JP2004182861A - アンチブロッキング剤、及びそれを配合した樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】明確な結晶構造を有し、またハイドロタルサイト類とも結晶構造の異なる複合金属多塩基性塩からなる、樹脂への分散性、配合樹脂の透明性及びアンチブロッキング性能の組合せに優れた樹脂フィルム用アンチブロッキング剤を提供する。
【解決手段】下記式(1)
M3+ pM2+ q(OH)y(A)z・nH2O ‥(1)
式中、M3+は三価金属を表し、M2+は二価金属を表し、
Aは無機または有機のアニオンを表し、
p、q、y及びzは下記式
3p+2q−y−mz=0(式中mはアニオンAの価数であり)・・・(I)
0.3≦q/p≦2.5・・・(II)
1.5≦y/(p+q)≦3.0・・・(III)
及び
1.0≦(p+q)/z≦20.0・・・(IV)
を満足する数であり、
nは7以下の数である、
で表される化学組成を有する複合金属多塩基性塩からなるアンチブロッキング剤。
【選択図】 なし
【解決手段】下記式(1)
M3+ pM2+ q(OH)y(A)z・nH2O ‥(1)
式中、M3+は三価金属を表し、M2+は二価金属を表し、
Aは無機または有機のアニオンを表し、
p、q、y及びzは下記式
3p+2q−y−mz=0(式中mはアニオンAの価数であり)・・・(I)
0.3≦q/p≦2.5・・・(II)
1.5≦y/(p+q)≦3.0・・・(III)
及び
1.0≦(p+q)/z≦20.0・・・(IV)
を満足する数であり、
nは7以下の数である、
で表される化学組成を有する複合金属多塩基性塩からなるアンチブロッキング剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の化学組成を有する複合金属多塩基性塩からなるアンチブロッキング剤に関するものであり、より詳細には、樹脂への分散性、配合樹脂の透明性及びアンチブロッキング性能の組合せに優れたアンチブロッキング剤に関する。
本発明は更に、オレフィン系樹脂をはじめとする熱可塑性樹脂と、特定の化学組成を有する複合金属多塩基性塩とを含有した樹脂組成物にも関する。
【0002】
【従来の技術】
延伸樹脂フィルムは、透明性、耐熱性、耐衝撃性等の各種特性に優れており、包装材料、農業用などの各種用途に広く使用されているが、フィルム相互が付着(ブロッキング)する傾向が大であり、フィルム相互に滑り性を付与するために、フィルム中にアンチブロッキング剤を配合することが広く行われている。
このアンチブロッキング剤としては、様々な無機の微粒子が広く使用されており、例えば、シリカ、ケイ酸塩、アルミナ、アルミン酸塩、塩基性炭酸アルミニウム・リチウム塩等が知られている。
【0003】
ハイドロタルサイトが、アンチブロッキング剤に用いられていることは公知である(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第2642934号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記無機の微粒子において、シリカはブロッキング防止性に優れるが、樹脂に配合した場合に透明性が悪くなる。また、他の無機の微粒子をアンチブロッキング剤に用いた場合、十分なブロッキング防止性が得られなかったり、樹脂成型時での加熱状態において含有水分の脱離に伴う発泡、樹脂に配合した場合の分散性など解決すべき点も多数存在する。
【0006】
本発明において、明確な結晶構造を有し、またハイドロタルサイト類とも結晶構造の異なる複合金属多塩基性塩が樹脂フィルム用アンチブロッキング剤として、樹脂への分散性、配合樹脂の透明性及びアンチブロッキング性能の組合せに優れることを見出した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、明確な結晶構造を有し、またハイドロタルサイト類とも結晶構造の異なる複合金属多塩基性塩からなる、樹脂への分散性、配合樹脂の透明性及びアンチブロッキング性能の組合せに優れた樹脂フィルム用アンチブロッキング剤を提供するにある。
さらに、本発明では、該アンチブロッキング剤を配合した樹脂配合組成物を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(1)
M3+ pM2+ q(OH)y(A)z・nH2O ‥(1)
式中、M3+は三価金属を表し、M2+は二価金属を表し、
Aは無機または有機のアニオンを表し、
p、q、y及びzは下記式
3p+2q−y−mz=0(式中mはアニオンAの価数であり)・・・(I)
0.3≦q/p≦2.5・・・(II)
1.5≦y/(p+q)≦3.0・・・(III)
及び
1.0≦(p+q)/z≦20.0・・・(IV)
を満足する数であり、
nは7以下の数である、
で表される化学組成を有する複合金属多塩基性塩からなることを特徴とするアンチブロッキング剤が提供される。
本発明のアンチブロッキング剤においては、
1.前記一般式(1)において、三価金属M3+がアルミニウムであり、二価金属M2+がマグネシウム及び亜鉛からなる群より選択された少なくとも1種の金属であり、アニオンAが硫酸アニオンであること、
2.X線回折(Cu−α)において、2θ=2乃至15゜、2θ=16乃至26゜及び2θ=33乃至50゜に回折ピークを有し、且つ2θ=60乃至64゜には単一のピークが存在するものであること、
3.下記X線回折像
を有すること、
4.下記数式(2)
IS = tanθ2/tanθ1 ・・(2)
式中、θ1は一定の面間隔のX線回折ピークにおけるピーク垂線と狭角側ピーク接線とがなす角度を表し、θ2は該ピークにおけるピーク垂線と広角側ピーク接線とがなす角度を表す、
で定義される積層不整指数(IS)が2θ=33乃至50゜のピークにおいて1.0以上であること、
が好ましい。
【0009】
本発明に用いるアンチブロッキング剤は、粉体としての取り扱いや、樹脂等の媒質への分散性等から、体積基準で0.1乃至20μmのメジアン径を有すること、樹脂等へ配合したときの透明性等からは、液浸法で1.40乃至1.65の屈折率を有することが好ましい。
【0010】
更に、本発明に用いるアンチブロッキング剤に用いられる複合金属多塩基性塩は表面処理を行っても良く、20重量%以下の表面処理剤で処理される。また、その表面処理剤が、脂肪酸、樹脂酸、金属石鹸、樹脂酸石鹸、ワックス類或いは樹脂であることが好ましい。
【0011】
本発明によればまた、熱可塑性樹脂100重量部当たりアンチブロッキング剤を0.05乃至20重量部の量で含有する樹脂組成物が提供される。
本発明の樹脂組成物においては、
1.カルボキシル基、その無水物基、そのアミド基またはその塩の基を有する有機物からなる分散剤及び/または滑剤を更に含有すること、
2.熱可塑性樹脂100重量部当たり分散剤及び/または滑剤を0.05乃至5重量部の量で含有すること、
が好ましい。
【0012】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明のアンチブロッキング剤は、前記式(1)で表される化学組成を有する複合多塩基性塩からなることは重要な特徴である。本発明に用いる複合多塩基性塩は明確な結晶構造を示し、またこの複合多塩基性塩はハイドロタルサイト類とも結晶構造の異なる複合金属多塩基性塩である。すなわち、かかる複合多塩基性塩をアンチブロッキング剤として用いることにより、樹脂への分散性、配合樹脂の透明性及びアンチブロッキング性能の組合せに優れたものとなる。
【0013】
[複合多塩基性塩]
本発明のアンチブロッキン剤は、下記一般式(1)
M3+ pM2+ q(OH)y(A)z・nH2O ‥(1)
式中、M3+は三価金属を表し、M2+は二価金属を表し、
Aは無機または有機のアニオンを表し、
p、q、y及びzは下記式
3p+2q−y−mz=0(式中mはアニオンAの価数であり)・・・(I)
0.3≦q/p≦2.5・・・(II)
1.5≦y/(p+q)≦3.0・・・(III)
及び
1.0≦(p+q)/z≦20.0・・・(IV)
を満足する数であり、
nは7以下の数である、
で表される化学組成を有する複合金属多塩基性塩からなることが特徴である。
