JP2004196246A - 車両用アンチロック制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アンチロック制御手段にて、常開型電磁弁を閉弁するとともに常閉型電磁弁を開弁する減圧モードと、常開型電磁弁を閉弁するとともに常閉型電磁弁を閉弁する保持モードと、常開型電磁弁を開弁するとともに常閉型電磁弁を閉弁する増圧モードとのいずれかに制御する。そして、増圧モードの一つであるデューティ増圧モードでは、常開型電磁弁に付与する電流値を、減圧モードにおいて常開型電磁弁を連続的にオンしたときの電流値を100とし、オフのときの電流値を0としたときに、100>D1>D2>0なる所定値D1およびD2の値を所定の時間間隔で繰り返し、これにより、ブレーキ液圧発生側のブレーキ液圧の変動を相殺させてその影響を受けにくくしている。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用アンチロック制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来一般に、車両用アンチロック制御装置として、ブレーキペダルの操作によりブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダと車輪ブレーキとをつなぐ接続路に常開型電磁弁を備えるとともに、ブレーキ液を蓄えるリザーバと車輪ブレーキとをつなぐ解放路に常閉型電磁弁を備え、車輪がロックしそうになると、常開型電磁弁を閉状態かつ常閉型電磁弁を開状態とし、車輪ブレーキのブレーキ液圧を解放路を介してリザーバに解放し(減圧モード)、また、車輪ブレーキのブレーキ液圧をそのまま保持しようとするときには、常開型電磁弁および常閉型電磁弁をともに閉状態とし、車輪ブレーキを接続路および解放路から遮断し(保持モード)、さらに、車輪がロックするおそれがなくなったときには、常開型電磁弁を開状態かつ常閉型電磁弁を閉状態として、マスタシリンダのブレーキ液圧を接続路を介して直接車輪ブレーキに伝達することとし(増圧モード)、以下、これらのモードを適宜に選択することにより、所謂ポンピングブレーキ的な操作を自動制御させることによって、車輪のスリップ率が所定値を大きく越えないよう制動力を調整制御するものが知られている。
【0003】
この種車両用アンチロック制御装置では、一旦、アンチロック制御が開始されると、増圧モードにおいて、所定時間毎に制限された増圧を繰り返して、マクロ的にはホイールシリンダのブレーキ液圧を比較的ゆっくりと増圧する、いわゆる緩増圧モードを採用するものがある。
【0004】
緩増圧モードを具体的に実現したものとして、例えば、常開型電磁弁に通電して閉弁状態とさせる一方所定時間毎にパルス形状となるよう当該常開型電磁弁への通電を解除することにより、常開型電磁弁をわずかな時間間隔で開状態と閉状態を繰り返させて、ホイールシリンダ圧をステップ状に増圧させるものがある。そして、このとき、常開型電磁弁を所定の開度をもって開弁させるべく、100パーセントよりも小さく、かつ、0パーセントよりも大きい所定のデューティ比(DLEV)の一定電流値を常開型電磁弁に連続的に付与するよう制御するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−104335号公報(第14頁、図15(a))
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の車両用アンチロック制御装置では、緩増圧モードのときに、常開型電磁弁の開度をもたせるよう、常開型電磁弁に100パーセントから0パーセントの間の中間デューティ比の一定電流値を連続的に付与することとしているが、この場合、常開型電磁弁の特性としてストロークに対して推力が非線形に変化することが挙げられ、このような特性を持つ電磁弁では、中間デューティ比の一定電流値を付与したところで、推力のばらつきが大きく、例えば、マスタシリンダ側にポンプの吐出脈動等に起因するブレーキ液圧の変動がある場合、その影響を大きく受けてしまう。このため、開度が安定せず、増圧モードにおける増圧レートを安定させることができないという課題があった。
【0007】
