JP2004156111A - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Takahiro Matsunaga
貴裕 松永
Hiroyuki Kashiwagi
宏之 柏木
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Abstract

【課題】合金化溶融亜鉛めっき皮膜のままで良好なプレス成形性を示しかつ塗装後鮮映性にも優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の提供手段を確立する。
【解決手段】合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、Ra:0.4 μm以下,Wca:0.5μm以下である表面状態の母材鋼板面上に、Fe量が10〜13%、Ra: 0.5〜 1.0μm,Wca:0.7μm以下,ppi:150以下で、かつ表面の凹部の面積率が30%未満であって、表層部にη相が存在しないでζ相量も3g/m以下の範囲である“合金化溶融亜鉛めっき層”を有して成る構成とする。この合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、表面粗度が調整された被めっき鋼板に、めっき浴侵入温度,めっき浴のAl濃度,合金化温度及び合金化度を特定範囲に規制された溶融亜鉛めっき,合金化処理を施し、その後に表面粗度が調整されたロ−ルによる特定圧下率での調質圧延を施して製造することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、プレス成形時に厳しい耐パウダリング性,摺動性が要求され、また成形を終えて塗装施した後にも高い鮮映性が望まれる、例えば自動車の車体等への適用材として好適な合金化溶融亜鉛めっき鋼板、並びにその製造方法に関するものである。
特に、本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、表面の汚れを除去することを目的として洗浄油等により一旦洗浄を行った後にプレス成形することが一般に行われる自動車車体外装用として好適であり、洗浄後にも特殊な後処理を施すことなく安定したプレス成形性を示す上、塗装後鮮映性にも優れた材料である。
【0002】
【従来の技術】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、優れた塗装後耐食性を有するために自動車車体用防錆鋼板として広く適用されてきている。
しかしながら、合金化溶融亜鉛めっき鋼板には、電気亜鉛めっきや電気亜鉛合金めっきと比較してめっき付着量が多いために耐パウダリング性に劣り、従ってプレス加工時のめっき剥離量が多くて剥離しためっき粉がプレス加工時に押し込まれ外観が悪化するという問題が指摘されていた。そのため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を自動車車体外装用鋼板に適用することは困難であるとされていた。
【0003】
また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっきを鋼板上に施してから直ちに加熱処理して母材中の鉄をめっき皮膜へ拡散させめっき皮膜に亜鉛−鉄合金層を形成させたものであるため、めっき皮膜の深さ方向に鉄の濃度勾配ができ、母材から表面方向にかけて鉄濃度の高いΓ相、Γ相、δ相、ζ相(あるいは合金化処理が不十分であると純亜鉛のη相)が形成されるが、溶融亜鉛めっき皮膜形成後の連続加熱による合金化処理(以降はGA処理と称する)は安定性に欠けるため、めっき皮膜に形成される合金相が一定せずにζ相量やΓ相,Γ相のバランスが大きく変動するという問題があった。
【0004】
ここで、ζ相は軟質相であるためプレス成形時に金型との焼き付きを起こしやすく、そのためζ相の量が多くなるとプレス成形時の摺動抵抗(摩擦係数)が上昇して(摺動性が劣化して)プレス割れを発生しやすくなるという問題につながる。
一方、Γ相,Γ相は、硬質相であるのでプレス成形時の曲げや曲げ戻し変形に伴うめっき剥離の起点となってめっき粉を生じる原因となりがちで、耐パウダリング性の劣化要因となることが知られている。
【0005】
通常、自動車車体に適用される合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、防錆性の観点に加えて摺動性をも確保するために“潤滑機能を兼ね備えた防錆油”を塗布する処理がなされるので、これによりプレス成型時の摺動性低下が補われる結果となている。
しかしながら、例えば自動車車体外装用鋼板の場合には、外観重視の観点から鋼板表面上の異物を洗い落とすために“潤滑機能に乏しい洗浄油”による処理が行われるが、このような防錆を兼ねた洗浄油によったのでは摺動性改善効果は期待できず、従って別途の摺動性改善手段を適用する必要があった。
【0006】
上述のように、従来の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、加工性(特に“耐パウダリング性の確保”と“摺動性の安定化”の両立)の観点からそのまま自動車車体外装用鋼板として適用するのが困難な材料であった。
そのため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板そのものに優れた摺動性が備わり、かつ優れた耐パウダリング性をも示す合金化溶融亜鉛めっき鋼板が要求されてきている。
