、低速段側油圧指令値Pblがガタを生じさせない(ピストンが戻らない)程度の圧力を残してトルク容量がゼロになる程度の低圧にステップダウンさせられ、また高速段側油圧指令値Pbhが、第1ブレーキB1のパッククリアランスを詰めるファーストフィルを実行するように一時的に増大させられる。
【0047】
各ブレーキB1,B2の油圧をこのように制御することにより、第2モータ・ジェネレータ5が出力軸2に対して切り離される。その状態でガードタイマが成立すると(t2 時点)、すなわち前述したカウント値が所定値に達すると、第2モータ・ジェネレータ5の回転数フィードバック制御(FB制御)が開始される。すなわち第2モータ・ジェネレータ5についての目標回転数Nmtg が設定され、その目標回転数Nmtg と実際の第2モータ・ジェネレータ5の回転数Nm との偏差に基づいて第2モータ・ジェネレータ5のトルクが制御される。その結果、第2モータ・ジェネレータ5の回転数Nm が目標回転数Nmtg に追従するように変化する。
【0048】
図2に示すアップシフトの場合、第2モータ・ジェネレータ5の回転数Nm が次第に低下し、変速後の高速段Hでの変速比に応じた同期回転数との差が所定値以下になると回転数同期の判定が成立する(t3 時点)。これと同時に、高速段側油圧指令値Pbhが増大させられ、かつ低速段側油圧指令値Pblがゼロまで低下させられる。
【0049】
第2モータ・ジェネレータ5の回転数Nm が同期回転数にほぼ一致した時点もしくはその後の目標回転数Nmtg は、変速後の変速比と出力軸回転数とに基づいて定まる同期回転数に対して所定値αだけ低い回転数されるので、高速段H側の第1ブレーキB1の係合圧が次第に増大してそのトルク容量が大きくなると、第2モータ・ジェネレータ5の回転数が同期回転数に一致するように第2モータ・ジェネレータ5に対して出力軸2側からトルクが作用する。すなわち前記所定値αを解消するようにトルクが作用する。一方、第2モータ・ジェネレータ5の回転数が未だフィードバック制御されているので、第2モータ・ジェネレータ5のトルクは、同期回転数から上記の所定値αだけずれた回転数を維持するように作用する。その結果、第2モータ・ジェネレータ5のトルクの絶対値が、回転数の同期判定成立後に一時的に増大する。そのフィードバック制御トルクの絶対値が所定値を超えたt4 時点にフィードバック制御の終了が判断される。
【0050】
その後、前述した復帰制御が実行され、第2モータ・ジェネレータ5のトルクは変速後のトルクを目標値としてスイープアップされる。そして、高速段H側の第1ブレーキB1が完全に係合することによって変速制御が終了する(t5 時点)。
【0051】
その場合、上記の例では、同期回転数に対して所定値αだけ低い回転数を目標回転数Nmtg としてあるので、第2モータ・ジェネレータ5のトルクをスイープアップした前後における変速機6でのガタの方向が変化しない。言い換えれば、変速終了と同時に第2モータ・ジェネレータ5で生じる慣性トルクと出力軸2での慣性トルクとの方向が同一になっているので、変速終了時のガタ打ちが未然に回避される。
【0052】
このようにこの発明に係る制御装置は、パワーオフ変速の場合に、アシスト動力源として機能する第2モータ・ジェネレータ5を出力軸2から実質的に切り離した状態で第2モータ・ジェネレータ5の回転数を単独で電気的に制御する。そのため、変速機6に対して入力側の回転部材の回転数が同期回転数に向けて迅速に変化し、変速を円滑に進行させることができる。そして、第2モータ・ジェネレータ5の回転数がほぼ同期回転数に一致した後に変速後の変速段を設定する係合装置である第1ブレーキB1の係合圧を増大させて完全係合状態とするので、その係合に伴って回転数が大きく変化する部材がなく、その結果、ショックを悪化させることがない。
【0053】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図1に示すステップS04およびステップS09を実行する機能的手段が、この発明の電動機回転数制御手段に相当し、またステップS11を実行する機能的手段が、この発明の係合装置制御手段に相当し、さらにステップS02を実行する機能的手段が、この発明の制御実行判定手段に相当する。
【0054】
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであり、この発明で対象とする変速機構は、上述した構成以外の構成であってもよく、したがって変速を実行する係合装置は、上記の各ブレーキB1,B2に替えて適宜のクラッチなどの摩擦係合装置であってよい。また、この発明で係合装置の伝達トルク容量を所定値以下に低下させて電動機を出力部材から切り離す制御は、要は、電動機の回転数を単独で制御できる状態であればよく、したがって係合装置は、完全に解放させてもよく、あるいは回転数制御に支障がない範囲である程度の係合されてもよい。さらに、この発明では、変速中の電動機の目標回転数は予め定めておいてもよく、あるいは変速の状態に基づいて逐次設定してもよい。そして、この発明は、アップシフトに限らず、ダウンシフトの場合にも適用することができる。