JP2019178035A - コンクリート構造物補修材およびそれを用いたモルタル - Google Patents

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Abstract

【課題】ポンプ圧送性に優れ、かつ流動性と自己充填性とが高いコンクリート構造物補修用のモルタルおよびそのモルタルの原料として有利に用いることができるコンクリート構造物補修材を提供する。【解決手段】ポルトランドセメント、細骨材、フライアッシュ、消泡剤、減水剤を含むコンクリート構造物補修材であって、前記ポルトランドセメント100質量部に対する前記フライアッシュの含有量が2質量部以上50質量部以下の範囲内にあり、前記フライアッシュは、45μmふるい残分が1質量%以上10質量%以下の範囲内にあって、分級精度指数к(D25/D75)が0.6以上0.7以下の範囲内にあり、ブレーン比表面積が3500cm2/g以上であることを特徴とするコンクリート構造物補修材。【選択図】図1

Description

本発明は、劣化したコンクリート構造物を補修するための補修材、およびその補修材を用いたモルタルに関するものである。
劣化したコンクリート構造物を補修する方法として、断面修復工法が知られている。断面修復工法とは、コンクリート構造物の劣化している部分を、はつり等を用いて除去し、コンクリートの除去部分をモルタルで被覆する工法である。モルタルは、セメントや細骨材などを含む補修材と水とを混練して調製した混練物である。コンクリートの除去部分をモルタルで被覆する方法としては、充填工法、吹き付け工法、左官工法が行なわれている。充填工法は、コンクリートの除去部分の周囲に型枠を取り付け、コンクリートの除去部分と型枠の間にモルタルを充填して修復する工法である。吹き付け工法はコンクリートの除去部分にモルタルを吹き付けて修復する工法である。左官工法は、コンクリートの除去部分に金ゴテや木ゴテ等を用いて人力によりモルタルを塗りつけて修復する工法である。
劣化したコンクリートの除去部分の断面積が大きい場所では、その補修には充填工法が広く利用されている。充填工法で使用するモルタルでは、コンクリートの除去部分と型枠の間へのモルタルの充填性を良くするため、また、セメントの水和発熱を抑制するために、混合材が添加されている。混合材としては、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末、フライアッシュなどが利用されている。
特許文献1には、セメントと、少なくとも2種類以上の低炭素性材料(シラス、シラスバルーン、ガラスバルーン、バイオマスボイラ灰、フライアッシュ、シリカフューム、硫酸リチウム、ギ酸カルシウム、高性能減水剤、高炉スラグ等)とを含有したセメント系混合材を、断面修復材として用いることが開示されている。
特許文献2には、セメントに混和材を加えてグラウト材を製造する方法において、混和材として、珪砂を含むと共にフライアッシュ、炭酸カルシウム又はセメントから選択された少なくとも一種を含み、更に再乳化粉末樹脂、減水剤、消泡剤、膨張剤、収縮低減剤、増粘剤、繊維又はスラグ微粉末から選択された少なくとも1種を配合したものを用いることが開示されている。
特許文献3には、ポルトランドセメント、BET比表面積0.75〜3.0m/gのスラグ、(C)フライアッシュ又は/及びメタカオリン粉末、(D)シリカフューム及び(E)生石灰系膨張材を含有する高耐久性断面修復材が開示されている。
特開2011−207686号公報 特開平10−230515号公報 特開2007−161507号公報
ところで、港湾構造物、橋梁、トンネルなどの大型コンクリート構造物に対して、充填工法を実施する場合、補修材と水とを混練してモルタルを調製する場所と、断面修復を行う施工場所とが近接しておらず、比較的離れた場所になることが多い。この場合には、モルタルを、圧送ポンプを用いて施工場所に圧送する必要がある。よって、モルタルは、ポンプ圧送性に優れることが望ましい。また、コンクリート構造物の下面などの複雑な凹凸形状を有する断面に充填するモルタルでは、流動性や自己充填性が高いことが求められる。
モルタルのポンプ圧送性と自己充填性を向上させるために、モルタルに増粘剤やシリカフュームのような超微粉材料を添加することが行なわれている。しかしながら、モルタルに増粘剤を添加すると粘度に対する温度依存性が大きくなり、施工面で問題になることがある。また、シリカフュームを添加すると、モルタルの粘度が高まり流動性が低下することおよび自己収縮や乾燥収縮が大きくなり硬化後のモルタルにひび割れが発生する懸念があった。
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ポンプ圧送性に優れ、かつ流動性と自己充填性とが高いコンクリート構造物補修用のモルタルおよびそのモルタルの原料として有利に用いることができるコンクリート構造物補修材を提供することにある。なお本発明では、「コンクリート構造物補修材」は水を加える前の粉体状の物質を意味し、以下「補修材」と云う場合がある。また、「モルタル」は、補修材と水とを混練して調製した混練物を意味する。
上記の課題を解決するために、本発明のコンクリート構造物補修材は、ポルトランドセメント、細骨材、フライアッシュ、消泡剤、減水剤を含むコンクリート構造物補修材であって、前記ポルトランドセメント100質量部に対する前記フライアッシュの含有量が2質量部以上50質量部以下の範囲内にあり、前記フライアッシュは、45μmふるい残分が1質量%以上10質量%以下の範囲内にあって、分級精度指数к(D25/D75)が0.6以上0.7以下の範囲内にあり、ブレーン比表面積が3500cm/g以上であることを特徴としている。
本発明のコンクリート構造物補修材によれば、45μmふるい残分、分級精度指数к(D25/D75)、ブレーン比表面積が上記の範囲内にあるフライアッシュを、ポルトランドセメント100質量部に対して2質量部以上50質量部以下の範囲内の量で含むので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルは、ポンプ圧送性に優れ、かつ流動性と自己充填性とが高くなる。
