JP2009276194A - 放射線遮蔽用コンクリート組成物及びその打設装置並びに放射性廃棄物収容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い放射線遮蔽能力を均一に発揮することができる放射線遮蔽用コンクリート組成物及びその打設装置、並びに、その放射線遮蔽用コンクリート組成物を用いた放射性廃棄物収容器を提供すること。
【解決手段】セメントと、前記セメントに対して重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径100〜250μmの小鋼球群と、前記セメントに対して重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径600〜850μmの大鋼球群と、を含み、硬化後の密度が4.0g/cm3以上となる放射線遮蔽用コンクリート組成物(放射性廃棄物収容器の内缶7)である。
【選択図】図5
【解決手段】セメントと、前記セメントに対して重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径100〜250μmの小鋼球群と、前記セメントに対して重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径600〜850μmの大鋼球群と、を含み、硬化後の密度が4.0g/cm3以上となる放射線遮蔽用コンクリート組成物(放射性廃棄物収容器の内缶7)である。
【選択図】図5
Description
本発明は、放射線遮蔽用コンクリート組成物及びその打設装置、並びに放射線遮蔽用コンクリート組成物を用いた放射性廃棄物収容器に関する。
原子力発電所等から排出される高線量率の放射性廃棄物の処理方式として、放射性廃棄物を、厚い鉄板を丸めて溶接したもので遮蔽し、さらにドラム缶内に収容して密閉し、所定の処理施設で長期間保存することがある。
また、特許文献1には、細骨材として、ふるい呼び寸法2.5mm〜0.15mmのスチール細粒を用い、粗骨材として、丸鋼切断片又は砕石を用いた放射線遮蔽用の重量コンクリートが提案されている。特許文献1の第2図及び第3図を参照すると、ふるい呼び寸法2.5mmの粒度範囲は、3.36〜2.38mm(3360〜2380μm)であり、ふるい呼び寸法0.15mmの粒度範囲は、0.35mm〜0.177mm(350〜177μm)であるから、同文献の第1図、すなわち、ふるい目通過率図を参照すると、同文献の発明に係る重量コンクリートは、細骨材として、おおよそ、粒径が177μmの小さい粒子から、粒径が3360μmの大きな粒子までを満遍なく混合したものを用い、粗骨材として、さらにサイズが大きい丸鋼切断片等を用いるものである。
放射性廃棄物を、前述したように、鉄板を加工したもので遮蔽してドラム缶内に収容する処理方式によれば、鉄が硬い金属であるため、鉄板の加工に大変な手間とコストが掛かるという問題がある。なお、放射線遮蔽能力が高い鉛を用いた鉛毛マットは、鉛が柔らかい金属であるため、加工容易であるという利点がある。しかし、現在は、環境に配慮して、鉛フリーな処理方式が求められている。
また、特許文献1の発明のように、細骨材として、小さいスチール粒子から大きなスチール粒子までを満遍なく混合したものを用いて、放射線遮蔽能力が高い高密度の重量コンクリートを製造しようとする場合、このコンクリート組成物に水を添加して混練したモルタルを型枠に流す際に、モルタルの流動性が低く打設が困難となるという問題が生じたり、或いは、細骨材や粗骨材が均一に分散せず、硬化後の密度の位置によるバラツキが生じて、十分な放射線遮蔽能力が得られないという問題が生じたりするおそれがある。また、特許文献1の重量コンクリートは、非常に寸法が大きい粗骨材を用いているため、硬化後、粗骨材の在る位置と無い位置では、放射線遮蔽能力に大きな差が生じるという問題がある。
本発明の目的は、高い放射線遮蔽能力を均一に発揮することができる放射線遮蔽用コンクリート組成物及びその打設装置、並びに、その放射線遮蔽用コンクリート組成物を用いた放射性廃棄物収容器を提供することである。
