JP2004162208A - 消臭剤を含む紙およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】建材などから発生する臭気物質を吸着し、吸着した臭気物質を臭いの発生しない物質や臭いの発生しにくい物質に変換する紙を提供する。
【解決手段】パルプを100〜200mlのフリーネスとなるように叩解し、珪藻土および添加剤を混合してインレット濃度約1〜2重量%のパルプスラリーを調成し、このパルプスラリーから紙層を形成し、最後に紙層の表面に消臭剤を含む外添剤を塗工する。得られる紙は、臭気物質を吸着する珪藻土を30重量%以上含み、紙の表面近傍に0.005〜0.02%の消臭剤を含む。この消臭剤を含む紙を壁紙として使用すると、建材などから発生する臭気物質を吸着して臭いの発生しない物質や臭いの発生しにくい物質に変換できる。
【選択図】 図2A
【解決手段】パルプを100〜200mlのフリーネスとなるように叩解し、珪藻土および添加剤を混合してインレット濃度約1〜2重量%のパルプスラリーを調成し、このパルプスラリーから紙層を形成し、最後に紙層の表面に消臭剤を含む外添剤を塗工する。得られる紙は、臭気物質を吸着する珪藻土を30重量%以上含み、紙の表面近傍に0.005〜0.02%の消臭剤を含む。この消臭剤を含む紙を壁紙として使用すると、建材などから発生する臭気物質を吸着して臭いの発生しない物質や臭いの発生しにくい物質に変換できる。
【選択図】 図2A
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅の壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張等に使用される紙およびそれらの製造方法に関し、特に、建材などから発生する臭気物質などを吸着し、吸着した臭気物質を臭いの発生しないあるいは臭いの発生しにくい物質に変換できる壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張等に使用される紙およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅の天井や壁などには様々な種類の建材が使用されており、またそれらの建材の表面には、意匠性を高めるために室内装飾用の化粧シート(例えば、合成樹脂製、布製、紙製など)を貼り合わせて使用する場合も多い。例えば、紙製の化粧シートとしては、壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張用紙等があり、壁紙は、押入内やトイレなどに使用される。
【0003】
これらの建材や化粧シートとして用いられる合成樹脂製シート(それらを接着する接着剤も含む)には、例えば、ホルムアルデヒドなど、いわゆる「シックハウス症候群」などを引き起こす化学物質(以下、臭気物質と称す)を含む場合があり、施工当初に特有の不快な臭気を発することがある。そのため、室内装飾用の化粧シートとして、耐久性の良い合成樹脂製シートの代わりに、布製や紙製の壁紙などを使用する場合も多くなっている。
【0004】
しかしながら、化粧シートとして紙製の壁紙を使用する場合には、壁紙はある程度の臭気物質を吸着するもののその吸着性能はそれほど大きくないため、建材から発生する「シックハウス症候群」を引き起こす臭気物質をより多く吸着する壁紙が望まれている。ただし、壁紙として使用する紙の厚さは薄いことから、「シックハウス症候群」などを引き起こす臭気物質などを多く吸着する壁紙を製造するためには、壁紙中にこの臭気物質を吸着する吸着物質を可能な限り多く添加する必要がある。
【0005】
この紙製の壁紙中に吸着物質を多く添加する試みとしては、例えば、炭素粉や珪藻土などの吸着物質を添加した紙(建物内装用シート)が開示されている(特許文献1)。ただし、紙中に炭素粉や珪藻土などの吸着物質を添加すると添加量によっては紙の強度が低下することが予想されるが、特許文献1では添加される珪藻土の量や製造方法を開示していないため、どの程度の珪藻土をどのような方法で添加すると所定強度を有する壁紙が形成できるか不明である。
【0006】
一方、特許文献2には、珪藻土とパルプをブレンドして形成される珪藻土を含有する裏打紙およびその製造方法が開示され、パルプ100重量部に対して珪藻土を20重量部より多く添加すると裏打紙としての強度が低下し、裏打紙として使用できないことが示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−212694号公報
【特許文献2】
特開昭59−100798号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記説明したように壁紙中に含まれる珪藻土などの吸着物質は、臭気物質を単に吸着して室内の大気中に含まれる臭気物質濃度を低減しその臭いを消しているだけである。このため、臭気物質が吸着物質の吸着可能な上限値を超えて存在する場合には、この吸着物質を含む裏打紙では上限値を超える臭気物質を吸着することはできない。また、吸着物質は臭気物質を単に吸着して消臭しているだけであるため、室内温度が高くなるなどの環境の変化に応じて一度吸着された臭気物質が吸着物質から大気中に放出され再度臭気を発する可能性も否定できない。
【0009】
このような問題を解決するためには、吸着物質に吸着した臭気物質をそのまま保持するのではなく、吸着物質に吸着された臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換することが重要である。また、変換した臭気物質を吸着物質から除去して吸着物質の吸着性能を回復させることも重要である。
【0010】
本発明は上記説明した従来技術の問題点を解決することを出発点としてなされたものであり、その目的は、住宅の壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張等に使用される紙であって、建材などから発生して紙に吸着された臭気物質を臭いの発生しない物質または臭いの発生しにくい物質に変換することが可能な上記の各紙およびその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る一実施形態の紙は、以下の構成を有する。すなわち、臭気物質を吸着することが可能な紙であって、前記吸着された臭気物質を臭いの発生しないまたは臭いの発生しにくい物質に変換する消臭剤を更に含むことを特徴とする。
【0012】
ここで、例えば、前記消臭剤は前記紙の表面近傍に含まれていることが好ましい。
【0013】
ここで、例えば、前記消臭剤はコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩または鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩などのフタロシアニン化合物を含むことが好ましい。
【0014】
ここで、例えば、前記消臭剤は前記紙中に0.001〜0.1重量%含まれることが好ましい。
【0015】
ここで、例えば、前記吸着された臭気物質にはホルムアルデヒド、メルカプタン類、および硫化水素の少なくとも1つを含み、前記フタロシアニン化合物は、該ホルムアルデヒド、メルカプタン類、および硫化水素の酸化反応を促進する触媒作用を有することが好ましい。
【0016】
ここで、例えば、前記吸着された臭気物質にはアンモニアおよびアミン類の少なくとも1つを含み、前記フタロシアニン化合物は、該アンモニアおよびアミン類と中和反応または錯形成反応をすることが好ましい。
【0017】
ここで、例えば、前記紙は、全重量の30〜80重量%の珪藻土と、所定のフリーネスとなるように叩解されたパルプと、前記珪藻土と前記パルプとの間の少なくとも結合強度を高める内添剤とを含むもの、あるいは、所定のフリーネスとなるように叩解されたパルプと、珪藻土と、無機質材料と、前記パルプ、前記珪藻土および前記無機質材料の間の少なくとも結合強度を高める内添剤とを含み、前記珪藻土と前記無機質材料とを合わせた量が全重量の30〜85重量%となるように調成されているものが好ましい。
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る一実施形態の紙の製造方法は、以下の構成を有する。すなわち、臭気物質を吸着することが可能な紙の製造方法であって、パルプスラリーから紙層を形成する紙層形成工程と、前記臭気物質を吸着する紙層の表面に前記吸着された臭気物質を臭いの発生しないまたは臭いの発生しにくい物質に変換する消臭剤を塗工する塗工工程とを有することを特徴とする。
【0019】
ここで、例えば、前記塗工工程は、サイズプレスを用いて行われ、前記サイズプレスの2本のロールで前記紙を挟み込み、該ロール間に形成されるニップ部に前記消臭剤を含む外添剤溶液を供給して、前記紙の表面に前記外添剤溶液を塗工することが好ましい。
【0020】
ここで、例えば、前記外添剤溶液として、表面紙力剤を含む溶液と前記消臭剤を含む溶液とを前記ニップ部に供給することが好ましい。
【0021】
ここで、例えば、前記消臭剤は、前記消臭剤が前記紙中に0.001〜0.1重量%含まれることが好ましい。
【0022】
ここで、例えば、前記消臭剤は、前記外添剤溶液中に0.002〜0.6重量%含まれることが好ましい。
【0023】
ここで、例えば、パルプを所定のフリーネスとなるように叩解する叩解工程と、前記叩解したパルプを、珪藻土と、さらに前記叩解したパルプと前記珪藻土との間の少なくとも結合強度を高める内添剤と混合してパルプスラリーを調成する調成工程とを更に有し、前記紙層形成工程では、前記パルプスラリーから形成される紙層に含まれる前記珪藻土が全量の30〜80重量%となるように調成されていることが好ましい。
【0024】
ここで、例えば、パルプを所定のフリーネスとなるように叩解する叩解工程と、前記叩解したパルプを、珪藻土と、無機質材料と、さらに前記叩解したパルプ、前記珪藻土および前記無機質材料の間の少なくとも結合強度を高める内添剤と混合してパルプスラリーを調成する調成工程とを更に有し、前記紙層形成工程では、前記パルプスラリーから形成される紙層に含まれる前記珪藻土と前記無機質材料とを合わせた量が全重量の30〜85重量%となるように調成されていることが好ましい。
【0025】
【発明の実施形態】
以下に図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態である「吸着物質(珪藻土)に吸着された臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換する消臭剤を含む珪藻土紙」あるいは「吸着物質(珪藻土、無機質材料)に吸着された臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換する消臭剤を含む高填料紙」およびそれらの製造方法を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素、数値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