【0014】
本発明で用いるアンチブロッキング剤は、前記式(1)で表される化学的組成を有することが第一の特徴である。即ち、三価金属のモル数p、二価金属のモル数q、水酸基のモル数y及びアニオンのモル数zは前記式(I)乃至(IV)の全てを満足する範囲内にある。
【0015】
公知の複合金属多塩基性塩または複合金属水酸化物塩の代表例であるハイドロタルサイトは、典型的には下記式(3)
Mg6 Al2(OH)16CO3・nH2O ‥(3)
の化学組成を有するものであり、前述した式(II)のq/pが3.0に相当するが、本発明のアンチブロッキング剤に用いられる複合金属多塩基性塩では、q/pが2.5以下、特に2.0以下であり、ハイドロタルサイトと化学的組成を異にしている。
【0016】
また、複合金属多塩基性塩の他の例として、下記式(4)
[Al2 Li(OH)6]nX・mH2O ‥(4)
のリチウムアルミニウム複合水酸化物塩が知られているが、この化合物は二価金属を含有せず、一価金属を含有する点、本発明に用いる複合金属多塩基性塩と相違している。また、仮に一価金属2モルが二価金属1モルに等価であるとしても、XがCO3またはSO4の場合(n=2)、前述した式(II)のq/pが0.25に相当するものであり、本発明の複合金属多塩基性塩では、q/pが0.3以上であり、公知のリチウムアルミニウム複合水酸化物塩とも化学的組成を異にしている。
【0017】
本発明のアンチブロッキング剤に用いる複合金属多塩基性塩は、次の化学的構造を有するものと考えられる。この化合物では、M2+(OH)6八面体層のM2+がM3+で同型置換されたものが基本層となり、この基本層間に前記置換による過剰カチオンと釣り合う形で硫酸根等のアニオンが組み込まれたものであって、この基本構造が多数積み重なって層状結晶構造を形成している。
【0018】
本発明のアンチブロッキング剤に用いる複合金属多塩基性塩を構成する二価金属、M2+としては、Be、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、Cd、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pd、Sn、Pt、Pbなどが挙げられるが、これらの内でも周期律表第II族金属、特にMgあるいはZnが好適である。
【0019】
一方、複合金属多塩基性塩を構成する三価金属M3+としては、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Y、Ru、Rh、In、Sb、La、Ce、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Os、Ir、Au、Bi、Ac、Thなどが挙げられるが、これらの内でもAlが好適である。
【0020】
また、複合金属多塩基性塩を構成するアニオンAとしては、無機アニオンや有機アニオンが挙げられ、無機アニオンとしては、S、P、Al、Si、N、B、V、Mn、Mo、W、Cr、Te、Sn、Cl、Br、Iなどの酸素酸アニオン、炭酸アニオン、ケイ酸アニオン、リン酸アニオン、アルミン酸アニオンなどが挙げられる。
一方、有機アニオンとしては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、テレフタル酸などのカルボン酸アニオン;メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、リグニンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸アニオン;などが挙げられる。
これらの中でも硫酸イオンが特に好適である。
【0021】
本発明においては、X線回折(Cu−α)において、2θ=2乃至15゜、2θ=16乃至26゜及び2θ=33乃至50゜に回折ピークを有し、且つ2θ=60乃至64゜には単一のピークが存在する複合金属多塩基性塩(PBS)を用いることが最も好ましい(以下、本発明のアンチブロッキング剤に用いる複合金属多塩基性塩をPBSと表記することがある)。
【0022】
添付図面の図1は本発明に用いるAl−MgタイプのPBSのX線回折像である。一方、図2はハイドロタルサイトのX線回折像であり、図3はリチウムアルミニウム複合水酸化物塩のX線回折像である。
【0023】
図1に示すPBSは、X線回折(Cu−α)において、2θ=2乃至15゜、2θ=16乃至26゜、2θ=33乃至50゜及び2θ=60乃至64゜に実質上4個の回折ピークを有し、且つ2θ=60乃至64゜は単一のピークで存在する。
【0024】
また、ハイドロタルサイト(図2)では、2θ=38乃至50゜の範囲に2個の回折ピークを有しており、更に2θ=60乃至63゜の範囲にも2個の回折ピークを有しており、図1に示すPBSのX線回折像は全く相違している。同様の相違は、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩(図3)の場合にも認められる。
【0025】
更に、本発明に最も好適に用いられるPBSは、更に図1から明らかなとおり、積層不整というX線回折学的な微細構造上の特徴を有している。即ち、PBSでは、2θ=33乃至50゜の回折ピークが非対称ピークとなっていることが明らかである。
【0026】
即ち、このピークは挟角側(2θの小さい側)では立ち上がりが比較的急で、広角側(2θの大きい側)では傾斜のゆるやかな非対称のピークとなっていることが了解される。この非対称ピーク構造は、上述した2θ=33乃至50゜のピークにおいて特に顕著であるが、他に2θ=60乃至64゜のピークにおいても程度は小さいものの同様に認められる。
【0027】
本明細書において、積層不整指数(Is)は、次のように定義される。即ち、後述する実施例記載の方法で、図4に示すようなX線回折チャートを得る。この2θ=33乃至50゜のピークについて、ピークの挟角側最大傾斜ピーク接線aと広角側最大傾斜ピーク接線bを引き、接線aと接線bの交点から垂線cを引く。次いで接線aと垂線cとの角度θ1 、接線bと垂線cとの角度θ2 を求める。これらの角度から、前記式(2)により、積層不整指数(Is)が求められる。
この積層不整指数(Is)は、完全に対称なピークである場合には、1.0であり、立ち上がり角度に比して立ち下がり角度が大きくなる方が大きな値をとるようになる。
【0028】
この積層不整指数(Is)の意味するところは、次のものと思われる。即ち、本発明に用いるPBSでは、M3+ p M2+ q(OH)y の基本層が積み重なった層状結晶構造を有することは既に指摘したところであるが、各基本層のサイズ(長さや面積)が一様でなく、その分布が広い範囲にわたっており、また、基本層にねじれや湾曲などを生じて、非平面構造となっていると考えられる。
【0029】
本発明に用いる複合金属多塩基性塩は、室温から200℃の温度に加熱したときの重量減少率が20重量%以下、特に15重量%以下であり、アンチブロッキング剤として樹脂中に配合したとき、樹脂の加工温度で発泡を生じることがないという顕著な利点をも有している。
図5は、本発明に用いる複合金属多塩基性塩についての示差熱分析(DTA)の結果を示している。ハイドロタルサイト類などでは温度190乃至240℃の範囲に水分の揮発に基づく極めて大きな吸熱ピークが認められるのに対して、PBSではこのような大きな吸熱ピークは認められず、耐発泡性に優れていることを示している。
【0030】
本発明に用いる複合金属多塩基性塩は、小さい比表面積と小さい細孔容積とを有している。一般に、本発明に好適に用いるPBSのBET比表面積は200m2/g以下、好ましくは40m2/g以下、更に好ましくは0.3乃至20m2/gの範囲であり、一方、細孔径17乃至3000オングストロームについてBJH法で求めた細孔容積は0.0005乃至0.05ml/g、特に0.02乃至0.035ml/gの範囲にある。
【0031】
また、本発明に用いる複合金属多塩基性塩は、レーザ回折法で測定して、一般に 0.1乃至20μm、特に0.1乃至10μmの体積基準中位径(D50)を有する。
粒子形状は、板状結晶粒子状からアグロメレート状の形状があり、これは複合金属多塩基性塩の二価金属M2+の種類にも依存する。
【0032】
