JP2004190074A - 加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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貴之 山本
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Abstract

【課題】加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【解決手段】めっき層中のζ相とδ相の比ζ/δ(X線回折強度比)を0.10以下にし、めっき層の表面粗度のうち中心線平均粗さRaを0.1〜1.0μmに、PPI/50μinchを5〜130にする。各相の比は、めっき条件及び合金化条件を調節して、合金化の進行度合を調整することによって制御する。めっき層表面の粗度は、めっき原板を予め適当な粗度に調整したり、合金化後にめっき層表面を平滑化処理して制御する。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車部品等に有用な合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関し、特に難加工性の合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、GA鋼板と称する場合がある)では、鋼板を溶融亜鉛めっきした後、加熱することによって素地鋼板中の鉄をめっき層中に拡散させ、鉄と亜鉛とを合金化している。GA鋼板は、亜鉛めっき鋼板に比べて、溶接性や塗装後の耐食性に優れているため、自動車、建材、家電製品などの幅広い分野で使用されている。特に近年、自動車部品の防錆性の向上が求められており、フード、フェンダー、ドアの他、サイメンアウター、クォーターパネルなどの難成形部品にも使用されている。
【0003】
GA鋼板で高度成形部品を製造する場合、成形条件(プレス条件など)の適性化のみならず、材料(GA鋼板)の成形性(加工性)を向上することも必要である。加工手段によって要求される加工特性は異なるものの、めっき鋼板の加工性を向上するためには、一般に、めっきを施す原板に高加工性の原板を用いる方法、GA鋼板の摺動性を高める方法などが採用されている。
【0004】
高加工性の原板としては、一般に、IF鋼(Ti添加IF鋼など)が使用されている。Ti添加IF鋼は、Tiの添加により固溶しているCやNが低減され、優れた深絞り加工性を有している。しかしTi添加IF鋼を合金化溶融亜鉛めっきすると、Ti添加鋼は通常の自動車部品用鋼(アルミキルド鋼など)に比べて初期の合金化速度が速いため、原板とめっき層との界面において非常に硬くて脆いΓ相(FeZn10)が成長し易く、プレス加工時にめっき剥離を引き起こし易い。一方、Γ相が成長しない程度に合金化を抑制すると、めっき表層部には比較的軟質なζ相(FeZn13)が残存し、摺動性が低下する。
【0005】
GA鋼板の摺動性を高める方法としては、GA鋼板のめっき表面にさらに少量のFe系めっきを施す方法(例えば、特許文献1参照)、GA鋼板の表面に高潤滑防錆油や高潤滑洗浄油を塗布する方法(例えば、特許文献2〜4参照)などが知られている。しかし、合金化亜鉛めっきの表面にさらにFeを電気めっきする方法では、溶融めっきラインに電気めっき設備を付設することによって莫大な設備投資が必要となったり、GA鋼板を別途電気めっきラインで処理することによって製造コストがアップする虞がある。また、高潤滑油を用いる方法では、油の塗布むらや連続プレスの熱による油の劣化によって摺動性が低下し易く、加工性が低下し易い。
【0006】
【特許文献1】
特開昭58−15554号公報
【特許文献2】
特開平3−162491号公報
【特許文献3】
特開平5−117831号公報
【特許文献4】
特開2001−247949号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、通常の成形部品のみならず難成形部品も安定して成形できる加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、コストをかけることなく加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)とは、めっき層中のζ相とδ相の比ζ/δ(X線回折強度比)が0.10以下であって、めっき層の表面粗度のうち中心線平均粗さRaが0.1〜1.0μmであり、かつPPI/50μinchが5〜130であるの点に要旨を有するものである。
