JP2004184183A - 放射性物質保管容器の搬送方法及び放射性物質保管容器並びに貯蔵施設 - Google Patents
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Abstract
【課題】エアパレット等を用いた放射性物質保管容器の搬送の最適化を導き出すとともに、この放射性物質保管容器の特性に適した搬送方法を得る放射性物質保管容器の搬送方法及び放射性物質保管容器並びに貯蔵施設を提供すること。
【解決手段】放射性物質保管容器であるキャスク10の外周部下側に設けた複数のアングル材16に対して押し上げ力を与える揚げ装置50を配置し、該揚げ装置50にてキャスク10を持ち上げた後に該キャスク10の下方にエアパレット又は台車を挿入し、エアパレット又は台車上に前記キャスク10を載置して搬送する搬送方法を用いることとした。
【選択図】 図1
【解決手段】放射性物質保管容器であるキャスク10の外周部下側に設けた複数のアングル材16に対して押し上げ力を与える揚げ装置50を配置し、該揚げ装置50にてキャスク10を持ち上げた後に該キャスク10の下方にエアパレット又は台車を挿入し、エアパレット又は台車上に前記キャスク10を載置して搬送する搬送方法を用いることとした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射性物質を収容して保管する放射性物質保管容器の搬送方法及び放射性物質保管容器並びに貯蔵施設に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所において発生した放射性物質は、キャスク(放射性物質保管容器)と呼ばれる専用の容器に所定の体数毎に収納される。このように放射性物質を収納したキャスクは、これら放射性物質が再処理に供されるまでの間、その内部に放射性物質を収納したまま貯蔵施設に貯蔵される。
なお、ここに言う放射性物質とは、使用済み核燃料集合体、再処理プラントにおける高レベル放射性廃棄物ガラス固化体等も含まれるものである。
【0003】
上述したキャスクは、放射性物質が発する放射線を遮蔽する必要があるため、分厚いコンクリート層、又は分厚い金属層とともに中性子遮蔽体が設けられた構成が一般的である。このため、キャスクは100t、さらには200tを超えるような重量物ともなりうり、これを貯蔵施設内で搬送するためには多くの労力が必要とされている。
【0004】
さて、このような、キャスクの種類としては、金属材料を主に用いつつレジン材などの中性子遮蔽体を適所に配置した金属製の金属キャスク(放射性物質保管容器)と、コンクリートを遮蔽材として用いたコンクリート製のコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)とがある。
【0005】
金属キャスクは、この外周部上側に吊り上げを可能とするトラニオンと呼ばれる吊り部が少なくとも一対備わり、貯蔵施設に備えられたクレーン等による吊り上げ搬送を可能とした構造であることが一般的である(例えば、特許文献1参照。)
【0006】
コンクリートキャスクは、内部空間に面する金属板(「ライナ」とも呼ばれる。)よりも外側にコンクリート層を配した構造とされており、容積の大部分がコンクリートで占められている。このため、金属キャスクに備えられるトラニオンなどの吊り部を設けにくく、設けた場合であっても補強を施すことにより重量増大が懸念される。このことは、コンクリートの脆性が大きいために、トラニオン等を設けるには周囲の剛性確保を多大に必要とするからである。
【0007】
コンクリートキャスクの構造及び構成について簡単に説明すると、この内部空間は、キャニスタと呼ばれる放射性物質を封入する金属製密閉容器を収納可能に構成されている。そして、このコンクリートキャスクの外周部の上側と下側とには、上記内部空間に繋がる空気口が複数箇所設けられており、流入した空気により放射性物質によって加熱されたキャニスタを除熱可能としている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
さて、このようなキャスクを貯蔵施設内で搬送する方法としては、上述したように貯蔵施設に備えられたクレーンで搬送を行うことが一般的であることを説明したが、近年、エアパレットを用いたキャスクの搬送方法が検討されている。
【0009】
エアパレットの構造について簡単に説明すると、フレームに取り付けられたダイアフラム等に圧縮空気を供給するとともに、ダイアフラム等の下面に形成した穴から内部の空気を吹き出して床面との間に空気膜を形成し、浮上させることでエアパレットのフレーム上に載置された重量物を搬送する装置である。上記空気膜が形成されることによって、床面との摩擦係数は約1/1000程度まで小さくなり、床面に損傷を与えることなく非常に小さな力で重量物を容易に運搬することができる。
なお、エアパレットの構成は、1つのフレームに複数のダイアフラムを備えて構成されるものであったり、複数のダイアフラムを備える複数のフレームを組み合わせて構成されるものであったり多様な構成がある。
【0010】
そして、このようなエアパレットによるキャスク搬送を行うことによれば、貯蔵施設にクレーン等の大型荷役機械を設置する必要がなくなり、クレーンを設置するための強度と形状とを貯蔵施設に確保する必要がなくなって設備コストを低減できる利点がある。また、クレーンから垂下された吊りロープをキャスクに掛ける玉掛け作業が不要となり、作業性の向上を図ることができ、さらには吊りロープの破断によって生じるキャスクの転倒などを回避することができる。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−26497号公報(第3−第5段落、第11図)
【特許文献2】
特開2002−71896号公報(第20−26段落、第1図)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したエアパレット等に重量物であるキャスクを載置するためには、エアパレットをキャスクの下方に配置する必要がある。これを解決する方法としては、クレーンで持ち上げることが容易に推測できるが、上述したようなエアパレット等を用いる利点がクレーンの設置によって損なわれることになり、最良な手段とは言い難い。
また、脆性破壊しやすいコンクリートキャスクに対して最も適した搬送方法については未だ検討がなされている段階であり、このことに対する有効な解決策は見いだされていない。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、エアパレット等を用いた放射性物質保管容器の搬送の最適化を導き出すとともに、この放射性物質保管容器の特性に適した搬送方法を得る放射性物質保管容器の搬送方法及び放射性物質保管容器並びに貯蔵施設を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
請求項1に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器の搬送方法であって、前記放射性物質保管容器の外周部下側に設けられた複数の突出部に対して押し上げ力を与え、前記射性物質保管容器を持ち上げた後に該放射性物質保管容器の下方にエアパレット又は台車を挿入し、前記エアパレット又は前記台車上に前記放射性物質保管容器を載置して搬送することを特徴とする。
【0015】
このような搬送方法によれば、放射性物質を遮蔽する構造を有するために比較的重量物とされた放射性物質保管容器は、各突出部に与えられた押し上げ力によって持ち上げられることになる。そして、放射性物質保管容器の下方に隙間が得られることで、ダイアフラム内に供給した空気により床面との間に空気膜を形成するエアパレット等の挿入が可能となる。そして、エアパレット又は同様に挿入された台車により放射性物質保管容器の重量が支えられると、水平方向に僅かな力を加えるだけで放射性物質保管容器を移動させることが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の放射性物質保管容器の搬送方法において、前記放射性物質保管容器が放射性物質を格納する金属製密閉容器を収容するコンクリート製の容器とされ、これに備わる前記突出部に、クレーンから垂下された吊りロープを掛止して持ち上げ、該クレーン、あるいは持ち上げられた前記放射性物質保管容器の下方に挿入したエアパレット又は台車に該放射性物質保管容器を載置して搬送することを特徴とする。
【0017】
このような搬送方法によれば、ほぼコンクリート製とされた放射性物質保管容器をクレーンによって持ち上げることができ、持ち上げた状態のままクレーンを用いて搬送すること、あるいは持ち上げられた放射性物質保管容器の下方にエアパレットあるいは台車を挿入することにより、多大な力を必要としないで放射性物質保管容器を搬送することができる。特に、コンクリート製の放射性物質保管容器は重く、且つ強度的にもろいために吊り上げることが困難であるが、外周部下側に設けた突出部を介して持ち上げるため、放射性物質保管容器の胴体部分には多大な荷重が作用せず、簡易な補強でコンクリートの脆性破壊を回避して持ち上げることが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の放射性物質保管容器の搬送方法において、前記吊りロープが、前記放射性物質保管容器の上部にて左右方向の移動が規制されていることを特徴とする。
【0019】
このような搬送方法によれば、放射性物質保管容器の重心より下側を支点として持ち上げることによって発生する放射性物質保管容器の傾きが、放射性物質保管容器上部における吊りロープの規制によって制限されることになり、放射性物質保管容器の転倒などを回避して安定な状態で持ち上げられることになる。
なお、吊りロープを規制する方法としては、例えば、放射性物質保管容器の上部に該吊りロープを誘導するための溝を設けることや、放射性物質保管容器の上面の大きさに合わせた吊具を配置して該吊具から各突出部まで配された吊りロープで放射性物質保管容器を挟み込む方法などが例として挙げられる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器の搬送方法であって、前記放射性物質保管容器の外周部に形成された複数の凹所に対して押し上げ力を与え、前記放射性物質保管容器を持ち上げた後に該放射性物質保管容器の下方にエアパレット又は台車を挿入し、前記エアパレット又は前記台車上に前記放射性物質保管容器を載置して搬送することを特徴とする。
【0021】
このような搬送方法によれば、放射性物質を遮蔽する構造を有するために比較的重量物とされた放射性物質保管容器は、各凹所に与えられた押し上げ力によって直接的に持ち上げられることになる。そして、放射性物質保管容器の下方に隙間が得られることで、ダイアフラム内に供給した空気により床面との間に空気膜を形成するエアパレットや台車の挿入が可能となる。そして、エアパレットや台車により放射性物質保管容器の重量が支えられると、水平方向に僅かな力を加えるだけで放射性物質保管容器を移動させることが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器の搬送方法であって、前記放射性物質保管容器は、下部にエアパレット挿入口を有する架台を備え、前記エアパレット挿入口にエアパレットを挿入して床面より浮上させ前記放射性物質保管容器を搬送することを特徴とする。
【0023】
これにより、架台にエアパレットが挿入されることによって放射性物質保管容器は床面から浮き上がり、水平方向の加えられた僅かな力で移動することができる。そして、エアパレットの機能が停止すると、放射性物質保管容器は架台とともに現状の位置に着地することになる。なお、架台は放射性物質保管容器と一体に形成されるものであってもよいし、組み合わされて備えられるものであってもよい。
