JP2013189671A - 溶融Al−Zn系めっき鋼板 - Google Patents

溶融Al−Zn系めっき鋼板 Download PDF

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【課題】優れた耐食性、特に、優れた合わせ部の耐食性を有する溶融Al−Zn系めっき鋼板を提供する。
【解決手段】溶融Al−Zn系めっき層中に、Siを0.5mass%以上、Srを0.05〜10mass%の範囲で含有させためっき鋼板とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、耐食性に優れた溶融Al−Zn系めっき鋼板、特に合わせ部耐食性に優れた溶融Al−Zn系めっき鋼板に関するものである。
めっき層中に、Alをmass%で20〜95%含有する溶融Al−Zn系めっき鋼板は、特許文献1に示すように、溶融亜鉛めっき鋼板に比べて優れた耐食性を示すことが知られている。
一般に、溶融Al−Zn系めっき鋼板は、スラブを熱間圧延や冷間圧延して得た薄鋼板を下地鋼板として用い、連続式溶融めっきラインの焼鈍炉にて、再結晶焼鈍および溶融めっき処理を施されて得られるものである。そして、Al−Zn系めっき層は、下地鋼板との界面に存在する合金相と、その上に存在する上層からなる。さらに、上層は、主としてZnを過飽和に含有し、Alがデンドライト凝固した部分と、残りのデンドライト間隙の部分からなっており、デンドライト凝固部分は、めっき層の膜厚方向に積層している。
このような層構造により、めっき層表面からの腐食進行経路が複雑になり、下地鋼板に対して、腐食が容易に到達しなくなる。そのため、溶融Al−Zn系めっき鋼板は、めっき層の厚みが同一の溶融亜鉛めっき鋼板に比べて優れた耐食性を示すことになる。
また、通常、めっき浴には、不可避的不純物や、鋼板およびめっき浴中の機器等から溶出するFeなどの混入の他、過度の合金相成長抑制のために、Si(Alの含有量に対して0.5%以上)が添加されている。
このSiは、合金層中に金属間化合物の形で、あるいは上層に金属間化合物、固溶体または単体の形で存在している。そして、このSiの添加効果により、溶融Al−Zn系めっき鋼板の界面の合金層成長が抑えられるため、合金層の厚さは約1〜5μm程度に抑えられている。従って、めっき層厚が同一ならば、合金層が薄いほど耐食性向上に効果のある上層が厚くなるから、合金層の成長を抑制することは耐食性の向上に寄与することになる。
また、合金層は上層よりも固く、加工時にクラックの起点として作用するので、合金層の成長抑制は、クラックの発生を減少させ、曲げ加工性を向上させる効果も、併せてもたらす。なお、発生したクラック部は、下地鋼板が露出して耐食性に劣っているので、クラックの発生を減じることは、曲げ加工部耐食性を向上させることにもなる。
上述したように、耐食性に優れる溶融Al−Zn系めっき鋼板は、長期間屋外に曝される屋根や壁などの建材分野を中心に需要が伸び、近年は、自動車向けの鋼板としても使用されるようになってきた。
特に、自動車向けの場合、地球温暖化対策の一環で車体を軽量化して燃費を向上させ、CO排出量を削減することが求められており、これにより高強度鋼板の使用による軽量化と、鋼板の耐食性向上によるゲージダウンが強く望まれている。
しかし、溶融Al−Zn系めっき鋼板を、自動車向けとして用いるには、以下の問題がある。
一般的に、溶融めっき鋼板は、自動車向けに使用される場合、連続式溶融めっき設備でめっきまで施した状態で自動車メーカー等に供され、そこで、車体部品形状に加工、接合された後、化成処理、電着塗装が施される。そのため、自動車向けの場合は、接合部に鋼板同士が重なる、いわゆる合わせ部が必然的にできる。そして、この部分は、化成処理や、電着塗装が施されにくいので、化成処理、塗装が適切に施された部分と比較して、穴あき耐食性に劣る、つまり合わせ部の耐食性が劣るという問題がある。
