JP2004168812A - ポリ乳酸系樹脂組成物、成形品及び樹脂用可塑剤 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形加工品、並びに樹脂用可塑剤に関する。さらに詳しくは柔軟性、安全性に優れ、さらには使用後、分解性の優れたポリ乳酸系樹脂組成物及びその成形品、並びに樹脂用可塑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、柔軟性、耐熱性、耐水性に優れている樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂が挙げられ、ゴミ袋、包装袋などに使用されている。しかしながら、これらの樹脂は使用後廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないために、埋設処理しても、半永久的に地中に残留する。また投棄されたプラスチック類により、景観が損なわれ、海洋生物の生活環境が破壊されるなどの問題が起こっている。
【0003】
これに対し、熱可塑性樹脂で生分解性を有するポリマーとして、ポリ乳酸、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸から誘導されるポリエステルなどが開発されている。
【0004】
これらの生分解性を有するポリマーは、土壌や海水中に置かれた場合、湿った環境下では数週間で分解を始め、約1年から数年で消滅する。さらに、分解生成物は、二酸化炭素と水になるという特性を有している。特にポリ乳酸は、近年、原料のL−乳酸が発酵法により大量且つ安価に製造されるようになってきたことや、堆肥中での分解速度が速く、カビに対する抵抗性、食品に対する耐着臭性や耐着色性など、優れた特徴を有することより、その利用分野の拡大が期待されている。
【0005】
しかしながら、ポリ乳酸は剛性が高く、フィルムや包装材などの柔軟性が要求される用途には適切な樹脂とは言い難い。
【0006】
一般に、樹脂を軟質化する技術として、▲1▼可塑剤の添加、▲2▼コポリマー化、▲3▼軟質ポリマーのブレンドなどの方法が知られている。しかしながら、▲1▼や▲2▼の方法では、十分な柔軟性を付与できたとしても、樹脂組成物のガラス転移温度が低下し、その結果、通常の環境温度によって結晶化、硬質化するなどの物性変化を生じたり、可塑剤を添加する方法の場合は、さらに可塑剤がブリードアウトするなどの問題が生じる為、実用化するには実質上幾つもの問題がある。さらに、可塑剤によっては、安全性が十分でないものもあり、特に食品包装材としての使用には制限がある場合が多い。
【0007】
ポリ乳酸は、塩化ビニル樹脂と比べて、相溶する良好な可塑剤が限定されており、例えばアセチルクエン酸トリブチルが挙げらる。(例えば、特許文献1参照)。しかし添加量に対する可塑化効果が十分とは言えず、また、安全性においても用途によっては限定される場合がある。
【0008】
一方、▲3▼の方法では、本課題の一つである生分解性を考慮すると、ブレンドする樹脂としては柔軟性を有する生分解性樹脂に限定される。この様な樹脂としては、例えばポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。(例えば、特許文献2、3参照)
【0009】
しかしながら、この方法ではポリ乳酸系樹脂組成物に十分な柔軟性(弾性率が1000MPa以下)を付与するには多量(例えば、ポリブチレンサクシネートの場合は、60重量部以上)に添加する必要があり、その結果、ポリ乳酸の前記した様な特徴を損なってしまう。
【0010】
また、グリセリンジアセトモノカプリレートを可塑剤として用いる例(例えば、特許文献4参照)もあるが、耐熱性が不十分であり用途が限定されてしまう。このように、ポリ乳酸の特徴を損なうことなく、柔軟性を向上させることは、従来の技術では困難なのが実情であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平8−034913号公報
【特許文献2】
特開平8−245866号公報
【特許文献3】
特開平9−111107号公報
【特許文献4】
特開2002−060604号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、ポリ乳酸系樹脂との相溶性及び可塑化効率に優れ、成形品の透明性の低下、ブリードアウトなどの問題のない化合物を含み、柔軟で強靭な成形品が得られるポリ乳酸系樹脂組成物、該組成物を含む成形品、並びに樹脂用可塑剤を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリ乳酸系樹脂について鋭意検討した結果、特定の化合物が、ポリ乳酸系樹脂に対し相溶性が良好で、少量でも十分な可塑化効果があることを見いだし、また、該化合物を添加することで、透明性を損なうことなく、しかも安全性にも優れた上記課題を満足するポリ乳酸系樹脂組成物が得られることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸系樹脂と、下記一般式(1)又は(2)で示される化合物のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物を提供する。
【0015】
【化7】
【0016】
(式中、R1は炭素数3〜10の3価の基であり、R2、R3はそれぞれ炭素数2〜10のアシル基である。)
【0017】
【化8】
【0018】
(式中、R4は炭素数4〜10の4価の基であり、R5、R6、R7はそれぞれ炭素数2〜10のアシル基である。)
【0019】
また、本発明は上記ポリ乳酸系樹脂組成物を含む成形品、並びに上記一般式(1)又は(2)で示される化合物のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする樹脂用可塑剤を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の内容を詳細に説明する。
