JP2004165340A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法 Download PDF

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Tatsuji Aoyama
達治 青山
Fuyuki Abe
冬希 阿部
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Abstract

【課題】陽極酸化時の電解液の残留溶質成分により均質な固体電解質層が形成できず、容量バラツキと漏れ電流が大きいという課題を解決し、優れた製品を安定して得られる固体電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】脂肪族飽和カルボン酸またはその塩を溶質とした電解液中で陽極酸化を行うことにより、誘電体酸化皮膜層3の表面に残留する電解液の溶質成分を高温純水洗浄で速やかに除去することができるようになり、次工程において陽極体1の素子内部まで固体電解質層4を均質に形成することができ、かつ誘電体酸化皮膜層3に溶質アニオンが混入しないために誘電体酸化皮膜層3が均質化、安定化して漏れ電流の少ない優れた固体電解コンデンサを安定して生産できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種電子機器に使用される固体電解コンデンサの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1はこの種の固体電解コンデンサの構成を示した断面図であり、図1において1は多孔質の焼結体を示し、この焼結体1はタンタルまたはニオブ等の弁作用金属粉末を所望の形状にプレス成形した後に焼結して作製されている。2はこの焼結体1に埋設されたタンタル線からなる陽極リード線、3は焼結体1の外表面に形成された誘電体酸化皮膜層であり、焼結体1を陽極酸化処理することによって形成されているものである。4はマンガン酸化物や機能性高分子からなる固体電解質層、5と6は陰極層を構成するカーボン層と銀ペースト層である。
【0003】
図2はこのような固体電解コンデンサの製造方法を示した製造工程図であり、図2に示すように、タンタルまたはニオブ金属粉末を成形金型に設けられた所望の形状の空洞部内に充填して加圧成形することによって成形体を作製し、これを焼結して多孔質の焼結体を得た後、この陽極体を陽極酸化処理することにより外表面に誘電体酸化皮膜層を形成し、これを洗浄した後に固体電解質層と陰極層を順次積層形成することによって作製されるものである。
【0004】
図3は上記陽極酸化工程の原理を示した模式図であり、この陽極酸化工程では電解液としてリン酸水溶液を用いて使用電圧の2〜3倍程度の印加電圧で陽極酸化することにより、多孔質の焼結体を形成しているタンタル粒子の表面に使用電圧に耐え得る厚みの誘電体となる誘電体酸化皮膜層を形成するようにしたものである。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−182869号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の固体電解コンデンサの製造方法では、焼結体1の外表面に誘電体酸化皮膜層3を形成する陽極酸化工程において使用される電解液にリン酸水溶液を用いているため、このリン酸イオンは吸着性が高く、高温雰囲気でも揮発・分解性がないために陽極酸化により焼結体1の外表面に形成された誘電体酸化皮膜層3の表面に残留し、この残留したリン酸イオンは高温純水中で洗浄を行っても陽極体1の内部まで完全に除去することができないという問題があった。
【0008】
このために、誘電体酸化皮膜層3の表面に残留するリン酸イオンが固体電解質母液、例えば二酸化マンガンを固体電解質とする場合には硝酸マンガン水溶液、導電性高分子を固体電解質とする場合にはモノマーや酸化剤溶液等の陽極体1の素子内部への浸漬性を低下させ、固体電解質層4を陽極体1の素子内部まで均質に形成することが困難となり、陽極体1の素子の静電容量に対する静電容量(以下、容量達成率という)の大幅な低下を招くことになり、特に、近年の静電容量を高めた高CV値のタンタル粉末では、その微粉化された粉末のために多孔質な焼結体1の空孔パスがますます減少、縮小する傾向にあり、このような固体電解質層4の内部形成状態の悪化が顕在化してきている。
【0009】
また、一方で陽極酸化により形成する誘電体酸化皮膜層3は金属からなる酸化物へと体積膨張を伴うため、陽極酸化時の高い電圧印加では焼結体1内の空孔パスの減少、縮小が生じ、粉末の微粉化と同様な固体電解質層4の内部形成状態の悪化を招いてしまうものであり、従って、このような固体電解質層4形成後の静電容量の低下見合い分を陽極酸化時の印加電圧を低く設定することにより、予め固体電解質層4形成前の陽極体1の素子の静電容量を高く設定して補うようにしているが、この方法では使用電圧に対して十分な耐電圧を有する誘電体酸化皮膜層3の厚みを形成することができず、漏れ電流の増大や短絡状態になりやすいという課題があった。
【0010】
また、この容量達成率の低下は製品の外装形成前では固体電解質層4として見かけ上外部の湿気による吸着水が電解質としての役割を果たすため、焼結体1の素子内部の静電容量成分を引き出すことでその低下度合いを軽減する作用があるが、製品の外装形成後の高温雰囲気下における使用状態では上記吸着水が徐々に飛散していくことで真の固体電解質層4形成状態を反映した静電容量の低下が顕著になり、製品の信頼性が悪化するという課題があった。