上記事情に鑑みてなされたもので、本発明は、増圧モードにおいて、ブレーキ液圧発生側のブレーキ液圧の変動の影響を受けにくく、増圧モードにおける増圧レートを安定させることができる、車両用アンチロック制御装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の車両用アンチロック制御装置は、ブレーキ液圧発生器(例えば、実施形態のマスタシリンダ2)と、車輪(例えば、実施形態の車輪Wf)に付設される車輪ブレーキ(例えば、実施形態のホイールシリンダ3a,3b)と、前記ブレーキ液発生器および前記車輪ブレーキ間を接続する接続路(例えば、実施形態の接続路7)と、ブレーキ液を蓄えるリザーバ(例えば、実施形態のリザーバ9)および前記車輪ブレーキ間を接続する解放路(例えば、実施形態の解放路10)と、前記接続路に介挿される常開型電磁弁(例えば、実施形態の常開型電磁弁8)と、前記解放路に介挿される常閉型電磁弁(例えば、実施形態の常閉型電磁弁11)と、前記車輪の車輪速度を検出する車輪速度センサ(例えば、実施形態の車輪速度センサ19a,19b)と、前記車輪速度センサで検出された車輪速度に基づいて車輪のロック傾向を判断し、前記車輪ブレーキのブレーキ液圧を、前記常開型電磁弁を閉弁するとともに前記常閉型電磁弁を開弁する減圧モードと、前記常開型電磁弁を閉弁するとともに前記常閉型電磁弁を閉弁する保持モードと、前記常開型電磁弁を開弁するとともに前記常閉型電磁弁を閉弁する増圧モードとに制御するアンチロック制御手段(例えば、実施形態のステップS1〜S6)と、を備える車両用アンチロック制御装置において、前記アンチロック制御手段は、前記増圧モードにおいて常開型電磁弁に付与する電流値を、前記減圧モードにおいて常開型電磁弁を連続的にオンしたときの電流値を100とし、オフのときの電流値を0としたときに、100>D1>D2>0なる所定値D1およびD2の値を所定の時間間隔で繰り返すデューティ増圧モードを含むことを特徴としている。
【0009】
本発明では、増圧モードにおいて、常開型電磁弁に付与する電流値を、100>D1>D2>0なる所定値D1およびD2の値を所定の時間間隔で繰り返すこととしており、たとえ、マスタシリンダ側にブレーキ液圧の変動がある場合であっても、その変動をデューティ比が強制的に変化することにより吸収する。そして、トータル的にみた場合、安定した弁開度が得られ、これにより、増圧モードにおける増圧レートが安定することとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る車両用アンチロック制御装置の実施の形態を図面を参照しつつ以下に説明する。
【0011】
図1は本発明に係る車両用アンチロック制御装置が搭載される自動車のブレーキ装置の概略構成図、図2は常開型電磁弁および常閉型電磁弁を示す断面図、図3はアンチロック制御の内容を示すフローチャート、図4は制御モードにおける常開型電磁弁と常閉型電磁弁の制御態様を示す図、図5は制御モードを決定する一例のマップを示す図である。
【0012】
図1に示すように、ブレーキペダル1の操作によりブレーキ液圧を発生する、ブレーキ液圧発生器の一例であるマスタシリンダ2は左右の前輪Wf,Wfのホイールシリンダ(請求項1でいう車輪ブレーキ)3a,3bに接続される出力ポート4と、左右の後輪のホイールシリンダ(図示略)に接続される出力ポート5とを備える。なお、図1において出力ポート5に属する系統は出力ポート4に属する系統と同一の構成であるので図示は省略している。
【0013】
マスタシリンダ2の出力ポート4と前記一方の前輪Wfのホイールシリンダ3aとは接続路7によって接続され、この接続路7には常開型電磁弁8が介挿されている。また、前記ホイールシリンダ3aとこのホイールシリンダ内のブレーキ液圧を解放するリザーバ9とは解放路10によって接続され、解放路10には常閉型電磁弁11が介挿されている。
【0014】
リザーバ9には一方のホイールシリンダ3aから送られるブレーキ液が蓄えられるが、このブレーキ液は、ポンプ12およびその上流に設けられたポンプ脈動を吸収するダンパー室13がそれぞれ介挿された戻り路14を介してマスタシリンダ2側へ戻されるようになっている。
【0015】
図1において15は、常開型電磁弁8と並列に設けられて、ホイールシリンダ3aからマスタシリンダ2側へブレーキ液が流れるのを許容するチェック弁、16、17はそれぞれポンプ12の上流側および下流側に直列に設けられて、ホイールシリンダ3aからマスタシリンダ2側へブレーキ液が流れるのを許容するチェック弁、19は左右の前輪Wf,Wfにそれぞれ設けられて、それら各車輪Wf,Wfの車輪速度を検出する車輪速度センサである。
【0016】
