JP2004189949A - 電気応答性環状型分子認識材料とその製造方法 - Google Patents
電気応答性環状型分子認識材料とその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】より高感度で応答性が高く、測定物質に応じた設計が容易な分子・イオンセンサー用の素子を提供する。
【解決手段】次式(I)
【化1】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基であり、R1とAr1および/またはR2とAr2は結合していてもよく、nは重合度を表す2以上の整数である)
で表されることを特徴とする環状ポリアリールアゾメチン誘導体とする。
【選択図】 なし
【解決手段】次式(I)
【化1】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基であり、R1とAr1および/またはR2とAr2は結合していてもよく、nは重合度を表す2以上の整数である)
で表されることを特徴とする環状ポリアリールアゾメチン誘導体とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、環状ポリアリールアゾメチン誘導体とそれを素子とした分子・イオンセンサーに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、高選択的かつ高感度の検出を可能とする分子・イオンセンサー用素子として有用な環状ポリアリールアゾメチン誘導体とその製造方法、並びにそれを素子として有する分子・イオンセンサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、大気、土壌、水質あるいは食品等の安全性に対する関心が高まっており、有害物質や微量物質を迅速かつ正確に同定、定量するための方法が望まれている。
【0003】
従来の分子・イオンセンサーでは、一般にクラウンエーテルやカリックスアレーンなどの環状型分子認識素子に、発色、発光、電子応答性などを示す機能分子を結合させた化合物が素子として用いられてきた。このような素子は、特定の物質に対して感受性を示すものの、物質毎に異なる素子を必要とするため、設計が困難であり、汎用性が低いという問題があった。
【0004】
最近では、とくに多数の試料に対する微量物質の検出を可能とする素子が求められており、環状分子認識化合物そのものが電子応答性を示す化合物が注目されている。
【0005】
中でもπ共役高分子は、優れた電子応答性を有する機能材料であることから、効率的な環状化反応が実現すれば有効な環状分子認識素子になると期待されている。また、環状化を定量的に行うことができれば、分子認識部位としてのキャビティーを自在に制御でき、測定物質の電荷や大きさに応じた素子の設計も可能になることが期待されている。
【0006】
しかし、π共役高分子は一般に剛直な直鎖状構造を有しているため、これまで、定量的かつ選択的な環状化は極めて難しかった。本発明者らは、これまでにAABB型重合におけるフェニルアゾメチンの高選択的合成法を見出し、報告している(例えば特許文献1、非特許文献1)。しかし、フェニルアゾメチン以外のπ共役高分子の定量的かつ選択的な環状化については実現しておらず、環状分子認識素子としての用途も限られていたのが実情である。
【0007】
【非特許文献1】
金澤洋彦、樋口昌芳、山元公寿「日本化学会第81春季年会(2002)講演予稿集II」、2002年3月11日、社団法人日本化学会、1E3−48
【非特許文献2】
「Organic Letters」、1999年、第1巻、p.1881−1883
【非特許文献3】
「Journal of Organic Chemistry」、2000年、第65巻、p.5680−5684
【特許文献1】
特願平11−342623号
【0008】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、より高感度で応答性が高く、測定物質に応じた設計が容易な分子・イオンセンサー用の素子を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、次式(I)
【0010】
【化11】
【0011】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基であり、R1とAr1および/またはR2とAr2は結合していてもよく、nは重合度を表す2以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体を提供する。
【0012】
また、この出願の発明は、第2には、次式(II)
【0013】
【化12】
【0014】
(ただし、R3およびR4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基であり、Ar3およびAr4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基で、少なくともいすれか一方はフェニル基以外のアリール基であり、R3とAr3および/またはR4とAr4は結合していてもよく、mは重合度を表す2以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体を提供する。
【0015】
さらに、この出願の発明は、第3には、次式(III)
【0016】
【化13】
【0017】
(ただし、R5はアルキル基またはアリール基であり、Ar5は置換基を有していてもよいフェニル基以外のアリール基であり、R5とAr5は結合していてもよく、pは重合度を表す3以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体、および第4には、次式(IV)