【0011】
また、リン酸イオンや硫酸イオンなどの無機酸を溶質として用いた電解液による陽極酸化により形成する誘電体酸化皮膜層3には溶質アニオンが混入することが知られており、この溶質アニオンによる誘電体酸化皮膜層3の膜質改善が従来から試みられているが、現実にはこの陽極酸化で混入する溶質アニオンの定量性や誘電体酸化皮膜層3内への浸入深さなどの電解液に含まれる溶質アニオンの時間的変化を考慮すると、これらを完全に制御することは極めて困難であり、非定量的な混入は誘電体酸化皮膜層3の品質バラツキと共に漏れ電流の増加に繋がるという課題を有したものであった。
【0012】
本発明はこのような従来の課題を解決し、均質な誘電体酸化皮膜層を安定して形成することにより容量バラツキを抑制し、漏れ電流の低い優れた製品を安定して得ることが可能な固体電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に記載の発明は、タンタルまたはニオブ金属粉末を成形金型に設けられた所望の形状の空洞部内に充填して加圧成形することによって成形体を作製し、これを焼結して多孔質の陽極体を得た後、この陽極体を陽極酸化することにより外表面に誘電体酸化皮膜層を形成する陽極酸化工程において、少なくとも1種類以上の脂肪族飽和カルボン酸またはその塩を溶質とした電解液中で陽極酸化を行うようにしたものであり、この方法により、陽極酸化により形成した誘電体酸化皮膜層の表面に残留する電解液の溶質成分を高温純水洗浄で速やかに除去することができるため、次工程において陽極体の素子内部まで固体電解質層を均質に形成することができるようになり、さらに、誘電体酸化皮膜層に溶質アニオンが混入しないために誘電体酸化皮膜層が均質化、安定化して漏れ電流の少ない優れた固体電解コンデンサが得られるという作用効果を有する。
【0014】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、加圧成形した成形体を焼結して得られる陽極体に代えて、弁作用金属箔の表面を粗面化処理、または弁作用金属箔上にタンタルまたはニオブ金属粉末からなる焼結層を形成することにより得られる多孔質の陽極体を用いるようにしたものであり、この方法により、請求項1に記載の発明により得られる作用効果と同様の作用効果を有する。
【0015】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、脂肪族飽和カルボン酸として脂肪族飽和オキシカルボン酸を用いるようにしたものであり、この方法により、請求項1に記載の発明により得られる作用効果をより一層効果的に得ることができるという作用効果を有する。
【0016】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1または3に記載の発明において、脂肪族飽和カルボン酸または脂肪族飽和オキシカルボン酸の塩としてアンモニウム塩を用いるようにしたものであり、この方法により、請求項1または2に記載の発明により得られる作用効果に加え、陽極体の素子の容量バラツキを抑制することができる電気伝導度範囲を少ない溶質材料で容易に得ることができることから、溶質材料コストを抑制することができるという作用効果を有する。
【0017】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、陽極酸化時の電解液の電気伝導度を80℃で1mS/cm以上とするようにしたものであり、この方法により、請求項1に記載の発明により得られる作用効果をより一層効果的に得ることができるという作用効果を有する。
【0018】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、陽極酸化時の電解液の温度を50℃以上とするようにしたものであり、この方法により、誘電体酸化皮膜層が緻密化し、漏れ電流をより低減することができるという作用効果を有する。
【0019】
本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、陽極酸化時の印加電圧を120V以下とするようにしたものであり、この方法により、請求項1に記載の発明により得られる作用効果をより一層効果的に得ることができるという作用効果を有する。
【0020】
本発明の請求項8に記載の発明は、タンタルまたはニオブ金属粉末として静電容量が30,000μF・V/g以上のものを用いるようにしたものであり、この方法により、請求項1に記載の発明により得られる作用効果をより一層効果的に得ることができるという作用効果を有する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を用いて、本発明の特に請求項1〜8に記載の発明について説明する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態による固体電解コンデンサの構成を示した断面図であり、図1において1は多孔質の焼結体を示し、この焼結体1は本実施の形態では弁作用金属であるタンタル金属粉末を所望の形状にプレス成形した後に焼結して作製したものである。2はこの焼結体1に埋設されたタンタル線からなる陽極リード線、3は焼結体1の外表面に形成された誘電体酸化皮膜層であり、焼結体1を陽極酸化処理することによって形成されているものである。4は機能性高分子(マンガン酸化物でも良い)からなる固体電解質層、5と6は陰極層を構成するカーボン層と銀ペースト層である。