【0021】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物において、ポリ乳酸系樹脂には、乳酸ホモポリマーの他、乳酸コポリマー、又はこれらと他のポリマーとのブレンドポリマーを含むものである。
【0022】
上記ポリ乳酸系樹脂におけるL−乳酸単位、D−乳酸単位の構成モル比L/Dは100/0〜0/100のいずれであってもよいが、高い融点を得るにはL−乳酸あるいはD−乳酸のいずれかの単位を90モル%以上、さらに高い融点を得るにはL−乳酸あるいはD−乳酸のいずれかの単位を95モル%以上含むことが好ましい。特に、高結晶性という点で、L−乳酸が多い方が好ましい。
【0023】
上記ポリ乳酸系樹脂における相対粘度(ηrel)は2.5〜4.2であることが成形性の面から好ましく、特に2.7〜4.0であることが好ましい。
【0024】
乳酸コポリマーは、乳酸モノマー又はラクチドと共重合可能な他の成分とが共重合されたものである。このような他の成分としては、2個以上のエステル結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなど、及びこれらの種々の構成成分より成る各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0025】
上記ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。
【0026】
上記多価アルコールとしては、ビスフェノールにエチレンオキサイドを付加反応させたものなどの芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0027】
上記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸などが挙げられる。
【0028】
上記ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなど挙げられる。
【0029】
上記ポリ乳酸系樹脂においてブレンドできる他のポリマーとしては、2個以上のエステル結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなど、及びこれらの種々の構成成分より成る各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0030】
上記ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。
【0031】
上記多価アルコールとしては、ビスフェノールにエチレンオキサイドを付加反応させたものなどの芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0032】
上記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸などが挙げられる。
【0033】
上記ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなど挙げられる。
【0034】
ポリ乳酸は従来公知の方法で合成することができる。すなわち、特開平7−33861号公報、特開昭59−96123号公報、高分子討論会予稿集44巻3198−3199頁に記載のような乳酸からの直接脱水縮合、又は乳酸環状二量体ラクチドの開環重合によって合成することができる。開環重合では、より高分子量のものを得ることができる。
【0035】
直接脱水縮合を行なう場合、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、又はこれらの混合物のいずれの乳酸を用いても良い。また、開環重合を行なう場合においても、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド又はこれらの混合物のいずれのラクチドを用いても良い。
【0036】
ラクチドの合成、精製及び重合操作は、例えば米国特許4057537号明細書、Polymer Bulletin, 14, 491−495(1985)、及びMakromol Chem., 187, 1611−1628(1986)などの文献に様々に記載されている。
【0037】
この重合反応に用いる触媒は特に限定されるものではないが、公知の乳酸重合用触媒を用いることができる。例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリン酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフトエ酸スズ、β−ナフトエ酸スズ、オクチル酸スズなどの有機スズ系化合物、粉末スズ、酸化スズ;亜鉛末、ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛系化合物;テトラプロピルチタネートなどのチタン系化合物;ジルコニウムイソプロポキシドなどのジルコニウム系化合物;三酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物;酸化ビスマス(III)などのビスマス系化合物;酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウム化合物などを挙げることができる。これらの中でも、スズ又はスズ化合物からなる触媒が活性の点から
特に好ましい。
【0038】
これら触媒の使用量は、一般にラクチド100重量部に対して0.001〜5重量部程度である。
【0039】
重合反応は、上記触媒の存在下、触媒種によっても異なるが通常100〜200℃の温度で行うことができる。また、特開平7−247345号公報に記載のような2段階重合を行うことも好ましい。
【0040】
本発明においては、ポリ乳酸中の残存モノマー(ラクチド)含有量は1重量%以下であることが望ましい。モノマー(ラクチド)含有量が1重量%以下の場合に、得られる熱可塑性樹脂本来の物性が充分発揮されるからである。
【0041】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、下記一般式(1)又は(2)で示される化合物のうちの少なくとも一種を含むものである。
【0042】
【化9】