なお、本実施形態では、以下、「吸着物質に吸着された臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換する」ことを単に「消臭する」と称し、「臭気物質を吸着物質(珪藻土等)で吸着し消臭剤で消臭する珪藻土紙」を単に「消臭珪藻土紙」と称し、「臭気物質を吸着物質(珪藻土、無機質材料など)で吸着し消臭剤で消臭する高填料紙」を単に「消臭高填料紙」と称する。
【0027】
[定義]
まず本実施形態で用いる「消臭珪藻土紙」、「消臭高填料紙」および「フリーネス(ろ水度)」について以下に定義する。
【0028】
「消臭珪藻土紙」とは、所定のフリーネスを有するように叩解されたパルプ中に所定量の珪藻土と、結合強度やワンパスリテンションなどの特性を高める添加剤とを混合してパルプスラリーを調成し、このパルプスラリーから紙層を形成後、その紙層表面に臭気物質を消臭する消臭剤を塗工して得られる紙と定義する。
【0029】
「消臭高填料紙」とは、所定のフリーネスを有するように叩解されたパルプ中に所定量の珪藻土と、無機質材料と、結合強度などの特性を高める添加剤とを混合してスラリーを調成し、このスラリーから紙層を形成後、その表面に臭気物質を消臭する消臭剤を塗工して得られる紙と定義する。
【0030】
[フリーネス(ろ水度)]とは、パルプの水切れの程度を表す指標(数値)で、繊維の叩解の度合いを示すものである。パルプのフリーネスの測定方法は、日本工業規格JIS P8121で、「カナダ標準ろ水度試験方法」および「ショッパーろ水度試験方法」に規定されている。本実施形態では、フリーネス(ろ水度)を「カナダ標準ろ水度試験方法」を用いて測定したが、「ショッパーろ水度試験方法」を用いて測定してもよい。
【0031】
[消臭珪藻土紙、消臭高填料紙の原料]
次に、上記説明した「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を製造するために用いる原料について以下詳しく説明する。
【0032】
なお上記定義したように、「消臭高填料紙」の構成成分は、「消臭珪藻土紙」の構成成分に無機質材料成分をさらに添加したものであり、「消臭珪藻土紙」と「消臭高填料紙」の原料の違いは、無機質材料のみである。以下の説明では、「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の各原料は重複するものが多いので、それぞれの原料を区別して説明することなく一括して説明することとする。
【0033】
[パルプ(原料)]
本実施形態の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」で使用するパルプとしては、種々のパルプを使用することができる。例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材パルプと、サーモメカニカルパルプ(TMP)や砕木パルプ(GP)等の高収率パルプのいずれかを単独又は複合して使用することができる。
【0034】
また木材パルプに限らず、麻、こうぞ等のじん皮繊維、竹、わら、バガス、ケナフ等の非木材パルプも利用および配合することもできる。さらに用途に応じて、有機合成繊維、無機質繊維を混合しても良い。
【0035】
[パルプのフリーネス]
上記より選択されたパルプは、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」が壁紙などとして使用できる程度の製紙強度等を有するようにフリーネス(ろ水度)を調成して用いる。本実施形態のパルプのフリーネス(ろ水度)は、80〜300mlが好ましく、より好ましくは、100〜200mlとなるように叩解して使用する。
【0036】
また上記の範囲のフリーネスに調成されたパルプにおいて、フリーネスが小さい程、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の強度などが高くなり、珪藻土や無機質材料を多く含有することもできる。
【0037】
なお、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を作製する際に、フリーネス(ろ水度)が300ml以上のパルプを用いると、得られる「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の製紙強度は、壁紙等で使用できる程度の製紙強度に達することができず、使用できない。この点について、以下詳しく説明する。
【0038】
パルプを100〜200mlとなるように叩解すると繊維が柔軟になり、さらにフィブリル化が進んで繊維間の結合面積が増大し、繊維同士の絡みが増える。この繊維同士の絡みが多くあるパルプを珪藻土や無機質材料と混合すると、フィブリル化した繊維の交点部分に珪藻土や無機質材料が付着し、パルプと珪藻土あるいは無機質材料との接触面積が増加する。その結果、それらの間で発生する摩擦抵抗が増加し、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を作製するときに得られる紙の強度を高くすることができる。
【0039】
一方、フリーネス(ろ水度)が450mlのパルプは、叩解が進んでいないため、フィブリル化が少なく、繊維同士の絡みが少ない。そのため、この繊維同士の絡みが少ないパルプを珪藻土や無機質材料と混合すると、フィブリル化した繊維の交点部分に珪藻土や無機質材料が付着しにくいためパルプと珪藻土などとの間の接触面積はそれほど増加しない。その結果、それらの間で発生する摩擦抵抗の増加は少ないため、パルプに珪藻土あるいは無機質材料などを含有させて珪藻土紙や高填料紙を作製するときに得られる紙の強度を高くすることができない。
【0040】
なお、「消臭珪藻土紙」中にパルプは任意量添加することができるが、「消臭珪藻土紙」の消臭性能や調湿性能を高めるために本実施形態では、パルプは「消臭珪藻土紙」の全重量の70重量部以下となるように添加するのが望ましい。また同様に、「消臭高填料紙」中にもパルプは任意量添加することができる。
【0041】
[珪藻土(原料)]
珪藻土は、藻類が珪藻殻となって長い間地層に堆積し化石化したものであり、主成分は、SiO2(シリカ)である。本実施形態の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」で使用する珪藻土の粒子径は、5〜100ミクロン、好ましくは10〜50ミクロンに整粒されたものが望ましい。
【0042】
そのために天然に存在する珪藻土は使用前に十分精製・乾燥されたものまたは乾燥品を焼成したものを用いる。
【0043】
このように調成された珪藻土は、水蒸気の吸湿・放湿性能および有害ガスの消臭性能に優れていることから建材などから放出される有害ガスを吸着しやすく、また室内の湿度に合わせて水蒸気を吸収したり、放湿しやすいくなる。珪藻土は、これらの特性を生かして、建材の他に、ろ過助剤、吸着・脱臭剤、充填材などに幅広く利用されている。
【0044】
なお本実施形態では、「消臭珪藻土紙」中に珪藻土を好ましくは全重量の30〜80重量%、より好ましくは、全重量の50〜80重量%添加することができる。また「消臭珪藻土紙」中の珪藻土の割合は、珪藻土紙の特性に応じて選択することができ、例えば、珪藻土紙の吸着性能や調湿性能を高めるためには、「消臭珪藻土紙」中の珪藻土の割合を増やせばよい。
【0045】
また同様に、本実施形態では、「消臭高填料紙」中に珪藻土を好ましくは無機質材料と合わせて全重量の30〜85重量%、より好ましくは、全重量の50〜85重量%添加することができる。なお「消臭高填料紙」中の珪藻土の割合は、特に限定する必要が無く、使用する「消臭高填料紙」の特性に応じて選択することができる。例えば、珪藻土の有する吸着性能や調湿性能をより利用したい場合には、「消臭高填料紙」中の珪藻土の割合を増やせばよい。
【0046】
[無機質材料(原料)]
本実施形態の「消臭高填料紙」で使用する無機質材料としては、吸着性能、調湿性能を示し、難燃性の材料であれば天然のものであれ人工のものであれどのようなものであっても良い。例えば、水酸化アルミニウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、炭酸カルシウムあるいは二酸化チタン、水酸化チタン等のチタン酸化物又は水酸化物、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸性白土、珪藻頁岩、ケイ酸塩鉱物等を単独あるいは数種類組み合わせて使用することができる。
【0047】
このような無機質材料は、水蒸気の吸湿・放湿性能および有害ガスの吸着性能に優れることから建材などから放出される有害ガスを吸着しやすく、また室内の湿度に合わせて水蒸気を吸収したり、放湿しやすいくなる。また難燃性や不燃性の特性を持たせることもできる。
【0048】
本実施形態では、無機質材料を「消臭高填料紙」中に好ましくは珪藻土と合わせて全重量の30〜85重量%、より好ましくは、全重量の50〜85重量%添加することができる。なお「消臭高填料紙」中の無機質材料の割合は、特に限定する必要が無く、使用する「消臭高填料紙」の特性に応じて選択することができる。例えば、無機質材料の有する吸着性能、調湿性能および難燃性の特性をより利用したい場合には、「消臭高填料紙」中の無機質材料の割合を増やせばよく、無機質材料の有する吸着性能、調湿性能および他の特性を利用したい場合には、「消臭高填料紙」中の無機質材料の割合を増やせばよい。また「消臭高填料紙」中の無機質材料の種類は、上記説明したものから1種あるいは2種以上を所定量ずつ複合して使用すれば良く、その種類および量については特に限定する必要が無く、使用する「消臭高填料紙」の特性に応じて選択することができる。
【0049】
[内添剤(原料)]
本実施形態の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」で使用する添加剤には内添剤(内添用に用いる添加剤)と外添剤(外添用に用いる添加剤)がある。内添剤は、珪藻土とパルプとの間の結合強度等の特性、あるいは、珪藻土とパルプあるいは無機質材料との間の結合強度やワンパスリテンション等の特性を高めるために用いられるもので紙層中に均一に分散される添加剤である。内添剤には、下記に示するサイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤などを含むことが好ましい。
【0050】
[サイズ剤(内添剤用原料)]
内添剤用のサイズ剤は、パルプ(の主成分であるセルロース)を疎水化する構造を含む樹脂が好ましく、例えば、オレフィン系樹脂、アルキルケテンダイマー、スチレンアクリル樹脂、ロジンなどを用いるのが好ましい。
【0051】
[紙力増強剤(内添剤用原料)]
内添剤用の紙力増強剤は、パルプの水酸基と水素結合を形成したり、3次元化した網目構造でパルプを固定して強度等を増加させる性能を有する水溶性樹脂が好ましく、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂などを用いるのが好ましい。
【0052】
[歩留向上剤(内添剤用原料)]
内添剤用の歩留向上剤は、ワイヤーパートでのワンパスリテンションを向上させる水溶性樹脂が好ましく、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド縮合物および多価フェノール系樹脂などを用いるのが好ましい。
【0053】
