JP2004199725A - 情報記録媒体および情報記録媒体の製造方法 - Google Patents
情報記録媒体および情報記録媒体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】基板を備え、その基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し磁場の供給を受け情報を記録する情報記録媒体、およびそのような情報記録媒体の製造方法に関し、非磁性中間層の表面に微細な凹凸形状を形成しつつ、SNRをさらに向上することができる情報記録媒体、およびそのような情報記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】基板10上に形成された軟磁性層11と記録磁性層13との間に、軟磁性層11側から順に第1中間層121、第2中間層122、第3中間層123からなる非磁性中間層12を備え、第1中間層121が、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在したものである。
【選択図】 図2
【解決手段】基板10上に形成された軟磁性層11と記録磁性層13との間に、軟磁性層11側から順に第1中間層121、第2中間層122、第3中間層123からなる非磁性中間層12を備え、第1中間層121が、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在したものである。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板を備え、その基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し磁場の供給を受け情報を記録する情報記録媒体、およびそのような情報記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板上に、記録磁性層を備えた情報記録媒体に、情報を記録するには、情報記録媒体を所定方向に移動させながら、記録磁性層に、1ビットごと、各ビッドに応じた方向の磁場を供給し、記録磁性層を、供給された磁場に応じた方向に向けていく。
【0003】
このようにして情報が記録される情報記録媒体に備えられる記録磁性層として、従来より、基板面の面内方向に磁化容易軸を有するものと、基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有するものとの2種類が知られているが、近年の高密度記録の要求に応えるには、垂直方向に磁化容易軸を有する記録磁性層を用いた垂直記録方式が優位である。
【0004】
特許文献1には、垂直方向に磁化容易軸を有する記録磁性層を備えた情報記録媒体が記載されている。この情報記録媒体には、軟磁性層、非磁性中間層、および記録磁性層が基板側からこの記載順に設けられている。非磁性中間層は、軟磁性層と記録磁性層との交換結合力を断ち切るためのものであり、この特許文献1に記載された非磁性中間層の表面には、微細な凹凸形状が形成されている。この微細な凹凸形状に接して形成される記録磁性層では、微細な凹凸形状の周期にしたがってコラムが形成されることにより磁壁のピニングサイトが微細化し高分解能記録が可能になる。そのため、高密度記録を実現するには、非磁性中間層の表面に形成する凹凸形状をできる限り微細にすることが望まれる。そこで、本発明者らは、未公開特許出願において図1に示す情報記録媒体を提案している。
【0005】
図1は、4層構造の非磁性中間層を備えた情報記録媒体の膜構造を模式的に示す図である。
【0006】
図1に示す情報記録媒体9は、特許文献1に記載された情報記録媒体と同じく、軟磁性層91、非磁性中間層92、および記録磁性層93が基板90側からこの記載順に設けられ、さらに、記録磁性層93の上に保護層94が設けられている。これらの層のうち、図1に示す情報記録媒体9において特徴的なものは非磁性中間層92である。この非磁性中間層92は、誘電体層921、基点形成層922、凝集層923、および凹凸エンハンス層924からなる4層構造である。
この図1に示す情報記録媒体9では、非磁性中間層92の表面に凹凸形状を形成するにあたり、多層構造により凹凸形状を形成する。すなわち、まず、表面張力が低い誘電体層921を形成し、その誘電体層921の表面に、Crターゲットを用いたスパッタリングを行う。Crは誘電体層921よりも表面張力が高く、誘電体層921の表面には、表面張力の違いによりCr粒子が微細に分散される。図1に示す基点形成層922は微細に分散されたCr粒子の集まりである。続いて、基点形成層922の表面に、Ag等を表面拡散させる。こうすることにより、微細に分散されたCr粒子それぞれにAgが凝集し、Cr粒子の上にAgが吸いよせられた状態になり、凹凸形状が形成される。凝集層923はCr粒子の上に形成されたAgからなる層である。さらに、吸いよせられたAgの上に、原子半径の小さな原子から構成された材料をのせ、凹凸形状の高低差を増大させる。図1に示す凹凸エンハンス層924は、Agの上にのせられた材料の層である。
【0007】
このような図1に示す情報記録媒体9では、基点形成層922のCr粒子の径に基づいて凹凸形状の周期が決まる。Cr粒子は微小なものであるため、図1に示す情報記録媒体9は高密度記録を実現することができる。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−312815号公報
【未公開特許出願】
特願2002−17198号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図1に示す軟磁性層91は、基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有するものである。この情報記録媒体では、記録磁性層上に配備された磁気ヘッドによって磁場が供給されると、磁束は、記録磁性層を垂直方向に通った後、軟磁性層に吸収され軟磁性層によって面内方向に向けられ、再び記録磁性層を垂直方向に通って磁気ヘッドに戻り記録される。ここで、非磁性中間層が厚いと、磁束は、軟磁性層に吸収されにくくなり記録磁性層内で乱れ、記録したビットが乱れてしまう。また、この情報記録媒体の再生時には、記録磁性層の磁化方向に基づき再生信号が得られる。しかしながら、非磁性中間層が厚いと、軟磁性層との相互作用が弱くなり、再生信号の信号強度が弱まってしまう。非磁性中間層が厚いことによるこれら記録時や再生時の問題は、SNR(Signal to Noise Ratio)を低下させる。
【0010】
図1に示す情報記録媒体9では、従来の情報記録媒体に比べ非磁性中間層がかなり薄くなってはいるものの、その層構造は4層構造であるため、SNRのさらなる向上には限界がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、非磁性中間層の表面に微細な凹凸形状を形成しつつ、SNRをさらに向上することができる情報記録媒体、およびそのような情報記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明うちの情報記録媒体は、基板と、
上記基板上に形成された、その基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層と、
上記軟磁性層よりも上層に形成された、表面に微細凹凸形状を有する非磁性中間層と、
上記非磁性中間層上に形成された、上記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し、磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層とを備え、
上記非磁性中間層は、上記軟磁性層側から順に第1中間層、第2中間層、第3中間層からなり、
上記第1中間層は、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在したものであり、
上記第2中間層は、上記第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、その第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させたものであり、
上記第3中間層は、この非磁性中間層の表面を形成する層であって、上記第2中間層の主成分である材料の原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、上記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いてその第2中間層の上に積み上げられたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の情報記録媒体では、上記第1中間層表面の、貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方が、上記凹凸形状を形成するにあたっての凸部の基点になっている。すなわち、本発明の情報記録媒体によれば、上記凹凸形状の凸部の基点が上記第1中間層表面における物性の違いを利用して形成されており、上記第1中間層表面の、貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分はいずれも微小領域にすることができるため、上記凹凸形状は微細な周期になる。この微細な凹凸形状によって上記記録磁性層の分解能が向上し、本発明の情報記録媒体では、高密度記録を行うことができる。また、図1に示す情報記録媒体では、凹凸形状の凸部の基点が表面張力の違いを利用して形成されており、このため、表面張力の低い誘電体層を設ける必要があるが、本発明の情報記録媒体によれば、その基点が上記第1中間層表面における物性の違いを利用して形成されるため、誘電体層が不要になる。そのため、本発明の情報記録媒体に備えられた非磁性中間層は3層構造ですみ、本発明の情報記録媒体では、図1に示す非磁性中間層よりも非磁性中間層の厚みを薄くすることができる。
【0014】
上記目的を達成する本発明うちの情報記録媒体の製造方法は、基板上に、その基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、
上記軟磁性層よりも上層に、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在した第1中間層を形成する第1中間層形成工程と、上記第1中間層の表面に、その第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、その第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させた第2中間層を形成する第2中間層形成工程と、
上記第2中間層の表面に、この非磁性中間層の最表面を形成する層であって、上記第2中間層の主成分である原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、上記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いてその第2中間層の上に積み上げられた第3中間層を形成する第3中間層形成工程と、
上記第3中間層の表面に、上記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層を形成する記録磁性層形成工程とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の情報記録媒体の製造方法において、上記第1中間層形成工程が、ルテニウムターゲットとルテニウムを主成分とする合金ターゲットとのうちのいずれか一方をターゲットにし、不活性ガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中でスパッタリングすることにより第1中間層を形成する工程であることが好ましい。
【0016】
ルテニウムは、貴金属類の中でもイオン化エネルギーが小さく酸化されやすいため、不活性ガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中で行う反応性スパッタリングにより、RuOxを容易に作ることができる。また、このように反応性スパッタリングを行うことで、わざわざ酸素暴露工程を行わなくても良いため、工程数が削減される。
【0017】
さらに、本発明の情報記録媒体の製造方法において、第2中間層形成工程が、上記第1中間層形成工程が実施されたことにより形成された第1中間層を、上記第2中間層の拡散開始温度以上かつ上記第1中間層の拡散開始温度未満の温度にまで加熱してからその第1中間層の表面にその第2中間層を形成する工程であることも好ましい。
【0018】
