JP2004179182A - セラミック積層体及びその製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】絶縁体(コンデンサ本体1)内に内部導体(内部電極2)を有するセラミック積層体であって、内部導体(内部電極2)が金属粒子31を主成分とするとともに、該金属粒子31同士の接触界面に金属硫化物結晶相33が存在するもので、内部導体(内部電極2)の厚みは2μm以下であることが望ましい。
【選択図】図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック積層体及びその製法に関し、特に、積層セラミックコンデンサ、積層型圧電アクチュエータ、配線基板等のセラミック積層体及びその製法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来から、電子機器の小型化、高密度化に伴い、セラミック積層体、例えば、積層セラミックコンデンサは、小型、高容量が求められており、このため、▲1▼誘電体層の薄層化と積層数の増加、▲2▼誘電体層の高誘電率化が図られており、誘電体層の厚みを5μm以下、誘電体積層数を100層以上とした小型で高容量の積層セラミックコンデンサが開発されている。
【0003】
このような積層セラミックコンデンサは、セラミックグリーンシートに導電性ペーストをスクリーン印刷法により塗布して多数の内部電極パターンを形成し、この内部電極パターンが多数形成されたグリーンシートを多数積層して母積層成形体を作製し、これをチップ形状の積層成形体毎に切断し、このチップ形状の積層成形体を焼成してチップ本体(コンデンサ本体)を作製し、このチップ本体に外部電極を形成して作製されていた。導電性ペーストは、従来から、金属成分以外にセラミック粉末からなる共材成分や樹脂成分、有機溶剤成分等を含有している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
そして、近年では、積層セラミックコンデンサのさらなる薄層化のため、誘電体層の薄層化とともに、内部電極の薄層化が進められており、内部電極の薄層化のために、導電性ペーストに用いられる金属粉末の粒径を小さくすることが行われている。
【0005】
このような薄層の内部電極を形成するための導電性ペーストとして、従来、嵩密度が1.7〜3.5g/cm3であり、硫黄量が10000ppm(1質量%)以下であるニッケル粉末を用いたものが知られており、ニッケル粉末中の硫黄含有量はなるべく少ない方が好ましく、特に1000ppm(0.1質量%)以下、さらには200ppm(0.02質量%)以下であることが望ましいことが記載されている(特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−172855号公報
【特許文献2】
特開2001−266653号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
内部電極の薄層化のために、導電性ペーストに用いられる金属粉末を微粉化すると、金属粉末が微粉であるため内部電極パターンの焼結が促進され、内部電極パターンの焼結収縮開始時期が速まり、セラミックグリーンシートの焼結収縮挙動とかけ離れてしまい、内部電極パターンとセラミックグリーンシートとの焼結収縮差によりそれらの界面にデラミネーションやクラックが発生しやすくなり、歩留まりが低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、内部導体を薄層化しても内部導体と絶縁体の界面におけるデラミネーションやクラックの発生をほぼ防止できるセラミック積層体及びその製法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック積層体は、絶縁体内に内部導体を有するセラミック積層体であって、前記内部導体が金属粒子を主成分とするとともに、該金属粒子同士の接触界面に金属硫化物結晶相が存在することを特徴とする。
【0010】