なお上記説明した内添剤の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」に添加する量は、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」中の各成分の割合および所望する特性(製紙強度等)によって変化するが、内添剤(サイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤)の合計量は、「消臭珪藻土紙」の場合には、全重量に対して0.2〜1.7重量%であることが好ましく、「消臭高填料紙」の場合には、全重量に対して0.2〜1.7重量%であることが好ましい。
【0054】
[内添剤中の各成分の割合]
また内添剤中のサイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤の各割合もまた、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」中の各成分の割合および所望する特性(強度等)によって変化する。例えば、「消臭珪藻土紙」の場合には、全重量に対してサイズ剤が0.1〜1.0重量%、紙力増強剤が0.1〜0.5重量%、歩留向上剤が0.05〜0.2重量%であることが好ましく、「消臭高填料紙」の場合には、全重量に対してサイズ剤が0.1〜1.0重量%、紙力増強剤が0.1〜0.5重量%、歩留向上剤が0.05〜0.2重量%であることが好ましい。
【0055】
これらの添加剤は、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を製造する途中で調成される「消臭珪藻土紙」用スラリーあるいは「消臭高填料紙」用スラリー中に添加され抄造により紙中に均一に分散されることで、所定の製紙強度等を有する「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」が作製される。また必要に応じて、上記説明した内添剤中に防かび剤などを更に添加しても良い。
【0056】
また上記のサイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤は、作製する「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の特性に応じて、それぞれ最適な種類を選択し、さらに各添加量の割合いを「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」に適した量に最適化することにより、更に「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の強度等を向上することができる。
【0057】
[外添剤(原料)]
本実施形態で使用する添加剤は、上記説明した内添剤の他に外添剤がある。外添剤は、スラリーから形成される紙層の表面近傍のみに塗工され、紙の表面性状を改良し紙層の表面近傍に消臭物質を浸積する。外添剤の塗工方法は種々の方法を用いることができる。例えば、抄造工程で用いるサイズプレスのニップ部に酸化澱粉などの表面紙力剤を所定濃度含む溶液と、消臭剤を所定濃度含む溶液とを2系統で添加し、この溶液中に紙層を所定速度で通過させることで外添剤を紙層の表面近傍のみに塗工してもよい。また、サイズプレスのニップ部に添加する外添剤は、上記の2系統の他に酸化澱粉などの表面紙力剤を所定濃度含む溶液と消臭剤を所定濃度含む溶液とを混合し1系統として添加してもよい。
【0058】
[消臭剤(外添剤用原料)]
消臭剤は、珪藻土や無機質材料などの吸着物質を含む紙の表面近傍に存在し、「吸着物質に吸着した臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換」(消臭)して臭気物質の悪臭を消すものである。
【0059】
消臭剤としては、紙の製造時に紙の化学的性質や機械的性質(製紙強度等)を低下するものでなく、かつ長期間にわたって消臭性能を有するものであればどのようなものを使用してもよい。例えば、消臭剤として最も望ましい物質は、消臭剤が珪藻土や無機質材料などの吸着物質に吸着された臭気物質を室温大気条件下で、酸化して無臭の無害物質とする反応の触媒となるもの、あるいは、酸化して無臭または臭いを発生しにくい物質にする反応の触媒となるものである。
【0060】
しかしながら、臭気物質は他種類にわたるため、消臭剤の有する特性が上記性能に限定される必要はなく、複数の性能を有してもよい。例えば、消臭剤が、ある臭気物質に対しては上記示した触媒性能を有するが、別の臭気物質に対しては中和反応あるいは錯形成反応でその臭気物質を消臭剤中に閉じこめる性能を有するものであってもよい。
【0061】
上記の複数の性能を有する消臭剤の一例がフタロシアニン化合物である。以下、フタロシアニン化合物による各種臭気物質を臭いを発生しない物質または臭いを発生しにくい物質に変換するメカニズムについて詳細に説明する。
【0062】
[フタロシアニン化合物(外添剤用原料)]
フタロシアニン化合物には、種々のものがあるが、その一例として、フタロシアニンポリスルホン酸塩について説明する。フタロシアニンポリスルホン酸塩(以下、MPc(SO3 −)xと略す、ここでMは金属元素、例えば遷移金属元素などでありxは整数である)の一例として、MがCo、Feの場合を示すと、それぞれコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩および鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩となり、これらは、優れた消臭性能を示す。
【0063】
また、上記説明したCo、Fe以外のフタロシアニン化合物として、例えば、MがCu、Ni,Mgの場合である銅フタロシアニンポリスルホン酸塩、ニッケルフタロシアニンポリスルホン酸塩、およびマグネシウムフタロシアニンポリスルホン酸塩も消臭性能を示し、使用することができる。
【0064】
なお、フタロシアニン化合物は、上記説明したフタロシアニンポリスルホン酸塩に限ることはなく、フタロシアニンポリスルホン酸塩と同様の特性を示すものであれば、例えば硝酸塩、カルボン酸塩などの他の塩を用いることもできる。
【0065】
フタロシアニン化合物は、消臭剤として2つの性能を有する。第1の消臭性能は、ホルムアルデヒドなどの臭気物質の酸化反応に対して示す触媒作用であり、フタロシアニン化合物はホルムアルデヒドなどの臭気物質の酸化反応を促進する。第2の消臭性能は、アンモニアなどの臭気物質をフタロシアニン化合物中に閉じこめる性能であり、フタロシアニン化合物はアンモニアなどの臭気物質と中和反応あるいは錯形成反応を起こす。
【0066】
以下、フタロシアニン化合物の一例として、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を用いた場合の消臭性能について説明するが、他のフタロシアニン化合物の場合も同様である。
【0067】
[第1の消臭性能:触媒作用]
まず、フタロシアニン化合物の第1の消臭性能について、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を例として説明する。コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩は、下式1)〜3)に示すように、刺激臭を有するホルムアルデヒドなどの臭気物質に対しては、それらを酸化して無臭の無害物質(水と二酸化炭素)に変換する触媒となり、微量で悪臭と感じる硫黄系臭気、例えば、腐卵臭を有する硫化水素やタマネギ様臭を有するメルカプタン類(RSHと略す)などの臭気物質に対しては、それらを酸化して無臭の硫黄または臭いを発生しにくいジスルフィド(RSSRと略す)と水とに変換する触媒となる。他のフタロシアニン化合物、例えば、鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩などでも同様にこの第1の消臭性能を有する。
【0068】
1)ホルムアルデヒド
HCHO + O2 → CO2 + H2O
2)硫化水素
2H2S + O2 → 2S + 2H2O
3)メルカプタン類(RSH)
4RSH + 2O2 → 2RSSR + 2H2O
[第2の消臭性能:中和反応、錯形成反応]
次に、フタロシアニン化合物の第2の消臭性能について、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を例として説明する。コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩は、下式4)〜5)に示すように、アンモニアあるいはアミン類(RNH2と略す)などの臭気物質と中和反応し、あるいはアンモニアあるいはアミン類(RNH2と略す)などの臭気物質が水に溶解したイオン(NH4 +、RNH3 +)と錯形成反応し、これら臭気物質をフタロシアニン化合物中に閉じこめる。他のフタロシアニン化合物、例えば、鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩などでも同様にこの第2の消臭性能を有する。
【0069】
4)アンモニア
(中和反応)
4NH4 ++CoPc(SO3 −)x→CoPc(SO3 −NH4 +)x
(錯形成反応)
2NH3+CoPc(SO3 −)x→(NH3)2…CoPc(SO3 −)x
5)アミン類
(中和反応)
RNH3 ++CoPc(SO3 −)x→CoPc(SO3 −RH3 +)x
(錯形成反応)
RNH2+CoPc(SO3 −)x→(RNH2)2…CoPc(SO3 −)x
[表面紙力剤(外添剤用原料)]
外添剤用として用いる表面紙力剤は、表面強度の改善を図るために用いられ、例えば、酸化澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂などを用いるのが好ましい。
【0070】
[消臭珪藻土紙、消臭高填料紙に含まれる消臭剤の割合]
外添剤に含まれる消臭剤の割合は、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の所望する特性(消臭性能、白色紙の着色の程度等)および紙の製造コストによって変化するので、その割合は、要求される紙の色、製造コストおよび消臭性能などを考慮して適時決めればよい。
【0071】
例えば、消臭剤としてフタロシアニン化合物を用いる場合には、紙中に添加されるフタロシアニン化合物の量が多いほど消臭剤としての性能は向上するが、フタロシアニン化合物は高価なため添加量を増やすと製造コストが増加する。また、フタロシアニン化合物は、種々の色を有しているので、消臭剤を含まない珪藻土紙あるいは高填料紙(各々白色である)中に、消臭剤としてフタロシアニン化合物を所定量以上添加すると紙の色が白色から変化する。
【0072】
例えば、消臭剤としてフタロシアニン化合物であるコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を用いる場合、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩は青色であるので、消臭剤を含まない場合に白色を示す珪藻土紙あるいは高填料紙は、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩が所定量以上添加されると紙の色が白色から青白色に変化する。