【0024】
請求項6に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器であって、この外周部下側には、略垂直方向の押し上げ力を受け止める複数の突出部が設けられていることを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、放射性物質を遮蔽する構造を有するために比較的重量物とされた放射性物質保管容器は、この外周部下側に設けられた各突出部が押し上げ力を受けることによって破損することなく持ち上げられることになる。そして、放射性物質保管容器の下方に隙間が得られることによれば、該放射性物質保管容器の搬送手段となる例えばエアパレットや台車等を容易に挿入することが可能となる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の放射性物質保管容器において、前記突出部が外周部に対して着脱自在に取り付けられたリブ構造を有するアングル材によって形成されていることを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、例えば、エアパレット等を放射性物質保管容器の下方に挿入した段階でアングル材を取り外すことが可能となり、該アングル材を放射性物質保管容器の外周部から取り外すことによれば、放射性物質保管容器の外周部がほぼ平坦となる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の放射性物質保管容器において、内部空間と外界とを連通して空気を導通させる空気口が外周部に備えられてなり、前記アングル材は、該空気口に挿入して取り付けられることを特徴とする。
【0029】
これにより、放射性物質保管容器の内部空間に繋がる空気口にアングル材が挿入されることで該アングル材の取り付けがほぼ完了し、アングル材が受けた押し上げ力は、空気口を介して放射性物質保管容器に伝達されてこの重量を支え持ち上げることになる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器であって、この外周部下側には、略垂直方向の押し上げ力を受け止める複数の凹所が形成されていることを特徴とする放射性物質保管容器。
【0031】
このような構成によれば、放射性物質を遮蔽する構造を有するために比較的重量物とされた放射性物質保管容器は、この外周部下側に形成された各凹所が押し上げ力を受けることによって直接的に持ち上げられることになる。そして、放射性物質保管容器の下方に隙間が得られることによれば、放射性物質保管容器の搬送手段となる例えばエアパレットや台車等を容易に挿入することが可能となる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器であって、この下面には、下部にエアパレット挿入口を有する架台が備えられていることを特徴とする放射性物質保管容器。
【0033】
このような構成によれば、架台の下部に設けられたエアパレット挿入口にエアパレットが挿入されることによって放射性物質保管容器は床面から浮き上がり、水平方向の加えられた僅かな力で移動することが可能となる。そして、エアパレットの機能が停止すると、架台を有する放射性物質保管容器は現状の位置に着地することになる。なお、架台は、放射性物質保管容器と一体に形成されて備えられるものであってもよいし、それぞれが組み合わされて備えられるものであってもよい。
【0034】
請求項11に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器を貯蔵保管する貯蔵施設であって、放射性物質保管容器を載置するための置き台が床面に備えられてなり、該置き台は、放射性物質保管容器を載置する位置に合わせて形成されたエアパレット挿入溝を有するとともに、この高さ寸法が、機能停止時のエアパレットの高さよりも大きく動作時のエアパレットの高さよりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0035】
このような構成によれば、貯蔵施設の床面を移動可能とされたエアパレットを置き台に形成された床面と同一平面を有するエアパレット挿入溝に挿入することにより、放射性物質保管容器の下方にエアパレットを配置することができる。そして、エアパレットを動作させるべくエアを供給することによれば、放射性物質保管容器はエアパレットによって置き台から持ち上げられることになり、エアパレットの移動に合わせて搬送されることになる。
【0036】
請求項12に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器を貯蔵保管する貯蔵施設であって、放射性物質保管容器の下面寸法よりも幅が狭いエアパレット移動溝が床面に形成されてなり、該エアパレット移動溝の深さは、機能停止時のエアパレットの高さよりも大きく動作時のエアパレットの高さよりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0037】
このような構成によれば、貯蔵施設の床面に形成されたエアパレット移動溝に沿ってエアパレットは移動することになり、このエアパレット移動溝に沿って設置された、あるいは設置される放射性物質保管容器は、エアパレットの動作によって床面から浮き上がるように持ち上げられる。そして、持ち上げられた放射性物質保管容器は、エアパレット移動溝に沿って搬送されることになる。
【0038】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る各実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
このコンクリートキャスク10は、キャニスタ20(金属製密閉容器)を収納する円柱状の収納スペース(内部空間)を形成して底部が閉じられた円筒形状のキャスク本体11と、キャニスタ20を出し入れするための上部開口を塞ぐ蓋体12とによって構成されている。
【0039】
キャスク本体11は、各金属板11a(内鋼板110、外鋼板111)及びコンクリート層11bによって構成され、収納スペースを形成する内外周面に金属板11aが貼り付けられたコンクリート製となっている。そして、キャスク本体11の底部には、剛性を確保するための支持部材15がコンクリート層の内部に位置して備えられている。
蓋体12は、金属板12a及びコンクリート層12b等によって構成され、キャニスタ20の二次蓋23と対向する底面を除くコンクリート層12bの周囲に金属板12aが貼り付けられたコンクリート製となっている。
【0040】
また、キャニスタ20が収容される収納スペース内を自然通気によって対流冷却するため、キャスク本体11の外周部下側には冷却空気を導入する空気導入口13(空気口)が複数箇所に設けられている。この空気導入口13から導入された冷却空気は、屈曲した流路を経て底面から収納スペース内に入り、キャニスタ20の側面に沿って上昇した後、キャスク本体11と蓋体12との間に屈曲して形成された流路を経て、外周部上側にて開口する複数の空気排出口14から外部へ流出する。この結果、コンクリートキャスク10の収納スペース内は、冷却空気として導入した外気の自然通気によって換気・冷却される。
【0041】
コンクリートキャスク10の収納スペース内に収納されるキャニスタ20は、多数の放射性物質Eをバスケット25に挿入した状態で収納保持し、ヘリウムガスが注入されるとともに各蓋体21,22,23が嵌め込まれて溶接されることで密閉される。ここで注入されるヘリウムガスは、放射性物質Eの冷却促進を目的としており、このヘリウムガスにより熱伝導性が向上して対流による冷却効率が高められる。
バスケット25は、格子状断面を有する放射性物質Eの保持容器であり、各格子毎に1本の放射性物質Eを収納して保持する機能を有している。
【0042】
さらに、本発明の特徴をなす構成について説明すると、上述したキャスク本体11の底部に配された支持部材15の端部にはリブ構造を有するアングル材16が上述した支持部材15の配置に合わせて取り付けられている。このアングル材16と支持部材15とはボルト等の固定手段によって着脱自在に取り付けられており、支持部材15の端部に取り付けられることで、キャスク本体11の外周面よりも突出した突出部を形成している。
【0043】
このように構成されたコンクリートキャスク10の搬送方法について説明する。図に示すように、油圧ジャッキ50(揚げ装置)をアングル材16の下方にそれぞれ配置し、油圧ジャッキ50を動作させることでアングル材16に下方から上方に向かう垂直方向の押し上げ力を与える。この際、各油圧ジャッキ50の動作をストロークセンサによって常時確認し、全てが同一な動作である場合に限って動作を継続するように制御する。
【0044】
なお、油圧ジャッキ50の動力源となる油圧ポンプ(図示せず)は、複数ある油圧ジャッキ50の全てに共通して作動油を供給するものとし、また、該油圧ポンプから各油圧ジャッキ50に繋がる油圧回路は並列に組まれている。これにより、複数の油圧ジャッキ50が均一に動作することとなり、コンクリートキャスク10は傾くことなく水平に持ち上げられることになる。
【0045】
したがって、コンクリートキャスク10は、押し上げ力を受けたアングル材16を介し床面に置かれた状態から油圧ジャッキ50の性能の範囲内で持ち上げられることになる。そして、コンクリートキャスク10の下方に隙間が得られた段階で図示しないエアパレットを挿入し、エアパレットを起動することにより、油圧ジャッキ50に変えてエアパレットでコンクリートキャスク10を支持する。なお、エアパレットでコンクリートキャスク10を支持した段階で油圧ジャッキ50を取り外す、あるいは縮小する。この結果、水平方向に僅かな力を加えるだけで200t近くあるコンクリートキャスク10を移動することが可能となり、手動、あるいは牽引車等を用いてキャスク搬送を開始する。
【0046】
そして、貯蔵施設内の目標地点までコンクリートキャスク10を移動させ、エアパレットで浮上させた状態のまま再び油圧ジャッキ50をアングル材16の下方に配置し、油圧ジャッキ50に作動油を供給するとともにエアパレットの機能を停止させる。これにより、コンクリートキャスク10は油圧ジャッキ50に支持されることとなり、油圧ジャッキ50を縮小することによれば、コンクリートキャスク10は目標位置である貯蔵位置に設置されることになる。
【0047】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスク10の搬送方法によれば、クレーンでの吊り上げによる搬送以外の搬送方法を、揚げ装置とされた油圧ジャッキ50とエアパレットとで容易に実現することができる。特に、コンクリートキャスク10においてはクレーン用の吊り部(トラニオン等)を強度面から設けることが、構造上、あるいは重量増大の要因となりうるために困難であった。しかし、コンクリートキャスクの剛性確保を担う支持部材15に取り付けたアングル材16を介して持ち上げ、エアパレットを挿入し搬送することができるので、コンクリートキャスク10の補強等を多く必要としないことで重量の増大を回避することができる。
【0048】
また、コンクリートキャスク10の外周面よりも外側にアングル材16が位置して油圧ジャッキ50が配置されるので、比較的大きいエアパレットを油圧ジャッキ50等に干渉させえることなくスムーズに挿入することができる。すなわち、能力の高いエアパレットを選択することができる。
また、アングル材16は取り外し可能とされているので、搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多くのコンクリートキャスク10を設置することができる。
【0049】
