JP2009179513A - パイプライン - Google Patents

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武 濱田
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Abstract

【課題】海底敷設パイプラインは、モルタルやコンクリートで被覆する場合には、密度の点で満足できるものではなかった。高密度の重量モルタルやコンクリートで被覆できれば密度の点では満足できるが、従来の重量モルタルやコンクリートは流動性が不十分であり、パイプの周囲に吹き付けることができなかった。
【課題を解決するための手段】
主要構成成分としてFeO、Fe2O3、金属鉄の少なくともひとつを含む骨材であって、全粒子のうち球状の粒子が20%以上であり、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%ないし20%である重量骨材を含むパイプライン、を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、重量コンクリート、重量モルタルを吹き付けたパイプラインに関する。例えば、ガス、石油等を輸送するために海中に敷設したパイプラインや地中に埋設したパイプに関し、海中における浮力や、地震等による地盤の液状化に伴う埋設パイプの浮き上がりを防止したパイプラインに関するものである。
重量コンクリートとは、通常より単位容積重量を大きくしたコンクリートであり、消波ブロック、護岸堤用コンクリート、橋梁ウェイト等に用いられている。重量コンクリートに用いる重量骨材としては、磁鉄鉱や赤鉄鉱などの鉄鉱石が多く用いられてきたが、重量骨材として良質なものの入手が困難になってきており、高価な天然資源の使用は、経済的にも、環境配慮の観点からも好ましくない。鉄鉱石骨材に代わるものとして、電気炉酸化スラグ等の鉄含有量の多いスラグも用いられるが、密度が4g/cm3未満のものが多く、重量骨材として十分な密度のものの入手は困難である。他には、製鋼用転炉ダストにセメントを配合する重量コンクリートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、重量骨材として鉄鉱石を用いた場合にも、製鋼用転炉ダストの粗粒分などの代替物を用いた場合にも、重量骨材とセメントペーストとに大きな比重差があるため、分離が起こりやすいという課題があった。
従来から、重量骨材とセメントペーストの分離を抑制するため、重量コンクリートにメチルセルロースなどの増粘剤の添加が行われている(例えば、特許文献2参照)。しかし、増粘剤の添加はセメントの水和反応を遅延させるため、大量に添加することは好ましくない。そのため、メチルセルロースなどの増粘剤の添加を必要とせず、重量骨材とセメントペーストの分離が少なく、流動性が高くて施工性の良い重量コンクリートが望まれていた。
特開平5−319880号公報 特開昭62−158181号公報
また、特許文献3には、重量コンクリートの細骨材としてふるい呼び寸法2.5mmないし0.15mmのショットブラスト用スチール細粒を粒度調整して用いることが提案されている。しかし、種々のサイズの均一粒度に調整して製造された高価なショットブラスト用スチール細粒を配合して粒度調整することは極めてコスト高になるため、商業的な適用は進まなかった。これに代わる重量コンクリート用細骨材の材料として、高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄を用いることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、これらの重量コンクリート用細骨材は、粗骨材とともに用いるコンクリート用細骨材として有効であるが、後に詳細を述べるとおり、細骨材のみを用いる重量モルタル用の細骨材としては、十分なモルタルフローが得られない、あるいは骨材とセメントペーストの分離が発生する場合があるという課題があった。
特開平2−172846号公報 特開2004−210574号公報
一方、石油、ガスのパイプラインや下水道の主要な構成部分である埋設パイプは、内部が空間になっている比重の軽い構造物である。パイプラインを海中に敷設した場合は、そのパイプラインは水による浮力を常に受ける。また地中に埋設したパイプは、地盤の液状化により底部に揚圧力が作用すると、浮き上がりを生じ易い。特に、開削により埋設されたパイプは、埋め戻し土の液状化によっても浮き上がりを生ずることがある。こうした浮き上がりを防止するために、アンカーボルトを埋設したコンクリート地盤を形成しボルト棒でパイプを連結するといった方法が提案されている(特開2000−283334)。また、パイプの重量を重くするために、モルタルやコンクリートを吹き付けて被覆するという方法が行われている。