ここで、本発明のコンクリート構造物補修材において、前記フライアッシュは、ハンター表色系におけるL値が50.0以上であって、強熱減量が4.0質量%以下であり、メチレンブルー吸着量が0.80mg/g以下であることが好ましい。
フライアッシュは、石炭火力発電所のボイラ内での石炭の燃焼によって生じたものであり、石炭由来の未燃カーボンが残留していることが多い。このため、フライアッシュを含むコンクリート構造物補修材を用いたモルタルの硬化体は、未燃カーボンの浮き上がりによる黒斑が発生しやすい。ハンター表色系におけるL値、強熱減量、メチレンブルー吸着量が上記の範囲内にあるフライアッシュを用いることによって、未燃カーボンの浮き上がりによる黒斑の発生を抑制することができる。
また、本発明のコンクリート構造物補修材においては、前記ポルトランドセメント100質量部に対して、前記細骨材の含有量が50質量部以上300質量部以下の範囲内、前記消泡剤の含有量が0.03質量部以上2.0質量部以下の範囲内、前記減水剤の含有量が0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲内にあることが好ましい。
この場合、細骨材、消泡剤、減水剤の含有量が上記の範囲にあることによって、これら添加物の各作用が有効に作用するので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルは、流動性が高く、ポンプ圧送性に優れ、かつさらに自己充填性が高くなる。
また、本発明のコンクリート構造物補修材においては、さらに、再乳化粉末樹脂を、前記ポルトランドセメント100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下の範囲内の量で含んでいてもよい。
この場合、再乳化粉末樹脂を上記の範囲で含むので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルは、流動性と保水性が向上する。また、モルタルとコンクリート構造物(躯体)との付着性が高くなる。さらに、モルタルの硬化体は、塩化物イオン等の外部からの劣化因子の侵入が抑制され、ひび割れ抵抗性と中性化に対する抵抗性が高くなる。
また、本発明のコンクリート構造物補修材においては、さらに、膨張材を、前記ポルトランドセメント100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下の範囲内の量で含んでいてもよい。
この場合、膨張材を上記の範囲で含むので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルの硬化体はひび割れ抵抗性が向上する。
また、本発明のコンクリート構造物補修材においては、さらに、有機短繊維又は無機短繊維を、前記ポルトランドセメント100質量部に対して0.01質量部以上1.5質量部以下の範囲内の量で含んでいてもよい。
この場合、有機短繊維又は無機短繊維を上記の範囲で含むので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルの硬化体はひび割れ抵抗性が向上する。
本発明のモルタルは、上述のコンクリート構造物補修材と水とを含み、前記コンクリート構造物補修材100質量部に対する前記水の含有量が10質量部以上28質量部以下の範囲内にあることを特徴としている。
本発明のモルタルによれば、上述のコンクリート構造物補修材と水とを含み、コンクリート構造物補修材100質量部に対する水の含有量が10質量部以上28質量部以下の範囲内にあるので、ポンプ圧送性に優れ、かつ流動性と自己充填性とが高くなる。
ここで、本発明のモルタルにおいては、下記の測定方法により測定されるフロー値が、250mm以上320mm以下の範囲内にあることが好ましい。
(測定方法)
(1)平坦な鉄板の上に、JIS R 5201:2015に規定されているフローコーンを配置する。
(2)前記フローコーンに、前記モルタルを充填する。
(3)前記フローコーンを垂直方向に取り去る。
(4)前記鉄板の上に広がった前記モルタルの直径を測定し、その最大値をフロー値とする。
この場合、モルタルの流動性や断面保持性が高いので、コンクリート構造物の下面などの複雑な凹凸形状を有する断面にも充填しやすくなる。
本発明によれば、ポンプ圧送性に優れ、かつ流動性と自己充填性とが高いコンクリート構造物補修用のモルタルおよびそのモルタルの原料として有利に用いることができるコンクリート構造物補修材を提供することが可能となる。
本実施形態のモルタルを用いた断面補修方法の手順を示す模式断面図である。 実施例で使用したモルタルポンプ圧送装置の構成図である。 図3(I)は、実施例で使用した模擬充填容器の平面図であり、図3(II)は、(I)のII−II線断面図である。
以下、本発明の一実施形態であるコンクリート構造物補修材、およびその補修材を用いたモルタルについて説明する。
[コンクリート構造物補修材]
本実施形態のコンクリート構造物補修材は、ポルトランドセメント、細骨材、フライアッシュ、消泡剤、減水剤を含む粉末状の組成物である。本実施形態のコンクリート構造物補修材は、さらに必要に応じて再乳化粉末樹脂と膨張材と短繊維(有機短繊維又は無機短繊維)を含む。コンクリート構造物補修材は、水と混練してモルタルを調製するための原料として用いられる。
(ポルトランドセメント)
ポルトランドセメントには特に制限はなく、コンクリート構造物補修材のセメント源として利用されている公知のポルトランドセメントを用いることができる。ポルトランドセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントを用いることができる。
(フライアッシュ)