なお、本実施形態において説明した油圧ジャッキ50は、本発明に係る揚げ装置の一例を示したものであって、必ずしも油圧式に限定されるものではないが、油圧式であれば押し上げ力を最も効果的に得ることができる。また、この油圧ジャッキの大きさが幅寸法(直径方向)で100〜200mm、高さ寸法で200〜400mmであり、揚げ装置としてコンパクトに設置することができる。
【0050】
そして、その他の揚げ装置として例に挙げるならば、エア方式や、ねじ回転式のジャッキ等であってもよい。
また、本実施形態においては、本発明に係るキャスクとしてコンクリート製のコンクリートキャスク10について説明したが、金属キャスクについても上述した構成及び搬送方法を用いることとしてもよい。
【0051】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る第2の実施形態について図2を用いて説明する。図2は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
なお、図に示すコンクリートキャスク10は、図1に示した第1の実施形態におけるコンクリートキャスク10に比較してアングル材16の働きが異なるので、この点について詳しく説明するものとし、その他の構成については同様であるのでその説明を一部省略する。また、コンクリートキャスク10の搬送方法が第1の実施形態と異なるので、以下に説明するものとする。
【0052】
図2に示されるリブ構造を有するアングル材16は、クレーンから垂下されたキャスク用吊具60の一構成要素とされたワイヤーロープ65の下端を掛止する役目を担っており、キャスク本体11の外周部下側に位置して着脱自在に設けられている。
【0053】
図に示されるキャスク用吊具60の構成について説明する。符号61は本体部、62はクレーンから垂下されたフックが掛けられる吊り環、63は支持ロープ、64は支持ロープ63及び後述する第2支持ロープ65の左右方向の移動を拘束する拘束部材、65は一端がアングル材16に掛止される第2支持ロープを示している。なお、支持ロープ63及び第2支持ロープ65のそれぞれは、クレーンから垂下される吊りロープと同様にコンクリートキャスク10を吊り上げる役目を担って備えられるものである。すなわち、本発明に係る吊りロープを指すものである。
【0054】
本体部61は、この形状が厚みを有する円盤状に形成されており、上面には吊り環62を装着するための取手部61aが備えられている。また、本体部61の外周部には、コンクリートキャスク10の蓋体12の半径寸法と同等な長さを有する複数の支持ロープ63が均等な間隔で接続されている。
また、支持ロープ63の各々は、他端でコンクリートキャスク10の上側角部に密着する拘束部材64に接続されている。さらに、これら拘束部材64は各アングル材16に繋がる第2支持ロープ65に接続されている。
したがって、支持ロープ63及び第2支持ロープ65は拘束部材64によって左右方向の移動が規制されることになる。また、支持ロープ63及び第2支持ロープ65がキャスク本体11を囲むように挟み込むことで、コンクリートキャスク10の傾きが防止されている。
【0055】
このように構成されたコンクリートキャスク10の搬送方法について説明する。図に示すように、各アングル材16にキャスク用吊具60の第2支持ロープ65をそれぞれ取り付け、該キャスク用吊具60をクレーンによって吊り上げることで、コンクリートキャスク10を床面に設置された状態から持ち上げる。そして、該クレーンの操作でコンクリートキャスク10の搬送を行い、貯蔵位置でクレーンのフックを巻き下げてコンクリートキャスク10を着地させる。
【0056】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスク10の搬送方法によれば、クレーンでの吊り上げによる搬送が困難とされたコンクリートキャスク10を吊り上げ位置の変更によってクレーンで搬送することができる。そして、コンクリートキャスク10の補強等を多く必要としないことにより重量の増大を回避することができる。また、重心よりも下側で持ち上げる搬送方法であっても、支持ロープ63、第2支持ロープ65、及び拘束部材64によってキャスク本体11を挟み込むことで、安定した搬送を実現することができる。
【0057】
[第3の実施形態]
次に、本発明に係る第3の実施形態について図3を用いて説明する。図3は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
なお、図に示すコンクリートキャスク10は、図1に示した第1の実施形態におけるコンクリートキャスク10に比較してアングル材16の形状及び取り付け位置が異なるので、この点について詳しく説明するものとし、その他の構成については同様であるので説明を一部省略する。また、コンクリートキャスク10の搬送方法については第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0058】
図に示すように、キャスク本体11の外周部下側にて突出部を形成するリブ構造を有するアングル材16は、この下部が直角に折り曲げられ、且つ鋼板で補強された挿入部13aを有しており、この挿入部13aが空気導入口13(空気口)に挿入された状態でキャスク本体11に側面にボルト止めによって着脱自在に取り付けられる。内鋼板110と結合する13のリブは折れ曲がっているため内鋼板110からのリブ強度が小さくなる。
そこで、空気導入口13は、アングル材16の挿入に合わせて補強がなされ、揚げ装置をなす油圧ジャッキ50から受ける押し上げ力を強固に受け止める構造とされている。
【0059】
そして、上記アングル材16のそれぞれの下方に油圧ジャッキ50等を配置して持ち上げ、持ち上げられたコンクリートキャスク10の下方に図示しないエアパレットを挿入してコンクリートキャスク10を載置する。そして、エアパレットによる搬送によってコンクリートキャスク10を貯蔵位置まで搬送する。
【0060】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスク10の搬送方法によれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることができるとともに、アングル材16の取り付け構造の簡易化して油圧ジャッキ50等の押し上げ力を受ける突出部を容易に形成することができる。
【0061】
[第4の実施形態]
次に、本発明に係る第4の実施形態について図4を用いて説明する。図4は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
なお、図に示すコンクリートキャスク10は、図1に示した第1の実施形態におけるコンクリートキャスク10に比較して外周部下側の構造が異なるので、この点について詳しく説明するものとし、その他の構造及び構成については同様であるので説明を一部省略する。また、コンクリートキャスク10の搬送方法については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0062】
キャスク本体11の外周部下側には、油圧ジャッキ50が挿入される複数の凹所18が形成されており、油圧ジャッキ50から出力される押し上げ力を受け止めることが可能とされている。
【0063】
したがって、コンクリートキャスク10は、各凹所18が受けた押し上げ力を直接的に受けて持ち上げられることになり、コンクリートキャスク10の下方に隙間が得られることによれば、搬送手段となるエアパレット等を容易に挿入することが可能となる。
【0064】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスク10の搬送方法によれば、コンクリートキャスク10を容易に持ち上げてエアパレットを挿入し搬送することができる。また、コンクリートキャスク10の外側に突出した部分がないので、搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多くのコンクリートキャスク10を設置することができる。
【0065】
なお、本実施形態の変形例として、以下に説明する場合であってもよい。図5は本実施形態における変形例を示したコンクリートキャスクの部分断面斜視図である。
図に示すように、本変形例におけるコンクリートキャスク10の外周部下側には、空気導入口13を貫通するように形成された複数の凹所18’が形成されており、油圧ジャッキ50等を挿入して配置させることが可能とされている。
【0066】
このようなコンクリートキャスク10の構成及び搬送方法によれば、上述した実施形態と同様な効果が得られるとともに、コンクリートキャスク10の構造の簡略化を得ることができる。なお、油圧ジャッキ50を挿入する凹所18を形成することで外界に対する中性子等の遮蔽性が損なわれる場合には、必要に応じて各凹所18の周囲に中性子遮蔽体を配することが望ましい。
【0067】
[第5の実施形態]
次に、本発明に係る第5の実施形態について図6を用いて説明する。図6は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
なお、図に示すコンクリートキャスク10は、図1に示した第1の実施形態におけるコンクリートキャスク10に架台19が追加して備えられたものであり、この点について詳しく説明するものとし、その他の構造及び構成については同様であるので説明を一部省略する。
【0068】
コンクリートキャスク10とともに構成された架台19は、下部にエアパレット70を挿入するためのエアパレット挿入口19aを有して形成されており、この高さは、動作時のエアパレット70の高さよりも小さく、且つ、機能停止時のエアパレットの高さよりも大きく設定されている。また、このエアパレット挿入口19aは、架台19の相対する側面まで貫通するように形成されて備えられるものである。
【0069】
架台19の下部にエアパレット挿入口19aが備わることで、この架台19は両側及び中央に配された長尺な設置部19bによって床面と接触し、これら設置部19bによってコンクリートキャスク10の重量が支えられることになる。また、中央の設置部19bは、架台19の強度を高めるために備えられるものでもある。
【0070】
架台19にエアパレット70が挿入されることによって、架台19を有するコンクリートキャスク10は床面から浮き上がり、水平方向の加えられた僅かな力で移動する。そして、エアパレット70の機能が停止すると、コンクリートキャスク10は現状の位置に着地することになり、エアパレット70を架台19から取り外すことも可能となる。
【0071】
なお、図に示すエアパレット70は、各フレーム72にダイアフラム71が2つづつ取り付けられた場合を示しているが、左右のフレーム72同士は紙面手前側にて接続(図示せず)されており、ダイアフラム71の位置関係が常に一定とされることで搬送時の安定性が確保されている。
【0072】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスクの搬送方法によれば、下部にエアパレット挿入口19aを有する架台19にエアパレット70を挿入することで重量物であるコンクリートキャスク10を持ち上げ、且つ搬送することができ、搬送に関わる機器をエアパレット70に限定することで搬送用の機器の簡略化、及び作業性の向上を図ることができる。また、架台19の大きさに応じてエアパレット70を適宜選択することができ、搬送能力を容易に増大させることができる。
【0073】
[第6の実施形態]
次に、本発明に係る第6の実施形態について図7を用いて説明する。図7は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)を貯蔵する貯蔵施設の概略構成を説明する図であって、(a)は貯蔵施設の床面構造を説明する斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【0074】