【0018】
【化14】
【0019】
(ただし、R6はアルキル基であり、Ar6は置換基を有していてもよいアリール基であり、qは重合度を表す3以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体を提供する。
【0020】
この出願の発明は、第5には、少なくとも、次式(V)
【0021】
【化15】
【0022】
で表されるジケトンと、次式(VI)
【0023】
【化16】
【0024】
で表されるジアミン
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は置換基を有していてもよいアリール基である)
をルイス酸の存在下で脱水反応させる環状ポリアリールアゾメチンの製造方法を提供する。
【0025】
この出願の発明は、また、第6には、少なくとも、次式(VII)
【0026】
【化17】
【0027】
で表されるジケトンと、次式(VIII)
【0028】
【化18】
【0029】
で表されるジアミン
(ただし、R3およびR4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基であり、Ar3およびAr4は、置換基を有していてもよいアリール基であり、いずれか一方はフェニル基以外のアリール基である)
をルイス酸の存在下で脱水反応させる環状ポリアリールアゾメチンの製造方法を提供する。
【0030】
さらに、この出願の発明は、第7には、次式(IX)
【0031】
【化19】
【0032】
(ただし、R5はアルキル基またはアリール基であり、Ar5はフェニル基以外のアリール基である)
で表されるアミノアリールケトンをルイス酸の存在下で脱水反応させる環状ポリアリールアゾメチン誘導体の製造方法を、第8には、次式(X)
【0033】
【化20】
【0034】
(ただし、R6はアルキル基であり、Ar6は置換基を有していてもよいアリール基である)
で表されるアミノアリールケトンをルイス酸の存在下で脱水反応させる環状ポリアリールアゾメチン誘導体の製造方法を提供する。
【0035】
そして、この出願の発明は、第9には、少なくとも前記いずれかのポリアリールアゾメチン誘導体を分子またはイオンの検出用素子として有する分子・イオンセンサーをも提供する。
【0036】
【発明実施の形態】
この出願の発明者らは、これまでに、1,4−ジベンゾイルベンゼンとp−フェニレンジアミンの脱水反応により、次式(A)
【0037】
【化21】
【0038】
で表される新規な環状フェニルアゾメチンを合成し、報告している(非特許文献1)。
【0039】
この出願の発明は、次式(I)
【0040】
【化22】
【0041】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基であり、R1とAr1および/またはR2とAr2は結合していてもよく、nは重合度を表す2以上の整数である)、または次式(II)
【0042】
【化23】
【0043】
(ただし、R3およびR4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基であり、Ar3およびAr4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基で、少なくともいすれか一方はフェニル基以外のアリール基であり、R3とAr3および/またはR4とAr4は結合していてもよく、mは重合度を表す2以上の整数である)、あるいは、次式(III)
【0044】
【化24】
【0045】
(ただし、R5はアルキル基またはアリール基であり、Ar5は置換基を有していてもよいフェニル基以外のアリール基であり、R5とAr5は結合していてもよく、pは重合度を表す3以上の整数である)、さらには、次式(IV)
【0046】
【化25】
【0047】
(ただし、R6はアルキル基であり、Ar6は置換基を有していてもよいアリール基であり、qは重合度を表す3以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体を電気応答性分子認識素子として提供するが、これらの環状ポリアリールアゾメチン誘導体は、いずれも、発明者等の鋭意研究において合成された新規物質である。また、これらの環状ポリアリールアゾメチン誘導体は、分子・イオンセンサーにおける素子として有効に作用するものである。
【0048】
この出願の発明の環状ポリアリールアゾメチン誘導体においてR1およびR2は同一又は別異のアルキル基またはアリール基であり、少なくとも一方がアルキル基である。また、R3およびR4は同一又は別異にアルキル基またはアリール基である。さらに、R5はアルキル基またはアリール基から選択され、R6はアルキル基である。これらR1〜R6がアルキル基の場合には、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などが挙げられる。また、R1〜R5がアリール基の場合には、フェニル基やトルイル基が例示される。これらのアルキル基やアリール基はさらに置換基を有していてもよく、このような置換基としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、塩素、臭素などのハロゲン基が例示される。
【0049】