この問題に対して、特許文献1には、めっき層中にCaを含有させることで、合わせ部の耐食性を改善させた溶融Al−Zn系めっき鋼板が開示されている。
また、特許文献2にはMgとCaを、特許文献3にはMgとSrとをそれぞれめっき層中に含有させた溶融Al−Zn系めっき鋼板が開示されている。
特開2011−6785号公報 特許第4264373号公報 特開2000−328214号公報
しかしながら、上掲した特許文献1に開示されている技術では、めっき鋼板同士(Al−Zn系めっき鋼板と合金化溶融亜鉛めっき鋼板)での合わせ部に対する耐食性の向上が図られているものの、Al−Zn系めっき鋼板と冷延鋼板とが組み合わさった合わせ部の耐食性を向上させるまでには至っていない。
また、上掲した特許文献2および3に記載のめっき鋼板も、特許文献1のAl−Zn系めっき鋼板と同様に、Al−Zn系めっき鋼板と冷延鋼板とが組み合わさった合わせ部の耐食性が十分とは言えなかった。
さらに、特許文献2および3において用いられる燃焼性の高いMgを含むめっき浴は、空気に触れると火花を放つため、設備の安全を考慮すると、極めて扱いにくいという問題を残していた。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、優れた耐食性、特に、優れた合わせ部耐食性を有する溶融Al−Zn系めっき鋼板を提供することを目的とする。
発明者らは、上述した課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、めっき層中にSr、または、SrおよびCaを所定量含有することにより、従来にない優れた耐食性、特に、優れた合わせ部耐食性が得られることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鋼板表面に、Al含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき層を有する溶融Al−Zn系めっき鋼板において、
上記溶融Al−Zn系めっき層中に、Siを0.5mass%以上、Srを0.05〜10mass%の範囲で含有させたことを特徴とする溶融Al−Zn系めっき鋼板。
2.前記溶融Al−Zn系めっき層中に、さらにSiを、Al含有量に対するSi含有量比:0.005〜0.10の範囲で含有させたことを特徴とする前記1に記載の溶融Al−Zn系めっき鋼板。
3.前記溶融Al−Zn系めっき層中に、さらにCaを、Srとの合計量で、0.05〜10mass%含有させたことを特徴とする前記1または2に記載の溶融Al−Zn系めっき鋼板。
4.前記溶融Al−Zn系めっき層を、めっき層表面から下地鋼板方向に2等分したとき、前記Srまたは前記SrおよびCaの含有量が、下地鋼板側よりめっき層表面側で多いことを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の溶融Al−Zn系めっき鋼板。
本発明によれば、めっき外観、耐食性、特に合わせ部耐食性に優れた溶融Al−Zn系めっき鋼板が得られる。そして、本発明の溶融Al−Zn系めっき鋼板を高強度鋼板に適用することにより、自動車分野において、軽量化と優れた耐食性の両立が可能となる。
合わせ材試験片を示す図である。 耐食性試験のサイクルを示す図である。 腐食深さ測定部の区切り方を示す図である。 グロー放電発光分析装置により、めっき層を貫通してSrを分析した結果を示す図である。(実施例18)
以下、本発明を具体的に説明する。なお、以下に述べるめっき浴または溶融Al−Zn系めっき層(以下、単にめっき層とも称す)の成分組成は、特に断らない限りmass%を表すものとする。
本発明の対象とするめっき鋼板は、めっき層中にAlを20〜95%含有する溶融Al−Zn系めっき鋼板である。また、下地鋼板としては、特に限定はされず、従来公知の溶融Al−Zn系めっき鋼板に用いられるもので良い。