貯蔵施設の床面Fには、コンクリートキャスク10を載置するための置き台80が設置されており、該置き台80には、コンクリートキャスク10を載置する位置に合わせてエアパレット70を挿入するためのエアパレット挿入溝82が形成されている。この置き台80の高さ寸法は、機能停止時のエアパレットの高さよりも大きく動作時のエアパレットの高さよりも小さく設定されている。また、エアパレット挿入溝82は、1つのコンクリートキャスク10に対して2カ所設けられており、これらエアパレット挿入溝82は、コンクリートキャスク10の中央部を支持する中央支持部81を挟んで配置されている。
【0075】
このように構成された貯蔵施設における搬送方法を説明すると、貯蔵施設の床面Fを移動可能とされたエアパレット70を、置き台80に形成された床面Fと同一平面を有するエアパレット挿入溝82に挿入する。これにより、コンクリートキャスク10の下方にエアパレット70がコンクリートキャスク10の移動を行わずとも配置される。そして、エアパレット70を動作させるべくエアを供給することによれば、コンクリートキャスク10はエアパレット70によって置き台80から持ち上げられることになり、エアパレット70の移動に合わせて搬送されることになる。
【0076】
以上説明した本実施形態の構成及び搬送方法によれば、コンクリートキャスク10をエアパレット70のみで持ち上げて搬送することができる。また、コンクリートキャスク10を貯蔵施設内の定位置に容易に設置することができる。
【0077】
なお、本実施形態の変形例として以下に説明することであってもよい。図8は本実施形態の変形例を説明する貯蔵施設の概略構成を示した図であって、(a)は貯蔵施設の床面構造を説明する斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【0078】
貯蔵施設の床面Fには、コンクリートキャスク10の下面の外径寸法の半分よりも狭いエアパレット移動溝92が1つのコンクリートキャスク10に対して2本づつ形成され、これらエアパレット移動溝92の深さは、機能停止時のエアパレット(図示せず)の高さよりも大きく動作時のエアパレットの高さよりも小さく設定されている。そして、これらエアパレット移動溝92はコンクリートキャスク10の搬入が開始される貯蔵施設の入口から各々のコンクリートキャスク10が設置される目標位置まで形成されており、複数のコンクリートキャスク10が通過する通路部分は、上記各エアパレット移動溝92が合流している。
【0079】
これにより、貯蔵施設の床面Fに形成されたエアパレット移動溝92に沿ってエアパレットは移動することになり、このエアパレット移動溝92に沿って設置、あるいは設置されるコンクリートキャスク10は、エアパレットの動作によって床面から浮き上がるように持ち上げられる。
【0080】
以上説明したことによれば、コンクリートキャスク10をエアパレットのみで持ち上げて搬送することができるとともに、搬送する際の高さが床面Fからごく僅かであるので、搬送時の重心高を低く抑えてコンクリートキャスク10の安定した搬送を行うことができる。
【0081】
なお、以上説明した各実施形態ではコンクリート製のコンクリートキャスク10を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、金属製の金属キャスクに用いることであってもよい。また、床面から持ち上げられたコンクリートキャスク10をエアパレットで搬送することを説明したが、エアパレットに替えて台車等を挿入し搬送することとしてもよい。
【0082】
【発明の効果】
以上説明した本発明の放射性物質保管容器の搬送方法及び放射性物質保管容器並びに貯蔵施設によれば以下の効果を奏する。
請求項1記載の発明によれば、放射性物質保管容器の外周部下側に設けた突出部に押し上げ力を与えて放射性物質保管容器を持ち上げることにより、この放射性物質保管容器の下方にエアパレット等を挿入し搬送を行うことができる。また、押し上げる位置が放射性物質保管容器の外側に位置しているため、比較的大きなエアパレット等を干渉なく円滑に挿入することができる。
【0083】
請求項2記載の発明によれば、突出部に吊りロープを掛止することで放射性物質保管容器を持ち上げることができ、コンクリート製の放射性物質保管容器における吊り上げ搬送を実現することができる。
【0084】
請求項3記載の発明によれば、放射性物質保管容器の下側の突出部を用いて持ち上げ、さらに搬送する際の放射性物質保管容器の安定性を十分に確保することができる。
【0085】
請求項4記載の発明によれば、放射性物質保管容器の外周部に形成した凹所に押し上げ力を与えて放射性物質保管容器を直接的に持ち上げることにより、この放射性物質保管容器の下方にエアパレット等を挿入し搬送を行うことができる。また、放射性物質保管容器の外側に突出した部分がないので、放射性物質保管容器の搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、放射性物質保管容器の設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多く収容することができる。また、押し上げ力に対する放射性物質保管容器の補強箇所を削減することができる。
【0086】
請求項5記載の発明によれば、下部にエアパレット挿入口を有する架台にエアパレットを挿入することで放射性物質保管容器を搬送を行うことができ、搬送に必要とされる機器の簡略化を図ることができる。
【0087】
請求項6記載の発明によれば、重量物である放射性物質保管容器を容易に持ち上げることが可能となり、搬送を可能とするエアパレットや台車等に容易に載せ替えることができる。また、放射性物質保管容器の外側で押し上げ力を受けることにより、持ち上げる際の安定性を高く確保することができる。
【0088】
請求項7記載の発明によれば、アングル材を放射性物質保管容器から適宜取り外すことができるので、搬送時や設置時における干渉を回避することができる。また、放射性物質保管容器の搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、放射性物質保管容器の設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多くの放射性物質保管容器を収容することができる。
【0089】
請求項8記載の発明によれば、アングル材の取り付け構造の簡易化して押し上げ力を受ける突出部を容易に形成することができる。
【0090】
請求項9記載の発明によれば、重量物である放射性物質保管容器を容易に持ち上げることが可能となり、搬送を可能とするエアパレットや台車等に容易に載せ替えることができる。また、放射性物質保管容器の外縁よりも内側で押し上げ力を直接受けることにより、強度を確保するための構造を簡略化することができる。また、放射性物質保管容器の外側に突出した部分がないので、放射性物質保管容器の搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、放射性物質保管容器の設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多く収容することができる。
【0091】
請求項10記載の発明によれば、エアパレット挿入口を有する架台にエアパレットを挿入することで放射性物質保管容器を持ち上げてなお且つ搬送することができ、搬送に必要とされる機器の簡略化を図ることができる。また、エアパレットを挿入するエアパレット挿入口の大きさを架台の大きさに応じて適宜変更することができ、エアパレットの能力に応じた設計を自由に行うことができる。
【0092】
請求項11記載の発明によれば、放射性物質保管容器をエアパレットのみで持ち上げて搬送することができる。また、放射性物質保管容器を貯蔵施設内の定位置に容易に設置することができる。
【0093】
請求項12記載の発明によれば、放射性物質保管容器をエアパレットのみで持ち上げて搬送することができる。また、放射性物質保管容器を床面からごく僅かに浮かせて搬送することになるので、搬送時の重心高を低く抑えて安定した搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放射性物質保管容器に係る第1の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図2】本発明の放射性物質保管容器に係る第2の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図3】本発明の放射性物質保管容器に係る第3の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図4】本発明の放射性物質保管容器に係る第4の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図5】第4の実施形態の変形例を説明する放射性物質保管容器であるコンクリートキャスクの部分断面斜視図である。
【図6】本発明の放射性物質保管容器に係る第5の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図7】本発明の第6の実施形態における貯蔵施設の概略構成を説明する図であって、(a)は貯蔵施設の床面構造を説明する斜視図、(b)(a)の断面図である。
【図8】第6の実施形態の変形例を説明する貯蔵施設の概略構成を説明する図であって、(a)は貯蔵施設の床面構造を説明する斜視図、(b)(a)の断面図である。
【符号の説明】
10 コンクリートキャスク(放射性物質保管容器)
11 キャスク本体
13 空気導入口(空気口)
16 アングル材(突出部)
18,18’ 凹所
19 架台
19a エアパレット挿入口
20 キャニスタ(金属製密閉容器)
50 油圧ジャッキ(揚げ装置)
60 キャスク用吊具
70 エアパレット
80 置き台
82 エアパレット挿入溝
92 エアパレット移動溝
E 放射性物質
F 床面
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射性物質を収容して保管する放射性物質保管容器の搬送方法及び放射性物質保管容器並びに貯蔵施設に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所において発生した放射性物質は、キャスク(放射性物質保管容器)と呼ばれる専用の容器に所定の体数毎に収納される。このように放射性物質を収納したキャスクは、これら放射性物質が再処理に供されるまでの間、その内部に放射性物質を収納したまま貯蔵施設に貯蔵される。
なお、ここに言う放射性物質とは、使用済み核燃料集合体、再処理プラントにおける高レベル放射性廃棄物ガラス固化体等も含まれるものである。
【0003】
上述したキャスクは、放射性物質が発する放射線を遮蔽する必要があるため、分厚いコンクリート層、又は分厚い金属層とともに中性子遮蔽体が設けられた構成が一般的である。このため、キャスクは100t、さらには200tを超えるような重量物ともなりうり、これを貯蔵施設内で搬送するためには多くの労力が必要とされている。
【0004】
さて、このような、キャスクの種類としては、金属材料を主に用いつつレジン材などの中性子遮蔽体を適所に配置した金属製の金属キャスク(放射性物質保管容器)と、コンクリートを遮蔽材として用いたコンクリート製のコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)とがある。
【0005】
金属キャスクは、この外周部上側に吊り上げを可能とするトラニオンと呼ばれる吊り部が少なくとも一対備わり、貯蔵施設に備えられたクレーン等による吊り上げ搬送を可能とした構造であることが一般的である(例えば、特許文献1参照。)
【0006】