本発明のセラミック積層体の製法は、セラミックグリーンシート間に、金属粉末と、金属硫化物及び/又は硫黄のオキソ酸塩と、有機成分とを含有する内部導体パターンが介装された積層成形体を作製する工程と、該積層成形体を大気中で脱バインダ処理した後、大気よりも低い酸素分圧で500〜700℃で再度脱バインダ処理する工程と、該脱バインダ処理された積層成形体を非酸化性雰囲気中で焼成する工程とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明では、積層成形体の内部導体パターンには金属硫化物及び/又は硫黄のオキソ酸塩を含有しており、そのような内部導体パターンを大気中で脱バインダ処理することにより、金属粒子表面にオキソ酸イオンが存在し、その後、大気よりも低い酸素分圧で500〜700℃の高温で再度脱バインダ処理されるが、大気よりも低い酸素分圧であるため金属粒子が酸化されることがなく、オキソ酸イオンに十分な酸素が供給された状態で脱バインダ処理されるため、金属粒子表面に、硫黄を含有する液相を形成することなく、金属硫化物結晶相を形成する。その後、非酸化性雰囲気中で焼成するが、金属粒子表面の金属硫化物結晶相が不動態として機能し、金属粒子の粒成長を阻害し、金属粒子の焼結を遅延させる。これにより、金属粒子表面のオキソ酸イオンは、脱バインダ処理時及び焼成時に金属と反応し、金属硫化物結晶相として金属粒子間に偏析して存在することになる。
【0012】
一般に内部導体パターンの金属粒子の焼結開始時期は、絶縁体の焼結よりも早いことが知られているが、上記したように、本発明では、薄層の内部導体を形成すべく、内部導体パターンの金属粉末として微粉を用いたとしても、金属の焼結開始時期を遅延させることができるため、内部導体の焼結開始時期とセラミック絶縁体の焼結開始時期を近づけることができ、内部導体と絶縁体の焼結収縮差が低減され、内部導体と絶縁体との界面における焼成デラミネーションやクラックの発生を防止できる。
【0013】
また、内部導体パターン中の硫黄量を微量とすることにより、金属粒子界面の金属硫化物結晶相は偏析することになり、内部導体の導電率を低下させることなく、内部導体を容易かつ低コストで形成することができるため、内部導体の有効面積を高め、設計どおりの静電容量を容易に得ることができる。
【0014】
また、本発明では、内部導体の厚みは2μm以下であることを特徴とする。このような薄層の内部導体を形成する際には、微粉の金属粉末を用いる必要があるが、このように微粉の金属粉末は焼結しやすいため、本発明を用いる意義が大きい。
【0015】
さらに、本発明では、内部導体中の硫黄量は、全量中0.02〜0.5質量%であることを特徴とする。硫黄量が、内部導体中の全金属(金属粉末と硫黄の合量)量中0.02〜0.5質量%と少ないため、上記脱バインダ処理条件と相まって、液相を形成して非晶質相を形成することなく、金属硫化物結晶相を形成することができるとともに、金属硫化物結晶相を金属粒子界面に偏析して存在させることができる。
【0016】
内部導体はニッケル、もしくはニッケル合金を主成分とすることを特徴とする。ニッケル、もしくはニッケル合金は、硫黄と金属硫化物を容易に形成できるため、金属粒子の焼結を容易に遅延させることができるとともに、内部導体費用を安価とすることができる。
【0017】
また、本発明のセラミック積層体の製法は、内部導体パターン中の金属粉末のBET比表面積は1.3〜17m2/gであることを特徴とする。このような微粉の金属粉末を用いることにより、薄層の内部導体パターンを形成できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック積層体である積層セラミックコンデンサについて、図1の概略断面図をもとに詳細に説明する。
【0019】
本発明の積層セラミックコンデンサは、図1に示すように、直方体状のコンデンサ本体1の両端部に外部電極5を形成して構成されている。
【0020】
コンデンサ本体1は、内部電極(内部導体)2と誘電体層(セラミック絶縁体)3を交互に積層した積層体の積層方向の上下面に、誘電体層3と同一材料からなる絶縁層4をそれぞれ積層して構成されている。内部電極2は、コンデンサ本体1の両端面に形成された外部電極5に交互に接続されている。