【0043】
一般式(1)において、R1は炭素数3〜10の3価の基であり、好ましくは窒素、酸素及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、飽和又は不飽和の脂肪族、脂環式、又は芳香族の、炭素数3〜10の3価の炭化水素基である。このような基として、例えば、下記式
【0044】
【化10】
【0045】
の基などが挙げられる。この中でも、R1が下記式(3)
【0046】
【化11】
【0047】
で示される基のいずれかであるのがより好ましい。
【0048】
一般式(1)で示される化合物においては、化合物中にレブリノイル基があることで、ポリ乳酸系樹脂との相溶性及び化合物の耐熱性が向上する。
【0049】
また、R2、R3はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。本発明において、炭素数2〜10のアシル基としては、炭素数2〜10の、−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよいアシル基、特に−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよい、炭素数2〜10の、アルキルカルボニル(アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、2−メチルブチリル、2−エチルブチリル、3,3−ジメチルブチリル、ペンタノイル、4−メチルペンタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、2−エチルヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、イソバレリル、ピバロイルなどの、飽和カルボン酸から誘導されるアシル基;メトキシアセチル、メトキシプロピオニル、エトキシアセチルなどの、−O−を含むアシル基;レブリノイル、ピルビノイル、4−アセチルブチリノイル、2−オキソペンタノイル、7−オキソノナノイルなどの、−CO−を含むアシル基など);シクロアルキルカルボニル(シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニルなど);アリールカルボニル(ベンゾイルなど);ヘテロアリールカルボニル(ピリジルカルボニル、フロイルなど)、特に好ましくはレブリノイル基を挙げることができる。式(1)の化合物においては、R2、R3が全てレブリノイル基であるとさらに化合物の耐熱性が向上するので好ましい。レブリノイル基の数が多いほど、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が向上し、ブリードアウトが防止される傾向にある。また、この化合物添加による樹脂の耐熱性への影響が少ない。
【0050】
【化12】
【0051】
一般式(2)において、R4は炭素数4〜10の4価の基であり、好ましくは炭素数4〜10の4価の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。例えば、下記式
【0052】
【化13】
【0053】
で示される、炭素数4〜8の4価の、直鎖又は分岐鎖状のアルカンテトライル基などが挙げられる。この中でも、R4が下記式(4)
【0054】
【化14】
【0055】
で示される基のいずれかであることがより好ましい。
【0056】
一般式(2)で示される化合物においては、化合物中にレブリノイル基があることで、ポリ乳酸系樹脂との相溶性及び化合物の耐熱性が向上する。
【0057】
また、R5、R6、R7はそれぞれに炭素数2〜10のアシル基である。本発明において、炭素数2〜10のアシル基としては、炭素数2〜10の、−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよいアシル基、特に−O−又は−(C=O)−を含んでいてもよい、炭素数2〜10の、アルキルカルボニル(アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、2−メチルブチリル、2−エチルブチリル、3,3−ジメチルブチリル、ペンタノイル、4−メチルペンタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、2−エチルヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、イソバレリル、ピバロイルなどの、飽和カルボン酸から誘導されるアシル基;メトキシアセチル、メトキシプロピオニル、エトキシアセチルなどの、−O−を含むアシル基;レブリノイル、ピルビノイル、4−アセチルブチリノイル、2−オキソペンタノイル、7−オキソノナノイルなどの、−CO−を含むアシル基など);シクロアルキルカルボニル(シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニルなど);アリールカルボニル(ベンゾイルなど);ヘテロアリールカルボニル(ピリジルカルボニル、フロイルなど)、特に好ましくはレブリノイル基を挙げることができる。本発明の式(2)の化合物においては、R5、R6、R7が全てレブリノイル基であるとさらに化合物の耐熱性が向上する。レブリノイル基の数が多いほど、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が向上し、ブリードアウトが防止される傾向にある。また、この化合物添加による樹脂の耐熱性への影響が少ない。
【0058】
前記一般式(1)又は(2)で示される化合物は、多価アルコールと、レブリン酸及びその他の脂肪酸とを脱水縮合するなどして、容易に合成することができる。ここで未反応の酸やアルコールが残留しても差し支えないが、過剰に含まれるとエステル交換反応などを起こし成形品の物性を著しく損なうことがある。そのために未反応物は少ない方がよい。具体的には酸価とヒドロキシル価の合計が30mgKOH/g以下であることが望ましい。好ましくは、20mgKOH/g以下、さらに好ましくは、10mgKOH/g以下である。
【0059】