さらにまた、上記の具体例では、電動機を出力部材からいわゆる切り離した状態で電動機の回転数制御を実行できるか否かを、バッテリー29からの持ち出し(出力)許可電力Wout に基づいて判断することとしたが、蓄電装置からの電力の出力の可否は、充電状態SOCのみによらないのであるから、この発明では、要は、温度などを含めて蓄電装置の状態に基づいて判断するように構成されていればよい。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、係合装置の係合状態によらずに、電動機の回転数を同期回転数に向けて制御するため、同期回転数に向けた回転数の変化を確実に進行させることができ、そして、同期回転数もしくはこれに基づいて設定した回転数に達した時点で係合装置が完全係合に向けて制御されるため、係合装置のトルク容量が増大することに伴う回転数変化が少なくなり、その結果、ショックや遅れを生じさせることなくパワーオフ変速を実行することができる。
【0056】
また、請求項2の発明によれば、変速の進行の度合いあるいは蓄電装置の状態の少なくともいずれかに基づいて電動機の目標回転数の変化状態が制御されるため、変速の遅れや蓄電装置に過剰な負担が生じるなどの事態を未然に回避することができ、またパワーオフ変速を適正に実行することができる。
【0057】
さらに、請求項3の発明によれば、電動機が変速後の回転数である同期回転数になった後には出力部材における慣性トルクと同方向に慣性トルクが生じるように目標回転数が設定され、そのため係合装置が係合して変速が終了する際には、いわゆるガタが詰まった状態となっているので、いわゆるガタ打ち音やショックなどを防止することができる。
【0058】
そして、請求項4の発明によれば、蓄電装置の状態が、電動機の回転数制御を実行できる状態の場合に係合装置のトルク容量を低下させて電動機の回転数制御を実行する変速がおこなわれ、蓄電装置の電力で電動機の回転数制御をおこなえない場合には、係合装置のトルク容量を低下させて電動機を出力部材から切り離す状態を設定しないので、いずれの場合であっても変速を確実に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の制御装置による制御例を説明するための全体的なフローチャートである。
【図2】図1に示す制御をアップシフトに適用した場合のタイムチャートである。
【図3】この発明で対象とするハイブリッド駆動装置の一例を模式的に示すブロック図である。
【図4】そのハイブリッド駆動装置を更に具体的に示すスケルトン図である。
【図5】図4に示す各遊星歯車機構についての共線図である。
【符号の説明】
1…主動力源、 2…出力部材(出力軸)、 5…アシスト動力源(第2モータ・ジェネレータ)、 6…変速機、 10…エンジン、 11…第1モータ・ジェネレータ、 12…遊星歯車機構。
Claims (4)
- 主動力源の出力したトルクが伝達される出力部材に、回転数制御の可能な電動機が、係合装置の係合・解放状態を変更することによって変速を実行する変速機構を介して連結されているハイブリッド駆動装置の制御装置において、
前記電動機が前記出力部材に対してトルクを出力していない状態での前記変速機構による変速の際に、前記係合装置の伝達トルク容量を所定値以下に維持した状態で前記電動機をその回転数が変速後の同期回転数もしくは同期回転数に基づいて設定した目標回転数になるように制御する電動機回転数制御手段と、
前記電動機の回転数が変速後の同期回転数もしくは前記目標回転数に達した後に、変速後の変速状態を設定するための前記係合装置の伝達トルク容量を増大させる係合装置制御手段と
を備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置の制御装置。 - 前記電動機回転数制御手段は、前記変速中における前記電動機の目標回転数の変化の態様を、変速の進行の度合いと前記電動機に対して放電および/または充電する蓄電装置の状態との少なくともいずれか一方に基づいて変更する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。
- 前記電動機回転数制御手段が、前記変速中における前記電動機の回転数が前記同期回転数になった後の前記電動機の目標回転数として、前記出力部材における慣性トルクと同方向に前記電動機による慣性トルクが生じる回転数を設定し、その目標回転数となるように電動機を制御する手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。
- 前記変速の際に、前記電動機をその回転数が前記同期回転数となるように制御するか否かを、前記電動機に対して放電および/または充電する蓄電装置の状態に基づいて判定する制御実行判定手段を更に備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置の制御装置。
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