【0010】
前記GA鋼板は、中心線平均粗さRaが0.1〜1μm、PPI/50μinchが1〜50である鋼板を亜鉛めっきし、δ相がζ相に対して10倍以上(X線回折強度比)になるまで合金化処理した後、めっき層表面を平滑化することによって製造できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
一般に、めっき層表面の粗度が低い程摺動性が高まると考えられている。そこで、めっき層表面の粗度を鏡面状態にまで低減したところ、難成形部品を成形する場合には、めっき鋼板を高面圧下で成形する必要があるためプレス成形時に油切れを起しやすくなり、却って摺動性が低下し加工割れが発生することを本発明者は突き止めた。この知見に基づいて、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、めっき層表面の粗度を鏡面状態よりも若干増大させる代わりに、めっき層中のζ相を低減しかつδ相(FeZn)を所定量以上増大させてめっき層の硬度を高くすると、プレス成形時の油切れを防止できるだけでなく、めっき表面の硬度が高いため粗度をあまり低くしなくても極めて高い摺動性が得られること、そのため金型へのめっき層の凝着を防止して加工性を高めることができることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明ではめっき層中の軟質なζ相を低減し、表層部(又は表層部近く)まで硬質なδ相にすることが重要である。ζ相とδ相との比率はX線回折によるピーク強度比で評価できる。ζ相のピーク強度I(ζ)とδ相のピーク強度I(δ)との比率I(ζ)/I(δ)は、例えば、0.10以下、好ましくは0.08以下、さらに好ましくは0.06以下(特に、0.02以下)である。I(ζ)/I(δ)が1を超えると、めっき層(特に、表層部)にζ相が多く残存しているため、プレス成形時に高面圧下で摺動が発生した場合に、金型とのせん断力により軟質なζ相が凝着し、加工割れが発生する虞がある。なお、ζ相を完全に無くすとめっき層が剥離(パウダリング)する虞があるため、I(ζ)/I(δ)は、通常、0.001以上、好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上である。
【0013】
比率I(ζ)/I(δ)は、めっき条件及び合金化条件を調節して、合金化の進行度合(合金化度)を調整することによって制御できる。すなわち合金化が不十分だとδ相が十分に成長しないためにζ相が多く残存する虞がある一方、過度に合金化が進行すると耐パウダリング性が低下するため、めっき条件及び合金化条件を適宜調節することによって合金化度を制御する。詳細には、めっき条件及び合金化条件(めっき浴の組成、めっき浴の温度、めっき浴への鋼板の侵入板温、合金化時の昇温速度、昇温後の保持時間、冷却速度など)と合金化度との間には以下の関係があるため、その関係を利用して適切な合金化度に調整し、I(ζ)/I(δ)を制御する。
【0014】
亜鉛めっき浴中にAlを加えると、めっき浴中でのFeとZnの反応を抑制できる。めっき浴中のAl濃度(有効Al濃度)は、例えば、0.1〜0.2%程度、好ましくは0.1〜0.15%程度、さらに好ましくは0.1〜0.12%程度の範囲から選択でき、他の条件に応じて適宜調節するのが望ましい。
【0015】
めっき浴温度は、高い方が浴中でFe−Al合金相の成長が促進されるため、逆にFe−Zn合金(ζ相)の成長は抑制される。めっき浴温度は、例えば、450〜500℃程度、好ましくは460〜490℃程度、さらに好ましくは460〜480℃程度の範囲から選択でき、の範囲から選択でき、他の条件に応じて適宜調節するのが望ましい。
【0016】
めっき浴への鋼板の侵入板温は、高い方が浴中でFe−Al合金相の成長が促進されるため、逆にFe−Zn合金(ζ相)の成長は抑制される。侵入板温は、例えば、450〜500℃程度、好ましくは460〜490℃程度、さらに好ましくは460〜480℃程度の範囲から選択でき、他の条件に応じて適宜調節するのが望ましい。
