JP2020176108A - グアニン四重鎖結合性リガンド - Google Patents
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Abstract
【課題】一本鎖配列との平衡状態にあり、複製や転写などの生体イベントのタイミングで動的に形成されると考えられており生物学的プロセスにおいて重要な役割を担うグアニン四重鎖形成DNA配列と相互作用した時のみ蛍光を発する蛍光リガンドの提供。【解決手段】下記構造式で示される化合物を代表的な例とする、化合物又はその塩からなるグアニン四重鎖結合性リガンド及びこれを用いたグアニン四重鎖形成DNA配列の検出方法を提供する。【選択図】なし
Description
本発明は、グアニン四重鎖と選択的に相互作用し得る新規化合物及びその塩に関する。本発明はまた、上記化合物又はその塩からなるグアニン四重鎖結合性リガンド、並びに上記化合物又はその塩を用いた、グアニン四重鎖形成DNA配列の検出方法に関する。
グアニン四重鎖(G-quadruplex、以下、本明細書中においてG4と記載することがある)は、グアニン残基が豊富な核酸配列で形成されるDNAの高次構造の一つである。G4は、4つのグアニンの水素結合を介して構成されるG-カルテット平面がπ-π相互作用によって積み重なった構造をとることが知られている。
G4を形成し得る配列は、テロメア領域や、がん関連遺伝子のプロモータ領域を中心に、数十万種見出されている。これらのうち、数十種の配列では、G4が形成されることで、DNAの複製やがん遺伝子の転写抑制、がん細胞のアポトーシス誘導などの生命現象が直接的に制御されることが報告されている。G4は、一本鎖配列との平衡状態にあり、複製や転写などの生体イベントのタイミングで動的に形成されると考えられており、生物学的プロセスにおいて重要な役割を担うG4を生体内において検出する分子ツールの開発が求められている。
現在、G4を検出する分子ツールとして、蛍光標識した低分子化合物が報告されている。本発明者らは、G4を選択的に認識する低分子化合物として、大環状ポリオキサゾール構造を有する種々の誘導体(OTD)の創製研究を行ってきている。OTDは、極めて高い選択性でG4形成配列と相互作用し、これを強力に安定化することを見出している。この知見に基づき、OTD骨格に対して、蛍光基としてCy5又はBODIPYを導入した下記のようなプローブを開発し(非特許文献1及び2)、これらのリガンドをDNAマイクロアレイと組み合わせることで、新規G4形成配列の探索への応用に成功している(特許文献1)。
また、他の研究グループも、G4結合性のリガンドに蛍光基を導入した、蛍光G4リガンドの開発を報告している。Balasubramanianらは、彼らが開発したG4リガンドであるピリドスタチンに対して、Alexa Fluor 594を導入した蛍光G4リガンドを創製し、この蛍光リガンドを用いて、G4を形成する可能性のある配列が、ゲノム上に多数存在することを明らかにしている(非特許文献3)。また、Teulade-Fichouらは、自身で開発したG4リガンドであるPhen-DC3に対して、蛍光官能基であるCy5を導入し、この蛍光リガンドを固定細胞内に添加することで、細胞内におけるG4構造の検出に成功している(非特許文献4)。
一方、蛍光化合物が発する蛍光を検出する際、バックグラウンドを考慮すると当該化合物の励起光を切り離して観察する必要があるため、一般的に、ストークスシフト(最大励起波長と最大蛍光波長との差)が大きい蛍光化合物の方が標的の蛍光検出が容易である。例えば、上記のL1Cy5-7OTDやL1BOD-7OTDは、それぞれ蛍光基由来の励起蛍光波長を持つが、Cy5は励起波長640 nm/蛍光波長660 nm前後であり、BODIPYは励起波長500 nm/蛍光波長520 nm前後であり、それぞれのストークスシフトは20 nm前後である。
Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 12052-12055
Org. Biomol. Chem., 2010, 8, 2749-2755
Nat. Chem. Biol., 2012, 8, 301-310
Angew. Chem. Int. Ed., 2017, 56, 11365-11369
従来報告されている蛍光リガンドは、いずれもG4を安定化する低分子化合物に対して、蛍光官能基を導入しており、リガンド単体でも蛍光基に由来した蛍光を発するものであった。この場合、検出のためにはG4非存在下と存在下との区別、すなわち、B/F(Bound/Free)の分離が必要とされるが、分離しきれないためにバックグラウンド蛍光が高くなったり、また蛍光感度が低下するといった問題が生じ、特に生細胞におけるイメージングは困難であった。
G4非存在下と存在下との区別ができるようなリガンドの創製研究もわずかに行われてきたが、それらはDNAのG4と相互作用することで蛍光特性が変化するのみであった。G4構造の検出を目的とする場合、蛍光特性が変化するだけでは、検出感度が不十分である。
そこで、常時蛍光を発する従来の蛍光リガンドに代わり、G4と相互作用した時のみ蛍光を発する蛍光リガンドの開発が望まれていた。
そこで、常時蛍光を発する従来の蛍光リガンドに代わり、G4と相互作用した時のみ蛍光を発する蛍光リガンドの開発が望まれていた。
このような背景のもと、本発明者らは、G4の検出に関して、迅速かつ簡便に、高感度で検出可能な蛍光によるG4の検出を試みた。その結果、G4構造と相互作用した時にのみ蛍光を発する蛍光G4リガンドを見出した。本明細書において、このようなリガンドを「ライトアップ型リガンド」と称することとする。
同一分子中で、互いにねじれ関係にある芳香族ユニットは、構造変化により平面になることで、蛍光を発する場合があることが知られている。そこで、本発明者等は、先に開発した大環状ポリオキサゾール構造を有するオキサゾールテロメスタチン誘導体(Oxazole Telomestatin Derivatives、OTD)にビニル基を介してナフチル基等を導入した種々の化合物を設計し、合成した。
その結果、得られた化合物は、G4と結合することで、その蛍光特性が変化することが認められた。これは、化合物単体では大環状ポリオキサゾールとナフチル基等との連結部における回転が可能であるのに対して、G4構造の存在下ではGカルテット平面とのπ-π相互作用によって大環状ポリオキサゾールとナフチル基等とが同一平面上に固定され、その結果、G4構造の不存在下とは異なる蛍光を発することができるためと考えられる。
特に、ナフチル基の4位にOAc基を有する化合物(本明細書において化合物1と記載する)は、化合物のみでは蛍光が観察されないが、G4と相互作用することで蛍光を発することを見出した。更に、この化合物は、G4構造と極めて選択的に相互作用し、G4形成配列が変異してG4を含まない配列、及びG4構造を有さない2本鎖DNAとも全く相互作用せず、蛍光を発することもなかった。