フライアッシュは、石炭火力発電所のボイラ内での石炭の燃焼によって生じた石炭灰の粒子が相互に凝集して生成した粒状物である。フライアッシュは、一般に粒子形状が球状で、その球状粒子によるボールベアリング効果によりモルタルの流動性、自己充填性を向上させると共にポンプ圧送性を高める作用がある。コンクリート構造物補修材のフライアッシュの含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して2質量部以上50質量部以下の範囲内であり、さらに好ましくは、5質量部以上30質量部以下の範囲内にある。フライアッシュの含有量が2質量部未満では、フライアッシュの添加効果が得られないおそれがある。一方、フライアッシュの含有量が50質量部を超えるコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルは、流動性が却って低下し、ポンプ圧送性が低下すると共に、モルタル硬化物は、強度や中性化に対する抵抗性が低下するおそれがある。
フライアッシュは、45μmふるい残分、分級精度指数k(D25/D75)、ブレーン比表面積、ハンター表色系におけるL値、強熱減量、メチレンブルー吸着量が所定の値とされている。
45μmふるい残分は、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)に準拠した方法により測定した値である。
45μmふるい残分が10質量%を超える、すなわち粗いフライアッシュ粒子が多くなりすぎるとフライアッシュの球状粒子によるボールベアリング効果が低下すると共に、モルタルの自己充填性が低下するおそれがある。一方、45μmふるい残分が1質量%未満になる、すなわち45μm以下の微細なフライアッシュ粒子が多くなりすぎると凝集粒子を形成しやすくなり、流動性が低下するおそれがある。また、石炭火力発電所のボイラ内で生成するフライアッシュは一般に粒度分布が広いため、45μmふるい残分が1質量%未満となるように分級条件を設定すると、分級効率が低下し、フライアッシュの生産性が低くなる場合がある。
このため、本実施形態では、45μmふるい残分を1質量%以上10質量%以下の範囲内とされている。
分級精度指数к(D25/D75)は、フライアッシュの部分分級効率曲線において、部分分級効率が25%となるときの粒径(D25、単位:μm)と部分分級効率が75%となるときの粒径(D75、単位:μm)との比であり、下記の式により求められる値である。
к=D25/D75
分級精度指数κは1に近いほど、粒度分布が狭く、粒径が揃っていることを意味する。
フライアッシュは、ある程度粒度分布が狭く、粒径が揃っている方が、そのボールベアリング効果による流動性改善効果が高くなるので好ましい。分級精度指数кが0.6未満になると、ボールベアリング効果が低下して、モルタルのポンプ圧送性と自己充填性が低下するおそれがある。一方、分級精度指数кが0.7を超えると粒度分布が狭くなりすぎて、コンクリート構造物補修材内にフライアッシュを均一に分散させにくくなり、モルタルの自己充填性が低下するおそれがある。また、石炭火力発電所のボイラ内で生成するフライアッシュは一般に粒度分布が広いため、分級精度指数κを0.7よりも高く設定すると分級効率が低下し、フライアッシュの生産性が低くなる場合がある。
このため、本実施形態では、分級精度指数к(D25/D75)は0.6以上0.7以下の範囲内とされている。
ブレーン比表面積は、ブレーン法により測定された比表面積であり、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)に準拠した方法により測定した値である。
ブレーン比表面積が小さくなりすぎるとフライアッシュ粒子が粗くなるため、ポゾラン活性が低下して、モルタルの強度発現性が低下するおそれがある。また、フライアッシュの球状粒子によるボールベアリング効果が薄れ、モルタルの流動性が悪くなり、自己充填性が低下するおそれがある。このため、本実施形態では、ブレーン比表面積は3500cm/g以上とされている。一方、ブレーン比表面積が大きくなりすぎる、すなわちフライアッシュ粒子が細かくなりすぎると、凝集粒子を形成しやすくなり、流動性が低下するおそれがある。このため、ブレーン比表面積は、7000cm/g以下であることが好ましい。
ハンター表色系におけるL値は、一般に明度を表す。未燃カーボンを含まないフライアッシュは固有のL値を持つが、黒色の未燃カーボンのL値はほぼ0であるため、未燃カーボンを含むフライアッシュのL値は、フライアッシュの未燃カーボンの含有量と相関すると考えられる。すなわち、L値が低い(明度が低い=黒色に近い)ことは、フライアッシュの未燃カーボンの含有量が多いことの指標になると考えられる。このため、本実施形態では、L値は50.0以上とされている。L値は、54.0以上であることがさらに好ましい。
強熱減量は、フライアッシュを975±25℃に調節した電気炉で強熱したときの減量であり、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)に準拠した方法により測定した値である。未燃カーボンは通常975℃までの温度で燃焼するので、強熱減量は、フライアッシュの未燃カーボンの含有量と相関すると考えられる。すなわち、強熱減量が多いことは、フライアッシュの未燃カーボンの含有量が多いことの指標になると考えられる。このため、本実施形態では、強熱減量は4.0質量%以下とされている。強熱減量は、3.0質量%以下であることが好ましい。
メチレンブルー吸着量(MB吸着量)は、セメント協会標準試験方法JCAS I−61:2008(フライアッシュのメチレンブルー吸着量 試験方法)に準拠した方法により測定した値である。メチレンブルーは炭素に吸着しやすいため、MB吸着量は、フライアッシュの未燃カーボンの含有量と相関すると考えられる。すなわち、MB吸着量が多いことは、フライアッシュの未燃カーボンの含有量が多いことの指標になると考えられる。このため、本実施形態では、MB吸着量は0.8mg/g以下とされている。MB吸着量は、0.75mg/g以下であることが好ましい。