本発明は、第1の視点において、セメントと、前記セメントに対して重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径100〜250μmの粉末状ないし球状の小鋼球群と、前記セメントに対して重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径600〜850μmの粉末状ないし球状の大鋼球群と、を含み、硬化後の密度が4.0g/cm3以上である放射線遮蔽用コンクリート組成物を提供する。
本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物においては、小さすぎる小鋼球を添加すると、モルタルの流動性の確保が困難となり、大きすぎる小鋼球を添加すると、大鋼球群の均一な分散が担保されない。また、小さすぎる大鋼球を添加すると、モルタルの保有水分量が小さくなり、大きすぎる大鋼球を添加すると、大鋼球群の均一な分散が担保されない。
本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物においては、硬化後の密度が4.0g/cm3以上となって高い放射線遮蔽能力を発揮し、かつ硬化後、鋼球が均一に分散するよう、セメントに対して、小鋼球群及び大鋼球群が前記所定の重量比で添加される。なお、セメントがポルトランドセメントである場合、その密度は約3.1g/cm3であり、鋼球が通常の炭素鋼である場合、その密度は約7.8g/cm3である。
本発明は、第2の視点において、本発明による放射線遮蔽用コンクリート組成物製であって放射性廃棄物を収容する内缶と、前記内缶が装填されて密閉される金属製の外缶と、を有する、放射性廃棄物収容器を提供する。
本発明は、第3の視点において、セメントと鋼球を少なくとも含み、水と混練された放射線遮蔽用コンクリート組成物を型枠に打設する装置であって、上部から下部に向かって徐々に縮径し、該上部に前記コンクリート組成物が投入される投入口、該下部に該コンクリート組成物が排出される排出口がそれぞれ設けられた漏斗状の材料投入機と、前記材料投入機の前記排出口に付設され、該排出口の流路断面積を可変することにより、該排出口から前記型枠内に供給される前記コンクリート組成物の流量を制御する流量制御器と、を有する放射線遮蔽用コンクリート組成物の打設装置を提供する。
(1)本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物は、十分な流動性をもった状態で、型枠に打設することができる。その理由は、小鋼球群に対して粒径が大きく保有水分量が多い大鋼球群を添加することにより、本発明の組成物を用いて作製されるモルタルの保有水分量が多くなって、モルタルの粘性が低下し、モルタルの流動性が確保されるからである。
(2)本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物は、硬化後の密度が位置によらず均一である。その理由は、打設時に、型枠内下方へ沈降し易い大鋼球群に対して、小さな粒径を有し沈降しにくい小鋼球群を添加することにより、モルタルの平均密度が高まり、大鋼球群の沈降が防止され、大鋼球群が均一に分散されるからである。
(3)本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物から、均一で密度が高く、放射線遮蔽能力が均一で高い放射線遮蔽体又は遮蔽容器が得られる。その理由は、上述したように、打設時、モルタルの流動性を確保しつつ、セメントに比べて2倍以上の比重を有する鋼球を多量に添加することができるため、及び、互いに特定の粒径を有する小鋼球群と大鋼球群を混合して用いることにより、硬化後の密度を位置によらず均一にすることができるため、である。
(4)本発明による放射線遮蔽用コンクリート組成物を用いた放射性廃棄物収容器は、密度が高く、かつ小鋼球及び大鋼球が均一に分布するため、高い放射線遮蔽能力を均一に発揮することができる。
(5)本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物の打設装置によれば、本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物を用いて作製されて密度を高めるため多量の鋼球を含むモルタルを打設する際、材料投入機及び流量制御器によって、打設するモルタルの流量ないし流速を制御することができるため、型枠内での大鋼球の沈降、鋼球同士の凝集を防止し、均一で密度が高く、結局、放射線遮蔽能力が均一で高い放射線遮蔽用コンクリート組成物を得ることができる。