コンクリートキャスクは、内部空間に面する金属板(「ライナ」とも呼ばれる。)よりも外側にコンクリート層を配した構造とされており、容積の大部分がコンクリートで占められている。このため、金属キャスクに備えられるトラニオンなどの吊り部を設けにくく、設けた場合であっても補強を施すことにより重量増大が懸念される。このことは、コンクリートの脆性が大きいために、トラニオン等を設けるには周囲の剛性確保を多大に必要とするからである。
【0007】
コンクリートキャスクの構造及び構成について簡単に説明すると、この内部空間は、キャニスタと呼ばれる放射性物質を封入する金属製密閉容器を収納可能に構成されている。そして、このコンクリートキャスクの外周部の上側と下側とには、上記内部空間に繋がる空気口が複数箇所設けられており、流入した空気により放射性物質によって加熱されたキャニスタを除熱可能としている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
さて、このようなキャスクを貯蔵施設内で搬送する方法としては、上述したように貯蔵施設に備えられたクレーンで搬送を行うことが一般的であることを説明したが、近年、エアパレットを用いたキャスクの搬送方法が検討されている。
【0009】
エアパレットの構造について簡単に説明すると、フレームに取り付けられたダイアフラム等に圧縮空気を供給するとともに、ダイアフラム等の下面に形成した穴から内部の空気を吹き出して床面との間に空気膜を形成し、浮上させることでエアパレットのフレーム上に載置された重量物を搬送する装置である。上記空気膜が形成されることによって、床面との摩擦係数は約1/1000程度まで小さくなり、床面に損傷を与えることなく非常に小さな力で重量物を容易に運搬することができる。
なお、エアパレットの構成は、1つのフレームに複数のダイアフラムを備えて構成されるものであったり、複数のダイアフラムを備える複数のフレームを組み合わせて構成されるものであったり多様な構成がある。
【0010】
そして、このようなエアパレットによるキャスク搬送を行うことによれば、貯蔵施設にクレーン等の大型荷役機械を設置する必要がなくなり、クレーンを設置するための強度と形状とを貯蔵施設に確保する必要がなくなって設備コストを低減できる利点がある。また、クレーンから垂下された吊りロープをキャスクに掛ける玉掛け作業が不要となり、作業性の向上を図ることができ、さらには吊りロープの破断によって生じるキャスクの転倒などを回避することができる。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−26497号公報(第3−第5段落、第11図)
【特許文献2】
特開2002−71896号公報(第20−26段落、第1図)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したエアパレット等に重量物であるキャスクを載置するためには、エアパレットをキャスクの下方に配置する必要がある。これを解決する方法としては、クレーンで持ち上げることが容易に推測できるが、上述したようなエアパレット等を用いる利点がクレーンの設置によって損なわれることになり、最良な手段とは言い難い。
また、脆性破壊しやすいコンクリートキャスクに対して最も適した搬送方法については未だ検討がなされている段階であり、このことに対する有効な解決策は見いだされていない。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、エアパレット等を用いた放射性物質保管容器の搬送の最適化を導き出すとともに、この放射性物質保管容器の特性に適した搬送方法を得る放射性物質保管容器の搬送方法及び放射性物質保管容器並びに貯蔵施設を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
請求項1に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器の搬送方法であって、前記放射性物質保管容器の外周部下側に設けられた複数の突出部に対して押し上げ力を与え、前記射性物質保管容器を持ち上げた後に該放射性物質保管容器の下方にエアパレット又は台車を挿入し、前記エアパレット又は前記台車上に前記放射性物質保管容器を載置して搬送することを特徴とする。
【0015】
このような搬送方法によれば、放射性物質を遮蔽する構造を有するために比較的重量物とされた放射性物質保管容器は、各突出部に与えられた押し上げ力によって持ち上げられることになる。そして、放射性物質保管容器の下方に隙間が得られることで、ダイアフラム内に供給した空気により床面との間に空気膜を形成するエアパレット等の挿入が可能となる。そして、エアパレット又は同様に挿入された台車により放射性物質保管容器の重量が支えられると、水平方向に僅かな力を加えるだけで放射性物質保管容器を移動させることが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の放射性物質保管容器の搬送方法において、前記放射性物質保管容器が放射性物質を格納する金属製密閉容器を収容するコンクリート製の容器とされ、これに備わる前記突出部に、クレーンから垂下された吊りロープを掛止して持ち上げ、該クレーン、あるいは持ち上げられた前記放射性物質保管容器の下方に挿入したエアパレット又は台車に該放射性物質保管容器を載置して搬送することを特徴とする。
【0017】
このような搬送方法によれば、ほぼコンクリート製とされた放射性物質保管容器をクレーンによって持ち上げることができ、持ち上げた状態のままクレーンを用いて搬送すること、あるいは持ち上げられた放射性物質保管容器の下方にエアパレットあるいは台車を挿入することにより、多大な力を必要としないで放射性物質保管容器を搬送することができる。特に、コンクリート製の放射性物質保管容器は重く、且つ強度的にもろいために吊り上げることが困難であるが、外周部下側に設けた突出部を介して持ち上げるため、放射性物質保管容器の胴体部分には多大な荷重が作用せず、簡易な補強でコンクリートの脆性破壊を回避して持ち上げることが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の放射性物質保管容器の搬送方法において、前記吊りロープが、前記放射性物質保管容器の上部にて左右方向の移動が規制されていることを特徴とする。
【0019】
このような搬送方法によれば、放射性物質保管容器の重心より下側を支点として持ち上げることによって発生する放射性物質保管容器の傾きが、放射性物質保管容器上部における吊りロープの規制によって制限されることになり、放射性物質保管容器の転倒などを回避して安定な状態で持ち上げられることになる。
なお、吊りロープを規制する方法としては、例えば、放射性物質保管容器の上部に該吊りロープを誘導するための溝を設けることや、放射性物質保管容器の上面の大きさに合わせた吊具を配置して該吊具から各突出部まで配された吊りロープで放射性物質保管容器を挟み込む方法などが例として挙げられる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器の搬送方法であって、前記放射性物質保管容器の外周部に形成された複数の凹所に対して押し上げ力を与え、前記放射性物質保管容器を持ち上げた後に該放射性物質保管容器の下方にエアパレット又は台車を挿入し、前記エアパレット又は前記台車上に前記放射性物質保管容器を載置して搬送することを特徴とする。
【0021】
このような搬送方法によれば、放射性物質を遮蔽する構造を有するために比較的重量物とされた放射性物質保管容器は、各凹所に与えられた押し上げ力によって直接的に持ち上げられることになる。そして、放射性物質保管容器の下方に隙間が得られることで、ダイアフラム内に供給した空気により床面との間に空気膜を形成するエアパレットや台車の挿入が可能となる。そして、エアパレットや台車により放射性物質保管容器の重量が支えられると、水平方向に僅かな力を加えるだけで放射性物質保管容器を移動させることが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器の搬送方法であって、前記放射性物質保管容器は、下部にエアパレット挿入口を有する架台を備え、前記エアパレット挿入口にエアパレットを挿入して床面より浮上させ前記放射性物質保管容器を搬送することを特徴とする。
【0023】
これにより、架台にエアパレットが挿入されることによって放射性物質保管容器は床面から浮き上がり、水平方向の加えられた僅かな力で移動することができる。そして、エアパレットの機能が停止すると、放射性物質保管容器は架台とともに現状の位置に着地することになる。なお、架台は放射性物質保管容器と一体に形成されるものであってもよいし、組み合わされて備えられるものであってもよい。
【0024】
請求項6に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器であって、この外周部下側には、略垂直方向の押し上げ力を受け止める複数の突出部が設けられていることを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、放射性物質を遮蔽する構造を有するために比較的重量物とされた放射性物質保管容器は、この外周部下側に設けられた各突出部が押し上げ力を受けることによって破損することなく持ち上げられることになる。そして、放射性物質保管容器の下方に隙間が得られることによれば、該放射性物質保管容器の搬送手段となる例えばエアパレットや台車等を容易に挿入することが可能となる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の放射性物質保管容器において、前記突出部が外周部に対して着脱自在に取り付けられたリブ構造を有するアングル材によって形成されていることを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、例えば、エアパレット等を放射性物質保管容器の下方に挿入した段階でアングル材を取り外すことが可能となり、該アングル材を放射性物質保管容器の外周部から取り外すことによれば、放射性物質保管容器の外周部がほぼ平坦となる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の放射性物質保管容器において、内部空間と外界とを連通して空気を導通させる空気口が外周部に備えられてなり、前記アングル材は、該空気口に挿入して取り付けられることを特徴とする。
【0029】
これにより、放射性物質保管容器の内部空間に繋がる空気口にアングル材が挿入されることで該アングル材の取り付けがほぼ完了し、アングル材が受けた押し上げ力は、空気口を介して放射性物質保管容器に伝達されてこの重量を支え持ち上げることになる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器であって、この外周部下側には、略垂直方向の押し上げ力を受け止める複数の凹所が形成されていることを特徴とする放射性物質保管容器。
【0031】
このような構成によれば、放射性物質を遮蔽する構造を有するために比較的重量物とされた放射性物質保管容器は、この外周部下側に形成された各凹所が押し上げ力を受けることによって直接的に持ち上げられることになる。そして、放射性物質保管容器の下方に隙間が得られることによれば、放射性物質保管容器の搬送手段となる例えばエアパレットや台車等を容易に挿入することが可能となる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器であって、この下面には、下部にエアパレット挿入口を有する架台が備えられていることを特徴とする放射性物質保管容器。
【0033】
