JP6901833B2 - コンクリート組成物及びコンクリート硬化体 - Google Patents
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Description
遮蔽壁を構成する材料としては、通常密度2.1t/m3(t/m3=1000kg/m3)程度の普通コンクリート組成物を硬化させてなる硬化体を使用する。しかし、普通コンクリート組成物により得られるコンクリート硬化体では、遮蔽性能が劣り、このため、遮蔽壁の厚さを厚くすることが行われており、改良が望まれている。
このため、研究用原子炉、放射線利用施設等では、密度3.0t/m3以上の重量コンクリート硬化体を得ることができるコンクリート組成物を使用して遮蔽性能を確保する場合がある。密度3.0t/m3以上の硬化体を得ることができるコンクリート組成物は、放射線の遮蔽用途のみならず、カウンターウェイト、重い機械の基礎等にも使用することができ、有用である。このような密度3.0t/m3以上の硬化体を得ることができるコンクリート組成物を、以下、重量コンクリート組成物と称することがある。
第1の実施形態によれば、細骨材として、酸化鉄粉と砂とを適切な比率で含有することで、必要な高密度とすることができ、酸化鉄の重量と砂の有する材料分離抵抗性との双方が良好となり、流動性に優れ、打設時の作業性が良好なコンクリート組成物となる。このため、遮蔽を目的としたマスコンクリート硬化体の製造のみならず、例えば、施設で使用する様々な機器の配管貫通部など、複雑な形状の部位にポンプ打設が可能であるという利点を有する。
さらに、本実施形態のコンクリート組成物は、かさ容積が大きく吸水率の少ない赤鉄鉱の粗骨材を含むことで、打設後の単位容積質量の変化が低減され、安定した密度のコンクリート硬化体が得られる。密度の安定した重量コンクリート硬化体は、放射線に対する高い遮蔽性能を確保できる。
(A)エチレン、パラフィンから選ばれる樹脂を含む樹脂粒子
(B)10B、6Li、Cd及びGdから選ばれる金属粒子
(C)石膏の硬化体である無機粒子
第2の実施形態によれば、第1の実施形態のコンクリート組成物が有する放射線、特にガンマ線の遮蔽効果に加え、中性子線遮蔽効果をも得ることができるため、各種放射性物質を取扱う施設において、より優れた放射線遮蔽性を得ることができる。
第3の実施形態は、既述の第1の実施形態又は第2の実施形態であるコンクリート組成物の硬化物であり、高密度な硬化体であり、各種放射性物質を取扱う施設に使用した場合、従来のコンクリート組成物の硬化体に比較し、厚さ1/2〜1/3であっても同等の放射線遮蔽性が達成される。
また、硬化体の原料となるコンクリート組成物の打設時の作業性が良好であり、生産性よく製造し得るため、各種放射性物質を取扱う施設のみならず、カウンターウェイト、重機を配置する建造物の基礎などにも好適に使用される。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、工程との文言は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「高密度のコンクリート硬化体」とは、「密度3.0t/m3以上のコンクリート硬化体」を指す。
本実施形態のコンクリート組成物は、セメント、粗骨材、細骨材及び水を含有し、前記粗骨材は赤鉄鉱石を含み、前記細骨材は、酸化鉄粉と砂とを含み、酸化鉄粉に対する砂の含有量が、容積比で3/7〜7/3の範囲である。
本実施形態のコンクリート組成物と、水と、所望により含有される公知の添加剤、例えば、公知の混和材料等と、を混合した混合物は、流動性に優れ、混練り時、打設時における分離が抑制されている。また、本実施形態のコンクリート組成物とすることで、高密度で、放射線遮蔽性が良好なコンクリート硬化体を得ることができる。
本実施形態のコンクリート組成物は、セメントを含む。
本実施形態におけるセメントには特に制限はなく、水と混合して硬化体を形成しうる材料であれば適宜選択して用いることができる。
セメントとしては、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、混合セメントすなわち、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどをポルトランドセメントの一部に置換したセメントなどが挙げられる。
