JP2009109475A - 表面処理鋼板の耐食性評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面処理鋼板に深絞り加工、一軸引張り加工、平面摺動加工のいずれか1種類以上の加工を付与し、前記加工付与後の異種又は同種の表面処理鋼板を重ね合わせて鋼板合わせ部を形成する。次いで、前記鋼板合わせ部を形成した鋼板を試験片として腐食環境に供して耐食性を評価する。ここで、前記鋼板合わせ部は、前記異種又は同種の表面処理鋼板を抵抗溶接で接合して形成されることが好ましい。また、より実際の自動車構造を模擬するように、鋼板合わせ部を形成した後、化成処理および電着塗装を施し試験片とし、この試験片に対して腐食環境に供して耐食性を評価することが好ましい。腐食試験は例えばSAE J2334で行うことができる。
【選択図】図4
Description
そこで、上記課題を解決するため、例えば、実際の環境における腐食を再現するために、暴露試験や自動車に試験片を取り付けて走行するOn Vehicle Test などが行われている。
また、環境条件だけでなく、自動車を模擬し加工した試験片を腐食試験に用いる場合もある。例えば、自動車のプレス成形を模擬して、表面処理鋼板に張出し加工や深絞り加工を付与した試験片が腐食試験に供されている(例えば特許文献1)。
さらに、多種多様な試験片が用いられている。例えば、外板向け表面処理鋼板においては、チッピングなどによる塗膜損傷を起点とする外観腐食に対する耐食性が要求されることから、塗装した表面処理鋼板に、人工的に傷を付与した試験片が用いられる。また、鋼板合わせ部の穴あき腐食に対する耐食性は、合わせ内部特有の腐食環境を模擬するために、試験片として、鋼板を重ね合わせた試験片やヘミング形状に加工した試験片が用いられる。
さらに、表面処理鋼板は、製品への成形加工により、めっきや化成処理層が損傷を受けることで耐食性が劣化するので、深絞り成形した試験片や実部品を用いて腐食試験が行われている。
これらの表面処理皮膜は、製造時においては、比較的均一に鋼板表面に被覆されているが、加工を付与することでめっき皮膜や化成処理皮膜(これらのまとめて表面処理皮膜と称す)が損傷する場合がある。場合によってはパウダリングやフレーキングなどの剥離現象を引き起こす。特に自動車部品の多くは、形状が複雑で難成形な形状のものが多く、加工による変形や摺動が大きいため、めっきや化成処理皮膜は損傷を受け易い。このように、表面処理皮膜が損傷を受けた場合は、該皮膜の防錆効果が損なわれる可能性がある。
さらに、自動車において、腐食が激しい代表的な部位としては、フード、ドア、クオーター、ホイールハウス、サイドシルなどの鋼板合わせ部が挙げられることから、合わせ部形状で評価することが必要となる。
[1]自動車クォーターに用いられる表面処理鋼板の耐食性評価方法であって、表面処理鋼板に深絞り加工、一軸引張り加工、平面摺動加工のいずれか1種類以上の加工を付与し、前記加工付与後の異種又は同種の表面処理鋼板を重ね合わせて鋼板合わせ部を形成し、次いで、前記鋼板合わせ部を形成した鋼板を試験片として腐食環境に供して耐食性を評価することを特徴とする表面処理鋼板の耐食性評価方法。
[2]前記[1]において、前記鋼板合わせ部は、前記異種又は同種の表面処理鋼板を接合して形成されることを特徴とする表面処理鋼板の耐食性評価方法。
[3]前記[2]において、前記接合が、抵抗溶接による接合であることを特徴とする表面処理鋼板の耐食性評価方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記試験片は、前記鋼板合わせ部を形成した後、化成処理および電着塗装を施したものであることを特徴とする表面処理鋼板の耐食性評価方法。
本発明の耐食性評価の対象である自動車クォーター材(クォーターに相当するサイドパネルの外板でホイールハウス外板と重なる部分またはリヤフェンダー)の場合は、材料の深絞り加工の要素が強く、鋼板合わせ部になるフランジ部分は引張りと圧縮の変形を同時に受ける。また、材料の流入に伴い、金型との摺動を受けた部分がパネル部品の一部を形成する。ゆえに、クォーター材の耐食性評価試験を行うに際し、実際の自動車クォーター材の腐食に対して相関性が高い評価結果を得るためには、自動車クォーター材の特徴的な成形様式の加工、すなわち、深絞り加工、一軸引張り加工、平面摺動加工のいずれか1種類以上の加工を表面処理鋼板に付与したものを試験片とすることが重要となる。特に好ましいのは、表面処理鋼板に、2種類の加工を付与する場合であり、例えば深絞り加工または一軸引張り加工を付与した後にさらに平面摺動加工を付与する、あるいは、平面摺動加工を付与した後にさらに例えば深絞り加工または一軸引張り加工を付与するものである。そして、このように、自動車クォーター材の加工を模擬して、事前に表面処理鋼板を加工しておき、加工後の表面処理鋼板を試験片として腐食試験を行うことにより、実際の自動車クォーター材の腐食を高い精度で再現することができる。