図6は、アニオンが硫酸イオンからなるAl−Mg型PBSの粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0033】
また、本発明のアンチブロッキング剤は、1.40乃至1.65、特に1.46乃至1.54の屈折率を有し、ポリエチレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル等の樹脂に近い屈折率を有し、これら樹脂の透光性等の光学的性質を低下させることがない。
【0034】
[複合多塩基性塩の調製]
本発明において、最も好適に用いることができる複合金属多塩基性塩は、三価金属の水可溶性塩と、二価金属の酸化物、水酸化物或いは水可溶性塩とを、反応終了時のpHが3.5乃至10となる条件下で、且つ50℃以上の温度で反応させ、必要により酸或いは酸の可溶性塩の存在下にイオン交換することにより製造することができる。
【0035】
Alなどの三価金属の水可溶性塩としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの水可溶性塩であれば、何れをも使用しうるが、本発明では合成の容易さの点から、複合金属多塩基性塩を硫酸塩の形で合成するのが望ましく、この点から、硫酸塩の形で用いるのが最も望ましい。
【0036】
Mg或いはZnなどの二価金属の原料としては、酸化物、水酸化物或いは水溶性塩の何れも使用できるが、酸化物、例えば亜鉛華や、水酸化物、例えば水酸化マグネシウムを用いるのが合成上もっとも便利である。勿論、本発明においては、二価金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの水可溶性塩を用いても、反応系のpHを上記の範囲に制御することにより、複合金属多塩基性塩の合成を行うことが可能である。
【0037】
本発明では、上記各原料を、反応終了時のpHが3.5乃至10.0、特に4.0乃至9.0の範囲となり、且つ反応温度を50℃以上、特に80乃至180℃の範囲に維持して、反応を行うことが重要である。
反応系のpHが上記範囲外では、複合金属多塩基性塩の生成が困難となる傾向がある。即ち、この複合金属多塩基性塩では、水酸基とアニオン性基との両方を結合して有することが特徴であるが、pHが上記範囲を上回るとアニオン性基の導入が困難となり、pHが上記範囲を下回ると水酸基の導入が困難となる傾向がある。
一方、反応温度が上記範囲を下回るとやはり複合金属多塩基性塩の合成が困難となる傾向がある。
【0038】
本発明に用いる複合金属多塩基性塩の合成に当たって、両原料の混合順序などには格別の制限はなく、例えば、三価金属塩類の水溶液に二価金属の酸化物、水酸化物のスラリーや水溶性塩類の溶液を添加してもよく、また逆に二価金属の酸化物、水酸化物のスラリーや水溶性塩類の溶液に三価金属塩類の水溶液を添加してもよい。
【0039】
反応は、反応混合物を攪拌下に前述した温度で、2乃至72時間程度維持することにより完了させることができる。一般に必要ないが、加圧容器を使用して、水熱条件下に反応を行うこともできる。
反応生成物は、水洗し、濾過などの固液分離操作を行った後、60乃至150℃で乾燥し、必要により更に150乃至230℃で熱処理して製品とすることができる。
【0040】
[表面処理剤]
アンチブロッキング剤としての複合金属水酸化物塩は、そのままアンチブロッキング剤として使用し得るのは勿論のことであるが、複合金属多塩基性塩粒子の表面を、予め20重量%以下、特に0.1乃至15重量%の表面処理剤で処理しておくと、樹脂中への分散性が向上し、透光性も更に向上するので好ましい。
【0041】
かかる表面処理剤としては、脂肪酸、樹脂酸、金属石鹸或いは樹脂酸石鹸等があり、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、アビエチン酸等の樹脂酸、脂肪酸或いは樹脂酸のカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等の金属石鹸、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等、ラウリルエーテルリン酸、ステアリルエーテルリン酸、オレイルエーテルリン酸、ジアリルエーテルリン酸、アルキルフェニルエーテルリン酸等、又はこれらのナトリウム、カリウム塩が好適に使用される。更に、各種ワックス類、未変性乃至変性の各種樹脂(例えばロジン、石油樹脂等)等のコーテイング剤も使用できる。
【0042】
また、他の表面処理剤として、シラン系、アルミニウム系、チタン系或いはジルコニウム系のカップリング剤;無機酸化物、例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムで被覆し或いは表面処理しておくことができる。
【0043】
更に、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性系の界面活性剤で複合金属多塩基性塩を表面処理し、樹脂中への分散性を向上させると共に、配合フィルムに防曇性を付与することもできる。
【0044】
改質用無機系助剤として、カオリン、エアロジル、疎水処理エアロジル等の微粒子シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、カルシア、マグネシア、チタニア等の金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、A型、P型等の合成ゼオライト及びその酸処理物又はその金属イオン交換物からなる定形粒子を、複合金属多塩基性塩に外添(ブレンド乃至マブシ)して使用することもできる。
【0045】
[樹脂組成物]
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイド等あるいはそれらの混合物のいずれかでもよい。
【0046】
また、オレフィン系樹脂としては、メタロセン触媒を用いて合成した樹脂はもちろんのこと、例えば低−・中−・高密度の或いは線状低密度のポリエチレン、ポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等を挙げることが出来る。特にポリアミド、ポリエステル等には重合前に添加して使用することもできる。
【0047】
これら熱可塑性樹脂100重量部に対して、本発明のアンチブロッキング剤を0.05乃至20重量部、特に0.05乃至5重量部、更に好ましくは0.05乃至1重量部の配合比で用いるのがよい。
アンチブロッキング剤の量が上記範囲を下回ると、アンチブロッキング性能が不十分となる傾向があり、一方上記範囲を上回ると、アンチブロッキング性能の向上には限度があると共に、透明性が低下するので好ましくない。
【0048】
本発明によるアンチブロッキング剤を樹脂に配合するときには、分散剤、特に滑剤としての作用をも有する分散剤と組み合わせで用いることが推奨される。このような分散剤としては、カルボキシル基、その無水物基、そのアミド基またはその塩の基を有する有機物が挙げられる。
【0049】
その適当な例としては、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系のもの、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石ケンおよびそれらの混合系が一般に用いられるが、特に脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系が好ましい。
更に、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンワックスや無水マレイン酸グラフト変性オレフィン系樹脂も、この目的に好適に使用される。
【0050】
上記の分散剤及び/または滑剤は、樹脂100重量部当たり0.05乃至5重量部、特に0.1乃至1重量部の量で配合することが好ましい。
【0051】
熱可塑性樹脂にアンチブロッキング剤を配合するには、ドライブレンド或いはメルトブレンド方式を採用することができ、一般には、アンチブロッキング剤を樹脂中に高濃度に配合したマスターバッチを製造し、このマスターバッチを未配合の樹脂に配合するのが望ましい。