一般式(1)又は(2)で示される化合物は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられるが、その合計量は、ポリ乳酸系樹脂の合計量100重量部に対し1〜100重量部であることが好ましく、さらに好ましくは5〜70重量部、特に好ましくは、5〜50重量部である。
【0060】
本発明の成形品は、成形体、フィルム、シート、繊維を含む成形品を表し、これら成形品を製造するに際して通常必要とされる、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤などの各種添加剤を、必要に応じて配合することもできる。
【0061】
本発明の可塑剤や上記添加剤をポリ乳酸系樹脂と混合する方法には、特に制限はなく、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、ミルロール、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、単軸あるいは二軸押出機などを用いて混合混練すればよい。
【0062】
成形品の機械的強度は成形品の使用目的によっても異なるが、一般に引張強度15〜40MPa、破断伸び10〜300%が好ましい。前記一般式(1)又は(2)で示される化合物を加えることにより、弾性率の低下と破断伸びの増加が起こるが、それに伴う強度低下により成形品が破損しやすくなるため、ある程度の強度が必要である。
【0063】
本発明のポリ乳酸系樹脂に配合される前記一般式(1)又は(2)で示される化合物は、樹脂組成物に十分な柔軟性を与えると共に、十分な柔軟性を与え得る量を配合しても樹脂の透明性を損ねることがない。従って、このポリ乳酸系樹脂組成物から得られる成形品は、柔軟で強靭なものであり、かつ成形品の透明性の低下、ブリードアウトなどの問題がない。
【0064】
本発明の成形品(成形体、フィルム、シートや繊維)は、それぞれ、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用いて、通常の方法により製造することができる。
【0065】
また本発明に用いられる前記一般式(1)又は(2)の化合物は、熱可塑性樹脂用の可塑剤として有用である。使用可能な熱可塑性樹脂には、特に制限はないが、例えばポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。物性バランスから見て、特にポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0066】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれの実施例により何ら限定されるものではない。
【0067】
(分析方法)
<酸価及びヒドロキシル価>
合成例で得られた化合物の酸価及びヒドロキシル価は、JIS K 0070(1992)に従って測定した。
【0068】
<ポリ乳酸中の残存モノマー含有量>
試料を濃度10mg/mLとなるようクロロホルムに溶解させ、クロロホルムを溶媒としてGPC分析を行い、ポリスチレン換算で分子量1000以下の成分割合から、残存するモノマー含有量(重量%)を算出した
【0069】
<樹脂の相対粘度:ηrel>
フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に試料を1g/dLの濃度になるように溶解し、20℃でウベローデ粘度管を用いて相対粘度を測定した。
【0070】
<L−体の測定>
ポリマーを加水分解させ、1.0N(0.04g/ml)メタノール性水酸化ナトリウム溶液を溶媒として高速液体クロマトグラフィー(HPLC:島津製 LC10AD型)を使ってL−体の比率を求めた。
【0071】
(樹脂組成物の評価方法)
引張破断強度と引張破断伸度は、JIS K 7113(1995)に、曲げ弾性率はJIS K 7171(1994)に従って測定した。ガラス転移点(Tg)はDSC(島津製作所製 DSC−50)により測定した。また、試験片を室温で放置した5日後の状態を目視で判断し、下記の4段階で評価した。
◎:透明
○:若干濁っているがほとんど透明
△:白濁しているが透けている
×:白濁し、不透明
【0072】
(使用した樹脂)
L−体比率95.5モル%、相対粘度(ηrel)3.95、モノマー含有量0.3重量%のポリ乳酸を使用した。
【0073】
合成例(a)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコに、グリセリン92g(1mol)、レブリン酸116g(1mol)、トルエン300g、p−トルエンスルホン酸1.9g(0.01mol)を加え、常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら3時間反応させた。次いで、酢酸カリウム1.96g(0.02mol)を加えた後、無水酢酸204g(2mol)を加えて100℃で4時間反応させた。反応終了後冷却し、水300gを加え水洗した。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、グリセリンモノレブリネートジアセテート252.6gを得た。この化合物の酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0074】
合成例(b)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコにグリセリン92g(1mol)、レブリン酸348g(3mol)、トルエン300g、p−トルエンスルホン酸1.9g(0.01mol)を加え、常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら6時間反応させた。反応終了後冷却し、水300gを加え水洗した。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、グリセリントリレブリネート364.2gを得た。この化合物の酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0075】