また、上記の通り、従来のG4結合性の蛍光リガンドでは、ストークスシフトが小さい場合があり、検出のためにバックグラウンドの影響を考慮する必要性が高かったのに対して、本発明で開発したライトアップ型リガンドは、100〜200nmものストークスシフトを有するものであり、検出をより容易にすることができることが見出された。
本発明者等は上記の知見に基づき、更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は以下を提供するものである。
1. 以下の一般式(I):
[式中、R1は置換されていても良い2〜4個の共役した平面環からなる芳香族縮合環であり、
R2はHであるか、又は
であり、この場合、R2中のR1は上記のR1と同じでも異なっていても良く、
R3及びR4はそれぞれ独立して
であるが、但し、R1が
であり、XがHであり、R2がHであり、R3及びR4がいずれも
であるものを除く。]
を有する化合物又はその塩。
2. R1が、非置換であるか、又は1個の置換基で置換されていても良い、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、キノリル基、イソキノリル基、1-メチルキノリニウム基、アクリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、及びベンゾチアゾリル基からなる群より選択される芳香族縮合環である、上記1記載の化合物又はその塩。
3. R1が、ヒドロキシル基(−OH)、メトキシ基(−OMe)、アセトキシ基(−OAc)、メシルオキシ基(−OMs)、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基(−OTf)、アミノ基(−NH2)、ジメチルアミノ基(−NMe2)、及びジエチルアミノ基(−NEt2)からなる群より選択される1個の置換基で置換された芳香族縮合環である、上記1もしくは2記載の化合物又はその塩。
4. 以下の一般式(I):
[式中、R1は
であり、XはH、OH、OMe、OAc又はNMe2であり、
R2はHであるか、又は
であり、この場合、R2中のR1は上記のR1と同じでも異なっていても良く、
R3及びR4はそれぞれ独立して
であるが、但し、R1が
であり、XがHであり、R2がHであり、R3及びR4がいずれも
であるものを除く。]
を有する化合物又はその塩。
5. R1が
であり、
XがOH、OMe、OAc又はNMe2であり、
R2がHである、
上記4記載の化合物又はその塩。
6. 以下の構造:
を有する、化合物又はその塩。
7. 以下の構造:
を有する、化合物又はその塩。
8. 以下の構造:
を有する、化合物又はその塩。
9. 上記1〜8のいずれか記載の化合物又はその塩からなる、グアニン四重鎖結合性リガンド。
10. 以下のステップ:
(i)上記9記載のグアニン四重鎖結合性リガンドと、サンプルとを接触させた場合に生じる蛍光を測定し、
(ii)サンプル非存在下における蛍光と比較する
ことを含む、サンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の検出方法であって、該DNA配列と結合していないリガンドの分離ステップを含まない、上記方法。
11. 目視によるか、又は特定波長での蛍光強度若しくは特定波長範囲での蛍光スペクトルを測定する、上記10記載の方法。
1. 以下の一般式(I):
R2はHであるか、又は
R3及びR4はそれぞれ独立して
を有する化合物又はその塩。
2. R1が、非置換であるか、又は1個の置換基で置換されていても良い、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、キノリル基、イソキノリル基、1-メチルキノリニウム基、アクリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、及びベンゾチアゾリル基からなる群より選択される芳香族縮合環である、上記1記載の化合物又はその塩。
3. R1が、ヒドロキシル基(−OH)、メトキシ基(−OMe)、アセトキシ基(−OAc)、メシルオキシ基(−OMs)、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基(−OTf)、アミノ基(−NH2)、ジメチルアミノ基(−NMe2)、及びジエチルアミノ基(−NEt2)からなる群より選択される1個の置換基で置換された芳香族縮合環である、上記1もしくは2記載の化合物又はその塩。
4. 以下の一般式(I):
R2はHであるか、又は
R3及びR4はそれぞれ独立して
を有する化合物又はその塩。
5. R1が
XがOH、OMe、OAc又はNMe2であり、
R2がHである、
上記4記載の化合物又はその塩。
6. 以下の構造:
7. 以下の構造:
8. 以下の構造:
9. 上記1〜8のいずれか記載の化合物又はその塩からなる、グアニン四重鎖結合性リガンド。
10. 以下のステップ:
(i)上記9記載のグアニン四重鎖結合性リガンドと、サンプルとを接触させた場合に生じる蛍光を測定し、
(ii)サンプル非存在下における蛍光と比較する
ことを含む、サンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の検出方法であって、該DNA配列と結合していないリガンドの分離ステップを含まない、上記方法。
11. 目視によるか、又は特定波長での蛍光強度若しくは特定波長範囲での蛍光スペクトルを測定する、上記10記載の方法。
本発明により、測定対象のサンプル中のDNAにおけるG4の形成/非形成が迅速かつ感度良く検出可能となり、リガンドベースでの疾患マーカー検出のための基盤を構築することができる。本発明のリガンドは、DNA配列と結合していないリガンドの分離ステップを必要としないため、生細胞におけるイメージングにも好適に使用することができる。
本発明は、以下の一般式(I):
[式中、R1は置換されていても良い2〜4個の共役した平面環からなる芳香族縮合環であり、
R2はHであるか、又は
であり、この場合、R2中のR1は上記のR1と同じでも異なっていても良く、
R3及びR4はそれぞれ独立して
であるが、但し、R1が
であり、XがHであり、R2がHであり、R3及びR4がいずれも
であるものを除く。]
を有する化合物又はその塩を提供する。
R2はHであるか、又は
R3及びR4はそれぞれ独立して
を有する化合物又はその塩を提供する。
上記化合物又はその塩は、G4に選択的に結合し、G4の濃度に依存した蛍光の増大を示すため、サンプル中のDNAにG4が存在するか否かを蛍光によって検出するために好適に使用することができる。当業者であれば、本願明細書の記載及び当分野における技術常識に基づいて、上記の構造の化合物が、実施例で具体的に示された化合物と同様に、G4の検出のためのリガンドとして好適に使用できることを理解することができる。