コンクリート硬化体の中でも、大面積の硬化体ほど温度応力が発生しやすく、ひび割れなどが生じやすくなるところ、大面積の高密度硬化体を形成した際においても、ひび割れなどの発生が低減されるという観点からは、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等が好ましい。
コンクリート硬化体を製造する場合、通常は、コンクリート組成物中に、水硬性材料の総量として、240kg/m3〜1000kg/m3含有することができる。例えば、汎用のコンクリート硬化体の製造においては、320kg/m3〜530kg/m3含有することが好ましい。
本実施形態のコンクリート組成物における水/結合材比には特に制限はなく、コンクリート組成物により得られる硬化体の使用目的によって適宜選択される。
本実施形態においては、打設時の作業性及び高密度の硬化体を得やすいという観点から水結合材比は質量比で、14%〜68%の範囲とすることができ、30%〜52%であることが好ましい。
水/結合材比が上記範囲において、セメント組成物の流動性が良好に維持され、且つ、得られる硬化体の密度をより高くすることができる。
本実施形態のコンクリート組成物は、粗骨材を含有する。本実施形態における粗骨材は、赤鉄鉱石を含む。
赤鉄鉱石は、JIS A 1109(2006年)により測定した絶乾密度が、およそ4.70g/cm3であり、JIS A 1109により測定した吸水率は0.5%〜0.9%の範囲であった。この吸水率は、通常コンクリート組成物に使用される砕石と同等であり、コンクリート組成物に好適に使用されることがわかる。
赤鉄鉱石の微粒分量はJIS A 5005(2009年) の規格内である3.0%以下であり、流動性を低下させない範囲である。
赤鉄鉱石は、鉄鉱石の一種として市販されており、例えば、鉄鋼メーカ等から入手可能である。
本実施形態のコンクリート組成物には、粗骨材としての赤鉄鉱石を1種のみ含んでもよく、互いに物性の異なる2種以上を含んでもよい。
併用可能な他の粗骨材としては、公知のコンクリート用骨材、再生骨材等が挙げられる。目的とする高密度硬化体を得易いという観点からは、他の粗骨材として、さらに、赤鉄鉱より比重の高い鉄等の金属を切断した骨材、磁鉄鉱、重晶石、タングステン、ウランなどが挙げられる。
本実施形態のコンクリート組成物は細骨材を含む。本実施形態における細骨材は、酸化鉄粉と砂とを含み、酸化鉄粉に対する砂の含有量が、容積比で3/7〜7/3の範囲である。
細骨材の選択に当たり、赤鉄鉱細骨材、市販重量細骨材、市販酸化鉄粉材、山砂のそれぞれについて、粒度分布を測定した。図1は、細骨材としての赤鉄鉱細骨材、市販重量細骨材、市販酸化鉄粉材、及び山砂の粒度分布の測定結果を示すグラフである。
グラフでは、縦軸に各ふるいを通過する細骨材の質量分率、横軸にふるいの呼び寸法を示す。また、参考にJIS A 5005の規格範囲を破線(凡例中、JISと記載)で示した。
図1に明らかなように、本実施形態において細骨材として使用することができる酸化鉄粉と山砂は、単独で、それぞれがJIS規格内であった。他方、市販重量細骨材は、上記JISの規格を外れていることがわかる。
酸化鉄粉は、市販品として入手可能であり、例えば、太平洋セメント(株)などから市販されている。
山砂は、絶乾密度が2.50g/cm3〜3.00g/cm3であり、吸水率は0.0〜3.0%であり、微粒分量は9.0%以下の範囲のものを用いることが好ましい。
本実施形態における細骨材は、酸化鉄粉と砂とを含み、酸化鉄粉に対する砂の含有量が、容積比で3/7〜7/3の範囲であり、容積比で4/6〜6/4の範囲であることが好ましい。
酸化鉄粉に対する砂の含有量が容積比で3/7未満であると、材料分離抵抗性が低下することがある。一方、酸化鉄粉に対する砂の含有量が、容積比で7/3を超えると、所望の高密度コンクリート組成物硬化体が得難い。
本実施形態のセメント組成物には、既述の水硬性材料、赤鉄鉱石を含む粗骨材、及び特定の細骨材に加え、コンクリート組成物に含まれ得る公知の添加剤を、本実施形態の効果を損なわない限りにおいて含有することができる。
公知の混和材料としては、例えば、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、膨張材などの混和材、減水剤、空気連行剤、増粘剤、消泡剤、硬化促進剤などの混和剤が挙げられる。