さらに、これらの環状ポリアリールアゾメチン誘導体において、Ar1およびAr2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基である。また、Ar3およびAr4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基であり、少なくともいずれか一方がフェニル基以外のアリール基である。さらに、Ar5は置換基を有していてもよいフェニル基以外のアリール基であり、Ar6は水素原子または炭化水素基である。Ar1〜Ar5が炭化水素基の場合、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ヘキシル、ベンジル、フェニル等の置換基が例示される。また、これらAr1〜Ar5は一般式(I)〜(IV)において、置換基は、いずれの位置に結合してもよい。例えばArがフェニルならば2、3、5、6位が挙げられる。
【0050】
また、一般式(I)〜(III)で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体において、R1とAr1および/またはR2とAr2、R3とAr3および/またはR4とAr4、R3とAr3および/またはR4とAr4は、各々結合していてもよい。具体的には、後述の実施例に示されるように、C−C結合によりベンゼン環同士が結合していてもよいし、C−NH−C、C−S−C、C−O−C等の結合で縮合環を形成していてもよい。
【0051】
さらに、この出願の発明において、前記一般式(I)および(II)において、環状ポリアリールアゾメチン誘導体の重合度を示すnおよびmは2以上の整数であれば特に限定されず、前記一般式(III)および(IV)において、環状ポリアリールアゾメチン誘導体の重合度を示すpおよびqは3以上の整数であればとくに限定されない。ただし、これらの化合物をセンサー素子として用いる場合には、n、m、p、およびqが3から100の整数であることが望ましい。
【0052】
この出願の発明の環状ポリアリールアゾメチン誘導体において、化合物(I)および(II)は、各々対応するジケトンとジアミン、すなわち、次の化合物(V)と(VI)
【0053】
【化26】
【0054】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は置換基を有していてもよいアリール基である)、
あるいは化合物(VII)と(VIII)
【0055】
【化27】
【0056】
(ただし、R3およびR4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基であり、Ar3およびAr4は、置換基を有していてもよいアリール基であり、いずれか一方はフェニル基以外のアリール基である)
を、プロトン酸またはルイス酸の存在下に脱水反応して得られる。このような酸としては、パラトルエンスルホン酸、四塩化チタン、アルコキシシランなどが例示される。好ましくは、収率よく前記一般式(I)および(II)の化合物を与える四塩化チタンである。
【0057】
一方、前記一般式(III)および(IV)の化合物は、対応するアミノアリールケトン、すなわち次の化合物(IX)
【0058】
【化28】
【0059】
(ただし、R5はアルキル基またはアリール基であり、Ar5はフェニル基以外のアリール基である)
または(X)
【0060】
【化29】
【0061】
(ただし、R6はアルキル基であり、Ar6は置換基を有していてもよいアリール基である)
をプロトン酸またはルイス酸の存在下で脱水反応することによって得られる。このような酸としては、パラトルエンスルホン酸、四塩化チタン、アルコキシシランなどが例示される。四塩化チタンを用いた場合が、最も収率よく前記一般式(III)および(IV)の化合物が得られ、好ましい。
【0062】
以上のとおりのこの出願の発明の環状ポリアリールアゾメチン誘導体の合成方法では、反応条件等は特に限定されないが、いずれの反応も窒素またはアルゴン等の不活性雰囲気下で行われることが好ましい。反応に使用される溶媒は、特に限定されず、種々の有機溶媒が好ましく適用される。より好ましくは、出発物質を溶解できるものである。反応温度も特に限定されないが、好ましくは、脱水反応が有効に進行する50〜200℃とする。さらに、これらの環状ポリアリールアゾメチン誘導体の製造方法は、反応の粗生成物を種々の手法により精製する工程を有していてもよい。精製方法としては、例えば、水、アルコール等の有機溶媒などを用いた再沈澱、洗浄、カラム精製等の通常の化学実験操作で用いられる方法が挙げられる。
【0063】
さらにこの発明では、以上のとおりの環状ポリアリールアゾメチン誘導体を電子応答性分子認識素子とした分子・イオンセンサーを提供する。このような分子・イオンセンサーは、発明者らの鋭意研究により得られた前記一般式(I)〜(IV)の環状ポリアリールアゾメチン誘導体が、いずれも優れた酸化還元特性と金属イオンや小分子に対する錯形成能を有することに着目して構成されたものである。
【0064】
π共役高分子は、電子応答性に優れた有機材料であることから、π共役高分子自体が金属イオンや小分子などの外部刺激に応答する部位となれば、素早く正確な電気応答性が発現されると期待されてきた。この出願の発明の環状フェニルアゾメチンはそのようなπ共役構造を有する化合物であり、これを電子応答性分子認識素子として用いることにより、高感度・高精度の分子・イオンセンサーが得られる。
【0065】
この出願の発明の分子・イオンセンサーでは、前記のいずれかの環状ポリアリールアゾメチン誘導体を素子の主成分として含有していれば良く、その形状、組成等はとくに限定されない。
【0066】
検出可能な物質としては、イミンとの配位結合が可能な金、スズ、銅などの金属イオン、またはベンゼン環とのπ錯体形成が可能な銀、ガリウム、ゲルマニウムなどの金属イオン、さらにはカルボン酸やアミン類などのイミン窒素と水素結合可能な小分子が挙げられる。また、環状ポリアリールアゾメチン誘導体のキャビティー(空孔)の大きさ、すなわち重合度を変えることで、分子サイズに基づいた認識分子種選択性も発現される。