一般式(I)におけるR1は、限定するものではないが、非置換であるか、又は1個の置換基で置換されていても良い、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、キノリル基、イソキノリル基、1-メチルキノリニウム基、アクリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、及びベンゾチアゾリル基からなる群より選択される芳香族縮合環の基であり得る。これらの芳香族縮合環は、いずれも2〜4個の共役した平面環からなり、縮合環を形成する各環は、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)及び硫黄(S)から選択される原子を環原子として有する5員又は6員の環構造を有する。これらの芳香族縮合環は、共役した環構造を有し、その平面状構造がG4との相互作用において有利に作用することが見出された。
R1が置換基を有する場合、置換基は好ましくはヒドロキシル基(−OH)、メトキシ基(−OMe)、アセトキシ基(−OAc)、メシルオキシ基(−OMs)、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基(−OTf)、アミノ基(−NH2)、ジメチルアミノ基(−NMe2)、及びジエチルアミノ基(−NEt2)からなる群より選択される。置換基は、2個以上であり得るが、特に1個の置換基で置換された場合が好適であり得る。
より具体的には、一般式(I)におけるR1は、限定するものではないが、例えば下記の表1に示す構造を有するものであり得る。
一態様において、一般式(I)の化合物は、上記のR1の芳香族縮合環を分子中に1個有するものである。別の態様において、一般式(I)の化合物は、同じか若しくは異なる上記のR1の芳香族縮合環を分子中に2個有するものである。例えば、一般式(I)の化合物は、R1の同じ芳香族縮合環を分子中に2個有するものである。
上記化合物の塩としては、特に限定するものではないが、例えば塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩等を挙げることができる。また、上記化合物は、例えばG4検出のためにサンプルと接触させた場合に、サンプル中に含まれる生体若しくはバッファー等に由来する物質と塩若しくは溶媒和物を形成することもあり得る。
一実施形態において、本発明の化合物は、以下の一般式(I):
[式中、R1は
であり、XはH、OH、OMe、OAc又はNMe2であり、
R2はHであるか、又は
であり、この場合、R2中のR1は上記のR1と同じでも異なっていても良く、
R3及びR4はそれぞれ独立して
であるが、但し、R1が
であり、XがHであり、R2がHであり、R3及びR4がいずれも
であるものを除く。]
を有する化合物又はその塩を提供する。
R2はHであるか、又は
R3及びR4はそれぞれ独立して
を有する化合物又はその塩を提供する。
一態様において、一般式(I)の化合物は、上記のR1の芳香族縮合環を分子中に1個有するものである。別の態様において、一般式(I)の化合物は、同じか若しくは異なる上記のR1の芳香族縮合環を分子中に2個有するものである。例えば、一般式(I)の化合物は、R1の同じ芳香族縮合環を分子中に2個有するものである。
上記の化合物の一態様では、化合物はR1が置換基を有するナフチル基
であり、
置換基XがOH(ヒドロキシル基)、OMe(メトキシ基)、OAc(アセトキシ基)又はNMe2(ジメチルアミノ基)であり、
R2がHのものであり得る。
置換基XがOH(ヒドロキシル基)、OMe(メトキシ基)、OAc(アセトキシ基)又はNMe2(ジメチルアミノ基)であり、
R2がHのものであり得る。
例えば、置換基XはOH、OMe又はOAcであり得る。あるいはまた、XはNMe2であり得る。
また、特に限定するものではないが、上記構造において、R3及びR4は、
とすることができる。
例えば、化合物は、以下の構造:
を有するものであり得る。本明細書において、この化合物を「化合物1」と記載する。化合物1は、一般式(I)におけるR1が1個のアセトキシ基で置換されたナフチル基である。
あるいは、化合物は、以下の構造:
を有するものであり得る。本明細書において、この化合物を「化合物2−OH」と記載する。化合物2−OHは、一般式(I)におけるR1が1個のヒドロキシル基で置換されたナフチル基である。
あるいは、化合物は、以下の構造:
を有するものであり得る。本明細書において、この化合物を「化合物2−OMe」と記載する。化合物2−OMeは、一般式(I)におけるR1が1個のメトキシ基で置換されたナフチル基である。
あるいは、化合物は、以下の構造:
を有するものであり得る。本明細書において、この化合物を「化合物2−NMe2」と記載する。化合物2−NMe2は、一般式(I)におけるR1が1個のジメチルアミノ基で置換されたナフチル基である。
あるいはまた、化合物は、R1がアントラセニル基
であり、R2がHであり、R3及びR4が
である化合物であり得る。具体的には、この化合物は、以下の構造:
を有する。
あるいは、化合物は、R1がベンゾチアゾリル基
であり、R2がHであり、R3及びR4が
である化合物であり得る。具体的には、この化合物は、以下の構造:
を有する。
あるいは、化合物は、R1が
であり、XがOAcであり、R2が
であり、R3及びR4が
である化合物であり得る。具体的には、この化合物は、以下の構造:
を有する。この化合物は、分子中に1個のアセトキシ基で置換されたナフチル基を2個有する。
あるいは、化合物は、R1が上記した通りの置換されていても良い2〜4個の共役した平面環からなる芳香族縮合環、例えば限定するものではないが
であり、XがH、OH、OMe、OAc又はNMe2であり、R2がHであり、R3が
であり、R4が
である化合物であり得る。具体的には、この化合物は、例えば以下の構造:
[式中、Rは
である。]
を有する。
を有する。
上記の本発明の化合物又はその塩は、下記の実施例を含む本願明細書の記載、及び当分野における技術常識に従って、好適に合成することができる。
本発明はまた、上記の本発明の化合物又はその塩からなる、グアニン四重鎖結合性リガンドを提供する。
本発明のグアニン四重鎖結合性リガンドは、サンプル中にグアニン四重鎖を形成したDNAが存在する場合に、該四重鎖に選択的に結合して、その蛍光特性の変化を指標としてそのようなDNAの存在及び量を検出することができる。
本発明のグアニン四重鎖結合性リガンドは、サンプル中にグアニン四重鎖を形成したDNAが存在する場合に、該四重鎖に選択的に結合して、その蛍光特性の変化を指標としてそのようなDNAの存在及び量を検出することができる。