(2)本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物は、硬化後の密度が位置によらず均一である。その理由は、打設時に、型枠内下方へ沈降し易い大鋼球群に対して、小さな粒径を有し沈降しにくい小鋼球群を添加することにより、モルタルの平均密度が高まり、大鋼球群の沈降が防止され、大鋼球群が均一に分散されるからである。
(3)本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物から、均一で密度が高く、放射線遮蔽能力が均一で高い放射線遮蔽体又は遮蔽容器が得られる。その理由は、上述したように、打設時、モルタルの流動性を確保しつつ、セメントに比べて2倍以上の比重を有する鋼球を多量に添加することができるため、及び、互いに特定の粒径を有する小鋼球群と大鋼球群を混合して用いることにより、硬化後の密度を位置によらず均一にすることができるため、である。
(4)本発明による放射線遮蔽用コンクリート組成物を用いた放射性廃棄物収容器は、密度が高く、かつ小鋼球及び大鋼球が均一に分布するため、高い放射線遮蔽能力を均一に発揮することができる。
(5)本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物の打設装置によれば、本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物を用いて作製されて密度を高めるため多量の鋼球を含むモルタルを打設する際、材料投入機及び流量制御器によって、打設するモルタルの流量ないし流速を制御することができるため、型枠内での大鋼球の沈降、鋼球同士の凝集を防止し、均一で密度が高く、結局、放射線遮蔽能力が均一で高い放射線遮蔽用コンクリート組成物を得ることができる。
本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物において、小鋼球群及び大鋼球群は、密度の均一性を確保するため、主として、球形、特に、真球状の鋼球から構成されることが好ましいが、工業上、粉末状の鋼球の混合を許容する。すなわち、本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物において、小鋼球群及び大鋼球群、特に、小鋼球群は粉粒を含んでもよい。
本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物に添加される小鋼球群及び大鋼球群には、形状の均一性の高い鋼球を用いることが好ましい。たとえば、炭素鋼製、又はその他の合金鋼製の鋼球を用いることができるが、コスト上は通常の炭素鋼製の鋼球を用いることが好ましいが、特に、放射線遮蔽能力をより高める場合には、より高密度の金属を含む球を添加してもよい。
本発明の好ましい実施の形態においては、小鋼球群及び大鋼球群として、粒径の均一性が高い鋼球群、すなわち、粒度分布が狭い鋼球群を用いる。好ましくは、小鋼球群として、中心粒度(鋼球の半数以上が存在する粒径範囲)が100〜250μmである小鋼球群、大鋼球として中心粒度が600〜850μmである大鋼球群を用いる。さらに好ましくは、小鋼球群として、粒径100〜250μmの小鋼球群、大鋼球として粒径600〜850μmの大鋼球群を用いる。
本発明の好ましい実施の形態においては、小鋼球群として、100〜250μmの粒径範囲に、70%以上、より好ましくは80%以上の鋼球が集中的に分布する鋼球群を用いる。好ましくは、大鋼球群として、600〜850μmの粒径範囲に、70%以上、より好ましくは80%以上の鋼球が集中的に分布する鋼球群を用いる。
なお、本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物は、工業上、上記粒径範囲以外の鋼球の存在を許容するが、小鋼球群及び大鋼球群の粒度分布はそれぞれ可及的に狭い方が好ましい。
本発明の好ましい実施の形態に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物は、セメントに対して、小鋼球群が重量比が1〜4の範囲で添加され、大鋼球群が重量比が1〜4の範囲で添加される。また、好ましくは、セメントに対する両者の合量が重量比で1.5以上、さらに好ましくは3以上であることにより、硬化後の密度が4.0g/cm3以上、さらに好ましくは5.0g/cm3以上である放射線遮蔽用コンクリート組成物が得られる。
