JP2004188764A - 積層透明板 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量性、透明性等の諸性能を損なうことなく、衝撃を複数回受けても視認性の低下や外観の悪化が起こり難い、耐衝撃性に優れる積層透明板を提供すること。
【解決手段】アクリル樹脂板の一方の面に、ガラス転移温度が50℃以下の弾性樹脂層およびポリカーボネート樹脂層がこの順に積層され、該アクリル樹脂板のもう一方の面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層および第2ポリカーボネート樹脂層がこの順に積層されてなる積層透明板。
【選択図】 図1
【解決手段】アクリル樹脂板の一方の面に、ガラス転移温度が50℃以下の弾性樹脂層およびポリカーボネート樹脂層がこの順に積層され、該アクリル樹脂板のもう一方の面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層および第2ポリカーボネート樹脂層がこの順に積層されてなる積層透明板。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性に優れる積層透明板に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐衝撃性を有する透明板は、防弾板、仕切り板、グレージング材等の用途に用いられている。かかる防護用途の透明板としては、耐衝撃性、透明性、軽量性等の観点から、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する積層板が好適であり、例えば、特開平4−301448号公報(特許文献1)や特開平4−361034号公報(特許文献2)には、アクリル樹脂板とポリカーボネート樹脂板とを、熱可塑性ポリウレタン樹脂層を介して接合したものが提案されている。また、特開昭52−100515号公報(特許文献3)や特開平7−112515号公報(特許文献4)には、アクリル樹脂板とポリカーボネート樹脂板とを、アクリル樹脂層を介して接合したものが提案されている。また、特開平7−256831号公報(特許文献5)や特開平7−112515号公報(特許文献6)には、アクリル樹脂板とポリカーボネート樹脂板とを、エポキシ樹脂層を介して接合したものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−301448号公報
【特許文献2】
特開平4−361034号公報
【特許文献3】
特開昭52−100515号公報
【特許文献4】
特開平7−112515号公報
【特許文献5】
特開平7−256831号公報
【特許文献6】
特開平7−112515号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の積層透明板では、防護対象を衝撃から保護する防護性能は十分に発揮されるものの、衝撃を複数回、特に同一箇所に複数回受けた際に、衝撃箇所やその周辺部から破片が飛散、欠落して、該衝撃箇所からの視認性が低下したり、外観が悪化したりすることがあった。そこで、本発明の目的は、軽量性、透明性等の諸性能を損なうことなく、衝撃を複数回受けても視認性の低下や外観の悪化が起こり難い、耐衝撃性に優れる積層透明板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、アクリル樹脂板の両面にそれぞれ特定の樹脂層を積層することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、アクリル樹脂板の一方の面に、ガラス転移温度が50℃以下の弾性樹脂層およびポリカーボネート樹脂層がこの順に積層され、該アクリル樹脂板のもう一方の面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層および第2ポリカーボネート樹脂層がこの順に積層されてなる積層透明板に係るものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層透明板を、図面を参照しながら、詳細に説明する。図1は本発明の積層透明板の一例を示す概略断面図であり、積層透明板1においては、アクリル樹脂板2の一方の面に、弾性樹脂層3を介して、ポリカーボネート樹脂層4が積層されており、かつ、アクリル樹脂板2のもう一方の面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5を介して、第2ポリカーボネート樹脂層6が積層されている。
【0007】
アクリル樹脂板2を構成するアクリル樹脂としては、その単量体単位としてメチルメタクリレートを50重量%以上含むものが好ましく、例えば、実質的にメチルメタクリレート単独の重合体であるポリメチルメタクリレートであってもよいし、メチルメタクリレートとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。この単量体は、分子内に重合性不飽和結合を1個有する単官能単量体であってもよいし、分子内に重合性不飽和結合を複数個有する多官能単量体(架橋剤)であってもよく、両者が併用されていてもよい。
【0008】
単官能単量体としては、例えば、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレートのような炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレートのような炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート;メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0009】
また、多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートのようなジ−またはそれを越える多官能メタクリレート;エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのようなジ−またはそれを越える多官能アクリレート;アリルメタクリレート、アリルアクリレート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0010】
アクリル樹脂として、グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレートを単量体単位として含むものを用いることにより、弾性樹脂層3との接合強度を高めることができる。このアクリル樹脂としては、メチルメタクリレート90〜99重量%と、グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート1〜10重量%との共重合体が好適に用いられる。
【0011】
また、アクリル樹脂として、多官能単量体を単量体単位として含む架橋樹脂を用いることにより、アクリル樹脂板2の表面硬度や耐溶剤性を向上させることができる。この場合、多官能単量体は、アクリル樹脂の全単量体を基準として、通常1〜20重量%の割合で使用される。
【0012】
アクリル樹脂板2は、原料の単量体を乳化重合、懸濁重合、塊状重合等により重合した後、得られたアクリル樹脂を押出成形等により成形することや、原料の単量体を注型重合することにより、製造することができる。
【0013】
アクリル樹脂板2には、多層弾性体粒子が含まれているのが、積層透明板1の耐衝撃性が向上して一層優れた防護性能が得られる点で好ましい。この多層弾性体粒子としては、内核層および外殻層からなる2層構造弾性体粒子や、内核層、中間層および外殻層からなる3層構造弾性体粒子が、好適に用いられる。
【0014】
2層構造弾性体粒子の外殻層や3層構造弾性体粒子の外殻層は、メタクリレート系(共)重合体から構成されるのが好ましく、この(共)重合体としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート60〜100重量%と、これ以外の単官能単量体0〜40重量%との(共)重合体が挙げられる。ここで、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。また、このアルキルメタクリレート以外の単官能単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレートのようなアルキルアクリレートの他、スチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0015】
2層構造弾性体粒子の内核層や3層構造弾性体粒子の中間層は、架橋アクリレート系共重合体から構成されるのが望ましく、この共重合体としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート45〜99.5重量%と、芳香族ビニル系の単官能単量体0〜40重量%と、多官能単量体0.5〜15重量%との共重合体が挙げられる。ここで、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート等が挙げられる。また、芳香族ビニル系の単官能単量体としては、例えば、α−メチルスチレン、クロルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。また、多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレートのようなアルキレングリコールジアクリレートや、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートのようなアルキレングリコールジメタクリレートの他、α,β−不飽和カルボン酸のアリルエステル、α,β−不飽和カルボン酸のクロチルエステル、ジカルボン酸のジアリルエステル,ジカルボン酸のジクロチルエステルのようなグラフト性単量体が挙げられる。多官能性単量体としては、グラフト性単量体、特にアリルメタクリレートやアリルアクリレートを必須とするのが好ましく、この場合、グラフト性単量体は、上記架橋アクリレート系共重合体の全単量体を基準として、通常0.5〜5重量%の割合で使用される。
【0016】
3層構造弾性体粒子の内核層は、架橋メタクリレート系共重合体から構成されるのが好ましく、この共重合体としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート53〜99.8重量%と、これ以外の単官能単量体0〜40重量%と、多官能単量体0.2〜7重量%との共重合体が挙げられる。ここで、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートの例や、これ以外の単官能単量体の例は、前記の2層構造弾性体粒子の外殻層や3層構造弾性体粒子の外殻層を構成するメタクリレート系(共)重合体におけるものと同様であり、多官能単量体の例は、前記の2層構造弾性体粒子の内核層や3層構造弾性体粒子の中間層を構成する架橋アクリレート系共重合体におけるものと同様である。多官能性単量体としては、グラフト性単量体、特にアリルメタクリレートやアリルアクリレートを必須とするのが好ましく、この場合、グラフト性単量体は、上記架橋メタクリレート系共重合体の全単量体を基準として、通常0.2〜2重量%の割合で使用される。
【0017】