しかしながら、ボルト棒でパイプを連結する方法は、剛性の高い部材で連結するので、地震時の挙動が埋設パイプに伝達され易く荷重がパイプに作用するおそれがある。また、海中にパイプラインを敷設する場合はボルト棒で連結する施工が困難である。
パイプをモルタルやコンクリートで被覆する場合には、上記の問題は生じないが、通常のモルタルやコンクリートでは密度の点で満足できるものではなかった。高密度の重量モルタルやコンクリートで被覆できれば密度の点では満足できるが、従来の重量モルタルやコンクリートは流動性が不十分であり、パイプの周囲に吹き付けることができなかった。そこで、吹き付け施工が可能な重量モルタルや重量コンクリートを周囲に吹き付け、パイプの重量を重くしたパイプラインが望まれていた。
主要構成成分としてFeO、Fe2O3、金属鉄の少なくともひとつを含む骨材であって、全粒子のうち球状の粒子が20%以上であり、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%ないし20%である重量骨材を含むパイプライン。
更に製鋼過程で発生するリサイクル材を混合して得られる重量骨材であって、呼び寸法1.2mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で70%ないし90%であることを特徴とする重量骨材を含むパイプライン。
また、鋼スラブ表面の溶削処理工程で発生するホットスカーフを含む製鋼の圧延工程で発生するミルスケール、製鋼用転炉ダストのうち粒径50μmで篩い分けられた粗粒分、及び高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄から選択される少なくとも1種以上とホットスカーフとを混合して得られる重量骨材を含むパイプラインであることも特徴とする。
また、本発明のパイプラインは、鋼スラブ表面の溶削処理工程で発生するリサイクル材料のホットスカーフを含み、製鋼の圧延工程で発生するミルスケール、製鋼用転炉ダストのうち粒径50μmで篩い分けられた粗粒分、及び高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄から選択される少なくとも1種以上とホットスカーフとを混合して得られる重量骨材を用いたパイプラインであることも特徴とする。
また、ホットスカーフと、製鋼の圧延工程で発生するリサイクル材料のミルスケールとを混合容積比が100:0から30:70の範囲で混合して得られること、ホットスカーフと製鋼用転炉ダストのうち粒径50μmで篩い分けられた粗粒分とを混合容積比が100:0から70:30の範囲で混合して得られること、ホットスカーフと高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄とを混合容積比が100:0から70:30の範囲で混合して得られる重量骨材を含むパイプラインであることも特徴とする。
また、本発明の重量モルタル、重量コンクリートを用いたパイプラインは、製鋼の圧延工程で発生するミルスケール、製鋼用転炉ダストのうち粒径50μmで篩い分けられた粗粒分、及び高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄から選択される少なくとも2種以上を混合して得られる骨材を含む重量モルタル、重量コンクリートを用いることも特徴とし、また、前記ミルスケール、転炉ダスト粗粒分、及び粒状銑鉄の混合割合が、各々質量百分率で20〜70%、20〜50%、及び0〜40%であることも特徴とする重量骨材を含む重量モルタル、重量コンクリート用いたパイプラインである。
さらに、重量粗骨材が、製鋼過程で発生するダストを含む廃棄物を溶融して製造された人工石材を含むことも特徴とするパイプラインである。
本発明の重量モルタル、重量コンクリートを用いたパイプラインは、重量骨材が、コンクリートやモルタルの細骨材に求められる適切な粒度分布を備え、球状粒子を適度に含有するため、コンクリートやモルタルのフレッシュ性状に適度な流動性とワーカビリティーを与えることができ、吹き付け施工が可能となる。そのため、従来のパイプラインのような周囲からの浮力による浮き上りといった課題を解決でき、十分な密度を有する重量モルタル、重量コンクリートを周囲に吹き付けで施工したパイプラインが作製できるという効果を有する。
以下、本発明の重量モルタル、重量コンクリートを用いたパイプラインについてさらに詳細に説明する。本発明において重量コンクリートとは、特に言及しない場合は、粗骨材を含まない重量モルタルを含む広い概念で使用する。本発明において重量骨材とは、表乾密度が4g/cm3以上の骨材を指す。