【0021】
内部電極2の厚みは2μm以下、特には1.2μm以下であることが望ましく、さらには、0.3〜1.2μmの範囲であることが望ましい。内部電極2によるクラックやデラミネーションを防止するとともに、信頼性を高める点から、特には0.4〜0.8μmの範囲であることが望ましい。内部電極2の厚みのばらつきは、静電容量の安定化と絶縁抵抗の向上および安定化のために0.15μm以下が好ましい。
【0022】
誘電体層3の厚みは、製品の小型化、薄層化という点から0.5〜3μmとされており、内部電極2との焼成収縮差を合わせるという点から0.6〜2μmが望ましい。
【0023】
そして、本発明では、図2に示すように、内部電極2中の金属粒子31の界面には、金属硫化物結晶相33が偏析している。金属硫化物結晶相33は、金属粒子31同士の界面のみならず、金属粒子31の外周にも存在している。
【0024】
この金属硫化物結晶相33をMSx(Mは金属)として表したとき、xは1〜2.7を満足することが望ましい。このようなxの範囲とすることにより、液相を形成することなく、金属硫化物が結晶相を形成することができる。金属硫化物が液相の場合には、金属粒子31の焼結が促進されて、焼結開始時期がさらに速まってしまう。内部電極2中の硫黄量は、内部電極2中の全金属量中0.02〜0.5質量%含有している。これにより、液相を形成することなく、金属粒子の界面に金属硫化物結晶相33を形成することができる。
【0025】
次に、本発明の積層セラミックコンデンサの製法について説明する。
【0026】
誘電体材料としては、例えば、BaTiO3−MnO−MgO−Y2O3等の誘電体粉末と焼結助剤を好適に使用できるが、これに限定されるものではない。これらの誘電体材料のうち、主原料のBaTiO3粉は、固相法、液相法、水熱合成法等により合成されるが、そのうち粒度分布が狭く、結晶性が高いという理由から水熱合成法が好適に用いられる。そして、BaTiO3粉のBET比表面積は2.5〜10m2/gが好ましい。
【0027】
また、このように大きな比表面積を有する原料粉末を用いて誘電体グリーンシートを形成する方法として、ダイコータ法、ドクターブレード法、リバースロールコータ法、グラビアコータ法、スクリーン印刷法が好適に用いられる。薄層の誘電体グリーンシートを形成するために、特に、ダイコータ法を用いることが望ましい。
【0028】
具体的には、これらの誘電体材料の粉末、バインダおよび溶媒を含有するセラミックスラリをキャリアフィルム上に塗布し、高速でキャスティングし、乾燥することによってグリーンシートが形成される。
【0029】
このような工法で形成されたグリーンシートの厚みは5μm以下であり、特に、コンデンサ本体1の小型、大容量化という理由から、グリーンシートの厚みは0.8〜3μmであることが望ましい。
【0030】
導電性ペーストは、金属粉末と、有機溶剤と、有機粘結剤とを含有するもので、有機溶剤としては脂肪族炭化水素と高級アルコールとの混合物からなることが望ましく、有機粘結剤としては、上記有機溶剤に対して可溶性のエチルセルロースからなることが望ましい。
【0031】
導電性ペースト中に含まれる金属粉末としては、比表面積1.3〜17m2/gの卑金属粉末を用いることが望ましい。卑金属粉末としては、Ni、Co、Cuがあり、金属の焼成温度がBaTiO3を主成分とするセラミック絶縁体の焼成温度とほぼ一致する点、およびコストが安いという点からNiが望ましい。
【0032】
金属粉末の比表面積は、金属粉末の分散性の向上と焼成時の金属肥大化を防止するために、1.3〜17m2/g、特には2.2〜6.8m2/gの範囲が望ましい。そして、緻密で表面平滑な金属膜を形成するという理由から金属粉末の比表面積は3.0〜4.5m2/gが望ましい。
【0033】
また、導電性ペーストには、固形分として、金属粉末以外に、内部電極パターンの焼結性を抑えるために微細な絶縁体粉末を混合して用いることが好ましく、内部電極の均一な粒子径の形成と、平滑性を向上させるために、絶縁体粉末の粒径は0.03〜0.3μmが望ましい。
【0034】