こうすることにより、上記凝集材料の拡散を促進させることができ、上記第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分に、上記凝集材料が面内方向に広がらずに垂直方向に高く凝集する。
【0019】
またさらに、本発明の情報記録媒体の製造方法において、上記軟磁性層形成工程が、製膜時のガス圧を0.5Pa未満とし、ターゲットに所定の電圧を印加しつつ上記基板にもバイアス電圧を印加してスパッタリングすることにより軟磁性層を形成する工程であることも好ましい。
【0020】
上記軟磁性層表面を構成する粒子の大きさが不均一であると、上記第1中間層に形成される凸部の基点も不均一になり、ひいては上記凹凸形状も不均一な状態になってしまう。上記軟磁性層形成工程に、このように低圧ガスでBias印加に製膜行うことで、上記軟磁性層表面を形成する粒子の大きさが揃い、軟磁性層表面を平坦にすることができ、上記非磁性中間層表面に均一な凹凸形状を形成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
本発明の一実施形態である磁気ディスクは、ハードディスク装置(HDD)に装備される媒体である。
【0023】
図2は、本実施形態の磁気ディスクの層構造を模式的に示す図である。
【0024】
図2に示す磁気ディスク1は、軟磁性層11、非磁性中間層12、記録磁性層13および保護層14が、基板10側からこの記載順に積層されたものである。
図2に示す基板10は、円形のガラス基板であるが、Si基板やAl合金基板であってもよい。軟磁性層11は、基板10面に対して面内方向に磁化容易軸を有する。図2に示す軟磁性層11は、FeC膜であるが、これに限らず、Feを主成分とする、FeNi膜等のその他の膜や、Coを主成分とするCoZrNb膜等の膜や、Niを主成分とする膜であってもよい。
【0025】
非磁性中間層12は、軟磁性層11と記録磁性層13との交換結合力を断ち切るための層である。図2に示す磁気ディスク1においては、この非磁性中間層12が特徴的な層である。図2に示す非磁性中間層12は、軟磁性層11側から順に、貴金属酸化層121,非磁性中間層122,凹凸エンハンス層123からなる3層構造の層である。ここで、図3を用いて、この非磁性中間層12について詳述する。
【0026】
図3は、図2に示す非磁性中間層の一部分における各層を概念的に示した図である。
【0027】
図3に示す非磁性中間層12の一番下の層、すなわち、軟磁性層の表面に設けられた貴金属酸化層121は、表面に、酸化ルテニウム(RuOx)の物性を有する部分とルテニムの物性を有する部分とが混在した、厚さ0.4nmの層である。これらの各部分は、極めて微小なものであり、表面全域にわたって分散されている。ここで、酸化ルテニウムの物性を有する部分は、2価の酸化ルテニウム(RuO2)の物性を有する部分と4価の酸化ルテニウム(RuO4)の物性を有する部分・・・というように酸素原子の価数によって複数種類の部分に分類することができる。貴金属酸化層121は、本発明の情報記録媒体にいう第1中間層に相当する。
【0028】
貴金属酸化層121の表面に設けられた、非磁性中間層12の中間に位置する凝集層122は、貴金属酸化層121の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有する材料からなる、厚さ0.6nmの層である。貴金属酸化層121に凝集層122を積層する前に、貴金属酸化層121を、この材料の拡散開始温度まで加熱しておくことで、表面運動エネルギーが大きくなりこの材料の拡散や凝集を促進することができる。図3に示す凝集層122は、Agを主成分とする材料からなる層である。このAgを主成分とする材料は、貴金属酸化層121の表面の物性の違いにより凝集される材料であるが、その凝集の程度は各部分の物性によって異なる。すなわち、酸化ルテニウムの物性を有する部分とルテニウムの物性を有する部分とでは凝集の程度が異なり、さらに、酸化ルテニウムの物性を有する部分であっても、酸素原子の価数が異なれば物性も異なり凝集の程度も異なる。
貴金属酸化層121の表面に、このような凝集層122が形成されることで、表面には微細な凹凸形状が形成される。このように、図2に示す情報記録媒体1では、貴金属酸化層121の表面における物性の違いを利用して凹凸形状が形成されており、貴金属酸化層表面の、物性が異なる微小部分が、凹凸形状の凸部形成の基点になる。なお、凝集層122に用いられる材料は、Agを主成分とする材料に限らず、Al,Pt,Pd,Au,Cuの中から選択されたいずれかの元素を主成分とする材料であってもよく、これらの材料は、貴金属酸化層121の表面の、貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分のうちの少なくともいずれか一方に凝集するものであればよい。凝集層122は、本発明の情報記録媒体にいう第2中間層に相当する。
【0029】
非磁性中間層12の表面を形成する層は凹凸エンハンス層123である。この凹凸エンハンス層123は、凹凸形状の凹部になる空間Sを除いて、凝集層122の上に積み上げられた、厚さ1nmの層である。図3に示す凹凸エンハンス層123に用いられる材料は、Agの原子半径よりも小さな原子半径をもつCを主成分とする非結晶材料である。このため、この非結晶材料を凝集層122の上に積み上げるにあたっては、結晶粒子単位で積み上げられることはなく、結晶粒子の大きさに拘束されず、面内方向に広がらず垂直方向に高く積み上げられる。また、この非磁性材料は原子半径が小さなCを主成分とするものであるため、2次元化しにくい。凹凸エンハンス層123により、凝集層122によって形成された凹凸形状の高低差が増大する。なお、凹凸エンハンス層123は、Cを主成分とするものに限らず、Bを主成分とするものや,Pを主成分とするものであってもよい。凹凸エンハンス層123は、本発明の情報記録媒体にいう第3中間層に相当する。
【0030】
ここで、図2に戻って、記録磁性層13と保護層14について説明する。
【0031】
図2に示す記録磁性層13は、非磁性中間層12の凹凸エンハンス層123の表面に製膜された、膜厚が16nmのTbFeCo膜である。このTbFeCo膜は、基板10面に対して垂直方向に磁化容易軸を有する。この膜は、具体的な組成が、Tb17at%,Fe75at%,Co18at%であって、保磁力Hcが278.6kA/m、飽和磁化Msが0.44Tである。記録磁性層13には、非磁性中間層12の表面に設けられた微細な凹凸形状の周期にしたがって、コラムが形成される。このことにより記録磁性層の磁壁ピニングサイトが微細化する。図2に示す磁気ディスク1に情報を記録するには、この磁気ディスク1を所定方向に回転させながら、記録磁性層12側に配備された不図示の磁気ヘッドから、記録磁性層13に1ビットごと各ビットに応じた方向の磁場を供給し、記録する。この際、磁気ヘッドからの磁束は、記録磁性層13を垂直方向に通った後、軟磁性層11に吸収され軟磁性層11によって面内方向に向けられ、再び記録磁性層13を垂直方向に通って磁気ヘッドに戻る。なお、記録磁性層13は、TbFeCo膜に限らず、Pd膜とCo膜の多層膜や、FePt膜や、CoCrPt膜であってもよい。
【0032】
図2に示す保護層14は、記録磁性層13等を保護するためのC膜である。なお、保護層14は、C膜に限らず、AlN膜,Y−SiO2膜,あるいはSiN膜とC膜とを積層させた膜であってもよい。
【0033】
続いて、図2に示す磁気ディスク1の製造方法について説明する。
【0034】
図4は、図2に示す磁気ディスクを製造するにあたっての各工程を示したフローチャートである。
【0035】
図4に示すように、図2に示す磁気ディスク1を製造するにあたっては、軟磁性層形成工程51、貴金属酸化層形成工程52、凝集層形成工程53、凹凸エンハンス層形成工程54、記録磁性層形成工程55、および保護層形成工程56をこの記載順に実施することで製造する。
【0036】
軟磁性層形成工程51は、円形のガラス基板の表面に、軟磁性層であるFeC膜をスパッタリングによって製膜する。ここでは、スパッタレート(スパッタ効率)を高めるためFeCターゲットを用いず、FeターゲットとCターゲットを同時に放電させるコスパッタ法を用い、製膜時のガス圧を低ガス圧である0.16Paにしてスパッタリングする。この軟磁性層形成工程51では、膜厚が100nmのFeC膜を製膜する。コスパッタ法を実施するにあたっては、放電を開始してから膜厚が90nmになるまでは、ターゲット側に所定投入電力を加え基板側にはバイアス電圧を印加しない状態でコスパッタ法を実施し、膜厚が90nmを超えた時点から基板側にもバイアス電圧を印加する。すなわちFeC膜の表面形成時に、バイアス製膜を行う。このように、製膜時のガス圧を低ガス圧とし、さらに表面を形成する際にバイアス製膜を行うことで、FeC膜の表面を形成する粒子の大きさを揃えることができ、その表面を平坦にすることができる。
【0037】
貴金属酸化層形成工程52は、軟磁性層の表面に、貴金属酸化層であるRuOx層をスパッタリングによって形成する。ここでは、Ruターゲットをアルゴンガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中で放電させる反応性スパッタ法を用いる。
アルゴンガスと酸素ガスとの比率は5対1(アルゴンガス1.667×10-3L/s対して酸素ガス3.334×10-4L/s)である。なお、製膜時のガス圧は0.5Paである。Ruは、イオン化エネルギーが小さく酸化されやすいため、アルゴンガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中で行う反応性スパッタリングにより、RuOxを容易に作ることができる。
【0038】
凝集層形成工程53は、貴金属酸化層の表面に、凝集層であるAg層をスパッタリングによって形成する。ここではまず、貴金属酸化層であるRuOx層表面を200℃に加熱し、200℃に加熱されたRuOx層表面に、Agターゲットを用いてスパッタリングを行う。Agは、融点が低く、拡散開始温度も、RuOx層の拡散開始温度よりも低い。加熱温度の200℃は、Agの拡散開始温度以上の温度であるが、RuOx層の拡散開始温度よりは低い温度である。なお、製膜時のガスとしてはアルゴンガス(ガス圧0.5Pa)を用いる。
【0039】
凹凸エンハンス層形成工程54は、凝集層の表面に、凹凸エンハンス層であるC層をスパッタリングによって形成する。ここでのスパッタリングには、Cターゲットが用いられ、製膜時のガスとしてはアルゴンガス(ガス圧0.5Pa)が用いられる。C原子は、凝集層の主成分であるAgよりも原子半径が小さいため、凝集層で形成された微細凹凸の凸部に積み上げられる。
【0040】
記録磁性層形成工程55は、TbターゲットとFeCoターゲット(組成比;Fe90at%Co10at%)とを用いたコスパッタ法を用いて、凹凸エンハンス層の表面に、図2に示す記録磁性層13を製膜する。また、保護層形成工程56では、図2に示す保護層14をスパッタリング製膜する。
【0041】
次に、各種実験を行ったのでそれらの結果について説明する。まず、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施して得た本発明適用サンプルと、非磁性中間層のうちの貴金属酸化層の形成工程を変更し、その他は本発明適用サンプルと同様にして得た数点の比較サンプルとを用意した。そして、各サンプルについて、AFM(原子間力顕微鏡)を用いた粒子解析を行い、凹凸エンハンス層表面、すなわち非磁性中間層表面の表面粗さ(Ra)、凹凸形状の凸部先端から凹部の底までの高低差P−V(nm)、非磁性中間層表面を形成する粒子の平均粒子径(nm)、およびその表面を形成する粒子の粒径のバラツキ(σ)を求めた。なお、ここにいう表面粗さRaは、日本工業規格(通称JIS規格)の1994年に改正されたB0601中に規定されている中心線平均粗さである。すなわち、粗さ曲線(75%)からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦軸の方向をY軸とし、粗さ曲線(75%)をy=f(x)で表したときに、以下の式(1)で表される、単位をnmとする表面粗さである。
【0042】
【数1】
【0043】
以下の説明では、この式(1)によって表される表面粗さのことを、単に、表面粗さRaと称することにする。
【0044】
【表1】
【0045】
表1には、横一列ごと、各サンプルについて求められた値が示されている。一番上の列は、項目を示し、2番目の列は、本発明適用サンプルについて示す列である。膜構成の項目に記された、FeC100nm/RuOx1nm/Ag1nm/C1nmの表記は、軟磁性層/貴金属酸化層/凝集層/凹凸エンハンス層に対応し、100nmや1nmの記載は、左隣に記載された層を形成するにあたってのスパッタレートから算出された厚さである。(他のサンプルについても同様)。本発明適用サンプルにおいては、凝集層における凝集効果および凹凸エンハンス層による凹凸形状の高低差を増大させる効果によって、高低差P−Vは3.7nmになっている。また、本発明適用サンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は13〜18nmと小さく、そのバラツキも小さい。