【0073】
したがって、消臭剤としてコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を用いる場合の添加量は、例えば、「消臭珪藻土紙」や「消臭高填料紙」などの紙100部に対して、消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)が0.001〜0.1部(全紙中の0.001〜0.1重量%)であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.02部(全紙中の0.005〜0.02重量%)であることが好ましい(上記範囲では、紙の色はほぼ白色である)。
【0074】
上記のように全紙中に0.001〜0.1重量%の消臭剤を含む紙を製造する場合には、0.002〜0.6重量%の消臭剤を含む外添剤溶液をサイズプレスのニップ部に供給することが好ましい。また、サイズプレスには紙を供給速度110〜160m/分で供給することにより紙の表面に消臭剤を含む外添剤を塗工すればよい。
【0075】
また、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」への消臭剤を除いた外添剤の合計量は、「消臭珪藻土紙」や「消臭高填料紙」等の紙100部に対して、3〜5部(全紙中の3〜5重量%)であることが好ましい。また、消臭剤や表面紙力剤を含む外添剤の溶液は、抄造工程で用いるサイズプレス等に、酸化澱粉などの表面紙力剤を含む溶液と消臭剤を含む溶液との2溶液に分けて供給することが好ましい。
【0076】
なお、上記の説明は一例であり、例えばコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩の代わりに鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩を用いる場合にも上記説明したのと同様なことがいえる。すなわち、鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩は緑色を有しているため消臭剤を含まない「珪藻土紙」あるいは「高填料紙」に消臭剤として鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩を所定量以上添加すると、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩の場合と同様に紙の色が白色から緑白色に変化する。したがって、鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩を消臭剤として用いる場合には、消臭性能と紙の着色などを考慮して決定すればよい。
【0077】
[消臭珪藻土紙あるいは消臭高填料紙の配合:図1]
以上説明した各原料より「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を製造するための好適な配合およびより好適な配合をまとめたものを図1に示す。
【0078】
[消臭珪藻土紙の製造方法:図2]
上記説明した各原料を用いる本実施形態の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の製造方法について以下説明する。まず「消臭珪藻土紙」の製造方法について、図2を参照して説明する。
【0079】
[原料の調成]
図2の原料で、パルプ、珪藻土、内添剤、外添剤について説明する。所定のフリーネスを有するパルプは、上記説明した原料パルプから選択され、公知技術により調成された原料パルプから所定濃度、例えば、数%のパルプスラリーを作製し、このパルプスラリーを叩解装置であるDDRで所定のフリーネス(例えば、100〜200ml)となるまで叩解することによって得られる。
【0080】
珪藻土は、使用前に十分精製・乾燥されたもの、または乾燥品を焼成したものを用いる。
【0081】
また内添剤は、上記説明した中から選択されたサイズ剤、紙力増強剤、および歩留向上剤を所望の特性(製紙強度等)が得られるように所定量ずつ配合して得られる。また外添剤は、上記説明した中から選択された表面紙力剤と消臭剤とをそれぞれ所望の特性(表面強度または消臭性能、色)が得られる2つの溶液とし、この2溶液を抄造工程で用いるサイズプレス等にそれぞれ添加する。
【0082】
[調成工程]
次に、図2Aの調成工程(珪藻土入りパルプスラリーの調成)について説明する。上記調成された原料パルプ、珪藻土、内添剤を「珪藻土紙」中に所定濃度となるように配合してから均一に混合し、珪藻土入りパルプのインレット濃度、約1〜2重量%のスラリーを得る。
【0083】
[抄造工程]
次に、図2Aの抄造工程(「消臭珪藻土紙」の抄造)について説明する。調成工程で調成された珪藻土入りパルプスラリーは、長網多筒式抄紙機を用いて「消臭珪藻土紙」に抄造される。
【0084】
すなわち、所定濃度に調成された珪藻土入りパルプスラリーをストイックインレットに送り、ワイヤーパートにおいて珪藻土入りパルプスラリーをワイヤー上に流出させて、原料を脱水し紙層を形成させてから、プレスパートでさらに紙層の水分を低下させる。次のプレドライヤーパートで紙層を乾燥させてから、図2Bに示すサイズプレスを用いて「消臭珪藻土紙」の表面に外添剤を塗工後、再びアフタードライヤーパートにて乾燥させる。
【0085】
図2Bはサイズプレスの一例として2ロールサイズプレスを示したものである。紙層は、2本のゴム被覆ロールによってを挟み込まれ、ロールの上部に形成されるニップ部には供液部から外添剤の溶液、すなわち、酸化澱粉とポリアクリルアミド系樹脂を含む溶液(酸化澱粉とポリアクリルアミド系樹脂の合計5〜20重量%、残り水)と消臭剤を含む溶液(フタロシアニン化合物0.1〜3重量%、残り水)とがそれぞれ供給される。紙層は、図の上部から所定速度で下部にローラにより連続的に供給され、ニップ部で外添剤と所定時間接触することにより、紙層の表面から外添剤が塗工される。このように外添剤を紙層の表面に塗工することにより、紙の表面性状(表面強度、紙のインクにじみ、毛羽立ち)が改良され、さらに紙の表面近傍に消臭剤が含浸される。
【0086】
例えば、全紙中に0.001〜0.1重量%の消臭剤を含む紙を製造する場合には、0.002〜0.6重量%の消臭剤を含む外添剤溶液をサイズプレスのニップ部に供給する。また、サイズプレスには紙を供給速度110〜160m/分で供給することにより紙の表面に消臭剤を含む外添剤が含浸(塗工)される。
【0087】
なお、サイズプレスのニップ部に添加する外添剤は、上記の2系統(図2B)に限ることはなく、酸化澱粉などの表面紙力剤を所定濃度含む溶液と消臭剤を所定濃度含む溶液とを混合し1系統として添加してもよい。また、上記の2系統は、全紙中に含まれる消臭剤の濃度を変更する場合に適した方法である。
【0088】
[仕上工程]
次に、図2Aの仕上工程(表面仕上げ)について説明する。乾燥させた「消臭珪藻土紙」をスーパーキャレンダーに通紙することにより、所定の紙厚、表面平滑度を有する「消臭珪藻土紙」を得る。
【0089】
[消臭高填料紙の製造方法:図3]
次に、上記説明した各原料を用いる本実施形態の消臭剤を含む「消臭高填料紙」の製造方法について、図3を参照して説明する。
【0090】
なお図3の消臭剤を含む「消臭高填料紙」の製造方法は、図2の消臭剤を含む「消臭珪藻土紙」の製造方法と類似する製造方法である。従って、以下に示す「消臭高填料紙」の製造方法では、「消臭珪藻土紙」と共通する部分の内容の説明は省略し、異なる点についてのみ説明することとする。
【0091】
[原料の調成]
まず図3の原料(パルプ、珪藻土、無機質材料、内添剤、外添剤)について説明する。
【0092】
パルプ、珪藻土、無機質材料、内添剤、外添剤の調成方法は、「消臭珪藻土紙」の場合と同様であるので、その説明は重複するので省略する。
【0093】
また無機質材料は、上記説明した無機質材料から選択された無機質材料を必要に応じて1種あるいは2種以上複合して用いる。
【0094】
[調成工程]
次に、図3の調成工程(珪藻土および無機質材料入りパルプスラリーの調成)について説明する。上記調成された原料パルプ、珪藻土、無機質材料および内添する添加剤を「消臭高填料紙」中に所定濃度となるように配合してから均一に混合し、珪藻土および無機質材料を含むパルプのインレット濃度約1〜2重量%のスラリーを得る。
【0095】
[抄造工程]
次に、図3の抄造工程(「消臭高填料紙」の抄造)について説明する。調成工程で調成された珪藻土および無機質材料入りパルプスラリーは、「消臭珪藻土紙」で説明したのと同様の方法で長網多筒式抄紙機を用いて「消臭高填料紙」に抄造される。
【0096】
[仕上工程]
次に、図3の仕上工程(表面仕上げ)について説明する。乾燥させた「消臭高填料紙」をスーパーキャレンダーに通紙することにより、所定の紙厚、表面平滑度を有する「消臭高填料紙」を得る。
【0097】
このようにして得られる「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」は、製紙強度が強く、適正な層間強度等を有しているため加工時の作業性に富んでおりかつ表面が滑らかで、印刷適正に優れている。
【0098】
なお上記説明した「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙のいずれであってもよく、用いるパルプは、NBKP、LBKPなどの化学パルプの他、TMPなどの高歩留パルプを含む中質原紙あるいは回収古紙パルプも使用できる。
【0099】
また、内添剤としては、上記説明した紙力増強剤、歩留向上剤、サイズ剤の他に、例えば、顔料、着色染料、等の抄紙用補助薬品をパルプスラリーに必要に応じて添加してもよい。外添剤としては、上記説明した消臭剤、表面紙力剤の他に、例えば、サイズ剤や耐水化剤などの薬品を添加してもよい。
【0100】
また、抄造については、長網多筒式抄紙機に限ることはなく、公知の抄紙機で抄造してもよい。
【0101】
なお本実施形態では、上記のようにして得られた「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を、抄造した後、その原紙をスーパーキャレンダーに通紙して仕上げ処理しているが、キャレンダー圧力、ニップ数については特に限定されず、要求される品質に応じて適宜選択して使用することができる。またスーパーキャレンダーにオンライン方式で仕上げ処理する場合も同様である。
【0102】
【実施例】
<実施例1>
[紙の製紙強度およびワイヤー上の歩留まり率:図4、5]
上記説明した「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の製造方法に基づいて、各種配合の「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」をそれぞれ作製し、それらの製紙強度およびワンパスリテンションを測定した結果を図4および図5に示す。なお図中の消臭剤にはコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩が用いられ、それぞれ0.02重量%ずつ含まれている。
【0103】