【0067】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0068】
【実施例】
以下の実施例において、各試薬は、試薬グレード特級品を関東化学より購入して使用した。
<実施例1> 環状ポリアントラニルアゾメチンの合成
以下の化学式に従い、重合度2〜6の環状ポリアントラニルアゾメチンを合成した。
【0069】
【化30】
【0070】
9,10-ジベンゾイルアントラセン(1.10 g, 2.83 mmol)、9,10-アントラセンジアミン(0.6 g, 2.83 mmol)、および1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(1.91 g, 17.0 mmol)をクロロベンゼン(200 mL)に溶解し、チタン(IV)テトラクロライド(TiCl4)(0.802 g, 4.24 mmol)を滴下した。滴下漏斗をクロロベンゼン(5 mL)で洗浄した。反応溶液を油浴中にて125℃で4時間加熱した。冷却した後、TiCl4(0.535 g, 2.82 mmol)およびDABCO(1.27 g, 11.3 mmol)をさらに加え、溶液を再び125℃で12時間加熱した。さらに冷却した後、9,10-アントラセンジアミン(0.3 g, 1.41 mmol)、TiCl4(0.401 g, 2.11 mmol)、およびDABCO(0.952 g, 8.49 mmol)をさらに反応溶液に加え、溶液を再度125℃で12時間加熱した。得られた沈殿物を濾過した後、濾液を濃縮し、ゲルクロマトグラフィーによりCAAn-aabb(ただし、n=2、3、4、5および6)を、各々収率10、24、19、8および6 %で分離した。
【0071】
得られた物質の同定結果を表1に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
<実施例2> 環状フルオレニルアゾメチンの合成
以下の化学式に従い、重合度5および7の環状フルオレニルアゾメチンを合成した。
【0074】
【化31】
【0075】
3-アミノ-9-フルオレノン(0.120 g, 0.615 mmol)とDABCO(0.828 g, 3.68 mmol)を窒素下でクロロベンゼン(60 mL)に溶解し、TiCl4(0.174 g, 0.992 mmol)を滴下した。滴下漏斗をクロロベンゼン(2 mL)で洗浄した。反応溶液を油浴中にて125℃で4時間加熱した。冷却後、3-アミノ-9-フルオレノンの消失をTLCで確認した後、反応液を濾過した。濾液を濃縮し、HPLC(溶媒:クロロホルム)により精製した。CFA5(6.80 mg, 7.67 mol, 収率6 %)およびCFA7(16.8 mg, 13.6 mmol, 収率15 %)を得た。
【0076】
得られた物質の同定結果を表2に示した。
【0077】
【表2】
【0078】
<実施例3> 環状ポリブチルフェニルアゾメチンの合成
以下の化学式に従って、重合度3の環状ポリブチルフェニルアゾメチンを合成した。
【0079】
【化32】
【0080】
4-アミノ-4'-tert-ブチルベンゾフェノン(1.00 g, 3.95 mmol)DABCO(1.33 g, 11.8 mmol)を窒素下で無水THF(200 mL)に溶解し、TiCl4(0.562 g, 2.962mmol)を加えた。このとき、TiCl4の添加と同時に白色煙が発生した。反応溶液を油浴中にて90℃で5時間加熱した。冷却した後、TiCl4(0.374 g, 1.97 mmol)およびDABCO(0.885 g, 7.89 mmol)をさらに加え、溶液を再び油浴中にて90℃で10時間加熱した。モノマーの消失をTLCで確認し、得られた沈殿物を濾過した。濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/10〜10/1;ヘキサン/酢酸エチル=3/1におけるRf = 0.76)によりCTA3(0.418 g, 0.592 mmol, 収率45 %)を得た。
【0081】
得られた物質の同定結果を表3に示した。
【0082】
【表3】
【0083】
<実施例4> 環状ポリアリールアゾメチン誘導体を用いた電子応答性分子認識環状フェニルアゾメチン4量体のアセトニトリル−トリフルオロ酢酸−電解質溶液に作用極(炭素電極)および対極(白金電極)を設置し、サイクリックボルタンメトリー測定を行ったところ、負電位において2段の可逆な酸化還元波が観測された。
【0084】
この溶液に、ゲスト分子として1当量のトリフルオロメタンスルホン酸銀を加えたところ、酸化還元電位が0.2V正電位方向へシフトした。シフト幅は、ゲスト分子の添加量に比例するため、シフトの大きさからサンプル内の銀イオンの定量が可能である。また、このシフトは、ナトリウムやカリウムイオンの添加によっては生起せず、選択的な金属イオン認識能を有していることを確認している。
【0085】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、高選択的かつ高感度の物質検出を可能とする分子・イオンセンサー素子として有用な電気応答性環状型分子認識素子が提供される。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、環状ポリアリールアゾメチン誘導体とそれを素子とした分子・イオンセンサーに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、高選択的かつ高感度の検出を可能とする分子・イオンセンサー用素子として有用な環状ポリアリールアゾメチン誘導体とその製造方法、並びにそれを素子として有する分子・イオンセンサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、大気、土壌、水質あるいは食品等の安全性に対する関心が高まっており、有害物質や微量物質を迅速かつ正確に同定、定量するための方法が望まれている。