【0017】
合金化時には、ζ相の包晶温度が500〜520℃程度であるため、この温度以上に速く上げることが重要である。従って昇温速度は速いほど好ましく、例えば、10℃/秒以上、好ましくは15℃/秒以上、さらに好ましくは20℃/秒以上の範囲から選択でき、他の条件に応じて適宜調節するのが望ましい。なお昇温速度は、通常、70℃/秒以下、好ましくは60℃/秒以下、さらに好ましくは50℃/秒以下程度である。
【0018】
昇温後の保持温度(合金化温度)が高いほど合金化度が高くなる。保持温度は、例えば、550℃以上、好ましくは580℃以上、さらに好ましくは600℃以上の範囲から選択でき、他の条件に応じて適宜調節するのが望ましい。なお合金化温度が高すぎるとΓ相の成長が著しいため、通常、700℃以下、好ましくは680℃以下、さらに好ましくは650℃以下である。
【0019】
合金化温度での保持時間が長いほど合金化度は高くなる。保持時間は、例えば、5〜60秒程度、好ましくは5〜30秒程度、さらに好ましくは10〜20秒程度の範囲から選択でき、他の条件に応じて適宜調節するのが望ましい。
【0020】
合金化温度からの冷却速度は速い程好ましい。冷却速度が遅いと、合金化が進み過ぎ、Γ相の成長が顕著となる。冷却速度は、例えば、5℃/秒以上、好ましくは10℃/秒以上、さらに好ましくは15℃/秒以上の範囲から選択でき、他の条件に応じて適宜調節するのが望ましい。また冷却速度は、通常、50℃/秒以下、好ましくは40℃/秒以下、さらに好ましくは30℃/秒以下程度である。
【0021】
なお合金化処理における加熱手段は特に限定されず、慣用の種々の方法(ガス加熱、インダクションヒーター加熱など)が利用できる。
【0022】
本発明では、めっき層中のδ相を多くするだけでなく、めっき層表面の粗度を適切な範囲に制御することも重要である。粗度は種々の指数、例えば、最大高さRmax、十点平均粗さRz、中心線平均粗さRa、PPI/50μinchなどによって特定できるが、これらの中から、中心線平均粗さRa、及びPPI/50μinchで表面粗度を特定すると、表面粗度と摺動性及び加工性との関係を一義的に整理でき有利である。なお、前記PPI/50μinchとは、鋼表面の粗さ曲線の平均線から正負両方向に50μインチ(1.27μm)変位した高さに正及び負の基準レベルを設け、前記曲線が負の基準レベルよりも低くなった後、正の基準レベルを超える場合に1山とカウントしたときの1インチ(2.54cm)あたりの山数を示す。
【0023】
さらに本発明では、前記中心線平均粗さRa及びPPI/50μinchのいずれか一方ではなく、その両方を所定の範囲に制御することが重要である。片方だけを制御しても、摺動性及び加工性を高めることはできない。
【0024】
具体的には、中心線平均粗さRaを0.1〜1.0μm(好ましくは0.2〜1.0μm程度、さらに好ましくは0.2〜0.9μm程度、特に0.2〜0.75程度)に調整し、PPI/50μinchを5〜130程度(好ましくは10〜120程度、さらに好ましくは10〜100程度、特に20〜100程度)に調整する。中心線平均粗さRaが大きすぎると、めっき層表面をδ相化しても摺動性が低下する虞があり、加工性が低下する虞がある一方、中心線平均粗さRaが小さすぎても、プレス成形時に金型上で油切れを起しやすく、めっき層と金型とが金属接触するため、めっき層が金型へ凝着し、加工割れが発生する虞がある。またRaのみを所定の範囲に制御しても、PPI/50μinchが大きすぎると、周りの凹凸に比べて極めて突出した山(又は谷)が多数存在するため、表面の凹凸が不均一になり、プレス成形時に局部的に面圧が高くなったり、油切れを起し易くなり、プレス成形性が安定しない。
【0025】
めっき層表面の粗度を上記範囲に制御するためには、合金化後のめっき層表面を平滑化処理(スキンパスロール処理などの圧延処理など)だけでなく、めっきを施す前の鋼板(めっき原板、母材)を予め適当な粗度に調整しておくことが望ましい。めっき原板の粗度の調整と平滑化処理との両方を行うのは、以下の理由による。
【0026】