【0046】
3番目の列は、貴金属酸化層の形成において、アルゴンガスに酸素ガスを混合させず、アルゴンガス単体の雰囲気中でスパッタリングを行った比較サンプルについて示す列である。この比較サンプルの、軟磁性層表面に形成された層の表面全域は、貴金属であるルテニウムの物性を有する。この比較サンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は23〜73nmと非常に大きく、そのバラツキも非常に大きい。
【0047】
また、4番目の列は、貴金属酸化層の形成において、Ruターゲットの代わりにRuO2ターゲットを用いてアルゴンガスの雰囲気中でスパッタリングを行った比較サンプルについて示す列である。この比較サンプルの、貴金属酸化層の表面全域は、2価の酸化ルテニウム(RuO2)の物性を有する。この比較サンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は19〜26nmと比較的小さく、そのバラツキもある程度は抑えられている。
【0048】
さらに、一番下の列は、貴金属酸化層の形成において、貴金属であるRuターゲットの代わりに卑金属であるCrターゲットを用いて反応性スパッタリングを行った比較サンプルについて示す列である。この比較サンプルの、軟磁性層表面に形成された層の表面には、クロムの物性を有する部分と、酸化クロム(CrOx)の物性を有する部分とが混在している。この比較サンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は25〜37nmと大きく、そのバラツキも大きい。
【0049】
各サンプルの非磁性中間層表面に設けられた凹凸形状については、表面粗さ(Ra)、高低差P−V(nm)、平均粒径(nm)、および粒子のバラツキ(σ)を総合して考察することが必要である。すなわち、表面粗さRaが大きいい場合や高低差P―Vが大きい場合には、凹凸形状の凸部と凹部の境がはっきりして良いようにも考えられるが、これらの場合であっても、粒子のバラツキが大きく、しかも平均粒径も大きければ、大きな粒子と小さな粒子とが混在することで表面粗さRaが大きくなっていたり、大きな粒子によって高低差P―Vが増大していると考えられる。こうしてみると、本発明適用サンプルでは、表面粗さRaや高低差P―Vが小さいものの、粒子のバラツキや平均粒径も小さいため、非磁性中間層の表面には、各比較サンプルに比べ、均一な周期で微細な凹凸形状が形成されていると判断することができる。
【0050】
続いて、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、これらの工程のうちの貴金属酸化層形成工程52におけるスパッタリングの、アルゴンガスの流量を1.667×10-3L/sに固定し、酸素ガスの流量を、0L/S,8.335×10-5L/S,1.667×10-4L/S,2.500×10-4L/S,3.334×10-4L/Sの5段階に変化させて実施し、5つのサンプルを作成した。
【0051】
図5は、非磁性中間層表面を形成する粒子の、酸素ガス量依存性を示すグラフである。
【0052】
図5に示すグラフの、横軸はアルゴンガスに混合する酸素ガスの流量(L/s)を示し、縦軸は2種類のパラメータを示す。2種類のパラメータのうちの1つは、図5の左側の縦軸に示す、非磁性中間層表面を形成する粒子の平均粒径(nm)であり、もう1つは、図5の右側の縦軸に示す、非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径のバラツキ(σ)である。図5中の、丸のプロットを結ぶ実線は、酸素ガスの流量と平均粒径との関係を示すものであり、四角のプロットを結ぶ実線は、酸素ガスの流量と粒径のバラツキとの関係を示すものである。図5に示すように、平均粒径および粒径のバラツキはいずれも、酸素ガスの流量が増加するにしたがい小さくなっている。このことから、アルゴンガスに混合する酸素ガスの流量を高めることで、貴金属酸化層表面の、ルテニウムの物性を有する部分や酸化ルテニウム(RuOx)の物性を有する部分を微細化することができ、非磁性中間層表面に、均一な周期で微細な凹凸形状を形成することができることがわかる。
【0053】
続いて、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、これらの工程のうちの凝集層形成工程53におけるAgターゲットの放電時間を変化させ、Ag膜厚が異なる凝集層を有するサンプルを複数作製した。
【0054】
図6は、非磁性中間層表面を形成する粒子の、Ag層の厚さ依存性を示すグラフである。
【0055】
図6に示すグラフの横軸は、凝集層であるAg層の厚み(nm)を示し、縦軸は、図5に示すグラフと同じく、平均粒径(nm)と粒径のバラツキ(σ)との2種類のパラメータを示す。図6中の、丸のプロットを結ぶ実線は、Ag層の厚さと平均粒径との関係を示すものであり、四角のプロットを結ぶ実線は、Ag層の厚さと粒径のバラツキとの関係を示すものである。
【0056】
ここでは、貴金属酸化層の厚さを1nmに統一し、合計5つのサンプルを作製した。これら5つのサンプルを作製するにあたっては、凝集層であるAg層の厚さを、0.2nmから1nmの間で0.2nmずつ変化させて作製した。これらのサンプルのうち、厚さ0.6nmのAg層を有するサンプルの、非磁性中間層表面を形成する粒子は、9nm〜13nmの粒径であり、5つのサンプルの中で最も小さい平均粒径である。また、粒子のバラツキも、厚さ0.4nmのAg層を有するサンプルに次いで低い。
【0057】
さらに、今度は、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、貴金属酸化層形成工程52におけるRuターゲットの放電時間を変化させ、RuOxの膜厚が異なる貴金属酸化層を有するサンプルを5つ作製した。
【0058】
図7は、非磁性中間層表面を形成する粒子の、貴金属酸化層の厚さ依存性を示すグラフである。
【0059】
図7に示すグラフの横軸は、貴金属酸化層であるRuOx層の厚み(nm)を示し、縦軸は、上述の2つのグラフと同じく、平均粒径(nm)と粒径のバラツキ(σ)との2種類のパラメータを示す。図7中の、丸のプロットを結ぶ実線は、貴金属酸化層の厚さと平均粒径との関係を示すものであり、四角のプロットを結ぶ実線は、貴金属酸化層の厚さと粒径のバラツキとの関係を示すものである。
【0060】
ここでは、図6に示す結果を受けて、凝集層の厚さを0.6nmに統一し、貴金属酸化層の厚さを、0.2nmから1nmの間で0.2nmずつ変化させて作製した。これらのサンプルのうち、厚さ0.4nmのRuOx層を有するサンプルの、非磁性中間層表面を形成する粒子は、一段と小さく4nm〜7nmの粒径であり、これら5つのサンプルに凝集層の厚さが異なる上述の5つのサンプルを合わせた中でも、最も小さい平均粒径である。また、粒子のバラツキも最も低い。
【0061】
図6のグラフおよび図7のグラフそれぞれに示す結果から、RuOx層の厚さとAg層の厚さを調整することで、非磁性中間層表面に、均一な周期で微細な凹凸形状を形成することができることがわかる。
【0062】
次に、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、凝集層形成工程53におけるRuOx層表面の加熱温度を変化させ6つのサンプルを用意し、これら6つのサンプルそれぞれについて粒子解析を行った。
【0063】
【表2】
【0064】
表2の一番上の列は項目を示し、2番目の列は、RuOx層に加熱を行わなかったサンプルについて求めた値を示す。このサンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は9〜18nmと大きく、そのバラツキも大きい。
【0065】
また、3番目の列から1番下までの列は、RuOx層表面の加熱温度が、50℃から250℃の間で50℃ずつ異なるサンプルそれぞれについて求めた値を示す。表2に示すように、加熱温度が200℃以下では、加熱温度を上げるにつれて、平均粒径および粒径のバラツキが小さくなっているが、加熱温度が250℃になると、平均粒径および粒径のバラツキが途端に大きくなる。このこのとから、Ag層を形成する凝集層形成工程53におけるRuOx層表面の加熱温度は200℃が好適であることがわかる。なお、この加熱温度は、凝集層に用いる材料の融点および拡散温度に依存するものである。
【0066】
また、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、軟磁性層形成工程51において実施するスパッタリングの、製膜時のアルゴンガスのガス圧を変化させ、4つのサンプルを作製した。ここでは、いずれのサンプルを作製する際にも、軟磁性層の表面形成時にバイアス製膜を行わなかった。ここで作製した4つのサンプルについても粒子解析を行った。
【0067】
【表3】
【0068】
表3の一番上の列は項目を示し、2番目の列から4番目の列までは、軟磁性層形成工程51におけるスパッタリングのアルゴンガスのガス圧が、1.5Paから0.5Paの間で0.5Paずつ異なるサンプルそれぞれについて求めた値を示す。また、1番下の列は、そのガス圧を0.16Paにしたときのサンプルについて求めた値を示す。表3に示すように、ガス圧が低下するにつれて、平均粒径および粒径のバラツキはいずれも小さくなっている。これは、製膜時のガス圧を低くすることで、ターゲットから叩き出された原子が、雰囲気中のアルゴンイオンに衝突しにくくなり、その原子が基板表面に均一に付着し、軟磁性層の表面が平坦に形成されることに起因している。すなわち、軟磁性層表面が凸凹に荒れていると、その荒れは貴金属酸化層に反映され、最終的には、凹凸エンハンス層の表面、すなわち非磁性中間層の表面の凹凸形状に影響を及ぼし、非磁性中間層の表面を形成する粒子の平均粒径および粒径のバラツキが大きくなるが、製膜時のガス圧を低くすることで、軟磁性層表面の荒れを抑えることができ、非磁性中間層表面に形成された凹凸形状は、均一な周期を有する微細なものとなる。なお、製膜時のガスの圧力を低くしすぎると放電が生じなくなるため、そのガスの圧力は、放電が生じるギリギリの圧力にすることが好ましい。
【0069】
さらに、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、軟磁性層形成工程51において軟磁性層の表面形成時に基板側へ印加するバイアス電圧の大きさを変化させて4つのサンプルを作製し、粒子解析を行った。なお、図4に示す軟磁性層形成工程51では、製膜時のガスの圧力は、0.16Paである。
【0070】
【表4】
【0071】
表4の一番上の列は項目を示し、2番目の列から一番下の列までは、軟磁性層形成工程51において基板側へ印加するバイアス電圧の大きさが、−100Vから−250Vの間で50Vずつ異なるサンプルそれぞれについて求めた値を示す。表4に示すように、バイアス電圧の大きさを変化させても、非磁性中間層表面を形成する粒子の平均粒子径、および凹凸形状の凸部先端から凹部の底までの高低差P−Vの双方についてはさほど変化はないが、バイアス電圧の大きさが−200Vのときに、非磁性中間層の表面粗さ(Ra)、および粒径のバラツキ(σ)は最小値になっている。また、表3に示す、バイアス電圧を印加せず製膜ガス圧を0.16Paにしたときの結果と比べると、バイアス電圧を印加したときの方が、粒径のバラツキ(σ)が抑えられており、−200Vの大きさのバイアス電圧を印加すると、表面粗さ(Ra)についても改善が見られる。基板側にバイアス電圧を印加することで軟磁性層表面が平坦化され、非磁性中間層表面に形成された凹凸形状が、より均一な周期を有するものとなる。したがって、軟磁性層を形成するにあたっては、製膜時のガス圧を低ガス圧とし、表面を形成する際にバイアスを印加することが好ましい。
【0072】
またさらに、図2に示す媒体構成の磁気ディスクと、図1に示す媒体構成の磁気ディスクを作製し、記録再生特性について比較したので、その結果を説明する。
【0073】