【0003】
従来の分子・イオンセンサーでは、一般にクラウンエーテルやカリックスアレーンなどの環状型分子認識素子に、発色、発光、電子応答性などを示す機能分子を結合させた化合物が素子として用いられてきた。このような素子は、特定の物質に対して感受性を示すものの、物質毎に異なる素子を必要とするため、設計が困難であり、汎用性が低いという問題があった。
【0004】
最近では、とくに多数の試料に対する微量物質の検出を可能とする素子が求められており、環状分子認識化合物そのものが電子応答性を示す化合物が注目されている。
【0005】
中でもπ共役高分子は、優れた電子応答性を有する機能材料であることから、効率的な環状化反応が実現すれば有効な環状分子認識素子になると期待されている。また、環状化を定量的に行うことができれば、分子認識部位としてのキャビティーを自在に制御でき、測定物質の電荷や大きさに応じた素子の設計も可能になることが期待されている。
【0006】
しかし、π共役高分子は一般に剛直な直鎖状構造を有しているため、これまで、定量的かつ選択的な環状化は極めて難しかった。本発明者らは、これまでにAABB型重合におけるフェニルアゾメチンの高選択的合成法を見出し、報告している(例えば特許文献1、非特許文献1)。しかし、フェニルアゾメチン以外のπ共役高分子の定量的かつ選択的な環状化については実現しておらず、環状分子認識素子としての用途も限られていたのが実情である。
【0007】
【非特許文献1】
金澤洋彦、樋口昌芳、山元公寿「日本化学会第81春季年会(2002)講演予稿集II」、2002年3月11日、社団法人日本化学会、1E3−48
【非特許文献2】
「Organic Letters」、1999年、第1巻、p.1881−1883
【非特許文献3】
「Journal of Organic Chemistry」、2000年、第65巻、p.5680−5684
【特許文献1】
特願平11−342623号
【0008】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、より高感度で応答性が高く、測定物質に応じた設計が容易な分子・イオンセンサー用の素子を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、次式(I)
【0010】
【化11】
【0011】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基であり、R1とAr1および/またはR2とAr2は結合していてもよく、nは重合度を表す2以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体を提供する。
【0012】
また、この出願の発明は、第2には、次式(II)
【0013】
【化12】
【0014】
(ただし、R3およびR4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基であり、Ar3およびAr4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基で、少なくともいすれか一方はフェニル基以外のアリール基であり、R3とAr3および/またはR4とAr4は結合していてもよく、mは重合度を表す2以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体を提供する。
【0015】
さらに、この出願の発明は、第3には、次式(III)
【0016】
【化13】
【0017】
(ただし、R5はアルキル基またはアリール基であり、Ar5は置換基を有していてもよいフェニル基以外のアリール基であり、R5とAr5は結合していてもよく、pは重合度を表す3以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体、および第4には、次式(IV)
【0018】
【化14】
【0019】
(ただし、R6はアルキル基であり、Ar6は置換基を有していてもよいアリール基であり、qは重合度を表す3以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体を提供する。
【0020】
この出願の発明は、第5には、少なくとも、次式(V)
【0021】
【化15】
【0022】
で表されるジケトンと、次式(VI)
【0023】
【化16】
【0024】
で表されるジアミン
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は置換基を有していてもよいアリール基である)
をルイス酸の存在下で脱水反応させる環状ポリアリールアゾメチンの製造方法を提供する。
【0025】
この出願の発明は、また、第6には、少なくとも、次式(VII)
【0026】
【化17】
【0027】
で表されるジケトンと、次式(VIII)
【0028】
【化18】
【0029】
で表されるジアミン
(ただし、R3およびR4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基であり、Ar3およびAr4は、置換基を有していてもよいアリール基であり、いずれか一方はフェニル基以外のアリール基である)
をルイス酸の存在下で脱水反応させる環状ポリアリールアゾメチンの製造方法を提供する。
【0030】