なお、マスタシリンダ2の出力ポート4と前記他方のホイールシリンダ3bとの関係も、前述したマスタシリンダ2の出力ポート4と前記一方のホイールシリンダ3aとの関係と同様であり、ここでは同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略する。
【0017】
ここで、前記常開型電磁弁8と前記常閉型電磁弁11について詳しく説明すると、図2(a)に示すように、常開型電磁弁8は、吐出孔8aがホイールシリンダ3a,3b側に接続され、絞りを介した流入孔8bがマスタシリンダ2側に接続されている。この流入孔8bと吐出孔8aとの間に形成されている弁座面8cには、ニードル8dが対向配置されており、さらにこのニードル8dの後端にアーマチャ8eが形成されていて、このアーマチャ8eの外側先方にソレノイド8fが配設されている。また、前記ニードル8dと弁座面8cとの間にリターンスプリング8gが介装され、このリターンスプリング8gによってニードル8dは弁座面8cから離間する方向に付勢されている。
【0018】
従って、ソレノイド8fに通電のない状態では、リターンスプリング8gの弾性力によってニードル8dが弁座面8cから離間し、流入孔8bと吐出孔8aとは連通状態となり、マスタシリンダ2のブレーキ液圧はホイールシリンダ圧を増圧する。また、ソレノイド8fに通電があると、リターンスプリング8gの弾性力に抗してアーマチャ8eがソレノイド8f側に変位してニードル8dの先端部が弁座面8cに当接し、前記流入孔8bと吐出孔51とが遮断されてホイールシリンダ圧は保持される。
【0019】
他方、図2(b)に示すように前記常閉型電磁弁11は、流入孔11aがホイールシリンダ3a,3b側に接続され、絞りを介した逃がし孔11bがリザーバ9側に接続されている。この逃がし孔11bと流入孔11aとの間に形成されている弁座面11cには、ニードル11dが対向配置されており、さらにこのニードル11dと一体的にアーマチャ11eが形成されていて、このアーマチャ11eの外側先方にソレノイド11fが配設されている。また、アーマチャ11eの図2における上方に配置されたバネ押さえ11gと前記ニードル11dとの間にはリターンスプリング11hが介装され、このリターンスプリング11hによってニードル11dは弁座面11cに接する方向に付勢されている。
【0020】
従って、ソレノイド11fに通電のない状態では、前記リターンスプリング11hの弾性力によってニードル11dが弁座面11cに接して、逃がし孔11bと流入孔11aとは遮断状態となる。また、ソレノイド11fに通電があると、前記リターンスプリング11hの弾性力に抗してアーマチャ11eがソレノイド11f側に変位してニードル11dの先端部が弁座面11cから離間し、逃がし孔11bと流入孔11aとは連通状態となり、ホイールシリンダ3a,3bからブレーキ液が逃げてホイールシリンダ圧は減圧されるようになっている。
【0021】
なお、前述したように常開型電磁弁8は通電のないノーマル位置で常時開状態、通電による切換え位置で閉状態に移行し、常閉型電磁弁11は通電のないノーマル位置で常時閉状態、通電による切換え位置で開状態に移行するようになっているのは、異常時の作動補償、いわゆるフェールセーフの関係からである。また、常開型電磁弁8では、マスタシリンダ2側から接続路7を介してブレーキ液圧が働くとき、このブレーキ液圧はリターンスプリング8gの付勢方向と同方向、つまり開状態へ至る方向へ作用するようになっている。
【0022】
前記構成の常開型電磁弁8および常閉型電磁弁11と、前記ポンプ12を駆動する図示せぬモータとはアンチロック制御手段によって制御される。
すなわち、アンチロック制御手段は、前記車輪速度センサ19で検出された左右の前輪Wf,Wfおよび左右の後輪の車輪速度に基づいて各車輪のロック傾向を判断し、各ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧を、常開型電磁弁8を閉弁するとともに常閉型電磁弁11を開弁する減圧モードと、常開型電磁弁8を閉弁するとともに常閉型電磁弁11を閉弁する保持モードと、常開型電磁弁8を開弁するとともに常閉型電磁弁11を閉弁する増圧モードとのいずれかに制御するようになっている。
【0023】
アンチロック制御手段の内容を図3のフローチャートを参照しながら説明する。アンチロック制御手段による演算処理は、所定のサンプリング時間(例えば5msec)ごとにタイマ割込処理として実行される。演算処理が開始されると、まず、ステップS1で初期化される。