図2に示す媒体構成の磁気ディスクの作製にあたっては、まず、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを順次実施することで、非磁性中間層まで作製した。一方、図1に示す媒体構成の磁気ディスクは、図4に示す軟磁性層形成工程51と同様な工程で、ガラス基板上に膜厚100nmの軟磁性層を形成した。続いて、その軟磁性層の表面に誘電体層を形成した。この誘電体層は、膜厚0.5nmのSiN膜であり、アルゴンガスにチッソガスを混合した雰囲気中でSiターゲットを放電させることで形成した。次に、誘電体層であるSiN膜の表面を酸素による暴露を行い、その後200℃に加熱し、厚さ0.5nmの基点形成層を積層させた。基点形成層は、アルゴンガスの雰囲気中でCrターゲットを放電させることで得た。基点形成層の表面には、Agターゲットを用いて、スパッタリングにより厚さ1nmの凝集層を形成し、その凝集層の表面には、Cターゲットを用いて、スパッタリングにより厚さ1nmの凹凸エンハンス層を形成した。図1に示す媒体構成の磁気ディスクでは、誘電体層、基点形成層、凝集層、および凹凸エンハンス層からなる4層が非磁性中間層に相当する。
【0074】
ここでも、両者の非磁性中間層表面について粒子解析を行った。
【0075】
【表5】
【0076】
表5の一番上の列は項目を示す。また、2番目の列は、図1に示す媒体構成の磁気ディスクの非磁性中間層表面について求めた値を示し、一番の下の列は、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの非磁性中間層表面について求めた値を示す。
両者を比較すると、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの非磁性中間層表面に形成された凹凸形状の方が、図1に示す媒体構成の磁気ディスクのそれよりも、均一な周期を有する微細なものであることがわかる。
【0077】
次に、それぞれの非磁性中間層表面に、図4に示す記録磁性層形成工程55を実施することで記録磁性層を形成し、さらに、それぞれの記録磁性層表面に、図4に示す保護層形成工程56を実施することで保護層を形成し、非磁性中間層が異なる2つの磁気ディスク、すなわち図2に示す媒体構成の磁気ディスクと図1に示す媒体構成の磁気ディスクを完成させた。
【0078】
続いて、これら2つの磁気ディスクの双方に、線記録密度を変えて情報を記録し、再生することで、各線記録密度での再生信号の大きさと媒体ノイズの大きさとの比を表すSNR(Signal to Noise Ratio)を得た。
【0079】
図8は、図2に示す媒体構成の磁気ディスクと図1に示す媒体構成の磁気ディスクそれぞれにおける、SNRの線記録密度依存性を示すグラフである。
【0080】
図8に示すグラフの横軸は、記録時の線記録密度(1インチ当たりの磁化反転数)を表し、その単位はkFCI(Flux Change per Inch)である。また、このグラフの縦軸はSNR(単位;dB)を表す。図8中の、丸のプロットを結ぶ実線は、図2に示す媒体構成の磁気ディスクにおけるSNRの線記録密度依存性を示すものであり、三角のプロットを結ぶ実線は、図1に示す媒体構成の磁気ディスクにおけるSNRの線記録密度依存性を示すものである。図8に示すグラフより、同じ線記録密度で記録したならば、図2に示す媒体構成の磁気ディスクと図1に示す媒体構成の磁気ディスクとでは、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの方が良好な再生を行うことができることがわかる。
【0081】
さらに、横軸を線記録密度(kFCI)にし、縦軸を再生信号の大きさにしたグラフより、再生信号の大きさが、飽和レベル(最大振幅)の1/2に低下したときの線記録密度(D50)を得た。このD50は、記録分解能を示すパラメータであり、この数値が大きいほど分解能が高く、記録密度が高いことを意味する。
【0082】
【表6】
【0083】
表6の一番上の列には項目が示されている。この表6における項目は、図8のグラフから読みとった、線記録密度が210kFCIであるときのSNRの値(dB)と、上述のD50の値(kFCI)の2項目である。2番目の列には、図1に示す媒体構成の磁気ディスクについての値が示されており、一番の下の列には、図2に示す媒体構成の磁気ディスクについての値が示されている。両デクィスクを比較すると、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの方が、図1に示す媒体構成の磁気ディスクよりも、210kFCIの線記録密度におけるSNRが3.2dB向上し、D50も43kFCI向上している。
【0084】
図1に示す媒体構成の磁気ディスクでは、非磁性中間層表面に凹凸形状を形成するにあたり、誘電体層と基点形成層との表面張力の違いを利用して凹凸形状の凸部形成の基点を設けている。このため、誘電体層が必要になり、非磁性中間層は4層構造になっている。一方、図2に示す媒体構成の磁気ディスクでは、凹凸形状の凸部形成の基点は、貴金属酸化層表面における物性の違いを利用して形成されているため、誘電体層が不要になり、非磁性中間層は3層構造ですむ。したがって、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの方が、図1に示す媒体構成の磁気ディスクよりも、軟磁性層と記録磁性層との距離が短くなる。すなわち、本実施形態の磁気ディスクによれば、磁気ヘッドと軟磁性層の距離が短くなるので、記録磁界の磁界分布が急峻になり、エッジが乱れることなく記録することで媒体ノイズを低減でき、SNRが向上する。また、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの非磁性中間層表面に形成された凹凸形状のほうが、図1に示す媒体構成の磁気ディスクのそれよりも、均一な周期を有する微細なものであるため(表5参照)、図2に示す媒体構成の磁気ディスクのほうが、図1に示す媒体構成の磁気ディスクよりも、記録分解能を示すパラメータであるD50の値が向上する。
【0085】
以下、本発明の各種態様を付記する。
【0086】
(付記1) 基板と、
前記基板上に形成された、該基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層と、
前記軟磁性層よりも上層に形成された、表面に微細凹凸形状を有する非磁性中間層と、
前記非磁性中間層上に形成された、前記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し、磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層とを備え、
前記非磁性中間層は、前記軟磁性層側から順に第1中間層、第2中間層、第3中間層からなり、
前記第1中間層は、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在したものであり、
前記第2中間層は、前記第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、該第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させたものであり、
前記第3中間層は、この非磁性中間層の表面を形成する層であって、前記第2中間層の主成分である材料の原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、前記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いて該第2中間層の上に積み上げられたものであることを特徴とする情報記録媒体。
【0087】
(付記2) 前記第1中間層が、厚さ1nm以下の層であることを特徴とする付記1記載の情報記録媒体。
【0088】
(付記3) 前記非磁性中間層が、厚さ3nm未満の層であることを特徴とする付記1記載の情報記録媒体。
【0089】
(付記4) 基板上に、該基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、
前記軟磁性層よりも上層に、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在した第1中間層を形成する第1中間層形成工程と、前記第1中間層の表面に、該第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、該第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させた第2中間層を形成する第2中間層形成工程と、
前記第2中間層の表面に、この非磁性中間層の最表面を形成する層であって、前記第2中間層の主成分である原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、前記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いて該第2中間層の上に積み上げられた第3中間層を形成する第3中間層形成工程と、
前記第3中間層の表面に、前記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層を形成する記録磁性層形成工程とを有することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
【0090】
(付記5) 前記第1中間層形成工程が、ルテニウムターゲットとルテニウムを主成分とする合金ターゲットとのうちのいずれか一方をターゲットにし、不活性ガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中でスパッタリングすることにより第1中間層を形成する工程であることを特徴とする付記4記載の情報記録媒体の製造方法。
【0091】
(付記6) 第2中間層形成工程が、前記第1中間層形成工程が実施されたことにより形成された第1中間層を、前記第2中間層の拡散開始温度以上かつ前記第1中間層の拡散開始温度未満の温度にまで加熱してから該第1中間層の表面に該第2中間層を形成する工程であることを特徴とする付記4記載の情報記録媒体の製造方法。
【0092】
(付記7) 前記軟磁性層形成工程が、製膜時のガス圧を0.5Pa未満とし、ターゲットに所定の電圧を印加しつつ前記基板にもバイアス電圧を印加してスパッタリングすることにより軟磁性層を形成する工程であることを特徴とする付記4記載の情報記録媒体の製造方法。
【0093】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、非磁性中間層の表面に微細な凹凸形状を形成しつつ、SNRをさらに向上することができる情報記録媒体、およびそのような情報記録媒体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】4層構造の非磁性中間層を備えた情報記録媒体の層構造を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態の磁気ディスクの層構造を模式的に示す図である。
【図3】図2に示す非磁性中間層の一部分における各層を概念的に示した図である。
【図4】図2に示す媒体構成の磁気ディスクを製造するにあたっての各工程を示したフローチャートである。
【図5】非磁性中間層表面を形成する粒子の、酸素ガス量依存性を示すグラフである。
【図6】非磁性中間層表面を形成する粒子の、Ag層の厚さ依存性を示すグラフである。
【図7】非磁性中間層表面を形成する粒子の、貴金属酸化層の厚さ依存性を示すグラフである。
【図8】図2に示す媒体構成の磁気ディスクと図1に示す媒体構成の磁気ディスクそれぞれにおける、SNRの線記録密度依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 磁気ディスク
10 基板
11 軟磁性層
12 非磁性中間層
121 貴金属酸化層
122 非磁性中間層
123 凹凸エンハンス層
13 記録磁性層
14 保護層
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板を備え、その基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し磁場の供給を受け情報を記録する情報記録媒体、およびそのような情報記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板上に、記録磁性層を備えた情報記録媒体に、情報を記録するには、情報記録媒体を所定方向に移動させながら、記録磁性層に、1ビットごと、各ビッドに応じた方向の磁場を供給し、記録磁性層を、供給された磁場に応じた方向に向けていく。
【0003】
このようにして情報が記録される情報記録媒体に備えられる記録磁性層として、従来より、基板面の面内方向に磁化容易軸を有するものと、基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有するものとの2種類が知られているが、近年の高密度記録の要求に応えるには、垂直方向に磁化容易軸を有する記録磁性層を用いた垂直記録方式が優位である。