そして、本発明では、導電性パターン中に硫黄を含有するものであり、焼成時、硫黄は金属粒子表面(金属粒子の界面)に偏在することから、金属粉末あるいは導電性ペースト中のどちらに含有していても構わない。
【0035】
導電性ペースト中で有れば、分散剤として硫黄を含有する界面活性剤を含有せしめたり、金属硫化物及び/又は硫黄のオキソ酸塩を含有せしめることができる。金属硫化物としては、硫化ニッケル、硫化銅、硫化コバルト等があり、これを導電性ペースト中に添加する、また、硫黄のオキソ酸塩としては硫酸ニッケル、硫酸銅等があり、これを導電性ペースト中に添加する。
【0036】
硫黄の含有量は導電性ペーストの全金属中に硫黄(金属換算で)が0.02〜0.5質量%含有していることが望ましい。硫黄含有量が0.02〜0.5質量%と少ないため、後述する脱バインダ条件と相まって、硫黄が液相を形成することなく、金属硫化物結晶相として、金属粒子の界面に存在させることができ、金属粒子の焼結を遅延させることができる。特に、金属粒子の焼結を遅延化するという理由から、0.05〜0.3質量%、さらには0.05〜0.15質量%が望ましい。
【0037】
この後、上記したグリーンシートの表面に上記導電性ペーストを塗布して複数の内部電極パターンを形成し、この内部電極パターンが形成されたグリーンシートを多数積層して母積層成形体を作製する。この母積層成形体を、コンデンサ本体となる形状に切断し、積層成形体を作製する。
【0038】
本発明は、内部電極パターンに挟持されたグリーンシートの積層数は100層以上、特には150層以上である場合に有効に用いることができる。
【0039】
次に、積層成形体を、例えば誘電体層としてBaTiO3を主成分とし、内部電極としてNiを主成分とする場合には、大気中で200〜300℃で脱バインダ処理し、この後、さらに大気よりも酸素分圧が低い0.1〜10Paの雰囲気中500〜700℃で脱バイした後、非酸化性雰囲気中、1150〜1300℃で2〜3時間焼成する。
【0040】
本発明では、特に大気中で脱バインダ処理した後、大気よりも低い酸素分圧で500〜700℃で再度脱バインダ処理することが重要である。このように大気中で脱バインダ処理することにより、金属粒子31表面に硫黄のオキソ酸イオンを存在させ、さらに大気よりも低い酸素分圧、例えば0.1〜1Paの酸素分圧で500〜700℃で再度脱バインダ処理することにより、金属粒子31が酸化することなく、金属硫化物結晶相33が形成され、これにより金属粒子31表面は不動態化し、その後、非酸化性雰囲気中、1150〜1300℃で2〜3時間焼成することにより、内部電極2中の金属粒子31同士の接触界面に金属硫化物結晶相33が偏析して存在する。
【0041】
これにより、金属粒子31のネックの形成が阻害され、焼結開始時期が遅延することになる。図3は、内部電極パターンと、セラミックグリーンシートの焼成収縮カーブを示すもので、実線はセラミックグリーンシートの焼成収縮カーブ、破線は従来の硫黄を添加していない内部電極パターンの焼成収縮カーブ、一点鎖線は本発明の内部電極パターンの焼成収縮カーブを示している。この図3から、本発明では、内部電極パターンの焼成収縮開始時期が遅延され、グリーンシートの焼成収縮開始時期に近づき、内部電極パターンとグリーンシートの焼成収縮差が小さくなる。
【0042】
さらに、所望により、酸素分圧が0.1〜10−4Pa程度の酸素分圧下、900〜1100℃で2〜15時間再酸化処理を施すことにより、前工程の非酸化性雰囲気焼成において還元されたコンデンサ本体1を酸化し、高い静電容量と絶縁特性を有するコンデンサ本体1を得ることができる。
【0043】
最後に、得られたコンデンサ本体1に対し、各端面にCuペーストを塗布し、これを700〜900℃で焼き付け、その上にNiメッキ層、Snメッキ層を順次形成して外部電極5を形成し、積層セラミックコンデンサを作製する。
【0044】