好ましくは、本発明のグアニン四重鎖結合性リガンドは、単独(すなわちグアニン四重鎖と結合していない場合)では蛍光を発しない化合物又はその塩であり得る。例えば、本発明のリガンドとして、化合物1、化合物2−OH又は化合物2−NMe2を好適に使用することができる。
従って、本発明はまた、上記の本発明のグアニン四重鎖結合性リガンドを用いた、サンプル中の四重鎖形成DNA配列の存在を検出する方法を提供する。
より具体的には、本発明の方法は、以下のステップ:
(i)上記の本発明のグアニン四重鎖結合性リガンドと、サンプルとを接触させた場合に生じる蛍光を測定し、
(ii)サンプル非存在下における蛍光と比較する
ことを含む、サンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の検出方法であって、該DNA配列と結合していないリガンドの分離ステップを含まない、上記方法であり得る。
より具体的には、本発明の方法は、以下のステップ:
(i)上記の本発明のグアニン四重鎖結合性リガンドと、サンプルとを接触させた場合に生じる蛍光を測定し、
(ii)サンプル非存在下における蛍光と比較する
ことを含む、サンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の検出方法であって、該DNA配列と結合していないリガンドの分離ステップを含まない、上記方法であり得る。
好ましくは、グアニン四重鎖結合性リガンドは、単独では蛍光を発しない化合物又はその塩からなる「ライトアップ型リガンド」である。この場合、上記ステップ(ii)におけるサンプル非存在下における蛍光は、ほとんど又は全く検出されないため、上記の方法において無視することができ、すなわち、ステップ(ii)を含まず、単にステップ(i)を実施する方法とすることができる。従って、この場合、本発明の方法は、サンプル存在下で蛍光が生じれば、サンプル中にグアニン四重鎖形成DNA配列が存在することを示し得る。
本発明の方法は、目視によって蛍光の増大又は変化を確認するものとすることができる。単独では蛍光を発しない化合物又はその塩を用いる場合、蛍光が生じることがサンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の存在を示す。
あるいはまた、本発明の方法は、特定波長での蛍光強度を測定するものとすることができる。また、本発明の方法は、特定波長範囲での蛍光スペクトルを測定するものとすることができる。測定すべき特定波長又は特定波長範囲は、リガンドとして用いる化合物又はその塩により、適宜決定することができる。
本発明で開発したライトアップ型リガンドは、365〜380 nmで励起した際に470〜500 nmの蛍光スペクトルを示すことから、ストークスシフトは100 nmを超え、グアニン四重鎖形成DNA配列の存在をより容易に検出することができる。
例えば、化合物1を用いてサンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の存在を検出することを意図する場合には、限定するものではないが、365nmの励起波長を用いて、470〜480nmの範囲の波長での蛍光強度を測定することが好ましい。また、例えば化合物2−OHを用いてサンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の存在を検出することを意図する場合には、限定するものではないが、365nmの励起波長を用いて、440〜450nmの範囲の波長での蛍光強度を測定することが好ましい。あるいは、化合物1若しくは化合物2−OHを用いてサンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の存在を検出することを意図する場合、365nmの励起波長を用いて、400〜600nm、あるいは430〜630nmの波長範囲の蛍光スペクトルを測定することが好ましい。
化合物2−NMe2をG4形成配列存在下で添加した際、600 nm付近に最大蛍光波長が得られる。この時の最大励起波長は396 nmであり、ストークスシフト(最大励起と最大蛍光とのバンド間の差)は200 nmと更に大きいものとなる。化合物2−NMe2を用いてサンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の存在を検出することを意図する場合、399nmの励起波長を用いて、550〜650nm、例えば570〜630nmの波長範囲の蛍光スペクトルを測定することが好ましい。
検出に用いるリガンドの濃度は、測定対象のサンプル中に含まれ得るDNAの濃度に依存して適宜調整することができる。蛍光測定のために最適なリガンド濃度は、特に限定するものではないが、DNAに対して約0.1:1〜約10:1の比率、好ましくは約0.2:1〜約5:1の比率であり得る。また、蛍光測定サンプル中のリガンドの濃度は、特に限定するものではないが、0.1μM〜50μM、好ましくは0.5μM〜25μMの範囲内であれば好適に測定することができる。
本発明の方法における蛍光強度の測定は、特に限定するものではないが、例えばpH 7.0〜8.0、好ましくはpH 7.3〜7.7の範囲のpH条件において、室温下で実施することができる。また、サンプル中の塩濃度は、G4が形成できる条件下であれば良く、特に限定するものではないが、10〜150 mM、好ましくは20〜100 mMの範囲内に調整することが好適である。
本発明のグアニン四重鎖結合性リガンドは、グアニン四重鎖を形成しないDNA配列とは有意な結合を示さず、従って、グアニン四重鎖形成DNA配列の存在を特異的に検出することができる。また、本発明のリガンドによって得られる蛍光は、グアニン四重鎖形成DNAの濃度に依存して増大するため、サンプル(DNA)非存在下における蛍光と比較することで、サンプル中のグアニン四重鎖形成DNAの定量に用いることもできる。この場合、リガンドとして用いる化合物毎に、グアニン四重鎖形成DNA濃度による蛍光強度を予め測定し、検量線を作成しておくことができる。
上記の通り、単独では蛍光を発しない化合物(例えば化合物1、化合物2−OH又は2−NMe2)又はその塩を「ライトアップ型リガンド」として用いる場合、蛍光が生じることがそのままサンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の存在を示すことになるため、DNA濃度の定量においてもより迅速で正確な測定結果をもたらすことができる。ライトアップ型リガンドによって得られる蛍光は、グアニン四重鎖形成DNAと結合することでのみ生じるものであり、かつその濃度に依存して増大するため、サンプル(DNA)非存在下における蛍光と比較すること(ステップ(ii))なく、サンプル中のグアニン四重鎖形成DNAの定量に用いることができる。