さらに、この出願の発明は、第7には、次式(IX)
【0031】
【化19】
【0032】
(ただし、R5はアルキル基またはアリール基であり、Ar5はフェニル基以外のアリール基である)
で表されるアミノアリールケトンをルイス酸の存在下で脱水反応させる環状ポリアリールアゾメチン誘導体の製造方法を、第8には、次式(X)
【0033】
【化20】
【0034】
(ただし、R6はアルキル基であり、Ar6は置換基を有していてもよいアリール基である)
で表されるアミノアリールケトンをルイス酸の存在下で脱水反応させる環状ポリアリールアゾメチン誘導体の製造方法を提供する。
【0035】
そして、この出願の発明は、第9には、少なくとも前記いずれかのポリアリールアゾメチン誘導体を分子またはイオンの検出用素子として有する分子・イオンセンサーをも提供する。
【0036】
【発明実施の形態】
この出願の発明者らは、これまでに、1,4−ジベンゾイルベンゼンとp−フェニレンジアミンの脱水反応により、次式(A)
【0037】
【化21】
【0038】
で表される新規な環状フェニルアゾメチンを合成し、報告している(非特許文献1)。
【0039】
この出願の発明は、次式(I)
【0040】
【化22】
【0041】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基であり、R1とAr1および/またはR2とAr2は結合していてもよく、nは重合度を表す2以上の整数である)、または次式(II)
【0042】
【化23】
【0043】
(ただし、R3およびR4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基であり、Ar3およびAr4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基で、少なくともいすれか一方はフェニル基以外のアリール基であり、R3とAr3および/またはR4とAr4は結合していてもよく、mは重合度を表す2以上の整数である)、あるいは、次式(III)
【0044】
【化24】
【0045】
(ただし、R5はアルキル基またはアリール基であり、Ar5は置換基を有していてもよいフェニル基以外のアリール基であり、R5とAr5は結合していてもよく、pは重合度を表す3以上の整数である)、さらには、次式(IV)
【0046】
【化25】
【0047】
(ただし、R6はアルキル基であり、Ar6は置換基を有していてもよいアリール基であり、qは重合度を表す3以上の整数である)
で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体を電気応答性分子認識素子として提供するが、これらの環状ポリアリールアゾメチン誘導体は、いずれも、発明者等の鋭意研究において合成された新規物質である。また、これらの環状ポリアリールアゾメチン誘導体は、分子・イオンセンサーにおける素子として有効に作用するものである。
【0048】
この出願の発明の環状ポリアリールアゾメチン誘導体においてR1およびR2は同一又は別異のアルキル基またはアリール基であり、少なくとも一方がアルキル基である。また、R3およびR4は同一又は別異にアルキル基またはアリール基である。さらに、R5はアルキル基またはアリール基から選択され、R6はアルキル基である。これらR1〜R6がアルキル基の場合には、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などが挙げられる。また、R1〜R5がアリール基の場合には、フェニル基やトルイル基が例示される。これらのアルキル基やアリール基はさらに置換基を有していてもよく、このような置換基としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、塩素、臭素などのハロゲン基が例示される。
【0049】
さらに、これらの環状ポリアリールアゾメチン誘導体において、Ar1およびAr2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基である。また、Ar3およびAr4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアリール基であり、少なくともいずれか一方がフェニル基以外のアリール基である。さらに、Ar5は置換基を有していてもよいフェニル基以外のアリール基であり、Ar6は水素原子または炭化水素基である。Ar1〜Ar5が炭化水素基の場合、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ヘキシル、ベンジル、フェニル等の置換基が例示される。また、これらAr1〜Ar5は一般式(I)〜(IV)において、置換基は、いずれの位置に結合してもよい。例えばArがフェニルならば2、3、5、6位が挙げられる。
【0050】
また、一般式(I)〜(III)で表される環状ポリアリールアゾメチン誘導体において、R1とAr1および/またはR2とAr2、R3とAr3および/またはR4とAr4、R3とAr3および/またはR4とAr4は、各々結合していてもよい。具体的には、後述の実施例に示されるように、C−C結合によりベンゼン環同士が結合していてもよいし、C−NH−C、C−S−C、C−O−C等の結合で縮合環を形成していてもよい。
【0051】
さらに、この出願の発明において、前記一般式(I)および(II)において、環状ポリアリールアゾメチン誘導体の重合度を示すnおよびmは2以上の整数であれば特に限定されず、前記一般式(III)および(IV)において、環状ポリアリールアゾメチン誘導体の重合度を示すpおよびqは3以上の整数であればとくに限定されない。ただし、これらの化合物をセンサー素子として用いる場合には、n、m、p、およびqが3から100の整数であることが望ましい。