ただし、L値は未燃カーボン以外の着色成分の混入によって変動する。強熱減量は未燃カーボン以外の可燃物の燃焼や水和物の脱水や炭酸塩の脱炭酸などによって変動する。MB吸着量は、未燃カーボン以外のメチレンブルーを吸着する多孔質物質の混入によって変動する。よって、L値、強熱減量およびMB吸着量の各測定値からでは、フライアッシュの未燃カーボンを単純に推定することはできない。このため、本実施形態では、L値、強熱減量およびMB吸着量の各測定値の全てが上記の数値を満足するフライアッシュを用いている。
以上のようなフライアッシュは、例えば、石炭火力発電所にて回収されたフライアッシュから未燃カーボンを除去し、分級して粒径を調整することによって製造することができる。未燃カーボンを除去する方法としては、特に制限はないが、浮選法、静電選別法、加熱法、分級法を用いることができる。浮選法とは、フライアッシュと水とを含むスラリーを調製し、疎水性の未燃カーボンをスラリー中に浮上させて浮上物として除去する方法である。静電選別法とは、フライアッシュと未燃カーボンとを互いに逆の電荷に帯電させ、電荷の極性を利用して未燃カーボンを除去する方法である。加熱法とは、未燃カーボンを加熱分解して除去する方法である。分級法は、分級によって粗大な未燃カーボンの粒子を除去する方法である。
(細骨材)
細骨材には特に制限はなく、コンクリート構造物補修材の細骨材として利用されている公知の細骨材を用いることができる。細骨材としては、例えば、山砂、川砂、陸砂、砕砂、海砂、珪砂4〜9号を用いることができる。
細骨材の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して50質量部以上300質量部以下の範囲内にあることが好ましく、70質量部以上250質量部以下の範囲内にあることが好ましい。細骨材の含有量が50質量部未満では、コンクリート構造物補修材に水を加えて練り混ぜるときの分散媒体となる細骨材が少なくなりすぎて、良好な練り混ぜができなくなるおそれがあるとともに、モルタル硬化物の乾燥収縮や自己収縮が大きくなり、補修部にひび割れが発生するおそれがある。一方、細骨材の含有量が300質量部を超えると、細骨材がモルタル内で沈降、分離するおそれがあるとともに、モルタル硬化物の強度低下を招くおそれがある。
(消泡剤)
消泡剤は、モルタルの泡の発生を抑えて、流動性を向上させる作用がある。消泡剤としては、例えば、エーテル類、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、高級アルコール、高重合グリコール、シリコーン類等などコンクリート構造物補修材の消泡剤として利用されている公知の材料を用いることができる。
消泡剤の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して0.03質量部以上2.0質量部以下の範囲内にあることが好ましく、0.05質量部以上1.5質量部以下の範囲内にあることがさらに好ましい。消泡剤の含有量が0.03質量部未満では、消泡剤による上記の効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、消泡剤の含有量が2.0質量部を超えても、消泡効果の増大が期待できないばかりか、モルタルの硬化遅延や強度発現性が悪くなるという弊害が生じるおそれがある。
(減水剤)
減水剤は、モルタルのポルトランドセメントの分散性を高めて、モルタルの流動性を向上させる作用がある。減水剤としては、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤を用いることができる。減水剤の材料としては、例えば、リグニンスルフォン酸塩、オキシ有機酸塩、βナフタリンスルフォン酸塩、ポリカルボン酸塩、メラミン樹脂スルフォン酸塩、クレオソート油スルフォン酸縮合物塩などコンクリート構造物補修材の減水剤として利用されている公知の材料を用いることができる。
減水剤の含有量は、減水剤の種類によっても異なるが、ポルトランドセメント100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲内にあることが好ましく、0.20質量部以上3.0質量部以下の範囲内に有ることがさらに好ましい。減水剤の含有量が0.1質量部未満では、減水剤による上記の効果が十分に発揮されず、モルタルの粘度が高くなり流動性が改善されないおそれがある。一方、減水剤の含有量が5.0質量部を超えても、減水剤による効果の増大が期待できないばかりか、モルタルの硬化遅延や強度発現性が悪くなるという弊害が生じるおそれがある。
(再乳化粉末樹脂)
再乳化粉末樹脂は、モルタルの流動性と保水性を向上させる作用がある。また、モルタルとコンクリート構造物(躯体)との付着性を向上させる作用がある。さらに、モルタル硬化体への塩化物イオン等の外部からの劣化因子の侵入を抑制し、モルタル硬化体のひび割れ抵抗性や中性化に対する抵抗性を高める作用がある。再乳化粉末樹脂(樹脂エマルジョン)としては、例えば、アクリル系、アクリル−ベオバ系、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)系、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)系などコンクリート構造物補修材の再乳化粉末樹脂として利用されている公知の材料を用いることができる。
再乳化粉末樹脂の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下の範囲内にあることが好ましく、2.0質量部以上10.0質量部以下の範囲内にあることがさらに好ましい。再乳化粉末樹脂の含有量が1.0質量部未満では、再乳化粉末樹脂による上記の効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、再乳化粉末樹脂の含有量が20質量部を超えると、モルタルの粘度が高くなりすぎて、ポンプ圧送性が低下するおそれがある。