【0007】
もっとも、これまでにも、自動車車体外装用鋼板として合金化溶融亜鉛めっき鋼板を適用する際における摺動性の確保手段としては、例えば特開平3−191045号公報に記載されているような、合金化溶融亜鉛めっき鋼板上に鉄系のフラッシュめっきを施す方法が提案されている。このような硬質の鉄系めっきを表層に施す方法では、合金化皮膜(GA皮膜)表層にζ相が多く存在していても硬質鉄系めっきの第2層のために良好な摺動性を確保できるようになるので、合金化溶融亜鉛めっき層の形成時には耐パウダリング性を重視してΓ相の生成のみを抑制する条件を採れば良く、従って合金化溶融亜鉛めっき作業も容易である。
しかし、後処理としてフラッシュめっきを施す上記手段では製造コストの点で問題があり、従って後処理を施すことなく、合金化溶融亜鉛めっき鋼板そのもので良好な耐パウダリング性,摺動性が確保される技術が強く望まれている。
【0008】
また、例えば特開昭64−68456号公報,特公平3−55544号公報あるいは特許第2709173号公報には、「合金化溶融亜鉛めっき鋼板の摺動性改善には合金化めっき層(GA皮膜)における純亜鉛のη相や鉄含有量が低い軟質のζ相を低減するのが効果的であり、 また耐パウダリング性の改善にはめっき/母材界面に形成される鉄含有率が高い硬質のΓ相を低減することが効果的であって、 そのためプレス成形用の合金化溶融亜鉛めっき鋼板ではδ相単相に近いGA皮膜を形成させることが良い」旨が説明されていて、GA皮膜中のζ相,η相,Γ相を抑制した合金化溶融亜鉛めっき鋼板に係る提案がなされている。
【0009】
そして、このようなGA皮膜の合金相を確保するために溶融亜鉛めっき浴中での浸漬時間を短くして急速にGA化処理する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が、例えば特公平5−81662号公報に示されている。
また、特許第2770825号公報等には、溶融亜鉛めっき浴中のAl量及びめっき浴中への鋼板の侵入温度を規定することによってめっき皮膜中での母材結晶粒界からの局部的な異常合金相成長であるアウトバースト反応を抑制し、その後高周波誘導加熱にて急速にGA化することによりζ相の成長を抑制するとした合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が示されている。
更に、特開昭61−223174号公報には、耐パウダリング性の観点からではあるが、溶融亜鉛めっき皮膜形成後にこれを急速にかつ高温(550〜700℃)に加熱し、その後所定温度域に冷却保持するGA化ヒートパターンが示されている。
【0010】
しかしながら、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のような不均一な凹凸が生じるめっき層を有した材料では、GA皮膜中のζ相,η相,Γ相を抑制しただけでは実際上十分に満足できる摺動性を安定確保できないことが分かった。
【0011】
一方、特開平7−18402号公報や特開平7−18403号公報には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板におけるめっき層表面に形成される凹凸を制御し、その凹部を潤滑油の油溜まりとして活用することにより摺動性,成形性の改善を図る手段が提案されている。
しかし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、明らかな凹部以外にも微細な凹凸が表面を覆っているため表面そのものが凹凸からなるといっても過言ではなく、鋼板全体がミクロな油溜まりを形成するので、明らかに認識できる凹部の形状を制御しても摺動性,成形性の改善に寄与する効果はそれほど大きくない。その上、めっき層表面に形成される凹部を潤滑油の油溜まりとして活用するだけでは、高潤滑性の洗浄油を使用しない限り摺動性,成形性の改善にはつながらず、結果的にコストアップを伴うので、必ずしも好ましい手法とは言えなかった。
【0012】
また、特開平6−91303号公報には、めっき層表面の中心線粗さRa を大きくし、平均うねりWcaを小さくすると共に、凹部の最接近間隔等を規定することによって塗装後鮮映性と摺動性の両立を図った合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されているが、Ra とWcaとは技術的に相反するものであるためにその両立が困難であり、凹部の制御も困難な技術であるので、上記のような合金化溶融亜鉛めっき鋼板は工業的に安定製造できる材料であると言えなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、従来提案に係る“GA皮膜の合金相をδ単相に近い形態に制御する方法”あるいは“GA皮膜表面の凹部を活用する方法”だけでは、潤滑性を付与することが可能である防錆油を塗油した状態では良好なプレス成形性をある程度確保することが可能であるものの、洗浄油のような潤滑効果が期待できない油を塗油した状態でのプレス成形性においては安定的なプレス成形性を確保することが困難であり、合金化溶融亜鉛めっき皮膜のままでは安定的な摺動性が確保できない材料であった。
【0014】