アクリル樹脂板2における多層弾性体粒子の含有量は、アクリル樹脂100重量部に対して、耐衝撃性の観点から、好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは5重量部以上、特に好ましくは8重量部以上であり、また、耐衝撃性と衝撃を受けた部分の白化防止の観点から、好ましくは72重量部以下、さらに好ましくは33重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。また、多層弾性体粒子としては、アクリル樹脂板2の透明性の観点から、その屈折率がアクリル樹脂板2を構成するアクリル樹脂の屈折率とほぼ同じであることが好ましい。
【0018】
多層弾性体粒子は、例えば特公昭55−27576号公報等に記載の公知の方法により、製造することができる。アクリル樹脂板2に多層弾性体粒子を含有させるには、アクリル樹脂と多層弾性体粒子を溶融混練してもよいし、アクリル樹脂を製造する際、その原料の単量体に多層弾性体粒子を加えておいてもよい。
【0019】
また、多層弾性体粒子を含有するアクリル樹脂板2は、例えば、特公昭55−27576号公報、特開平8−151498号公報等に記載の公知の方法により、製造することができる。かかるアクリル樹脂板2の市販品としては、例えば、スミペックスGT(住友化学工業(株)製)、スミペックスIT(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0020】
さらに、アクリル樹脂板2には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、着色材等の各種添加剤を含有させてもよい。
【0021】
紫外線吸収剤としては、例えば、チヌビンP(チバガイギ(株))、スミソーブ340(住友化学工業(株))のようなベンゾトリアゾール系化合物;シーソーブ101S(シプロ化成(株))、スミソーブ110(住友化学工業(株))のようなベンゾフェノン系化合物;チヌビン770(チバガイギ(株))、サノールLS2626(三共(株))のようなヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤の使用量は、アクリル樹脂100重量部に対して、通常1重量部以下、好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0022】
酸化防止剤としては、例えば、スミライザーBP101(住友化学工業(株))、スミライザーGM(住友化学工業(株))のようなフェノール系化合物;マークPEP−8(アデカ(株))、マークPEP−24(アデカ(株))のようなリン系化合物等が挙げられる。
【0023】
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートのような芳香族多塩基酸エステル;ジオクチルアジペート、アセチルトリブチルシトレートのような脂肪族多塩基酸エステル等が挙げられる。
【0024】
着色剤としては、例えば、スミプラストGreenG(住友化学工業(株))、スミプラストBlueOR(住友化学工業(株))のようなアントラキノン系染料;スミプラストOrangeHRP(住友化学工業(株))のようなぺリノン系染料等が挙げられる。
【0025】
アクリル樹脂板2の厚さは、耐衝撃性の観点から、好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上、特に好ましくは8mm以上であり、また、軽量性やコスト抑制の観点から、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは15mm以下、特に好ましくは13mm以下である。
【0026】
アクリル樹脂板2の一方の面には、弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4が積層されるが、この弾性樹脂層3は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下の樹脂から構成されるものである。このガラス転移温度が50℃を越えると、耐衝撃性が低下して、防護性能が低下するのみならず、衝撃を複数回受けた際に視認性の低下や外観の悪化を招きやすくなる。このガラス転移温度は、好ましくは−50〜50℃、さらに好ましくは−30〜40℃、特に好ましくは−20〜30℃である。通常、積層透明板1が使用される温度が低いほど、このガラス転移温度も低くするのが望ましい。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC法)により測定することができる。
【0027】
弾性樹脂層3を構成する樹脂の種類としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ硬化樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、弾性樹脂層3の接着性や、積層透明板1の耐衝撃性、透明性の観点から、エポキシ硬化樹脂、アクリル樹脂が好適である。ここで、エポキシ硬化樹脂とは、エポキシ化合物を硬化させてなるものであり、分子内にエポキシ基を複数個有するポリエポキシ化合物と硬化剤とを反応させることにより、製造することができる。
【0028】
ポリエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ポリフェノール型エポキシ化合物、シリコーン変性型エポキシ化合物の他、ポリエチレングリコールやエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック状コポリマーのようなα,ω−グリコールをグリシジル化してなるエポキシ化合物、ブタンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。中でも、弾性樹脂層3の透明性や常温での可撓性の観点から、ビスフェノールF型エポキシ化合物やビスフェノールA型エポキシ化合物のようなビスフェノール型エポキシ化合物を用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールF型エポキシ化合物100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ化合物を通常5〜30重量部、好ましくは10〜25重量部含有する混合物を用いるのが好ましい。
【0029】
ポリエポキシ化合物を硬化させるための硬化剤としては、分子内にアミノ基を複数個有するポリアミンが好適に用いられ、例えば、ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチレントリアミン、RNHCH2C(CH3)2NH2(Rはイソプロピル基、フェニル基など)で示される1,2−置換ジアミン、CH3(CH2)n(CH2CH2NH)2CH2CH2NH2で示される置換ポリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、メチルアミノプロピルアミンのような脂肪族ポリアミンや、メンタンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサンのような脂環式ポリアミン等が用いられる。中でも、弾性樹脂層3の可撓性および着色抑制の観点から、ポリエーテルジアミンを用いるのが好ましい。硬化剤の使用量は、ポリエポキシ化合物100重量部に対して通常25〜140重量部、好ましくは80〜120重量部である。
【0030】
ポリエポキシ化合物を硬化剤により硬化させてエポキシ硬化樹脂を得るには、例えば、ポリエポキシ化合物と硬化剤とを混合した後、必要に応じて加熱すればよい。この加熱温度は通常20〜150℃、好ましくは20〜80℃である。
【0031】
硬化の際には、さらに反応性希釈剤や非反応性希釈剤を混合していてもよい。
反応性希釈剤としては、例えば、スチレンオキサイド、オクチレンオキサイドのようなモノエポキシ化合物等が挙げられ、その使用量は、ポリエポキシ化合物100重量部に対して、通常80重量部以下である。また、非反応性希釈剤としては、例えば、キシレン、グリコールのような溶剤や、フタル酸エステルのような可塑剤等が挙げられ、その使用量は、ポリエポキシ化合物100重量部に対して、通常80重量部以下である。非反応性希釈剤を用いることにより、弾性樹脂層3の可撓性をさらに向上させることができる。
【0032】
弾性樹脂層3がアクリル樹脂から構成される場合、このアクリル樹脂としては、例えば、アクリル系単官能単量体またはその部分重合体77〜98.9重量%、可塑剤1〜20重量%、および多官能単量体0.1〜〜3重量%からなる重合性混合物を重合させてなる樹脂を、好適なものとして例示することができる。
【0033】
アクリル系単官能単量体としては、例えば、炭素数5〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート50〜100重量%、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート0〜10重量%、および炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート0〜40重量%からなるものが挙げられる。ここで、炭素数5〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。また、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート等が挙げられる。また、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0034】
可塑剤としては、例えば、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、アセチルトリブチルシトレート等が挙げられる。
【0035】
多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0036】
弾性樹脂層3には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0037】
紫外線吸収剤としては、例えば、前記と同様のベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0038】
酸化防止剤としては、例えば、前記と同様のフェノール系化合物、リン系化合物等の他、亜リン酸水素2ナトリウム・5水和物、次亜リン酸ナトリウムのような無機リン酸塩等が挙げられる。
【0039】
着色剤としては、例えば、前記と同様のアントラキノン系染料、ペリノン系染料等の他、フルオレイセン、チオフラビン、エオシン、ローダミン、クマリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロン、ジアミノスチルベンスルホン酸、およびこれらの誘導体のような蛍光増白染料等が挙げられる。
【0040】
弾性樹脂層3の厚さは、接合強度の観点から、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは1mm以上であり、また、耐衝撃性やコスト抑制の観点から、好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。また、弾性樹脂層3は、JIS K 6251(1993)にしたがって引張試験を行ったときの100%伸び時における引張応力が0.5〜15MPaであるのが好ましい。
【0041】