このような構成によれば、架台の下部に設けられたエアパレット挿入口にエアパレットが挿入されることによって放射性物質保管容器は床面から浮き上がり、水平方向の加えられた僅かな力で移動することが可能となる。そして、エアパレットの機能が停止すると、架台を有する放射性物質保管容器は現状の位置に着地することになる。なお、架台は、放射性物質保管容器と一体に形成されて備えられるものであってもよいし、それぞれが組み合わされて備えられるものであってもよい。
【0034】
請求項11に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器を貯蔵保管する貯蔵施設であって、放射性物質保管容器を載置するための置き台が床面に備えられてなり、該置き台は、放射性物質保管容器を載置する位置に合わせて形成されたエアパレット挿入溝を有するとともに、この高さ寸法が、機能停止時のエアパレットの高さよりも大きく動作時のエアパレットの高さよりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0035】
このような構成によれば、貯蔵施設の床面を移動可能とされたエアパレットを置き台に形成された床面と同一平面を有するエアパレット挿入溝に挿入することにより、放射性物質保管容器の下方にエアパレットを配置することができる。そして、エアパレットを動作させるべくエアを供給することによれば、放射性物質保管容器はエアパレットによって置き台から持ち上げられることになり、エアパレットの移動に合わせて搬送されることになる。
【0036】
請求項12に記載の発明は、放射性物質が収容される放射性物質保管容器を貯蔵保管する貯蔵施設であって、放射性物質保管容器の下面寸法よりも幅が狭いエアパレット移動溝が床面に形成されてなり、該エアパレット移動溝の深さは、機能停止時のエアパレットの高さよりも大きく動作時のエアパレットの高さよりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0037】
このような構成によれば、貯蔵施設の床面に形成されたエアパレット移動溝に沿ってエアパレットは移動することになり、このエアパレット移動溝に沿って設置された、あるいは設置される放射性物質保管容器は、エアパレットの動作によって床面から浮き上がるように持ち上げられる。そして、持ち上げられた放射性物質保管容器は、エアパレット移動溝に沿って搬送されることになる。
【0038】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る各実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
このコンクリートキャスク10は、キャニスタ20(金属製密閉容器)を収納する円柱状の収納スペース(内部空間)を形成して底部が閉じられた円筒形状のキャスク本体11と、キャニスタ20を出し入れするための上部開口を塞ぐ蓋体12とによって構成されている。
【0039】
キャスク本体11は、各金属板11a(内鋼板110、外鋼板111)及びコンクリート層11bによって構成され、収納スペースを形成する内外周面に金属板11aが貼り付けられたコンクリート製となっている。そして、キャスク本体11の底部には、剛性を確保するための支持部材15がコンクリート層の内部に位置して備えられている。
蓋体12は、金属板12a及びコンクリート層12b等によって構成され、キャニスタ20の二次蓋23と対向する底面を除くコンクリート層12bの周囲に金属板12aが貼り付けられたコンクリート製となっている。
【0040】
また、キャニスタ20が収容される収納スペース内を自然通気によって対流冷却するため、キャスク本体11の外周部下側には冷却空気を導入する空気導入口13(空気口)が複数箇所に設けられている。この空気導入口13から導入された冷却空気は、屈曲した流路を経て底面から収納スペース内に入り、キャニスタ20の側面に沿って上昇した後、キャスク本体11と蓋体12との間に屈曲して形成された流路を経て、外周部上側にて開口する複数の空気排出口14から外部へ流出する。この結果、コンクリートキャスク10の収納スペース内は、冷却空気として導入した外気の自然通気によって換気・冷却される。
【0041】
コンクリートキャスク10の収納スペース内に収納されるキャニスタ20は、多数の放射性物質Eをバスケット25に挿入した状態で収納保持し、ヘリウムガスが注入されるとともに各蓋体21,22,23が嵌め込まれて溶接されることで密閉される。ここで注入されるヘリウムガスは、放射性物質Eの冷却促進を目的としており、このヘリウムガスにより熱伝導性が向上して対流による冷却効率が高められる。
バスケット25は、格子状断面を有する放射性物質Eの保持容器であり、各格子毎に1本の放射性物質Eを収納して保持する機能を有している。
【0042】
さらに、本発明の特徴をなす構成について説明すると、上述したキャスク本体11の底部に配された支持部材15の端部にはリブ構造を有するアングル材16が上述した支持部材15の配置に合わせて取り付けられている。このアングル材16と支持部材15とはボルト等の固定手段によって着脱自在に取り付けられており、支持部材15の端部に取り付けられることで、キャスク本体11の外周面よりも突出した突出部を形成している。
【0043】
このように構成されたコンクリートキャスク10の搬送方法について説明する。図に示すように、油圧ジャッキ50(揚げ装置)をアングル材16の下方にそれぞれ配置し、油圧ジャッキ50を動作させることでアングル材16に下方から上方に向かう垂直方向の押し上げ力を与える。この際、各油圧ジャッキ50の動作をストロークセンサによって常時確認し、全てが同一な動作である場合に限って動作を継続するように制御する。
【0044】
なお、油圧ジャッキ50の動力源となる油圧ポンプ(図示せず)は、複数ある油圧ジャッキ50の全てに共通して作動油を供給するものとし、また、該油圧ポンプから各油圧ジャッキ50に繋がる油圧回路は並列に組まれている。これにより、複数の油圧ジャッキ50が均一に動作することとなり、コンクリートキャスク10は傾くことなく水平に持ち上げられることになる。
【0045】
したがって、コンクリートキャスク10は、押し上げ力を受けたアングル材16を介し床面に置かれた状態から油圧ジャッキ50の性能の範囲内で持ち上げられることになる。そして、コンクリートキャスク10の下方に隙間が得られた段階で図示しないエアパレットを挿入し、エアパレットを起動することにより、油圧ジャッキ50に変えてエアパレットでコンクリートキャスク10を支持する。なお、エアパレットでコンクリートキャスク10を支持した段階で油圧ジャッキ50を取り外す、あるいは縮小する。この結果、水平方向に僅かな力を加えるだけで200t近くあるコンクリートキャスク10を移動することが可能となり、手動、あるいは牽引車等を用いてキャスク搬送を開始する。
【0046】
そして、貯蔵施設内の目標地点までコンクリートキャスク10を移動させ、エアパレットで浮上させた状態のまま再び油圧ジャッキ50をアングル材16の下方に配置し、油圧ジャッキ50に作動油を供給するとともにエアパレットの機能を停止させる。これにより、コンクリートキャスク10は油圧ジャッキ50に支持されることとなり、油圧ジャッキ50を縮小することによれば、コンクリートキャスク10は目標位置である貯蔵位置に設置されることになる。
【0047】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスク10の搬送方法によれば、クレーンでの吊り上げによる搬送以外の搬送方法を、揚げ装置とされた油圧ジャッキ50とエアパレットとで容易に実現することができる。特に、コンクリートキャスク10においてはクレーン用の吊り部(トラニオン等)を強度面から設けることが、構造上、あるいは重量増大の要因となりうるために困難であった。しかし、コンクリートキャスクの剛性確保を担う支持部材15に取り付けたアングル材16を介して持ち上げ、エアパレットを挿入し搬送することができるので、コンクリートキャスク10の補強等を多く必要としないことで重量の増大を回避することができる。
【0048】
また、コンクリートキャスク10の外周面よりも外側にアングル材16が位置して油圧ジャッキ50が配置されるので、比較的大きいエアパレットを油圧ジャッキ50等に干渉させえることなくスムーズに挿入することができる。すなわち、能力の高いエアパレットを選択することができる。
また、アングル材16は取り外し可能とされているので、搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多くのコンクリートキャスク10を設置することができる。
【0049】
なお、本実施形態において説明した油圧ジャッキ50は、本発明に係る揚げ装置の一例を示したものであって、必ずしも油圧式に限定されるものではないが、油圧式であれば押し上げ力を最も効果的に得ることができる。また、この油圧ジャッキの大きさが幅寸法(直径方向)で100〜200mm、高さ寸法で200〜400mmであり、揚げ装置としてコンパクトに設置することができる。
【0050】
そして、その他の揚げ装置として例に挙げるならば、エア方式や、ねじ回転式のジャッキ等であってもよい。
また、本実施形態においては、本発明に係るキャスクとしてコンクリート製のコンクリートキャスク10について説明したが、金属キャスクについても上述した構成及び搬送方法を用いることとしてもよい。
【0051】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る第2の実施形態について図2を用いて説明する。図2は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
なお、図に示すコンクリートキャスク10は、図1に示した第1の実施形態におけるコンクリートキャスク10に比較してアングル材16の働きが異なるので、この点について詳しく説明するものとし、その他の構成については同様であるのでその説明を一部省略する。また、コンクリートキャスク10の搬送方法が第1の実施形態と異なるので、以下に説明するものとする。
【0052】
図2に示されるリブ構造を有するアングル材16は、クレーンから垂下されたキャスク用吊具60の一構成要素とされたワイヤーロープ65の下端を掛止する役目を担っており、キャスク本体11の外周部下側に位置して着脱自在に設けられている。
【0053】
図に示されるキャスク用吊具60の構成について説明する。符号61は本体部、62はクレーンから垂下されたフックが掛けられる吊り環、63は支持ロープ、64は支持ロープ63及び後述する第2支持ロープ65の左右方向の移動を拘束する拘束部材、65は一端がアングル材16に掛止される第2支持ロープを示している。なお、支持ロープ63及び第2支持ロープ65のそれぞれは、クレーンから垂下される吊りロープと同様にコンクリートキャスク10を吊り上げる役目を担って備えられるものである。すなわち、本発明に係る吊りロープを指すものである。
【0054】
本体部61は、この形状が厚みを有する円盤状に形成されており、上面には吊り環62を装着するための取手部61aが備えられている。また、本体部61の外周部には、コンクリートキャスク10の蓋体12の半径寸法と同等な長さを有する複数の支持ロープ63が均等な間隔で接続されている。
また、支持ロープ63の各々は、他端でコンクリートキャスク10の上側角部に密着する拘束部材64に接続されている。さらに、これら拘束部材64は各アングル材16に繋がる第2支持ロープ65に接続されている。
したがって、支持ロープ63及び第2支持ロープ65は拘束部材64によって左右方向の移動が規制されることになる。また、支持ロープ63及び第2支持ロープ65がキャスク本体11を囲むように挟み込むことで、コンクリートキャスク10の傾きが防止されている。
【0055】