ここで、Al含有率を20%以上にすると、下地鋼板との界面に存在する合金層と、その上に存在する上層との二層のうち、上層に、Alのデンドライト凝固が起こる。これによって、上層は、主としてZnを過飽和に含有し、またAlがデンドライト凝固した部分とデンドライト間隙部分とで構成されるようになる。その結果、デンドライト凝固部分がめっき層の膜厚方向に積層し、耐食性や、加工性に優れた構造となるのである。なお、めっき層中に、このような積層構造を安定的に得るには、Al含有率を45%以上にすることが望ましい。
一方、Al含有率が95%超では、Feに対して犠牲防食作用を持つZn量が少なくなるため、下地鋼板が露出した場合に耐食性が劣化してしまう。
一般的に、めっきの付着量が少ないほど下地鋼板が露出しやすいが、付着量が少なくても十分な耐食性を得るためには、Al含有率を85%以下にすることが好ましい。
従って、めっき層中のAl含有量は20〜95%の範囲が必須であり、性能面(耐食性、加工性等)と操業面とのバランスから、Al含有量の好ましい範囲は45〜85%の範囲である。
Al−Zn系の溶融めっきでは、Alの含有率の増加に伴い、めっき浴の温度(以下、浴温度と称す)が高くなるため、操業面での問題が懸念されるが、前記Al含有率の範囲内であれば、浴温度が適度に調整できる範囲であり問題はない。
ここで、めっき層の成分組成は、合金層に含まれるFeの存在により、めっき浴の成分組成とは異なるが、Fe以外の元素の組成比は、めっき浴の組成比とほぼ一致するため、めっき浴の成分組成の調製により、めっき層の成分組成を制御することができる。なお、めっき層中のFeの含有率は、合金化処理をしない場合、最大で0.2%程度である。
また、めっき層中には、Siを、Si含有量とAlの含有量との比(Si含有量/Al含有量)が、0.005〜0.10の範囲となるように含ませることが好ましい。
というのは、上記比が0.005以上の場合、合金層の形成を、効果的に抑制することができるようになるので、前述したように、耐食性を向上させる機能を持つ上層の割合が増加し、耐食性を向上させることができるからである。なお、めっき浴中でも、SiをAlの含有量に対する比で0.005以上含ませることで、過度の合金層成長を抑制することが可能となる。
また、合金層成長を十分に、そして安定的に抑制するためには、めっき浴中のSiの含有量をAlに対して0.015以上で、かつめっき浴全体に対して0.5%以上含有することが好ましい。
一方、上記比が0.10超の場合、合金層成長の抑制効果が飽和するだけではなく、ドロスの発生量が増加して浴組成管理が困難となる。従って、Si含有量の好適範囲は、Al含有量に対する比で0.005〜0.10の範囲とする。
本発明においては、めっき層中に、Siを0.5%以上、Srを0.05〜10%の範囲で含有することが必須である。また、本発明では、さらに、Caを添加して、めっき層中のSrおよびCaの合計量を0.05〜10%の範囲とすることもできる。
めっき層中にSiを上記した範囲で含有する、すなわちめっき浴中にSiを0.5%以上含有することにより、前述したとおり、下地鋼板との界面に形成する合金層成長の抑制効果が得られ、合金層とその上に存在する上層との二層からなるめっき相構造を安定的に形成することができる。
また、めっき層中にSrおよびCaを、それぞれ上記した範囲で含有することにより、これらの元素が、鋼板合わせ部に生じる腐食生成物中に含まれて、腐食生成物が極めて安定化するのである。さらに、Srを含む腐食生成物は、Caのみを含む腐食生成物に比べて、溶解度が小さく安定するため、以降の腐食の進行を遅延させる効果をもたらす。
ここに、Srの含有量、またはCaをさらに添加したSrおよびCaの合計含有量が0.05%未満では、その添加効果に乏しい。一方、10%超では、その効果が飽和する上に、添加量の増加に伴い、製造コストが上昇し、さらにドロス発生量の増加に伴い、浴組成の管理が困難になる。従って、めっき層中に含有するSr、または、SrおよびCa含有量は、いずれも0.05〜10%の範囲とする。
