JP6184442B2 - 重量モルタルの乾式吹き付け工法 - Google Patents
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Description
また、施工位置から離れた位置においてドライミックスモルタルを作成し、これを施工位置にまで気流によって搬送し、施工位置に設置した吹き付けノズルにおいて、ドライミックスモルタルと水とを混ぜて吹き付ける乾式吹き付け工法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、ドライミックスモルタルの作成位置から吹き付けノズルまでの距離を長くすると、密度が比較的小さいセメント等の結合材と密度が大きい鋼玉とが、搬送用鋼管内の気流による搬送中に搬送用鋼管内で分離し、小鋼玉と大鋼玉との混合が不均一になり、結果として、搬送用配管の詰まりが発生するという問題があった。
また、乾式吹き付け工法は、湿式吹き付け工法に比べて、リバウンド、粉塵の発生が多く、養生片付けに手間が掛かり、また、表面仕上げに手間が掛かるという欠点を有しているため、壁面等に吹き付けた際、鋼玉の密度が大きいため、その重量により吹き付け層から落下する力が大きく、通常の乾式吹き付け工法の配合では、大鋼玉が脱落し、目標とする密度が得られないという問題があった。
前記結合材は、セメント、高炉スラグ微粉末、混和材および混和剤の何れかを含み、
前記微粉は密度が4.0g/cm3以上で、粒径が300μm以下の砂鉄を含み、
前記骨材は密度が4.0g/cm3以上で、粒径が300μm超えの金属の球体を含み、
前記吹き付け後、前記ドライミックスモルタルの硬化した状態の密度が3.0〜6.0g/cm3であることを特徴とする。
(2)また、前記結合材の1m3当たりの量(A)が350kg〜600kgで、
前記結合材の1m3当たりの量(A)、前記微粉の1m3当たりの量(B)、および前記骨材の1m3当たりの量(C)を合計した前記ドライミックスモルタルの1m3当たりの総重量(D)が、3000kg〜6000kgで、
前記ドライミックスモルタルの1m3当たりの総重量(D)に対する前記微粉の1m3当たりの量(B)の割合(B/D)が、0.2〜0.33であることを特徴とする。
(3)また、前記結合材の1m3当たりの量(A)に対する前記骨材の1m3当たりの量(C)の割合(C/A)が、3.0〜10.7であることを特徴とする。
(4)また、前記骨材に含まれる金属は、鉄、鋼、銅、亜鉛、鉛、ニッケル、鉄合金、鋼合金、銅合金、亜鉛合金、鉛合金、およびニッケル合金の少なくとも1以上であることを特徴とする。
(5)また、前記微粉はアトマイズ鉄粉を含むことを特徴とする。
また、微粉および骨材は何れも密度が4.0g/cm3以上であるから、硬化したもの(以下「重量モルタル」と称す)の密度を3.0〜6.0g/cm3にすることができる。
(ii)また、結合材、微粉および骨材の配合割合が規定されていることから、長距離の搬送性と共に、吹き付けた際の吹き付け対象物への付着が確実になる。例えば、厚さ30〜150mmの重量モルタルを形成することができる。
(iii)さらに、骨材は、鉄、鋼、銅、亜鉛、鉛、ニッケルおよびそれら等の合金を少なくとも1以上を含んでいるから、重量モルタルは放射線の遮断性能ないし透過減衰性能を有する。特に、鉛や鉄およびその合金等のように比重の重い金属を含む場合は、ガンマ(γ)線を遮蔽する能力が顕著になる。
(iv)さらに、結合材は高炉水砕スラグ微粉末を含み、微粉はアトマイズ鉄粉を含むから、前記(i)〜(iii)記載の効果が確実に得られる。
(装置構成)
図1は本発明の実施の形態1に係る重量モルタルの乾式吹き付け工法に使用する乾式吹き付け装置の構成を模式的に示す構成図である。
図1において、乾式吹き付け装置100は、結合材1、微粉2および骨材3を混合したドライミックスモルタル10を、吹き付けノズル30に向けて気流搬送し、吹き付けノズル30においてドライミックスモルタル10と水20とを混ぜて、吹き付け対象の壁面51に向けて吹き付けるものである。
ニードガン13には、ドライコンプレッサー11からエアーホース12を経由して圧縮空気が供給され、また、発電機14から電源ケーブル15を経由して電力が供給される。
したがって、ニードガン13に投入されたドライミックスモルタル10は、ニードガン13からマテリアルホース16を経由して吹き付けノズル30に気流搬送される。
このとき、ドライミックスモルタル10は後記する配合割合になっていることから、マテリアルホース16内で詰まることがなく、例えば、100m〜200mの遠方にまで搬送可能になっている。
そして、吹き付けノズル30において、ドライミックスモルタル10と水20とは混合され(以下、ドライミックスモルタル10と水20とが混合したものを「混練モルタル40」と称す)、吹き付けノズル30の先端から壁面51(「吹き付け対象物」に同じ)に向かって吹き付けられる。