具体的には、まず、表面処理鋼板に深絞り加工、一軸引張り加工、平面摺動加工のいずれか1種類以上の加工を付与し、前記加工付与後の異種又は同種の表面処理鋼板を重ね合わせて鋼板合わせ部を形成する。次いで、前記鋼板合わせ部を形成した鋼板を試験片として腐食環境に供して耐食性を評価することを特徴とする。
この時、鋼板合わせ部は、前記異種又は同種の表面処理鋼板を接合して形成されることが好ましい。また、特に抵抗溶接により接合されることが好ましい。
また、前記試験片は、鋼板合わせ部を形成したのち、化成処理および電着塗装を施したものであることが好ましい。
以下、詳細に説明する。
自動車クォーター材を模擬するために、例えば、表面処理鋼板に対して円筒状に深絞り加工、若しくは一軸引張り加工を行う。加工の方法はコニカルカップ試験機や通常の引張り試験機など成形性能を評価するための試験機を使用してもよい。
また、表面処理鋼板に対して平面摺動加工を行うこともできる。加工の方法は、摺動試験機により、材料のしごきと変形を付与することで、クォーター、またはそれに相当するサイドパネルやリヤフェンダーの摺動加工が厳しい部位を模擬することができる。
上記加工は1回だけでなく、複数種、複数回の加工を付与することができ、この時の加工方法、回数等は特に限定されず、実際に用いられる自動車クォーター材の加工方式を考慮して選択することが好ましい。
自動車では、完全に塗装された外面よりも、複数の鋼板が重なり合った鋼板合わせ部の方が穴あき腐食が発生し易く、防錆対策の中心となっている。このため、自動車クォーターに用いられる表面処理鋼板の耐食性を評価するにあたっては、クォーター内外板の合わせ部やクォーターと他の部品とで構成される合わせ部における腐食を再現するため、表面処理鋼板に加工を付与した後、表面処理鋼板を重ね合わせて鋼板合わせ部を形成することとする。この時の鋼板合わせ部を形成する鋼板は同種であっても異種であってもどちらでもよい。
また、鋼板合わせ部は、異種又は同種の表面処理鋼板を接合して形成することができる。例えば、スポット溶接等の抵抗溶接で接合して形成することができる。抵抗溶接は自動車の製造工程で使用されている接合方法であり、実験室においても溶接機を用いることにより簡便に接合することができる方法のため、鋼板合わせ部の形成に際し、好適に使用される。しかし、鋼板合わせ部の接合方法は上記に限定されず、他には、シーム溶接等の抵抗溶接の他に、トックス接合などのかしめ、ロウ付け、摩擦攪拌接合等が挙げられる。
試験片を、例えば、複合サイクル試験などの腐食環境に供し、所定期間後の腐食の状態を観察する、若しくは塗膜の膨れ幅、赤錆の発生頻度などを定量的に測定することによって耐食性を評価する。
耐食性を評価する方法は特に限定しない。自動車用外観腐食試験法として国内外で規格化されている試験法、例えば、国内では、JASO M 609-91で規格された試験法、米国では、Society of Automotive Engineers(自動車技術者協会)で定めたSAE J2334などの複合サイクル試験法を用いることができる。
また、自動車の生産工程に従い、鋼板合わせ部を形成した鋼板に対して、化成処理および電着塗装を施し試験片として、この試験片を腐食環境に供して耐食性を評価することが好ましい。このように鋼板合わせ部に対して電着塗装までの一連の処理を施した試験片を用いることで、より実際の自動車構造を模擬することができる。
なお、化成処理および電着塗装の条件は特に限定しないが、以下に化成処理および電着塗装の条件の一例を示す。
日本パーカラインジング(株)製PB-3080りん酸塩化成処理液を用いて、りん塩皮膜量が1.8〜2.2g/m2になるように化成処理を行った後、関西ペイント(株)製自動車用電着塗料を用いて、焼付け後の膜厚が18〜24μmになるように塗装する。その後、170℃の雰囲気で20分間焼付け処理する。また、化成処理前に脱脂処理、表面調整処理を行ってもよい。
試験片には、鋼板合わせ内部だけを腐食させ、外面からの腐食の影響を除くために、合わせ部を形成した鋼板の外表面(合わせ開口部を除く)にシールを施すことが好ましい。