本発明の放射線遮蔽用コンクリート組成物は、セメントとして、種々のセメントを用いることができる。好ましくは、高密度のポルトランドセメントを用いて、放射線遮蔽能力を高める。
本発明の好ましい実施の形態においては、硬化後、密度の位置による平均密度からの偏差が5%以内、さらに好ましくは2%以内である。この形態に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物は、放射線遮蔽能力の均一性が非常に高いため、高線量の放射性廃棄物収容器の材料として信頼性が高いものである。
本発明の好ましい実施の形態においては、JIS R 5201のモルタルフロー試験器を使用して無振動で測定した前記放射線遮蔽用コンクリート組成物のモルタルフロー値が、230〜250の範囲である。なお、通常、コンクリート組成物のモルタルフロー値は、300程度である。本発明においては、モルタルフロー値を通常のように高く設定すると、セメントと鋼球が分離する傾向があり、一方、モルタルフロー値を低くしすぎると流動性が低下して型枠への打設が困難となる。
本発明の好ましい実施の形態に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物は、前記セメント及び前記小鋼球群の合計の重量に対して0.2〜2%の範囲で添加される減水剤、特に高性能減水剤を含む。
本発明の好ましい実施の形態に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物は、前記セメント、前記小鋼球群及び前記大鋼球群の合計の重量に対して2〜5%の範囲で添加される減水剤、特に高性能減水剤を含む。
本発明の好ましい実施の形態に係るコンクリート組成物は、硬化後の密度が4.0g/cm3以上、さらに好ましくは、5.0g/cm3以上である、
本発明の好ましい実施の形態においては、鋼球として、可及的に真球に近いものを用いる。これによって、モルタルフロー値の設定が容易となり、又均一な設定密度を得ることが容易となる。
本発明による放射線遮蔽用コンクリート組成物に水を添加して混練し、得られたモルタルの性状を検証して、配合する鋼球の好ましい粒径を検討した。なお、セメントには、比重の大きいポルトランドセメント、減水剤には高性能減水剤であるポリカルボン酸エーテル系化合物を用いた。
[試験1]
小鋼球群のみを配合した放射線遮蔽用コンクリート組成物のモルタル性状を検証した。表1に、粒径30μm(呼び寸法)の小鋼球を用いた試料1と、粒径150μm(呼び寸法)の小鋼球群のみを用いた試料2のコンクリート組成及び測定結果をそれぞれ示す。
小鋼球群のみを配合した放射線遮蔽用コンクリート組成物のモルタル性状を検証した。表1に、粒径30μm(呼び寸法)の小鋼球を用いた試料1と、粒径150μm(呼び寸法)の小鋼球群のみを用いた試料2のコンクリート組成及び測定結果をそれぞれ示す。
原理的に、放射線遮蔽能力を高めるためには、コンクリート組成物の密度を高める必要がある。また、均一な放射線遮蔽能力を得るためには、コンクリート組成物に配合する鋼球の粒径を可及的に小さくすることが望ましい。
表1を参照すると、小鋼球群のみを用いた場合、多量の水分損失が発生し、モルタルの粘性が大きくなり過ぎ、打設が困難となることがわかった。モルタルの粘性を小さくして、その流動性を確保するためには、水及びセメント量を増加させればよいが、そうすると、密度の低下を招来し、放射線遮蔽能力が低下する。そこで、次に、鋼球群として、水分損失の小さい大鋼球群のみを配合した、放射線遮蔽用コンクリート組成物のモルタル性状を検証した。
[試験2]
大鋼球群のみが配合された放射線遮蔽用コンクリート組成物のモルタル性状を測定した。表2に、粒径700μm(呼び寸法)の大鋼球群を用いた試料3、4のコンクリート組成及び測定結果を示す。
大鋼球群のみが配合された放射線遮蔽用コンクリート組成物のモルタル性状を測定した。表2に、粒径700μm(呼び寸法)の大鋼球群を用いた試料3、4のコンクリート組成及び測定結果を示す。
表2を参照すると、保有水分量が多い大鋼球群のみを配合することにより、モルタルの粘性を小さくすることができた。しかし、モルタルにおいて、材料分離が発生し易く、又モルタルフロー値が低く、成型性に問題がある。