なかでも、打設作業性をより向上させる観点から、混和材料として、高性能AE減水剤、例えば、高性能AE減水剤 標準型I種(フローリックSF500S、(株)フローリック製)などを含有することが好ましい。
本実施形態のコンクリート組成物が混和材料を含有する場合、混和材料は1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
本実施形態のコンクリート組成物は、さらに、下記(A)、(B)及び(C)から選ばれる少なくとも1種の中性子線遮蔽材を含有することが好ましい。
(A)エチレン、パラフィンから選ばれる樹脂を含む樹脂粒子、(B)10B、6Li、Cd及びGdから選ばれる金属粒子、(C)石膏の硬化体である無機粒子。
本実施形態のコンクリート組成物から得られる硬化体は、放射線遮蔽性、特に、ガンマ線、エックス線の遮蔽性に優れるが、さらに、中性子線遮蔽材を含有することで、中性子線遮蔽性を発現し、放射線の遮蔽を必要とする用途により好適となる。
中性子線遮蔽材としては、エチレン、パラフィン、石膏などの水素密度の大きい材料、10B、6Li、Cd、Gd等の中性子吸収断面積の大きな材料から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、(C)石膏は水素密度が高いので、石膏の硬化体である無機粒子、即ち、石膏にて造粒した無機粒子として配合させることができる。
中性子線遮蔽材の平均粒子径及び粒度分布は、JIS A 1102(2006年) 骨材のふるい分け試験法に準拠した方法で測定することができる。
コンクリート組成物における中性子線遮蔽材の含有量は目的に応じて選択することができる。しかし、金属粒子を除いては、いずれも本実施形態における骨材として含まれる赤鉄鉱石、酸化鉄粉などに比較して、密度が小さいことから、多く含むと硬化体の好ましい密度が得難いという問題がある。
中性子線遮蔽材を含有させる場合の、含有量としては、中性子線遮蔽性と得られる硬化体の密度とを好ましい範囲に調整しうるという観点から、コンクリート組成物全量に対して、固形分換算で容積比10%以下であることが好ましい。
本実施形態のコンクリート組成物は、常法により調整することができる。
例えば、コンクリート組成物の調製方法としては、水硬性材料、赤鉄鉱石を含む粗骨材、特定の細骨材、及び所望により含有される公知の混和材料、中性子線遮蔽材等をミキサーに投入し、空練りを行った後、水を投入して更に練り混ぜる方法などを挙げることができる。
本実施形態のコンクリート硬化体は、既述の本実施形態のコンクリート組成物の硬化物である。本実施形態のコンクリート硬化体の密度は、3.0t/m3以上であり、3.3t/m3以上であることが好ましく、3.5t/m3以上であることがより好ましい。
密度が3.0t/m3以上であることで、十分な重量の硬化体となり、硬化体は放射線遮蔽性に優れる。
以下に示す処方に従い、コンクリート組成物を調製し、得られたコンクリート組成物の物性を測定した。
なお、下記表1において、「細骨材/総骨材量比」は、(細骨材量)/〔(粗骨材+細骨材)総量〕比(容積比:%)を示す。
得られたコンクリート組成物について、JIS A 1101(2005年)によりスランプを、JIS A 1150(2007年)によりスランプフローを、それぞれ測定した。
さらに、コンクリート組成物の硬化物であるコンクリート硬化体の密度を、硬化体の質量及び容積を測定することにより算出した。また、材齢28日の圧縮強度をJIS A 1108(2006年)に定める方法で測定した。結果を下記表2に示す。
・水硬性材料:中庸熱ポルトランドセメント(密度3.21g/cm3、太平洋セメント(株)製)
・粗骨材:赤鉄鉱石(密度4.70g/cm3、イスコール産)
・細骨材:酸化鉄粉(密度5.00g/cm3、太平洋セメント(株)製)
・細骨材:山砂(密度2.56g/cm3、JIS標準砂)
・比較細骨材:赤鉄鉱粉(密度3.75g/cm3、カラジャス産)
・比較細骨材:市販重量骨材(密度4.04g/cm3、太平洋セメント(株)製、DSM骨材(商品名))
・減水剤:高性能AE減水剤標準型I種(フローリックSF500S、(株)フローリック製)
