JP2004179472A - ワーク固定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】変形し難いワークであってもその反りに拘わらず吸着保持の容易なワーク固定装置を提供する。
【解決手段】貫通孔18内に備えられた吸着部材26の先端面46が載置面16の法線方向に沿って移動可能に構成されているため、貫通孔38から吸引した際には、その先端面46とワーク12裏面との間に発生した負圧に基づいてその先端面46がそのワーク12に接近する方向に移動させられ、且つその先端面46がそのワーク12裏面に密接させられる。そのため、ワーク12の反り等に起因してその裏面が載置面16に接していない場合にも、吸着部材26の先端面46が密接させられることによって、ワーク12裏面と吸着部材26との間に隙間の生じることが解消されるので、その吸引力に従ってそのワーク12がその吸着部材26に吸着される。
【選択図】 図2
【解決手段】貫通孔18内に備えられた吸着部材26の先端面46が載置面16の法線方向に沿って移動可能に構成されているため、貫通孔38から吸引した際には、その先端面46とワーク12裏面との間に発生した負圧に基づいてその先端面46がそのワーク12に接近する方向に移動させられ、且つその先端面46がそのワーク12裏面に密接させられる。そのため、ワーク12の反り等に起因してその裏面が載置面16に接していない場合にも、吸着部材26の先端面46が密接させられることによって、ワーク12裏面と吸着部材26との間に隙間の生じることが解消されるので、その吸引力に従ってそのワーク12がその吸着部材26に吸着される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークを所定の載置面に固定するためのワーク固定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板等のワークに所定の加工を施し、或いは検査をするに際して、そのワークをテーブルの水平或いは傾斜した載置面上に固定することが行われている。このテーブルへの固定方法には種々の形式のものがあるが、その一つに、例えば、その載置面にワークをその平坦な裏面がテーブル側に向かう向きで載せ、その載置面に開口する吸引口から吸引することによってワークを吸着する吸着固定方式がある。この固定方式は、構造が簡単で動作が確実であることから広く用いられている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−45692号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような真空吸着による固定は、ワークの平坦な裏面が載置面、少なくとも吸引口周縁部に密着させられることを必要とする。このため、反りを有するワークを固定しようとしても、真空吸引する力が弱くなることから、吸着状態が不安定になる不都合がある。
【0005】
これに対して、前記特許文献1に記載された吸着保持装置によれば、小断面積の吸引口と大断面積の吸引口とを併設することが提案されている。この技術によれば、小断面積の吸引口から吸引することで薄板状のワークが載置面に倣わされる一方、大断面積の吸引口から吸引することで大きな保持力が得られるため、吸着状態が安定する利点がある。しかしながら、この吸着保持装置は、容易に弾性的に変形させられるシリコン・ウェハ等の薄板状のワークを対象とする。そのため、比較的厚いワークを吸着保持しようとしても、ワークが変形し難いので載置面に倣わされないことから、安定した吸着状態を確保することができない問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、変形し難いワークであってもその反りに拘わらず吸着保持の容易なワーク固定装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、ワークを載せるための載置面を備え、平坦な裏面を有するワークをその裏面がその載置面に向かう向きで固定するためのワーク固定装置であって、(a)前記載置面に開口する吸引口と、(b)前記載置面の法線方向に沿って移動可能な先端面とその先端面に開口する吸引孔とを有して前記吸引口内に備えられ且つその吸引孔から吸引することにより前記ワークの裏面にその先端面を密接させるための吸着部材と、(c)前記先端面の前記法線方向における移動範囲を制限するための移動制限部材とを、含むことにある。
【0008】
【発明の効果】
このようにすれば、吸引口内に備えられた吸着部材の先端面が載置面の法線方向に沿って移動可能に構成されているため、吸引孔から吸引した際には、その先端面とワーク裏面との間に発生した負圧に基づいてその先端面がそのワークに接近する方向に移動させられ、且つその先端面がそのワーク裏面に密接させられる。そのため、ワークの反り等に起因してその裏面が載置面に接していない場合にも、吸着部材の先端面が密接させられることによって、ワーク裏面と吸着部材との間に隙間の生じることが解消されるので、その吸引力に従ってそのワークがその吸着部材に吸着される。したがって、ワークに反りがある場合にもその弾性的な変形の難易に拘わらず容易に吸着保持することが可能となる。
【0009】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記吸着部材は前記法線方向に沿って移動可能に設けられたものであり、その吸着部材を前記載置面に載せられたワークから離隔する方向に付勢するための弾性部材を備え、前記先端面は、前記ワークを吸引する際にその弾性部材の付勢力に抗してそのワークに接近させられるものである。このようにすれば、吸着部材が載置面上のワークから離隔する方向に付勢されているので、前記吸引孔からの吸引を停止すると、弾性部材の付勢力に従ってその吸着部材がワークから離隔させられ延いてはその先端面とワーク裏面との密接状態が解消される。したがって、吸着固定されていたワークを載置面上から容易に移動させることができる。しかも、専ら先端面だけが移動可能に構成されている場合に比較して、その先端面とワーク裏面との密接状態が一層容易に実現される利点もある。
【0010】