腐食生成物の安定化効果を、さらに十分に発揮する観点から、めっき層の表面からめっき層の1/2厚みまでと、1/2厚みから下地鋼板まで、すなわち、めっき層を、めっき層表面から下地鋼板方向に2等分したときに、めっき層中に含有されるSr、またはSrおよびCaは、下地鋼板側よりもめっき層表面側に多く存在することが好ましい。というのは、SrやCaがめっき層表面側に多く存在することで、腐食の初期段階から、SrやCaが腐食生成物中に含有されるようになって、より一層、腐食生成物を安定化することが可能になるからである。
なお、本発明において、SrやCaがめっき層表面側に多く存在するとは、例えば、グロー放電発光分析装置を用いてめっき層を貫通して分析したときに、Sr、または、SrおよびCaの全積算強度の50%超が、めっき層表面側から検出されることを意味する。なお、上記確認方法は、めっき層中の元素の深さ方向の濃度分布を検出できる方法であれば、いずれの方法でもよく、特に限定されるものではない。
次に、本発明の溶融Al−Zn系めっき鋼板を得るために好適な製造方法について説明する。
本発明の溶融Al−Zn系めっき鋼板は、連続式溶融めっき設備などで製造されるが、めっき浴中のAl含有率を25〜95%、さらにSr含有率を0.05〜10%とする必要がある。
また、Si含有量をAlの含有量に対する比で0.005〜0.10とし、さらに、SrおよびCaの合計含有率を0.05〜10%とすることができる。
上記した組成のめっき浴を用いることにより、本発明に従う溶融Al−Zn系めっき鋼板が製造可能となる。
なお、本発明のめっき鋼板のめっき浴には、上述したAl、Zn、Sr、CaおよびSi以外にも、例えばV、Mn、Ni、Co、Cr、Ti、Sb、Mo、B、Be、Mg、ZrおよびCr等の元素であっても、本発明の効果が損なわれない限り存在していても問題はない。また、めっき浴には不可避的不純物、および、鋼板やめっき浴中の機器等から溶出するFeが含まれる。めっき浴中のFe含有率は、最大で0.2%程度である。
めっき層中に含有されるSr、または、SrおよびCaが、前記下地鋼板側より前記めっき層表面側で多い溶融Al−Zn系めっき鋼板を製造することは、通常の連続式溶融めっき操業のめっき工程中において、めっき層の凝固過程を制御することで達成されるが、その方法は特に限定されるものではない。
例えば、めっき浴へ浸入する鋼板の温度(以下、浸入板温と称す)をめっき浴の温度よりも低くして、めっき層の凝固反応を、下地鋼板側からめっき層表面側に向けて進行させ、Sr、または、SrおよびCaをめっき層表面側に排出するようにすれば良い。なお、この場合、浸入板温は浴温度より5〜20℃低くすることが好ましい。
また、別の方法としては、めっき後の冷却速度を速くして、合金層形成を抑制することで合金層に取り残されるSr、または、SrおよびCaを少なくする方法が挙げられる。
この場合、めっき後の冷却速度は10℃/秒以上、より好ましくは、10℃/秒以上20℃/秒未満とすることが望ましい。なお、冷却速度が20℃/秒以上の場合は、凝固速度が速くなることで、上層に存在するAl相にZnが多く含まれた状態で凝固し、インターデンドライトに存在するZn相の存在が少なくなるため、犠牲防食性が低下し、冷却速度が20℃/秒未満の場合に比べて耐食性が劣化する。
上記した例は、いずれも例示であり、めっき層を、めっき層表面側から下地鋼板側方向に2等分したときに、めっき層中に含有されるSr、または、SrおよびCaが、下地鋼板側よりもめっき層表面側に多く存在すれば、その方法に特に限定はない。
本発明における浸入板温は、連続式溶融めっき操業における浴温度の変化を防ぐべく、めっき浴温度に対して±20℃の範囲に制御することが好ましい。
また、めっき後の冷却速度は特に限定しないが、前述のとおり、安定的に優れた耐食性を有する溶融Al−Zn系めっき鋼板を製造するためには、20℃/秒未満とすることが好ましい。ただし、これはあくまでも優れた耐食性を安定的に得るための基準である。よって、製造した溶融Al−Zn系めっき鋼板が優れた耐食性を示す限り、冷却速度が20℃/秒以上であっても問題は無い。