以下に本発明を実施例によって更に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、以下の合成実施例において、フラッシュクロマトグラフィーは、Silica gel 60(球形, 粒径40〜100 μm, 関東化学)を用いた。旋光度は、ナトリウムD線を用いてJASCO P-2200偏光計で測定した。1H 及び 13C NMRスペクトルは、JEOL JNM-AL 300又はJNM-ECX 400で測定し、溶媒として用いたCDCl3(1H NMR; δ= 7.26 ppm, 13C NMR; δ= 77.0 ppm)又はDMSO-d6(1H NMR; δ= 2.50 ppm, 13C NMR; δ= 39.5 ppm)のシグナルを基準とした。1H NMRのデータは以下のように報告する[化学シフト (δ, ppm), multiplicity (s, singlet; d, doublet; t, triplet; m, multiplet; br, broad)、積分値、カップリング定数 (Hz)]13C NMRのデータは、化学シフト (δ, ppm) に関して報告する。質量スペクトルは、JEOL JMS-T100LC分光計を用い、ESI-MSモードにてメタノール溶媒で測定した。
[実施例1 化合物1の合成]
以下のスキーム1及び2に従って化合物1(L2H2-1Np-4OAc)を合成した。
以下のスキーム1及び2に従って化合物1(L2H2-1Np-4OAc)を合成した。
1−1.モノオキサゾール5の合成
アルゴン雰囲気下、アミド3(9.43 g, 19.6 mmol)の脱水ジクロロメタン溶液(200 mL)に、0℃下、炭酸ナトリウム(6.23 g, 58.8 mmol)、(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(3.10 mL, 23.5 mmol)を加え、1時間撹拌した。飽和重曹水を加え、ジクロロメタンで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒留去した。残渣をアルゴン雰囲気下、脱水ジクロロメタン溶液(130 mL)に溶解させ、0℃下、1,8-ジアザビシクロ[5, 4, 0]-7-ウンデセン(4.40 mL, 29.4 mmol)、ブロモトリクロロメタン(3.89 mL, 39.2 mmol)を加え、12時間撹拌した。1.2 N塩酸を加え、クロロホルムで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 3:1)にて精製し、モノオキサゾール5(8.17 g, 91%, 2工程)を無色液体として得た。
1−2.モノオキサゾール6の合成
水素雰囲気下、モノオキサゾール5(8.17 g, 17.7 mmol)のメタノール-酢酸エチルの混合溶液(1:1, 180 mL)に、水酸化パラジウム(817 mg)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液をセライトろ過(メタノール)した後に溶媒留去した。残渣をアルゴン雰囲気下、脱水ジクロロメタン溶液(200 mL)に溶解させ、0℃下、トリエチルアミン(7.46 mL, 53.1 mmol)、メタンスルホニルクロリド(2.74 mL, 35.4 mmol)を加え、12時間撹拌した。1.2 N塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 3:2)にて精製し、モノオキサゾール6(7.57 g, 96%, 2工程)を白色粉末として得た。
1−3.モノオキサゾール7の合成
アルゴン雰囲気下、モノオキサゾール6(8.10 g, 18.1 mmol)の脱水ジメチルアミド溶液(120 mL)に、アジ化ナトリウム(3.53 g)を加え、室温で16時間撹拌した。蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 1:1)にて精製し、モノオキサゾール7(6.15 g, 92%)を無色液体として得た。
1−4.アミド10の合成
モノオキサゾール7(6.15 g, 15.6 mmol)をメタノール(20 mL)に溶解させ、1.2 N塩酸(20 mL)を加え、室温で30分撹拌した後に、溶媒留去し、アミン8を得た。また、別途合成したカルボン酸9のテトラヒドロフラン-水の混合溶液(3:1, 160 mL)に、4-メチルモルフォリン(6.90 mL, 62.4 mmol)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(9.20 g, 31.2 mmol)、アミン8を加え、室温で17時間撹拌した。1.2 N塩酸を加え、クロロホルムで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 150:1)にて精製し、アミド10(7.82 g, 65%, 2工程)を褐色アモルファスとして得た。
1−5.トリオキサゾール11の合成
アルゴン雰囲気下、アミド10(7.82 g, 12.1 mmol)の脱水ジクロロメタン溶液(120 mL)に、0℃下、炭酸ナトリウム(3.85 g, 36.3 mmol)、(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(2.34 mL, 14.5 mmol)を加え、30分撹拌した。飽和重曹水を加え、クロロホルムで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒留去した。残渣をアルゴン雰囲気下、脱水ジクロロメタン溶液(60 mL)に溶解させ、0℃下、1,8-ジアザビシクロ[5, 4, 0]-7-ウンデセン(9.05 mL, 60.5 mmol)、ブロモトリクロロメタン(6.00 mL, 60.5 mmol)を加え、15時間撹拌した。1.2 N塩酸を加え、クロロホルムで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 200:1)にて精製し、トリオキサゾール11(4.88 g, 69%, 2工程)を黄色アモルファスとして得た。
1−6.ビストリオキサゾール14の合成
トリオキサゾール11(4.88 g, 8.33 mmol)のテトラヒドロフラン-水の混合溶液(3:1, 80 mL)に、水酸化リチウム一水和物(701 mg, 16.7 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。0℃下、1.2 N塩酸にて中性に調整し、カルボン酸12を得た。得られたカルボン酸12の混合溶液に、4-メチルモルフォリン(3.68 mL, 33.3 mmol)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(4.92 g, 16.7 mmol)、アミン13(5.07 g, 10.1 mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。1.2 N塩酸を加え、クロロホルムで抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒留去した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 150:1)にて精製し、ビストリオキサゾール14(7.22 g, 85%, 2工程)を黄色アモルファスとして得た。