また、好適には、前記吸引口は、前記開口側が大径の段付貫通孔であり、前記吸着部材は、その吸引口の大径部内に位置させられる第1鍔部と、その吸引口の裏面開口よりも外側に位置させられる第2鍔部とを備え、且つ、その第1鍔部がその吸引口内の段付部に当接させられる第1位置と、その第2鍔部がその裏面開口に当接させられる第2位置との間で移動可能に構成されたものである。このようにすれば、第1鍔部と第2鍔部との間隔、および吸引口の段付部と裏面開口との距離により定められる範囲内で吸着部材が移動させられることから、先端面の移動可能範囲も相対的に制限されるため、先端面だけが移動可能な場合に比較して、その先端面の大きな移動ストロークを容易に確保できると共に、吸着部材が脱落することや先端面がワーク裏面に接近し過ぎること等が好適に抑制される。
【0011】
また、好適には、前記吸着部材は、前記先端面を有する第1吸着部材と、その第1吸着部材を支持する第2吸着部材とを備え、且つその先端面がその第2吸着部材に対して前記法線方向に沿って弾性的に伸縮させられるものである。このようにすれば、吸着部材は、少なくとも2つの部材で構成されることから、先端面を有する第1吸着部材のみを伸縮可能に構成してその先端面を載置面の法線方向に沿って移動可能とすることや、吸着部材全体がその法線方向に沿って移動可能且つ第1吸着部材の先端面がその法線方向に沿って移動可能に構成することが容易になる。
【0012】
特に、第2吸着部材が吸引口に対して前記法線方向に沿って移動可能に構成されている態様において、その移動可能距離が非吸着状態における載置面から先端面までの距離よりも十分に長くされている場合には、先端面がワーク裏面に密接させられた後に第1吸着部材が縮むことによって吸引孔内の負圧が拡大されるため、一層確実にワークを吸着固定することができる。
【0013】
また、前記第1吸着部材は弾性材料から成る蛇腹状部材であり、前記先端面とは反対側のその基端部において前記第2吸着部材に固定されたものである。このようにすれば、材料自身の弾性と蛇腹構造とに基づき、第1吸着部材が好適に伸縮させられ、延いては先端面が載置面の法線方向に沿って移動させられる。
【0014】
また、好適には、前記先端面は、前記吸引孔から吸引していない状態では前記載置面よりも下側に位置するものである。このようにすれば、載置面の法線方向に沿って移動可能な先端面が、ワークを吸着していない状態では載置面上に突き出していないため、吸着部材が却ってワークの吸着の妨げとなることがない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例のワーク固定装置10の断面構造の要部を示す図である。このワーク固定装置10は、ワーク12を固定するための固定台14の上の複数箇所に備えられたものであって、例えば、蛍光表示管やPDP等の製造工程において、その端子の研磨や膜形成状態の検査等の目的で、それらの構成部品であるガラス基板等の平板状のワーク12をその載置面16上に固定するために用いられる。なお、固定台14は、その載置面16が例えば水平面に対して例えば0〜60°程度の範囲内の角度で傾斜させられるようになっており、図においては45°程度だけ傾斜した状態を示した。
【0017】
また、図において、固定台14には、その厚さ方向に貫通する貫通孔18がその載置面16に対して垂直方向に(すなわちその法線方向に沿って)設けられている。貫通孔18は、載置面16に平行な断面における断面形状が円形を成し、その載置面16側の内径が固定台14の裏面20側の内径よりも大径に形成された段付孔である。また、固定台14の上面には、載置板22がねじ止め等で固着されており、上記の載置面16は、その載置板22の上面で構成されている。この載置板22にもその厚み方向に貫通する貫通孔24が備えられているが、その内径は貫通孔18の大径部18aよりも小さくなっており、小径部18bと略同様な大きさである。すなわち、貫通孔18は、載置板22によってその開口の周縁部が塞がれている。本実施例においては、これら貫通孔18,24によって吸引口が構成されている。
【0018】
また、上記の貫通孔18内には、吸着部材26が備えられている。吸着部材26は、スライド部28とその載置面16側の一端に固着されたパット部30とを備えたものである。スライド部28は、例えばステンレス鋼等から成るものであって、大径部18a内に位置させられた鍔部32と、その鍔部32側の一部が小径部18b内に位置させられ且つ大径部18aとは反対側の端部が裏面20から突出させられた軸部34とを備えている。鍔部32の直径寸法は大径部18aの内径寸法よりも僅かに小さく且つ小径部18bの内径寸法よりも十分に大きくされており、軸部34の直径寸法は小径部18bの内径寸法よりも十分に小さくされている。また、軸部34と小径部18bとの間には、スライド軸受35が備えられている。そのため、スライド部28は、その軸心方向に垂直な平面内においてスライド軸受35の案内精度或いは鍔部32と大径部18aとの隙間の大きさに応じた位置精度を保ちつつ、軸部34と小径部18bとが何ら干渉させられること無く、その軸心方向において貫通孔18と相対移動させられ得る。貫通孔18は載置面16の法線方向に沿って設けられているので、吸着部材26は、その法線方向に沿って移動可能である。また、パット部30は、例えばニトリル、シリコーン、弗素ゴム等のゴム材料から成り、その軸心方向において小径部と大径部とが交互に備えられた蛇腹状を成したものである。パット部30のスライド部28とは反対側に位置する先端部は、前記の貫通孔24よりも小径に構成され、その貫通孔24内に位置させられている。本実施例においては、パット部30が第1吸着部材に、スライド部28が第2吸着部材にそれぞれ相当する。
【0019】