(膨張材)
膨張材は、その膨張作用によりモルタル硬化物の乾燥収縮や自己収縮を補償して、モルタル硬化体のひび割れ発生を抑制する作用がある。膨張材としては、エトリンガイト系、石灰系、エトリンガイト・石灰複合系などのコンクリート構造物補修材の膨張材として利用されている公知の材料を用いることができる。
膨張材の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下の範囲内にあることが好ましく、2.0質量部以上10.0質量部以下の範囲内にあることがさらに好ましい。膨張材の含有量が1.0質量部未満では、膨張材による上記の効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、膨張材の含有量が20質量部を超えると、過剰な膨張による膨張ひび割れが生じ、モルタル硬化物の強度が低下するおそれがある。
(有機短繊維又は無機短繊維)
有機短繊維又は無機短繊維は、モルタルの硬化体の強度を向上させる作用がある。有機短繊維又は無機短繊維は、直径が0.01mm以上1.0mm以下の範囲内にあって、長さが2mm以上30mm以下の範囲内にあることが好ましい。有機短繊維としては、例えば、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維を用いることができる。無機短繊維としては、例えば、炭素繊維、鋼繊維を用いることができる。
有機短繊維又は無機短繊維の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して0.01質量部以上1.5質量部以下の範囲内にあることが好ましく、0.02質量部以上1.0質量部以下の範囲内にあることがさらに好ましい。有機短繊維又は無機短繊維の含有量が0.01質量部未満では、有機短繊維又は無機短繊維による上記の効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、有機短繊維又は無機短繊維の含有量が1.5質量部を超えると、繊維の立体障害作用により、モルタルのポンプ圧送性や自己充填性が低下するおそれがある。
(その他の成分)
コンクリート構造物補修材は、さらに他の混和材を含んでいてもよい。他の混和材の例としては、増粘剤、空気連行剤、防錆剤、速硬性混和材、凝結調整剤を挙げることができる。
(コンクリート構造物補修材の製造方法)
本実施形態のコンクリート構造物補修材は、上述の材料を混合することによって製造することができる。混合装置としては、ロッキングミキサ、V型ミキサ、縦型ミキサ、万能混合機等の通常の粉体混合装置を用いることができる。
[モルタル]
本実施形態のモルタルは、上述のコンクリート構造物補修材と水とを含む。モルタルは、水の含有量が、コンクリート構造物補修材100質量部に対する量として10質量部以上28質量部以下の範囲内とされている。水の含有量が少なくなりすぎるとモルタルの流動性が大きく低下し、圧送ポンプによる圧送ができなくなるおそれがある。また、水の含有量が多くなりすぎると、流動性が高くなりすぎて材料分離が生じ、圧送ポンプによる圧送ができなくなるおそれがある。また、過剰な先流れが起こり、自己充填性が損なわれるおそれがある。
本実施形態のモルタルは、下記の方法によって測定されるフロー値が、250mm以上320mm以下の範囲内にあることが好ましい。なお、下記の測定方法は、モルタルに落下運動を与えずに静置した状態でフロー値(静置フロー値)を測定する点で、JIS R 5201に規定されているフロー値の測定方法とは異なる。
(1)平坦な鉄板の上に、JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)に規定されているフローコーン(材質:鋼、下部内径:100mm、上部内径:700mm、高さ:60mm)を配置する。
(2)フローコーンに、モルタルを充填する。なお、モルタルは2層詰めする。
(3)フローコーンを垂直方向に取り去る。
(4)鉄板の上に広がったモルタルの直径を測定し、その最大値をフロー値とする。
また、本実施形態のモルタルは、上記のフロー値(静置フロー値)の測定において、フローコーンを取り去ってから、モルタルの直径が200mmに到達するまでの静置フロー到達時間が5秒以上60秒以下の範囲内にあることが好ましい。また、直径が250mmに到達するまでの静置フロー到達時間は20秒以上120秒以下の範囲内にあることが好ましい。さらに直径が280mmに到達するまでの静置フロー到達時間は30秒以上180秒以下の範囲内にあることが好ましい。なお、静置フロー到達時間は、例えば、上記のフロー値(静置フロー値)の測定において、平坦な鉄板の表面に直径200mm、250mm、280mmの円を描いておき、フローコーンを取り去ってから、モルタルの直径がその円に接触するまでの時間を計測することによって測定することができる。
(モルタルの調製方法)
モルタルは、コンクリート構造物補修材と水とを混合することによって調製することができる。コンクリート構造物補修材と水との混合は、コンクリート構造物補修材に水を加えて混合してもよいし、水にコンクリート構造物補修材を加えて混合してもよい。
(断面修復方法)
本実施形態のモルタルを用いたコンクリート構造物の下面および側面の修復方法について、説明する。
図1は、本実施形態のモルタルを用いた断面補修方法の手順を示す模式断面図である。
図1(a)に示すように、コンクリート構造物10の下面にモルタル充填用の型枠20を取り付ける。コンクリート構造物10は、下面に深く削られた窪み部11を有する。型枠20は、下面にモルタル導入口21を備え、上方側面にモルタル排出口22を有する。