合成例(c)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコにトリメチロールプロパン134(1mol)、レブリン酸348g(3mol)、トルエン500g、p−トルエンスルホン酸1.9g(0.01mol)を加え、常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら6時間反応させた。反応終了後冷却し、水500gを加え水洗した。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、トリメチロールプロパントリレブリネート396.8gを得た。この化合物の酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0076】
合成例(d)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコにペンタエリスリトール136g(1mol)、レブリン酸116g(1mol)、トルエン500g、p−トルエンスルホン酸1.9g(0.01mol)を加え、常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら4時間反応させた。次いで、酢酸カリウム1.96g(0.02mol)を加え、さらに無水酢酸306g(3mol)を加えた後、100℃で4時間反応させた。反応終了後冷却し、水500gを加え水洗した。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ペンタエリスリトールモノレブリネートトリアセテート336.5gを得た。この化合物の酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0077】
合成例(e)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコにペンタエリスリトール136g(1mol)、レブリン酸464g(4mol)、トルエン500g、p−トルエンスルホン酸1.9g(0.01mol)を加え、常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら6時間反応させた。反応終了後冷却し、水500gを加え水洗した。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ペンタエリスリトールテトラレブリネート507.4gを得た。この化合物の酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0078】
合成例(f)
窒素雰囲気下、還流冷却器、分水管、撹拌機、温度計を備えたフラスコにエリスリトール122g(1mol)、レブリン酸464g(4mol)、トルエン500g、p−トルエンスルホン酸1.9g(0.01mol)を加え、常圧下115℃に保ち、生成水を系外に除去しながら6時間反応させた。反応終了後冷却し、水500gを加え水洗した。静置分相し、水相を取り除いた後、エバポレータにてトルエンを減圧留去し、ペンタエリスリトールテトラレブリネート492.4gを得た。この化合物の酸価とヒドロキシル価を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1〜12
ポリ乳酸と合成例(a)〜(f)で得られた化合物を、表2に示す割合で混合し、押出機(KCK製 KCK80×2−50VEX)で、シリンダー設定温度160〜210℃の条件にて混合混練し、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を製造し、ペレット化した。このペレットを40℃で10時間減圧乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業製 PS60E9ASE)を用いて180℃でJIS K 7113の1号試験片(厚さ3mm)及びJIS K 7171の標準試験片を作製し、引張試験及び曲げ試験を行い、柔軟性を測定した。
【0081】
比較例1
ポリ乳酸を60℃で10時間減圧乾燥した後、射出成形機を用いて190℃でJIS K 7113の1号試験片(厚さ3mm)及びJIS K 7171の標準試験片を作製し、引張試験及び曲げ試験を行い、柔軟性を測定した。
【0082】
比較例2〜4
ポリ乳酸と表3に示す可塑剤とを各割合で混合し、押出機で、シリンダー設定温度160〜210℃の条件にてペレット化した。このペレットを40℃で10時間減圧乾燥した後、射出成形機を用いて180℃でJIS K 7113の1号試験片(厚さ3mm)及びJIS K 7171の標準試験片を作製し、引張試験及び曲げ試験を行い、柔軟性を測定した。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
比較例1、2は引張破断伸度が小さく柔軟性がなかった。比較例3、4では柔軟性はあるが、経時で可塑剤がブリードアウトし外観が悪くなった。
【0086】
実施例では引張破断伸度が大幅に向上し、曲げ弾性率が低下したことにより柔軟性が向上していることが分かった。また、実施例の中でも特に、合成例(a)及び(b)を添加した樹脂が引張破断伸度、曲げ弾性率から柔軟性が大幅に向上している。また経時でブリードアウトすることもなく外観も透明で良好であった。
【0087】
【発明の効果】
本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物を用いることで柔軟性及び透明性、安全性、生分解性に優れた成形品が得られる。
Claims (6)
- 前記一般式(1)又は(2)で示される化合物のうちの少なくとも一種を、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し1〜100重量部含む、請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を含む成形品。
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