次に、ポリカーボネート樹脂層4は、アクリル樹脂板2に弾性樹脂層3を介して積層されるが、このポリカーボネート樹脂層4を構成する樹脂としては、例えば、高分子熱可塑性ポリカーボネート樹脂が挙げられ、中でも、耐衝撃性の観点から、ジオール単位としてビスフェノールAのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカンを含むものが望ましい。
【0042】
ポリカーボネート樹脂層4の厚さは、耐衝撃性の観点から、好ましくは3mm以上であり、また、軽量性やコスト抑制の観点から、好ましくは15mm以下、さらに好ましくは8mm以下である。
【0043】
アクリル樹脂板2に弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4を積層するには、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂層4に相当する樹脂板とを、弾性樹脂層3に相当する樹脂を接合層として介在させて接合する方法が、好適に採用され、例えば、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂板とが対向するように、スペーサー等を介して間隙を空けて配置し、該間隙に弾性樹脂の原料成分、例えば、弾性樹脂がエポキシ硬化樹脂であれば、ポリエポキシ化合物、硬化剤、および必要に応じて反応性希釈剤、非反応性希釈剤、添加剤等を、注入して硬化させればよい。硬化は、室温でも起こるが時間がかかるため、加熱するのが好ましく、通常は徐々に昇温する。昇温は通常150℃まで、好ましくは80℃までであり、また昇温時間は通常10〜50時間である。加熱温度があまり高いと、アクリル樹脂板2やポリカーボネート樹脂板の変形、流動を招くことがある。
【0044】
上述のようにアクリル樹脂板2の一方の面には、弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4が積層されるが、その反対の面には、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6が積層される。この熱可塑性ポリウレタン樹脂層5は、アクリル樹脂板2と第2ポリカーボネート樹脂層6とを強固に接合する機能を有すると共に、耐衝撃性を向上させて、衝撃を複数回受けても視認性の低下や外観の悪化が起こり難くすることにも寄与するものである。
【0045】
この熱可塑性ポリウレタン樹脂層5を構成する樹脂としては、無黄変性ジイソシアネートとポリエーテルジオールと硬化剤とを反応させて得られるものが望ましい。ここで、無黄変性ジイソシアネートとは、イソシアナト基が芳香族環に直接結合していないジイソシアネート、すなわち芳香族環を有しないか、有していてもそこにイソシアナト基が直接結合していないジイソシアネートであり、このようなジイソシアネートを用いることにより、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂が黄変し難いものとなる。
【0046】
上記無黄変性ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート;ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアナトシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートのような脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
上記ポリエーテルジオールとしては、例えば、炭素数2〜4のモノエポキシドやテトラヒドロフランを開環重合させてなるものを用いることができ、このようなポリエーテルジオールとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシテトラメチレン基から選ばれる少なくとも1種のオキシアルキレン基を有するポリ(オキシアルキレン)ジオールが挙げられる。
【0048】
上記硬化剤としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのような脂肪酸ジオール;モノエタノールアミンのようなアミノアルコール;1,2−エタンジアミンのようなジアミン等が挙げられる。
【0049】
熱可塑性ポリウレタン樹脂層5の厚さは、衝撃を複数回受ける場合の耐衝撃性を十分に確保すると共に、アクリル樹脂板2と第2ポリカーボネート樹脂層6とを均一に接合する目的から、好ましくは0.03mm以上であり、また、コスト抑制の観点から、好ましくは3mm以下である。
【0050】
次に、第2ポリカーボネート樹脂層6は、アクリル樹脂板2に上記熱可塑性ポリウレタン樹脂層5を介して積層されるが、この第2ポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂としては、前記ポリカーボネート樹脂層4と同様、例えば、高分子熱可塑性ポリカーボネート樹脂が挙げられ、中でも、耐衝撃性の観点から、ジオール単位としてビスフェノールAのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカンを含むものが望ましい。
【0051】
第2ポリカーボネート樹脂層6の厚さは、衝撃を複数回受ける場合の耐衝撃性を十分に確保する目的から、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.5mm以上であり、また、軽量性とコスト抑制の観点から、好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
【0052】
アクリル樹脂板2に熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6を積層するには、アクリル樹脂板2と第2ポリカーボネート樹脂層4に相当する樹脂板とを、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5に相当する樹脂を接合層として介在させて接合する方法が、好適に採用され、例えば、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂板とを、フィルム状等の熱可塑性ポリウレタン樹脂を間に介在させて重ね合わせ、ついで、熱プレスや真空貼合を行えばよい。
【0053】
熱プレスするには、例えば、加熱された一対の金型間に、アクリル樹脂板2、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム、およびポリカーボネート樹脂板をこの順に重ねてプレスすればよい。金型の加熱温度は通常100〜150℃、好ましくは120〜140℃であり、プレス圧力は通常0.5〜5MPa、好ましくは1〜4MPaである。加熱温度やプレス圧力があまり低いと、アクリル樹脂板2と熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムの間や、ポリカーボネート樹脂板と熱可塑性ポリウレタン樹脂の間に気泡が生じたり、接合強度が不十分となったりすることがある。また、加熱温度があまり高いと、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムが軟化して流動したり、場合によってはアクリル樹脂板2やポリカーボネート樹脂板が変形、流動したりすることがある。
【0054】
真空貼合するには、例えば、合せガラスの真空貼合用の真空バッグの中に、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂板との間に熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムを保持した状態で挿入し、真空バッグの中を減圧にして、80〜150℃に加熱すればよい。その後、好ましくは加圧下に再度加熱することにより、接合強度を高めることができる。この再度の加熱における加熱温度は通常80〜170℃であり、また圧力は通常0.1〜1.5MPa、好ましくは0.6〜1.2MPaである。
【0055】
なお、この熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6の積層は、前記の弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4の積層と同時に行ってもよいし、その前または後に行ってもよい。
【0056】
以上のように、本発明の積層透明板1は、アクリル樹脂板2の一方の面に弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4が積層され、他方の面に熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2のポリカーボネート樹脂層6が積層されることにより、優れた耐衝撃性を有するものであるが、図2に示すように、さらに、アクリル樹脂板2と弾性樹脂層3との間に、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8が、アクリル樹脂板2側からこの順に積層されているのが望ましい。このように、アクリル樹脂板2と弾性樹脂層3との間に特定の樹脂層7,8をさらに積層することにより、耐衝撃性を一層向上させることができ、また、製造の際、反りが生じ難くなるので、注液漏れ等が起こり難く作業効率の点で有利であると共に、得られる積層透明板1の反りが低減されており、ひいては接合強度に優れた積層透明板1を得ることができる。
【0057】
このような、アクリル樹脂板2の一方の面に、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7、第3ポリカーボネート樹脂層8、弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4がこの順に積層されると共に、アクリル樹脂板2のもう一方の面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6がこの順に積層されてなる積層透明板1は、例えば対角寸法が1m以上であるような大型板として、特に好適に採用される。
【0058】
ここで、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7を構成する樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5と同様、無黄変性ジイソシアネートとポリエーテルジオールと硬化剤とを反応させて得られるものが望ましい。
【0059】
第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7の厚さは、衝撃を複数回受ける場合の耐衝撃性を十分に確保すると共に、アクリル樹脂板2と第3のポリカーボネート樹脂層8とを均一に接合する目的から、好ましくは0.03mm以上であり、また、コスト抑制の観点から、好ましくは3mm以下である。
【0060】
また、第3ポリカーボネート樹脂層8を構成する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂層4や第2ポリカーボネート樹脂層6と同様、例えば、高分子熱可塑性ポリカーボネート樹脂が挙げられ、中でも、耐衝撃性の観点から、ジオール単位としてビスフェノールAのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカンを含むものが望ましい。
【0061】