【0052】
[他の配合剤]
アンチブロッキング剤を配合した樹脂組成物には、それ自体公知の各種添加剤、例えば安定剤、安定助剤、防曇剤、滑剤、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、造核剤、充填剤等を配合併用することができる。これら樹脂配合物と本発明品の複合金属多塩基性塩とを混合粒子として成形(ペレット状、グラニュール状、球状等)することにより微粉末ダストの発生防止や定量フィード性の向上を行うことができる。
【0053】
また複合金属多塩基性塩である、マグアルドレート(Al5Mg10(OH)31(SO4)2・xH2O)も使用することができる。マグアルドレートを調製するには、例えば特開昭60−204617号公報記載の方法等を用いて調製することができる。
【0054】
フィルムの成形は、この樹脂組成物を押出機で溶融混練した後、ダイを通して押し出し、インフレーション製膜法、T−ダイ法等により行うことができる。
【0055】
【実施例】
本発明を次の実施例により更に説明する。実施例で行った測定方法は、以下のように行った。
【0056】
(1)化学分析
化学分析は、湿式分析、原子吸光分析、イオンクロマトグラフィーにより行った。
【0057】
(2)X線回析
理学電機(株)製のGeigerflexRAD−Bシステムを用いて、Cu−Kαにて測定した。
ターゲット Cu
フィルター 湾曲結晶グラファイトモノクロメーター
検出器 SC
電圧 40KV
電流 20mA
カウントフルスケール 700c/s
スムージングポイント 25
走査速度 2°/min
ステップサンプリング 0.02°
スリット DS1° RS0.15mm SS1°
照角 6°
【0058】
(3)粒子径(メジアン径)測定試験
Coulter社製Particle Size Analyzer Model LS230を使用し、平均粒径を測定した。
【0059】
(4)屈折率
JIS K 0062に準拠して測定した。
【0060】
(5)示差熱分析
セイコー電子工業(株)製SSC/5200を用いて測定を行った。
【0061】
(6)比表面積測定試験
島津製作所製ASAP2010を使用し、N2を用いてBET法により測定した。
【0062】
(7)見かけ比重測定試験
JIS K 6721に準拠して測定した。
【0063】
(実施例1)
水酸化マグネシウム(MgO=64.5%) 53.6kgに水を加え200Lとし、攪拌、分散させMg(OH)2スラリーを調製した。硫酸アルミニウム(Al2O3=8.06%、SO3=18.8%) 180kgを前記Mg(OH)2スラリーに室温下にて攪拌しながら12.6kg/minで注加した後、400Lまでメスアップした。その後、95℃まで加温し、10時間反応を行った。
反応終了後、濾過、温水で洗浄を行い、反応終了品の濾過ケーキを得た。この濾過ケーキの一部を110℃にて乾燥、粉砕を行い白色粉末を得た。
得られた微粉末の組成は分析の結果、下記のようになった。
Al1.00 Mg1.99(OH)6.12(SO4)0.43・1.6 H2O
2θ 相対強度
10.6゜ 100%
20.5゜ 38%
35.4゜ 24%
61.5゜ 30%
得られた微粉末のX線回折像を図1、示差熱分析の結果を図5、走査型電子顕微鏡写真を図6にそれぞれ示す。その他性状を表1に示す。
次に、得られた反応終了品の濾過ケーキ(固形分36.2%)を1Lビーカーに入れ、イオン交換水を固形分濃度16wt%になるように試料を分散させた。別のビーカーに上記分散液の固形物に対して0.5wt%相当のモノグリセリンステアレート(リケマールS−200)をイオン交換水に溶解した。反応終了品の分散液を50℃に攪拌下加熱しながら、モノグリセリンステアレート水溶液を注加し、50℃で30分間攪拌し表面処理を行った。反応終了後、濾過、水洗、乾燥を行い試料(S−1)を得た。
【0064】
(比較例1)
市販のNa−P型ゼオライト(化学組成:Na2O・3.8SiO2・Al2O3・2.4H2O)を用いた(H−1とする)。
試料の物性を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
非晶質シリカ微粉末(ミズカシルP−709:水澤化学製)(H−2とする)を用いた。
試料の物性を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
各アンチブロッキン剤を添加して得たフィルムについてそれぞれ確性試験を行った。試験方法は、以下の通りである。なお、フィルムは、ISO 291:1997に準拠した、23℃、湿度50%の環境下で所定時間保存した試験片を用いて試験を行った。
【0068】
(8)アンチブロッキング性(AB性:触診開口試験)
ISO11502:1995(method B)に記載される条件で2枚のフィルムを圧着し、触診試験によってその剥がれ易さを以下のように評価した。
◎: 抵抗なく剥がれるもの
○: やや剥がれにくいもの
△: 著しく剥がれにくいもの
×: 剥がれないもの
【0069】
(9)ヘーズ(Haze)
ASTM D 1003−95に準拠して測定し、以下のように評価した。
フィルムを透かした時の霞具合を以下のように目視にて評価した。
◎: 目視では霞が見られない
○: 僅かに霞が見られる
△: はっきりと霞が見られる
×: かなりはっきりと霞が見られる
【0070】
(10)分散性
試料を樹脂に分散したときの分散性を以下のように目視にて評価した。
◎:特に分散性が良い。
○:分散性が良い。
△:少し分散性が悪い。
×:かなり分散性が悪い。
【0071】
(実施例2〜3、比較例3〜5)
線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用い、表2に示した配合原料を加工温度220℃で、インフレーション法で製膜し、厚さ25μmのフィルムを得た。得られたフィルムについて確性試験を行い、結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、明確な結晶構造を有し、またハイドロタルサイト類とも結晶構造の異なる複合金属多塩基性塩が、樹脂フィルム用アンチブロッキング剤に優れることを見出した。
また、このアンチブロッキング剤は、樹脂に配合したときのアンチブロッキング性と樹脂の透明性との組み合わせに優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いたアニオンが硫酸イオンからなるAl−Mgタイプ複合金属多塩基性塩のX線回折像を示す図である。
【図2】ハイドロタルサイトのX線回折像を示す図である。
【図3】リチウムアルミニウム複合水酸化物塩のX線回折像を示す図である。
【図4】積層不整指数の求め方を示す図である。
【図5】本発明品の複合金属多塩基性塩とハイドロタルサイトの示差熱分析の対比を示す図である。
【図6】アニオンが硫酸イオンからなるAl−Mg型複合金属多塩基性塩の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の化学組成を有する複合金属多塩基性塩からなるアンチブロッキング剤に関するものであり、より詳細には、樹脂への分散性、配合樹脂の透明性及びアンチブロッキング性能の組合せに優れたアンチブロッキング剤に関する。
本発明は更に、オレフィン系樹脂をはじめとする熱可塑性樹脂と、特定の化学組成を有する複合金属多塩基性塩とを含有した樹脂組成物にも関する。
【0002】
【従来の技術】
延伸樹脂フィルムは、透明性、耐熱性、耐衝撃性等の各種特性に優れており、包装材料、農業用などの各種用途に広く使用されているが、フィルム相互が付着(ブロッキング)する傾向が大であり、フィルム相互に滑り性を付与するために、フィルム中にアンチブロッキング剤を配合することが広く行われている。
このアンチブロッキング剤としては、様々な無機の微粒子が広く使用されており、例えば、シリカ、ケイ酸塩、アルミナ、アルミン酸塩、塩基性炭酸アルミニウム・リチウム塩等が知られている。
【0003】