このように構成されたコンクリートキャスク10の搬送方法について説明する。図に示すように、各アングル材16にキャスク用吊具60の第2支持ロープ65をそれぞれ取り付け、該キャスク用吊具60をクレーンによって吊り上げることで、コンクリートキャスク10を床面に設置された状態から持ち上げる。そして、該クレーンの操作でコンクリートキャスク10の搬送を行い、貯蔵位置でクレーンのフックを巻き下げてコンクリートキャスク10を着地させる。
【0056】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスク10の搬送方法によれば、クレーンでの吊り上げによる搬送が困難とされたコンクリートキャスク10を吊り上げ位置の変更によってクレーンで搬送することができる。そして、コンクリートキャスク10の補強等を多く必要としないことにより重量の増大を回避することができる。また、重心よりも下側で持ち上げる搬送方法であっても、支持ロープ63、第2支持ロープ65、及び拘束部材64によってキャスク本体11を挟み込むことで、安定した搬送を実現することができる。
【0057】
[第3の実施形態]
次に、本発明に係る第3の実施形態について図3を用いて説明する。図3は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
なお、図に示すコンクリートキャスク10は、図1に示した第1の実施形態におけるコンクリートキャスク10に比較してアングル材16の形状及び取り付け位置が異なるので、この点について詳しく説明するものとし、その他の構成については同様であるので説明を一部省略する。また、コンクリートキャスク10の搬送方法については第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0058】
図に示すように、キャスク本体11の外周部下側にて突出部を形成するリブ構造を有するアングル材16は、この下部が直角に折り曲げられ、且つ鋼板で補強された挿入部13aを有しており、この挿入部13aが空気導入口13(空気口)に挿入された状態でキャスク本体11に側面にボルト止めによって着脱自在に取り付けられる。内鋼板110と結合する13のリブは折れ曲がっているため内鋼板110からのリブ強度が小さくなる。
そこで、空気導入口13は、アングル材16の挿入に合わせて補強がなされ、揚げ装置をなす油圧ジャッキ50から受ける押し上げ力を強固に受け止める構造とされている。
【0059】
そして、上記アングル材16のそれぞれの下方に油圧ジャッキ50等を配置して持ち上げ、持ち上げられたコンクリートキャスク10の下方に図示しないエアパレットを挿入してコンクリートキャスク10を載置する。そして、エアパレットによる搬送によってコンクリートキャスク10を貯蔵位置まで搬送する。
【0060】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスク10の搬送方法によれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることができるとともに、アングル材16の取り付け構造の簡易化して油圧ジャッキ50等の押し上げ力を受ける突出部を容易に形成することができる。
【0061】
[第4の実施形態]
次に、本発明に係る第4の実施形態について図4を用いて説明する。図4は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
なお、図に示すコンクリートキャスク10は、図1に示した第1の実施形態におけるコンクリートキャスク10に比較して外周部下側の構造が異なるので、この点について詳しく説明するものとし、その他の構造及び構成については同様であるので説明を一部省略する。また、コンクリートキャスク10の搬送方法については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0062】
キャスク本体11の外周部下側には、油圧ジャッキ50が挿入される複数の凹所18が形成されており、油圧ジャッキ50から出力される押し上げ力を受け止めることが可能とされている。
【0063】
したがって、コンクリートキャスク10は、各凹所18が受けた押し上げ力を直接的に受けて持ち上げられることになり、コンクリートキャスク10の下方に隙間が得られることによれば、搬送手段となるエアパレット等を容易に挿入することが可能となる。
【0064】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスク10の搬送方法によれば、コンクリートキャスク10を容易に持ち上げてエアパレットを挿入し搬送することができる。また、コンクリートキャスク10の外側に突出した部分がないので、搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多くのコンクリートキャスク10を設置することができる。
【0065】
なお、本実施形態の変形例として、以下に説明する場合であってもよい。図5は本実施形態における変形例を示したコンクリートキャスクの部分断面斜視図である。
図に示すように、本変形例におけるコンクリートキャスク10の外周部下側には、空気導入口13を貫通するように形成された複数の凹所18’が形成されており、油圧ジャッキ50等を挿入して配置させることが可能とされている。
【0066】
このようなコンクリートキャスク10の構成及び搬送方法によれば、上述した実施形態と同様な効果が得られるとともに、コンクリートキャスク10の構造の簡略化を得ることができる。なお、油圧ジャッキ50を挿入する凹所18を形成することで外界に対する中性子等の遮蔽性が損なわれる場合には、必要に応じて各凹所18の周囲に中性子遮蔽体を配することが望ましい。
【0067】
[第5の実施形態]
次に、本発明に係る第5の実施形態について図6を用いて説明する。図6は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)の構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
なお、図に示すコンクリートキャスク10は、図1に示した第1の実施形態におけるコンクリートキャスク10に架台19が追加して備えられたものであり、この点について詳しく説明するものとし、その他の構造及び構成については同様であるので説明を一部省略する。
【0068】
コンクリートキャスク10とともに構成された架台19は、下部にエアパレット70を挿入するためのエアパレット挿入口19aを有して形成されており、この高さは、動作時のエアパレット70の高さよりも小さく、且つ、機能停止時のエアパレットの高さよりも大きく設定されている。また、このエアパレット挿入口19aは、架台19の相対する側面まで貫通するように形成されて備えられるものである。
【0069】
架台19の下部にエアパレット挿入口19aが備わることで、この架台19は両側及び中央に配された長尺な設置部19bによって床面と接触し、これら設置部19bによってコンクリートキャスク10の重量が支えられることになる。また、中央の設置部19bは、架台19の強度を高めるために備えられるものでもある。
【0070】
架台19にエアパレット70が挿入されることによって、架台19を有するコンクリートキャスク10は床面から浮き上がり、水平方向の加えられた僅かな力で移動する。そして、エアパレット70の機能が停止すると、コンクリートキャスク10は現状の位置に着地することになり、エアパレット70を架台19から取り外すことも可能となる。
【0071】
なお、図に示すエアパレット70は、各フレーム72にダイアフラム71が2つづつ取り付けられた場合を示しているが、左右のフレーム72同士は紙面手前側にて接続(図示せず)されており、ダイアフラム71の位置関係が常に一定とされることで搬送時の安定性が確保されている。
【0072】
このようなコンクリートキャスク10及びコンクリートキャスクの搬送方法によれば、下部にエアパレット挿入口19aを有する架台19にエアパレット70を挿入することで重量物であるコンクリートキャスク10を持ち上げ、且つ搬送することができ、搬送に関わる機器をエアパレット70に限定することで搬送用の機器の簡略化、及び作業性の向上を図ることができる。また、架台19の大きさに応じてエアパレット70を適宜選択することができ、搬送能力を容易に増大させることができる。
【0073】
[第6の実施形態]
次に、本発明に係る第6の実施形態について図7を用いて説明する。図7は本実施形態におけるコンクリートキャスク(放射性物質保管容器)を貯蔵する貯蔵施設の概略構成を説明する図であって、(a)は貯蔵施設の床面構造を説明する斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【0074】
貯蔵施設の床面Fには、コンクリートキャスク10を載置するための置き台80が設置されており、該置き台80には、コンクリートキャスク10を載置する位置に合わせてエアパレット70を挿入するためのエアパレット挿入溝82が形成されている。この置き台80の高さ寸法は、機能停止時のエアパレットの高さよりも大きく動作時のエアパレットの高さよりも小さく設定されている。また、エアパレット挿入溝82は、1つのコンクリートキャスク10に対して2カ所設けられており、これらエアパレット挿入溝82は、コンクリートキャスク10の中央部を支持する中央支持部81を挟んで配置されている。
【0075】
このように構成された貯蔵施設における搬送方法を説明すると、貯蔵施設の床面Fを移動可能とされたエアパレット70を、置き台80に形成された床面Fと同一平面を有するエアパレット挿入溝82に挿入する。これにより、コンクリートキャスク10の下方にエアパレット70がコンクリートキャスク10の移動を行わずとも配置される。そして、エアパレット70を動作させるべくエアを供給することによれば、コンクリートキャスク10はエアパレット70によって置き台80から持ち上げられることになり、エアパレット70の移動に合わせて搬送されることになる。
【0076】
以上説明した本実施形態の構成及び搬送方法によれば、コンクリートキャスク10をエアパレット70のみで持ち上げて搬送することができる。また、コンクリートキャスク10を貯蔵施設内の定位置に容易に設置することができる。
【0077】
なお、本実施形態の変形例として以下に説明することであってもよい。図8は本実施形態の変形例を説明する貯蔵施設の概略構成を示した図であって、(a)は貯蔵施設の床面構造を説明する斜視図、(b)は(a)の断面図である。
【0078】
貯蔵施設の床面Fには、コンクリートキャスク10の下面の外径寸法の半分よりも狭いエアパレット移動溝92が1つのコンクリートキャスク10に対して2本づつ形成され、これらエアパレット移動溝92の深さは、機能停止時のエアパレット(図示せず)の高さよりも大きく動作時のエアパレットの高さよりも小さく設定されている。そして、これらエアパレット移動溝92はコンクリートキャスク10の搬入が開始される貯蔵施設の入口から各々のコンクリートキャスク10が設置される目標位置まで形成されており、複数のコンクリートキャスク10が通過する通路部分は、上記各エアパレット移動溝92が合流している。
【0079】
これにより、貯蔵施設の床面Fに形成されたエアパレット移動溝92に沿ってエアパレットは移動することになり、このエアパレット移動溝92に沿って設置、あるいは設置されるコンクリートキャスク10は、エアパレットの動作によって床面から浮き上がるように持ち上げられる。
【0080】
以上説明したことによれば、コンクリートキャスク10をエアパレットのみで持ち上げて搬送することができるとともに、搬送する際の高さが床面Fからごく僅かであるので、搬送時の重心高を低く抑えてコンクリートキャスク10の安定した搬送を行うことができる。
【0081】