壁面51に到達して混練モルタル40は、壁面51に付着すると共に、後続して到達する混練モルタル40によって壁面51に押し付けられ、準じ、積み重なる。
このとき、混練モルタル40は後記する配合割合になっていることから、リバウンド、粉塵の発生が抑えられ、壁面51からの脱落が抑えられるから、混練モルタル40は硬化すると高い比重になる(以下、硬化した混練モルタル40を「重量モルタル50」と称す)。
表1〜表6は、本発明の実施の形態1に係る重量モルタルの乾式吹き付け工法に使用する重量モルタルを説明するための、配合割合を変更して実施した試験条件およびその試験結果(搬送性、付着性)を示す特性表である。
試験材(重量モルタル)は、結合材1、微粉2、骨材3、および水からなっている。以下、それぞれについて説明する。
結合材1は、ポルトランドセメント、高炉スラグを水砕した高炉スラグ微粉末、混和材および混和剤からなっている。
このポルトランドセメントは、普通セメント、早強セメント、中庸熱セメント、低熱セメントを含んでいる。ポルトランドセメントのうち、例えば普通セメントは、平均粒径が10μmで、一般の土木・建築工事に用いられるコンクリートに使用されるセメントであり、密度は3.16g/cm3である。
高炉スラグ微粉末は、高炉水砕スラグを粉砕したもので、粒径は約10μmで、密度2.92g/cm3である。
混和材はシリカフュームであり、混和剤は粉末減水剤である。
微粉2は、球形でない異形の砂鉄、および酸化鉄(マグネタイト Fe2O3)、およびアトマイズ鉄粉を含むものであって、何れも、粒径が300μm以下である。
砂鉄は、密度が4.13g/cm3で、粗粒率が1.17である。
アトマイズ鉄粉は、密度が7.70g/cm3で、粗粒率が1.30である。
なお、粗粒率は、粒の大きさを示す概略値であって、篩目の大きさ、80mm、40mm、20mm、10mmm、5mm、2.5mm、1.2mm、0.6mm、0.3mm、および0.15mmを用いて、各篩を通過しない量を合計した全量を全試料に対する百分率の和を求め、かかる和を100で除した値である。
骨材3は、一般骨材と、重量骨材とからなり、何れも、粒径が300μm超えである。
一般骨材は、珪酸質砕砂(粒径1.2〜3.0mm)で、密度が2.63g/cm3のものである。
重量骨材は、密度7.70g/cm3の鋼玉(スチールショット)であり、比較的粒径が揃い(粒度分布の幅が狭い)、粒径が300μm超えである。
水は、一般の水道水であるが、上水道水であってもよい。
表1〜表6は、それぞれドライミックスモルタルの1m3当たりの結合材1の量(A)を、300kg、350kg、400kg、500kg、600kg、および700kgの6水準に変更したもので、試験材番号の三桁目を、それぞれ「1、2、3、4、5、6」にしている。
そして、表1〜表6のそれぞれにおいて(結合材1のそれぞれの値に対して)、1m3当たりの微粉2の量(B)を、400kg、600kg、1000kg、1500kg、2000kg、2500kgの6水準に変更し、試験材番号の二桁目を、それぞれ「1、2、3、4、5、6」にしている。
さらに、6水準の結合材1、微粉2について、結合材1、微粉2および骨材3を合計した1m3当たりの総重量(D)が、2500kg、3000kg、4000kg、5000kg、6000kg、7000kgの6水準になるように、骨材3の1m3当たりの量(C=D−A−B)を計算し、試験材番号の一桁目を、それぞれ「1、2、3、4、5、6」にしている。
搬送性は、ドライミックスモルタル10が、ニードガン13からマテリアルホース16を経由して吹き付けノズル30に気流搬送される(マテリアルホース16内において詰まりが発生する)か否か、および吹き付けノズル30内において、水等と均一に混練されるか否かで判断している。
付着性は、ドライミックスモルタル10と水20とを混ぜて、吹き付け対象の壁面51に向けて吹き付けた際に、吹き付け対象の壁面51に付着する量(付着しないで脱落する量)によって判断している。
(結果1)
結合材1の1m3当たりの量(A)が350kg未満の場合は付着性が悪く、600kgを超える場合は粘性が大きすぎて搬送性が悪かった。したがって、結合材の1m3当たりの量(A)は、「350≦A≦600」でなければならない。
微粉2の1m3当たりの量(B)が小さすぎると、付着性が悪く、多すぎると、ノズルでの水との混合が悪くなり、搬送性が悪くなった。
微粉2は、粒径が小さく表面積が大きいので、壁に吹き付けた場合に、結合材との固着性がよくなる。