次に、ステップS2へ移行して、左右の前輪Wf,Wfおよび左右の後輪それぞれに設けられた車輪速度センサ19…によって、それら各車輪Wfの車輪速度VWが読み込まれる。
【0024】
次にステップS3へ移行し、車輪加速度ACL、推定車体速度VRO、路面摩擦係数がそれぞれ算出される。
車輪加速度ACLは、前記車速センサ19によって検出された各車輪の車輪速度VWをそれぞれ微分することにより得られる。
【0025】
推定車体速度VROは、例えば従来周知の車体速度演算処理にしたがって行われる。すなわち、各車輪Wfの車輪速度VWのうち最大値を選んで基準速度とし、この基準速度に、さらに加速側および減速側にそれぞれ勾配制限をかける演算を行う。具体的には、各処理時間ごとに加速度および減速度にそれぞれしきい値を設定し、推定後の車体速度の変化がこれらしきい値内に収まるように、言い換えれば推定車体速度変化が予め定めた加速度および減速度のしきい値を超える場合には、この設定した加速度あるいは減速度のしきい値がその処理時間の車体速度の変化であると仮定することによって推定車体速度VROを算出する。
なお、この推定車体速度VROの算出のための演算処理としては、本出願人が先に提案した特開平5−50903号公報等に開示されている。
【0026】
路面摩擦係数については、これを直接求めるのではなく、前述のように演算により求めた推定車体速度VROについて、今回求めた推定車体速度VRO(n)と前回求めた推定車体速度VRO(n-1)との速度差ΔVROを求め、この速度差ΔVROを、前回のサンプリング時期から今回のサンプリング時期までの経過時間ΔTで除することにより加減速度値(ΔVRO/ΔT)を求め、この値を路面摩擦係数に対応したものとしている。
【0027】
次にステップS4へ移行し、各車輪Wfについて車輪スリップ率SRを算出する。車輪スリップ率SRは、推定車体速度VROから車輪スリップ率を求めようとする車輪Wfの車輪速度VWを引き、その値を推定車体速度VROで除することにより求められる。
つまり式で表せば次のとおりである。
SR=[(VRO−VW)/VRO]×100
【0028】
次にステップS5へ移行し、左右の前輪Wf、Wf並びに一括制御する左右の後輪についてそれぞれアンチロック制御モードの判定を行う。アンチロック制御モードには、図4にも示すように、増圧モード、保持モード、減圧モードの他、アンチロック制御を行わない停止モードがある。さらに増圧モードは、単なる増圧モードと常開型電磁弁8に付与する指令信号をPWM(Pulse Width Modulation)制御によってデューティ比制御するデューティ増圧に分かれ、また保持モードは、単なる保持モードと、常開型電磁弁8に付与する指令信号をPWM制御によってデューティ比制御するデューティ保持モードに分かれる。
【0029】
このアンチロック制御モードは、前述のようにして求めた車輪スリップ率SRと、各車輪Wfの車輪加速度ACLを基に、例えば、図5に示すように、増圧モード、保持モード、減圧モードを判定する。このマップは、各路面摩擦係数に対応するように求めた前記加減速度値(ΔVRO/ΔT)に応じて、複数準備される。
例えば、図5に示す例のマップでは、車輪加速度がプラス側のしきい値βよりも大きいときには、車輪スリップ率SRがいかなる値でも保持モードとし、車輪加速度がプラス側のしきい値βとマイナス側のしきい値αの間にあるときには車輪スリップ率SRが設定値Sioより小さいときに増圧モード、車輪スリップ率SRが設定値Sio以上のときに減圧モード、さらに、車輪加速度がマイナス側のしきい値αより小さいときには、車輪スリップ率SRが設定値Sioより小さいときに保持モード、車輪スリップ率SRが設定値Sio以上のときに減圧モードとなる。
【0030】
前記保持モードにおいて、単なる保持モードとデューティ保持モードとの切換は、所定の条件が成立している状態のときデューティ保持モード、所定の条件が成立していない状態のとき単なる保持モードとなるように設定している。
ここで、所定の条件とは、例えば、車両用電源の電圧が予め定められた設定値以上であることや、または常開型電磁弁8へ接続される端子電圧が予め定められた設定値以上であることが考えられ、あるいは、マスタシリンダ2で発生しているブレーキ液圧が予め定められた設定圧以下であること等が考えられる。要は、常開型電磁弁8に定格電流値以下の所定比率の電流値が付与される状態でも、この常開型電磁弁8を十分に閉状態にさせ、また閉状態を保持できる諸条件を所定の条件という。
【0031】