【0004】
特許文献1には、垂直方向に磁化容易軸を有する記録磁性層を備えた情報記録媒体が記載されている。この情報記録媒体には、軟磁性層、非磁性中間層、および記録磁性層が基板側からこの記載順に設けられている。非磁性中間層は、軟磁性層と記録磁性層との交換結合力を断ち切るためのものであり、この特許文献1に記載された非磁性中間層の表面には、微細な凹凸形状が形成されている。この微細な凹凸形状に接して形成される記録磁性層では、微細な凹凸形状の周期にしたがってコラムが形成されることにより磁壁のピニングサイトが微細化し高分解能記録が可能になる。そのため、高密度記録を実現するには、非磁性中間層の表面に形成する凹凸形状をできる限り微細にすることが望まれる。そこで、本発明者らは、未公開特許出願において図1に示す情報記録媒体を提案している。
【0005】
図1は、4層構造の非磁性中間層を備えた情報記録媒体の膜構造を模式的に示す図である。
【0006】
図1に示す情報記録媒体9は、特許文献1に記載された情報記録媒体と同じく、軟磁性層91、非磁性中間層92、および記録磁性層93が基板90側からこの記載順に設けられ、さらに、記録磁性層93の上に保護層94が設けられている。これらの層のうち、図1に示す情報記録媒体9において特徴的なものは非磁性中間層92である。この非磁性中間層92は、誘電体層921、基点形成層922、凝集層923、および凹凸エンハンス層924からなる4層構造である。
この図1に示す情報記録媒体9では、非磁性中間層92の表面に凹凸形状を形成するにあたり、多層構造により凹凸形状を形成する。すなわち、まず、表面張力が低い誘電体層921を形成し、その誘電体層921の表面に、Crターゲットを用いたスパッタリングを行う。Crは誘電体層921よりも表面張力が高く、誘電体層921の表面には、表面張力の違いによりCr粒子が微細に分散される。図1に示す基点形成層922は微細に分散されたCr粒子の集まりである。続いて、基点形成層922の表面に、Ag等を表面拡散させる。こうすることにより、微細に分散されたCr粒子それぞれにAgが凝集し、Cr粒子の上にAgが吸いよせられた状態になり、凹凸形状が形成される。凝集層923はCr粒子の上に形成されたAgからなる層である。さらに、吸いよせられたAgの上に、原子半径の小さな原子から構成された材料をのせ、凹凸形状の高低差を増大させる。図1に示す凹凸エンハンス層924は、Agの上にのせられた材料の層である。
【0007】
このような図1に示す情報記録媒体9では、基点形成層922のCr粒子の径に基づいて凹凸形状の周期が決まる。Cr粒子は微小なものであるため、図1に示す情報記録媒体9は高密度記録を実現することができる。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−312815号公報
【未公開特許出願】
特願2002−17198号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図1に示す軟磁性層91は、基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有するものである。この情報記録媒体では、記録磁性層上に配備された磁気ヘッドによって磁場が供給されると、磁束は、記録磁性層を垂直方向に通った後、軟磁性層に吸収され軟磁性層によって面内方向に向けられ、再び記録磁性層を垂直方向に通って磁気ヘッドに戻り記録される。ここで、非磁性中間層が厚いと、磁束は、軟磁性層に吸収されにくくなり記録磁性層内で乱れ、記録したビットが乱れてしまう。また、この情報記録媒体の再生時には、記録磁性層の磁化方向に基づき再生信号が得られる。しかしながら、非磁性中間層が厚いと、軟磁性層との相互作用が弱くなり、再生信号の信号強度が弱まってしまう。非磁性中間層が厚いことによるこれら記録時や再生時の問題は、SNR(Signal to Noise Ratio)を低下させる。
【0010】
図1に示す情報記録媒体9では、従来の情報記録媒体に比べ非磁性中間層がかなり薄くなってはいるものの、その層構造は4層構造であるため、SNRのさらなる向上には限界がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、非磁性中間層の表面に微細な凹凸形状を形成しつつ、SNRをさらに向上することができる情報記録媒体、およびそのような情報記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明うちの情報記録媒体は、基板と、
上記基板上に形成された、その基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層と、
上記軟磁性層よりも上層に形成された、表面に微細凹凸形状を有する非磁性中間層と、
上記非磁性中間層上に形成された、上記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し、磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層とを備え、
上記非磁性中間層は、上記軟磁性層側から順に第1中間層、第2中間層、第3中間層からなり、
上記第1中間層は、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在したものであり、
上記第2中間層は、上記第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、その第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させたものであり、
上記第3中間層は、この非磁性中間層の表面を形成する層であって、上記第2中間層の主成分である材料の原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、上記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いてその第2中間層の上に積み上げられたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の情報記録媒体では、上記第1中間層表面の、貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方が、上記凹凸形状を形成するにあたっての凸部の基点になっている。すなわち、本発明の情報記録媒体によれば、上記凹凸形状の凸部の基点が上記第1中間層表面における物性の違いを利用して形成されており、上記第1中間層表面の、貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分はいずれも微小領域にすることができるため、上記凹凸形状は微細な周期になる。この微細な凹凸形状によって上記記録磁性層の分解能が向上し、本発明の情報記録媒体では、高密度記録を行うことができる。また、図1に示す情報記録媒体では、凹凸形状の凸部の基点が表面張力の違いを利用して形成されており、このため、表面張力の低い誘電体層を設ける必要があるが、本発明の情報記録媒体によれば、その基点が上記第1中間層表面における物性の違いを利用して形成されるため、誘電体層が不要になる。そのため、本発明の情報記録媒体に備えられた非磁性中間層は3層構造ですみ、本発明の情報記録媒体では、図1に示す非磁性中間層よりも非磁性中間層の厚みを薄くすることができる。
【0014】
上記目的を達成する本発明うちの情報記録媒体の製造方法は、基板上に、その基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、
上記軟磁性層よりも上層に、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在した第1中間層を形成する第1中間層形成工程と、上記第1中間層の表面に、その第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、その第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させた第2中間層を形成する第2中間層形成工程と、
上記第2中間層の表面に、この非磁性中間層の最表面を形成する層であって、上記第2中間層の主成分である原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、上記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いてその第2中間層の上に積み上げられた第3中間層を形成する第3中間層形成工程と、
上記第3中間層の表面に、上記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層を形成する記録磁性層形成工程とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の情報記録媒体の製造方法において、上記第1中間層形成工程が、ルテニウムターゲットとルテニウムを主成分とする合金ターゲットとのうちのいずれか一方をターゲットにし、不活性ガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中でスパッタリングすることにより第1中間層を形成する工程であることが好ましい。
【0016】
ルテニウムは、貴金属類の中でもイオン化エネルギーが小さく酸化されやすいため、不活性ガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中で行う反応性スパッタリングにより、RuOxを容易に作ることができる。また、このように反応性スパッタリングを行うことで、わざわざ酸素暴露工程を行わなくても良いため、工程数が削減される。
【0017】
さらに、本発明の情報記録媒体の製造方法において、第2中間層形成工程が、上記第1中間層形成工程が実施されたことにより形成された第1中間層を、上記第2中間層の拡散開始温度以上かつ上記第1中間層の拡散開始温度未満の温度にまで加熱してからその第1中間層の表面にその第2中間層を形成する工程であることも好ましい。
【0018】
こうすることにより、上記凝集材料の拡散を促進させることができ、上記第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分に、上記凝集材料が面内方向に広がらずに垂直方向に高く凝集する。
【0019】
またさらに、本発明の情報記録媒体の製造方法において、上記軟磁性層形成工程が、製膜時のガス圧を0.5Pa未満とし、ターゲットに所定の電圧を印加しつつ上記基板にもバイアス電圧を印加してスパッタリングすることにより軟磁性層を形成する工程であることも好ましい。
【0020】
上記軟磁性層表面を構成する粒子の大きさが不均一であると、上記第1中間層に形成される凸部の基点も不均一になり、ひいては上記凹凸形状も不均一な状態になってしまう。上記軟磁性層形成工程に、このように低圧ガスでBias印加に製膜行うことで、上記軟磁性層表面を形成する粒子の大きさが揃い、軟磁性層表面を平坦にすることができ、上記非磁性中間層表面に均一な凹凸形状を形成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
本発明の一実施形態である磁気ディスクは、ハードディスク装置(HDD)に装備される媒体である。
【0023】
図2は、本実施形態の磁気ディスクの層構造を模式的に示す図である。
【0024】
図2に示す磁気ディスク1は、軟磁性層11、非磁性中間層12、記録磁性層13および保護層14が、基板10側からこの記載順に積層されたものである。
図2に示す基板10は、円形のガラス基板であるが、Si基板やAl合金基板であってもよい。軟磁性層11は、基板10面に対して面内方向に磁化容易軸を有する。図2に示す軟磁性層11は、FeC膜であるが、これに限らず、Feを主成分とする、FeNi膜等のその他の膜や、Coを主成分とするCoZrNb膜等の膜や、Niを主成分とする膜であってもよい。
【0025】
非磁性中間層12は、軟磁性層11と記録磁性層13との交換結合力を断ち切るための層である。図2に示す磁気ディスク1においては、この非磁性中間層12が特徴的な層である。図2に示す非磁性中間層12は、軟磁性層11側から順に、貴金属酸化層121,非磁性中間層122,凹凸エンハンス層123からなる3層構造の層である。ここで、図3を用いて、この非磁性中間層12について詳述する。
【0026】
図3は、図2に示す非磁性中間層の一部分における各層を概念的に示した図である。
【0027】