1−7.アミン15の合成
アルゴン雰囲気下、ビストリオキサゾール14(7.22 g, 7.11 mmol)を脱水テトラヒドロフラン(250 mL)に溶解させ、モルフォリン(6.19 mL, 71.1 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.64 g, 1.42 mmol)を加え、室温で2時間撹拌した後に、溶媒留去した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 50:1)にて精製し、アミン15(4.24 g, 64%)を黄色アモルファスとして得た。
1−8.大環状体16の合成
アミン15(757 mg, 813μmol)のテトラヒドロフラン-水の混合溶液(3:1, 40 mL)に、水酸化リチウム一水和物(68.4 mg, 1.63 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。0℃下、3 N塩酸にて中性に調整した後に、溶媒留去し、カルボン酸を得た。残渣をアルゴン雰囲気下、脱水ジメチルホルムアミド(270 mL)に溶解させ、N, N-ジイソプロピルエチルアミン(554μL, 3.26 mmol)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(199 mg, 1.63 mmol)、ジフェニルホスホリルアジド(1.76 mL, 8.13 mmol)を室温で加え、70℃まで昇温させ21時間撹拌した。0℃下、1.2 N塩酸を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 200:1)にて精製し、大環状体16(230 mg, 32%, 2工程)を無色アモルファスとして得た。
1−9.OTD-ナフチル18の合成
アルゴン雰囲気下、大環状体16(20.9 mg, 23.2μmol)を脱水テトラヒドロフラン(580μL)に溶解させ、ビニルナフチル17(49.2 mg, 232μmol)、グラブス第二世代触媒(2.02 mg, 2.32μmol)を室温で加え、90℃まで昇温させ31時間撹拌した後に、溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 200:1)にて精製し、OTD-ナフチル18(20.6 mg, 82%)を黄色アモルファスとして得た。
1−10.化合物1の合成
OTD-ナフチル18 (4.30 mg, 3.96μmol) をテトラヒドロフラン-ジクロロメタンの混合溶液(2:1, 3 mL)に溶解させ、室温で20分攪拌した後に、溶媒留去し、化合物1(3.00 mg, 86%)を黄色アモルファスとして得た。
[実施例2 化合物2−Hの合成]
2−1.OTD-ナフチル20の合成
2−1.OTD-ナフチル20の合成
アルゴン雰囲気下、実施例1で合成した大環状体16(13.5 mg, 15.0μmol)を脱水テトラヒドロフラン(400μL)に溶解させ、ビニルナフチル19(23.1 mg, 150μmol)、グラブス第二世代触媒(652μg, 0.750μmol)を室温で加え、90℃まで昇温させ28時間撹拌した後に、溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 100:1)にて精製し、OTD-ナフチル20(13.2 mg, 86%)を黄色アモルファスとして得た。
2−2.化合物2−Hの合成
OTD-ナフチル20 (5.70 mg, 5.56μmol) をテトラヒドロフラン-ジクロロメタンの混合溶液(2:1, 3 mL)に溶解させ、室温で20分攪拌した後に、溶媒留去し、上記構造を有する化合物2-H(3.50 mg, 76%)を黄色アモルファスとして得た。
[実施例3 化合物2−OMeの合成]
3−1.OTD-ナフチル22の合成
3−1.OTD-ナフチル22の合成
アルゴン雰囲気下、実施例1で合成した大環状体16(14.8 mg, 16.5μmol)を脱水テトラヒドロフラン(400μL)に溶解させ、ビニルナフチル21(21.2 mg, 115μmol)、グラブス第二世代触媒(717μg, 0.825μmol)を室温で加え、90℃まで昇温させ25時間撹拌した後に、溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 100:1)にて精製し、OTD-ナフチル22(13.5 mg, 78%)を黄色アモルファスとして得た。
3−2.化合物2−OMeの合成
OTD-ナフチル22 (10.9 mg, 10.3μmol) をテトラヒドロフラン-ジクロロメタンの混合溶液(2:1, 3 mL)に溶解させ、室温で10分攪拌した後に、溶媒留去し、化合物2-OMe(L2H2-1Np-4OMe、7.00 mg, 79%)を黄色アモルファスとして得た。
[実施例4 化合物2−OHの合成]
4−1.OTD-ナフチル23の合成
4−1.OTD-ナフチル23の合成
実施例1で合成したOTD-ナフチル18(14.4 mg, 13.3μmol)をクロロホルム(1 mL)に溶解させ、NHシリカゲルを加え、室温で30分撹拌した後に、ろ過後溶媒留去し、OTD-ナフチル23(4.00 mg, 29%)を橙色アモルファスとして得た。
4−2.化合物2−OHの合成
OTD-ナフチル23 (4.00 mg, 3.84μmol) をテトラヒドロフラン-ジクロロメタンの混合溶液(2:1, 3 mL)に溶解させ、室温で20分攪拌した後に、溶媒留去し、化合物2-OH(L2H2-1Np-4OH、3.00 mg, 93%)を橙色アモルファスとして得た。
[実施例5 G4との相互作用評価]
実施例1で合成した化合物1と、G4形成配列との相互作用をゲルシフトアッセイ(EMSA)により確認した。
具体的には、G4形成配列としてtelo24(5'-d(TTAGGG)4-3、配列番号1)、G4非形成配列としてdsDNA(5'-d(TTAAGCTATATTTTTTTATAGCTATA)-3'、配列番号2)を用い、50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中それぞれ5μMのDNAに対し、化合物1を5μM(1eq)、10μM(2eq)、又は25μM(5eq)添加したサンプルを電気泳動した後、GelStar(登録商標、ロンザジャパン株式会社)で染色し、526nmで検出した。