図2は、上記の吸着部材26の構造をその軸心を通る断面において説明する図である。スライド部28およびパット部30は、何れもその軸心方向に沿って伸びる貫通孔36,38を有するものであり、それらが同軸に重ね合わされた状態で、ボルト40が鍔部32側からねじ込まれることによってパット部30がスライド部28に固着されている。スライド部28の貫通孔36内周面には、少なくともそのパッド部30側の一部、例えばその全長に亘る雌ねじが形成されており、これにボルト40が螺合されているのである。また、パット部30のスライド部28側の下端部には、その貫通孔38の内周面に軸心方向に向かう周状突起42が備えられており、この周状突起42がボルト40の頭部とスライド部28の上面との間で挟まれることにより、パット部30がスライド部28に固着されている。また、ボルト40にもその軸心方向に貫通する貫通孔44が設けられているため、上記のような固着状態において、3つの貫通孔36,38,44は相互に連通する。そのため、吸着部材26内には、その軸心方向に貫通し且つパット部30の先端面46に開口するする一つの貫通孔が形成されている。本実施例においては、この貫通孔が吸引孔に相当する。
【0020】
図1に戻って、軸部34の裏面20から突き出した部分は、小径部18b内に位置する部分よりも僅かに小径に構成されると共に、その部分には、雄ねじが形成され且つその雄ねじ部に座金48が嵌め入れられている。また、座金48は、雄ねじ部の基部に形成された段付部に押し付けられた状態で、軸部34に螺合されたナット50によって締付け固定されている。座金48の外径寸法は小径部18bの内径寸法よりも十分に大きくされている。このため、スライド部28は、その両端部に大径の鍔部32および座金48が備えられていることから、その鍔部32が貫通孔18の段付部に当接する第1位置と、座金48が裏面20に当接する第2位置との間で、その軸心方向に移動可能である。図から明らかなように、この第2位置においては、先端面46が載置面16よりも突き出すこととなる。すなわち、貫通孔38から吸引していない状態における先端面46と載置面16との間隔よりも、スライド部28のストロークは十分に大きく設定されている。
【0021】
また、鍔部32の上面には、パット部30の先端面46とは反対側の基部を取り囲むように周状突起52が設けられており、その外周側に圧縮コイルばね54が嵌め合わされている。バネ54の他端部は、載置板22の裏面に当接させられており、バネ54は、その載置板22と鍔部32との間で押し縮められた状態に保たれている。このため、鍔部32延いては吸着部材26は、そのバネ54の復元力に基づき、常に載置板22から離隔する方向に付勢されている。
【0022】
なお、図において56は、空気配管であり、これが真空ポンプ等に接続された場合には貫通孔36,38,44すなわち吸引孔から吸引し、大気圧に解放された場合にはその吸引孔からの吸引が停止させられるようになっている。また、58は、貫通孔18内を大気圧に維持するための通気口である。
【0023】
以上のように構成されたワーク固定装置10を用いてその載置面16にワーク12を固定するに際しては、先ず、貫通孔38から吸引していない状態で、ワーク12をその載置面16に載せる。すなわち、図1に示される位置関係とする。このとき、載置面16が傾斜させられている場合には、吸着固定前に滑落しないように、載置面16上に配置した図示しない治具等で仮固定し、或いは、手等で押さえておく。なお、図1等から明らかなように、貫通孔38から吸引していない状態では先端面46が載置面16の下方に位置するため、ワーク12を載置面16に載せるに際して、パット部30が妨げとなることはない。
【0024】
次いで、空気配管56を真空ポンプに接続してこれを作動させると、貫通孔38から吸引されるので、パット部30の先端面46近傍とワーク12の裏面との間に負圧が発生し、バネ54の付勢力に抗して吸着部材26がワーク12に向かって移動させられる。このようにして吸着部材26が図1に示されるワーク12の裏面と先端面46との隙間に等しい距離だけ移動させられると、その先端面46がそのワーク12の裏面に密接させられる。図3は、この段階を示している。図から明らかなように、この段階では固定台14の裏面20と座金48とが僅かに離れた状態にある。また、図に示されるように、ワーク12は反っているためその裏面が載置面16に密接していないが、本実施例によれば、それにも拘わらず、吸着部材26の先端面46がそのワーク12の裏面に密接させられるのである。
【0025】
上記のように先端面46がワーク12に密接した後、更に吸引を継続すると、ゴム材料製の容易に弾性変形させられるパット部30を弾性的に押し縮めつつ、スライド部28がワーク12に接近する。前述したように、スライド部28の移動ストロークが載置面16と先端面46との初期における間隔よりも大きくされているため、ワーク12と先端面46との当接後にもスライド部28の移動が可能となるのである。この移動は、座金48が裏面20に当たると終了させられる。この段階では、吸着部材26が座金48と固定台14との当接状態に基づいてワーク12への接近が禁止されるため、貫通孔38等からの吸引力は専らワーク12を載置面16に密着させる方向に作用する。すなわち、ワーク12が載置面16に吸着固定される。図4は、この移動終了時のワーク12が載置面16に固定された状態を示している。
【0026】
ワーク12に対する加工や検査等は上記のように固定された状態で実施され、処理が終了すると、空気配管56を大気側に切り換えることにより、貫通孔38内を大気圧に解放する。これにより、ワーク12との間の吸引力が働かなくなるので、吸着部材26は、バネ56の付勢力に従って大径部18aの底部すなわち段付部まで押し戻され、図1に示される状態に復帰する。この状態ではワーク12が吸着されていないので、処理を終えたワーク12は載置面16から移動させて次工程等に向けて送られる。
【0027】
要するに、本実施例によれば、貫通孔18内に備えられた吸着部材26の先端面46が載置面16の法線方向に沿って移動可能に構成されているため、貫通孔38から吸引した際には、その先端面46とワーク12裏面との間に発生した負圧に基づいてその先端面46がそのワーク12に接近する方向に移動させられ、且つその先端面46がそのワーク12裏面に密接させられる。そのため、ワーク12の反り等に起因してその裏面が載置面16に接していない場合にも、吸着部材26の先端面46が密接させられることによって、ワーク12裏面と吸着部材26との間に隙間の生じることが解消されるので、その吸引力に従ってそのワーク12がその吸着部材26に吸着される。したがって、ワーク12に反りがある場合にもその弾性的な変形の難易に拘わらず容易に吸着保持することが可能となる。