実験結果から、パラメータE(=B/D)の値を0.2以上にすることが、付着性を確保するために必要であることが分かる。一方、ドライミックスモルタル10を吹き付けノズル30において水と混合する場合に、微粉2が多すぎると、表面積が大きいため、瞬間的な水との混合が難しくなり、分離する傾向になったことから、パラメータE(=B/D)を0.33以下にすることが必要である。よって、微粉2の1m3当たりの量(B)は、「0.2≦E=B/D≦0.33」でなければならない。
骨材3は、ドライミックスモルタル10の1m3当たりの総重量(D)が3000〜6000kgの範囲においては、総重量(D)から、結合材1と微粉2の重量和(A+B)を差し引いた値C(=D−A−B)を投入すれば、搬送性および付着性とも良好であった。
以上より、ドライミックスモルタル10の1m3当たりの総重量(D)が、3000〜6000kgの範囲において、結合材1の量(A)を、350kg/m3以上、600kg/m3以下とし、微粉2の重量(B)を総重量(D)で割った値であるパラメータEを、0.2以上、0.33以下とし、さらに、骨材3の重量(C)を、総重量(D)から結合材1と微粉2の和(A+B)を差し引いた量(D−A−B)とした場合に、搬送性および付着性とも良好な吹付け施工が可能である。
なお、以上の実験結果を、搬送性および付着性の観点から整理すると、以下になる。
(i)結合材1の1m3当たりの絶対量(A)が、600kgを超えると、水と混合したときに粘性が多すぎて、吹き付けノズル30から噴射できなくなる(A≦600)。
(ii)骨材3と結合材1の比であるパラメータF(=C/A)が多くなると、マテリアルホース16内の分離が大きくなり、吹き付けノズル30内での水との均一な混合が困難になり、粉塵が増大する(F=C/A≦10.7)。
(iii)骨材3と結合材1の比であるパラメータF(=C/A)を大きくして、表面積が小さい大粒の骨材3を増やし、吹き付けノズル30内での水との瞬間的な混練を可能にする(3.0≦F=C/A)。
(iv)微粉2が多過ぎると、表面積が多い粒子が多くなり、水との瞬間的な混合が悪くなる(E=B/D≦0.33)。
(v)結合材1の1m3当たりの絶対量(A)が、350kg未満になると、骨材3を保持する粘性が不足し、壁に定着しなくなる(350≦A)。
(vi)微粉2が少ないと、粒径が小さく表面積が大きい粒子が足りなくて、結合材1による固定度が足りなくなる(0.2≦E=B/D)。
2 微粉
3 骨材
10 ドライミックスモルタル
11 ドライコンプレッサー
12 エアーホース
13 ニードガン
14 発電機
15 電源ケーブル
16 マテリアルホース
20 水
21 水タンク
22 吸引ホース
23 水ポンプ
24 水ホース
30 吹き付けノズル
40 混練モルタル
50 重量モルタル
51 壁面
100 乾式吹き付け装置
Claims (5)
- 結合材、微粉および骨材を混合したドライミックスモルタルを、吹き付けノズルに向けて気流搬送し、吹き付けノズルにおいて前記ドライミックスモルタルと水とを混ぜて、吹き付け対象物に向けて吹き付ける重量モルタルの乾式吹き付け工法であって、
前記結合材は、セメント、高炉スラグ微粉末、混和材および混和剤の何れかを含み、
前記微粉は密度が4.0g/cm3以上で、粒径が300μm以下の砂鉄を含み、
前記骨材は密度が4.0g/cm3以上で、粒径が300μm超えの金属の球体を含み、
前記吹き付け後、前記ドライミックスモルタルの硬化した状態の密度が3.0〜6.0g/cm3であることを特徴とする重量モルタルの乾式吹き付け工法。 - 前記結合材の1m3当たりの量(A)が350kg〜600kgで、
前記結合材の1m3当たりの量(A)、前記微粉の1m3当たりの量(B)、および前記骨材の1m3当たりの量(C)を合計した前記ドライミックスモルタルの1m3当たりの総重量(D)が、3000kg〜6000kgで、
前記ドライミックスモルタルの1m3当たりの総重量(D)に対する前記微粉の1m3当たりの量(B)の割合(B/D)が、0.2〜0.33であることを特徴とする請求項1記載の重量モルタルの乾式吹き付け工法。 - 前記結合材の1m3当たりの量(A)に対する前記骨材の1m3当たりの量(C)の割合(C/A)が、3.0〜10.7であることを特徴とする請求項1または2記載の重量モルタルの乾式吹き付け工法。
- 前記骨材に含まれる金属は、鉄、鋼、銅、亜鉛、鉛、ニッケル、鉄合金、鋼合金、銅合金、亜鉛合金、鉛合金、およびニッケル合金の少なくとも1以上であることを特徴とする請求項1または2記載の重量モルタルの乾式吹き付け工法。
- 前記微粉はアトマイズ鉄粉を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の重量モルタルの乾式吹き付け工法。
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