また図4および図5には、本実施例の「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」と比較するために比較例1および比較例2の配合で作製した紙の製紙強度およびワイヤー上の歩留まり率を示すワンパスリテンションを評価した結果をあわせて示す。
【0104】
[例1「消臭珪藻土紙」の製紙強度など:図4]
図4の「消臭珪藻土紙1」〜「消臭珪藻土紙4」は、フリーネスが100mlまたは200mlのパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP))に珪藻土を全重量に対して30重量%または80重量%、内添剤として全重量の1.0重量%、外添剤として消臭剤を全重量の0.02重量%、消臭剤を除く外添剤を全重量の4.0重量%含有させたものである。
【0105】
また「比較例1−1」および「比較例1−2」は、「消臭珪藻土紙1」および「消臭珪藻土紙2」と同じ配合で、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)のフリーネスを450mlとしたものである。
【0106】
「消臭珪藻土紙1」〜「消臭珪藻土紙4」は、図4に示すように「消臭珪藻土紙」としての製紙強度を有することが示されたが、「比較例1−1」および「比較例1−2」は、「消臭珪藻土紙」としての製紙強度を有さないことが示された。また「消臭珪藻土紙1」〜「消臭珪藻土紙4」のワイヤー上の歩留まり率を示すワンパスリテンション(82〜93%)は、「比較例1−1」および「比較例1−2」のワンパスリテンション(59〜60%)に比べて高いことも示された。
【0107】
上記の結果から、珪藻土を全重量の30〜80重量%含む「消臭珪藻土紙」が壁紙としての特性(強度、ワンパスリテンションなど)を示すには、フリーネスが100〜200mlのパルプと所定量の内添剤(サイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤)を含む必要があることが示された。
【0108】
[例2「消臭高填料紙」の製紙強度など:図5]
図5の「消臭高填料紙1」〜「消臭高填料紙6」は、フリーネスが100mlまたは200mlのパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP))に珪藻土と無機質材料を全重量に対して30、50重量%または85重量%、内添剤を全重量の1.0重量%、外添剤として消臭剤を全重量の0.02重量%、消臭剤を除く外添剤を全重量の4.0重量%含有させたものである。
【0109】
また「比較例2−1」および「比較例2−2」は、「消臭高填料紙1」および「消臭高填料紙3」と同じ配合で、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)のフリーネスを450mlとしたものである。
【0110】
「消臭高填料紙1」〜「消臭高填料紙6」は、図5に示すように「消臭高填料紙」としての製紙強度を有することが示されたが、「比較例2−1」および「比較例2−2」は、「消臭高填料紙」としての製紙強度を有さないことが示された。また「消臭高填料紙1」〜「消臭高填料紙6」のワイヤー上の歩留まり率を示すワンパスリテンション(80〜90%)は、「比較例2−1」および「比較例2−2」のワンパスリテンション(56〜57%)に比べて高いことも示された。
【0111】
上記の結果から、珪藻土と無機質材料を全重量の30〜85重量%含む「消臭高填料紙」が壁紙としての特性(強度、ワンパスリテンションなど)を示すには、フリーネスが100〜200mlのパルプと所定量の内添剤(サイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤)を含む必要があることが示された。
【0112】
<実施例2>
[消臭性能:図6〜図7]
次に、本実施形態の「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の消臭性能について説明する。図1は、上記の製造方法で製造された充分な製紙強度を有し、かつ優れた消臭性能を示す消臭剤が添加されていても着色せず白色紙として使用できる「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」を示している。
【0113】
以下の説明では、これらの紙の一例として、珪藻土50重量%と、消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)0.005、0.01、0.02重量%と含む「消臭珪藻土紙」(試料1〜試料3)および消臭剤を含まない珪藻土紙(比較試料1)を用いて各種臭気物質に対する消臭性能試験を行った結果について説明する。
【0114】
なお、「消臭高填料紙」はすでに説明したように「消臭珪藻土紙」に含まれる珪藻土の一部を無機質材料にかえただけのものであり、珪藻土と無機質材料を含む「消臭高填料紙」の各種臭気物質に対する吸着性能は、珪藻土のみを含む「消臭珪藻土紙」と比べて若干異なる場合もある。しかしながら、「消臭高填料紙」と「消臭珪藻土紙」とが同じ消臭剤を含む場合には、吸着した各種臭気物質を上記説明したように臭いの発生しない物質あるいは臭いの発生しにくい物質に変換する消臭性能は本質的に同じである。したがって、「消臭高填料紙」における各種臭気物質に対する消臭性能試験は下記に示す「消臭珪藻土紙」と類似の傾向を示す。そこで、以下の説明では、「消臭珪藻土紙」を用いて行った各種臭気物質に対する消臭性能試験について説明し、「消臭高填料紙」の消臭性能試験は省略する。
【0115】
なお、消臭剤であるコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を0.03重量%以上含む「消臭珪藻土紙」は、その得られた紙の色が白色として許容される以上に着色したため、白色紙としての使用は困難と判断し消臭性能試験から除外した。
【0116】
[消臭試験]
まず、消臭性能の試験方法について説明する。
【0117】
消臭性能に用いる試料1〜試料3と比較試料1はそれぞれ10cm角に切断して、容積が5リットルのテトラパックに入れた。次に、室温で、既定濃度の臭気物質を含むガスを各テトラパックに入れ、各試料を臭気物質と接触させて、臭気物質が各試料に吸着される量を測定した。すなわち、所定時間(1,3、6時間、必要に応じて12,18時間)経過ごとに各テトラパックからガスを採取し、各試料に吸着されないで気相に残存するガス濃度をガス検知管で測定した。なお上記試験に用いた臭気物質とテトラパックに導入する各ガスの定濃度は、ホルムアルデヒド(100ppm)、硫化水素(15ppm)、メルカプタン類の一例としてメチルメルカプタン(15ppm)、アンモニア(40ppm)、アミン類の一例としてトリメチルアミン(70ppm)である。
【0118】
[高温脱離試験]
なお、ホルムアルデヒドについては、上記試験の後、下記に示す高温下における脱離試験を行った。すなわち、上記試験で18時間後のホルムアルデヒドのガス濃度を測定した後、テトラパックから各試料を取り出し、別の5リットルのテトラパックにそれぞれ移した。そして各テトラバックに3リットルの空気を入れたのち、各テトラバックをそれぞれ45℃の恒温器の中に入れ6時間保持した。次に、6時間後の各試料からテトラパック内に放出されたガス濃度をガス検知管で測定し、各試料に吸着されたホルムアルデヒドが45℃で脱離する量もあわせて測定した。
【0119】
以下、各ガスに対する試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能について説明する。
【0120】
[例3 ホルムアルデヒドの消臭性能]
[ホルムアルデヒドの消臭試験:図6A]
図6Aは臭気物質としてホルムアルデヒドを用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0121】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに100ppm導入されたホルムアルデヒドは、経過時間の増加(0→1→3→6→18Hr)とともに除々に減少(100→32.8→24.6→23.1→20.4ppm)し、18時間後に20.4ppmまで減少した。これは、珪藻土がホルムアルデヒドを徐々に吸着したためである。
【0122】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存するホルムアルデヒドの量は減少し、18時間後にはそれぞれ14.5ppm(試料1)、12.1ppm(試料2)、9.8ppm(試料3)となった。
【0123】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くのホルムアルデヒドを吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着されたホルムアルデヒドが消臭剤によって酸化され二酸化炭素と水に変換されるためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くのホルムアルデヒドを吸着することができることになる。
【0124】
[ホルムアルデヒドの高温脱離試験:図6D]
次に、図6Dを用いて、高温脱離試験について説明する。
【0125】
図6Dは、図6Aの消臭試験後に行ったホルムアルデヒドの高温脱離試験後の試料1〜試料3と比較試料1の比較結果である。
【0126】
すなわち、比較試料1では、室温で18時間後にテトラパック気相中に残留するホルムアルデヒドは20.4ppmであるので、導入されたホルムアルデヒド100ppmのうちの残り(79.6ppmに相当)が珪藻土に吸着されている。このホルムアルデヒドを吸着した消臭珪藻土紙を別のテトラパックに移して45℃の恒温装置で6時間放置するとホルムアルデヒドが珪藻土から脱離し4.5ppmのホルムアルデヒドがテトラパックに放出される。このことから珪藻土はホルムアルデヒドを強固に吸着し、環境温度が45℃まで上昇しても4.5ppm程度しかホルムアルデヒドを放出しないことが分かる。
【0127】
一方、試料1では、室温で18時間後にテトラパック気相中に残留するホルムアルデヒドは14.5ppmであるので、導入されたホルムアルデヒド100ppmのうち比較試料1に比べ多くのホルムアルデヒド(85.5ppmに相当)が珪藻土に吸着されているが、上記の環境温度45℃で試料1から放出されるホルムアルデヒドは2.8ppmである。このことから消臭剤を0.005%含む試料1は、珪藻土のみの比較試料1よりその放出量が少ないことが分かる。これは、消臭剤を含む試料1では吸着したホルムアルデヒドが消臭剤によって酸化され無臭の二酸化炭素と水に変換されたためである。
【0128】
試料2,3についても試料1と同様のことが言えるが、試料1に比べ消臭剤を多く含む試料2,3では、珪藻土に吸着されるホルムアルデヒドの量は増加する。しかし上記の環境温度45℃で試料2,3から放出されるホルムアルデヒドは2.3または1.0ppmと試料1の2.8ppmより減少していることから消臭剤を多く含むほど珪藻土に吸着されたホルムアルデヒドが消臭剤によってより多く酸化され珪藻土から放出されるホルムアルデヒドが減少することが分かる。
【0129】