【0028】
また、本実施例においては、吸着部材26全体が載置面16の法線方向に沿って移動可能に設けられると共に、その吸着部材26を載置面16に載せられたワーク12から離隔する方向に付勢するためのバネ54が備えられ、吸着部材26の先端面46は、ワーク12を吸引する際にそのバネ54の付勢力に抗してそのワーク12に接近させられる。そのため、吸着部材26が載置面16上のワーク12から離隔する方向に付勢されているので、貫通孔38からの吸引を停止すると、バネ54の付勢力に従ってその吸着部材26がワーク12から離隔させられ延いてはその先端面46とワーク12裏面との密接状態が解消される。したがって、吸着固定されていたワーク12を載置面16上から容易に移動させることができる。
【0029】
また、本実施例においては、貫通孔18が載置面16側が大径の段付貫通孔であり、吸着部材26は、その大径部18a内に位置させられる鍔部32と、裏面20よりも外側に位置させられる座金48とを備え、且つ、その鍔部32がその大径部18a内の段付部に当接させられる第1位置と、その座金48がその裏面20に当接させられる第2位置との間で移動可能に構成されているため、先端面46だけが移動可能な場合に比較して、その先端面46の大きな移動ストロークが容易に確保されると共に、吸着部材26が脱落することや先端面46がワーク12裏面に接近し過ぎ延いては載置面16上における固定が不十分になること等が好適に抑制される。
【0030】
また、本実施例においては、スライド部28の移動可能距離が非吸着状態における載置面16から先端面46までの距離よりも十分に長くされていることから、場合には、先端面46がワーク12裏面に密接させられた後にパット部30が縮むことによって貫通孔38等内の負圧が拡大されるため、一層確実にワーク12を吸着固定することができる。
【0031】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0032】
例えば、実施例においては、基板等の平板状のワーク12の固定に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、裏面が平坦なワークを吸着するものであれば、平板状のワーク12に限られず、種々の形状のワークの固定に好適に適用される。
【0033】
また、実施例においては、吸着部材26はワーク12に密接させられるその先端部分が蛇腹状を成すゴム製のパット部30で構成され、容易に弾性変形可能となっていたが、パット部30は、必ずしも容易に弾性変形し得るもので無くとも良い。例えば、断面が一定の差渡し寸法を備えた筒状体で構成しても良い。この場合には、弾性変形可能なゴム等の材料で構成すれば、軸心方向においてある程度の変形が可能であるから、前述した実施例と同様な効果を得ることができる。また、実質的に弾性変形し得ない材料、例えば金属や硬質の合成樹脂等でパット部30を構成しても、先端面46がワーク12の裏面に密接させられれば同様な吸着固定効果を享受し得る。
【0034】
また、実施例においては、吸着部材26が主としてパット部30およびスライド部28の2部材で構成されていたが、単一材料で構成することも可能である。この場合、例えば全体を弾性変形可能なゴム等の材料で構成することもでき、或いは、全体を実質的に弾性変形し得ない金属或いは硬質樹脂で構成してもよい。
【0035】
また、実施例においては、貫通孔18が段付孔に構成され且つスライド部28の両端部に鍔部32および座金48が設けられることによって、吸着部材26が一定の移動範囲内で移動可能に構成されると共に、その貫通孔18からの脱落が防止されていたが、貫通孔18を一定の直径に構成すると共に、スライド部28をピン等で移動可能に支持することもできる。
【0036】
また、実施例においては、貫通孔18が載置面16に対して垂直に設けられ且つ吸着部材26がその貫通孔18内でその軸心方向に沿って移動可能に構成されていたが、載置面16に対して接近し或いは離隔する方向の成分を含む移動方向に設定されていれば、必ずしも厳密に載置面16の法線方向に移動可能とする必要はない。すなわち、請求の範囲にいう「法線方向に沿って移動可能」とは、そのような方向の成分を含む移動方向を言うものである。
【0037】
また、実施例においては、載置板22と鍔部32との間にバネ54が備えられることによって、非吸引状態において吸着部材26が容易に元の位置に復帰させられるように構成されていたが、貫通孔38内を大気圧とすれば吸着状態は解消されるので、バネ54は必ずしも設けられなくとも良い。また、このような原位置への復帰手段を設ける場合において、その構成は種々変更することができ、例えば、裏面20と座金48との間にバネを設ける態様や、通気口58から空気を導入する方法等を適宜採用し得る。
【0038】
また、実施例においては、吸着部材26全体がワーク12に向かって移動可能に構成されていたが、パット部30の弾性変形すなわち先端面46の移動だけで吸着が可能であれば、他の部分が移動可能に構成されなくとも差し支えない。すなわち、例えば鍔部32が貫通孔18の段付部に固着された形態等を採ることもできる。
【0039】
また、実施例においては、小径部18bと軸部34との間にスライド軸受35が備えられていたが、スライド部28は、鍔部32と大径部18aとの隙間が十分に小さくされることによっても、その軸心方向に垂直な平面内における位置精度が確保されているため、スライド軸受35は必ずしも設けられなくともよい。
【0040】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のワーク固定装置の構成を説明するための要部断面図である。
【図2】図1のワーク固定装置に備えられた吸着部材の断面構造を説明する図である。
【図3】ワークの吸着固定に至る中間段階を説明する図である。
【図4】ワークの吸着固定中の状態を説明するための図1に対応する図である。
【符号の説明】
10:ワーク固定装置
12:ワーク
16:載置面
18:貫通孔(吸引口)
26:吸着部材
38:貫通孔(吸引孔)
46:先端面