以上の試験1及び2の結果より、単一粒度の鋼球を配合するだけでは、所望するモルタル性状ないし放射線遮蔽能力を得ることができないと判断する。そこで、小鋼球群と大鋼球群の特定の組み合わせにより、モルタルフロー性等の改善を図ることにした。
[試験3]
小鋼球群と大鋼球群を組み合わせて配合した放射線遮蔽用コンクリート組成物のモルタル性状を検証した。表3に、試料5〜10のコンクリート組成及び測定結果を示す。
小鋼球群と大鋼球群を組み合わせて配合した放射線遮蔽用コンクリート組成物のモルタル性状を検証した。表3に、試料5〜10のコンクリート組成及び測定結果を示す。
表3を参照すると、粒径100μmオーダー付近の小鋼球群と、粒径600〜850μm付近の大鋼球群を複合して配合することにより、良好なモルタル特性を得ることができることがわかる。
[試験4]
モルタルを型枠に打設してコンクリート構造物を作製する場合、特に、サイズの大きいコンクリート構造物を作製する場合、大鋼球が沈降し易く、大鋼球が均一に分散し難いという問題がある。そこでまず、表4に示すとおり、粒度の異なる小鋼球群同士を組み合わせて、所望のモルタル特性を得ることが可能かどうか検証した。
モルタルを型枠に打設してコンクリート構造物を作製する場合、特に、サイズの大きいコンクリート構造物を作製する場合、大鋼球が沈降し易く、大鋼球が均一に分散し難いという問題がある。そこでまず、表4に示すとおり、粒度の異なる小鋼球群同士を組み合わせて、所望のモルタル特性を得ることが可能かどうか検証した。
表4を参照すると、大鋼球群を使用しない配合においては、粘性の高いモルタル性状になり、打設が困難となる。一方、水又はセメントの添加量を増加すると、粘性は低くなるが、密度が低下して放射線遮蔽能力が低下する。よって、大鋼球群と小鋼球群を共に配合しなければ、所望のモルタル性状及び放射線遮蔽能力を得ることができないと判断する。
[試験5]
小鋼球群及び大鋼球群が複合して配合されたコンクリート組成物において、表5に示すとおり、大鋼球群の粒径を変えて、好ましい大鋼球群の粒径範囲を検討した。
小鋼球群及び大鋼球群が複合して配合されたコンクリート組成物において、表5に示すとおり、大鋼球群の粒径を変えて、好ましい大鋼球群の粒径範囲を検討した。
表5を参照すると、大鋼球群の粒径を大きくし過ぎると、材料分離し易いモルタル性状となり、又モルタルフロー値が低く、成型性が低下することがわかる。
[試験6]
以上の試験結果より、平均粒径100〜250μm付近の小鋼球群と、平均粒径600〜850μm付近の大鋼球群を複合して配合することにより、良好なモルタル特性を得ることができることがわかった。次に、このように小鋼球群と大鋼球群を複合して配合したコンクリート組成物に水を添加して混練し、得られたモルタルを打設して、φ50×100mmのテストピースを作成した。さらに、テストピースを、軸方向に沿って4等分して、位置による密度のバラツキを検証した。コンクリート組成物の組成、小鋼球群及び大鋼球群の粒度分布、並びに密度の測定結果を、下記ないし表6に示す。
以上の試験結果より、平均粒径100〜250μm付近の小鋼球群と、平均粒径600〜850μm付近の大鋼球群を複合して配合することにより、良好なモルタル特性を得ることができることがわかった。次に、このように小鋼球群と大鋼球群を複合して配合したコンクリート組成物に水を添加して混練し、得られたモルタルを打設して、φ50×100mmのテストピースを作成した。さらに、テストピースを、軸方向に沿って4等分して、位置による密度のバラツキを検証した。コンクリート組成物の組成、小鋼球群及び大鋼球群の粒度分布、並びに密度の測定結果を、下記ないし表6に示す。
セメント:普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm3;
小鋼球群:比重7.8、粒径106〜250μmの間に80%以上の小鋼球が存在し、平均粒径及び中心粒度が100〜250μmの範囲にある;
大鋼球群:比重7.8、粒径600〜850μmの間に85%以上の大鋼球が存在し、
平均粒径及び中心粒度が600〜850μmの範囲にある;
減水剤:高性能減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物);
水:上水道水。
小鋼球群:比重7.8、粒径106〜250μmの間に80%以上の小鋼球が存在し、平均粒径及び中心粒度が100〜250μmの範囲にある;