以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くのホルムアルデヒドを吸着でき、かつホルムアルデヒドを酸化して無臭の二酸化炭素と水に変換できること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることがわかる。ただし、消臭剤が上記のように着色性の場合には、消臭剤の量が多すぎると白色の珪藻土紙や高填料紙に着色して白色紙が得られなくなるため実用的ではない。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0130】
[例4 硫化水素の消臭性能:図6B]
図6Bは臭気物質として硫化水素を用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0131】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに15ppm導入された硫化水素は、経過時間の増加(0→1→3→6Hr)とともに除々に減少(15→13.3→11.1→9.8ppm)し、6時間後に9.8ppmまで減少した。これは、珪藻土が硫化水素を徐々に吸着したためである。
【0132】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存する硫化水素の量は減少し、6時間後にはそれぞれ2.7ppm(試料1)、1.8ppm(試料2)、1.2ppm(試料3)となった。
【0133】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くの硫化水素を吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着された硫化水素が消臭剤によって酸化され無臭の硫黄と水に変換されるためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くの硫化水素を吸着できることになる。
【0134】
以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くの硫化水素を吸着でき、かつ硫化水素が消臭剤によって酸化され無臭の硫黄と水に変換されること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることは上述したホルムアルデヒドの消臭性能の比較結果と同様である。また、消臭剤の量が多すぎると白色の珪藻土紙や高填料紙が着色する点もホルムアルデヒドの場合と同様である。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0135】
[例5 メチルメルカプタンの消臭性能:図6C]
図6Cは臭気物質としてメチルメルカプタンを用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0136】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに15ppm導入されたメチルメルカプタンは、経過時間の増加(0→1→3→6→12Hr)とともに除々に減少(15→13.5→13.0→12.6→11.2ppm)し、12時間後に11.2ppmまで減少した。これは、珪藻土がメチルメルカプタンを徐々に吸着したためである。
【0137】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存するメチルメルカプタンの量は減少し、12時間後にはそれぞれ6.1ppm(試料1)、5.0ppm(試料2)、3.7ppm(試料3)となった。
【0138】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くのメチルメルカプタンを吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着されたメチルメルカプタンが消臭剤によって酸化されジスルフィド(RSSRと略す)と水に変換されるためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くのメチルメルカプタンを吸着できることになる。
【0139】
以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くのメチルメルカプタンを吸着でき、かつメチルメルカプタンを酸化して臭いとして飛びにくいジスルフィドに変換できること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることはホルムアルデヒドの消臭性能の比較結果と同様である。また、消臭剤の量が多すぎると白色の消臭珪藻土紙や高填料紙が着色する点も同様である。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0140】
[例6 アンモニアの消臭性能:図7A]
図7Aは臭気物質としてアンモニアを用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0141】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに40ppm導入された硫化水素は、経過時間の増加(0→1→3→6Hr)とともに除々に減少(40→4.9→3.5→3.0ppm)し、6時間後に3ppmまで減少した。これは、珪藻土がアンモニアを徐々に吸着したためである。
【0142】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存するアンモニアの量は減少し、6時間後にはそれぞれ2.4ppm(試料1)、1.8ppm(試料2)、1.2ppm(試料3)となった。
【0143】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くのアンモニアを吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着されたアンモニアが中和反応や錯生成反応によって消臭剤に取り込まれたためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くのアンモニアを吸着できることになる。 以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くのアンモニアを吸着でき、かつ珪藻土に吸着されたアンモニアを中和反応や錯生成反応によって消臭剤に取り込むことができること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることがわかる。また、消臭剤の量が多すぎると白色の珪藻土紙や高填料紙が着色する点は上述のホルムアルデヒドなどの場合と同様である。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0144】
[例7 トリメチルアミンの消臭性能:図6A]
図7Bは臭気物質としてアミン類としてトリメチルアミンを用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0145】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに70ppm導入された硫化水素は、経過時間の増加(0→1→3→6Hr)とともに除々に減少(70→18.6→11.8→7.6ppm)し、6時間後に7.6ppmまで減少した。これは、珪藻土がトリメチルアミンを徐々に吸着したためである。
【0146】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存するトリメチルアミンの量は減少し、6時間後にはそれぞれ4.2ppm(試料1)、3.4ppm(試料2)、2.2ppm(試料3)となった。
【0147】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くのトリメチルアミンを吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着されたトリメチルアミンが中和反応や錯生成反応によって消臭剤に取り込まれたためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くのトリメチルアミンを吸着できることになる。
【0148】
以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くのトリメチルアミン(アミン類)を吸着でき、かつ珪藻土に吸着されたトリメチルアミンを中和反応や錯生成反応によって消臭剤に取り込むことができること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることはアンモニアの消臭性能の比較結果と同様である。また、消臭剤の量が多すぎると白色の珪藻土紙や高填料紙が着色する点も同様である。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0149】
上記説明したように本実施形態で用いた各種紙は、紙中に各種臭気物質を吸着する吸着物質として珪藻土などと、この珪藻土などに吸着された臭気物質をその種類に応じて臭いを発生しない物質や臭いの発生しにくい物質に変換する消臭剤とを含む。そのためこれらの紙を例えば壁紙として使用すると、例えば、建材から発生する「シックハウス症候群」を引き起こす各種の臭気物質を吸着し、その臭気物質を臭いを発生しない物質や臭いの発生しにくい物質などに変換することができる。
【0150】
【発明の効果】
以上説明したように、住宅の壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張等に使用される紙であって、本発明の製造方法により製造された消臭剤を含む上記の各紙は、建材などから発生した臭気物質を紙に吸着でき、さらにこの吸着した臭気物質を臭いの発生しない物質または臭いの発生しにくい物質に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態の消臭剤を含む消臭珪藻土紙および消臭高填料紙の組成を示す図である。
【図2A】本発明に係る一実施形態の消臭珪藻土紙の製造方法を説明する図である。
【図2B】紙の表面近傍に消臭剤を添加する方法を説明する図である。
【図3】本発明に係る一実施形態の消臭高填料紙の製造方法を説明する図である。
【図4】本発明に係る一実施形態の消臭珪藻土紙の配合と製紙強度などの関係を説明する図である。
【図5】本発明に係る一実施形態の消臭高填料紙の配合と製紙強度などの関係を説明する図である。
【図6A】臭気物質としてホルムアルデヒドを用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
【図6B】臭気物質として硫化水素を用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
【図6C】臭気物質としてメチルメルカプタンを用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
【図6D】図6Aの消臭試験後に行ったホルムアルデヒドの高温脱離試験後の試料1〜試料3と比較試料1を比較した結果である。