本発明のパイプラインに用いる重量モルタル、重量コンクリートは、重量細骨材として、鋼スラブ表面の溶削処理工程で発生する球状粒子を含むことを特徴とする。球状粒子は、連続鋳造スラブにより鋼スラブを鋳造する際、鋳型への溶鋼注入流によって、鋼スラブの長手方向表層部に連続的に析出するAl等の介在物を溶削除去する工程で発生するリサイクル材料であり、酸化鉄を主要構成成分とするため、重量骨材として使用するのに十分な4.8g/cm3以上の表乾密度を有する。また、溶削工程で一旦液状に溶融した後、空中で冷え固まることにより、体積あたりの表面積が最小となる球形に近い形状の粒子またはその破砕物や凝集物で構成され、球状粒子が70%以上を占めている。さらには、粒度分布に偏りがなく、球状粒子を重量細骨材として用いることにより、材料分離を抑えながら高い流動性のある重量コンクリートが得られ、パイプラインに好適に用いることができる。
しかし、本発明のパイプラインに用いる骨材の球状粒子はリサイクル材としての発生量が多くないので、他のリサイクル材等と混合して用いることが好ましい。球状粒子と混合して用いる材としては、製鋼用転炉ダストを50μmふるいで分離した粗粒分や高炉水砕スラグから粉砕過程で分離される粒状銑鉄、製鋼の圧延工程で発生するミルスケールなどの製鋼リサイクル材が高い表乾密度を有するので好ましいが、電気炉酸化スラグや砕砂などの表乾密度が4g/cm3以下の材であってもよい。ただし、混合した後の細骨材が、以下の条件を満たすときに、材料分離を抑えながら高い流動性のある重量コンクリートが得られる。すなわち、細骨材のうち呼び寸法0.15mmのふるいを通過する細骨材が質量百分率で10%ないし20%であって、球状粒子が粒径50μm以上5mm以下の全粒子のうち20%以上であることが望ましい。
また、本発明のパイプラインに使用する重量骨材は、主要構成成分としてFeO、Fe23、金属鉄の少なくともひとつを含む。主要構成成分としてFeO、Fe23、金属鉄の少なくともひとつを含むとは、構成元素を蛍光X線分析により酸化物換算で求めたときのFe23が65%以上であることが好ましい。構成元素を蛍光X線分析により酸化物換算で求めたときのFe23が65%に満たないときは、骨材の表乾密度が4g/cm3未満となる場合があり、好ましくない。より好ましくは、構成元素を蛍光X線分析により酸化物換算で求めたときのFe23が75%以上であり、このときの重量骨材の表乾密度は、4.5g/cm3以上になる。
本発明のパイプラインに用いる重量コンクリート、モルタルの細骨材の最適粒度は、骨材の形状、表面粗滑度、配合等により変化するものである。例えば砕砂のJIS規格(A 5005;非特許文献1)では、表1のように粒度分布が規定され、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で2%ないし15%とされている。一方、電気炉酸化スラグ骨材のJIS規格(A 5011−4;非特許文献2)では、その解説の中で微粒分を多くした方が良好なフレッシュコンクリートの性状が得られることが示され、1.2mm電気炉酸化スラグ骨材では、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%ないし30%とされている。しかし、密度が4.5g/cm3以上であり、全粒子のうち球状の粒子が20%以上含まれる重量骨材で、良好なフレッシュコンクリートの性状を得るための最適な粒度分布についての知見が公開されたことはない。
特許文献3には、重量コンクリート用の細骨材としてショットブラスト用スチール細粒を配合して用いることが示されているが、JASS5(日本建築学会 建築工事標準仕様書5 鉄筋コンクリート工事)に規定された粒度分布を満足するように調整されているだけで、コンクリート、モルタルの良好なフレッシュ性状を得るための重量骨材の詳細な粒度分布についての検討はなされていない。
本発明者は、良好なモルタルフローを得るための重量骨材の粒度分布を詳細に検討し、表1に示す最適粒度分布を見出した。すなわち、本発明の重量骨材は、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%ないし20%であることを特徴とする。呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%に満たないとき、あるいは20%を超えるときには、十分なモルタルフローが得られない、あるいは骨材とセメントペーストの分離が発生する場合がある。
日本工業規格 JIS A 5005 コンクリート用砕石及び砕砂 日本工業規格 JIS A 5011−4 コンクリート用スラグ骨材 第4部:電気炉酸化スラグ骨材
Figure 2009179513