実施例1で合成した化合物1と、G4形成配列との相互作用をゲルシフトアッセイ(EMSA)により確認した。
具体的には、G4形成配列としてtelo24(5'-d(TTAGGG)4-3、配列番号1)、G4非形成配列としてdsDNA(5'-d(TTAAGCTATATTTTTTTATAGCTATA)-3'、配列番号2)を用い、50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中それぞれ5μMのDNAに対し、化合物1を5μM(1eq)、10μM(2eq)、又は25μM(5eq)添加したサンプルを電気泳動した後、GelStar(登録商標、ロンザジャパン株式会社)で染色し、526nmで検出した。
その結果、図1に示すように、G4形成配列(telo24)と一緒に泳動した場合には、リガンドの濃度依存的なバンドのシフトが観察された。一方、G4非形成配列(dsDNA)を添加した場合には、バンドのシフトは観察されず、合成した化合物1は、G4形成配列と選択的に相互作用することがわかった。
また、5eqの化合物をtelo24に添加したサンプルでCD融解実験を行った結果、化合物1はtelo24と相互作用した場合にその融解温度を顕著に上昇させ、従ってG4安定化能を有することが確認された(データは示さない)。
[実施例6 蛍光特性評価]
実施例1〜4で合成した化合物1、2−H、2−OMe、2−OHについて、G4形成配列及びG4非形成配列共存下における蛍光特性を調べた。
具体的には、G4形成配列としてtelo24(配列番号1)、G4非形成配列としてdsDNA(配列番号2)を用い、これらをそれぞれ50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中でDNA 10μM、リガンド50μM(5eq)の割合で各化合物と混合し、励起波長365nmで蛍光特性を目視で観察した。
実施例1〜4で合成した化合物1、2−H、2−OMe、2−OHについて、G4形成配列及びG4非形成配列共存下における蛍光特性を調べた。
具体的には、G4形成配列としてtelo24(配列番号1)、G4非形成配列としてdsDNA(配列番号2)を用い、これらをそれぞれ50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中でDNA 10μM、リガンド50μM(5eq)の割合で各化合物と混合し、励起波長365nmで蛍光特性を目視で観察した。
その結果、図2に示すように、化合物1(A)及び化合物2−OH(D)は、リガンド単独での蛍光はなく、かつG4形成配列であるtelo24の非存在下では蛍光が観察されず、telo24を添加した時のみ蛍光を発することがわかった。また、G4非形成配列であるdsDNAを添加した場合には蛍光を発しないことから、化合物1及び化合物2−OHは、G4存在下のみ、すなわちG4が形成された時にのみ、選択的に蛍光を発するライトアップ型蛍光リガンドであることがわかった。
化合物2−H(B)及び2−OMe(C)は、リガンド単独でも蛍光を発するが、G4非形成配列(dsDNA)の存在下では蛍光特性の変化は認められず、G4形成配列(telo24)の存在下で蛍光特性が変化することが認められた。
[実施例7 蛍光スペクトル測定]
実施例6で観察された化合物1、2−H、2−OMe、2−OHの蛍光特性について、蛍光スペクトルを測定することにより更に確認した。
50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中それぞれ0.5μMの化合物1、2−H、2−OMe、又は2−OHに対し、0〜2.5μM(0〜5eq)のG4形成配列又はG4非形成配列を添加し、励起波長365nmを照射して、蛍光スペクトルを測定した。化合物1の結果を図3−1及び3−2、化合物2−Hの結果を図4−1及び4−2、化合物2−OMeの結果を図5−1及び5−2、化合物2−OHの結果を図6−1及び6−2に示す。
実施例6で観察された化合物1、2−H、2−OMe、2−OHの蛍光特性について、蛍光スペクトルを測定することにより更に確認した。
50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中それぞれ0.5μMの化合物1、2−H、2−OMe、又は2−OHに対し、0〜2.5μM(0〜5eq)のG4形成配列又はG4非形成配列を添加し、励起波長365nmを照射して、蛍光スペクトルを測定した。化合物1の結果を図3−1及び3−2、化合物2−Hの結果を図4−1及び4−2、化合物2−OMeの結果を図5−1及び5−2、化合物2−OHの結果を図6−1及び6−2に示す。
その結果、図3−1及び3−2に示すように、化合物1は、DNAの非存在下では蛍光がほとんど観察されず、G4形成配列として用いたc-myc22(5'-d(GAGGGTGGGGAGGGTGGGGAAG)-3'、配列番号3)、telo22(5'-d(GGGTTAGGGTTAGGGTTAGGGT)-3'、配列番号4)、telo24(配列番号1)を添加した場合には、その添加量に依存して蛍光強度の増大が確認された。一方、G4非形成配列であるdsDNA(配列番号2)及びmut telo24(5'-d(TTAGAGTTAGAGTTAGAGTTAGAG)-3'、配列番号5)を添加した場合は、蛍光強度の増大はほとんど観察されなかった。
同様の傾向は、図6−1及び6−2に示す化合物2−OHでも確認され、G4形成配列(c-myc22、telo22及びtelo24)の存在下でその添加量に依存して蛍光強度が増大し、G4非形成配列(dsDNA及びmut telo24)の存在下では蛍光特性が変化しなかった。
図4−1及び図4−2に示す化合物2−H、並びに図5−1及び5−2に示す化合物2−OMeでは、リガンド単独でも蛍光が観察されたが、G4形成配列(c-myc22、telo22及びtelo24)の存在下では濃度依存的に蛍光強度が増大し、また蛍光特性の変化(低波長側へのピークシフト等)も示された。
[実施例8 化合物2−NMe2の合成]
8−1.OTD-ナフチル24の合成
8−1.OTD-ナフチル24の合成
アルゴン雰囲気下、実施例1で合成した大環状体16(15.0 mg, 16.6μmol)を脱水テトラヒドロフラン(400μL)に溶解させ、ビニルナフチル23(32.7 mg, 166μmol)、グラブス第二世代触媒(1.44 mg, 1.66μmol)を室温で加え、90℃まで昇温させ24時間撹拌した後に、溶媒留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール = 100:1)にて精製し、OTD-ナフチル24(14.5 mg, 80%)を橙色固体として得た。
8−2.化合物2−NMe2の合成