ハイドロタルサイトが、アンチブロッキング剤に用いられていることは公知である(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第2642934号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記無機の微粒子において、シリカはブロッキング防止性に優れるが、樹脂に配合した場合に透明性が悪くなる。また、他の無機の微粒子をアンチブロッキング剤に用いた場合、十分なブロッキング防止性が得られなかったり、樹脂成型時での加熱状態において含有水分の脱離に伴う発泡、樹脂に配合した場合の分散性など解決すべき点も多数存在する。
【0006】
本発明において、明確な結晶構造を有し、またハイドロタルサイト類とも結晶構造の異なる複合金属多塩基性塩が樹脂フィルム用アンチブロッキング剤として、樹脂への分散性、配合樹脂の透明性及びアンチブロッキング性能の組合せに優れることを見出した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、明確な結晶構造を有し、またハイドロタルサイト類とも結晶構造の異なる複合金属多塩基性塩からなる、樹脂への分散性、配合樹脂の透明性及びアンチブロッキング性能の組合せに優れた樹脂フィルム用アンチブロッキング剤を提供するにある。
さらに、本発明では、該アンチブロッキング剤を配合した樹脂配合組成物を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(1)
M3+ pM2+ q(OH)y(A)z・nH2O ‥(1)
式中、M3+は三価金属を表し、M2+は二価金属を表し、
Aは無機または有機のアニオンを表し、
p、q、y及びzは下記式
3p+2q−y−mz=0(式中mはアニオンAの価数であり)・・・(I)
0.3≦q/p≦2.5・・・(II)
1.5≦y/(p+q)≦3.0・・・(III)
及び
1.0≦(p+q)/z≦20.0・・・(IV)
を満足する数であり、
nは7以下の数である、
で表される化学組成を有する複合金属多塩基性塩からなることを特徴とするアンチブロッキング剤が提供される。
本発明のアンチブロッキング剤においては、
1.前記一般式(1)において、三価金属M3+がアルミニウムであり、二価金属M2+がマグネシウム及び亜鉛からなる群より選択された少なくとも1種の金属であり、アニオンAが硫酸アニオンであること、
2.X線回折(Cu−α)において、2θ=2乃至15゜、2θ=16乃至26゜及び2θ=33乃至50゜に回折ピークを有し、且つ2θ=60乃至64゜には単一のピークが存在するものであること、
3.下記X線回折像
を有すること、
4.下記数式(2)
IS = tanθ2/tanθ1 ・・(2)
式中、θ1は一定の面間隔のX線回折ピークにおけるピーク垂線と狭角側ピーク接線とがなす角度を表し、θ2は該ピークにおけるピーク垂線と広角側ピーク接線とがなす角度を表す、
で定義される積層不整指数(IS)が2θ=33乃至50゜のピークにおいて1.0以上であること、
が好ましい。
【0009】
本発明に用いるアンチブロッキング剤は、粉体としての取り扱いや、樹脂等の媒質への分散性等から、体積基準で0.1乃至20μmのメジアン径を有すること、樹脂等へ配合したときの透明性等からは、液浸法で1.40乃至1.65の屈折率を有することが好ましい。
【0010】
更に、本発明に用いるアンチブロッキング剤に用いられる複合金属多塩基性塩は表面処理を行っても良く、20重量%以下の表面処理剤で処理される。また、その表面処理剤が、脂肪酸、樹脂酸、金属石鹸、樹脂酸石鹸、ワックス類或いは樹脂であることが好ましい。
【0011】
本発明によればまた、熱可塑性樹脂100重量部当たりアンチブロッキング剤を0.05乃至20重量部の量で含有する樹脂組成物が提供される。
本発明の樹脂組成物においては、
1.カルボキシル基、その無水物基、そのアミド基またはその塩の基を有する有機物からなる分散剤及び/または滑剤を更に含有すること、
2.熱可塑性樹脂100重量部当たり分散剤及び/または滑剤を0.05乃至5重量部の量で含有すること、
が好ましい。
【0012】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明のアンチブロッキング剤は、前記式(1)で表される化学組成を有する複合多塩基性塩からなることは重要な特徴である。本発明に用いる複合多塩基性塩は明確な結晶構造を示し、またこの複合多塩基性塩はハイドロタルサイト類とも結晶構造の異なる複合金属多塩基性塩である。すなわち、かかる複合多塩基性塩をアンチブロッキング剤として用いることにより、樹脂への分散性、配合樹脂の透明性及びアンチブロッキング性能の組合せに優れたものとなる。
【0013】
[複合多塩基性塩]
本発明のアンチブロッキン剤は、下記一般式(1)
M3+ pM2+ q(OH)y(A)z・nH2O ‥(1)
式中、M3+は三価金属を表し、M2+は二価金属を表し、
Aは無機または有機のアニオンを表し、
p、q、y及びzは下記式
3p+2q−y−mz=0(式中mはアニオンAの価数であり)・・・(I)
0.3≦q/p≦2.5・・・(II)
1.5≦y/(p+q)≦3.0・・・(III)
及び
1.0≦(p+q)/z≦20.0・・・(IV)
を満足する数であり、
nは7以下の数である、
で表される化学組成を有する複合金属多塩基性塩からなることが特徴である。
【0014】
本発明で用いるアンチブロッキング剤は、前記式(1)で表される化学的組成を有することが第一の特徴である。即ち、三価金属のモル数p、二価金属のモル数q、水酸基のモル数y及びアニオンのモル数zは前記式(I)乃至(IV)の全てを満足する範囲内にある。
【0015】
公知の複合金属多塩基性塩または複合金属水酸化物塩の代表例であるハイドロタルサイトは、典型的には下記式(3)
Mg6 Al2(OH)16CO3・nH2O ‥(3)
の化学組成を有するものであり、前述した式(II)のq/pが3.0に相当するが、本発明のアンチブロッキング剤に用いられる複合金属多塩基性塩では、q/pが2.5以下、特に2.0以下であり、ハイドロタルサイトと化学的組成を異にしている。
【0016】
また、複合金属多塩基性塩の他の例として、下記式(4)
[Al2 Li(OH)6]nX・mH2O ‥(4)
のリチウムアルミニウム複合水酸化物塩が知られているが、この化合物は二価金属を含有せず、一価金属を含有する点、本発明に用いる複合金属多塩基性塩と相違している。また、仮に一価金属2モルが二価金属1モルに等価であるとしても、XがCO3またはSO4の場合(n=2)、前述した式(II)のq/pが0.25に相当するものであり、本発明の複合金属多塩基性塩では、q/pが0.3以上であり、公知のリチウムアルミニウム複合水酸化物塩とも化学的組成を異にしている。
【0017】
本発明のアンチブロッキング剤に用いる複合金属多塩基性塩は、次の化学的構造を有するものと考えられる。この化合物では、M2+(OH)6八面体層のM2+がM3+で同型置換されたものが基本層となり、この基本層間に前記置換による過剰カチオンと釣り合う形で硫酸根等のアニオンが組み込まれたものであって、この基本構造が多数積み重なって層状結晶構造を形成している。
【0018】
本発明のアンチブロッキング剤に用いる複合金属多塩基性塩を構成する二価金属、M2+としては、Be、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、Cd、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pd、Sn、Pt、Pbなどが挙げられるが、これらの内でも周期律表第II族金属、特にMgあるいはZnが好適である。
【0019】
一方、複合金属多塩基性塩を構成する三価金属M3+としては、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Y、Ru、Rh、In、Sb、La、Ce、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Os、Ir、Au、Bi、Ac、Thなどが挙げられるが、これらの内でもAlが好適である。
【0020】