【図7A】臭気物質としてアンモニアを用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
【図7B】臭気物質としてトリメチルアミンを用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅の壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張等に使用される紙およびそれらの製造方法に関し、特に、建材などから発生する臭気物質などを吸着し、吸着した臭気物質を臭いの発生しないあるいは臭いの発生しにくい物質に変換できる壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張等に使用される紙およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅の天井や壁などには様々な種類の建材が使用されており、またそれらの建材の表面には、意匠性を高めるために室内装飾用の化粧シート(例えば、合成樹脂製、布製、紙製など)を貼り合わせて使用する場合も多い。例えば、紙製の化粧シートとしては、壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張用紙等があり、壁紙は、押入内やトイレなどに使用される。
【0003】
これらの建材や化粧シートとして用いられる合成樹脂製シート(それらを接着する接着剤も含む)には、例えば、ホルムアルデヒドなど、いわゆる「シックハウス症候群」などを引き起こす化学物質(以下、臭気物質と称す)を含む場合があり、施工当初に特有の不快な臭気を発することがある。そのため、室内装飾用の化粧シートとして、耐久性の良い合成樹脂製シートの代わりに、布製や紙製の壁紙などを使用する場合も多くなっている。
【0004】
しかしながら、化粧シートとして紙製の壁紙を使用する場合には、壁紙はある程度の臭気物質を吸着するもののその吸着性能はそれほど大きくないため、建材から発生する「シックハウス症候群」を引き起こす臭気物質をより多く吸着する壁紙が望まれている。ただし、壁紙として使用する紙の厚さは薄いことから、「シックハウス症候群」などを引き起こす臭気物質などを多く吸着する壁紙を製造するためには、壁紙中にこの臭気物質を吸着する吸着物質を可能な限り多く添加する必要がある。
【0005】
この紙製の壁紙中に吸着物質を多く添加する試みとしては、例えば、炭素粉や珪藻土などの吸着物質を添加した紙(建物内装用シート)が開示されている(特許文献1)。ただし、紙中に炭素粉や珪藻土などの吸着物質を添加すると添加量によっては紙の強度が低下することが予想されるが、特許文献1では添加される珪藻土の量や製造方法を開示していないため、どの程度の珪藻土をどのような方法で添加すると所定強度を有する壁紙が形成できるか不明である。
【0006】
一方、特許文献2には、珪藻土とパルプをブレンドして形成される珪藻土を含有する裏打紙およびその製造方法が開示され、パルプ100重量部に対して珪藻土を20重量部より多く添加すると裏打紙としての強度が低下し、裏打紙として使用できないことが示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−212694号公報
【特許文献2】
特開昭59−100798号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記説明したように壁紙中に含まれる珪藻土などの吸着物質は、臭気物質を単に吸着して室内の大気中に含まれる臭気物質濃度を低減しその臭いを消しているだけである。このため、臭気物質が吸着物質の吸着可能な上限値を超えて存在する場合には、この吸着物質を含む裏打紙では上限値を超える臭気物質を吸着することはできない。また、吸着物質は臭気物質を単に吸着して消臭しているだけであるため、室内温度が高くなるなどの環境の変化に応じて一度吸着された臭気物質が吸着物質から大気中に放出され再度臭気を発する可能性も否定できない。
【0009】
このような問題を解決するためには、吸着物質に吸着した臭気物質をそのまま保持するのではなく、吸着物質に吸着された臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換することが重要である。また、変換した臭気物質を吸着物質から除去して吸着物質の吸着性能を回復させることも重要である。
【0010】
本発明は上記説明した従来技術の問題点を解決することを出発点としてなされたものであり、その目的は、住宅の壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張等に使用される紙であって、建材などから発生して紙に吸着された臭気物質を臭いの発生しない物質または臭いの発生しにくい物質に変換することが可能な上記の各紙およびその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る一実施形態の紙は、以下の構成を有する。すなわち、臭気物質を吸着することが可能な紙であって、前記吸着された臭気物質を臭いの発生しないまたは臭いの発生しにくい物質に変換する消臭剤を更に含むことを特徴とする。
【0012】
ここで、例えば、前記消臭剤は前記紙の表面近傍に含まれていることが好ましい。
【0013】
ここで、例えば、前記消臭剤はコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩または鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩などのフタロシアニン化合物を含むことが好ましい。
【0014】
ここで、例えば、前記消臭剤は前記紙中に0.001〜0.1重量%含まれることが好ましい。
【0015】
ここで、例えば、前記吸着された臭気物質にはホルムアルデヒド、メルカプタン類、および硫化水素の少なくとも1つを含み、前記フタロシアニン化合物は、該ホルムアルデヒド、メルカプタン類、および硫化水素の酸化反応を促進する触媒作用を有することが好ましい。
【0016】
ここで、例えば、前記吸着された臭気物質にはアンモニアおよびアミン類の少なくとも1つを含み、前記フタロシアニン化合物は、該アンモニアおよびアミン類と中和反応または錯形成反応をすることが好ましい。
【0017】
ここで、例えば、前記紙は、全重量の30〜80重量%の珪藻土と、所定のフリーネスとなるように叩解されたパルプと、前記珪藻土と前記パルプとの間の少なくとも結合強度を高める内添剤とを含むもの、あるいは、所定のフリーネスとなるように叩解されたパルプと、珪藻土と、無機質材料と、前記パルプ、前記珪藻土および前記無機質材料の間の少なくとも結合強度を高める内添剤とを含み、前記珪藻土と前記無機質材料とを合わせた量が全重量の30〜85重量%となるように調成されているものが好ましい。
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る一実施形態の紙の製造方法は、以下の構成を有する。すなわち、臭気物質を吸着することが可能な紙の製造方法であって、パルプスラリーから紙層を形成する紙層形成工程と、前記臭気物質を吸着する紙層の表面に前記吸着された臭気物質を臭いの発生しないまたは臭いの発生しにくい物質に変換する消臭剤を塗工する塗工工程とを有することを特徴とする。
【0019】
ここで、例えば、前記塗工工程は、サイズプレスを用いて行われ、前記サイズプレスの2本のロールで前記紙を挟み込み、該ロール間に形成されるニップ部に前記消臭剤を含む外添剤溶液を供給して、前記紙の表面に前記外添剤溶液を塗工することが好ましい。
【0020】
ここで、例えば、前記外添剤溶液として、表面紙力剤を含む溶液と前記消臭剤を含む溶液とを前記ニップ部に供給することが好ましい。
【0021】
ここで、例えば、前記消臭剤は、前記消臭剤が前記紙中に0.001〜0.1重量%含まれることが好ましい。
【0022】
ここで、例えば、前記消臭剤は、前記外添剤溶液中に0.002〜0.6重量%含まれることが好ましい。
【0023】
ここで、例えば、パルプを所定のフリーネスとなるように叩解する叩解工程と、前記叩解したパルプを、珪藻土と、さらに前記叩解したパルプと前記珪藻土との間の少なくとも結合強度を高める内添剤と混合してパルプスラリーを調成する調成工程とを更に有し、前記紙層形成工程では、前記パルプスラリーから形成される紙層に含まれる前記珪藻土が全量の30〜80重量%となるように調成されていることが好ましい。
【0024】
ここで、例えば、パルプを所定のフリーネスとなるように叩解する叩解工程と、前記叩解したパルプを、珪藻土と、無機質材料と、さらに前記叩解したパルプ、前記珪藻土および前記無機質材料の間の少なくとも結合強度を高める内添剤と混合してパルプスラリーを調成する調成工程とを更に有し、前記紙層形成工程では、前記パルプスラリーから形成される紙層に含まれる前記珪藻土と前記無機質材料とを合わせた量が全重量の30〜85重量%となるように調成されていることが好ましい。
【0025】
【発明の実施形態】
以下に図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態である「吸着物質(珪藻土)に吸着された臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換する消臭剤を含む珪藻土紙」あるいは「吸着物質(珪藻土、無機質材料)に吸着された臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換する消臭剤を含む高填料紙」およびそれらの製造方法を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素、数値などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
なお、本実施形態では、以下、「吸着物質に吸着された臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換する」ことを単に「消臭する」と称し、「臭気物質を吸着物質(珪藻土等)で吸着し消臭剤で消臭する珪藻土紙」を単に「消臭珪藻土紙」と称し、「臭気物質を吸着物質(珪藻土、無機質材料など)で吸着し消臭剤で消臭する高填料紙」を単に「消臭高填料紙」と称する。
【0027】
[定義]
まず本実施形態で用いる「消臭珪藻土紙」、「消臭高填料紙」および「フリーネス(ろ水度)」について以下に定義する。
【0028】
「消臭珪藻土紙」とは、所定のフリーネスを有するように叩解されたパルプ中に所定量の珪藻土と、結合強度やワンパスリテンションなどの特性を高める添加剤とを混合してパルプスラリーを調成し、このパルプスラリーから紙層を形成後、その紙層表面に臭気物質を消臭する消臭剤を塗工して得られる紙と定義する。
【0029】
「消臭高填料紙」とは、所定のフリーネスを有するように叩解されたパルプ中に所定量の珪藻土と、無機質材料と、結合強度などの特性を高める添加剤とを混合してスラリーを調成し、このスラリーから紙層を形成後、その表面に臭気物質を消臭する消臭剤を塗工して得られる紙と定義する。
【0030】