大鋼球群:比重7.8、粒径600〜850μmの間に85%以上の大鋼球が存在し、
平均粒径及び中心粒度が600〜850μmの範囲にある;
減水剤:高性能減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物);
水:上水道水。
表6を参照して、テストピースの密度の位置によるバラツキは小さいから、小鋼球及び大鋼球が均一に分散していることが分かる。よって、本発明による放射線遮蔽用コンクリート組成物から、均一で高い放射線遮蔽能力を発揮する放射線遮蔽体を得られることが分かる。また、セメントに対する小鋼球群及び大鋼球群の添加量が重量比で、それぞれ1以上であること、好ましくは、セメントに対する両者の合量が重量比で1.5以上、さらに好ましくは3以上であることにより、硬化後の密度が4.0g/cm3以上、さらに好ましくは4.5g/cm3以上である放射線遮蔽用コンクリート組成物を得られることが分かる。なお、本試験において、モルタルフロー値は約210mmであり、若干低い値であった。
[試験7]
以上の試験結果に基づいて、本発明の一実施例に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物の打設装置を用いて、フルスケールの試作、すなわち、本発明の一実施例に係る放射性廃棄物収容器に適用される、本発明の一実施例に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物製の内缶の作成を行った。
以上の試験結果に基づいて、本発明の一実施例に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物の打設装置を用いて、フルスケールの試作、すなわち、本発明の一実施例に係る放射性廃棄物収容器に適用される、本発明の一実施例に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物製の内缶の作成を行った。
図1は、本発明の一実施例に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物の打設装置の外観図である。図2は、図1に示した打設装置の型枠内部図である。図3は、図1に示した打設装置の材料投入機を示す外観図である。図4は、図1に示した打設装置の工程図である。
図5は、本発明の一実施例に係る放射性廃棄物収容器に適用される、本発明の一実施例に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物製の内缶を示す断面図である。図6は、図5に示した内缶を用いた放射性廃棄物収容器の工程図である。図7は、図5に示した放射性廃棄物収容器の上面を示す部分図である。図8は、図5に示した放射性廃棄物収容器の全体外観図である。
図1〜図4に示した打設装置を用いて、本発明の一実施例に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物に水を添加して混練し、得られたモルタルを型枠に打設して、図5〜図8に示す本発明の一実施例に係る放射性廃棄物収容器の内缶を作製し、さらに、この内缶を用いて放射性廃棄物収容器を作製した。
図1〜図4を参照すると、本発明の一実施例に係る放射線遮蔽用コンクリート組成物の打設装置は、セメントと鋼球を少なくとも含み、水と混練されたコンクリート組成物、すなわち、モルタルを型枠1に打設する装置であって、上部から下部に向かって徐々に縮径し、該上部にコンクリート組成物が投入される投入口5a、該下部にコンクリート組成物が排出される排出口5bがそれぞれ設けられた漏斗状の材料投入機5と、材料投入機5の排出口5bに付設され、排出口5bの流路断面積を可変することにより、排出口5bから型枠1内に供給されるコンクリート組成物ないしモルタルの流量を制御する流量制御器6と、を有している。
材料投入機5は、下方に向かって傾斜する広い傾斜面を有し、モルタルを薄く延ばしながら、モルタルを排出口5bに向かって案内することができる。
型枠1は、分割自在な有底環状の外枠2と、外枠2の中心に据付される筒状の内枠3と、から構成され、外枠2と内枠3の間に、水と混練されたコンクリート組成物ないしモルタルが投入されて、硬化し養生された後、天地が逆の状態で、後述の図5に示すコンクリート組成物製の内缶7が得られる。