【0023】
図2はこのような固体電解コンデンサの製造方法の一例を示した製造工程図であり、図2に示すように、タンタル金属粉末を成形金型に設けられた所望の形状の空洞部内に充填して加圧成形することによって成形体を作製し、これを焼結して多孔質1の焼結体を得た後、この陽極体を陽極酸化することにより外表面に誘電体酸化皮膜層3を形成し、これを85℃の純水流水中で1時間洗浄した後に機能性高分子からなる固体電解質層4を形成し、さらにこの表面にカーボン層5と銀ペースト層6からなる陰極層を順次積層形成することによって作製したものである。
【0024】
図3は上記陽極酸化工程の原理を示した模式図であり、陽極体1を電解液中に浸漬して使用電圧の2〜3倍程度の印加電圧で陽極酸化することにより、多孔質の焼結体1を形成しているタンタル粒子の表面に使用電圧に耐え得る厚みの誘電体となる誘電体酸化皮膜層3を形成するようにしたものである。
【0025】
以下、具体的な実施例を説明する。
【0026】
(実施例1)
上記図1で説明した固体電解コンデンサを、図2、図3で説明した製造方法により作製した。なお、誘電体酸化皮膜層3を形成するための陽極酸化工程に使用した電解液の種類としては、脂肪族飽和カルボン酸のギ酸を用いたものである。
【0027】
(実施例2)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和カルボン酸のシュウ酸とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0028】
(実施例3)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和カルボン酸のマロン酸とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0029】
(実施例4)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和カルボン酸のコハク酸とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0030】
(実施例5)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和カルボン酸のアジピン酸とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0031】
(実施例6)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和オキシカルボン酸のクエン酸とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0032】
(実施例7)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和オキシカルボン酸のリンゴ酸とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0033】
(実施例8)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和オキシカルボン酸の酒石酸とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0034】
(実施例9)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和カルボン酸アンモニウム塩とし、アンモニウム塩にギ酸アンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0035】
(実施例10)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和カルボン酸アンモニウム塩とし、アンモニウム塩にシュウ酸アンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0036】
(実施例11)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和カルボン酸アンモニウム塩とし、アンモニウム塩にコハク酸アンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0037】
(実施例12)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和カルボン酸アンモニウム塩とし、アンモニウム塩にアジピン酸アンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0038】
(実施例13)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和オキシカルボン酸アンモニウム塩とし、アンモニウム塩にクエン酸アンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0039】
(実施例14)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和オキシカルボン酸アンモニウム塩とし、アンモニウム塩にリンゴ酸アンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0040】