図3に示す非磁性中間層12の一番下の層、すなわち、軟磁性層の表面に設けられた貴金属酸化層121は、表面に、酸化ルテニウム(RuOx)の物性を有する部分とルテニムの物性を有する部分とが混在した、厚さ0.4nmの層である。これらの各部分は、極めて微小なものであり、表面全域にわたって分散されている。ここで、酸化ルテニウムの物性を有する部分は、2価の酸化ルテニウム(RuO2)の物性を有する部分と4価の酸化ルテニウム(RuO4)の物性を有する部分・・・というように酸素原子の価数によって複数種類の部分に分類することができる。貴金属酸化層121は、本発明の情報記録媒体にいう第1中間層に相当する。
【0028】
貴金属酸化層121の表面に設けられた、非磁性中間層12の中間に位置する凝集層122は、貴金属酸化層121の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有する材料からなる、厚さ0.6nmの層である。貴金属酸化層121に凝集層122を積層する前に、貴金属酸化層121を、この材料の拡散開始温度まで加熱しておくことで、表面運動エネルギーが大きくなりこの材料の拡散や凝集を促進することができる。図3に示す凝集層122は、Agを主成分とする材料からなる層である。このAgを主成分とする材料は、貴金属酸化層121の表面の物性の違いにより凝集される材料であるが、その凝集の程度は各部分の物性によって異なる。すなわち、酸化ルテニウムの物性を有する部分とルテニウムの物性を有する部分とでは凝集の程度が異なり、さらに、酸化ルテニウムの物性を有する部分であっても、酸素原子の価数が異なれば物性も異なり凝集の程度も異なる。
貴金属酸化層121の表面に、このような凝集層122が形成されることで、表面には微細な凹凸形状が形成される。このように、図2に示す情報記録媒体1では、貴金属酸化層121の表面における物性の違いを利用して凹凸形状が形成されており、貴金属酸化層表面の、物性が異なる微小部分が、凹凸形状の凸部形成の基点になる。なお、凝集層122に用いられる材料は、Agを主成分とする材料に限らず、Al,Pt,Pd,Au,Cuの中から選択されたいずれかの元素を主成分とする材料であってもよく、これらの材料は、貴金属酸化層121の表面の、貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分のうちの少なくともいずれか一方に凝集するものであればよい。凝集層122は、本発明の情報記録媒体にいう第2中間層に相当する。
【0029】
非磁性中間層12の表面を形成する層は凹凸エンハンス層123である。この凹凸エンハンス層123は、凹凸形状の凹部になる空間Sを除いて、凝集層122の上に積み上げられた、厚さ1nmの層である。図3に示す凹凸エンハンス層123に用いられる材料は、Agの原子半径よりも小さな原子半径をもつCを主成分とする非結晶材料である。このため、この非結晶材料を凝集層122の上に積み上げるにあたっては、結晶粒子単位で積み上げられることはなく、結晶粒子の大きさに拘束されず、面内方向に広がらず垂直方向に高く積み上げられる。また、この非磁性材料は原子半径が小さなCを主成分とするものであるため、2次元化しにくい。凹凸エンハンス層123により、凝集層122によって形成された凹凸形状の高低差が増大する。なお、凹凸エンハンス層123は、Cを主成分とするものに限らず、Bを主成分とするものや,Pを主成分とするものであってもよい。凹凸エンハンス層123は、本発明の情報記録媒体にいう第3中間層に相当する。
【0030】
ここで、図2に戻って、記録磁性層13と保護層14について説明する。
【0031】
図2に示す記録磁性層13は、非磁性中間層12の凹凸エンハンス層123の表面に製膜された、膜厚が16nmのTbFeCo膜である。このTbFeCo膜は、基板10面に対して垂直方向に磁化容易軸を有する。この膜は、具体的な組成が、Tb17at%,Fe75at%,Co18at%であって、保磁力Hcが278.6kA/m、飽和磁化Msが0.44Tである。記録磁性層13には、非磁性中間層12の表面に設けられた微細な凹凸形状の周期にしたがって、コラムが形成される。このことにより記録磁性層の磁壁ピニングサイトが微細化する。図2に示す磁気ディスク1に情報を記録するには、この磁気ディスク1を所定方向に回転させながら、記録磁性層12側に配備された不図示の磁気ヘッドから、記録磁性層13に1ビットごと各ビットに応じた方向の磁場を供給し、記録する。この際、磁気ヘッドからの磁束は、記録磁性層13を垂直方向に通った後、軟磁性層11に吸収され軟磁性層11によって面内方向に向けられ、再び記録磁性層13を垂直方向に通って磁気ヘッドに戻る。なお、記録磁性層13は、TbFeCo膜に限らず、Pd膜とCo膜の多層膜や、FePt膜や、CoCrPt膜であってもよい。
【0032】
図2に示す保護層14は、記録磁性層13等を保護するためのC膜である。なお、保護層14は、C膜に限らず、AlN膜,Y−SiO2膜,あるいはSiN膜とC膜とを積層させた膜であってもよい。
【0033】
続いて、図2に示す磁気ディスク1の製造方法について説明する。
【0034】
図4は、図2に示す磁気ディスクを製造するにあたっての各工程を示したフローチャートである。
【0035】
図4に示すように、図2に示す磁気ディスク1を製造するにあたっては、軟磁性層形成工程51、貴金属酸化層形成工程52、凝集層形成工程53、凹凸エンハンス層形成工程54、記録磁性層形成工程55、および保護層形成工程56をこの記載順に実施することで製造する。
【0036】
軟磁性層形成工程51は、円形のガラス基板の表面に、軟磁性層であるFeC膜をスパッタリングによって製膜する。ここでは、スパッタレート(スパッタ効率)を高めるためFeCターゲットを用いず、FeターゲットとCターゲットを同時に放電させるコスパッタ法を用い、製膜時のガス圧を低ガス圧である0.16Paにしてスパッタリングする。この軟磁性層形成工程51では、膜厚が100nmのFeC膜を製膜する。コスパッタ法を実施するにあたっては、放電を開始してから膜厚が90nmになるまでは、ターゲット側に所定投入電力を加え基板側にはバイアス電圧を印加しない状態でコスパッタ法を実施し、膜厚が90nmを超えた時点から基板側にもバイアス電圧を印加する。すなわちFeC膜の表面形成時に、バイアス製膜を行う。このように、製膜時のガス圧を低ガス圧とし、さらに表面を形成する際にバイアス製膜を行うことで、FeC膜の表面を形成する粒子の大きさを揃えることができ、その表面を平坦にすることができる。
【0037】
貴金属酸化層形成工程52は、軟磁性層の表面に、貴金属酸化層であるRuOx層をスパッタリングによって形成する。ここでは、Ruターゲットをアルゴンガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中で放電させる反応性スパッタ法を用いる。
アルゴンガスと酸素ガスとの比率は5対1(アルゴンガス1.667×10-3L/s対して酸素ガス3.334×10-4L/s)である。なお、製膜時のガス圧は0.5Paである。Ruは、イオン化エネルギーが小さく酸化されやすいため、アルゴンガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中で行う反応性スパッタリングにより、RuOxを容易に作ることができる。
【0038】
凝集層形成工程53は、貴金属酸化層の表面に、凝集層であるAg層をスパッタリングによって形成する。ここではまず、貴金属酸化層であるRuOx層表面を200℃に加熱し、200℃に加熱されたRuOx層表面に、Agターゲットを用いてスパッタリングを行う。Agは、融点が低く、拡散開始温度も、RuOx層の拡散開始温度よりも低い。加熱温度の200℃は、Agの拡散開始温度以上の温度であるが、RuOx層の拡散開始温度よりは低い温度である。なお、製膜時のガスとしてはアルゴンガス(ガス圧0.5Pa)を用いる。
【0039】
凹凸エンハンス層形成工程54は、凝集層の表面に、凹凸エンハンス層であるC層をスパッタリングによって形成する。ここでのスパッタリングには、Cターゲットが用いられ、製膜時のガスとしてはアルゴンガス(ガス圧0.5Pa)が用いられる。C原子は、凝集層の主成分であるAgよりも原子半径が小さいため、凝集層で形成された微細凹凸の凸部に積み上げられる。
【0040】
記録磁性層形成工程55は、TbターゲットとFeCoターゲット(組成比;Fe90at%Co10at%)とを用いたコスパッタ法を用いて、凹凸エンハンス層の表面に、図2に示す記録磁性層13を製膜する。また、保護層形成工程56では、図2に示す保護層14をスパッタリング製膜する。
【0041】
次に、各種実験を行ったのでそれらの結果について説明する。まず、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施して得た本発明適用サンプルと、非磁性中間層のうちの貴金属酸化層の形成工程を変更し、その他は本発明適用サンプルと同様にして得た数点の比較サンプルとを用意した。そして、各サンプルについて、AFM(原子間力顕微鏡)を用いた粒子解析を行い、凹凸エンハンス層表面、すなわち非磁性中間層表面の表面粗さ(Ra)、凹凸形状の凸部先端から凹部の底までの高低差P−V(nm)、非磁性中間層表面を形成する粒子の平均粒子径(nm)、およびその表面を形成する粒子の粒径のバラツキ(σ)を求めた。なお、ここにいう表面粗さRaは、日本工業規格(通称JIS規格)の1994年に改正されたB0601中に規定されている中心線平均粗さである。すなわち、粗さ曲線(75%)からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦軸の方向をY軸とし、粗さ曲線(75%)をy=f(x)で表したときに、以下の式(1)で表される、単位をnmとする表面粗さである。
【0042】
【数1】
【0043】
以下の説明では、この式(1)によって表される表面粗さのことを、単に、表面粗さRaと称することにする。
【0044】
【表1】
【0045】
表1には、横一列ごと、各サンプルについて求められた値が示されている。一番上の列は、項目を示し、2番目の列は、本発明適用サンプルについて示す列である。膜構成の項目に記された、FeC100nm/RuOx1nm/Ag1nm/C1nmの表記は、軟磁性層/貴金属酸化層/凝集層/凹凸エンハンス層に対応し、100nmや1nmの記載は、左隣に記載された層を形成するにあたってのスパッタレートから算出された厚さである。(他のサンプルについても同様)。本発明適用サンプルにおいては、凝集層における凝集効果および凹凸エンハンス層による凹凸形状の高低差を増大させる効果によって、高低差P−Vは3.7nmになっている。また、本発明適用サンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は13〜18nmと小さく、そのバラツキも小さい。
【0046】
3番目の列は、貴金属酸化層の形成において、アルゴンガスに酸素ガスを混合させず、アルゴンガス単体の雰囲気中でスパッタリングを行った比較サンプルについて示す列である。この比較サンプルの、軟磁性層表面に形成された層の表面全域は、貴金属であるルテニウムの物性を有する。この比較サンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は23〜73nmと非常に大きく、そのバラツキも非常に大きい。
【0047】
また、4番目の列は、貴金属酸化層の形成において、Ruターゲットの代わりにRuO2ターゲットを用いてアルゴンガスの雰囲気中でスパッタリングを行った比較サンプルについて示す列である。この比較サンプルの、貴金属酸化層の表面全域は、2価の酸化ルテニウム(RuO2)の物性を有する。この比較サンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は19〜26nmと比較的小さく、そのバラツキもある程度は抑えられている。
【0048】
さらに、一番下の列は、貴金属酸化層の形成において、貴金属であるRuターゲットの代わりに卑金属であるCrターゲットを用いて反応性スパッタリングを行った比較サンプルについて示す列である。この比較サンプルの、軟磁性層表面に形成された層の表面には、クロムの物性を有する部分と、酸化クロム(CrOx)の物性を有する部分とが混在している。この比較サンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は25〜37nmと大きく、そのバラツキも大きい。
【0049】
各サンプルの非磁性中間層表面に設けられた凹凸形状については、表面粗さ(Ra)、高低差P−V(nm)、平均粒径(nm)、および粒子のバラツキ(σ)を総合して考察することが必要である。すなわち、表面粗さRaが大きいい場合や高低差P―Vが大きい場合には、凹凸形状の凸部と凹部の境がはっきりして良いようにも考えられるが、これらの場合であっても、粒子のバラツキが大きく、しかも平均粒径も大きければ、大きな粒子と小さな粒子とが混在することで表面粗さRaが大きくなっていたり、大きな粒子によって高低差P―Vが増大していると考えられる。こうしてみると、本発明適用サンプルでは、表面粗さRaや高低差P―Vが小さいものの、粒子のバラツキや平均粒径も小さいため、非磁性中間層の表面には、各比較サンプルに比べ、均一な周期で微細な凹凸形状が形成されていると判断することができる。