また、呼び寸法1.2mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で70%ないし90%であることが好ましい。呼び寸法1.2mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で70%に満たないとき、あるいは90%を超えるときには、十分なモルタルフローが得られない、あるいは骨材とセメントペーストの分離が発生する場合がある。さらに、本発明の重量骨材は、製鋼過程で発生するリサイクル材を混合して得ることが好ましい。
連続鋳造スラブにより鋳造した鋼スラブは、鋳型への溶鋼注入流によって、鋼スラブの長手方向表層部に連続的にAl等の介在物が析出する。この鋼スラブの表層介在物を溶削除去する工程で発生するリサイクル材料のホットスカーフは、主要構成成分としてFeO、Fe23、金属鉄を含み、構成元素を蛍光X線分析により酸化物換算で求めたときのFe23が80%以上で、表乾密度は、4.8g/cm3以上になる。また球状粒子が約70%を占め、しかも呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%ないし20%の範囲内であり、そのまま本発明の重量骨材として用いることができる。
高炉水砕スラグから粉砕過程で分離される粒状銑鉄も金属鉄が主成分で4.8g/cm3以上の表乾密度を示すとともに、球形に近い形状の粒子が50%程度含まれ、ホットスカーフと混合使用できるリサイクル材である。ホットスカーフ70に対し、粒状銑鉄30の容積比までならば、混合することができる。それ以上に粒状銑鉄を混合すると、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%に満たないため、十分なモルタルフローが得られない場合がある。
本発明者は、ホットスカーフとミルスケールを種々の混合比で混合し、重量骨材としての適正を検討した。その結果、ホットスカーフ30に対し、ミルスケール70の容積比まで混合できることを確認した。それ以上にミルスケールを混合すると、球状粒子の割合が20%を下回り、流動性が確保できず、十分なモルタルフローが得られない場合がある。さらに、モルタルフローを得るために単位水量を増加した場合には、骨材とセメントペーストとの分離が生じる場合がある。なお、ホットスカーフとミルスケールの混合容積比が40:60か、それよりもホットスカーフの割合が多い場合には、モルタルから空気が抜けやすく、モルタルの単位容積質量が大きくできるので、より好ましい。
ここで本願発明における「球状粒子」について詳細に説明する。球状粒子とは、文字通り真球形に近い形状の粒子である。球状粒子の生成過程には、(1)固体が熱で液状に溶融した後、空中で冷え固まることにより、体積あたりの表面積が最小となる球形に近い形状となる場合、(2)非球形粒子が物理的な研磨により角を失い、球形に近い形状となる場合、(3)粉末または溶解液から析出した微粒が核の周囲に結合し、球形に近い形状に成長する場合がある。(2)(3)の場合には、球形から非球形まで連続的な形状の粒子が生成するが、(1)の場合には、中間形状の粒子は生成しない。
ホットスカーフは前記の通り、鋼スラブの表層介在物を溶削除去する工程で発生するリサイクル材料であり、前記(1)の生成過程で球状粒子が生成する。粗粉転炉ダスト及び粒状銑鉄にも球状粒子が含まれるが、その生成過程は前記(1)だけでなく、(2)の場合も含まれると考えられる。
本発明の重量骨材は、全粒子のうち「球状粒子」が20%以上であることが必須であるが、下記する歪凹凸度が3.3以下の「球状粒子」が、全粒子のうち20%以上であることが好ましい。
ここで、「歪凹凸度」は以下の式で定義される。
[歪凹凸度]=[粒子輪郭の周の長さ]/[粒子輪郭面積と同じ面積の正円の直径]
すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)画像の目視によって、その陰影から円板状や半球状と判断できる粒子を除き、明らかに球形に近い粒子を画像処理して解析する。画像処理は、一般的な画像処理ソフト(例えばAdobe Photoshop)を用いて行えばよい。まず、球形に近い粒子の画像から陰影を消して輪郭のみの図形を作成し、該図形の面積と、輪郭の周の長さを求める。該図形を円に近似して(該図形と同面積の円を想定して)、その円の面積πr2から半径rを求め、その2倍として直径を求める。直径に対する周の長さの比は、輪郭が円に近いほど、すなわち粒子が球形に近いほど、小さくなり、円周率πに近い値になる。ちなみに、ホットスカーフに含まれる球状粒子では、歪凹凸度が3.3以下となる。
また、全粒子のうちの球状粒子の割合を求める場合、複数のSEM写真に写った全粒子の数と球状粒子の数を数えて平均を求めればよいが、粒子の粒径に関わらず球状粒子の割合は一定であると仮定し、一定粒径、例えば50μm以上の粒子のみを数える。