次いで、モルタル導入口21から型枠20の内部にモルタル30を導入する。図1(b)に示すように、型枠20の内部に導入されたモルタル30はコンクリート構造物10と型枠20の間に広がる。図1(c)に示すように、本実施形態のモルタル30は、モルタル30の型枠20に接する側の下側先端31と、コンクリート構造物10に接する側の上側先端32との距離(以下、先流れ長さともいう)が短く、自己充填性が高いので、コンクリート構造物10の窪み部11にモルタル30を均一に充填することができる。モルタル30の先流れ長さが長くなりすぎると、コンクリート構造物10の窪み部11にモルタル30を充填できずに、窪み部11に空隙が残ってしまうおそれがある。
次いで、図1(d)に示すように、モルタル排出口22からモルタル30が排出されたら、モルタル30の導入口を停止する。そして、モルタル30が硬化した後、型枠20を取り外す。
以上のような構成とされた本実施形態のコンクリート構造物補修材によれば、45μmふるい残分、分級精度指数к(D25/D75)、ブレーン比表面積が上記の範囲内にあるフライアッシュを、ポルトランドセメント100質量部に対して2質量部以上50質量部以下の範囲内の量で含むので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルは、ポンプ圧送性に優れ、かつ流動性と自己充填性とが高くなる。
また、本実施形態のコンクリート構造物補修材において、フライアッシュが、ハンター表色系におけるL値が50.0以上であって、強熱減量が4.0質量%以下であり、メチレンブルー吸着量が0.80mg/g以下である場合は、未燃カーボンの浮き上がりによる黒斑の発生を抑制することができる。
また、本実施形態のコンクリート構造物補修材において、ポルトランドセメント100質量部に対して、細骨材の含有量が50質量部以上300質量部以下の範囲内、消泡剤の含有量が0.03質量部以上2.0質量部以下の範囲内、減水剤の含有量が0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲内にある場合は、これら添加物の各作用が有効に作用するので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルは、流動性が高く、ポンプ圧送性に優れ、かつさらに自己充填性が高くなる。
また、本実施形態のコンクリート構造物補修材においては、さらに、再乳化粉末樹脂を、ポルトランドセメント100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下の範囲内の量で含むので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルは、流動性と保水性が向上する。また、モルタルとコンクリート構造物(躯体)との付着性が高くなる。さらに、モルタルの硬化体は、塩化物イオン等の外部からの劣化因子の侵入が抑制され、ひび割れ抵抗性と中性化に対する抵抗性が高くなる。
また、本実施形態のコンクリート構造物補修材においては、さらに、膨張材を、ポルトランドセメント100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下の範囲内の量で含むので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルの硬化体はひび割れ抵抗性が向上する。
また、本実施形態のコンクリート構造物補修材においては、さらに、有機短繊維又は無機短繊維を、ポルトランドセメント100質量部に対して0.01質量部以上1.5質量部以下の範囲内の量で含むので、このコンクリート構造物補修材を用いて調製したモルタルの硬化体はひび割れ抵抗性を向上する。
本実施形態のモルタルは、上述のコンクリート構造物補修材と水とを含み、コンクリート構造物補修材100質量部に対する水の含有量が10質量部以上28質量部以下の範囲内にあるので、ポンプ圧送性に優れ、かつ流動性と自己充填性とが高くなる。
また、本実施形態のモルタルにおいては、上述の測定方法により測定されるフロー値が、250mm以上320mm以下の範囲内にあり、流動性が高いので、コンクリート構造物の下面などの複雑な凹凸形状を有する断面に充填しやすくなる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、モルタルを用いたコンクリート構造物の下面および側面の断面修復方法について説明したが、モルタルの用途は、コンクリート構造物の断面補修に限定されるものではない。本実施形態のモルタルは、例えば、コンクリート構造物の下面増厚補強や鋼板巻き立てによる耐震補強の充填モルタルなどとして使用することができる。
また、本実施形態のコンクリート構造物補修材では、再乳化粉末樹脂を含む構成としたが、例えば、外部から劣化因子の影響を受けないようなコンクリート構造物の補修に用いる場合は、再乳化粉末樹脂は含まなくてもよい。
また、本実施形態のコンクリート構造物補修材では、膨張材を含む構成としたが、例えば、乾燥の影響を受けないようなコンクリート構造物の補修に用いる場合は、膨張材は含まなくてもよい。
さらに、本実施形態のコンクリート構造物補修材では、有機短繊維又は無機短繊維を含む構成としたが、例えば、モルタルの硬化体の強度を向上させる必要がない場合は、有機短繊維又は無機短繊維は含まなくてもよい。
次に、本発明の作用効果を実施例により説明する。
<使用材料>
本実施例では、下記の表1に示す材料と表2に示すフライアッシュA〜Iとを使用した。なお、フライアッシュA〜Iは、異なる石炭火力発電所にて回収されたフライアッシュを、強制渦流式分級装置(日新エンジニアリング社製、ターボクラシファイア、型式TCF−2000)を用いて、回転翼の回転数1000rpmの条件で分級して得た細粉側のフライアッシュである。
Figure 2019178035
Figure 2019178035
[本発明例1〜5、比較例1〜3]
(コンクリート構造物補修材の調製)