以上のように構成された積層セラミックコンデンサでは、例えば、比表面積が1.3〜17m2/gである金属微粉末を用いて、硫黄を含有する導電性ペーストを作製し、該導電性ペーストを用いてグリーンシート間に内部電極パターンが介装された積層成形体を作製し、これを大気中で脱バインダ処理し、この後、さらに大気よりも酸素分圧が低い雰囲気中500〜700℃で再度脱バイした後、非酸化性雰囲気中で焼成することにより、内部電極2の焼結を遅延させ、誘電体層3の焼結に近づけることができ、誘電体層3との焼結収縮差を低減できるため、内部電極2、誘電体層3を薄層高積層化しても、デラミネーションやクラックなどの内部構造欠陥を低減することができる。
【0045】
【実施例】
セラミック積層体の一つである積層セラミックコンデンサを以下のようにして作製した。先ず、BaTiO399.5モル%とMnO0.5モル%とからなる組成物100モル部に対して、Y、Mgの各酸化物をそれぞれ0.6モル部ずつ配合し、ZrO2ボールを用いたボールミルにて湿式粉砕した。BaTiO3粉末はBET比表面積が2.5m2/gのものを用いた。
【0046】
次に、ポリビニルブチラール系の有機粘結剤、フタル酸エステル系の可塑剤、分散剤、およびトルエン溶媒を所定量混合し、振動ミルを用いて、粉砕、混練し、スラリーを調製した後、ダイコータにより、ポリエステルよりなるキャリアフィルム上に厚み3μmの誘電体グリーンシートを作製した。
【0047】
導電性ペーストは、比表面積が3.4m2/gのNi粉末45重量%に対し、エチルセルロース5.5重量%と石油系アルコール94.5重量%からなるビヒクル55重量%とを3本ロールで混練して調製した。なお、オキソ酸塩としての硫酸ニッケルを全ニッケルに対して、硫黄の含有量(ニッケルと硫黄の合量に対する比率)がそれぞれ表1に示す値となるように添加し、導電性ペーストをそれぞれ調整した。
【0048】
次に、得られたグリーンシートにスクリーン印刷により上記した導電性ペーストを内部電極パターン状に印刷し、乾燥させ、厚さ1.5μmの内部電極パターンを形成した。
【0049】
次に、導電性ペーストが塗布されたグリーンシートを300枚積層し、この仮積層成形体を温度90〜130℃、圧力10〜100MPaで積層プレスを行い、完全に密着させて母積層成形体を得た。
【0050】
この後、この母積層成形体を格子状に切断して、コンデンサ本体を形成する積層成形体を得た。この積層成形体の対向する側面には、内部電極パターンの一端が交互に露出しており、厚み方向に重畳して積層された内部電極パターンは、位置ずれもなく形成されていた。
【0051】
次に、この積層成形体を大気中200℃で脱バインダ処理した後、酸素分圧0.1Paの酸素雰囲気中500℃で脱バイし、この後、酸素分圧10−7Paの非酸化性雰囲気中1300℃で2時間焼成し、さらに、酸素分圧が0.01Paの酸素分圧下1100℃で10時間の再酸化処理を施し、コンデンサ本体を得た。
【0052】
このようにして得られたコンデンサ本体に対し、内部電極が露出した各端面にガラス粉末を含んだCuペーストを塗布した後、窒素雰囲気中、900℃で焼き付けを行った。その後、Niメッキ層およびSnメッキ層を形成し、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成して積層セラミックコンデンサを作製した。
【0053】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅1.25mm、長さ2.0mm、厚さ1.25mmであり、内部電極層の厚みは1.5μm、内部電極層間に介在する誘電体層の厚みは2.5μmであり、内部電極層に挟持された誘電体層は300層であった。
【0054】
得られた積層セラミックコンデンサについて、クラック及びデラミネーションの有無を確認した。外観検査では10,000個の試料を実体顕微鏡で観察し、内部構造検査では100個を400倍の金属顕微鏡写真で確認した。また、静電容量は周波数1kHz、1Vrmsの条件で測定した。
【0055】
焼成後のニッケル硫化物結晶相は、TEM(透過型電子顕微鏡)にて特定し、電子線回折像によりニッケルと硫黄の組成比を決定した。本発明の試料では、金属硫化物結晶相をNiSxとして表したとき、xは1〜2.7を満足していた。
【0056】
ニッケル硫化物の硫黄の含有量は、試料にレーザー照射後、ICP発光分光分析法にて定量分析して確認した。
【0057】