【0050】
続いて、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、これらの工程のうちの貴金属酸化層形成工程52におけるスパッタリングの、アルゴンガスの流量を1.667×10-3L/sに固定し、酸素ガスの流量を、0L/S,8.335×10-5L/S,1.667×10-4L/S,2.500×10-4L/S,3.334×10-4L/Sの5段階に変化させて実施し、5つのサンプルを作成した。
【0051】
図5は、非磁性中間層表面を形成する粒子の、酸素ガス量依存性を示すグラフである。
【0052】
図5に示すグラフの、横軸はアルゴンガスに混合する酸素ガスの流量(L/s)を示し、縦軸は2種類のパラメータを示す。2種類のパラメータのうちの1つは、図5の左側の縦軸に示す、非磁性中間層表面を形成する粒子の平均粒径(nm)であり、もう1つは、図5の右側の縦軸に示す、非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径のバラツキ(σ)である。図5中の、丸のプロットを結ぶ実線は、酸素ガスの流量と平均粒径との関係を示すものであり、四角のプロットを結ぶ実線は、酸素ガスの流量と粒径のバラツキとの関係を示すものである。図5に示すように、平均粒径および粒径のバラツキはいずれも、酸素ガスの流量が増加するにしたがい小さくなっている。このことから、アルゴンガスに混合する酸素ガスの流量を高めることで、貴金属酸化層表面の、ルテニウムの物性を有する部分や酸化ルテニウム(RuOx)の物性を有する部分を微細化することができ、非磁性中間層表面に、均一な周期で微細な凹凸形状を形成することができることがわかる。
【0053】
続いて、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、これらの工程のうちの凝集層形成工程53におけるAgターゲットの放電時間を変化させ、Ag膜厚が異なる凝集層を有するサンプルを複数作製した。
【0054】
図6は、非磁性中間層表面を形成する粒子の、Ag層の厚さ依存性を示すグラフである。
【0055】
図6に示すグラフの横軸は、凝集層であるAg層の厚み(nm)を示し、縦軸は、図5に示すグラフと同じく、平均粒径(nm)と粒径のバラツキ(σ)との2種類のパラメータを示す。図6中の、丸のプロットを結ぶ実線は、Ag層の厚さと平均粒径との関係を示すものであり、四角のプロットを結ぶ実線は、Ag層の厚さと粒径のバラツキとの関係を示すものである。
【0056】
ここでは、貴金属酸化層の厚さを1nmに統一し、合計5つのサンプルを作製した。これら5つのサンプルを作製するにあたっては、凝集層であるAg層の厚さを、0.2nmから1nmの間で0.2nmずつ変化させて作製した。これらのサンプルのうち、厚さ0.6nmのAg層を有するサンプルの、非磁性中間層表面を形成する粒子は、9nm〜13nmの粒径であり、5つのサンプルの中で最も小さい平均粒径である。また、粒子のバラツキも、厚さ0.4nmのAg層を有するサンプルに次いで低い。
【0057】
さらに、今度は、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、貴金属酸化層形成工程52におけるRuターゲットの放電時間を変化させ、RuOxの膜厚が異なる貴金属酸化層を有するサンプルを5つ作製した。
【0058】
図7は、非磁性中間層表面を形成する粒子の、貴金属酸化層の厚さ依存性を示すグラフである。
【0059】
図7に示すグラフの横軸は、貴金属酸化層であるRuOx層の厚み(nm)を示し、縦軸は、上述の2つのグラフと同じく、平均粒径(nm)と粒径のバラツキ(σ)との2種類のパラメータを示す。図7中の、丸のプロットを結ぶ実線は、貴金属酸化層の厚さと平均粒径との関係を示すものであり、四角のプロットを結ぶ実線は、貴金属酸化層の厚さと粒径のバラツキとの関係を示すものである。
【0060】
ここでは、図6に示す結果を受けて、凝集層の厚さを0.6nmに統一し、貴金属酸化層の厚さを、0.2nmから1nmの間で0.2nmずつ変化させて作製した。これらのサンプルのうち、厚さ0.4nmのRuOx層を有するサンプルの、非磁性中間層表面を形成する粒子は、一段と小さく4nm〜7nmの粒径であり、これら5つのサンプルに凝集層の厚さが異なる上述の5つのサンプルを合わせた中でも、最も小さい平均粒径である。また、粒子のバラツキも最も低い。
【0061】
図6のグラフおよび図7のグラフそれぞれに示す結果から、RuOx層の厚さとAg層の厚さを調整することで、非磁性中間層表面に、均一な周期で微細な凹凸形状を形成することができることがわかる。
【0062】
次に、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、凝集層形成工程53におけるRuOx層表面の加熱温度を変化させ6つのサンプルを用意し、これら6つのサンプルそれぞれについて粒子解析を行った。
【0063】
【表2】
【0064】
表2の一番上の列は項目を示し、2番目の列は、RuOx層に加熱を行わなかったサンプルについて求めた値を示す。このサンプルにおける非磁性中間層表面を形成する粒子の粒径は9〜18nmと大きく、そのバラツキも大きい。
【0065】
また、3番目の列から1番下までの列は、RuOx層表面の加熱温度が、50℃から250℃の間で50℃ずつ異なるサンプルそれぞれについて求めた値を示す。表2に示すように、加熱温度が200℃以下では、加熱温度を上げるにつれて、平均粒径および粒径のバラツキが小さくなっているが、加熱温度が250℃になると、平均粒径および粒径のバラツキが途端に大きくなる。このこのとから、Ag層を形成する凝集層形成工程53におけるRuOx層表面の加熱温度は200℃が好適であることがわかる。なお、この加熱温度は、凝集層に用いる材料の融点および拡散温度に依存するものである。
【0066】
また、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、軟磁性層形成工程51において実施するスパッタリングの、製膜時のアルゴンガスのガス圧を変化させ、4つのサンプルを作製した。ここでは、いずれのサンプルを作製する際にも、軟磁性層の表面形成時にバイアス製膜を行わなかった。ここで作製した4つのサンプルについても粒子解析を行った。
【0067】
【表3】
【0068】
表3の一番上の列は項目を示し、2番目の列から4番目の列までは、軟磁性層形成工程51におけるスパッタリングのアルゴンガスのガス圧が、1.5Paから0.5Paの間で0.5Paずつ異なるサンプルそれぞれについて求めた値を示す。また、1番下の列は、そのガス圧を0.16Paにしたときのサンプルについて求めた値を示す。表3に示すように、ガス圧が低下するにつれて、平均粒径および粒径のバラツキはいずれも小さくなっている。これは、製膜時のガス圧を低くすることで、ターゲットから叩き出された原子が、雰囲気中のアルゴンイオンに衝突しにくくなり、その原子が基板表面に均一に付着し、軟磁性層の表面が平坦に形成されることに起因している。すなわち、軟磁性層表面が凸凹に荒れていると、その荒れは貴金属酸化層に反映され、最終的には、凹凸エンハンス層の表面、すなわち非磁性中間層の表面の凹凸形状に影響を及ぼし、非磁性中間層の表面を形成する粒子の平均粒径および粒径のバラツキが大きくなるが、製膜時のガス圧を低くすることで、軟磁性層表面の荒れを抑えることができ、非磁性中間層表面に形成された凹凸形状は、均一な周期を有する微細なものとなる。なお、製膜時のガスの圧力を低くしすぎると放電が生じなくなるため、そのガスの圧力は、放電が生じるギリギリの圧力にすることが好ましい。
【0069】
さらに、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを実施するにあたり、軟磁性層形成工程51において軟磁性層の表面形成時に基板側へ印加するバイアス電圧の大きさを変化させて4つのサンプルを作製し、粒子解析を行った。なお、図4に示す軟磁性層形成工程51では、製膜時のガスの圧力は、0.16Paである。
【0070】
【表4】
【0071】
表4の一番上の列は項目を示し、2番目の列から一番下の列までは、軟磁性層形成工程51において基板側へ印加するバイアス電圧の大きさが、−100Vから−250Vの間で50Vずつ異なるサンプルそれぞれについて求めた値を示す。表4に示すように、バイアス電圧の大きさを変化させても、非磁性中間層表面を形成する粒子の平均粒子径、および凹凸形状の凸部先端から凹部の底までの高低差P−Vの双方についてはさほど変化はないが、バイアス電圧の大きさが−200Vのときに、非磁性中間層の表面粗さ(Ra)、および粒径のバラツキ(σ)は最小値になっている。また、表3に示す、バイアス電圧を印加せず製膜ガス圧を0.16Paにしたときの結果と比べると、バイアス電圧を印加したときの方が、粒径のバラツキ(σ)が抑えられており、−200Vの大きさのバイアス電圧を印加すると、表面粗さ(Ra)についても改善が見られる。基板側にバイアス電圧を印加することで軟磁性層表面が平坦化され、非磁性中間層表面に形成された凹凸形状が、より均一な周期を有するものとなる。したがって、軟磁性層を形成するにあたっては、製膜時のガス圧を低ガス圧とし、表面を形成する際にバイアスを印加することが好ましい。
【0072】
またさらに、図2に示す媒体構成の磁気ディスクと、図1に示す媒体構成の磁気ディスクを作製し、記録再生特性について比較したので、その結果を説明する。
【0073】
図2に示す媒体構成の磁気ディスクの作製にあたっては、まず、図4に示す軟磁性層形成工程51から凹凸エンハンス層形成工程54までを順次実施することで、非磁性中間層まで作製した。一方、図1に示す媒体構成の磁気ディスクは、図4に示す軟磁性層形成工程51と同様な工程で、ガラス基板上に膜厚100nmの軟磁性層を形成した。続いて、その軟磁性層の表面に誘電体層を形成した。この誘電体層は、膜厚0.5nmのSiN膜であり、アルゴンガスにチッソガスを混合した雰囲気中でSiターゲットを放電させることで形成した。次に、誘電体層であるSiN膜の表面を酸素による暴露を行い、その後200℃に加熱し、厚さ0.5nmの基点形成層を積層させた。基点形成層は、アルゴンガスの雰囲気中でCrターゲットを放電させることで得た。基点形成層の表面には、Agターゲットを用いて、スパッタリングにより厚さ1nmの凝集層を形成し、その凝集層の表面には、Cターゲットを用いて、スパッタリングにより厚さ1nmの凹凸エンハンス層を形成した。図1に示す媒体構成の磁気ディスクでは、誘電体層、基点形成層、凝集層、および凹凸エンハンス層からなる4層が非磁性中間層に相当する。
【0074】
ここでも、両者の非磁性中間層表面について粒子解析を行った。
【0075】
【表5】
【0076】
表5の一番上の列は項目を示す。また、2番目の列は、図1に示す媒体構成の磁気ディスクの非磁性中間層表面について求めた値を示し、一番の下の列は、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの非磁性中間層表面について求めた値を示す。
両者を比較すると、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの非磁性中間層表面に形成された凹凸形状の方が、図1に示す媒体構成の磁気ディスクのそれよりも、均一な周期を有する微細なものであることがわかる。
【0077】
次に、それぞれの非磁性中間層表面に、図4に示す記録磁性層形成工程55を実施することで記録磁性層を形成し、さらに、それぞれの記録磁性層表面に、図4に示す保護層形成工程56を実施することで保護層を形成し、非磁性中間層が異なる2つの磁気ディスク、すなわち図2に示す媒体構成の磁気ディスクと図1に示す媒体構成の磁気ディスクを完成させた。
【0078】
続いて、これら2つの磁気ディスクの双方に、線記録密度を変えて情報を記録し、再生することで、各線記録密度での再生信号の大きさと媒体ノイズの大きさとの比を表すSNR(Signal to Noise Ratio)を得た。
【0079】
図8は、図2に示す媒体構成の磁気ディスクと図1に示す媒体構成の磁気ディスクそれぞれにおける、SNRの線記録密度依存性を示すグラフである。
【0080】