また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、GA化処理時における鉄拡散の不均一に起因する表面粗度の増大が必然的に生じるため、GA化処理後の調質圧延時に用いるワークロールの表面粗度を調整するだけでは所望の表面粗度を安定して確保することが難しく、従来技術では合金化溶融亜鉛めっき面の表面粗度制御によって摺動性及び塗装後鮮映性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定製造することは極めて難しかった。
【0015】
このようなことから、本発明が目的としたのは、摺動性改善のための後処理や潤滑油の適用を必ずしも要することなく、合金化溶融亜鉛めっき皮膜のままで良好かつ安定的なプレス成形性を示しかつ塗装後鮮映性にも優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の提供手段を確立することであった。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、次のような知見を得ることができた。
a) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板において良好なプレス成形性をコスト高を招く後処理や高価な潤滑剤を用いることなく実現するためには、めっき層自体の摺動性を向上させることが重要であり、そのためにはめっき表層に軟らかいη相(純亜鉛相)が存在しないように図ることは勿論、めっき表層に形成されがちな軟らかいζ相(Fe−Zn合金相)を極少量以下に抑制する必要がある。
【0017】
b) しかも、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性改善のためには、めっき表面の凹凸を極力小さくすると共にその数も少なくし、局部的な面圧の上昇を抑制することも極めて重要である。
即ち、従来技術ではめっきの凹凸を利用して油溜まりの効果で成形性を確保するとしているが、η相やζ相の生成を極力抑制した合金化溶融亜鉛めっき鋼板では実質的にδ相が表層を構成することとなる。しかし、δ相はそれ自体が微細な凹凸結晶となるのでめっき層表面の凹凸を利用した油溜まりの効果はそれほど期待できない。そればかりか、めっき表面の凹凸が大きいとプレス成形時に局部的な面圧の上昇が生じ、これも摺動性(プレス成形性)劣化する大きな要因となることが分かった。
【0018】
c) このように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性を向上させるためにはめっき表層のη相やζ相を抑制すると同時にめっき層の中心線粗さRa(表面粗さ)を小さく抑える必要のあることが判明したが、プレス成形性を安定して向上させるためには、めっき層の中心線粗さRa に加えてこのRa にも大きく影響する“被めっき材たる母材鋼板のRa ”及び“合金化の過程で生成するクレーター部(凹部)の数(ppi)や面積率”をも同時に抑制する必要のあることが明らかとなった。
【0019】
d) また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の塗装後鮮映性はめっき層の中心線粗さRa と平均うねりWcaとに大きく左右され、良好な塗装後鮮映性を確保するためにはめっき層のRa を抑制することに加えてWcaをも抑制する必要があることも分かった。
ただ、基本的にめっき層のWcaはめっきの付与手段では制御及び変化させることは不可能であり、めっき後のスキンパス処理においても絶対的な抑制効果は得られなかったが、被めっき材たる母材鋼板面のWcaを抑制することでめっき層のWcaを抑制できることも突き止めた。
【0020】
e) 更に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の合金相構造(ζ相量)や表面粗度のバラツキに影響する要因について検討した結果、母材となる鋼板を溶融亜鉛めっき浴に浸漬するとまず鋼板表面のFeとめっき浴中に添加されているAlとのFe−Al反応によりAl富化層が形成されるが、めっき浸漬時の条件によってAl富化層が変動し、この変動がその後の合金化過程を経てめっき層表面のζ相量や表面粗度に大きな影響を及ぼすことや、めっき後の合金化温度(GA化温度)もめっき層のζ相量や表面粗度に影響することが明らかとなった。そして、上記めっき浸漬時の条件(溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度,鋼板のめっき浴への侵入温度)やGA化温度の制御、更にGA化後の調質圧延条件の工夫が合金化溶融亜鉛めっき鋼板の合金相構造(ζ相量)や表面粗度の調整に極めて有効であることも判明した。
【0021】
本発明は、上記知見事項等を基に完成されたものであり、次の▲1▼〜▲3▼項に示す合金化溶融亜鉛めっき鋼板並びにその製造方法を提供するものである。
▲1▼ 中心線粗さRa が 0.4μm以下で平均うねりWcaが 0.5μm以下である表面状態の母材鋼板面上に、Fe含有量が10〜13重量%であって、またRa が 0.5〜1.0μm、Wcaが 0.7μm以下、ppiが150以下で、かつ表面の凹部の面積率が30%未満である表面状態であり、更に表層部にη相が存在しないでζ相量も3g/m以下の範囲である“合金化溶融亜鉛めっき層”を有して成ることを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