以上の製造工程を経て、本発明に従う耐食性に優れた溶融Al−Zn系めっき鋼板が得られる。
さらに、前述した溶融Al−Zn系めっき鋼板は、その表面に化成処理皮膜、および/または有機樹脂を含有する塗膜を有することによって、表面処理鋼板とすることができる。化成処理皮膜は、例えば、クロメート処理液またはクロムフリー化成処理液を塗布し、水洗することなく鋼板温度として80〜300℃となる乾燥処理を行うクロメート処理またはクロムフリー化成処理により形成できる。これら化成処理皮膜は単層でも複層でもよく、複層の場合には複数の化成処理を順次行えばよい。
本発明では、めっき層または化成処理皮膜の表面に、有機樹脂を含有する単層又は複層の塗膜を形成することができる。この塗膜としては、例えば、ポリエステル系樹脂塗膜、エポキシ系樹脂塗膜、アクリル系樹脂塗膜、ウレタン系樹脂塗膜、フッ素系樹脂塗膜等が挙げられる。また、上記樹脂の一部を他の樹脂で変性した、例えばエポキシ変性ポリエステル系樹脂塗膜等も適用できる。さらに上記樹脂には必要に応じて硬化剤、硬化触媒、顔料、添加剤等を添加することができる。
上記塗膜を形成するための塗装方法は特に規定しないが、塗装方法としてはロールコーター塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装等が挙げられる。有機樹脂を含有する塗料を塗装した後、熱風乾燥、赤外線加熱、誘導加熱等の手段により加熱乾燥して塗膜を形成することができる。
ただし、上記した表面処理鋼板の製造方法は一例であり、これに限定されるものではなく、本発明の条件を満足する表面処理鋼板が得られるのであれば、従来公知のいずれの方法でも好適に使用することができる。
また、本発明においては、合金化処理を施す、施さないにかかわらず、めっき処理方法によって鋼板上にAl−Znをめっきした鋼板を総称して溶融Al−Zn系めっき鋼板と呼称する。すなわち、本発明における溶融Al−Zn系めっき鋼板とは、合金化処理を施していない溶融Al−Znめっき鋼板、合金化処理を施した合金化溶融Al−Znめっき鋼板いずれも含むものである。
次に、本発明を実施例に基いて説明する。
表1に、めっき浴組成、浴温度、浸入板温、めっき付着量(片面あたり)、めっき後の冷却速度、めっき層の表面側に存在するSr、または、SrおよびCaの比率、および合わせ部の耐食性試験の結果を示す。
常法で製造した板厚:1.0mmの冷延鋼板を、連続式溶融めっき設備に通板し、表1に示した条件でめっき処理を行い、溶融Al-Zn系めっき鋼板を製造した。なお、ラインスピ−ドは150m/分とし、めっき付着量はガスワイピングで片面あたり35〜65g/m2とした。また、めっき後の冷却速度を10〜25℃/秒とした。
かかる手順で得られた溶融Al−Zn系めっき鋼板に対し、次に示す手順で、上記めっき層のめっき層表面側および下地鋼板側に存在するSr、または、SrおよびCaの含有量、および合わせ部耐食性を評価した。
尚、No28については、ドロスが大量に発生して鋼板に付着し、良好なサンプルが製造できなかったので、めっき層の貫通分析、および耐食性試験を行わなかった。
めっき層表面側および下地鋼板側のSr、または、SrおよびCaの含有量は、グロー放電発光分析(GDS)装置を用いてめっき層を貫通分析し、Sr、または、SrおよびCaの強度を検出して求めた。その際、めっき層表面側から検出されるSr、または、SrおよびCaの積算強度が、下地鋼板側から検出されるSr、または、SrおよびCaの積算強度を上回っている、すなわち比率では、50%超である、ことをもって、本発明の好適範囲を満足するものと判定した。
また、合わせ部耐食性は、図1に示すように、大板と小板を組合せて行った。具体的には、試験A:片面あたりのめっき量45g/m2の合金化溶融亜鉛めっき鋼板(大板)のめっき面と上記溶融Al−Zn系めっき鋼板(小板:試験対象鋼板)のめっき層を形成した面とを合わせたもの、および、試験B:冷延鋼板(大板)と上記溶融Al−Zn系めっき鋼板(小板:試験対象鋼板)のめっき層を形成した面とを合わせたもの、をそれぞれスポット溶接で接合して合わせ材とし、化成処理(リン酸亜鉛2.0〜3.0g/m2)および電着塗装(20±1μm)を施した後に、図2に示すサイクルを1サイクルとして耐食性試験を実施した。耐食性試験は、湿潤からスタートし、150サイクル後まで行い、合わせ部耐食性を評価した。