【0052】
この出願の発明の環状ポリアリールアゾメチン誘導体において、化合物(I)および(II)は、各々対応するジケトンとジアミン、すなわち、次の化合物(V)と(VI)
【0053】
【化26】
【0054】
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は置換基を有していてもよいアリール基である)、
あるいは化合物(VII)と(VIII)
【0055】
【化27】
【0056】
(ただし、R3およびR4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基であり、Ar3およびAr4は、置換基を有していてもよいアリール基であり、いずれか一方はフェニル基以外のアリール基である)
を、プロトン酸またはルイス酸の存在下に脱水反応して得られる。このような酸としては、パラトルエンスルホン酸、四塩化チタン、アルコキシシランなどが例示される。好ましくは、収率よく前記一般式(I)および(II)の化合物を与える四塩化チタンである。
【0057】
一方、前記一般式(III)および(IV)の化合物は、対応するアミノアリールケトン、すなわち次の化合物(IX)
【0058】
【化28】
【0059】
(ただし、R5はアルキル基またはアリール基であり、Ar5はフェニル基以外のアリール基である)
または(X)
【0060】
【化29】
【0061】
(ただし、R6はアルキル基であり、Ar6は置換基を有していてもよいアリール基である)
をプロトン酸またはルイス酸の存在下で脱水反応することによって得られる。このような酸としては、パラトルエンスルホン酸、四塩化チタン、アルコキシシランなどが例示される。四塩化チタンを用いた場合が、最も収率よく前記一般式(III)および(IV)の化合物が得られ、好ましい。
【0062】
以上のとおりのこの出願の発明の環状ポリアリールアゾメチン誘導体の合成方法では、反応条件等は特に限定されないが、いずれの反応も窒素またはアルゴン等の不活性雰囲気下で行われることが好ましい。反応に使用される溶媒は、特に限定されず、種々の有機溶媒が好ましく適用される。より好ましくは、出発物質を溶解できるものである。反応温度も特に限定されないが、好ましくは、脱水反応が有効に進行する50〜200℃とする。さらに、これらの環状ポリアリールアゾメチン誘導体の製造方法は、反応の粗生成物を種々の手法により精製する工程を有していてもよい。精製方法としては、例えば、水、アルコール等の有機溶媒などを用いた再沈澱、洗浄、カラム精製等の通常の化学実験操作で用いられる方法が挙げられる。
【0063】
さらにこの発明では、以上のとおりの環状ポリアリールアゾメチン誘導体を電子応答性分子認識素子とした分子・イオンセンサーを提供する。このような分子・イオンセンサーは、発明者らの鋭意研究により得られた前記一般式(I)〜(IV)の環状ポリアリールアゾメチン誘導体が、いずれも優れた酸化還元特性と金属イオンや小分子に対する錯形成能を有することに着目して構成されたものである。
【0064】
π共役高分子は、電子応答性に優れた有機材料であることから、π共役高分子自体が金属イオンや小分子などの外部刺激に応答する部位となれば、素早く正確な電気応答性が発現されると期待されてきた。この出願の発明の環状フェニルアゾメチンはそのようなπ共役構造を有する化合物であり、これを電子応答性分子認識素子として用いることにより、高感度・高精度の分子・イオンセンサーが得られる。
【0065】
この出願の発明の分子・イオンセンサーでは、前記のいずれかの環状ポリアリールアゾメチン誘導体を素子の主成分として含有していれば良く、その形状、組成等はとくに限定されない。
【0066】
検出可能な物質としては、イミンとの配位結合が可能な金、スズ、銅などの金属イオン、またはベンゼン環とのπ錯体形成が可能な銀、ガリウム、ゲルマニウムなどの金属イオン、さらにはカルボン酸やアミン類などのイミン窒素と水素結合可能な小分子が挙げられる。また、環状ポリアリールアゾメチン誘導体のキャビティー(空孔)の大きさ、すなわち重合度を変えることで、分子サイズに基づいた認識分子種選択性も発現される。
【0067】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0068】
【実施例】
以下の実施例において、各試薬は、試薬グレード特級品を関東化学より購入して使用した。
<実施例1> 環状ポリアントラニルアゾメチンの合成
以下の化学式に従い、重合度2〜6の環状ポリアントラニルアゾメチンを合成した。
【0069】
【化30】
【0070】
9,10-ジベンゾイルアントラセン(1.10 g, 2.83 mmol)、9,10-アントラセンジアミン(0.6 g, 2.83 mmol)、および1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(1.91 g, 17.0 mmol)をクロロベンゼン(200 mL)に溶解し、チタン(IV)テトラクロライド(TiCl4)(0.802 g, 4.24 mmol)を滴下した。滴下漏斗をクロロベンゼン(5 mL)で洗浄した。反応溶液を油浴中にて125℃で4時間加熱した。冷却した後、TiCl4(0.535 g, 2.82 mmol)およびDABCO(1.27 g, 11.3 mmol)をさらに加え、溶液を再び125℃で12時間加熱した。さらに冷却した後、9,10-アントラセンジアミン(0.3 g, 1.41 mmol)、TiCl4(0.401 g, 2.11 mmol)、およびDABCO(0.952 g, 8.49 mmol)をさらに反応溶液に加え、溶液を再度125℃で12時間加熱した。得られた沈殿物を濾過した後、濾液を濃縮し、ゲルクロマトグラフィーによりCAAn-aabb(ただし、n=2、3、4、5および6)を、各々収率10、24、19、8および6 %で分離した。