すなわち平滑化処理によってめっき表面の凸部を押圧することによって中心線平均粗さRaを所定の範囲に制御することができるが、凹部形状は殆ど変化しないためPPI/50μinchを制御することは難しい。そこでめっき層表面のPPI/50μinchを制御するためには、めっき原板の粗度(中心線平均粗さRa、PPI/50μinch)を予め調整しておくことが好ましい。めっき原板の粗度を予め調整しておくと、原板の粗度によって合金化の均一性を制御でき、ひいてはめっき表面の粗度を制御できる。
【0027】
めっき原板の中心線平均粗さRaは、例えば、0.01〜1μm程度、好ましくは0.05〜0.9μm程度である。
【0028】
めっき原板のPPI/50μinchは、例えば、5〜50程度、好ましくは10〜45程度である。
【0029】
なおめっき原板の粗度調整方法は特に限定されず、例えば、バレル研磨、バフ研磨、ブラスト加工、化学研磨、電解研磨などから選択される任意の手段により、めっき原板の祖度を調整することが可能である。
【0030】
めっき原板の種類は特に限定されず、例えば、汎用の自動車部品用鋼(アルミキルド鋼など)の他、IF鋼(Ti添加IF鋼、Ti−Nb複合添加IF鋼など)、焼き付け硬化型鋼板、各種ハイテン材などが使用できる。また原板は、冷延鋼板であってもよく、熱延鋼板であってもよい。
【0031】
特に本発明は、汎用の自動車部品用鋼(アルミキルド鋼など)、IF鋼などに対して有利である。すなわち本発明によれば、汎用の自動車部品用鋼(アルミキルド鋼など)であっても、めっき層の相構造及び表面粗度を調整しているため、合金化亜鉛めっきしても高い加工性が得られ、製造コストを低減できる。またIF鋼を用いる場合であっても、原板(IF鋼)の表面粗度を調整してから、合金化速度を制御しつつ合金化亜鉛めっきすることによって、めっき表面層の粗度と比ζ/δを制御しているため、めっき剥離を抑制でき、加工性を高めることができる。
【0032】
めっき層表面の平滑化処理に用いるスキンパスロールの表面の中心線平均粗さRaは、通常、0.1〜1μm程度、好ましくは0.3〜0.95μm程度、さらに好ましくは0.6〜0.9μm程度の範囲から選択できる。スキンパスロールの中心線平均粗さRaが大きすぎると、めっき層の表面粗度の制御ができない場合がある。またスキンパスロールの中心線平均粗さRaが小さすぎると、異物等がかみ込んだ場合にロール表面に疵が入りやすくなって製品外観に悪影響を与える場合がある。
【0033】
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、表面の摩擦係数μが小さく、摺動性に優れているため、加工性にも優れている。すなわち摩擦係数μが小さいと、摺動性が向上するだけでなく、更に成形可能範囲が広がり、プレス成形時に材質や成形条件のばらつきの影響を受けにくくなる。摩擦係数μが高い場合では、BHF(ブランクホルダー圧)を低くするとシワが発生し易くなり、BHFを高くすると割れが発生し易くなるが、摩擦係数μが小さい場合には、BHFを高くしても割れが発生しにくくなり、成形可能範囲が広がり、非常に使いやすい材料となる。
【0034】
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、高い加工性を有しているため、難成形部品[深絞り加工などのような材料流入を伴う加工を行うことによって得られる部品、例えば、サイメンアウター、クォーターパネル]などに使用しても、加工割れが発生する虞がない。そのため幅広い用途(特に、自動車用部品)に使用できる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0036】
実施例
間接加熱型の連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、表1に示す条件に従ってTi添加IF鋼(板厚0.8mm)を亜鉛めっきし、ガス加熱によって合金化し、スキンパスロールを用いて前記めっき鋼板を圧延した。
【0037】
【表1】
Figure 2004190074
【0038】
得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層の組成、組織及び表面粗度を以下のようにして測定すると共に、摺動性及び加工性について以下のようにして評価した。
【0039】
[組成]
めっき層を塩酸に溶解した後、原子吸光分析によってFe濃度を測定した。
【0040】
[組織]