第3ポリカーボネート樹脂層8の厚さは、反りを抑制する観点から、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、また、軽量性とコスト抑制の観点から、好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
【0062】
アクリル樹脂板2に第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8を積層するには、アクリル樹脂板2と第3ポリカーボネート樹脂層8に相当する樹脂板とを、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7に相当する樹脂を接合層として介在させて接合する方法が、好適に採用され、例えば、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂板とを、フィルム状等の熱可塑性ポリウレタン樹脂を間に介在させて重ね合わせ、ついで、熱プレスや真空貼合を行えばよい。
この熱プレスや真空貼合は、前記の熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6を積層する際の例と同様に行うことができる。
【0063】
なお、この第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8の積層は、前記の熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6の積層と同時に行ってもよいし、その前または後に行ってもよい。
【0064】
第3ポリカーボネート樹脂層8の第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7側とは反対側の面に、弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4を積層するには、第3ポリカーボネート樹脂層8に相当する樹脂板とポリカーボネート樹脂層4に相当する樹脂板とを、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7に相当する樹脂を接合層として介在させて接合する方法が、好適に採用され、例えば、ポリカーボネート樹脂板同士が対向するように、スペーサー等を介して間隙を空けて配置し、該間隙に弾性樹脂の原料成分を、注入して硬化させればよい。この硬化は、前記の弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4を積層する際の例と同様に行うことができる。
【0065】
なお、この第3ポリカーボネート樹脂層8への弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4の積層は、前記の第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8の積層と同時に行ってもよいし、その後に行ってもよいし、また、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8の積層を行う前に、あらかじめこの第3ポリカーボネート樹脂層8に弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4を積層しておいてもよい。
【0066】
本発明の積層透明板1は、平板であってもよいし、曲面を有していてもよい。
曲面を有する積層透明板1を製造するには、例えば、各層の構成部材として、予め曲面形状が付与されているものを用いればよい。この場合、アクリル樹脂板2への、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6の積層や、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8の積層は、真空貼合法により行うのが好ましい。
【0067】
また、本発明の積層透明板1は、必要に応じて、その一方または両方の面に、防曇処理、耐光性処理、表面硬化処理等が施されていてもよい。
【0068】
本発明の積層透明板1の用途としては、例えば、防弾面や防弾盾のような防弾板や、金融カウンターの仕切り板の他、各種グレージング材、例えば、公共施設、運動施設、防犯ドア、各種車両のグレージング材等が挙げられる。なお、積層透明板1をこれら防護用途に使用する場合、通常、ポリカーボネート樹脂層4が防護対象側、第2ポリカーボネート樹脂層6が被衝撃側となるように配置される。
【0069】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0070】
参考例1(アクリル樹脂板Aの調製)
メチルメタクリレート100重量部に、懸濁重合法により得られたアクリル樹脂粉末(メチルメタクリレート/メチルアクリレート=98/2(重量比)の重合体)20重量部を攪拌しながら添加し、さらに60℃で2時間攪拌を継続して、メチルメタクリレートにアクリル樹脂粉末を溶解した。この中に、3層構造の多層弾性体粒子(特公昭55−27576号公報の実施例3に記載の方法で得られたエラストマー含量25.2重量%の多層弾性体粒子)15重量部を攪拌しながら添加し、さらに1時間攪拌後、室温まで冷却して多層弾性体粒子を均一に分散させたシロップを得た。
【0071】
このシロップ100重量部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15重量部を添加して溶解し、脱気した後、2枚のガラス板と塩化ビニル樹脂製ガスケットにより、ガラス板同士の間隙が10mmとなるように構成されたセル(面積300mm×300mm)に注入し、65℃の熱風循環炉中で4時間、次いで120℃の熱風循環炉にて2時間熱処理を施し、重合を行った。室温付近まで冷却した後、ガラス板を除去して多層弾性体粒子を含有するアクリル樹脂板A(厚さ10mm、300mm×300mm)を得た。
【0072】
実施例1
アクリル樹脂板Aの一方の面側に、ポリカーボネート樹脂板A(筒中プラスチック工業(株)製、ポリカエースEC100;厚さ0.5mm、300mm×300mm)を間隔を空けて対向して置き、その間にポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム(モルトン・インターナショナル社製、モルセンPE193)を挿入する一方、該アクリル樹脂板のもう一方の面側に、上と同じポリカーボネート樹脂板Aを間隔を空けて対向して置き、その間に上と同じポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムを挿入した。これらをプレス成形機中で熱盤温度130℃、プレス圧力1MPaでプレスして、積層基体(図2の層6,5,2,7,8からなるものに相当)を得た。
【0073】
この積層基体の一方の面側に、ポリカーボネート樹脂板B(筒中プラスチック工業(株)製、ポリカエースECK100;厚さ6mm、300mm×300mm)を、軟質塩ビホースを挟むことにより、2mmの間隔を空けて対向して置いた。この間隔にビスフェノールF型エポキシ化合物/ビスフェノールA型エポキシ化合物=85/15(重量比)の混合物(長瀬産業(株)製、XNR3351)50重量部とポリオキシプロピレンジアミン(長瀬産業(株)製、XNH3351;硬化剤)50重量部との混合物を注入し、20℃から80℃に10時間かけて昇温して硬化させた。こうして得られた積層透明板における上記エポキシ化合物硬化層の、ガラス転移温度(示差走査熱量測定による)は10℃であり、100%伸び時における引張応力(JIS K 6251(1993)による)は3.9MPaであった。また、この積層透明板は、これを介して反対側を容易に観察でき、透明性に優れるものであった。
【0074】
次に、この積層透明板の耐衝撃性を評価した。すなわち、図3に示す衝撃試験機9の試験片支持台10(円柱状、鉄製、直径100mm)上に、100mm×100mmに切断した積層透明板を試験片11として、ポリカーボネート樹脂板Aからなる面を上にして載置し、その上に、先端部が円錐形状の打子13の先端13a(先端径2mm)を押し当てた。この打子13の長さ方向の中央部には、円盤状の重り受け用支持盤13bが突設されている。この支持盤13bに向けてステンレス製重り12(30kg)を、高さ2.5m(支持盤13bに対する高さ)の位置から自由落下により落下させた。この時、図4に示すように、試験片11はその四辺が、試験片支持台10の周辺と揃うように載置し、打子の先端13aは試験片11の中央に押し当て、衝撃箇所14が試験片11の中央となるように設定した。この重り12の落下を2回行い、それぞれの衝撃時における試験片11からの破片の飛散の有無、程度を目視により観察した結果、1回目、2回目共、破片の飛散は見られなかった。
【0075】
また、2回目の衝撃後、衝撃箇所14の白化の有無、程度を目視により観察した結果、白化は生じておらず、さらに、衝撃箇所14を通して見た反対側の視認性は良好であった。
【0076】
比較例1
積層基体に代えてアクリル樹脂板B(住友化学工業(株)製、スミペックスXT100、厚さ10mm、300mm×300mm)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。こうして得られた積層透明板は、これを介して反対側を容易に観察でき、透明性に優れるものであった。
【0077】
次に、この積層透明板の耐衝撃性を実施例1と同様の方法で、アクリル樹脂板B側から衝撃を与えて評価した結果、1回目の衝撃では、破片の飛散は見られなかったが、2回目の衝撃で、破片の飛散が僅かに見られた。
【0078】
また、2回目の衝撃後、衝撃箇所14の白化の有無、程度を目視により観察した結果、白化が僅かに生じており、さらに、衝撃箇所14を通して見た反対側の視認性が僅かに低下していた。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、軽量性や透明性に優れ、衝撃を複数回受けても視認性の低下や外観の悪化が起こり難い、耐衝撃性に優れる積層透明板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層透明板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の積層透明板の別の例を示す概略断面図である。
【図3】衝撃試験機の概略図である。
【図4】試験片、支持台、打子の配置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・積層透明板、 2・・・アクリル樹脂板、 3・・・弾性樹脂層、 4・・・ポリカーボネート樹脂層、 5・・・熱可塑性ポリウレタン樹脂層、 6・・・第2ポリカーボネート樹脂層、 7・・・第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層、 8・・・第3ポリカーボネート樹脂層