特に、図3を参照すると、材料投入機5には、シューター4から投入口5aに向かってモルタルが投入され、排出口5bから、図1に示した型枠1内に排出される。
特に、図4を参照すると、流量制御器6は、排出口5b内に出没して、排出口5bの流路断面積を可変するハンドルから構成されている。例えば、打設初期と終期で、ハンドルの排出口5b内への突出量を可変することにより、型枠1内における大鋼球の沈降を防止することができる
図5を参照して、フルスケールの内缶7は、厚さ45mm、高さ789mm、内径350mm、内容積68リットルである。図6を参照して、内缶7は、金属製の外缶(ドラム缶)8内に装填され、放射性廃棄物を収容した後、図7に示す上蓋9によって密閉されて、図8に示す放射性廃棄物収容器10となり、所定期間保管される。
[試験7]
以上説明した打設装置を用いて、後述及び表7に示す組成のコンクリート組成物を混練し、得られたモルタルを型枠に打設し、養生して、上記フルスケールの内缶を作成した。
以上説明した打設装置を用いて、後述及び表7に示す組成のコンクリート組成物を混練し、得られたモルタルを型枠に打設し、養生して、上記フルスケールの内缶を作成した。
セメント:普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm3;
小鋼球:比重7.8、主として真球状、粒径106〜250μmの間に80%以上の小鋼球が存在し、平均粒径及び中心粒度が100〜250μmの範囲にある;
大鋼球:比重7.8、主として真球状、粒径600〜850μmの間に85%以上の大鋼球が存在し、平均粒径及び中心粒度が600〜850μmの範囲にある;
減水剤:高性能減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物);
水:上水道水。
小鋼球:比重7.8、主として真球状、粒径106〜250μmの間に80%以上の小鋼球が存在し、平均粒径及び中心粒度が100〜250μmの範囲にある;
大鋼球:比重7.8、主として真球状、粒径600〜850μmの間に85%以上の大鋼球が存在し、平均粒径及び中心粒度が600〜850μmの範囲にある;
減水剤:高性能減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物);
水:上水道水。
モルタル性状は、粘性がやや大きかったが、材料の分離が発生せず、打設に十分な流動性が確保されていた。作製された内缶の外観は、気泡や巣などの欠陥が無く、良好であった。また、セメントに対する小鋼球群及び大鋼球群の添加量が重量比で、それぞれ1以上であること、或いはセメントに対する両者の合量が重量比で3.5以上であることにより、硬化後の密度が4.5g/cm3である放射線遮蔽能力に優れた内缶が得られた。
なお、図5に示した内缶は、コンクリート構造物としては比較的複雑な形状を有するから、鋼球の均一な分散を確実にするため、及び打設時間等の生産性を考慮して、本試験においては、セメントに対する小鋼球群及び大鋼球群の添加量を上述のように設定した。しかし、作製する形状や要求される放射線遮蔽能力に応じて、鋼球の添加量を増減し、例えば、セメントに対する小鋼球群及び大鋼球群の添加量が重量比で、それぞれ3或いは4程度に設定し、硬化後の密度を5.0g/cm3にすることもできる。但し、モルタルにおいて、鋼球とセメントが材料分離して、硬化後の密度が不均一とならないよう、鋼球の添加量の上限を設定する。
[試験8]
次に、作製した内缶の放射線遮蔽能力の均一性を検証した。すなわち、内缶内に線源を置き、内缶外に放射線測定器を置き、線源と放射線測定器を上下に可動して、両者の距離を一定にしながら、計5所で、放射線透過率を測定し、内缶の位置による放射線遮蔽能力のバラツキを検証した。この測定は、内缶の円周方向に沿って互いに90度離間した4ヶ所のライン上で、高さ方向に沿って140mmごとに5ヶ所の点、すなわち、計20点で行った。測定条件は、後述のとおりである。また、比較のため、バックグラウンド、遮蔽物が無い場合、Fe缶を遮蔽物として用いた場合についても、内缶の場合と同様に測定を行った。