また、脱バインダ条件を変更した以外は、上記と同様にして積層セラミックコンデンサを作製し、評価を行い、その結果も表1に記載した。
【0058】
【表1】
【0059】
この表1から、硫黄量が0.02〜0.5質量%で、金属粒子同士の接触界面に硫化物結晶相が存在する本発明の試料では、クラック及びデラミネーションが発生しないのに対して、比較例の試料では、金属粒子同士の接触界面に金属硫化物結晶相が存在せず、クラックやデラミネーションが多発することがわかる。
【0060】
即ち、比較例の試料No.11では、大気中での脱バイ処理がなされていないため、残カーボンによりカーボンニッケルを形成し、内部電極の溶融を促進して液相を形成し、また酸素不足のため金属硫化物の液相を形成し、試料No.12では、大気よりも低い酸素分圧での脱バイ処理がなされていないため、金属酸化物の液相を形成し、試料No.13では、大気よりも低い酸素分圧での脱バイ処理温度が低いため、金属酸化物の液相を形成し、クラックやデラミネーションが多発した。また、試料No.14では、大気よりも低い酸素分圧での脱バイ処理温度が高いため、金属粒子が酸化し、コンデンサを作製することができなかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明では、積層成形体の内部導体パターンには金属硫化物及び/又は硫黄のオキソ酸塩を含有しており、そのような内部導体パターンを大気中で脱バインダ処理することにより、金属粒子表面にオキソ酸イオンが存在し、その後、大気よりも低い酸素分圧で500〜700℃の高温で再度脱バインダ処理されるが、オキソ酸イオンに十分な酸素が供給された状態で脱バインダ処理されるため、金属粒子同士の接触表面に金属硫化物結晶相を形成する。その後、非酸化性雰囲気中で焼成するが、金属粒子表面の金属硫化物結晶相が不動態として機能し、薄層の内部導体を形成すべく、内部導体パターンの金属粉末として微粉を用いたとしても、金属の焼結開始時期を遅延させることができるため、内部導体の焼結開始時期とセラミック絶縁体の焼結開始時期を近づけることができ、内部導体と絶縁体の焼結収縮差が低減され、内部導体と絶縁体との界面における焼成デラミネーションやクラックの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層セラミックコンデンサを示す概略断面図である。
【図2】内部電極を示す概略断面図である。
【図3】内部電極パターンとグリーンシートの焼成収縮カーブである。
【符号の説明】
1・・・コンデンサ本体(絶縁体)
2・・・内部電極(内部導体)
3・・・誘電体層
31・・・金属粒子
33・・・金属硫化物結晶相
Claims (6)
- 絶縁体内に内部導体を有するセラミック積層体であって、前記内部導体が金属粒子を主成分とするとともに、該金属粒子同士の接触界面に金属硫化物結晶相が存在することを特徴とするセラミック積層体。
- 内部導体の厚みは2μm以下であることを特徴とする請求項1記載のセラミック積層体。
- 内部導体中の硫黄量は、全量中0.02〜0.5質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のセラミック積層体。
- 内部導体はニッケル、もしくはニッケル合金を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載のセラミック積層体。
- セラミックグリーンシート間に、金属粉末と、金属硫化物及び/又は硫黄のオキソ酸塩と、有機成分とを含有する内部導体パターンが介装された積層成形体を作製する工程と、該積層成形体を大気中で脱バインダ処理した後、大気よりも低い酸素分圧で500〜700℃で再度脱バインダ処理する工程と、該脱バインダ処理された積層成形体を非酸化性雰囲気中で焼成する工程とを具備することを特徴とするセラミック積層体の製法。
- 内部導体パターン中の金属粉末のBET比表面積は1.3〜17m2/gであることを特徴とする請求項5記載のセラミック積層体の製法。
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