▲2▼ 中心線粗さRa が 0.4μm以下で平均うねりWcaが 0.5μm以下である表面粗度の被めっき鋼板を、めっき浴侵入温度が板温で450〜500℃となる条件にてAl濃度が0.11〜0.13重量%の溶融亜鉛めっき浴中に浸漬して表面にめっき層を付着させた後、板温の最高到達温度が500〜540℃である加熱処理を施してめっき層のFe含有量が10〜13重量%となるまで合金化を行い、続いて中心線粗さRa がRa で 1.2μm以下で平均うねりWcaが 0.7μm以下である表面状態のロールを用いて圧下率 0.5〜 2.0%で調質圧延を行うことを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
▲3▼ 調質圧延を、スキンパスワークロール又はめっき鋼板あるいはその双方に界面活性剤及びキレート化合物のうちの1種類以上を含有する調質圧延液を吹き付けて実施する、請求項2記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
上述のように、本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき層表層部のη相,ζ相を抑えると共に、母材鋼板(被めっき材)の表面粗度とめっき層の表面状態とが共に特定の条件となるように調整することによって良好でかつ安定したプレス成形性を確保し、かつ優れた塗装後鮮映性をも発揮できるようにしたものである。
また、本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、表面粗度が調整された母材鋼板(被めっき材)を用いると共に、溶融亜鉛めっき浴のAl濃度と被めっき材をめっき浴に浸漬する際の板温とを適正に管理し、かつその後に行う合金化処理(GA化処理)の温度,GA化処理後の調質圧延条件をも適正に制御することによって、形成されるGA合金めっき層の相構造や表面状態を適正化し、付加的な処理を要することなくプレス成形性(摺動性や耐パウダリング性等)や塗装後鮮映性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定製造できるようにしたものである。
【0023】
なお、本発明において合金化溶融亜鉛めっき鋼板の構成条件並びに合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造条件を前記の如くに限定した理由は、次の通りである。
[A] 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の構成
a) 合金化めっき層のFe含有量
合金化めっき層中のFe含有量(合金化度)は耐パウダリング性,摺動性に大きな影響を与える因子であり、その調整は良好な耐パウダリング性,摺動性を確保する上で必須である。即ち、合金化めっき層中のFe含有量が10重量%未満であるとη相の完全消失やζ相の十分な抑制が叶わず、良好な摺動性を確保することができない。一方、合金化めっき層中のFe含有量が13重量%超になると、今度はΓ相が増加しすぎて耐パウダリング性が劣化する。従って、合金化めっき層中のFe含有量を10〜13重量%と定めたが、好ましくは10.5〜12.0重量%に調整するのが良い。
【0024】
b) 合金化めっき層におけるη相,ζ相の規制
上述のように、合金化めっき層におけるη相の排除やζ相量の抑制は良好な摺動性を確保するために必須である。合金化めっき層表層部にη相が存在していたり、ζ相量が3g/m超となっていると、表面粗度が小さくなるように表面状態の調整を図ったとしても潤滑効果の乏しいプレス作業条件の下では良好な摺動性の確保が困難となる。
なお、適正な合金化度が確保できているならばζ相に関する下限値は存在しない。また、好ましいζ相量としては 2.0g/m以下である。
【0025】
c) 合金化めっき層の表面粗度
合金化めっき層の表面粗度も良好な摺動性確保のためには極めて重要な要件であり、その表面粗度が大きいと金型との接触摺動時に局部的な摺動抵抗(摩擦係数)が大きくなり、摺動性が大きく低下する。また、合金化めっき層の表面粗度が小さ過ぎると、プレス金型と合金化めっき鋼板表面との間に適度な油膜の確保(油膜保持)が困難になり、プレス金型との金属接触を起こして焼き付き現象を起こすことになる。本発明では、合金化めっき層の中心線粗さRa ,平均うねりWca及び凹凸部の数ppiを適正範囲内に調整して良好な摺動性を確保し焼き付き現象をも抑え得るように図ると共に、優れた塗装後鮮映性も発揮できるようにしている。
【0026】
即ち、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に良好な摺動性を確保するためには、合金化めっき層表面の中心線粗さRa(カットオフ値=0.8mm )を 0.5〜 1.0μm(好ましくは 0.6〜 0.9μm)に調整しなければならない。
また、合金化めっき層表面の平均うねりWcaについても、その値が 0.7μmを超えると塗装後鮮映性が劣化する上、摺動性にも悪影響が出る。好ましくは、合金化めっき層表面の平均うねりWcaは 0.5μm以下に調整するのが良い。
更に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に良好な摺動性を確保するためには合金化めっき層表面の凹凸部の数ppi(カットオフ値=0.8mm )も150以下に調整する必要がある。
【0027】