なお、以上説明した各実施形態ではコンクリート製のコンクリートキャスク10を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、金属製の金属キャスクに用いることであってもよい。また、床面から持ち上げられたコンクリートキャスク10をエアパレットで搬送することを説明したが、エアパレットに替えて台車等を挿入し搬送することとしてもよい。
【0082】
【発明の効果】
以上説明した本発明の放射性物質保管容器の搬送方法及び放射性物質保管容器並びに貯蔵施設によれば以下の効果を奏する。
請求項1記載の発明によれば、放射性物質保管容器の外周部下側に設けた突出部に押し上げ力を与えて放射性物質保管容器を持ち上げることにより、この放射性物質保管容器の下方にエアパレット等を挿入し搬送を行うことができる。また、押し上げる位置が放射性物質保管容器の外側に位置しているため、比較的大きなエアパレット等を干渉なく円滑に挿入することができる。
【0083】
請求項2記載の発明によれば、突出部に吊りロープを掛止することで放射性物質保管容器を持ち上げることができ、コンクリート製の放射性物質保管容器における吊り上げ搬送を実現することができる。
【0084】
請求項3記載の発明によれば、放射性物質保管容器の下側の突出部を用いて持ち上げ、さらに搬送する際の放射性物質保管容器の安定性を十分に確保することができる。
【0085】
請求項4記載の発明によれば、放射性物質保管容器の外周部に形成した凹所に押し上げ力を与えて放射性物質保管容器を直接的に持ち上げることにより、この放射性物質保管容器の下方にエアパレット等を挿入し搬送を行うことができる。また、放射性物質保管容器の外側に突出した部分がないので、放射性物質保管容器の搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、放射性物質保管容器の設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多く収容することができる。また、押し上げ力に対する放射性物質保管容器の補強箇所を削減することができる。
【0086】
請求項5記載の発明によれば、下部にエアパレット挿入口を有する架台にエアパレットを挿入することで放射性物質保管容器を搬送を行うことができ、搬送に必要とされる機器の簡略化を図ることができる。
【0087】
請求項6記載の発明によれば、重量物である放射性物質保管容器を容易に持ち上げることが可能となり、搬送を可能とするエアパレットや台車等に容易に載せ替えることができる。また、放射性物質保管容器の外側で押し上げ力を受けることにより、持ち上げる際の安定性を高く確保することができる。
【0088】
請求項7記載の発明によれば、アングル材を放射性物質保管容器から適宜取り外すことができるので、搬送時や設置時における干渉を回避することができる。また、放射性物質保管容器の搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、放射性物質保管容器の設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多くの放射性物質保管容器を収容することができる。
【0089】
請求項8記載の発明によれば、アングル材の取り付け構造の簡易化して押し上げ力を受ける突出部を容易に形成することができる。
【0090】
請求項9記載の発明によれば、重量物である放射性物質保管容器を容易に持ち上げることが可能となり、搬送を可能とするエアパレットや台車等に容易に載せ替えることができる。また、放射性物質保管容器の外縁よりも内側で押し上げ力を直接受けることにより、強度を確保するための構造を簡略化することができる。また、放射性物質保管容器の外側に突出した部分がないので、放射性物質保管容器の搬送時や設置時における干渉を回避することができるとともに、放射性物質保管容器の設置間隔を詰めて貯蔵施設内により多く収容することができる。
【0091】
請求項10記載の発明によれば、エアパレット挿入口を有する架台にエアパレットを挿入することで放射性物質保管容器を持ち上げてなお且つ搬送することができ、搬送に必要とされる機器の簡略化を図ることができる。また、エアパレットを挿入するエアパレット挿入口の大きさを架台の大きさに応じて適宜変更することができ、エアパレットの能力に応じた設計を自由に行うことができる。
【0092】
請求項11記載の発明によれば、放射性物質保管容器をエアパレットのみで持ち上げて搬送することができる。また、放射性物質保管容器を貯蔵施設内の定位置に容易に設置することができる。
【0093】
請求項12記載の発明によれば、放射性物質保管容器をエアパレットのみで持ち上げて搬送することができる。また、放射性物質保管容器を床面からごく僅かに浮かせて搬送することになるので、搬送時の重心高を低く抑えて安定した搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放射性物質保管容器に係る第1の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図2】本発明の放射性物質保管容器に係る第2の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図3】本発明の放射性物質保管容器に係る第3の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図4】本発明の放射性物質保管容器に係る第4の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図5】第4の実施形態の変形例を説明する放射性物質保管容器であるコンクリートキャスクの部分断面斜視図である。
【図6】本発明の放射性物質保管容器に係る第5の実施形態のコンクリートキャスクの構成及び搬送方法の一部を説明する部分断面斜視図である。
【図7】本発明の第6の実施形態における貯蔵施設の概略構成を説明する図であって、(a)は貯蔵施設の床面構造を説明する斜視図、(b)(a)の断面図である。
【図8】第6の実施形態の変形例を説明する貯蔵施設の概略構成を説明する図であって、(a)は貯蔵施設の床面構造を説明する斜視図、(b)(a)の断面図である。
【符号の説明】
10 コンクリートキャスク(放射性物質保管容器)
11 キャスク本体
13 空気導入口(空気口)
16 アングル材(突出部)
18,18’ 凹所
19 架台
19a エアパレット挿入口
20 キャニスタ(金属製密閉容器)
50 油圧ジャッキ(揚げ装置)
60 キャスク用吊具
70 エアパレット
80 置き台
82 エアパレット挿入溝
92 エアパレット移動溝
E 放射性物質
F 床面
Claims (12)
- 放射性物質が収容される放射性物質保管容器の搬送方法であって、
前記放射性物質保管容器の外周部下側に設けられた複数の突出部に対して押し上げ力を与え、
前記放射性物質保管容器を持ち上げた後に該放射性物質保管容器の下方にエアパレット又は台車を挿入し、
前記エアパレット又は前記台車上に前記放射性物質保管容器を載置して搬送することを特徴とする放射性物質保管容器の搬送方法。 - 請求項1記載の放射性物質保管容器の搬送方法において、
前記放射性物質保管容器は、放射性物質を格納する金属製密閉容器を収容するコンクリート製の容器とされ、
前記突出部に、クレーンから垂下された吊りロープを掛止して持ち上げ、
該クレーン、あるいは持ち上げられた前記放射性物質保管容器の下方に挿入したエアパレット又は台車に該放射性物質保管容器を載置して搬送することを特徴とする放射性物質保管容器の搬送方法。 - 請求項2記載の放射性物質保管容器の搬送方法において、
前記吊りロープは、前記放射性物質保管容器の上部にて左右方向の移動が規制されていることを特徴とする放射性物質保管容器の搬送方法。 - 放射性物質が収容される放射性物質保管容器の搬送方法であって、
前記放射性物質保管容器の外周部に形成された複数の凹所に対して押し上げ力を与え、
前記放射性物質保管容器を持ち上げた後に該放射性物質保管容器の下方にエアパレット又は台車を挿入し、
前記エアパレット又は前記台車上に前記放射性物質保管容器を載置して搬送することを特徴とする放射性物質保管容器の搬送方法。 - 放射性物質が収容される放射性物質保管容器の搬送方法であって、
前記放射性物質保管容器は、下部にエアパレット挿入口を有する架台を備え、
前記エアパレット挿入口にエアパレットを挿入して床面より浮上させ前記放射性物質保管容器を搬送することを特徴とする放射性物質保管容器の搬送方法。 - 放射性物質が収容される放射性物質保管容器であって、
この外周部下側には、略垂直方向の押し上げ力を受け止める複数の突出部が設けられていることを特徴とする放射性物質保管容器。 - 請求項6記載の放射性物質保管容器において、
前記突出部は、該放射性物質保管容器の外周部に対して着脱自在に取り付けられたリブ構造を有するアングル材によって形成されていることを特徴とする放射性物質保管容器。 - 請求項7記載の放射性物質保管容器において、
内部空間と外界とを連通して空気を導通させる空気口が外周部に備えられてなり、
前記アングル材は、該空気口に挿入して取り付けられることを特徴とする放射性物質保管容器。 - 放射性物質が収容される放射性物質保管容器であって、
外周部下側には、略垂直方向の押し上げ力を受け止める複数の凹所が形成されていることを特徴とする放射性物質保管容器。 - 放射性物質が収容される放射性物質保管容器であって、
下面には、下部にエアパレット挿入口を有する架台が備えられていることを特徴とする放射性物質保管容器。 - 放射性物質が収容される放射性物質保管容器を貯蔵保管する貯蔵施設であって、
前記放射性物質保管容器を載置するための置き台が床面に備えられてなり、
該置き台は、前記放射性物質保管容器を載置する位置に合わせて形成されたエアパレット挿入溝を有するとともに、この高さ寸法が機能停止時の前記エアパレットの高さよりも大きく動作時の前記エアパレットの高さよりも小さく設定されていることを特徴とする放射性物質保管容器の貯蔵施設。 - 放射性物質が収容される放射性物質保管容器を貯蔵保管する貯蔵施設であって、
前記放射性物質保管容器の下面寸法よりも幅が狭いエアパレット移動溝が床面に形成されてなり、
該エアパレット移動溝の深さは、機能停止時のエアパレットの高さよりも大きく動作時の前記エアパレットの高さよりも小さく設定されていることを特徴とする放射性物質保管容器の貯蔵施設。
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JP2002350317A JP2004184183A (ja) | 2002-12-02 | 2002-12-02 | 放射性物質保管容器の搬送方法及び放射性物質保管容器並びに貯蔵施設 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009276194A (ja) * | 2008-05-14 | 2009-11-26 | Toden Kogyo Co Ltd | 放射線遮蔽用コンクリート組成物及びその打設装置並びに放射性廃棄物収容器 |
JP2013088205A (ja) * | 2011-10-14 | 2013-05-13 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 容器搬送システム、架台、搬送台車および容器搬送方法 |
JP2015087316A (ja) * | 2013-10-31 | 2015-05-07 | 三菱重工業株式会社 | 容器搬送システム及び架台の位置決め方法 |
-
2002
- 2002-12-02 JP JP2002350317A patent/JP2004184183A/ja active Pending
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