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークを所定の載置面に固定するためのワーク固定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板等のワークに所定の加工を施し、或いは検査をするに際して、そのワークをテーブルの水平或いは傾斜した載置面上に固定することが行われている。このテーブルへの固定方法には種々の形式のものがあるが、その一つに、例えば、その載置面にワークをその平坦な裏面がテーブル側に向かう向きで載せ、その載置面に開口する吸引口から吸引することによってワークを吸着する吸着固定方式がある。この固定方式は、構造が簡単で動作が確実であることから広く用いられている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−45692号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような真空吸着による固定は、ワークの平坦な裏面が載置面、少なくとも吸引口周縁部に密着させられることを必要とする。このため、反りを有するワークを固定しようとしても、真空吸引する力が弱くなることから、吸着状態が不安定になる不都合がある。
【0005】
これに対して、前記特許文献1に記載された吸着保持装置によれば、小断面積の吸引口と大断面積の吸引口とを併設することが提案されている。この技術によれば、小断面積の吸引口から吸引することで薄板状のワークが載置面に倣わされる一方、大断面積の吸引口から吸引することで大きな保持力が得られるため、吸着状態が安定する利点がある。しかしながら、この吸着保持装置は、容易に弾性的に変形させられるシリコン・ウェハ等の薄板状のワークを対象とする。そのため、比較的厚いワークを吸着保持しようとしても、ワークが変形し難いので載置面に倣わされないことから、安定した吸着状態を確保することができない問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、変形し難いワークであってもその反りに拘わらず吸着保持の容易なワーク固定装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、ワークを載せるための載置面を備え、平坦な裏面を有するワークをその裏面がその載置面に向かう向きで固定するためのワーク固定装置であって、(a)前記載置面に開口する吸引口と、(b)前記載置面の法線方向に沿って移動可能な先端面とその先端面に開口する吸引孔とを有して前記吸引口内に備えられ且つその吸引孔から吸引することにより前記ワークの裏面にその先端面を密接させるための吸着部材と、(c)前記先端面の前記法線方向における移動範囲を制限するための移動制限部材とを、含むことにある。
【0008】
【発明の効果】
このようにすれば、吸引口内に備えられた吸着部材の先端面が載置面の法線方向に沿って移動可能に構成されているため、吸引孔から吸引した際には、その先端面とワーク裏面との間に発生した負圧に基づいてその先端面がそのワークに接近する方向に移動させられ、且つその先端面がそのワーク裏面に密接させられる。そのため、ワークの反り等に起因してその裏面が載置面に接していない場合にも、吸着部材の先端面が密接させられることによって、ワーク裏面と吸着部材との間に隙間の生じることが解消されるので、その吸引力に従ってそのワークがその吸着部材に吸着される。したがって、ワークに反りがある場合にもその弾性的な変形の難易に拘わらず容易に吸着保持することが可能となる。
【0009】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記吸着部材は前記法線方向に沿って移動可能に設けられたものであり、その吸着部材を前記載置面に載せられたワークから離隔する方向に付勢するための弾性部材を備え、前記先端面は、前記ワークを吸引する際にその弾性部材の付勢力に抗してそのワークに接近させられるものである。このようにすれば、吸着部材が載置面上のワークから離隔する方向に付勢されているので、前記吸引孔からの吸引を停止すると、弾性部材の付勢力に従ってその吸着部材がワークから離隔させられ延いてはその先端面とワーク裏面との密接状態が解消される。したがって、吸着固定されていたワークを載置面上から容易に移動させることができる。しかも、専ら先端面だけが移動可能に構成されている場合に比較して、その先端面とワーク裏面との密接状態が一層容易に実現される利点もある。
【0010】
また、好適には、前記吸引口は、前記開口側が大径の段付貫通孔であり、前記吸着部材は、その吸引口の大径部内に位置させられる第1鍔部と、その吸引口の裏面開口よりも外側に位置させられる第2鍔部とを備え、且つ、その第1鍔部がその吸引口内の段付部に当接させられる第1位置と、その第2鍔部がその裏面開口に当接させられる第2位置との間で移動可能に構成されたものである。このようにすれば、第1鍔部と第2鍔部との間隔、および吸引口の段付部と裏面開口との距離により定められる範囲内で吸着部材が移動させられることから、先端面の移動可能範囲も相対的に制限されるため、先端面だけが移動可能な場合に比較して、その先端面の大きな移動ストロークを容易に確保できると共に、吸着部材が脱落することや先端面がワーク裏面に接近し過ぎること等が好適に抑制される。
【0011】
また、好適には、前記吸着部材は、前記先端面を有する第1吸着部材と、その第1吸着部材を支持する第2吸着部材とを備え、且つその先端面がその第2吸着部材に対して前記法線方向に沿って弾性的に伸縮させられるものである。このようにすれば、吸着部材は、少なくとも2つの部材で構成されることから、先端面を有する第1吸着部材のみを伸縮可能に構成してその先端面を載置面の法線方向に沿って移動可能とすることや、吸着部材全体がその法線方向に沿って移動可能且つ第1吸着部材の先端面がその法線方向に沿って移動可能に構成することが容易になる。
【0012】
特に、第2吸着部材が吸引口に対して前記法線方向に沿って移動可能に構成されている態様において、その移動可能距離が非吸着状態における載置面から先端面までの距離よりも十分に長くされている場合には、先端面がワーク裏面に密接させられた後に第1吸着部材が縮むことによって吸引孔内の負圧が拡大されるため、一層確実にワークを吸着固定することができる。