つまり、前述したように、合金化めっき層におけるζ相量が多いと表面粗度が小さくても摺動性の改善効果は期待できないが、ζ相量が少なくても表面粗度が大きければ摺動性に対して改善効果はあまり期待できない。これは、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に特定レベルを超える凹凸が存在していると、プレス成型の際に局部的に面圧の高い部分(表面粗度の凸部)が生じることとなり、その部分での実質面圧は極めて高いので、そのような面圧の高い最表面部分に残留しがちである軟質なζ相の存在により摺動性が著しく阻害されるためであると考えられる。
【0028】
更に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に良好な摺動性を確保するためには、合金化めっき層表面の凹部(開口部)の面積率を30%未満に抑制することも必要である。
即ち、合金化めっき鋼板表面の凹凸は、粗さ計が認識できる凹凸(例えば触針2μm)以外にも存在する。合金化の過程で生成する不可避的な結晶レベルの大きさのミクロな凹凸は油溜まり効果のためには有効であるが、それを大きく超える凹凸は摺動性を低下させる因子となり得るために好ましくない。従って、本発明では合金化めっき層表面の凹部の面積率を30%未満と規定したが、この凹部の面積率(D)は、直径が10−6〜10−5mmで開口部の深さが正常めっき厚の以下のものの開口部面積率とする。
【0029】
d) 母材鋼板の条件
合金化溶融亜鉛めっき鋼板における合金化めっき層表面の中心線粗さRa 及び平均うねりWcaには、母材鋼板(被めっき材)の中心線粗さRa と平均うねりWcaが大きく影響する。そして、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に優れたプレス成形性(摺動性等)を確保するためには母材鋼板(被めっき材)の中心線粗さRa 及び平均うねりWcaの制御は不可欠であって、母材鋼板(被めっき材)の中心線粗さRa は 0.4μm以下、好ましくは 0.3μm以下に調整する必要がある。
【0030】
ところで、合金化めっき層表面の平均うねりWcaは母材鋼板(被めっき材)のWcaだけではなく、合金化めっき処理後の調質圧延で使用されるスキンパスワークロールのWcaにも依存するが、主として母材鋼板(被めっき材)のWcaの方により大きな影響を受けるので、母材鋼板(被めっき材)の平均うねりWcaを適正に調整することが優れたプレス成形性,塗装後鮮映性を確保する上での十分条件となる。従って、本発明では、母材鋼板(被めっき材)のWcaを 0.5μm以下と定めたが、好ましくは0.3 μm以下に調整するのが良い。
【0031】
[B] 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造条件
a) 使用する被めっき鋼板の表面粗度
上述したように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性や塗装後鮮映性には母材鋼板(被めっき材)の中心線粗さRa と平均うねりWcaも少なからず影響する。そして、プレス成形性(摺動性等)に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定製造するためには中心線粗さRa が 0.4μm以下(好ましくは 0.3μm以下)で平均うねりWcaが 0.5μm以下(好ましくは 0.3μm以下)の被めっき鋼板を使用する必要がある。なお、塗装後鮮映性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得るためにも、被めっき鋼板表面の平均うねりWcaは 0.5μm以下とする必要がある。
【0032】
b) 溶融亜鉛めっき浴のAl濃度
通常、溶融亜鉛めっきではめっき皮膜密着性の確保のためにめっき浴中にAlを添加している。このAl添加は、焼鈍の後にめっき浴中に浸漬される被めっき鋼板の表面に付着するめっき層の母材側にFe−Al合金相を形成させてZn−Fe合金相が異常成長するのを抑制し、これによりめっき皮膜の密着力を確保するために実施される手段である。
この場合、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度が低くなると、めっき浴浸漬中にめっき層におけるZn−Fe合金相の成長が大きくなってめっき皮膜の密着力が低下し、一方、めっき浴中のAl濃度が高いとめっき浴浸漬時に鋼板表面に形成されるFe−Al合金相が強固に形成されてその後に実施される合金化処理時にFe拡散が起こりにくくなり、適正な合金化(GA化)が困難になる。また、めっき層中のAl含有量が多いとGA化が不均一となって合金化めっき層の表面粗度が大きくなるという問題も起きる。
そのため、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度は有効Al量(=浴中の全Al量−浴中の溶解Al量)で0.11〜0.13重量%(望ましくは0.15〜0.25重量%)に調整すべきである。
【0033】
即ち、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度が0.11重量%未満であると、被めっき鋼板上に形成されるめっき皮膜の密着性が低下して耐パウダリング性が低下する。また、この場合、GA化時のFe拡散速度が速くなるため、ζ相が生成するのを抑制すべく高温GA化を実施するとΓ相量の確保が困難になって対パウダリング性が劣化する。