X線回折において、バックグラウンドの強度[I(bg)]を測定すると共に、ζ相に対応するd=1.26のピークの強度[I(d=1.26)]と、δ相に対応するd=1.28のピークの強度[I(d=1.28)]とを測定した。下記式に基づいて、ζ相のピーク強度[I(ζ)]、δ相のピーク強度[I(δ)]を算出し、ζ相とδ相との比[I(ζ)/I(δ)]を求めた。
【0041】
I(ζ)=I(d=1.26)−I(bg)
I(δ)=I(d=1.28)−I(bg)
[表面粗度]
触針式の粗度計を用い、JIS B0601に準拠して、めっき層表面の中心線平均粗さRa及びPPI/50μinchを測定した。なお、測定は原板の圧延方向(L方向)と直行方向(C方向)との2方向に対して行い、その平均値をめっき層表面の粗度とした。
【0042】
[摺動性]
合金化溶融亜鉛めっき鋼板(試験片)の表面及び裏面それぞれに、防錆油(日本パッカー製「ノックスラスト550HN」)を塗布量約1.5g/mで塗布した。一組の18mm角の平面工具で前記試験片を挟み込んだ状態(押さえ圧30MPa)で、この試験片を引き抜き、引き抜きに要した力を測定し、下記式に基づいて摩擦係数μを算出し、下記基準に従って評価した。
【0043】
摩擦係数μ=F/2P
(式中、Fは引き抜きに要した力(N)を示し、Pは平面工具による押さえ圧(N)を示す)
◎:μ≦0.13
○:0.13<μ≦0.15
△:0.15<μ≦0.17
×:0.17<μ
これらの結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
Figure 2004190074
【0045】
表1及び表2から明らかなように、比較例1は、合金化の各条件(浸入板温、有効Al濃度、めっき浴温度、合金化時昇温速度、合金化温度、保持時間、冷却速度など)を個別でみると不適切ではないものの、浸入板温、めっき浴温度、昇温速度などが低めで推移しているために合金化が不十分となっており、その結果、I(ζ)/I(δ)が大きくなり、摺動性が低くなっている。比較例2は、原板の中心線平均高さRaが大きくなっているため、めっき層の中心線平均高さRaも大きくなっており、摺動性が低い。比較例3は、原板の中心線平均高さRa及びPPI/50μinchが共に大きくなっているため、めっき層の中心線平均高さRa及びPPI/50μinchが共に大きくなっており、摺動性が極めて低い。比較例4は、スキンパスロールの表面祖度が大きすぎるため、PPI/50μinchが大きくなっており、摺動性が低い。比較例5及び6は、合金化時の昇温速度及び合金化温度が低めに推移しているために合金化が不十分となっており、かつスキンパスロールの表面祖度が大きすぎるため、めっき層のI(ζ)/I(δ)及びPPI/50μinchが共に大きくなってしまい、摺動性が極めて低い。これらに対して実施例では、I(ζ)/I(δ)、中心線平均高さRa及びPPI/50μinchがいずれも小さいため、摺動性が高い。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、めっき層中のζ相を低減しδ相を増大させると共に、表面粗度を適切な範囲に調整しているため、めっき鋼板の摺動性及び加工性を高めることができ、通常の成形部品のみならず難成形部品も安定して成形できる。また本発明では、電気めっきラインを併設することなく、溶融亜鉛めっきラインだけで摺動性及び加工性を高めることができるため、低コストで加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。

Claims (3)

  1. めっき層中のζ相とδ相の比ζ/δ(X線回折強度比)が0.10以下であって、めっき層の表面粗度のうち中心線平均粗さRaが0.1〜1.0μmであり、かつPPI/50μinchが5〜130であることを特徴とする加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 請求項1記載の鋼板を成形加工した自動車部品。
  3. 中心線平均粗さRaが0.1〜1μm、PPI/50μinchが1〜50である鋼板を亜鉛めっきし、合金化処理した後、めっき層表面を平滑化する請求項1記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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