また、デューティ保持モードに設定されたとき、前記常開型電磁弁8に付与する電流値は、減圧モードにおいて常開型電磁弁8に付与する電流値よりも小さくなるように制御している。
具体的には、デューティ保持モードにおいて、常開型電磁弁8に付与する指令信号のデューティ比を、減圧モードにおいて常開型電磁弁8に付与する指令信号を100パーセントとした場合の約65〜75パーセントとなるように制御する。
【0032】
前記増圧モードにおいて、算出された路面摩擦係数が所定値以下か否かを判断し、所定値以下のときは単なる増圧モードを選択し、所定値未満のときはデューティ増圧モードを選択するようにしている。
【0033】
上記アンチロック制御モードの判定を終えたら、次にステップS6へ移行し、各車輪Wfに付設される常開型電磁弁8、常閉型電磁弁11およびポンプ12を駆動するためのモータを制御する指令信号を発し、それら各機器の作動を制御する。
【0034】
次に、上記構成の車両用アンチロック制御装置の作用について説明する。
運転者がブレーキペダル1を踏むとマスタシリンダ2によって発生したブレーキ液が出力ポート4,5から出力される。アンチロック制御が行われない通常時には、アンチロック制御装置の常開型電磁弁8は開状態になっておりかつ常閉型電磁弁11は閉状態になっているため、マスタシリンダ2からのブレーキ液圧はそのままホイールシリンダ3a、3bに伝達されて車輪Wf、Wfを制動する。
【0035】
そして、例えばブレーキペダル1を強く踏む等により車輪Wfがロック傾向になって、車輪速度VWが実車体速度(実際には推定車体速度VRO)よりも低下し、車輪スリップ率SRが上がると、アンチロック制御手段からの指令信号により常開型電磁弁8を閉状態にするとともに常閉型電磁弁11を開状態にする。これにより、マスタシリンダ2からのブレーキ液圧は閉弁した常開型電磁弁8により遮断されてホイールシリンダ3a,3bに伝達されなくなり、かつホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液が開弁した常閉型電磁弁11を介してリザーバ9に排出されるため、ホイールシリンダのブレーキ液圧が減圧される。このとき、リザーバ9に排出されたブレーキ液は、ポンプ12の作動によりマスタシリンダ2側へ戻される。
【0036】
ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧が減圧され、ロック傾向が解消されると、常閉型電磁弁8に対する通電を中止してホイールシリンダ3a,3bとリザーバ9との連通を遮断することにより、ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧の保持を行う。その結果、ホイールシリンダ3a,3bの制動力が一定に保持され、低下していた車輪速度VWが回復に転じる。そして、車輪速度VWが実車体速度に近づくと、常開型電磁弁8を所定開度に開弁することにより、ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧を増圧する。このように減圧モード(保持モードを含む)とデューティ増圧モードとを含むサイクルを繰り返し行うことにより、車輪のロックを防止しながら最大限の制動力を発生させることができる。
【0037】
図6は上記車両用アンチロック制御装置によって制御されるときの実車体速度、車輪速度VWおよびホイールシリンダのブレーキ液圧(以下、ホイールシリンダ圧と省略することがある)の変化を示すタイミングチャートである。
【0038】
ここで、保持モードのときには、所定の条件を満たしているとき、つまり車両用電源の電圧が予め定められた設定値以上であることや、常開型電磁弁8へ接続される端子電圧が予め定められた設定値以上であること等のときには、PWM制御によってデューティ比が約70パーセントとなるように、常開型電磁弁8に付与される電流値が制御される。つまり、前記アンチロック制御手段は、所定の条件が成立している状態では、保持モードにおいて常開型電磁弁8に付与する電流値が、減圧モードにおいて常開型電磁弁8に付与する電流値よりも小さくなるように制御される(時間t1〜t2)。
【0039】
このとき、図6からも明らかなように、ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧)は、若干上下に振れつつもほぼ一定に保たれていることがわかる。このことは、常開型電磁弁8が閉状態に保持されていることを意味する。このように、常開型電磁弁8を閉状態にするのに、デューティ比100パーセントの電流値を流すのではなく、デューティ比70パーセント程度の電流値を流すことによって閉弁させているため、デューティ比100パーセントの電流値を流す場合に比べて、消費電流を節約することができる。