次に、作製した内缶の放射線遮蔽能力の均一性を検証した。すなわち、内缶内に線源を置き、内缶外に放射線測定器を置き、線源と放射線測定器を上下に可動して、両者の距離を一定にしながら、計5所で、放射線透過率を測定し、内缶の位置による放射線遮蔽能力のバラツキを検証した。この測定は、内缶の円周方向に沿って互いに90度離間した4ヶ所のライン上で、高さ方向に沿って140mmごとに5ヶ所の点、すなわち、計20点で行った。測定条件は、後述のとおりである。また、比較のため、バックグラウンド、遮蔽物が無い場合、Fe缶を遮蔽物として用いた場合についても、内缶の場合と同様に測定を行った。
使用線源:60CO 1MBq
放射線測定器:ガンマ線シンチレーションサーベイメータ
放射線測定器:ガンマ線シンチレーションサーベイメータ
表8を参照すると、内缶において、位置による放射線遮蔽能力の偏差、すなわち、バラツキは非常に小さいことから、小鋼球及び大鋼球が均一に分散し、密度の位置によるバラツキが小さいことがわかる。また、この内缶は、目標である遮蔽率(=100%−透過率%)40%をクリアしている。
実施例1では、本発明による放射線遮蔽用コンクリート組成物を、放射性廃棄物収容器の内缶に適用した例を説明したが、該組成物は、均一で高い放射線遮蔽能力を有し、安価で生産性に優れている利点を生かして、種々の形状・サイズの遮蔽体材料となり得る。例えば、本発明による放射線遮蔽用コンクリート組成物は、原子力施設において、高線量な配管を交換する際に作業員を放射線から保護する積み上げ自在な遮蔽ブロック、原子力発電所の圧力容器や一次配管などを被覆する大型遮蔽物、原子力施設の壁材などの材料として用いることができる。
本発明は、原子力施設等、例えば、原子力発電所、核燃料再処理施設、放射性廃棄物処分施設の放射線管理区域から発生する放射性廃棄物を収容する収容器、或いは、放射線を遮蔽する構造物として好適に適用される。
1 型枠
2 外枠
3 内枠
4 シューター
5 材料投入機
5a 投入口
5b 排出口
6 流量制御器
7 内缶
8 外缶
9 上蓋
10 放射性廃棄物収容器
2 外枠
3 内枠
4 シューター
5 材料投入機
5a 投入口
5b 排出口
6 流量制御器
7 内缶
8 外缶
9 上蓋
10 放射性廃棄物収容器
Claims (6)
- セメントと、
前記セメントに対して重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径100〜250μmの粉末状ないし球状の小鋼球群と、
前記セメントに対して重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径600〜850μmの粉末状ないし球状の大鋼球群と、
を含み、
硬化後の密度が4.0g/cm3以上である、
ことを特徴とする放射線遮蔽用コンクリート組成物。 - 硬化後、密度の位置による平均密度からの偏差が5%以内であることを特徴とする請求項1記載の放射線遮蔽用コンクリート組成物。
- JIS R 5201のモルタルフロー試験器を使用して無振動で測定した前記放射線遮蔽用コンクリート組成物のモルタルフロー値が、230〜250の範囲である、ことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線遮蔽用コンクリート組成物。
- 前記セメント及び前記小鋼球群の合計の重量に対して0.2〜2%の範囲で添加される減水剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載の放射線遮蔽用コンクリート組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一記載の放射線遮蔽用コンクリート組成物製であって放射性廃棄物を収容する内缶と、前記内缶が装填されて密閉される金属製の外缶と、を有する、ことを特徴とする放射性廃棄物収容器。
- セメントと鋼球を少なくとも含み、水と混練された放射線遮蔽用コンクリート組成物を型枠に打設する装置であって、
上部から下部に向かって徐々に縮径し、該上部に前記コンクリート組成物が投入される投入口、該下部に該コンクリート組成物が排出される排出口がそれぞれ設けられた漏斗状の材料投入機と、
前記材料投入機の前記排出口に付設され、該排出口の流路断面積を可変することにより、該排出口から前記型枠内に供給される前記コンクリート組成物の流量を制御する流量制御器と、
を有する、ことを特徴とする放射線遮蔽用コンクリート組成物の打設装置。
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