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性に優れる積層透明板に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐衝撃性を有する透明板は、防弾板、仕切り板、グレージング材等の用途に用いられている。かかる防護用途の透明板としては、耐衝撃性、透明性、軽量性等の観点から、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する積層板が好適であり、例えば、特開平4−301448号公報(特許文献1)や特開平4−361034号公報(特許文献2)には、アクリル樹脂板とポリカーボネート樹脂板とを、熱可塑性ポリウレタン樹脂層を介して接合したものが提案されている。また、特開昭52−100515号公報(特許文献3)や特開平7−112515号公報(特許文献4)には、アクリル樹脂板とポリカーボネート樹脂板とを、アクリル樹脂層を介して接合したものが提案されている。また、特開平7−256831号公報(特許文献5)や特開平7−112515号公報(特許文献6)には、アクリル樹脂板とポリカーボネート樹脂板とを、エポキシ樹脂層を介して接合したものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−301448号公報
【特許文献2】
特開平4−361034号公報
【特許文献3】
特開昭52−100515号公報
【特許文献4】
特開平7−112515号公報
【特許文献5】
特開平7−256831号公報
【特許文献6】
特開平7−112515号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の積層透明板では、防護対象を衝撃から保護する防護性能は十分に発揮されるものの、衝撃を複数回、特に同一箇所に複数回受けた際に、衝撃箇所やその周辺部から破片が飛散、欠落して、該衝撃箇所からの視認性が低下したり、外観が悪化したりすることがあった。そこで、本発明の目的は、軽量性、透明性等の諸性能を損なうことなく、衝撃を複数回受けても視認性の低下や外観の悪化が起こり難い、耐衝撃性に優れる積層透明板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、アクリル樹脂板の両面にそれぞれ特定の樹脂層を積層することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、アクリル樹脂板の一方の面に、ガラス転移温度が50℃以下の弾性樹脂層およびポリカーボネート樹脂層がこの順に積層され、該アクリル樹脂板のもう一方の面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層および第2ポリカーボネート樹脂層がこの順に積層されてなる積層透明板に係るものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層透明板を、図面を参照しながら、詳細に説明する。図1は本発明の積層透明板の一例を示す概略断面図であり、積層透明板1においては、アクリル樹脂板2の一方の面に、弾性樹脂層3を介して、ポリカーボネート樹脂層4が積層されており、かつ、アクリル樹脂板2のもう一方の面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5を介して、第2ポリカーボネート樹脂層6が積層されている。
【0007】
アクリル樹脂板2を構成するアクリル樹脂としては、その単量体単位としてメチルメタクリレートを50重量%以上含むものが好ましく、例えば、実質的にメチルメタクリレート単独の重合体であるポリメチルメタクリレートであってもよいし、メチルメタクリレートとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。この単量体は、分子内に重合性不飽和結合を1個有する単官能単量体であってもよいし、分子内に重合性不飽和結合を複数個有する多官能単量体(架橋剤)であってもよく、両者が併用されていてもよい。
【0008】
単官能単量体としては、例えば、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレートのような炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレートのような炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート;メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0009】
また、多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートのようなジ−またはそれを越える多官能メタクリレート;エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのようなジ−またはそれを越える多官能アクリレート;アリルメタクリレート、アリルアクリレート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0010】
アクリル樹脂として、グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレートを単量体単位として含むものを用いることにより、弾性樹脂層3との接合強度を高めることができる。このアクリル樹脂としては、メチルメタクリレート90〜99重量%と、グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート1〜10重量%との共重合体が好適に用いられる。
【0011】
また、アクリル樹脂として、多官能単量体を単量体単位として含む架橋樹脂を用いることにより、アクリル樹脂板2の表面硬度や耐溶剤性を向上させることができる。この場合、多官能単量体は、アクリル樹脂の全単量体を基準として、通常1〜20重量%の割合で使用される。
【0012】
アクリル樹脂板2は、原料の単量体を乳化重合、懸濁重合、塊状重合等により重合した後、得られたアクリル樹脂を押出成形等により成形することや、原料の単量体を注型重合することにより、製造することができる。
【0013】
アクリル樹脂板2には、多層弾性体粒子が含まれているのが、積層透明板1の耐衝撃性が向上して一層優れた防護性能が得られる点で好ましい。この多層弾性体粒子としては、内核層および外殻層からなる2層構造弾性体粒子や、内核層、中間層および外殻層からなる3層構造弾性体粒子が、好適に用いられる。
【0014】
2層構造弾性体粒子の外殻層や3層構造弾性体粒子の外殻層は、メタクリレート系(共)重合体から構成されるのが好ましく、この(共)重合体としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート60〜100重量%と、これ以外の単官能単量体0〜40重量%との(共)重合体が挙げられる。ここで、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。また、このアルキルメタクリレート以外の単官能単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレートのようなアルキルアクリレートの他、スチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0015】
2層構造弾性体粒子の内核層や3層構造弾性体粒子の中間層は、架橋アクリレート系共重合体から構成されるのが望ましく、この共重合体としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート45〜99.5重量%と、芳香族ビニル系の単官能単量体0〜40重量%と、多官能単量体0.5〜15重量%との共重合体が挙げられる。ここで、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート等が挙げられる。また、芳香族ビニル系の単官能単量体としては、例えば、α−メチルスチレン、クロルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。また、多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレートのようなアルキレングリコールジアクリレートや、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートのようなアルキレングリコールジメタクリレートの他、α,β−不飽和カルボン酸のアリルエステル、α,β−不飽和カルボン酸のクロチルエステル、ジカルボン酸のジアリルエステル,ジカルボン酸のジクロチルエステルのようなグラフト性単量体が挙げられる。多官能性単量体としては、グラフト性単量体、特にアリルメタクリレートやアリルアクリレートを必須とするのが好ましく、この場合、グラフト性単量体は、上記架橋アクリレート系共重合体の全単量体を基準として、通常0.5〜5重量%の割合で使用される。
【0016】
3層構造弾性体粒子の内核層は、架橋メタクリレート系共重合体から構成されるのが好ましく、この共重合体としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート53〜99.8重量%と、これ以外の単官能単量体0〜40重量%と、多官能単量体0.2〜7重量%との共重合体が挙げられる。ここで、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートの例や、これ以外の単官能単量体の例は、前記の2層構造弾性体粒子の外殻層や3層構造弾性体粒子の外殻層を構成するメタクリレート系(共)重合体におけるものと同様であり、多官能単量体の例は、前記の2層構造弾性体粒子の内核層や3層構造弾性体粒子の中間層を構成する架橋アクリレート系共重合体におけるものと同様である。多官能性単量体としては、グラフト性単量体、特にアリルメタクリレートやアリルアクリレートを必須とするのが好ましく、この場合、グラフト性単量体は、上記架橋メタクリレート系共重合体の全単量体を基準として、通常0.2〜2重量%の割合で使用される。
【0017】
アクリル樹脂板2における多層弾性体粒子の含有量は、アクリル樹脂100重量部に対して、耐衝撃性の観点から、好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは5重量部以上、特に好ましくは8重量部以上であり、また、耐衝撃性と衝撃を受けた部分の白化防止の観点から、好ましくは72重量部以下、さらに好ましくは33重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。また、多層弾性体粒子としては、アクリル樹脂板2の透明性の観点から、その屈折率がアクリル樹脂板2を構成するアクリル樹脂の屈折率とほぼ同じであることが好ましい。
【0018】
多層弾性体粒子は、例えば特公昭55−27576号公報等に記載の公知の方法により、製造することができる。アクリル樹脂板2に多層弾性体粒子を含有させるには、アクリル樹脂と多層弾性体粒子を溶融混練してもよいし、アクリル樹脂を製造する際、その原料の単量体に多層弾性体粒子を加えておいてもよい。
【0019】
また、多層弾性体粒子を含有するアクリル樹脂板2は、例えば、特公昭55−27576号公報、特開平8−151498号公報等に記載の公知の方法により、製造することができる。かかるアクリル樹脂板2の市販品としては、例えば、スミペックスGT(住友化学工業(株)製)、スミペックスIT(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0020】
さらに、アクリル樹脂板2には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、着色材等の各種添加剤を含有させてもよい。
【0021】