ここで、合わせ部耐食性は、下地鋼板の最大腐食深さを求めることで評価したが、最大腐食深さは、以下の手順で求めた。
耐食性試験後の合わせ材を、溶接部に穴を開けて分解した後、大板側に付着している塗膜、錆、めっき層を除去し、図3に示すように、小板である試験片の腐食部を20mm×15mmの単位区画で10区画に区切り、それぞれの下地鋼板の腐食深さを、マイクロメーターにて測定した。ついで、各区画の最大腐食深さを、腐食していない健全部の板厚と腐食部の板厚との差より求めた。これら測定した各単位区画の最大腐食深さデータに、ガンベル分布を適用して極値統計解析を行い、最大腐食深さの最頻値を求めた。
それぞれの測定結果を、表1に併記する。
Figure 2013189671
表1より、発明例の溶融Al−Zn系めっき鋼板(No.3〜14,16〜21,23〜25および27)は、耐食性試験AおよびBの150サイクルにおける最大腐食深さの最頻値が、共に0.50mmを下回っていて、鋼板の合わせ部耐食性に優れていることが分かる。これに対し、本発明の範囲を外れた比較例は、耐食性試験AまたはBのいずれかの結果、特に、冷延鋼板と合わせた場合の試験Bにおいては、そのいずれもが最大腐食深さの最頻値で0.50mmを上回っていた。
また、表1に示したNo.18のサンプルを、グロー放電発光分析装置によりめっき層を貫通して分析(スパッタ速度=0.025μm/秒)したときの、Srの深さ方向分布を図4に示す。
図4において、Srの検出強度の波形が、下地鋼板から検出される値に収斂する850秒(厚み:21.3μm)までをめっき膜厚と判断した。このときのめっき層を、断面方向より走査型電子顕微鏡で観察した結果、めっき層の厚みは約21μmであった。なお、検出強度は、めっき層全体では773、めっき層をめっき層表面から下地鋼板方向に2等分したときのめっき層表面側(スパッタ時間0〜425秒に相当、厚み:10.6μm)では735であった。
従って、本発明例は、全検出ピークの95%(=735/773)が、上記めっき層表面側から検出されていることが分かる。
本発明の溶融Al−Zn系めっき鋼板は、耐食性に優れているため、自動車や、家電、建材の分野等、広範な分野で適用できる。特に、本発明の溶融Al−Zn系めっき鋼板を自動車分野の高強度鋼板に適用すると、自動車の軽量化と高耐食性とを同時に達成する表面処理鋼板として使用することができる。

Claims (4)

  1. 鋼板表面に、Al含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき層を有する溶融Al−Zn系めっき鋼板において、
    上記溶融Al−Zn系めっき層中に、Siを0.5mass%以上、Srを0.05〜10mass%の範囲で含有させたことを特徴とする溶融Al−Zn系めっき鋼板。
  2. 前記溶融Al−Zn系めっき層中に、さらにSiを、Al含有量に対するSi含有量比:0.005〜0.10の範囲で含有させたことを特徴とする請求項1に記載の溶融Al−Zn系めっき鋼板。
  3. 前記溶融Al−Zn系めっき層中に、さらにCaを、Srとの合計量で、0.05〜10mass%含有させたことを特徴とする請求項1または2に記載の溶融Al−Zn系めっき鋼板。
  4. 前記溶融Al−Zn系めっき層を、めっき層表面から下地鋼板方向に2等分したとき、前記Srまたは前記SrおよびCaの含有量が、下地鋼板側よりめっき層表面側で多いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融Al−Zn系めっき鋼板。
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