(実施例15)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を脂肪族飽和オキシカルボン酸アンモニウム塩とし、アンモニウム塩に酒石酸アンモニウムを用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0041】
(比較例)
陽極酸化工程に使用した電解液の種類を無機酸のリン酸(従来例)とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。
【0042】
このようにして作製した実施例1〜15、および比較例の固体電解コンデンサの容量達成率と漏れ電流を測定した結果を(表1)に示す。
【0043】
なお、容量達成率とは(固体電解質層形成後の静電容量/陽極酸化後の静電容量の割合)を示すものであり、漏れ電流は定格印加後30秒値を測定し、従来例を100とした場合の比較値とした。
【0044】
また。静電容量は周波数120Hz、DCバイアス1.5V印加条件下で測定し、陽極体の素子の場合は陰極としてPt−Blackを用いて30.5vol%硫酸水溶液中で実施した。
【0045】
【表1】
Figure 2004165340
【0046】
この(表1)から明らかなように、本実施の形態による脂肪族飽和カルボン酸またはその塩を溶質とした電解液に用いて陽極酸化を行った固体電解コンデンサは、陽極酸化後の誘電体酸化皮膜層の表面に残留する電解液の溶質成分が比較例としての従来例のようにリン酸イオンのような吸着性のある溶質とは異なり、洗浄工程の高温純水洗浄にて速やかに除去することができるため、次工程の固体電解質層形成工程において陽極体の素子内部まで各溶液が十分に浸漬して均質に固体電解質層を形成し、目的とする静電容量を誘電体酸化皮膜層の厚みを減少させることなく得ることができ、容量達成率を向上させることができるようになるものである。
【0047】
また、陽極酸化工程に使用する電解液の溶質として脂肪族飽和カルボン酸を用いたものよりも脂肪族飽和オキシカルボン酸を用いたものの方が、またさらに脂肪族飽和オキシカルボン酸を用いたものよりも脂肪族飽和オキシカルボン酸アンモニウム塩を用いたものの方が、その効果がより顕著に現れており、最も効果が大きいのは実施例15に使用した電解液の種類を脂肪族飽和オキシカルボン酸アンモニウム塩とし、アンモニウム塩に酒石酸アンモニウムを用いた場合に最も優れた効果を発揮しているものである。
【0048】
また、実施例6〜8の脂肪族飽和オキシカルボン酸は水酸基を複数基有しているために水和性が良好で、溶解性も高いことから高温純水洗浄工程での溶質成分の除去がさらに容易となり、容量達成率の向上効果が更に大きく得られるものである。
【0049】
なお、このようにして得られた本実施の形態の実施例13の陽極酸化後の陽極体の素子の高温純水洗浄時間と陽極体の素子中の溶質残量の関係を調べた結果を従来例と比較して図4に、高温ライフでの容量変化率の関係を調べた結果を従来例と比較して図5に示す。
【0050】
なお、陽極体の素子中の溶質残量は高周波誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP)にて測定した。
【0051】
また、脂肪族飽和カルボン酸アンモニウム塩を電解液に用いて陽極酸化を行った実施例9〜12、ならびに脂肪族飽和オキシカルボン酸アンモニウム塩を電解液に用いて陽極酸化を行った実施例13〜15の固体電解コンデンサは、洗浄工程の高温乾燥時にアンモニウム塩がアンモニウムとして揮発性を有することから、洗浄工程の高温純水洗浄時に除去しきれなかった残留溶質成分をさらに低減することができるため、次工程における固体電解質層形成の効率を更に上げることができるものである。
【0052】
また、図6は実施例15の電解液(30mS/cm)を用いて陽極酸化を行った場合の固体電解コンデンサの静電容量と電解液の電気伝導度の関係を示したものであるが、陽極酸化による誘電体酸化皮膜層の厚みのバラツキ、すなわち静電容量のバラツキをより低減させるためには、電気伝導度を1mS/cm以上とすることにより、脂肪族飽和オキシカルボン酸(脂肪族飽和カルボン酸の場合も同じ)単体よりもそのアンモニウム塩を用いた方が少ない溶質材料で優れた電気伝導度を得ることができるため、材料コストを低減することができるものである。
【0053】
また、図7は実施例15の電解液(30mS/cm)を用いた場合の電解液の温度と漏れ電流の関係を示したものであるが、図7から分かるように、電解液温度が60〜85℃の範囲が好ましいものであり、これより低い場合には陽極酸化により形成される誘電体酸化皮膜層が均質で緻密になり難いために漏れ電流悪化の要因となる。また、逆に高過ぎる場合には電解液の溶質成分の分解や揮発が顕著になるために電解液の組成が変化して安定した誘電体酸化皮膜層の形成が困難となり、電気特性のバラツキの要因となるものである。
【0054】
また、図8は実施例15の電解液(30mS/cm)を用いた場合の陽極酸化時の電圧と容量達成率の関係を示したものであるが、図8から分かるように、陽極酸化時の電圧は120V以下で行うことが好ましいものであり、これ以上になると陽極酸化によって形成される誘電体酸化皮膜層の体積膨張がより顕著になり、タンタルやニオブの焼結体内部の空孔パスが減少あるいは縮小して洗浄工程において誘電体酸化皮膜層の表面から残留溶質成分の除去がより困難になるものであり、印加電圧を低く設定する方が効果的である。
【0055】