一方、本発明の重量骨材は、製鋼の圧延工程で発生するミルスケール、製鋼用転炉ダストのうち粒径50μmで篩い分けられた粗粒分、及び高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄から選択される少なくとも2種以上を混合しても得られる。前記ミルスケール、転炉ダスト粗粒分、及び粒状銑鉄は、いずれも、鋼スラブ表面の溶削処理工程で発生するホットスカーフよりも発生量の多いリサイクル材である。
ミルスケールは製鋼の圧延工程で発生するリサイクル材であり、構成元素を蛍光X線分析により酸化物換算で求めたときのFe23が80%以上で、表乾密度は4.8g/cm3以上になる。しかも表2に示すように砕砂JISに近い粒度分布を有している。しかし、粒子形状は扁平なものが多いため、骨材として利用した場合にはコンクリートやモルタルの流動性が低下しやすく、過剰に単位水量や減水剤量を増やした場合には骨材とペーストが分離しやすい。したがって、ミルスケールをそのまま単独で重量骨材として用いることはできない。
製鋼用転炉ダストの粗粒分は球状粒子を70%以上含むが、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で25%以上、呼び寸法0.3mmのふるいを通過する粒子が65%以上と、骨材としては粒度分布が細粒側に偏りすぎるため、粒子が凝集しやすく、粗粉転炉ダストを単独で重量骨材として用いた場合には十分なモルタルフローを得ることは困難である。
高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄も球状粒子を約50%含むが、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で5%以下、呼び寸法0.3mmのふるいを通過する粒子が20%以下である一方、呼び寸法1.2mmのふるいを通過する粒子が85%以上と、粒径が0.3mmから1.2mmの間に集中する偏った粒度分布を有する。そのため、粒状銑鉄を単独で重量骨材として用いた場合には骨材とセメントペーストの分離が起こりやすい。
以上のように前記3種のリサイクル材は、いずれも単独で重量骨材として用いた場合には、十分なモルタルフローが得られないか、あるいは骨材とセメントペーストの分離が起こりやすい。しかし前記3種のリサイクル材のうち、少なくとも2種以上を適切な混合割合で混合することにより、骨材とセメントペーストの分離が起こらず、モルタルに十分な流動性とワーカビリティーを与えることができる重量骨材が得られる。
Figure 2009179513
本発明の重量骨材は、前記ミルスケール、転炉ダスト粗粒分、及び粒状銑鉄の混合割合が、各々質量百分率で0〜70%、0〜50%、及び0〜60%であることが好ましく、特に20〜70%、20〜50%、及び0〜40%であることが好ましい。
ミルスケールの混合割合が70%を超えるとき、または転炉ダスト粗粒分の混合割合が50%を超えるとき、該重量骨材を用いたモルタルでは、十分なモルタルフローが得られない場合があり、好ましくない。粒状銑鉄の混合割合が60%を超えるとき、該重量骨材を用いたモルタルでは、骨材とセメントペーストの分離が起こる場合があり、好ましくない。
ミルスケールの混合割合が20%に満たないとき、該重量骨材を用いたモルタルでは、残りのリサイクル材の混合割合によっては、骨材とセメントペーストの分離が起こる、または十分なモルタルフローが得られない場合がある。転炉ダスト粗粒分の混合割合が20%に満たないとき、または粒状銑鉄の混合割合が40%を超えるとき、該重量骨材を用いたモルタルでは、残りのリサイクル材の混合割合によっては、骨材とセメントペーストの分離が起こる場合がある。
本発明のパイプラインに用いるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の各種混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。
本発明のパイプラインに用いる重量コンクリートは、通常のコンクリートと同様の方法で製造することができる。すなわち、前記重量細骨材、前記重量粗骨材、前記セメントを混合し、水を加えて混練りすればよい。必要に応じて、減水剤や消泡剤などの混和剤を添加しても良い。重量コンクリートは高い密度を確保するため、単位水量を低くすることが好ましく、減水剤を添加することが好ましい。減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することができる。これらのうち、減水効果の大きな高性能AE減水剤を使用することが好ましい。また、高い密度を確保するためには、空気の巻込みを抑える必要があり、消泡剤を添加することが望ましい。