前記実施例1のコンクリート組成物の処方において、細骨材を表2に記載のものに変更し、細骨材に応じて流動性等を適切に制御するため、水結合材比を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてコンクリート組成物を調製し、得られたコンクリート組成物及び硬化体の物性を実施例1と同様にして測定した。結果を下記表2に示す。
1.スランプ
A:16.5cm以上
B:13.5cm以上16.5cm以下
C:13.5未満
調製したフレッシュコンクリートを目視で観察し、以下の基準にて評価した。
A:フレッシュ性状が良好で打設しやすい状態
B:フレッシュ性状がやや硬く打設しにくい状態
C:フレッシュ性状が硬く打設困難な状態
A:3.5t/m3以上
B:3.0t/m3以上3.5t/m3未満
C:3.0t/m3未満
A:3.65t/m3以上
B:3.15t/m3以上3.65t/m3未満
C:3.15t/m3未満
A:圧縮強度が30以上
B:圧縮強度が21以上30未満
C:圧縮強度が21未満
・不分離:JIS A 1101 スランプ試験において、骨材とセメントペーストが一体となっている場合を「不分離」と判定した。
・分離:JIS A 1101 スランプ試験において、骨材とセメントペーストが一体となっておらず中心付近に骨材が残り、セメントペーストのみが広がった場合を「分離」と判定した。
JIS A 1109(2006年)に準拠して吸水率(%)を測定し、以下の基準で評価した。
A:吸水率が3.0以下
B:吸水率が3.0以上4.0未満
C:吸水率が4.0以上
A:JIS A 1101のスランプ試験においてモルタル分の粘性が高く見える
B:JIS A 1101のスランプ試験においてモルタル分の粘性がやや小さく見える
C:JIS A 1101のスランプ試験においてモルタル分の粘性が小さく見える
A:材料分離せず、且つ、他の項目すべてA評価
B:材料分離せず、且つ、高密度の硬化体を得られる
C:材料分離し、およそ均一な高密度の硬化体を得られない
他方、細骨材として赤鉄鉱粉を用いた比較例1は、吸水率が高く、材料分離は観察されなかったものの、打設作業性(ワーカビリティ)が実施例1に比較して劣っていた。よって、比較例1のコンクリート組成物は、コンクリート硬化体を工業的に製造する際における製造適性に改良の余地があると考えられる。
また、細骨材として市販酸化鉄粉のみを用いた比較例2、市販酸化鉄粉と市販重量骨材との混合物を用いた比較例3では、組成物が分離して、打設ができず、硬化体を得られなかった。細骨材として山砂のみを使用した比較例4では、得られた硬化体の密度が小さく、重量コンクリート硬化体が得られなかった。
Claims (6)
- セメント、粗骨材、細骨材及び水を含有し、
前記粗骨材は赤鉄鉱石を含み、
前記細骨材は、吸水率が0.0〜3.0%且つ微粒分量が5.0%以下の酸化鉄粉と砂とを含み、酸化鉄粉に対する砂の含有量が、容積比で3/7〜7/3の範囲であり、
JIS A 1101(2005年)により測定したスランプの値が、16.5cm以上であり、
硬化後の密度が3.0t/m 3 以上である、
コンクリート組成物。 - 前記砂は、吸水率が0.0〜3.0%且つ微粒分量が9.0%以下の砂である請求項1に記載のコンクリート組成物。
- 前記細骨材に含まれる酸化鉄粉及び砂は、それぞれ単独で、粒度分布が、JIS A 5005の規格範囲内である請求項1又は請求項2に記載のコンクリート組成物。
- さらに、下記(A)、(B)及び(C)から選ばれる少なくとも1種の中性子線遮蔽材を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のコンクリート組成物。
(A)エチレン、パラフィンから選ばれる樹脂を含む樹脂粒子
(B)10B、6Li、Cd及びGdから選ばれる金属粒子
(C)石膏の硬化体である無機粒子 - 前記中性子線遮蔽材は、JIS A 1102(2006年)骨材のふるい分け試験法に準拠した方法で測定した平均粒子径が25mm以下である請求項4に記載のコンクリート組成物。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のコンクリート組成物の硬化物である、密度3.0t/m3以上のコンクリート硬化体。
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