また、図9は実施例15の電解液(30mS/cm)を用いた場合のタンタルまたはニオブ金属粉末の静電容量と容量達成率の関係を示したものであるが、図9から分かるように、同金属粉末の静電容量が30,000CV/g(μFV/g)以上の高CV粉末を用いることが好ましいものであり、一般的には高CV粉末になるほど焼結体内部の空孔パスが縮小されるために洗浄工程における誘電体酸化皮膜層の表面からの残留溶質成分の除去は困難になるものであるが、本実施の形態による電解液を用いた場合には大きな低下は見られないことから、30,000CV/g(μFV/g)以上の高CV粉末を用いた場合により顕著な効果が得られるものである。
【0056】
なお、上記実施の形態における陽極体は、タンタル金属粉末を所望の形状にプレス成形した後に焼結することによって得たものを例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、弁作用金属箔の表面を粗面化処理、または弁作用金属箔上にタンタル金属粉末からなる焼結層を形成することにより得られる陽極体を用いるようにしても同様の作用効果が得られるものである。
【0057】
【発明の効果】
以上のように本発明による固体電解コンデンサの製造方法は、弁作用金属粉末を成形金型内に充填して加圧成形することにより成形体を作製し、これを焼結して多孔質の陽極体を得た後、この陽極体を陽極酸化することにより外表面に誘電体酸化皮膜層を形成する陽極酸化工程において、少なくとも1種類以上の脂肪族飽和カルボン酸またはその塩を溶質とした電解液中で陽極酸化を行うようにした製造方法により、陽極酸化により形成した誘電体酸化皮膜層の表面に残留する電解液の溶質成分を高温純水洗浄で速やかに除去することができるため、次工程において陽極体の素子内部まで固体電解質層を均質に形成することができるようになり、さらに、誘電体酸化皮膜層に溶質アニオンが混入しないために誘電体酸化皮膜層が均質化、安定化して漏れ電流の少ない優れた固体電解コンデンサを安定して生産することができるようになるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例を含む本発明の一実施の形態による固体電解コンデンサの構成を示した断面図
【図2】同固体電解コンデンサの製造方法の一例を示した製造工程図
【図3】同陽極酸化工程の原理を示した模式図
【図4】陽極酸化後の陽極体素子の高温純水洗浄時間と陽極体素子中の溶質残量の関係を従来例と比較して示した特性図
【図5】高温ライフでの容量変化率の関係を従来例と比較して示した特性図
【図6】実施例15の電解液を用いて陽極酸化を行った場合の固体電解コンデンサの静電容量と電解液の電気伝導度の関係を示した特性図
【図7】実施例15の電解液を用いた場合の電解液の温度と漏れ電流の関係を示した特性図
【図8】実施例15の電解液を用いた場合の陽極酸化時の電圧と容量達成率の関係を示した特性図
【図9】実施例15の電解液を用いた場合のタンタルまたはニオブ金属粉末の静電容量と容量達成率の関係を示した特性図
【符号の説明】
1 焼結体
2 陽極リード線
3 誘電体酸化皮膜層
4 固体電解質層
5 カーボン層
6 銀ペースト層

Claims (8)

  1. タンタルまたはニオブ金属粉末を成形金型に設けられた所望の形状の空洞部内に充填して加圧成形することによって成形体を作製し、これを焼結して多孔質の陽極体を得た後、この陽極体を陽極酸化することにより外表面に誘電体酸化皮膜層を形成する陽極酸化工程において、少なくとも1種類以上の脂肪族飽和カルボン酸またはその塩を溶質とした電解液中で陽極酸化を行うようにした固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 加圧成形した成形体を焼結して得られる陽極体に代えて、弁作用金属箔の表面を粗面化処理、または弁作用金属箔上にタンタルまたはニオブ金属粉末からなる焼結層を形成することにより得られる多孔質の陽極体を用いるようにした請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 脂肪族飽和カルボン酸として脂肪族飽和オキシカルボン酸を用いるようにした請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 脂肪族飽和カルボン酸または脂肪族飽和オキシカルボン酸の塩としてアンモニウム塩を用いるようにした請求項1または3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  5. 陽極酸化時の電解液の電気伝導度を80℃で1mS/cm以上とするようにした請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  6. 陽極酸化時の電解液の温度を50℃以上とするようにした請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  7. 陽極酸化時の印加電圧を120V以下とするようにした請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  8. タンタルまたはニオブ金属粉末として静電容量が30,000μF・V/g以上のものを用いるようにした請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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