一方、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度が0.13重量%超では、逆にFe拡散速度が遅く、ζ相を抑制することが困難となって摺動性が低下する。ここで、ζ相の抑制をGA化温度を高めることによって実施しようとすると、適正なGA化温度を超えることとなって耐パウダリング性が劣化するという問題を引き起こすので好ましくない。また、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度が0.13重量%を超えると、Fe拡散反応が不均一になるのでめっきの凹凸が助長されて表面粗度が増大し、適正な表面粗度を確保することが困難になるという問題をも招く。
【0034】
c) 被めっき鋼板のめっき浴侵入温度
被めっき鋼板のめっき浴への侵入温度(侵入材温度)は、めっき浸漬時の富化Al量(めっき−鋼板界面で富化するAl量)に影響を及ぼす。めっき浴中のAl濃度が同一であっても、侵入材温度が上昇すると富化Al量が増加する。そして、侵入材温度が500℃超になると、めっき浴中Al濃度が高い場合と同様にFe拡散速度が遅くなって高温GA化処理を試みてもGA化が困難となり、ζ相量の増大、更には表面粗度の増大による摺動性の劣化が問題になる。
一方、侵入材温度が450℃未満であると、めっき浴中Al濃度が低い場合と同様にFe拡散速度が速くなり、ζ相消失を図るためにGA化温度を高めると合金化度が増加して耐パウダリング性に問題が生じる。
従って、被めっき鋼板のめっき浴への侵入温度(侵入材温度)は450〜500℃に調整することとした。
【0035】
d) 合金化処理温度(GA化温度)
合金化処理温度(GA化温度)は、板温の最高到達温度(T)で500〜540℃(望ましくは510〜530℃)とする必要がある。
即ち、GA化温度が540℃超ではΓ相よりも硬質なΓ相が生成し始めるために耐パウダリング性の観点から好ましくなく、500℃未満ではζ相が残るために摺動性に問題が生じる。
【0036】
また、GA化温度が500℃未満であると、合金化めっき層にミクロ陥没が生じがちとなって表面粗度の観点からも問題がある。
つまり、合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、合金化層の成長過程において母材のフェライト結晶方位によってFe拡散速度が異なるために母材結晶粒単位で合金化めっき層に凹凸が発生するという“ミクロ陥没現象”が生じがちである。このミクロ陥没の存在により、調質圧延のワークロールを調整したとしても合金化めっき層表面に十分に小さな表面粗度を確保することは困難である。即ち、上記ミクロ陥没を減少させなければ、調質圧延のロール面粗度を下げても安定的な小さい表面粗度を確保することは難しい。
【0037】
ミクロ陥没はめっき浸漬中に形成される富化Al量(めっき−鋼板界面で富化するAl量)に影響されるが、これと共にその後のGA化過程における温度にも大きく依存することを本発明者らは見出した。
富化Al量の低減、つまりは溶融亜鉛めっき浴中の有効Al量(=浴中の全Al量−浴中の溶解Fe量)の低減や侵入材温度の低下によってミクロ陥没は減少する。一方、GA化温度を高くすることもミクロ陥没の低下には効果的であり、Al濃度が0.11〜0.13重量%のめっき浴で処理した溶融亜鉛めっき鋼板を500℃以上(好ましくは510℃以上)の高温でGA化すると、加熱により母材結晶粒間のFe拡散速度差が縮まってミクロ陥没が減少する。
【0038】
なお、本発明において合金化(GA化)加熱方式は格別なものに特定されるものではなく、前記加熱温度が確保できるものであれば通常のガス炉による輻射加熱でも高周波誘導加熱でも構わない。ただ、急速加熱が可能であるという観点からすれば、一部もしくは全加熱工程で高周波誘導加熱方式を採用するのが好ましいと言える。
【0039】
e) 合金化(GA化)処理後におけるめっき層のFe含有量
先に説明したように、合金化めっき層中のFe含有量が10重量%未満であるとη相の完全消失やζ相の十分な抑制がなされないので良好な摺動性を確保することができず、一方、合金化めっき層中のFe含有量が13重量%超になるとΓ相が増加しすぎて耐パウダリング性が劣化する。従って、合金化処理後にはめっき層中のFe含有量が10〜13重量%(好ましくは10.5〜12.0重量%)となるように調整することと定めた。
【0040】
f) 調質圧延条件
本発明法では、合金化(GA化)処理後のめっき鋼板に対して、中心線粗さRa がRa で 1.2μm以下で平均うねりWcaが 0.7μm以下である表面粗度のロールを用い、圧下率 0.5〜 2.0%の条件で調質圧延(スキンパス圧延)が行われる。
調質圧延のワ−クロ−ル表面粗度を中心線粗さRa 1.2μm以下,平均うねりWca 0.7μm以下とするのは、合金化(GA化)処理して得られた合金化めっき鋼板をより一層安定な表面状態(Ra : 0.5 〜1.0 μm,Wca : 0.7μm以下,ppi:150以下,表面の凹部の面積率:30%未満)とするために必要な条件である。ワ−クロ−ル表面の中心線粗さRa が 1.2μm超であったり、平均うねりWcaが 0.7μm超である場合には、得られる合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面粗度を安定して小さく制御することができず、プレス成形性や鮮映性の劣化を招く。
【0041】