また、複合金属多塩基性塩を構成するアニオンAとしては、無機アニオンや有機アニオンが挙げられ、無機アニオンとしては、S、P、Al、Si、N、B、V、Mn、Mo、W、Cr、Te、Sn、Cl、Br、Iなどの酸素酸アニオン、炭酸アニオン、ケイ酸アニオン、リン酸アニオン、アルミン酸アニオンなどが挙げられる。
一方、有機アニオンとしては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、テレフタル酸などのカルボン酸アニオン;メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、リグニンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸アニオン;などが挙げられる。
これらの中でも硫酸イオンが特に好適である。
【0021】
本発明においては、X線回折(Cu−α)において、2θ=2乃至15゜、2θ=16乃至26゜及び2θ=33乃至50゜に回折ピークを有し、且つ2θ=60乃至64゜には単一のピークが存在する複合金属多塩基性塩(PBS)を用いることが最も好ましい(以下、本発明のアンチブロッキング剤に用いる複合金属多塩基性塩をPBSと表記することがある)。
【0022】
添付図面の図1は本発明に用いるAl−MgタイプのPBSのX線回折像である。一方、図2はハイドロタルサイトのX線回折像であり、図3はリチウムアルミニウム複合水酸化物塩のX線回折像である。
【0023】
図1に示すPBSは、X線回折(Cu−α)において、2θ=2乃至15゜、2θ=16乃至26゜、2θ=33乃至50゜及び2θ=60乃至64゜に実質上4個の回折ピークを有し、且つ2θ=60乃至64゜は単一のピークで存在する。
【0024】
また、ハイドロタルサイト(図2)では、2θ=38乃至50゜の範囲に2個の回折ピークを有しており、更に2θ=60乃至63゜の範囲にも2個の回折ピークを有しており、図1に示すPBSのX線回折像は全く相違している。同様の相違は、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩(図3)の場合にも認められる。
【0025】
更に、本発明に最も好適に用いられるPBSは、更に図1から明らかなとおり、積層不整というX線回折学的な微細構造上の特徴を有している。即ち、PBSでは、2θ=33乃至50゜の回折ピークが非対称ピークとなっていることが明らかである。
【0026】
即ち、このピークは挟角側(2θの小さい側)では立ち上がりが比較的急で、広角側(2θの大きい側)では傾斜のゆるやかな非対称のピークとなっていることが了解される。この非対称ピーク構造は、上述した2θ=33乃至50゜のピークにおいて特に顕著であるが、他に2θ=60乃至64゜のピークにおいても程度は小さいものの同様に認められる。
【0027】
本明細書において、積層不整指数(Is)は、次のように定義される。即ち、後述する実施例記載の方法で、図4に示すようなX線回折チャートを得る。この2θ=33乃至50゜のピークについて、ピークの挟角側最大傾斜ピーク接線aと広角側最大傾斜ピーク接線bを引き、接線aと接線bの交点から垂線cを引く。次いで接線aと垂線cとの角度θ1 、接線bと垂線cとの角度θ2 を求める。これらの角度から、前記式(2)により、積層不整指数(Is)が求められる。
この積層不整指数(Is)は、完全に対称なピークである場合には、1.0であり、立ち上がり角度に比して立ち下がり角度が大きくなる方が大きな値をとるようになる。
【0028】
この積層不整指数(Is)の意味するところは、次のものと思われる。即ち、本発明に用いるPBSでは、M3+ p M2+ q(OH)y の基本層が積み重なった層状結晶構造を有することは既に指摘したところであるが、各基本層のサイズ(長さや面積)が一様でなく、その分布が広い範囲にわたっており、また、基本層にねじれや湾曲などを生じて、非平面構造となっていると考えられる。
【0029】
本発明に用いる複合金属多塩基性塩は、室温から200℃の温度に加熱したときの重量減少率が20重量%以下、特に15重量%以下であり、アンチブロッキング剤として樹脂中に配合したとき、樹脂の加工温度で発泡を生じることがないという顕著な利点をも有している。
図5は、本発明に用いる複合金属多塩基性塩についての示差熱分析(DTA)の結果を示している。ハイドロタルサイト類などでは温度190乃至240℃の範囲に水分の揮発に基づく極めて大きな吸熱ピークが認められるのに対して、PBSではこのような大きな吸熱ピークは認められず、耐発泡性に優れていることを示している。
【0030】
本発明に用いる複合金属多塩基性塩は、小さい比表面積と小さい細孔容積とを有している。一般に、本発明に好適に用いるPBSのBET比表面積は200m2/g以下、好ましくは40m2/g以下、更に好ましくは0.3乃至20m2/gの範囲であり、一方、細孔径17乃至3000オングストロームについてBJH法で求めた細孔容積は0.0005乃至0.05ml/g、特に0.02乃至0.035ml/gの範囲にある。
【0031】
また、本発明に用いる複合金属多塩基性塩は、レーザ回折法で測定して、一般に 0.1乃至20μm、特に0.1乃至10μmの体積基準中位径(D50)を有する。
粒子形状は、板状結晶粒子状からアグロメレート状の形状があり、これは複合金属多塩基性塩の二価金属M2+の種類にも依存する。
【0032】
図6は、アニオンが硫酸イオンからなるAl−Mg型PBSの粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0033】
また、本発明のアンチブロッキング剤は、1.40乃至1.65、特に1.46乃至1.54の屈折率を有し、ポリエチレン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル等の樹脂に近い屈折率を有し、これら樹脂の透光性等の光学的性質を低下させることがない。
【0034】
[複合多塩基性塩の調製]
本発明において、最も好適に用いることができる複合金属多塩基性塩は、三価金属の水可溶性塩と、二価金属の酸化物、水酸化物或いは水可溶性塩とを、反応終了時のpHが3.5乃至10となる条件下で、且つ50℃以上の温度で反応させ、必要により酸或いは酸の可溶性塩の存在下にイオン交換することにより製造することができる。
【0035】
Alなどの三価金属の水可溶性塩としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの水可溶性塩であれば、何れをも使用しうるが、本発明では合成の容易さの点から、複合金属多塩基性塩を硫酸塩の形で合成するのが望ましく、この点から、硫酸塩の形で用いるのが最も望ましい。
【0036】
Mg或いはZnなどの二価金属の原料としては、酸化物、水酸化物或いは水溶性塩の何れも使用できるが、酸化物、例えば亜鉛華や、水酸化物、例えば水酸化マグネシウムを用いるのが合成上もっとも便利である。勿論、本発明においては、二価金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの水可溶性塩を用いても、反応系のpHを上記の範囲に制御することにより、複合金属多塩基性塩の合成を行うことが可能である。
【0037】
本発明では、上記各原料を、反応終了時のpHが3.5乃至10.0、特に4.0乃至9.0の範囲となり、且つ反応温度を50℃以上、特に80乃至180℃の範囲に維持して、反応を行うことが重要である。
反応系のpHが上記範囲外では、複合金属多塩基性塩の生成が困難となる傾向がある。即ち、この複合金属多塩基性塩では、水酸基とアニオン性基との両方を結合して有することが特徴であるが、pHが上記範囲を上回るとアニオン性基の導入が困難となり、pHが上記範囲を下回ると水酸基の導入が困難となる傾向がある。
一方、反応温度が上記範囲を下回るとやはり複合金属多塩基性塩の合成が困難となる傾向がある。
【0038】
本発明に用いる複合金属多塩基性塩の合成に当たって、両原料の混合順序などには格別の制限はなく、例えば、三価金属塩類の水溶液に二価金属の酸化物、水酸化物のスラリーや水溶性塩類の溶液を添加してもよく、また逆に二価金属の酸化物、水酸化物のスラリーや水溶性塩類の溶液に三価金属塩類の水溶液を添加してもよい。
【0039】