【0071】
得られた物質の同定結果を表1に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
<実施例2> 環状フルオレニルアゾメチンの合成
以下の化学式に従い、重合度5および7の環状フルオレニルアゾメチンを合成した。
【0074】
【化31】
【0075】
3-アミノ-9-フルオレノン(0.120 g, 0.615 mmol)とDABCO(0.828 g, 3.68 mmol)を窒素下でクロロベンゼン(60 mL)に溶解し、TiCl4(0.174 g, 0.992 mmol)を滴下した。滴下漏斗をクロロベンゼン(2 mL)で洗浄した。反応溶液を油浴中にて125℃で4時間加熱した。冷却後、3-アミノ-9-フルオレノンの消失をTLCで確認した後、反応液を濾過した。濾液を濃縮し、HPLC(溶媒:クロロホルム)により精製した。CFA5(6.80 mg, 7.67 mol, 収率6 %)およびCFA7(16.8 mg, 13.6 mmol, 収率15 %)を得た。
【0076】
得られた物質の同定結果を表2に示した。
【0077】
【表2】
【0078】
<実施例3> 環状ポリブチルフェニルアゾメチンの合成
以下の化学式に従って、重合度3の環状ポリブチルフェニルアゾメチンを合成した。
【0079】
【化32】
【0080】
4-アミノ-4'-tert-ブチルベンゾフェノン(1.00 g, 3.95 mmol)DABCO(1.33 g, 11.8 mmol)を窒素下で無水THF(200 mL)に溶解し、TiCl4(0.562 g, 2.962mmol)を加えた。このとき、TiCl4の添加と同時に白色煙が発生した。反応溶液を油浴中にて90℃で5時間加熱した。冷却した後、TiCl4(0.374 g, 1.97 mmol)およびDABCO(0.885 g, 7.89 mmol)をさらに加え、溶液を再び油浴中にて90℃で10時間加熱した。モノマーの消失をTLCで確認し、得られた沈殿物を濾過した。濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/10〜10/1;ヘキサン/酢酸エチル=3/1におけるRf = 0.76)によりCTA3(0.418 g, 0.592 mmol, 収率45 %)を得た。
【0081】
得られた物質の同定結果を表3に示した。
【0082】
【表3】
【0083】
<実施例4> 環状ポリアリールアゾメチン誘導体を用いた電子応答性分子認識環状フェニルアゾメチン4量体のアセトニトリル−トリフルオロ酢酸−電解質溶液に作用極(炭素電極)および対極(白金電極)を設置し、サイクリックボルタンメトリー測定を行ったところ、負電位において2段の可逆な酸化還元波が観測された。
【0084】
この溶液に、ゲスト分子として1当量のトリフルオロメタンスルホン酸銀を加えたところ、酸化還元電位が0.2V正電位方向へシフトした。シフト幅は、ゲスト分子の添加量に比例するため、シフトの大きさからサンプル内の銀イオンの定量が可能である。また、このシフトは、ナトリウムやカリウムイオンの添加によっては生起せず、選択的な金属イオン認識能を有していることを確認している。
【0085】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、高選択的かつ高感度の物質検出を可能とする分子・イオンセンサー素子として有用な電気応答性環状型分子認識素子が提供される。
Claims (9)
- 次式(I)
で表されることを特徴とする環状ポリアリールアゾメチン誘導体。 - 次式(II)
で表されることを特徴とする環状ポリアリールアゾメチン誘導体。 - 次式(III)
で表されることを特徴とする環状ポリアリールアゾメチン誘導体。 - 次式(IV)
で表されることを特徴とする環状ポリアリールアゾメチン誘導体。 - 少なくとも、次式(V)
(ただし、R1およびR2は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基で、少なくともいずれか一方はアルキル基であり、Ar1およびAr2は置換基を有していてもよいアリール基である)
をルイス酸の存在下で脱水反応させることを特徴とする請求項1の環状ポリアリールアゾメチンの製造方法。 - 少なくとも、次式(VII)
(ただし、R3およびR4は、同一または別異に置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基であり、Ar3およびAr4は、置換基を有していてもよいアリール基であり、いずれか一方はフェニル基以外のアリール基である)
をルイス酸の存在下で脱水反応させることを特徴とする請求項2の環状ポリアリールアゾメチンの製造方法。 - 次式(IX)
で表されるアミノアリールケトンをルイス酸の存在下で脱水反応させることを特徴とする請求項3の環状ポリアリールアゾメチン誘導体の製造方法。 - 次式(X)
で表されるアミノアリールケトンをルイス酸の存在下で脱水反応させることを特徴とする請求項4の環状ポリアリールアゾメチン誘導体の製造方法。 - 少なくとも請求項1ないし4のいずれかのポリアリールアゾメチン誘導体を分子またはイオンの検出用素子として有することを特徴とする分子・イオンセンサー。
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2002
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