本発明のパイプラインに用いる重量粗骨材としては、従来の鉄鉱石を用いることもできるが、高価な天然資源の使用は、経済的にも、環境配慮の観点からも好ましくない。また、電気炉酸化スラグ粗骨材を用いることもできる。本発明では、産業的な利用が十分になされていない資源の活用を目的のひとつにしており、製鋼過程で発生するダストを含む廃棄物を溶融して製造された人工石材を用いることが好ましい。特に、製鋼過程で発生する金属ダストと、粉末状にした還元スラグとを混合して加熱溶融させ、冷却固化させて製造される人工石材は、溶融過程で遊離石灰や低沸点金属酸化物が除かれており、また重量粗骨材として十分な密度も有することから、本発明の粗骨材として有効である。また、重量コンクリートの密度が、あまり高くなくても良い場合には、重量粗骨材に砕石等の密度の低い粗骨材を混合して使っても良い。
最大粗骨材寸法、細骨材粗骨材容積比、単位セメント量、水セメント比は、用途に合わせていずれにも適宜選択できる。本発明では、吹付け施工を行う場合には、例えば最大粗骨材寸法10〜15mm、細骨材粗骨材容積比55.0〜65.0%、単位セメント量330〜450kg/m3、水セメント比45〜55%で適宜調整し、急結剤を適宜用いることによって吹付け可能な重量コンクリートを得ることができる。また、重量モルタルにて吹付けを行う場合には、例えば単位セメント量450〜550kg/m3、水セメント比45〜60%で適宜調整し、急結剤を適宜用いることによって吹付け可能な重量モルタルを得ることができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(吹き付け用モルタル使用原料)
パイプライン吹付けに用いた重量モルタルの使用原料を表3に示す。
Figure 2009179513
表4にパイプラインに用いた重量モルタルの配合を示す。
Figure 2009179513
(施工方法)
(1)表3に示す原料のうちセメントと水を表4に示す配合にて混合し、セメントミルクを作製した。W/C(水セメント比)は質量%比で55%とした。
(2)吹付けはセメントミルクと骨材をそれぞれポンプで圧送し、ノズル先端で混ぜ合わせながら吹き付けることにより行った。パイプラインとして直径500mm、長さ1000mmの鋼製パイプに重量モルタルを吹付け施工した。
(試験結果)
上記方法により、均一な重量モルタル被覆層を有するパイプラインを作製することができた。
(比較例)
一方、同様な方法及び手段で比較例1の配合の重量モルタルでパイプラインの表面に吹き付け施工を試みたところ、骨材の流動性が悪く、圧送負荷が増大し、吹き付け施工できなかった。
実施例2
(試験方法)
(1)表乾密度5.08g/cm3、球状粒子約75%のホットスカーフと、表乾密度5.84g/cm3、球状粒子約73%の粗粉転炉ダストを適宜混合し、表2に粒度分布を示す混合砂1〜4を調整した。(混合砂2の混合容積比;ホットスカーフ70:粗粉転炉ダスト30)
(2)(1)で調整した混合砂に普通ポルトランドセメントを砂セメント容積比3.19で混合し、セメント547kg/m3あたり、4.37kg/m3のポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤と、0.22kg/m3の消泡剤と、246kg/m3の水(水セメント比45.0%)を加えて、混練りした。
(3)JIS R 5201セメントの物理試験方法のフローコーンを用い、直径100mm、高さ40mmのフローコーンに(2)で調整したモルタルを充填し、コーンを引き抜いて、モルタルフローを測定した。
(試験結果)
モルタルフローの測定結果を表5に示した。
Figure 2009179513
表5に示した結果より、混合砂1と2では、良好なモルタルフローが得られた。混合砂4では、粒径の小さな粒子が密に充填するため、混練りも困難なほど硬く、モルタルの流動が見られなかった。混合砂3ではわずかながらモルタルフローが見られ、詳細は示さないが、水セメント比を50%に増加すれば、モルタルフローは130mmまで増加したが、骨材とセメントペーストとの分離が生じた。以上のように、重量骨材の粒度分布を呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で20%以下となるように限定することにより、モルタルフローにおいて格段に顕著な効果が得られることが明らかになった。
実施例3
(試験方法)
(1)表乾密度5.08g/cm3、球状粒子約75%のホットスカーフと、表乾密度5.60g/cm3、球状粒子約54%の粒状銑鉄(高炉水砕スラグから粉砕過程で磁選分離したもの)を適宜混合し、表7に粒度分布を示す混合砂5〜10を調整した。(混合砂7の混合容積比;ホットスカーフ70:粒状銑鉄30)
(2)(1)で調整した混合砂に普通ポルトランドセメントを砂セメント容積比3.19で混合し、セメント547kg/m3あたり、5.46kg/m3のポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤と、0.22kg/m3の消泡剤と、246kg/m3の水(水セメント比45.0%)を加えて、混練りした。