【0040】
また、保持モードに引き続いて実行されがちな増圧モード(少なくとも常開型電磁弁を閉状態から開状態に切り換えることを必要とするモード)への切り換えるとき、常開型電磁弁8を必要以上の過剰励磁力で閉弁していない分、応答性を向上させることができる。
なお、保持モードに続いて減圧モードになるときは、常開型電磁弁8に100パーセントデューティ比の電流値を付与することとなるが、常開型電磁弁8は既に閉状態になっているので、減圧モードへの応答が遅れることはない。
【0041】
一方、デューティ増圧モードのときには、常開型電磁弁8に付与する電流値を、減圧モードにおいて常開型電磁弁8に連続的に通電(オン)したときの電流値を100とし、通電を停止したとき(オフ)の電流値を0としたときに、100>D1>D2>0なる所定値D1,D2を所定の時間周期(例えば、5msec間隔)で繰り返すこととしている。これにより、たとえ、マスタシリンダ2側のブレーキ液圧が変動する場合でも、その変動をデューティ比が強制的に変化することにより吸収してその影響を受けにくくしている。そして、トータル的にみた場合、安定した弁開度が得られ、これにより、増圧モードにおける増圧レートを安定させることができる。
【0042】
上述のように実施の形態を詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することない範囲で種々の設計変更を行なうことが可能である。
たとえば本発明は、四動車に限らず、自動二、三輪車にも適用可能である。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、本願発明の車両用アンチロック制御装置によれば、デューティ増圧モードにおいて、常開型電磁弁に付与する電流値を、100>D1>D2>0なる所定値D1およびD2の値を所定の時間間隔で繰り返しており、このため、マスタシリンダ側のブレーキ液圧の変動の影響を受けにくくなり、安定した弁開度が得られ、結果的に、増圧モードにおける増圧レートが安定する。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車のブレーキ装置の概略構成図である。
【図2】常開型電磁弁および常閉型電磁弁を示す断面図である。
【図3】アンチロック制御手段の内容を示すフローチャートである。
【図4】制御モードにおける常開型電磁弁と常閉型電磁弁の制御態様を示す図である。
【図5】制御モードを決定する一例のマップを示す図である。
【図6】アンチロック制御時の実車体速度、車輪加速度およびホイールブレーキ圧の変化を示す図タイミングチャートである。
【符号の説明】
2…マスタシリンダ(ブレーキ液圧発生器)
3a、3b…ホイールシリンダ(車輪ブレーキ)
7…接続路
8…常開型電磁弁
10…解放路
11…常閉型電磁弁
19…車輪速度センサ
アンチロック制御手段(ステップS1〜S6)
Claims (1)
- ブレーキ液圧発生器と、
車輪に付設される車輪ブレーキと、
前記ブレーキ液圧発生器および前記車輪ブレーキ間を接続する接続路と、
ブレーキ液を蓄えるリザーバおよび前記車輪ブレーキ間を接続する解放路と、
前記接続路に介挿される常開型電磁弁と、
前記解放路に介挿される常閉型電磁弁と、
前記車輪の車輪速度を検出する車輪速度センサと、
前記車輪速度センサで検出された車輪速度に基づいて車輪のロック傾向を判断し、前記車輪ブレーキのブレーキ液圧を、
前記常開型電磁弁を閉弁するとともに前記常閉型電磁弁を開弁する減圧モードと、前記常開型電磁弁を閉弁するとともに前記常閉型電磁弁を閉弁する保持モードと、前記常開型電磁弁を開弁するとともに前記常閉型電磁弁を閉弁する増圧モードとに制御するアンチロック制御手段と、
を備える車両用アンチロック制御装置において、
前記アンチロック制御手段は、前記増圧モードにおいて、常開型電磁弁に付与する電流値を、前記減圧モードにおいて常開型電磁弁を連続的にオンしたときの電流値を100とし、オフのときの電流値を0としたときに、100>D1>D2>0なる所定値D1およびD2の値を所定の時間間隔で繰り返すデューティ増圧モードを含むことを特徴とする車両用アンチロック制御装置。
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