なお、調質圧延で使用するワ−クロ−ル表面の中心線粗さRa 及び平均うねりWcaには下限はなく、ブライトロールの使用も可能であるが、製品となる合金化溶融亜鉛めっき鋼板表面の中心線粗さRa を 0.5〜 1.0に制御する必要があるためにブライトロールを使用したのでは操業が難しくなる。従って、調質圧延で使用するワ−クロ−ルとしては、ダルロールを使用することが望ましく(放電ダルロールがより望ましい)、ロール粗度も中心線粗さRa が 0.5〜 1.0μm、平均うねりWcaが 0.3〜 0.5μmであることが望ましい。
【0042】
調質圧延での圧下率(伸び率)については、 0.5%未満の場合はスキンパスの効果が得られにくく調質圧延を施す意味が無い。また、圧下率(伸び率)が 2.0%超の場合は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の機械的性質が大きく劣化してしまって製品(特に成形性を要求される鋼板)としては不適当となる。従って、調質圧延での圧下率(伸び率) 0.5〜 2.0%としたが、望ましくは 0.8〜 1.5%に緒性するのが良い。
【0043】
上述のように、被めっき鋼板の表面粗度,溶融亜鉛めっき浴のAl濃度,被めっき鋼板のめっき浴侵入温度,GA化温度,GA化処理後の調質圧延条件を総合的かつ有機的に調整することによってζ相の低減,表面粗度の低減を同時に図ることが可能となり、優れたプレス成形性(摺動性等)と塗装後鮮鮮性を示す合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定提供できるようになる。
【0044】
次に、本発明を実施例によって説明する。
【実施例】
〔実施例1〕
板厚が0.65〜0.85mmであって様々な中心線粗さRa 及び平均うねりWcaを有する表面状態の極低炭素IF鋼を素材とし、かつ連続溶融亜鉛めっきラインにおいて“溶融亜鉛めっき浴のAl濃度”,“被めっき鋼板のめっき浴侵入温度”,“合金化(GA化)処理条件”,“調質圧延で使用するロ−ルの表面状態”を調整することにより、表1に示す各種の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。なお、各合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、合金化めっき層にη相の存在が認められなかった。
【0045】
【表1】
Figure 2004156111
【0046】
なお、表1に示したRa (カットオフ値=0.8mm ),Wca及びppiの値は表面粗度計を用いて測定した。
また、ζ相量については、特定条件の電解液中に浸漬して所定電流値を流したときの電位を測定する定電流電解法、即ち
Figure 2004156111
なる条件の定電流電解法にて測定した。
【0047】
図1は、合金化溶融亜鉛めっきに上記定電流電解法を適用した際の“経過時間による定電流電解電位の変化状況”を示したものである。この図1から分かるように、電解電位の変化状況から各合金層の溶解状況を把握することができ、ζ相部位が溶解する電位での溶解時間からζ相量を測定することができる。
【0048】
次に、上述のようにして得られた各合金化溶融亜鉛めっき鋼板につき、加工性と塗装後鮮映性を評価した。
まず、加工性を評価するために、耐パウダリング性と摺動性を調査した。
耐パウダリング性の調査は、図2で示す条件にて円筒絞り試験を実施した後、絞り加工を終えたカップ状試験片の側面における密着不安定なめっき部をセロハンテープにて剥離し、絞り加工前と絞り加工後(セロハンテープ剥離後)における重量差を測定して加工によるめっき粉剥離量を求める方法によった。
そして、耐パウダリング性の判定では、自動車の車体外装用鋼板における耐パウダリング性の判定実績を鑑み、剥離量が次の○印のもの以下の場合が目標とする良好レベルであると判断した。
◎ :パウダリング剥離量が10mg/個以下,
○ :パウダリング剥離量が10mg/個超〜20個以下,
△ :パウダリング剥離量が20mg/個超〜40個以下,
× :パウダリング剥離量が40mg/個超。
【0049】
また、摺動性は、図3に示す条件にて平板引き抜き試験を実施し、
摩擦係数=N/2P (但し、 N:引抜き荷重,P:押さえ荷重)
なる式に従って算出した摩擦係数を基に判定した。
なお、摺動性の判定では、自動車の車体外装用鋼板でのプレス割れとその際の摩擦係数の実績を鑑み、摩擦係数が次の○印のもの以下の場合が目標とする良好レベルであると判断した。
◎ :摩擦係数が0.13以下,
○ :摩擦係数が0.13超〜0.15以下,
△ :摩擦係数が0.15超〜0.17以下,
× :摩擦係数が0.17超。
【0050】
次に、塗装後鮮映性の調査を行った。
なお、塗装後鮮映性は、合金化処理後の鋼板に電着塗装(20μm)を施し、ICM式写像性測定器にて測定した値(光学パタ−ン幅=0.5mm )を基に判定した。
そして、その値が次の○印のもの以上の場合が目標とする良好レベルであると判断した〔数値は写像性 (%) を表す〕。
◎ :50以上,
○ :40以上50未満,
△ :30以上40未満,
× :30未満。
【0051】
上記加工性(耐パウダリング性,摺動性)と塗装後鮮映性の調査結果を表2にまとめて示す。
なお、表2に示した「総合評価」は4段階評価の結果であり、総合評価が◎及び○のものは自動車の車体外装用鋼板への適用も十分に可能であると判断されるものである。
【0052】
【表2】
Figure 2004156111