(3)実施例1と同様に、モルタルフローを測定した。
(試験結果)
モルタルフローの測定結果を表6に示した。
Figure 2009179513
表6に示した結果より、混合砂5、6および7では、良好なモルタルフローが得られた。これに比べ混合砂8、9および10では、明らかにモルタルの流動性が低くなった。また、混合砂9および10では若干、骨材とセメントペーストとの分離が生じた。以上のように、重量骨材の粒度分布を呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%以上となるように限定することにより、モルタルフローにおいて格段に顕著な効果が得られることが明らかになった。
実施例4
(試験方法)
(1)表乾密度5.08g/cm3、球状粒子約75%のホットスカーフと、表乾密度4.95g/cm3、扁平な粒子で構成されるミルスケールを種々の容積比で混合し、混合砂11〜18を調整した。
(2)(1)で調整した混合砂に普通ポルトランドセメントを砂セメント容積比2.68で混合し、セメント584kg/m3あたり、5.84kg/m3のポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤と、0.23kg/m3の消泡剤と、292kg/m3の水(水セメント比50.0%)を加えて、混練りした。
(3)実施例1と同様に、モルタルフローを測定した。また、モルタルの単位容積質量を測定した。
(試験結果)
モルタルフローの測定結果を図1に、モルタルの単位容積質量を図2に示した。ホットスカーフ(HS)とミルスケール(MS)の混合比率が、20:80ではほとんどモルタルフローが見られず、骨材とセメントペーストとの分離が見られた。30:70からホットスカーフの混合比率が高い場合には、良好なモルタルフローが得られた。このとき、球状粒子の比率は20%以上であった。
ホットスカーフとミルスケールの混合比率が、40:60からホットスカーフの混合比率が高い場合には、モルタルの単位容積質量が格段に高くなっており、より好ましいことが示された。このとき、球状粒子の比率は25%以上であった。
実施例5
(試験方法)
(1)表乾密度4.95g/cm3、扁平な粒子で構成されるミルスケールと、表乾密度5.84g/cm3、球状粒子約73%の転炉ダスト粗粉分(粗粒ダスト)と、表乾密度5.60g/cm3、球状粒子約54%の粒状銑鉄(高炉水砕スラグから粉砕過程で磁選分離したもの)を各々質量百分率で30〜80%、0〜60%、及び0〜60%の割合で混合し、混合砂を調整した。
(2)(1)で調整した混合砂に普通ポルトランドセメントを砂セメント容積比2.68で混合し、セメント584kg/m3あたり、5.84kg/m3のポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤と、0.23kg/m3の消泡剤と、292kg/m3の水(水セメント比50.0%)を加えて、混練りした。
(3)実施例1と同様に、モルタルフローを測定した。
(試験結果)
モルタルフローの測定結果を表7に示した。モルタルフローの判定は、130mm以上で良好とした。
Figure 2009179513
実施例6
(試験方法)
(1)前記ミルスケールと、転炉ダスト粗粉分と、粒状銑鉄を各々質量百分率で0〜30%、10〜60%、及び10〜70%の割合で混合し、混合砂を調整した。
(2)(1)で調整した混合砂に普通ポルトランドセメントを砂セメント容積比3.19で混合し、セメント547kg/m3あたり、5.46kg/m3のポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤と、0.22kg/m3の消泡剤と、246kg/m3の水(水セメント比45.0%)を加えて、混練りした。
(3)実施例1と同様に、モルタルフローを測定した。
(試験結果)
モルタルフローの測定結果を表8に示した。モルタルフローの判定は、130mm以上で良好とした。
Figure 2009179513
一般に、水セメント比が高い場合には、モルタルの流動性が高くなるが、セメントペーストと骨材の分離が起こりやすくなり、水セメント比が低い場合には、セメントペーストと骨材の分離は起こりにくくなるが、モルタルの流動性が低くなる。一方、ミルスケールの混合割合が高いほど、流動性が低くなり、粒状銑鉄の混合割合が高いほど、セメントペーストと骨材の分離が起こりやすくなる傾向が見られることから、実施例5では、ミルスケールの混合割合を30%以上で、水セメント比を50.0%とし、実施例6では、ミルスケールの混合割合を30%以下で、水セメント比を45.0%とした。表5及び表6に示した結果より、重量モルタルに用いる重量骨材としては、ミルスケール、転炉ダスト粗粒分、及び粒状銑鉄の混合割合が、各々質量百分率で0〜70%、0〜50%、及び0〜60%であることが好ましく、特に20〜70%、20〜50%、及び0〜40%であることが好ましいことが明らかとなった。