板厚0.75mmでめっき付着量45g/m2、及び60g/m2の合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA45およびGA60)2種と、板厚0.75mmでめっき付着量50g/m2の電気亜鉛めっき鋼板(EG50)ならびに冷延鋼板の計4種に対して、図1に示す深絞り加工と図2に示す一軸引張り加工をそれぞれ施した。深絞り加工後の鋼板各2枚はそのままサンプルとした。一方、一軸引張り加工を受けた鋼板は加工を受けた箇所からサンプルとして各2枚切り出し採取した。次いで、同種の鋼板の上記サンプルをスポット溶接で接合して合わせ部を形成し、図3に示す深絞り加工による試験片(本発明例1;n=3)と図4に示す一軸引張り加工による試験片(本発明例2;n=3)を作製した。次いで、作製した試験片の評価面の腐食に影響を及ぼす部位にポリエステル製粘着テープ(日東電工(株)製リビック(登録商標))でシールした。なお、上記一軸引張り加工は、引張り速度1m/minの条件にて行い、上記深絞り加工は、ブランク径100mmφ、ポンチ径50mmφ、しわ押さえ29420N(3tf)、速度2mm/secの条件にて深さ30mmの深絞り加工を行った。
比較サンプルとして、上記本発明と同様に4種の鋼板を用いて、加工を行わず、それ以外は上記本発明2と同じ方法で作製した試験片(比較例1;n=3)を準備した。また、上記本発明の加工方法(一軸引張り加工および深絞り加工)の代わりに図5に示す張出し加工を行ない、図6に示す試験片とした以外は上記本発明と同じ方法で作製した試験片(比較例2;n=3)を準備した。なお、上記張出し加工は、しわ押さえ147100N(15tf)、速度1m/minの条件にて高さ20mmの張り出し加工を行った。
また、本試験の評価のために、各めっきをクォーターに使用し、北米を8〜12年走行した車両(各めっきについて3台)のクォーターの鋼板合わせ部の腐食深さ測定データを用いた。なお、これら車両のクォーターの鋼板合わせ部には、シーラー、ワックス等の副資材は使用されていない。
腐食試験の終了は、上記の冷延鋼板と実車データの最大腐食深さの比が約1になるサイクルで全てのサンプルの試験を終了させた。試験後、鋼板合わせ部の溶接部に穴をあけて分解し、内部の腐食生成物を除錆剤により溶解除去した後、ポイントマイクロメーターを用いて板厚を測定し、各試験片の健全部に対する板厚減少値(腐食深さ)の最大値を求めた。また、各試験片の最大腐食深さ(n=3)は、同種のめっき材を使用した実車クォーター材の最大腐食深さ(n=3)それぞれを1とした場合の比を求めて評価した(全評価値としてn=9となる)。
以上の方法により得られた結果を図7に示す。
これに対して、本発明の深絞り加工または一軸引張り加工を付与し鋼板合わせ部を形成した試験片(本発明例1および2)では、全てのめっき鋼板(GA45、EG50、GA60)について冷延鋼板と同様に実際の自動車との腐食比が0.5〜1.5の範囲であり、実際の自動車におけるクォーターの耐食性を高い精度で再現した。
リン酸塩化成処理液(日本パーカライジング(株)製PB−3080)を用いて、りん酸塩皮膜量が1.8〜2.2g/m2となるように化成処理を行った後、関西ペイント(株)製自動車用電着塗料を用いて電着塗装した。その後、170℃の雰囲気で20分間焼付け処理し、膜厚が18〜24μmの電着塗膜を形成した。
以上の方法により得られた結果を実施例1の結果と併せて図7に示す。
Claims (4)
- 自動車クォーターに用いられる表面処理鋼板の耐食性評価方法であって、表面処理鋼板に深絞り加工、一軸引張り加工、平面摺動加工のいずれか1種類以上の加工を付与し、前記加工付与後の異種又は同種の表面処理鋼板を重ね合わせて鋼板合わせ部を形成し、次いで、前記鋼板合わせ部を形成した鋼板を試験片として腐食環境に供して耐食性を評価することを特徴とする表面処理鋼板の耐食性評価方法。
- 前記鋼板合わせ部は、前記異種又は同種の表面処理鋼板を接合して形成されることを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板の耐食性評価方法。
- 前記接合が、抵抗溶接による接合であることを特徴とする請求項2に記載の表面処理鋼板の耐食性評価方法。
- 前記試験片は、前記鋼板合わせ部を形成した後、化成処理および電着塗装を施したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理鋼板の耐食性評価方法。
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