【0053】
表2に示される結果からも分かるように、本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、特殊な潤滑手立てを付加しなくても良好な耐パウダリング性及び摺動性を示すと共に、塗装後鮮映性にも優れており、例えば自動車の車体外装用鋼板への適用も可能であることは明らかである。
【0054】
〔実施例2〕
板厚が0.80mmであって、表面の中心線粗さRa が0.35μm,平均うねりWcaが0.45μmである極低炭素IF鋼板を被めっき材とし、合金化溶融亜鉛めっきラインによって各種条件の下で溶融亜鉛めっき処理してから(めっき付着量=45g/m)合金化(GA化)処理を行い、その後更に放電ダルロールにて調質圧延を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。
なお、この際の“溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度”,“被めっき材のめっき浴侵入温度(板温)”, “合金化処理加熱温度(板温の最高到達温度)”, “合金化度(合金化めっき層中のFe含有量)”, “調質圧延ワ−クロ−ルのRa 及びWca”,“調質圧延での圧下率”は表3に示した通りであった。
【0055】
また、このようにして製造された各合金化溶融亜鉛めっき鋼板における“合金化めっき層のζ相量(何れも合金化めっき層にη相の存在は認められず) ”,“合金化めっき層のRa ”,“合金化めっき層のWca”,“合金化めっき層のppi”並びに“合金化めっき層表面の凹部(開口部)の面積率”の調査結果を表4に示した。
【0056】
【表3】
Figure 2004156111
【0057】
【表4】
Figure 2004156111
【0058】
次に、上述のようにして得られた各合金化溶融亜鉛めっき鋼板につき、実施例1におけるのと同様の手法で加工性(耐パウダリング性,摺動性)と塗装後鮮映性を評価した。
この評価結果も表4に併せて示した。
【0059】
表4に示す結果からも明らかなように、本発明法によると加工性(耐パウダリング性,摺動性)並びに塗装後鮮映性に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定に製造できることが分かる。
【0060】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明によれば、プレス成形性及び塗装後鮮映性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することが可能となり、この合金化溶融亜鉛めっき鋼板を適用すると、例えば鋼板表面洗浄のため一般的に使用される潤滑性の乏しい洗浄油で洗浄後のプレス成形の場合であっても安定的な成形作業が行える上、自動車の車体外装用鋼板として満足できる塗装後鮮映性を確保することもできる。
勿論、本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、“潤滑性を有する防錆油を塗油した状態”や“合金化処理後の後処理により潤滑性を付与した状態”においても優れたプレス成形性を示し、かつ塗装後鮮映性に優れたプレス製品が得られることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】合金化溶融亜鉛めっきに定電流電解法を適用した際の“経過時間による定電流電解電位の変化状況”を示したグラフである。
【図2】耐パウダリング性の調査条件(円筒絞り試験条件)を示した概念図である。
【図3】摺動性の調査条件(平板引き抜き試験条件)を示した概念図である。

Claims (3)

  1. 中心線粗さRa が 0.4μm以下で平均うねりWcaが 0.5μm以下である表面状態の母材鋼板面上に、Fe含有量が10〜13重量%であって、またRa が 0.5〜 1.0μm、Wcaが 0.7μm以下、ppiが150以下で、かつ表面の凹部の面積率が30%未満である表面状態であり、更に表層部にη相が存在しないでζ相量も3g/m以下の範囲である“合金化溶融亜鉛めっき層”を有して成ることを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 中心線粗さRa が 0.4μm以下で平均うねりWcaが 0.5μm以下である表面粗度の被めっき鋼板を、めっき浴侵入温度が板温で450〜500℃となる条件にてAl濃度が0.11〜0.13重量%の溶融亜鉛めっき浴中に浸漬して表面にめっき層を付着させた後、板温の最高到達温度が500〜540℃である加熱処理を施してめっき層のFe含有量が10〜13重量%となるまで合金化を行い、続いて中心線粗さRa がRa で 1.2μm以下で平均うねりWcaが 0.7μm以下である表面状態のロールを用いて圧下率 0.5〜 2.0%で調質圧延を行うことを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 調質圧延を、スキンパスワークロール又はめっき鋼板あるいはその双方に界面活性剤及びキレート化合物のうちの1種類以上を含有する調質圧延液を吹き付けて実施する、請求項2記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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