反応は、反応混合物を攪拌下に前述した温度で、2乃至72時間程度維持することにより完了させることができる。一般に必要ないが、加圧容器を使用して、水熱条件下に反応を行うこともできる。
反応生成物は、水洗し、濾過などの固液分離操作を行った後、60乃至150℃で乾燥し、必要により更に150乃至230℃で熱処理して製品とすることができる。
【0040】
[表面処理剤]
アンチブロッキング剤としての複合金属水酸化物塩は、そのままアンチブロッキング剤として使用し得るのは勿論のことであるが、複合金属多塩基性塩粒子の表面を、予め20重量%以下、特に0.1乃至15重量%の表面処理剤で処理しておくと、樹脂中への分散性が向上し、透光性も更に向上するので好ましい。
【0041】
かかる表面処理剤としては、脂肪酸、樹脂酸、金属石鹸或いは樹脂酸石鹸等があり、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、アビエチン酸等の樹脂酸、脂肪酸或いは樹脂酸のカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等の金属石鹸、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等、ラウリルエーテルリン酸、ステアリルエーテルリン酸、オレイルエーテルリン酸、ジアリルエーテルリン酸、アルキルフェニルエーテルリン酸等、又はこれらのナトリウム、カリウム塩が好適に使用される。更に、各種ワックス類、未変性乃至変性の各種樹脂(例えばロジン、石油樹脂等)等のコーテイング剤も使用できる。
【0042】
また、他の表面処理剤として、シラン系、アルミニウム系、チタン系或いはジルコニウム系のカップリング剤;無機酸化物、例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムで被覆し或いは表面処理しておくことができる。
【0043】
更に、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性系の界面活性剤で複合金属多塩基性塩を表面処理し、樹脂中への分散性を向上させると共に、配合フィルムに防曇性を付与することもできる。
【0044】
改質用無機系助剤として、カオリン、エアロジル、疎水処理エアロジル等の微粒子シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、カルシア、マグネシア、チタニア等の金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、A型、P型等の合成ゼオライト及びその酸処理物又はその金属イオン交換物からなる定形粒子を、複合金属多塩基性塩に外添(ブレンド乃至マブシ)して使用することもできる。
【0045】
[樹脂組成物]
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイド等あるいはそれらの混合物のいずれかでもよい。
【0046】
また、オレフィン系樹脂としては、メタロセン触媒を用いて合成した樹脂はもちろんのこと、例えば低−・中−・高密度の或いは線状低密度のポリエチレン、ポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等を挙げることが出来る。特にポリアミド、ポリエステル等には重合前に添加して使用することもできる。
【0047】
これら熱可塑性樹脂100重量部に対して、本発明のアンチブロッキング剤を0.05乃至20重量部、特に0.05乃至5重量部、更に好ましくは0.05乃至1重量部の配合比で用いるのがよい。
アンチブロッキング剤の量が上記範囲を下回ると、アンチブロッキング性能が不十分となる傾向があり、一方上記範囲を上回ると、アンチブロッキング性能の向上には限度があると共に、透明性が低下するので好ましくない。
【0048】
本発明によるアンチブロッキング剤を樹脂に配合するときには、分散剤、特に滑剤としての作用をも有する分散剤と組み合わせで用いることが推奨される。このような分散剤としては、カルボキシル基、その無水物基、そのアミド基またはその塩の基を有する有機物が挙げられる。
【0049】
その適当な例としては、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系のもの、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石ケンおよびそれらの混合系が一般に用いられるが、特に脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系が好ましい。
更に、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンワックスや無水マレイン酸グラフト変性オレフィン系樹脂も、この目的に好適に使用される。
【0050】
上記の分散剤及び/または滑剤は、樹脂100重量部当たり0.05乃至5重量部、特に0.1乃至1重量部の量で配合することが好ましい。
【0051】
熱可塑性樹脂にアンチブロッキング剤を配合するには、ドライブレンド或いはメルトブレンド方式を採用することができ、一般には、アンチブロッキング剤を樹脂中に高濃度に配合したマスターバッチを製造し、このマスターバッチを未配合の樹脂に配合するのが望ましい。
【0052】
[他の配合剤]
アンチブロッキング剤を配合した樹脂組成物には、それ自体公知の各種添加剤、例えば安定剤、安定助剤、防曇剤、滑剤、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、造核剤、充填剤等を配合併用することができる。これら樹脂配合物と本発明品の複合金属多塩基性塩とを混合粒子として成形(ペレット状、グラニュール状、球状等)することにより微粉末ダストの発生防止や定量フィード性の向上を行うことができる。
【0053】
また複合金属多塩基性塩である、マグアルドレート(Al5Mg10(OH)31(SO4)2・xH2O)も使用することができる。マグアルドレートを調製するには、例えば特開昭60−204617号公報記載の方法等を用いて調製することができる。
【0054】
フィルムの成形は、この樹脂組成物を押出機で溶融混練した後、ダイを通して押し出し、インフレーション製膜法、T−ダイ法等により行うことができる。
【0055】
【実施例】
本発明を次の実施例により更に説明する。実施例で行った測定方法は、以下のように行った。
【0056】
(1)化学分析
化学分析は、湿式分析、原子吸光分析、イオンクロマトグラフィーにより行った。
【0057】
(2)X線回析
理学電機(株)製のGeigerflexRAD−Bシステムを用いて、Cu−Kαにて測定した。
ターゲット Cu
フィルター 湾曲結晶グラファイトモノクロメーター
検出器 SC
電圧 40KV
電流 20mA
カウントフルスケール 700c/s
スムージングポイント 25
走査速度 2°/min
ステップサンプリング 0.02°
スリット DS1° RS0.15mm SS1°
照角 6°
【0058】
(3)粒子径(メジアン径)測定試験
Coulter社製Particle Size Analyzer Model LS230を使用し、平均粒径を測定した。
【0059】
(4)屈折率
JIS K 0062に準拠して測定した。
【0060】
(5)示差熱分析
セイコー電子工業(株)製SSC/5200を用いて測定を行った。
【0061】
(6)比表面積測定試験
島津製作所製ASAP2010を使用し、N2を用いてBET法により測定した。
【0062】
(7)見かけ比重測定試験
JIS K 6721に準拠して測定した。
【0063】
(実施例1)
水酸化マグネシウム(MgO=64.5%) 53.6kgに水を加え200Lとし、攪拌、分散させMg(OH)2スラリーを調製した。硫酸アルミニウム(Al2O3=8.06%、SO3=18.8%) 180kgを前記Mg(OH)2スラリーに室温下にて攪拌しながら12.6kg/minで注加した後、400Lまでメスアップした。その後、95℃まで加温し、10時間反応を行った。
反応終了後、濾過、温水で洗浄を行い、反応終了品の濾過ケーキを得た。この濾過ケーキの一部を110℃にて乾燥、粉砕を行い白色粉末を得た。