上記の表1に示す材料と表2に示すフライアッシュAとを、下記の表3に示す配合割合で、かつ合計量100kgとなるように計り取った。次いで、計り取った各材料とフライアッシュとを、V型混合機(徳寿工作所社製、型式:CV−200)で20分間乾式混合して、コンクリート構造物補修材(補修材A1〜A5)を調製した。また、フライアッシュを加えずに、各材料を下記の表3に示す配合割合で混合したこと以外は同様にして、コンクリート構造物補修材(補修材B1〜B4)を調製した。
Figure 2019178035
(モルタルの調製)
コンクリート用強制練りミキサ(太平洋機工社製、型式:TM−55型、容量50L)に、水道水7.5kgを投入した。次いで、この水道水を低速で撹拌しながら、上記水道水に、上記で調整したコンクリート構造物補修材50kgを投入した。コンクリート構造物補修材の投入後、30秒間混練して、ミキサ壁面の付着物を掻き落とした後、さらに2分30秒間混練してモルタルを調製した。モルタルは、2回調製した。
上記のようにして調製したモルタルを用いて、下記の評価を実施した。その結果を、下記の表4に示す。
(フロー値(静置フロー値)、静置フロー到達時間)
フロー値(静置フロー値)は、前述の方法により測定した。
静置フロー到達時間は、以下の方法により測定した。
フローコーンを取り去ってから、モルタルの直径が200mm、250mm、および280mmに到達するまでの時間を計測し、その時間を、静置フロー到達時間とした。
(ポンプ圧送可能時間)
ポンプ圧送可能時間は、図2に示すモルタルポンプ圧送装置を用いて測定した。モルタルポンプ圧送装置40は、ホッパー41が付設された圧送ポンプ42と、一方の端部が圧送ポンプ42の吐出口43に接続し、他方の端部がホッパー41に接続するホース45からなる。圧送ポンプ42は、スクイズ式モルタル圧送ポンプ(岡三機工社製、型式:AKP−50)を用いた。ホース45は内径25mm×長さ30mmの圧送用耐圧ホースを用いた。このモルタルポンプ圧送装置40において、圧送ポンプ42を作動させると圧送ポンプの吐出口43から吐出されたモルタルは、ホース45を通ってホッパー41に送られる。ホッパー41に送られたモルタルは、圧送ポンプ42の吸入口44に送られ、再度圧送ポンプの吐出口から吐出される。
ポンプ圧送可能時間の測定は、次のようにして行った。圧送ポンプ42を10分間作動させた後、2分間停止させる圧送パターンを繰り返し、ホース45のホッパー41側の先端からモルタルが吐出されてから、モルタルが吐出されなくなるまでの時間を計測することによって測定した。ポンプ圧送可能時間が長い方が、ポンプ圧送性に優れている。
(先流れ性)
先流れ性は、図3に示す模擬充填容器を用いて評価した。図3(I)は、模擬充填容器の平面図であり、図3(II)は、(I)のII−II線断面図である。模擬充填容器50は、互いに対向する長方形状の底板51と天板52と、底板51と天板52の長辺側の両端部に備えた側面板53と、短辺側の一方の端部に備えられた背面板54により形成された充填部55を備える。短辺側の他方の端部は開口部56とされている。底板51は、短辺側の側面の近傍にモルタル注入口57を備えている。天板52は、透明なアクリル板製である。模擬充填容器50の充填部55は、幅Wが200mm、長さLが800mm、厚さTが20mmとされている。この模擬充填容器50において、モルタル注入口57から充填部に注入されたモルタル30は、開口部56に向かって流れる。
先流れ性は、底板51に接するモルタル30の下側先端31とモルタル注入口との長さが300mmとなったときに、底板51に接するモルタル30の下側先端31と、天板52に接するモルタル30の上側先端32との間の長さを、先流れ長さとして評価した。先流れ長さが150mm以下の場合を○とし、先流れ長さが150mmを超え250mm以下の範囲内にある場合を△、250mmを超える場合を×とした。
(圧縮強度)
圧縮強度は、JIS A 5201:2015(セメントの物理試験方法)に準拠した方法により、材齢7日と材齢28日で測定した。圧縮強度測定用の試験体は、モルタルを40mm×40mm×160mmの鋼製型枠に充填し、材齢1日で脱枠し、所定材齢まで水温20℃の水中で養生することによって作製した。
(黒斑の発生数)
上記の先流れ性の評価において、模擬充填容器の充填部に充填したモルタルを、模擬充填容器の天板の表面を目視観察し、未燃カーボンの浮き上がりによる黒斑の発生状況を確認した。天板の表面(1600cm)に対して、黒斑が全く認められない場合を「○」、黒斑の個数が10個以下の場合を「△」、黒斑の個数が11個以上の場合を「×」として評価した。
Figure 2019178035
混合材としてフライアッシュの代わりに石灰石微粉末を添加した補修材B1を用いた比較例1のモルタルは、ポンプ圧送性と自己充填性とが低くなった。石灰石微粉末と共に、増粘剤を添加した補修材B2を用いた比較例2のモルタルおよびシリカフュームを添加した捕集材B3を用いた比較例3のモルタルは、ポンプ圧送性と自己充填性とがやや向上したが、流動性が低下した。
これに対して、フライアッシュAを、ポルトランドセメント100質量部に対して2質量部以上50質量部以下の範囲内の量で含む補修材A1〜A5を用いた本発明例1〜5のモルタルは、流動性、ポンプ圧送性、自己充填性のいずれついても優れていた。
[本発明例6〜8、比較例4〜8]
(コンクリート構造物補修材の調製)
上記の表1に示す材料と表2に示すフライアッシュB〜Iとを、下記の表5に示す配合割合で、かつ合計量100kgとなるように計り取ったこと以外は、本発明例4と同様にして、コンクリート構造物補修材(補修材A6〜A13)を調製した。
Figure 2019178035
(モルタルの調製)
上記のようにして調製したコンクリート構造物補修材を用いたこと以外は、本発明例4と同様にして水道水とコンクリート構造物補修材を練り混ぜて、モルタルを調製した。
得られたモルタルについて、本発明例4と同様の評価を実施した。その結果を、本発明例4の結果と共に、下記の表6に示す。
Figure 2019178035