紫外線吸収剤としては、例えば、チヌビンP(チバガイギ(株))、スミソーブ340(住友化学工業(株))のようなベンゾトリアゾール系化合物;シーソーブ101S(シプロ化成(株))、スミソーブ110(住友化学工業(株))のようなベンゾフェノン系化合物;チヌビン770(チバガイギ(株))、サノールLS2626(三共(株))のようなヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤の使用量は、アクリル樹脂100重量部に対して、通常1重量部以下、好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0022】
酸化防止剤としては、例えば、スミライザーBP101(住友化学工業(株))、スミライザーGM(住友化学工業(株))のようなフェノール系化合物;マークPEP−8(アデカ(株))、マークPEP−24(アデカ(株))のようなリン系化合物等が挙げられる。
【0023】
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートのような芳香族多塩基酸エステル;ジオクチルアジペート、アセチルトリブチルシトレートのような脂肪族多塩基酸エステル等が挙げられる。
【0024】
着色剤としては、例えば、スミプラストGreenG(住友化学工業(株))、スミプラストBlueOR(住友化学工業(株))のようなアントラキノン系染料;スミプラストOrangeHRP(住友化学工業(株))のようなぺリノン系染料等が挙げられる。
【0025】
アクリル樹脂板2の厚さは、耐衝撃性の観点から、好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上、特に好ましくは8mm以上であり、また、軽量性やコスト抑制の観点から、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは15mm以下、特に好ましくは13mm以下である。
【0026】
アクリル樹脂板2の一方の面には、弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4が積層されるが、この弾性樹脂層3は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下の樹脂から構成されるものである。このガラス転移温度が50℃を越えると、耐衝撃性が低下して、防護性能が低下するのみならず、衝撃を複数回受けた際に視認性の低下や外観の悪化を招きやすくなる。このガラス転移温度は、好ましくは−50〜50℃、さらに好ましくは−30〜40℃、特に好ましくは−20〜30℃である。通常、積層透明板1が使用される温度が低いほど、このガラス転移温度も低くするのが望ましい。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC法)により測定することができる。
【0027】
弾性樹脂層3を構成する樹脂の種類としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ硬化樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、弾性樹脂層3の接着性や、積層透明板1の耐衝撃性、透明性の観点から、エポキシ硬化樹脂、アクリル樹脂が好適である。ここで、エポキシ硬化樹脂とは、エポキシ化合物を硬化させてなるものであり、分子内にエポキシ基を複数個有するポリエポキシ化合物と硬化剤とを反応させることにより、製造することができる。
【0028】
ポリエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ポリフェノール型エポキシ化合物、シリコーン変性型エポキシ化合物の他、ポリエチレングリコールやエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック状コポリマーのようなα,ω−グリコールをグリシジル化してなるエポキシ化合物、ブタンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。中でも、弾性樹脂層3の透明性や常温での可撓性の観点から、ビスフェノールF型エポキシ化合物やビスフェノールA型エポキシ化合物のようなビスフェノール型エポキシ化合物を用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールF型エポキシ化合物100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ化合物を通常5〜30重量部、好ましくは10〜25重量部含有する混合物を用いるのが好ましい。
【0029】
ポリエポキシ化合物を硬化させるための硬化剤としては、分子内にアミノ基を複数個有するポリアミンが好適に用いられ、例えば、ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチレントリアミン、RNHCH2C(CH3)2NH2(Rはイソプロピル基、フェニル基など)で示される1,2−置換ジアミン、CH3(CH2)n(CH2CH2NH)2CH2CH2NH2で示される置換ポリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、メチルアミノプロピルアミンのような脂肪族ポリアミンや、メンタンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサンのような脂環式ポリアミン等が用いられる。中でも、弾性樹脂層3の可撓性および着色抑制の観点から、ポリエーテルジアミンを用いるのが好ましい。硬化剤の使用量は、ポリエポキシ化合物100重量部に対して通常25〜140重量部、好ましくは80〜120重量部である。
【0030】
ポリエポキシ化合物を硬化剤により硬化させてエポキシ硬化樹脂を得るには、例えば、ポリエポキシ化合物と硬化剤とを混合した後、必要に応じて加熱すればよい。この加熱温度は通常20〜150℃、好ましくは20〜80℃である。
【0031】
硬化の際には、さらに反応性希釈剤や非反応性希釈剤を混合していてもよい。
反応性希釈剤としては、例えば、スチレンオキサイド、オクチレンオキサイドのようなモノエポキシ化合物等が挙げられ、その使用量は、ポリエポキシ化合物100重量部に対して、通常80重量部以下である。また、非反応性希釈剤としては、例えば、キシレン、グリコールのような溶剤や、フタル酸エステルのような可塑剤等が挙げられ、その使用量は、ポリエポキシ化合物100重量部に対して、通常80重量部以下である。非反応性希釈剤を用いることにより、弾性樹脂層3の可撓性をさらに向上させることができる。
【0032】
弾性樹脂層3がアクリル樹脂から構成される場合、このアクリル樹脂としては、例えば、アクリル系単官能単量体またはその部分重合体77〜98.9重量%、可塑剤1〜20重量%、および多官能単量体0.1〜〜3重量%からなる重合性混合物を重合させてなる樹脂を、好適なものとして例示することができる。
【0033】
アクリル系単官能単量体としては、例えば、炭素数5〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート50〜100重量%、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート0〜10重量%、および炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート0〜40重量%からなるものが挙げられる。ここで、炭素数5〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。また、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート等が挙げられる。また、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0034】
可塑剤としては、例えば、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、アセチルトリブチルシトレート等が挙げられる。
【0035】
多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0036】
弾性樹脂層3には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0037】
紫外線吸収剤としては、例えば、前記と同様のベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0038】
酸化防止剤としては、例えば、前記と同様のフェノール系化合物、リン系化合物等の他、亜リン酸水素2ナトリウム・5水和物、次亜リン酸ナトリウムのような無機リン酸塩等が挙げられる。
【0039】
着色剤としては、例えば、前記と同様のアントラキノン系染料、ペリノン系染料等の他、フルオレイセン、チオフラビン、エオシン、ローダミン、クマリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロン、ジアミノスチルベンスルホン酸、およびこれらの誘導体のような蛍光増白染料等が挙げられる。
【0040】
弾性樹脂層3の厚さは、接合強度の観点から、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは1mm以上であり、また、耐衝撃性やコスト抑制の観点から、好ましくは4mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。また、弾性樹脂層3は、JIS K 6251(1993)にしたがって引張試験を行ったときの100%伸び時における引張応力が0.5〜15MPaであるのが好ましい。
【0041】
次に、ポリカーボネート樹脂層4は、アクリル樹脂板2に弾性樹脂層3を介して積層されるが、このポリカーボネート樹脂層4を構成する樹脂としては、例えば、高分子熱可塑性ポリカーボネート樹脂が挙げられ、中でも、耐衝撃性の観点から、ジオール単位としてビスフェノールAのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカンを含むものが望ましい。
【0042】
ポリカーボネート樹脂層4の厚さは、耐衝撃性の観点から、好ましくは3mm以上であり、また、軽量性やコスト抑制の観点から、好ましくは15mm以下、さらに好ましくは8mm以下である。
【0043】
アクリル樹脂板2に弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4を積層するには、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂層4に相当する樹脂板とを、弾性樹脂層3に相当する樹脂を接合層として介在させて接合する方法が、好適に採用され、例えば、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂板とが対向するように、スペーサー等を介して間隙を空けて配置し、該間隙に弾性樹脂の原料成分、例えば、弾性樹脂がエポキシ硬化樹脂であれば、ポリエポキシ化合物、硬化剤、および必要に応じて反応性希釈剤、非反応性希釈剤、添加剤等を、注入して硬化させればよい。硬化は、室温でも起こるが時間がかかるため、加熱するのが好ましく、通常は徐々に昇温する。昇温は通常150℃まで、好ましくは80℃までであり、また昇温時間は通常10〜50時間である。加熱温度があまり高いと、アクリル樹脂板2やポリカーボネート樹脂板の変形、流動を招くことがある。
【0044】