【0013】
また、前記第1吸着部材は弾性材料から成る蛇腹状部材であり、前記先端面とは反対側のその基端部において前記第2吸着部材に固定されたものである。このようにすれば、材料自身の弾性と蛇腹構造とに基づき、第1吸着部材が好適に伸縮させられ、延いては先端面が載置面の法線方向に沿って移動させられる。
【0014】
また、好適には、前記先端面は、前記吸引孔から吸引していない状態では前記載置面よりも下側に位置するものである。このようにすれば、載置面の法線方向に沿って移動可能な先端面が、ワークを吸着していない状態では載置面上に突き出していないため、吸着部材が却ってワークの吸着の妨げとなることがない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例のワーク固定装置10の断面構造の要部を示す図である。このワーク固定装置10は、ワーク12を固定するための固定台14の上の複数箇所に備えられたものであって、例えば、蛍光表示管やPDP等の製造工程において、その端子の研磨や膜形成状態の検査等の目的で、それらの構成部品であるガラス基板等の平板状のワーク12をその載置面16上に固定するために用いられる。なお、固定台14は、その載置面16が例えば水平面に対して例えば0〜60°程度の範囲内の角度で傾斜させられるようになっており、図においては45°程度だけ傾斜した状態を示した。
【0017】
また、図において、固定台14には、その厚さ方向に貫通する貫通孔18がその載置面16に対して垂直方向に(すなわちその法線方向に沿って)設けられている。貫通孔18は、載置面16に平行な断面における断面形状が円形を成し、その載置面16側の内径が固定台14の裏面20側の内径よりも大径に形成された段付孔である。また、固定台14の上面には、載置板22がねじ止め等で固着されており、上記の載置面16は、その載置板22の上面で構成されている。この載置板22にもその厚み方向に貫通する貫通孔24が備えられているが、その内径は貫通孔18の大径部18aよりも小さくなっており、小径部18bと略同様な大きさである。すなわち、貫通孔18は、載置板22によってその開口の周縁部が塞がれている。本実施例においては、これら貫通孔18,24によって吸引口が構成されている。
【0018】
また、上記の貫通孔18内には、吸着部材26が備えられている。吸着部材26は、スライド部28とその載置面16側の一端に固着されたパット部30とを備えたものである。スライド部28は、例えばステンレス鋼等から成るものであって、大径部18a内に位置させられた鍔部32と、その鍔部32側の一部が小径部18b内に位置させられ且つ大径部18aとは反対側の端部が裏面20から突出させられた軸部34とを備えている。鍔部32の直径寸法は大径部18aの内径寸法よりも僅かに小さく且つ小径部18bの内径寸法よりも十分に大きくされており、軸部34の直径寸法は小径部18bの内径寸法よりも十分に小さくされている。また、軸部34と小径部18bとの間には、スライド軸受35が備えられている。そのため、スライド部28は、その軸心方向に垂直な平面内においてスライド軸受35の案内精度或いは鍔部32と大径部18aとの隙間の大きさに応じた位置精度を保ちつつ、軸部34と小径部18bとが何ら干渉させられること無く、その軸心方向において貫通孔18と相対移動させられ得る。貫通孔18は載置面16の法線方向に沿って設けられているので、吸着部材26は、その法線方向に沿って移動可能である。また、パット部30は、例えばニトリル、シリコーン、弗素ゴム等のゴム材料から成り、その軸心方向において小径部と大径部とが交互に備えられた蛇腹状を成したものである。パット部30のスライド部28とは反対側に位置する先端部は、前記の貫通孔24よりも小径に構成され、その貫通孔24内に位置させられている。本実施例においては、パット部30が第1吸着部材に、スライド部28が第2吸着部材にそれぞれ相当する。
【0019】
図2は、上記の吸着部材26の構造をその軸心を通る断面において説明する図である。スライド部28およびパット部30は、何れもその軸心方向に沿って伸びる貫通孔36,38を有するものであり、それらが同軸に重ね合わされた状態で、ボルト40が鍔部32側からねじ込まれることによってパット部30がスライド部28に固着されている。スライド部28の貫通孔36内周面には、少なくともそのパッド部30側の一部、例えばその全長に亘る雌ねじが形成されており、これにボルト40が螺合されているのである。また、パット部30のスライド部28側の下端部には、その貫通孔38の内周面に軸心方向に向かう周状突起42が備えられており、この周状突起42がボルト40の頭部とスライド部28の上面との間で挟まれることにより、パット部30がスライド部28に固着されている。また、ボルト40にもその軸心方向に貫通する貫通孔44が設けられているため、上記のような固着状態において、3つの貫通孔36,38,44は相互に連通する。そのため、吸着部材26内には、その軸心方向に貫通し且つパット部30の先端面46に開口するする一つの貫通孔が形成されている。本実施例においては、この貫通孔が吸引孔に相当する。
【0020】
図1に戻って、軸部34の裏面20から突き出した部分は、小径部18b内に位置する部分よりも僅かに小径に構成されると共に、その部分には、雄ねじが形成され且つその雄ねじ部に座金48が嵌め入れられている。また、座金48は、雄ねじ部の基部に形成された段付部に押し付けられた状態で、軸部34に螺合されたナット50によって締付け固定されている。座金48の外径寸法は小径部18bの内径寸法よりも十分に大きくされている。このため、スライド部28は、その両端部に大径の鍔部32および座金48が備えられていることから、その鍔部32が貫通孔18の段付部に当接する第1位置と、座金48が裏面20に当接する第2位置との間で、その軸心方向に移動可能である。図から明らかなように、この第2位置においては、先端面46が載置面16よりも突き出すこととなる。すなわち、貫通孔38から吸引していない状態における先端面46と載置面16との間隔よりも、スライド部28のストロークは十分に大きく設定されている。
【0021】