45μmふるい残分、分級精度指数к、ブレーン比表面積が本発明の範囲から外れるフライアッシュE〜Iを用いて調製した比較例4〜8のモルタルは、自己充填性が低下した。また、分級精度指数кが本発明の範囲よりも低いフライアッシュGを用いて調製した比較例7のモルタルは、ポンプ圧送性も低下した。
これに対して、45μmふるい残分、分級精度指数к、ブレーン比表面積が本発明の範囲にあるフライアッシュA〜Dを含む補修材A4、A6〜A8を用いた本発明例4、6〜8のモルタルは、流動性、ポンプ圧送性、自己充填性のいずれついても優れていた。特に、ハンター表色系におけるL値が50.0以上であって、強熱減量が4.0質量%以下であり、メチレンブルー吸着量が0.80mg/g以下であるフライアッシュA〜Cを含む補修材A4、A6〜A7を用いた本発明例4、6〜7のモルタルは、未燃カーボンの浮き上がりによる黒斑の発生が少なく、外観も優れていた。
[本発明例9〜13、比較例9〜10]
(コンクリート構造物補修材の調製)
上記の表1に示す材料と表2に示すフライアッシュAとを、下記の表7に示す配合割合で、かつ合計量100kgとなるように計り取ったこと以外は、本発明例4と同様にして、コンクリート構造物補修材(補修材A14)を調製した。
Figure 2019178035
上記の表7に示すコンクリート構造物補修材A14および表3に示すコンクリート構造物補修材A4を用い、補修材100質量部に対する水の含有量を下記の表8に示す量としたこと以外は、本発明例4と同様にして水道水とコンクリート構造物補修材を練り混ぜて、モルタルを調製した。
得られたモルタルについて、本発明例4と同様の評価を実施した。その結果を、本発明例4の結果と共に、下記の表8に示す。
Figure 2019178035
水の含有量が本発明の範囲よりも少ない比較例9のモルタルは、流動性が大きく低下し、圧送ポンプによる圧送ができなかった。また、水の含有量が本発明の範囲よりも多い比較例10のモルタルは、流動性は高いが、圧送ポンプによる圧送ができなかった。
これに対して、水の含有量が本発明の範囲にある本発明例4、9〜13のモルタルは、流動性、ポンプ圧送性、自己充填性のいずれついても優れていた。
以上の結果から、本発明例によれば、ポンプ圧送性に優れ、かつ流動性と自己充填性とが高いコンクリート構造物補修用のモルタルおよびそのモルタルの原料として有利に用いることができるコンクリート構造物補修材を提供することが可能となることが確認された。
10 コンクリート構造物
11 窪み部
20 型枠
21 モルタル導入口
22 モルタル排出口
30 モルタル
31 下側先端
32 上側先端
40 モルタルポンプ圧送装置
41 ホッパー
42 圧送ポンプ
43 吐出口
44 吸入口
50 模擬充填容器
51 底板
52 天板
53 側面板
54 背面板
55 充填部
56 開口部
57 モルタル注入口

Claims (8)

  1. ポルトランドセメント、細骨材、フライアッシュ、消泡剤、減水剤を含むコンクリート構造物補修材であって、
    前記ポルトランドセメント100質量部に対する前記フライアッシュの含有量が2質量部以上50質量部以下の範囲内にあり、
    前記フライアッシュは、45μmふるい残分が1質量%以上10質量%以下の範囲内にあって、分級精度指数к(D25/D75)が0.6以上0.7以下の範囲内にあり、ブレーン比表面積が3500cm/g以上であることを特徴とするコンクリート構造物補修材。
  2. 前記フライアッシュは、ハンター表色系におけるL値が50.0以上であって、強熱減量が4.0質量%以下であり、メチレンブルー吸着量が0.80mg/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物補修材。
  3. 前記ポルトランドセメント100質量部に対して、前記細骨材の含有量が50質量部以上300質量部以下の範囲内、前記消泡剤の含有量が0.03質量部以上2.0質量部以下の範囲内、前記減水剤の含有量が0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート構造物補修材。
  4. さらに、再乳化粉末樹脂を、前記ポルトランドセメント100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下の範囲内の量で含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物補修材。
  5. さらに、膨張材を、前記ポルトランドセメント100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下の範囲内の量で含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物補修材。
  6. さらに、有機短繊維又は無機短繊維を、前記ポルトランドセメント100質量部に対して0.01質量部以上1.5質量部以下の範囲内の量で含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物補修材。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載のコンクリート構造物補修材と水とを含み、前記コンクリート構造物補修材100質量部に対する前記水の含有量が10質量部以上28質量部以下の範囲内にあることを特徴とするモルタル。
  8. 下記の測定方法により測定されるフロー値が、250mm以上320mm以下の範囲内にあることを特徴とする請求項7に記載のモルタル。
    (測定方法)
    (1)平坦な鉄板の上に、JIS R 5201:2015に規定されているフローコーンを配置する。
    (2)前記フローコーンに、前記モルタルを充填する。
    (3)前記フローコーンを垂直方向に取り去る。
    (4)前記鉄板の上に広がった前記モルタルの直径を測定し、その最大値をフロー値とする。
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