上述のようにアクリル樹脂板2の一方の面には、弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4が積層されるが、その反対の面には、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6が積層される。この熱可塑性ポリウレタン樹脂層5は、アクリル樹脂板2と第2ポリカーボネート樹脂層6とを強固に接合する機能を有すると共に、耐衝撃性を向上させて、衝撃を複数回受けても視認性の低下や外観の悪化が起こり難くすることにも寄与するものである。
【0045】
この熱可塑性ポリウレタン樹脂層5を構成する樹脂としては、無黄変性ジイソシアネートとポリエーテルジオールと硬化剤とを反応させて得られるものが望ましい。ここで、無黄変性ジイソシアネートとは、イソシアナト基が芳香族環に直接結合していないジイソシアネート、すなわち芳香族環を有しないか、有していてもそこにイソシアナト基が直接結合していないジイソシアネートであり、このようなジイソシアネートを用いることにより、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂が黄変し難いものとなる。
【0046】
上記無黄変性ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート;ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアナトシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートのような脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
上記ポリエーテルジオールとしては、例えば、炭素数2〜4のモノエポキシドやテトラヒドロフランを開環重合させてなるものを用いることができ、このようなポリエーテルジオールとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシテトラメチレン基から選ばれる少なくとも1種のオキシアルキレン基を有するポリ(オキシアルキレン)ジオールが挙げられる。
【0048】
上記硬化剤としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのような脂肪酸ジオール;モノエタノールアミンのようなアミノアルコール;1,2−エタンジアミンのようなジアミン等が挙げられる。
【0049】
熱可塑性ポリウレタン樹脂層5の厚さは、衝撃を複数回受ける場合の耐衝撃性を十分に確保すると共に、アクリル樹脂板2と第2ポリカーボネート樹脂層6とを均一に接合する目的から、好ましくは0.03mm以上であり、また、コスト抑制の観点から、好ましくは3mm以下である。
【0050】
次に、第2ポリカーボネート樹脂層6は、アクリル樹脂板2に上記熱可塑性ポリウレタン樹脂層5を介して積層されるが、この第2ポリカーボネート樹脂層を構成する樹脂としては、前記ポリカーボネート樹脂層4と同様、例えば、高分子熱可塑性ポリカーボネート樹脂が挙げられ、中でも、耐衝撃性の観点から、ジオール単位としてビスフェノールAのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカンを含むものが望ましい。
【0051】
第2ポリカーボネート樹脂層6の厚さは、衝撃を複数回受ける場合の耐衝撃性を十分に確保する目的から、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.5mm以上であり、また、軽量性とコスト抑制の観点から、好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
【0052】
アクリル樹脂板2に熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6を積層するには、アクリル樹脂板2と第2ポリカーボネート樹脂層4に相当する樹脂板とを、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5に相当する樹脂を接合層として介在させて接合する方法が、好適に採用され、例えば、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂板とを、フィルム状等の熱可塑性ポリウレタン樹脂を間に介在させて重ね合わせ、ついで、熱プレスや真空貼合を行えばよい。
【0053】
熱プレスするには、例えば、加熱された一対の金型間に、アクリル樹脂板2、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム、およびポリカーボネート樹脂板をこの順に重ねてプレスすればよい。金型の加熱温度は通常100〜150℃、好ましくは120〜140℃であり、プレス圧力は通常0.5〜5MPa、好ましくは1〜4MPaである。加熱温度やプレス圧力があまり低いと、アクリル樹脂板2と熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムの間や、ポリカーボネート樹脂板と熱可塑性ポリウレタン樹脂の間に気泡が生じたり、接合強度が不十分となったりすることがある。また、加熱温度があまり高いと、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムが軟化して流動したり、場合によってはアクリル樹脂板2やポリカーボネート樹脂板が変形、流動したりすることがある。
【0054】
真空貼合するには、例えば、合せガラスの真空貼合用の真空バッグの中に、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂板との間に熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムを保持した状態で挿入し、真空バッグの中を減圧にして、80〜150℃に加熱すればよい。その後、好ましくは加圧下に再度加熱することにより、接合強度を高めることができる。この再度の加熱における加熱温度は通常80〜170℃であり、また圧力は通常0.1〜1.5MPa、好ましくは0.6〜1.2MPaである。
【0055】
なお、この熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6の積層は、前記の弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4の積層と同時に行ってもよいし、その前または後に行ってもよい。
【0056】
以上のように、本発明の積層透明板1は、アクリル樹脂板2の一方の面に弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4が積層され、他方の面に熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2のポリカーボネート樹脂層6が積層されることにより、優れた耐衝撃性を有するものであるが、図2に示すように、さらに、アクリル樹脂板2と弾性樹脂層3との間に、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8が、アクリル樹脂板2側からこの順に積層されているのが望ましい。このように、アクリル樹脂板2と弾性樹脂層3との間に特定の樹脂層7,8をさらに積層することにより、耐衝撃性を一層向上させることができ、また、製造の際、反りが生じ難くなるので、注液漏れ等が起こり難く作業効率の点で有利であると共に、得られる積層透明板1の反りが低減されており、ひいては接合強度に優れた積層透明板1を得ることができる。
【0057】
このような、アクリル樹脂板2の一方の面に、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7、第3ポリカーボネート樹脂層8、弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4がこの順に積層されると共に、アクリル樹脂板2のもう一方の面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6がこの順に積層されてなる積層透明板1は、例えば対角寸法が1m以上であるような大型板として、特に好適に採用される。
【0058】
ここで、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7を構成する樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5と同様、無黄変性ジイソシアネートとポリエーテルジオールと硬化剤とを反応させて得られるものが望ましい。
【0059】
第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7の厚さは、衝撃を複数回受ける場合の耐衝撃性を十分に確保すると共に、アクリル樹脂板2と第3のポリカーボネート樹脂層8とを均一に接合する目的から、好ましくは0.03mm以上であり、また、コスト抑制の観点から、好ましくは3mm以下である。
【0060】
また、第3ポリカーボネート樹脂層8を構成する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂層4や第2ポリカーボネート樹脂層6と同様、例えば、高分子熱可塑性ポリカーボネート樹脂が挙げられ、中でも、耐衝撃性の観点から、ジオール単位としてビスフェノールAのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカンを含むものが望ましい。
【0061】
第3ポリカーボネート樹脂層8の厚さは、反りを抑制する観点から、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、また、軽量性とコスト抑制の観点から、好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
【0062】
アクリル樹脂板2に第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8を積層するには、アクリル樹脂板2と第3ポリカーボネート樹脂層8に相当する樹脂板とを、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7に相当する樹脂を接合層として介在させて接合する方法が、好適に採用され、例えば、アクリル樹脂板2とポリカーボネート樹脂板とを、フィルム状等の熱可塑性ポリウレタン樹脂を間に介在させて重ね合わせ、ついで、熱プレスや真空貼合を行えばよい。
この熱プレスや真空貼合は、前記の熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6を積層する際の例と同様に行うことができる。
【0063】
なお、この第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8の積層は、前記の熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6の積層と同時に行ってもよいし、その前または後に行ってもよい。
【0064】