OTD-ナフチル24 (9.30 mg, 8.71μmol) をテトラヒドロフラン-ジクロロメタンの混合溶液(1:1, 2 mL)に溶解させ、室温で30分攪拌した後に、溶媒留去し、化合物2−NMe2(7.56 mg, 99%)を橙色固体として得た。
[実施例9 蛍光特性評価]
実施例8で合成した化合物2−NMe2について、G4形成配列及びG4非形成配列共存下における蛍光特性を調べた。
具体的には、G4形成配列としてtelo24(配列番号1)、G4非形成配列としてdsDNA(配列番号2)を用い、これらをそれぞれ50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中でDNA 10μM、リガンド50μM(5eq)の割合で各化合物と混合し、励起波長399nmで蛍光特性を目視で観察した。
実施例8で合成した化合物2−NMe2について、G4形成配列及びG4非形成配列共存下における蛍光特性を調べた。
具体的には、G4形成配列としてtelo24(配列番号1)、G4非形成配列としてdsDNA(配列番号2)を用い、これらをそれぞれ50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中でDNA 10μM、リガンド50μM(5eq)の割合で各化合物と混合し、励起波長399nmで蛍光特性を目視で観察した。
その結果、図7に示すように、化合物2−NMe2は、リガンド単独での蛍光はなく、かつG4形成配列であるtelo24の非存在下では蛍光が観察されず、telo24を添加した時のみ蛍光を発することがわかった。また、G4非形成配列であるdsDNAを添加した場合には蛍光を発しないことから、化合物2−NMe2は、G4存在下のみ、すなわちG4が形成された時にのみ、選択的に蛍光を発するライトアップ型蛍光リガンドであることがわかった。
[実施例10 蛍光スペクトル測定]
実施例9で観察された化合物2−NMe2の蛍光特性について、蛍光スペクトルを測定することにより更に確認した。
50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中それぞれ0.5μMの化合物2−NMe2に対し、0〜2.5μM(0〜5eq)のG4形成配列又はG4非形成配列を添加し、励起波長399nmを照射して、蛍光スペクトルを測定した。
実施例9で観察された化合物2−NMe2の蛍光特性について、蛍光スペクトルを測定することにより更に確認した。
50 mM Tris-HCl(100mM KClを含む)中それぞれ0.5μMの化合物2−NMe2に対し、0〜2.5μM(0〜5eq)のG4形成配列又はG4非形成配列を添加し、励起波長399nmを照射して、蛍光スペクトルを測定した。
その結果、図8に示すように、化合物2−NMe2は、DNAの非存在下では蛍光がほとんど観察されず、G4形成配列として用いたtelo24(配列番号1)を添加した場合には、その添加量に依存して蛍光強度の増大が確認された。一方、G4非形成配列であるdsDNA(配列番号2)を添加した場合は、蛍光強度の増大はほとんど観察されなかった。
グアニン四重鎖(G4)は、様々な生命現象に関わる核酸の高次構造であるが、近年、疾患との関係から疾患マーカーとしての可能性が検討されている。従って、本発明は、疾患に関連するG4の迅速検出のためのリガンドベースでの疾患マーカー検出のための方法及び装置の開発につながり得る。
Claims (11)
- 以下の一般式(I):
R2はHであるか、又は
R3及びR4はそれぞれ独立して
を有する化合物又はその塩。 - R1が、非置換であるか、又は1個の置換基で置換されていても良い、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、キノリル基、イソキノリル基、1-メチルキノリニウム基、アクリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、及びベンゾチアゾリル基からなる群より選択される芳香族縮合環である、請求項1記載の化合物又はその塩。
- R1が、ヒドロキシル基(−OH)、メトキシ基(−OMe)、アセトキシ基(−OAc)、メシルオキシ基(−OMs)、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基(−OTf)、アミノ基(−NH2)、ジメチルアミノ基(−NMe2)、及びジエチルアミノ基(−NEt2)からなる群より選択される1個の置換基で置換された芳香族縮合環である、請求項1もしくは2記載の化合物又はその塩。
- 以下の一般式(I):
R2はHであるか、又は
R3及びR4はそれぞれ独立して
を有する化合物又はその塩。 - R1が
XがOH、OMe、OAc、又はNMe2であり、
R2がHである、
請求項4記載の化合物又はその塩。 - 以下の構造:
- 以下の構造:
- 以下の構造:
- 請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物又はその塩からなる、グアニン四重鎖結合性リガンド。
- 以下のステップ:
(i)請求項9記載のグアニン四重鎖結合性リガンドと、サンプルとを接触させた場合に生じる蛍光を測定し、
(ii)サンプル非存在下における蛍光と比較する
ことを含む、サンプル中のグアニン四重鎖形成DNA配列の検出方法であって、該DNA配列と結合していないリガンドの分離ステップを含まない、上記方法。 - 目視によるか、又は特定波長での蛍光強度若しくは特定波長範囲での蛍光スペクトルを測定する、請求項10記載の方法。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2020021316A Pending JP2020176108A (ja) | 2019-04-22 | 2020-02-12 | グアニン四重鎖結合性リガンド |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020176108A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022124148A1 (ja) * | 2020-12-11 | 2022-06-16 | 国立大学法人 和歌山大学 | 核酸検出方法、化合物、及び蛍光プローブ |
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2020
- 2020-02-12 JP JP2020021316A patent/JP2020176108A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022124148A1 (ja) * | 2020-12-11 | 2022-06-16 | 国立大学法人 和歌山大学 | 核酸検出方法、化合物、及び蛍光プローブ |
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