また、鍔部32の上面には、パット部30の先端面46とは反対側の基部を取り囲むように周状突起52が設けられており、その外周側に圧縮コイルばね54が嵌め合わされている。バネ54の他端部は、載置板22の裏面に当接させられており、バネ54は、その載置板22と鍔部32との間で押し縮められた状態に保たれている。このため、鍔部32延いては吸着部材26は、そのバネ54の復元力に基づき、常に載置板22から離隔する方向に付勢されている。
【0022】
なお、図において56は、空気配管であり、これが真空ポンプ等に接続された場合には貫通孔36,38,44すなわち吸引孔から吸引し、大気圧に解放された場合にはその吸引孔からの吸引が停止させられるようになっている。また、58は、貫通孔18内を大気圧に維持するための通気口である。
【0023】
以上のように構成されたワーク固定装置10を用いてその載置面16にワーク12を固定するに際しては、先ず、貫通孔38から吸引していない状態で、ワーク12をその載置面16に載せる。すなわち、図1に示される位置関係とする。このとき、載置面16が傾斜させられている場合には、吸着固定前に滑落しないように、載置面16上に配置した図示しない治具等で仮固定し、或いは、手等で押さえておく。なお、図1等から明らかなように、貫通孔38から吸引していない状態では先端面46が載置面16の下方に位置するため、ワーク12を載置面16に載せるに際して、パット部30が妨げとなることはない。
【0024】
次いで、空気配管56を真空ポンプに接続してこれを作動させると、貫通孔38から吸引されるので、パット部30の先端面46近傍とワーク12の裏面との間に負圧が発生し、バネ54の付勢力に抗して吸着部材26がワーク12に向かって移動させられる。このようにして吸着部材26が図1に示されるワーク12の裏面と先端面46との隙間に等しい距離だけ移動させられると、その先端面46がそのワーク12の裏面に密接させられる。図3は、この段階を示している。図から明らかなように、この段階では固定台14の裏面20と座金48とが僅かに離れた状態にある。また、図に示されるように、ワーク12は反っているためその裏面が載置面16に密接していないが、本実施例によれば、それにも拘わらず、吸着部材26の先端面46がそのワーク12の裏面に密接させられるのである。
【0025】
上記のように先端面46がワーク12に密接した後、更に吸引を継続すると、ゴム材料製の容易に弾性変形させられるパット部30を弾性的に押し縮めつつ、スライド部28がワーク12に接近する。前述したように、スライド部28の移動ストロークが載置面16と先端面46との初期における間隔よりも大きくされているため、ワーク12と先端面46との当接後にもスライド部28の移動が可能となるのである。この移動は、座金48が裏面20に当たると終了させられる。この段階では、吸着部材26が座金48と固定台14との当接状態に基づいてワーク12への接近が禁止されるため、貫通孔38等からの吸引力は専らワーク12を載置面16に密着させる方向に作用する。すなわち、ワーク12が載置面16に吸着固定される。図4は、この移動終了時のワーク12が載置面16に固定された状態を示している。
【0026】
ワーク12に対する加工や検査等は上記のように固定された状態で実施され、処理が終了すると、空気配管56を大気側に切り換えることにより、貫通孔38内を大気圧に解放する。これにより、ワーク12との間の吸引力が働かなくなるので、吸着部材26は、バネ56の付勢力に従って大径部18aの底部すなわち段付部まで押し戻され、図1に示される状態に復帰する。この状態ではワーク12が吸着されていないので、処理を終えたワーク12は載置面16から移動させて次工程等に向けて送られる。
【0027】
要するに、本実施例によれば、貫通孔18内に備えられた吸着部材26の先端面46が載置面16の法線方向に沿って移動可能に構成されているため、貫通孔38から吸引した際には、その先端面46とワーク12裏面との間に発生した負圧に基づいてその先端面46がそのワーク12に接近する方向に移動させられ、且つその先端面46がそのワーク12裏面に密接させられる。そのため、ワーク12の反り等に起因してその裏面が載置面16に接していない場合にも、吸着部材26の先端面46が密接させられることによって、ワーク12裏面と吸着部材26との間に隙間の生じることが解消されるので、その吸引力に従ってそのワーク12がその吸着部材26に吸着される。したがって、ワーク12に反りがある場合にもその弾性的な変形の難易に拘わらず容易に吸着保持することが可能となる。
【0028】
また、本実施例においては、吸着部材26全体が載置面16の法線方向に沿って移動可能に設けられると共に、その吸着部材26を載置面16に載せられたワーク12から離隔する方向に付勢するためのバネ54が備えられ、吸着部材26の先端面46は、ワーク12を吸引する際にそのバネ54の付勢力に抗してそのワーク12に接近させられる。そのため、吸着部材26が載置面16上のワーク12から離隔する方向に付勢されているので、貫通孔38からの吸引を停止すると、バネ54の付勢力に従ってその吸着部材26がワーク12から離隔させられ延いてはその先端面46とワーク12裏面との密接状態が解消される。したがって、吸着固定されていたワーク12を載置面16上から容易に移動させることができる。
【0029】
また、本実施例においては、貫通孔18が載置面16側が大径の段付貫通孔であり、吸着部材26は、その大径部18a内に位置させられる鍔部32と、裏面20よりも外側に位置させられる座金48とを備え、且つ、その鍔部32がその大径部18a内の段付部に当接させられる第1位置と、その座金48がその裏面20に当接させられる第2位置との間で移動可能に構成されているため、先端面46だけが移動可能な場合に比較して、その先端面46の大きな移動ストロークが容易に確保されると共に、吸着部材26が脱落することや先端面46がワーク12裏面に接近し過ぎ延いては載置面16上における固定が不十分になること等が好適に抑制される。
【0030】
また、本実施例においては、スライド部28の移動可能距離が非吸着状態における載置面16から先端面46までの距離よりも十分に長くされていることから、場合には、先端面46がワーク12裏面に密接させられた後にパット部30が縮むことによって貫通孔38等内の負圧が拡大されるため、一層確実にワーク12を吸着固定することができる。