第3ポリカーボネート樹脂層8の第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7側とは反対側の面に、弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4を積層するには、第3ポリカーボネート樹脂層8に相当する樹脂板とポリカーボネート樹脂層4に相当する樹脂板とを、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7に相当する樹脂を接合層として介在させて接合する方法が、好適に採用され、例えば、ポリカーボネート樹脂板同士が対向するように、スペーサー等を介して間隙を空けて配置し、該間隙に弾性樹脂の原料成分を、注入して硬化させればよい。この硬化は、前記の弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4を積層する際の例と同様に行うことができる。
【0065】
なお、この第3ポリカーボネート樹脂層8への弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4の積層は、前記の第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8の積層と同時に行ってもよいし、その後に行ってもよいし、また、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8の積層を行う前に、あらかじめこの第3ポリカーボネート樹脂層8に弾性樹脂層3およびポリカーボネート樹脂層4を積層しておいてもよい。
【0066】
本発明の積層透明板1は、平板であってもよいし、曲面を有していてもよい。
曲面を有する積層透明板1を製造するには、例えば、各層の構成部材として、予め曲面形状が付与されているものを用いればよい。この場合、アクリル樹脂板2への、熱可塑性ポリウレタン樹脂層5および第2ポリカーボネート樹脂層6の積層や、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層7および第3ポリカーボネート樹脂層8の積層は、真空貼合法により行うのが好ましい。
【0067】
また、本発明の積層透明板1は、必要に応じて、その一方または両方の面に、防曇処理、耐光性処理、表面硬化処理等が施されていてもよい。
【0068】
本発明の積層透明板1の用途としては、例えば、防弾面や防弾盾のような防弾板や、金融カウンターの仕切り板の他、各種グレージング材、例えば、公共施設、運動施設、防犯ドア、各種車両のグレージング材等が挙げられる。なお、積層透明板1をこれら防護用途に使用する場合、通常、ポリカーボネート樹脂層4が防護対象側、第2ポリカーボネート樹脂層6が被衝撃側となるように配置される。
【0069】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0070】
参考例1(アクリル樹脂板Aの調製)
メチルメタクリレート100重量部に、懸濁重合法により得られたアクリル樹脂粉末(メチルメタクリレート/メチルアクリレート=98/2(重量比)の重合体)20重量部を攪拌しながら添加し、さらに60℃で2時間攪拌を継続して、メチルメタクリレートにアクリル樹脂粉末を溶解した。この中に、3層構造の多層弾性体粒子(特公昭55−27576号公報の実施例3に記載の方法で得られたエラストマー含量25.2重量%の多層弾性体粒子)15重量部を攪拌しながら添加し、さらに1時間攪拌後、室温まで冷却して多層弾性体粒子を均一に分散させたシロップを得た。
【0071】
このシロップ100重量部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15重量部を添加して溶解し、脱気した後、2枚のガラス板と塩化ビニル樹脂製ガスケットにより、ガラス板同士の間隙が10mmとなるように構成されたセル(面積300mm×300mm)に注入し、65℃の熱風循環炉中で4時間、次いで120℃の熱風循環炉にて2時間熱処理を施し、重合を行った。室温付近まで冷却した後、ガラス板を除去して多層弾性体粒子を含有するアクリル樹脂板A(厚さ10mm、300mm×300mm)を得た。
【0072】
実施例1
アクリル樹脂板Aの一方の面側に、ポリカーボネート樹脂板A(筒中プラスチック工業(株)製、ポリカエースEC100;厚さ0.5mm、300mm×300mm)を間隔を空けて対向して置き、その間にポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム(モルトン・インターナショナル社製、モルセンPE193)を挿入する一方、該アクリル樹脂板のもう一方の面側に、上と同じポリカーボネート樹脂板Aを間隔を空けて対向して置き、その間に上と同じポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムを挿入した。これらをプレス成形機中で熱盤温度130℃、プレス圧力1MPaでプレスして、積層基体(図2の層6,5,2,7,8からなるものに相当)を得た。
【0073】
この積層基体の一方の面側に、ポリカーボネート樹脂板B(筒中プラスチック工業(株)製、ポリカエースECK100;厚さ6mm、300mm×300mm)を、軟質塩ビホースを挟むことにより、2mmの間隔を空けて対向して置いた。この間隔にビスフェノールF型エポキシ化合物/ビスフェノールA型エポキシ化合物=85/15(重量比)の混合物(長瀬産業(株)製、XNR3351)50重量部とポリオキシプロピレンジアミン(長瀬産業(株)製、XNH3351;硬化剤)50重量部との混合物を注入し、20℃から80℃に10時間かけて昇温して硬化させた。こうして得られた積層透明板における上記エポキシ化合物硬化層の、ガラス転移温度(示差走査熱量測定による)は10℃であり、100%伸び時における引張応力(JIS K 6251(1993)による)は3.9MPaであった。また、この積層透明板は、これを介して反対側を容易に観察でき、透明性に優れるものであった。
【0074】
次に、この積層透明板の耐衝撃性を評価した。すなわち、図3に示す衝撃試験機9の試験片支持台10(円柱状、鉄製、直径100mm)上に、100mm×100mmに切断した積層透明板を試験片11として、ポリカーボネート樹脂板Aからなる面を上にして載置し、その上に、先端部が円錐形状の打子13の先端13a(先端径2mm)を押し当てた。この打子13の長さ方向の中央部には、円盤状の重り受け用支持盤13bが突設されている。この支持盤13bに向けてステンレス製重り12(30kg)を、高さ2.5m(支持盤13bに対する高さ)の位置から自由落下により落下させた。この時、図4に示すように、試験片11はその四辺が、試験片支持台10の周辺と揃うように載置し、打子の先端13aは試験片11の中央に押し当て、衝撃箇所14が試験片11の中央となるように設定した。この重り12の落下を2回行い、それぞれの衝撃時における試験片11からの破片の飛散の有無、程度を目視により観察した結果、1回目、2回目共、破片の飛散は見られなかった。
【0075】
また、2回目の衝撃後、衝撃箇所14の白化の有無、程度を目視により観察した結果、白化は生じておらず、さらに、衝撃箇所14を通して見た反対側の視認性は良好であった。
【0076】
比較例1
積層基体に代えてアクリル樹脂板B(住友化学工業(株)製、スミペックスXT100、厚さ10mm、300mm×300mm)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。こうして得られた積層透明板は、これを介して反対側を容易に観察でき、透明性に優れるものであった。
【0077】
次に、この積層透明板の耐衝撃性を実施例1と同様の方法で、アクリル樹脂板B側から衝撃を与えて評価した結果、1回目の衝撃では、破片の飛散は見られなかったが、2回目の衝撃で、破片の飛散が僅かに見られた。
【0078】
また、2回目の衝撃後、衝撃箇所14の白化の有無、程度を目視により観察した結果、白化が僅かに生じており、さらに、衝撃箇所14を通して見た反対側の視認性が僅かに低下していた。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、軽量性や透明性に優れ、衝撃を複数回受けても視認性の低下や外観の悪化が起こり難い、耐衝撃性に優れる積層透明板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層透明板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の積層透明板の別の例を示す概略断面図である。
【図3】衝撃試験機の概略図である。
【図4】試験片、支持台、打子の配置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・積層透明板、 2・・・アクリル樹脂板、 3・・・弾性樹脂層、 4・・・ポリカーボネート樹脂層、 5・・・熱可塑性ポリウレタン樹脂層、 6・・・第2ポリカーボネート樹脂層、 7・・・第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層、 8・・・第3ポリカーボネート樹脂層
Claims (10)
- アクリル樹脂板の一方の面に、ガラス転移温度が50℃以下の弾性樹脂層およびポリカーボネート樹脂層がこの順に積層され、該アクリル樹脂板のもう一方の面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂層および第2ポリカーボネート樹脂層がこの順に積層されてなることを特徴とする積層透明板。
- アクリル樹脂板が、多層弾性体粒子を含有するものである請求項1に記載の積層透明板。
- 弾性樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度が、−30〜40℃である請求項1または2に記載の積層透明板。
- 弾性樹脂層を構成する樹脂が、エポキシ硬化樹脂またはアクリル樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の積層透明板。
- 弾性樹脂層を構成する樹脂が、ビスフェノール型エポキシ硬化樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の積層透明板。
- 熱可塑性ポリウレタン樹脂層を構成する樹脂が、無黄変性ジイソシアネート、ポリエーテルジオールおよび硬化剤を反応させてなるものである請求項1〜5のいずれかに記載の積層透明板。
- アクリル樹脂板の厚さが3〜30mmであり、弾性樹脂層の厚さが0.1〜4mmであり、ポリカーボネート樹脂層の厚さが3〜15mmであり、熱可塑性ポリウレタン樹脂層の厚さが0.03〜3mmであり、第2ポリカーボネート樹脂層の厚さが0.1〜3mmである請求項1〜6のいずれかに記載の積層透明板。
- アクリル樹脂板と弾性樹脂層との間に、第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層および第3ポリカーボネート樹脂層が、アクリル樹脂板側からこの順に積層されてなる請求項1〜7のいずれかに記載の積層透明板。
- 第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層を構成する樹脂が、無黄変性ジイソシアネート、ポリエーテルジオールおよび硬化剤を反応させてなるものである請求項8に記載の積層透明板。
- 第2熱可塑性ポリウレタン樹脂層の厚さが0.03〜3mmであり、第3ポリカーボネート樹脂層の厚さが0.1〜3mmである請求項8または9に記載の積層透明板。
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-
2002
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