得られた微粉末の組成は分析の結果、下記のようになった。
Al1.00 Mg1.99(OH)6.12(SO4)0.43・1.6 H2O
2θ 相対強度
10.6゜ 100%
20.5゜ 38%
35.4゜ 24%
61.5゜ 30%
得られた微粉末のX線回折像を図1、示差熱分析の結果を図5、走査型電子顕微鏡写真を図6にそれぞれ示す。その他性状を表1に示す。
次に、得られた反応終了品の濾過ケーキ(固形分36.2%)を1Lビーカーに入れ、イオン交換水を固形分濃度16wt%になるように試料を分散させた。別のビーカーに上記分散液の固形物に対して0.5wt%相当のモノグリセリンステアレート(リケマールS−200)をイオン交換水に溶解した。反応終了品の分散液を50℃に攪拌下加熱しながら、モノグリセリンステアレート水溶液を注加し、50℃で30分間攪拌し表面処理を行った。反応終了後、濾過、水洗、乾燥を行い試料(S−1)を得た。
【0064】
(比較例1)
市販のNa−P型ゼオライト(化学組成:Na2O・3.8SiO2・Al2O3・2.4H2O)を用いた(H−1とする)。
試料の物性を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
非晶質シリカ微粉末(ミズカシルP−709:水澤化学製)(H−2とする)を用いた。
試料の物性を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
各アンチブロッキン剤を添加して得たフィルムについてそれぞれ確性試験を行った。試験方法は、以下の通りである。なお、フィルムは、ISO 291:1997に準拠した、23℃、湿度50%の環境下で所定時間保存した試験片を用いて試験を行った。
【0068】
(8)アンチブロッキング性(AB性:触診開口試験)
ISO11502:1995(method B)に記載される条件で2枚のフィルムを圧着し、触診試験によってその剥がれ易さを以下のように評価した。
◎: 抵抗なく剥がれるもの
○: やや剥がれにくいもの
△: 著しく剥がれにくいもの
×: 剥がれないもの
【0069】
(9)ヘーズ(Haze)
ASTM D 1003−95に準拠して測定し、以下のように評価した。
フィルムを透かした時の霞具合を以下のように目視にて評価した。
◎: 目視では霞が見られない
○: 僅かに霞が見られる
△: はっきりと霞が見られる
×: かなりはっきりと霞が見られる
【0070】
(10)分散性
試料を樹脂に分散したときの分散性を以下のように目視にて評価した。
◎:特に分散性が良い。
○:分散性が良い。
△:少し分散性が悪い。
×:かなり分散性が悪い。
【0071】
(実施例2〜3、比較例3〜5)
線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用い、表2に示した配合原料を加工温度220℃で、インフレーション法で製膜し、厚さ25μmのフィルムを得た。得られたフィルムについて確性試験を行い、結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、明確な結晶構造を有し、またハイドロタルサイト類とも結晶構造の異なる複合金属多塩基性塩が、樹脂フィルム用アンチブロッキング剤に優れることを見出した。
また、このアンチブロッキング剤は、樹脂に配合したときのアンチブロッキング性と樹脂の透明性との組み合わせに優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いたアニオンが硫酸イオンからなるAl−Mgタイプ複合金属多塩基性塩のX線回折像を示す図である。
【図2】ハイドロタルサイトのX線回折像を示す図である。
【図3】リチウムアルミニウム複合水酸化物塩のX線回折像を示す図である。
【図4】積層不整指数の求め方を示す図である。
【図5】本発明品の複合金属多塩基性塩とハイドロタルサイトの示差熱分析の対比を示す図である。
【図6】アニオンが硫酸イオンからなるAl−Mg型複合金属多塩基性塩の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
Claims (12)
- 下記一般式(1)
M3+ pM2+ q(OH)y(A)z・nH2O ‥(1)
式中、M3+は三価金属を表し、M2+は二価金属を表し、
Aは無機または有機のアニオンを表し、
p、q、y及びzは下記式
3p+2q−y−mz=0(式中mはアニオンAの価数であり)・・・(I)
0.3≦q/p≦2.5・・・(II)
1.5≦y/(p+q)≦3.0・・・(III)
及び
1.0≦(p+q)/z≦20.0・・・(IV)
を満足する数であり、
nは7以下の数である、
で表される化学組成を有する複合金属多塩基性塩からなることを特徴とするアンチブロッキング剤。 - 前記一般式(1)において、三価金属M3+がアルミニウムであり、二価金属M2+がマグネシウム及び亜鉛からなる群より選択された少なくとも1種の金属であり、アニオンAが硫酸アニオンであることを特徴とする請求項1に記載のアンチブロッキング剤。
- 前記複合金属多塩基性塩が、X線回折(Cu−α)において、2θ=2乃至15゜、2θ=16乃至26゜及び2θ=33乃至50゜に回折ピークを有し、且つ2θ=60乃至64゜には単一のピークが存在するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のアンチブロッキング剤。
- 下記数式(2)
IS = tanθ2/tanθ1 ・・(2)
式中、θ1は一定の面間隔のX線回折ピークにおけるピーク垂線と狭角側ピーク接線とがなす角度を表し、θ2は該ピークにおけるピーク垂線と広角側ピーク接線とがなす角度を表す、
で定義される積層不整指数(IS)が2θ=33乃至50゜のピークにおいて1.0以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のアンチブロッキング剤。 - 前記複合金属多塩基性塩が体積基準で0.1乃至20μmのメジアン径を有することを特徴とする請求項1乃5の何れかに記載のアンチブロッキング剤。
- 前記複合金属多塩基性塩が液浸法で1.40乃至1.65の屈折率を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のアンチブロッキング剤。
- 前記複合金属多塩基性塩の表面処理が、20重量%以下の表面処理剤で処理されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のアンチブロッキング剤。
- 表面処理剤が、脂肪酸、樹脂酸、金属石鹸、樹脂酸石鹸、ワックス類或いは樹脂である請求項8に記載のアンチブロッキング剤。
- 請求項1乃至9記載のアンチブロッキング剤を熱可塑性樹脂100重量部当たり0.05乃至20重量部の量で含有することを特徴とする樹脂組成物。
- カルボキシル基、その無水物基、そのアミド基またはその塩の基を有する有機物からなる分散剤及び/または滑剤を更に含有することを特徴とする請求項10に記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂100重量部当たり分散剤及び/または滑剤を0.05乃至5重量部の量で含有することを特徴とする請求項11に記載の樹脂組成物。
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JP2008001806A (ja) * | 2006-06-22 | 2008-01-10 | Tayca Corp | 剥離した層状複水酸化物を含む難燃性合成樹脂組成物 |
WO2016174987A1 (ja) * | 2015-04-30 | 2016-11-03 | 協和化学工業株式会社 | ハイドロタルサイト粒子を用いた透明合成樹脂成形品の製造法 |
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2002
- 2002-12-03 JP JP2002351440A patent/JP2004182861A/ja active Pending
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