図8に示すグラフの横軸は、記録時の線記録密度(1インチ当たりの磁化反転数)を表し、その単位はkFCI(Flux Change per Inch)である。また、このグラフの縦軸はSNR(単位;dB)を表す。図8中の、丸のプロットを結ぶ実線は、図2に示す媒体構成の磁気ディスクにおけるSNRの線記録密度依存性を示すものであり、三角のプロットを結ぶ実線は、図1に示す媒体構成の磁気ディスクにおけるSNRの線記録密度依存性を示すものである。図8に示すグラフより、同じ線記録密度で記録したならば、図2に示す媒体構成の磁気ディスクと図1に示す媒体構成の磁気ディスクとでは、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの方が良好な再生を行うことができることがわかる。
【0081】
さらに、横軸を線記録密度(kFCI)にし、縦軸を再生信号の大きさにしたグラフより、再生信号の大きさが、飽和レベル(最大振幅)の1/2に低下したときの線記録密度(D50)を得た。このD50は、記録分解能を示すパラメータであり、この数値が大きいほど分解能が高く、記録密度が高いことを意味する。
【0082】
【表6】
【0083】
表6の一番上の列には項目が示されている。この表6における項目は、図8のグラフから読みとった、線記録密度が210kFCIであるときのSNRの値(dB)と、上述のD50の値(kFCI)の2項目である。2番目の列には、図1に示す媒体構成の磁気ディスクについての値が示されており、一番の下の列には、図2に示す媒体構成の磁気ディスクについての値が示されている。両デクィスクを比較すると、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの方が、図1に示す媒体構成の磁気ディスクよりも、210kFCIの線記録密度におけるSNRが3.2dB向上し、D50も43kFCI向上している。
【0084】
図1に示す媒体構成の磁気ディスクでは、非磁性中間層表面に凹凸形状を形成するにあたり、誘電体層と基点形成層との表面張力の違いを利用して凹凸形状の凸部形成の基点を設けている。このため、誘電体層が必要になり、非磁性中間層は4層構造になっている。一方、図2に示す媒体構成の磁気ディスクでは、凹凸形状の凸部形成の基点は、貴金属酸化層表面における物性の違いを利用して形成されているため、誘電体層が不要になり、非磁性中間層は3層構造ですむ。したがって、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの方が、図1に示す媒体構成の磁気ディスクよりも、軟磁性層と記録磁性層との距離が短くなる。すなわち、本実施形態の磁気ディスクによれば、磁気ヘッドと軟磁性層の距離が短くなるので、記録磁界の磁界分布が急峻になり、エッジが乱れることなく記録することで媒体ノイズを低減でき、SNRが向上する。また、図2に示す媒体構成の磁気ディスクの非磁性中間層表面に形成された凹凸形状のほうが、図1に示す媒体構成の磁気ディスクのそれよりも、均一な周期を有する微細なものであるため(表5参照)、図2に示す媒体構成の磁気ディスクのほうが、図1に示す媒体構成の磁気ディスクよりも、記録分解能を示すパラメータであるD50の値が向上する。
【0085】
以下、本発明の各種態様を付記する。
【0086】
(付記1) 基板と、
前記基板上に形成された、該基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層と、
前記軟磁性層よりも上層に形成された、表面に微細凹凸形状を有する非磁性中間層と、
前記非磁性中間層上に形成された、前記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し、磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層とを備え、
前記非磁性中間層は、前記軟磁性層側から順に第1中間層、第2中間層、第3中間層からなり、
前記第1中間層は、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在したものであり、
前記第2中間層は、前記第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、該第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させたものであり、
前記第3中間層は、この非磁性中間層の表面を形成する層であって、前記第2中間層の主成分である材料の原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、前記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いて該第2中間層の上に積み上げられたものであることを特徴とする情報記録媒体。
【0087】
(付記2) 前記第1中間層が、厚さ1nm以下の層であることを特徴とする付記1記載の情報記録媒体。
【0088】
(付記3) 前記非磁性中間層が、厚さ3nm未満の層であることを特徴とする付記1記載の情報記録媒体。
【0089】
(付記4) 基板上に、該基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、
前記軟磁性層よりも上層に、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在した第1中間層を形成する第1中間層形成工程と、前記第1中間層の表面に、該第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、該第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させた第2中間層を形成する第2中間層形成工程と、
前記第2中間層の表面に、この非磁性中間層の最表面を形成する層であって、前記第2中間層の主成分である原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、前記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いて該第2中間層の上に積み上げられた第3中間層を形成する第3中間層形成工程と、
前記第3中間層の表面に、前記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層を形成する記録磁性層形成工程とを有することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
【0090】
(付記5) 前記第1中間層形成工程が、ルテニウムターゲットとルテニウムを主成分とする合金ターゲットとのうちのいずれか一方をターゲットにし、不活性ガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中でスパッタリングすることにより第1中間層を形成する工程であることを特徴とする付記4記載の情報記録媒体の製造方法。
【0091】
(付記6) 第2中間層形成工程が、前記第1中間層形成工程が実施されたことにより形成された第1中間層を、前記第2中間層の拡散開始温度以上かつ前記第1中間層の拡散開始温度未満の温度にまで加熱してから該第1中間層の表面に該第2中間層を形成する工程であることを特徴とする付記4記載の情報記録媒体の製造方法。
【0092】
(付記7) 前記軟磁性層形成工程が、製膜時のガス圧を0.5Pa未満とし、ターゲットに所定の電圧を印加しつつ前記基板にもバイアス電圧を印加してスパッタリングすることにより軟磁性層を形成する工程であることを特徴とする付記4記載の情報記録媒体の製造方法。
【0093】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、非磁性中間層の表面に微細な凹凸形状を形成しつつ、SNRをさらに向上することができる情報記録媒体、およびそのような情報記録媒体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】4層構造の非磁性中間層を備えた情報記録媒体の層構造を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態の磁気ディスクの層構造を模式的に示す図である。
【図3】図2に示す非磁性中間層の一部分における各層を概念的に示した図である。
【図4】図2に示す媒体構成の磁気ディスクを製造するにあたっての各工程を示したフローチャートである。
【図5】非磁性中間層表面を形成する粒子の、酸素ガス量依存性を示すグラフである。
【図6】非磁性中間層表面を形成する粒子の、Ag層の厚さ依存性を示すグラフである。
【図7】非磁性中間層表面を形成する粒子の、貴金属酸化層の厚さ依存性を示すグラフである。
【図8】図2に示す媒体構成の磁気ディスクと図1に示す媒体構成の磁気ディスクそれぞれにおける、SNRの線記録密度依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 磁気ディスク
10 基板
11 軟磁性層
12 非磁性中間層
121 貴金属酸化層
122 非磁性中間層
123 凹凸エンハンス層
13 記録磁性層
14 保護層
Claims (5)
- 基板と、
前記基板上に形成された、該基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層と、
前記軟磁性層よりも上層に形成された、表面に微細凹凸形状を有する非磁性中間層と、
前記非磁性中間層上に形成された、前記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し、磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層とを備え、
前記非磁性中間層は、前記軟磁性層側から順に第1中間層、第2中間層、第3中間層からなり、
前記第1中間層は、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在したものであり、
前記第2中間層は、前記第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、該第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させたものであり、
前記第3中間層は、この非磁性中間層の表面を形成する層であって、前記第2中間層の主成分である材料の原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、前記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いて該第2中間層の上に積み上げられたものであることを特徴とする情報記録媒体。 - 基板上に、該基板面に対し面内方向に磁化容易軸を有する軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程と、
前記軟磁性層よりも上層に、表面に貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とが混在した第1中間層を形成する第1中間層形成工程と、前記第1中間層の表面に、該第1中間層の拡散開始温度よりも低い拡散開始温度を有し、該第1中間層表面に混在する貴金属酸化物の物性を有する部分と貴金属の物性を有する部分とのうちの少なくともいずれか一方の部分の上に凝集させた第2中間層を形成する第2中間層形成工程と、
前記第2中間層の表面に、この非磁性中間層の最表面を形成する層であって、前記第2中間層の主成分である原子半径よりも小さな原子半径をもつ非結晶材料が、前記いずれか一方の部分を取り囲む領域を除いて該第2中間層の上に積み上げられた第3中間層を形成する第3中間層形成工程と、
前記第3中間層の表面に、前記基板面に対して垂直方向に磁化容易軸を有し磁場の供給を受け情報を記録する記録磁性層を形成する記録磁性層形成工程とを有することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。 - 前記第1中間層形成工程が、ルテニウムターゲットとルテニウムを主成分とする合金ターゲットとのうちのいずれか一方をターゲットにし、不活性ガスと酸素ガスを混合させた雰囲気中でスパッタリングすることにより第1中間層を形成する工程であることを特徴とする請求項2記載の情報記録媒体の製造方法。
- 第2中間層形成工程が、前記第1中間層形成工程が実施されたことにより形成された第1中間層を、前記第2中間層の拡散開始温度以上かつ前記第1中間層の拡散開始温度未満の温度にまで加熱してから該第1中間層の表面に該第2中間層を形成する工程であることを特徴とする請求項2記載の情報記録媒体の製造方法。
- 前記軟磁性層形成工程が、製膜時のガス圧を0.5Pa未満とし、ターゲットに所定の電圧を印加しつつ前記基板にもバイアス電圧を印加してスパッタリングすることにより軟磁性層を形成する工程であることを特徴とする請求項2記載の情報記録媒体の製造方法。
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