【0031】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
【0032】
例えば、実施例においては、基板等の平板状のワーク12の固定に本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、裏面が平坦なワークを吸着するものであれば、平板状のワーク12に限られず、種々の形状のワークの固定に好適に適用される。
【0033】
また、実施例においては、吸着部材26はワーク12に密接させられるその先端部分が蛇腹状を成すゴム製のパット部30で構成され、容易に弾性変形可能となっていたが、パット部30は、必ずしも容易に弾性変形し得るもので無くとも良い。例えば、断面が一定の差渡し寸法を備えた筒状体で構成しても良い。この場合には、弾性変形可能なゴム等の材料で構成すれば、軸心方向においてある程度の変形が可能であるから、前述した実施例と同様な効果を得ることができる。また、実質的に弾性変形し得ない材料、例えば金属や硬質の合成樹脂等でパット部30を構成しても、先端面46がワーク12の裏面に密接させられれば同様な吸着固定効果を享受し得る。
【0034】
また、実施例においては、吸着部材26が主としてパット部30およびスライド部28の2部材で構成されていたが、単一材料で構成することも可能である。この場合、例えば全体を弾性変形可能なゴム等の材料で構成することもでき、或いは、全体を実質的に弾性変形し得ない金属或いは硬質樹脂で構成してもよい。
【0035】
また、実施例においては、貫通孔18が段付孔に構成され且つスライド部28の両端部に鍔部32および座金48が設けられることによって、吸着部材26が一定の移動範囲内で移動可能に構成されると共に、その貫通孔18からの脱落が防止されていたが、貫通孔18を一定の直径に構成すると共に、スライド部28をピン等で移動可能に支持することもできる。
【0036】
また、実施例においては、貫通孔18が載置面16に対して垂直に設けられ且つ吸着部材26がその貫通孔18内でその軸心方向に沿って移動可能に構成されていたが、載置面16に対して接近し或いは離隔する方向の成分を含む移動方向に設定されていれば、必ずしも厳密に載置面16の法線方向に移動可能とする必要はない。すなわち、請求の範囲にいう「法線方向に沿って移動可能」とは、そのような方向の成分を含む移動方向を言うものである。
【0037】
また、実施例においては、載置板22と鍔部32との間にバネ54が備えられることによって、非吸引状態において吸着部材26が容易に元の位置に復帰させられるように構成されていたが、貫通孔38内を大気圧とすれば吸着状態は解消されるので、バネ54は必ずしも設けられなくとも良い。また、このような原位置への復帰手段を設ける場合において、その構成は種々変更することができ、例えば、裏面20と座金48との間にバネを設ける態様や、通気口58から空気を導入する方法等を適宜採用し得る。
【0038】
また、実施例においては、吸着部材26全体がワーク12に向かって移動可能に構成されていたが、パット部30の弾性変形すなわち先端面46の移動だけで吸着が可能であれば、他の部分が移動可能に構成されなくとも差し支えない。すなわち、例えば鍔部32が貫通孔18の段付部に固着された形態等を採ることもできる。
【0039】
また、実施例においては、小径部18bと軸部34との間にスライド軸受35が備えられていたが、スライド部28は、鍔部32と大径部18aとの隙間が十分に小さくされることによっても、その軸心方向に垂直な平面内における位置精度が確保されているため、スライド軸受35は必ずしも設けられなくともよい。
【0040】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のワーク固定装置の構成を説明するための要部断面図である。
【図2】図1のワーク固定装置に備えられた吸着部材の断面構造を説明する図である。
【図3】ワークの吸着固定に至る中間段階を説明する図である。
【図4】ワークの吸着固定中の状態を説明するための図1に対応する図である。
【符号の説明】
10:ワーク固定装置
12:ワーク
16:載置面
18:貫通孔(吸引口)
26:吸着部材
38:貫通孔(吸引孔)
46:先端面
Claims (5)
- ワークを載せるための載置面を備え、平坦な裏面を有するワークをその裏面がその載置面に向かう向きで固定するためのワーク固定装置であって、
前記載置面に開口する吸引口と、
前記載置面の法線方向に沿って移動可能な先端面とその先端面に開口する吸引孔とを有して前記吸引口内に備えられ且つその吸引孔から吸引することにより前記ワークの裏面にその先端面を密接させるための吸着部材と、
前記先端面の前記法線方向における移動範囲を制限するための移動制限部材と
を、含むことを特徴とするワーク固定装置。 - 前記吸着部材は前記法線方向に沿って移動可能に設けられたものであり、
その吸着部材を前記載置面に載せられたワークから離隔する方向に付勢するための弾性部材を備え、
前記先端面は、前記ワークを吸引する際にその弾性部材の付勢力に抗してそのワークに接近させられるものである請求項1のワーク固定装置。 - 前記吸引口は、前記開口側が大径の段付貫通孔であり、
前記吸着部材は、その吸引口の大径部内に位置させられる第1鍔部と、その吸引口の裏面開口よりも外側に位置させられる第2鍔部とを備え、且つ、その第1鍔部がその吸引口内の段付部に当接させられる第1位置と、その第2鍔部がその裏面開口に当接させられる第2位置との間で移動可能に構成されたものである請求項1または請求項2のワーク固定装置。 - 前記吸着部材は、前記先端面を有する第1吸着部材と、その第1吸着部材を支持する第2吸着部材とを備え、且つその先端面がその第2吸着部材に対して前記法線方向に沿って弾性的に伸縮させられるものである請求項1乃至請求項3の何れかのワーク固定装置。
- 前記第1吸着部材は弾性材料から成る蛇腹状部材であり、前記先端面とは反対側のその基端部において前記第2吸着部材に固定されたものである請求項4のワーク固定装置。
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