なお、ミルスケール、転炉ダスト粗粒分、及び粒状銑鉄の混合割合が、各々質量百分率で0〜70%、0〜50%、及び0〜60%であるとき、該重量骨材は主要構成成分としてFeO、Fe23、金属鉄の少なくともひとつを含み、全粒子のうち球状粒子が20%以上であり、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%ないし20%であり、さらに呼び寸法1.2mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で70%ないし90%の各要件を満たしていた。さらには、表1に示す本発明の重量骨材の粒度分布を全ての粒度範囲にわたって満たしていた。
石油、ガスのパイプラインや下水道の主要な構成部分である埋設パイプの浮き上がりを防止するために、パイプの周囲に重量モルタルやコンクリートを吹き付けることで、パイプの重量を重くしたパイプラインに利用可能である。
ホットスカーフ(HS)とミルスケール(MS)の混合比率とモルタルフローの関係を示した図である。(実施例4) ホットスカーフ(HS)とミルスケール(MS)の混合比率とモルタルの単位容積質量の関係を示した図である。(実施例4)

Claims (10)

  1. 主要構成成分としてFeO、Fe2O3、金属鉄の少なくともひとつを含む骨材であって、全粒子のうち球状の粒子が20%以上であり、呼び寸法0.15mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で10%ないし20%である重量骨材を含むパイプライン。
  2. 製鋼過程で発生するリサイクル材を混合して得られる重量骨材であって、呼び寸法1.2mmのふるいを通過する粒子が全粒子のうち質量百分率で70%ないし90%であることを特徴とする請求項1に記載の重量骨材を含むパイプライン。
  3. 鋼スラブ表面の溶削処理工程で発生するホットスカーフを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の重量骨材を含むパイプライン。
  4. 製鋼の圧延工程で発生するミルスケール、製鋼用転炉ダストのうち粒径50μmで篩い分けられた粗粒分、及び高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄から選択される少なくとも1種以上とホットスカーフとを混合して得られる重量骨材を含む請求項3記載のパイプライン
  5. ホットスカーフとミルスケールとを混合容積比が100:0から30:70の範囲で混合して得られる請求項1から4のいずれかに記載の重量骨材を含むパイプライン。
  6. ホットスカーフと製鋼用転炉ダストのうち粒径50μmで篩い分けられた粗粒分とを混合容積比が100:0から70:30の範囲で混合して得られる請求項1から4のいずれかに記載の重量骨材を含むパイプライン。
  7. ホットスカーフと高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄とを混合容積比が100:0から70:30の範囲で混合して得られる請求項1から4のいずれかに記載の重量骨材を含むパイプライン。
  8. 製鋼の圧延工程で発生するミルスケール、製鋼用転炉ダストのうち粒径50μmで篩い分けられた粗粒分、及び高炉水砕スラグから分離された粒状銑鉄から選択される少なくとも2種以上を混合して得られることを特徴とする請求項1または2に記載の重量骨材を含むパイプライン。
  9. 前記ミルスケール、転炉ダスト粗粒分、及び粒状銑鉄の混合割合が、各々質量百分率で20〜70%、20〜50%、及び0〜40%であることを特徴とする請求項8に記載の重量骨材を含むパイプライン。
  10. 重量粗骨材が、製鋼過程で発生するダストを含む廃棄物を溶融して製造された人工石材を含むことも特徴とするパイプライン請求項1から9のいずれかに記載のパイプライン。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016121054A (ja) * 2014-12-24 2016-07-07 Jfeシビル株式会社 重量モルタルの乾式吹き付け工法
JP2019123646A (ja) * 2018-01-17 2019-07-25 太平洋マテリアル株式会社 モルタル組成物及びモルタル

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