[フリーネス(ろ水度)]とは、パルプの水切れの程度を表す指標(数値)で、繊維の叩解の度合いを示すものである。パルプのフリーネスの測定方法は、日本工業規格JIS P8121で、「カナダ標準ろ水度試験方法」および「ショッパーろ水度試験方法」に規定されている。本実施形態では、フリーネス(ろ水度)を「カナダ標準ろ水度試験方法」を用いて測定したが、「ショッパーろ水度試験方法」を用いて測定してもよい。
【0031】
[消臭珪藻土紙、消臭高填料紙の原料]
次に、上記説明した「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を製造するために用いる原料について以下詳しく説明する。
【0032】
なお上記定義したように、「消臭高填料紙」の構成成分は、「消臭珪藻土紙」の構成成分に無機質材料成分をさらに添加したものであり、「消臭珪藻土紙」と「消臭高填料紙」の原料の違いは、無機質材料のみである。以下の説明では、「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の各原料は重複するものが多いので、それぞれの原料を区別して説明することなく一括して説明することとする。
【0033】
[パルプ(原料)]
本実施形態の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」で使用するパルプとしては、種々のパルプを使用することができる。例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材パルプと、サーモメカニカルパルプ(TMP)や砕木パルプ(GP)等の高収率パルプのいずれかを単独又は複合して使用することができる。
【0034】
また木材パルプに限らず、麻、こうぞ等のじん皮繊維、竹、わら、バガス、ケナフ等の非木材パルプも利用および配合することもできる。さらに用途に応じて、有機合成繊維、無機質繊維を混合しても良い。
【0035】
[パルプのフリーネス]
上記より選択されたパルプは、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」が壁紙などとして使用できる程度の製紙強度等を有するようにフリーネス(ろ水度)を調成して用いる。本実施形態のパルプのフリーネス(ろ水度)は、80〜300mlが好ましく、より好ましくは、100〜200mlとなるように叩解して使用する。
【0036】
また上記の範囲のフリーネスに調成されたパルプにおいて、フリーネスが小さい程、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の強度などが高くなり、珪藻土や無機質材料を多く含有することもできる。
【0037】
なお、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を作製する際に、フリーネス(ろ水度)が300ml以上のパルプを用いると、得られる「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の製紙強度は、壁紙等で使用できる程度の製紙強度に達することができず、使用できない。この点について、以下詳しく説明する。
【0038】
パルプを100〜200mlとなるように叩解すると繊維が柔軟になり、さらにフィブリル化が進んで繊維間の結合面積が増大し、繊維同士の絡みが増える。この繊維同士の絡みが多くあるパルプを珪藻土や無機質材料と混合すると、フィブリル化した繊維の交点部分に珪藻土や無機質材料が付着し、パルプと珪藻土あるいは無機質材料との接触面積が増加する。その結果、それらの間で発生する摩擦抵抗が増加し、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を作製するときに得られる紙の強度を高くすることができる。
【0039】
一方、フリーネス(ろ水度)が450mlのパルプは、叩解が進んでいないため、フィブリル化が少なく、繊維同士の絡みが少ない。そのため、この繊維同士の絡みが少ないパルプを珪藻土や無機質材料と混合すると、フィブリル化した繊維の交点部分に珪藻土や無機質材料が付着しにくいためパルプと珪藻土などとの間の接触面積はそれほど増加しない。その結果、それらの間で発生する摩擦抵抗の増加は少ないため、パルプに珪藻土あるいは無機質材料などを含有させて珪藻土紙や高填料紙を作製するときに得られる紙の強度を高くすることができない。
【0040】
なお、「消臭珪藻土紙」中にパルプは任意量添加することができるが、「消臭珪藻土紙」の消臭性能や調湿性能を高めるために本実施形態では、パルプは「消臭珪藻土紙」の全重量の70重量部以下となるように添加するのが望ましい。また同様に、「消臭高填料紙」中にもパルプは任意量添加することができる。
【0041】
[珪藻土(原料)]
珪藻土は、藻類が珪藻殻となって長い間地層に堆積し化石化したものであり、主成分は、SiO2(シリカ)である。本実施形態の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」で使用する珪藻土の粒子径は、5〜100ミクロン、好ましくは10〜50ミクロンに整粒されたものが望ましい。
【0042】
そのために天然に存在する珪藻土は使用前に十分精製・乾燥されたものまたは乾燥品を焼成したものを用いる。
【0043】
このように調成された珪藻土は、水蒸気の吸湿・放湿性能および有害ガスの消臭性能に優れていることから建材などから放出される有害ガスを吸着しやすく、また室内の湿度に合わせて水蒸気を吸収したり、放湿しやすいくなる。珪藻土は、これらの特性を生かして、建材の他に、ろ過助剤、吸着・脱臭剤、充填材などに幅広く利用されている。
【0044】
なお本実施形態では、「消臭珪藻土紙」中に珪藻土を好ましくは全重量の30〜80重量%、より好ましくは、全重量の50〜80重量%添加することができる。また「消臭珪藻土紙」中の珪藻土の割合は、珪藻土紙の特性に応じて選択することができ、例えば、珪藻土紙の吸着性能や調湿性能を高めるためには、「消臭珪藻土紙」中の珪藻土の割合を増やせばよい。
【0045】
また同様に、本実施形態では、「消臭高填料紙」中に珪藻土を好ましくは無機質材料と合わせて全重量の30〜85重量%、より好ましくは、全重量の50〜85重量%添加することができる。なお「消臭高填料紙」中の珪藻土の割合は、特に限定する必要が無く、使用する「消臭高填料紙」の特性に応じて選択することができる。例えば、珪藻土の有する吸着性能や調湿性能をより利用したい場合には、「消臭高填料紙」中の珪藻土の割合を増やせばよい。
【0046】
[無機質材料(原料)]
本実施形態の「消臭高填料紙」で使用する無機質材料としては、吸着性能、調湿性能を示し、難燃性の材料であれば天然のものであれ人工のものであれどのようなものであっても良い。例えば、水酸化アルミニウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、炭酸カルシウムあるいは二酸化チタン、水酸化チタン等のチタン酸化物又は水酸化物、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸性白土、珪藻頁岩、ケイ酸塩鉱物等を単独あるいは数種類組み合わせて使用することができる。
【0047】
このような無機質材料は、水蒸気の吸湿・放湿性能および有害ガスの吸着性能に優れることから建材などから放出される有害ガスを吸着しやすく、また室内の湿度に合わせて水蒸気を吸収したり、放湿しやすいくなる。また難燃性や不燃性の特性を持たせることもできる。
【0048】
本実施形態では、無機質材料を「消臭高填料紙」中に好ましくは珪藻土と合わせて全重量の30〜85重量%、より好ましくは、全重量の50〜85重量%添加することができる。なお「消臭高填料紙」中の無機質材料の割合は、特に限定する必要が無く、使用する「消臭高填料紙」の特性に応じて選択することができる。例えば、無機質材料の有する吸着性能、調湿性能および難燃性の特性をより利用したい場合には、「消臭高填料紙」中の無機質材料の割合を増やせばよく、無機質材料の有する吸着性能、調湿性能および他の特性を利用したい場合には、「消臭高填料紙」中の無機質材料の割合を増やせばよい。また「消臭高填料紙」中の無機質材料の種類は、上記説明したものから1種あるいは2種以上を所定量ずつ複合して使用すれば良く、その種類および量については特に限定する必要が無く、使用する「消臭高填料紙」の特性に応じて選択することができる。
【0049】
[内添剤(原料)]
本実施形態の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」で使用する添加剤には内添剤(内添用に用いる添加剤)と外添剤(外添用に用いる添加剤)がある。内添剤は、珪藻土とパルプとの間の結合強度等の特性、あるいは、珪藻土とパルプあるいは無機質材料との間の結合強度やワンパスリテンション等の特性を高めるために用いられるもので紙層中に均一に分散される添加剤である。内添剤には、下記に示するサイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤などを含むことが好ましい。
【0050】
[サイズ剤(内添剤用原料)]
内添剤用のサイズ剤は、パルプ(の主成分であるセルロース)を疎水化する構造を含む樹脂が好ましく、例えば、オレフィン系樹脂、アルキルケテンダイマー、スチレンアクリル樹脂、ロジンなどを用いるのが好ましい。
【0051】
[紙力増強剤(内添剤用原料)]
内添剤用の紙力増強剤は、パルプの水酸基と水素結合を形成したり、3次元化した網目構造でパルプを固定して強度等を増加させる性能を有する水溶性樹脂が好ましく、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂などを用いるのが好ましい。
【0052】
[歩留向上剤(内添剤用原料)]
内添剤用の歩留向上剤は、ワイヤーパートでのワンパスリテンションを向上させる水溶性樹脂が好ましく、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド縮合物および多価フェノール系樹脂などを用いるのが好ましい。
【0053】
なお上記説明した内添剤の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」に添加する量は、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」中の各成分の割合および所望する特性(製紙強度等)によって変化するが、内添剤(サイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤)の合計量は、「消臭珪藻土紙」の場合には、全重量に対して0.2〜1.7重量%であることが好ましく、「消臭高填料紙」の場合には、全重量に対して0.2〜1.7重量%であることが好ましい。
【0054】
[内添剤中の各成分の割合]
また内添剤中のサイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤の各割合もまた、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」中の各成分の割合および所望する特性(強度等)によって変化する。例えば、「消臭珪藻土紙」の場合には、全重量に対してサイズ剤が0.1〜1.0重量%、紙力増強剤が0.1〜0.5重量%、歩留向上剤が0.05〜0.2重量%であることが好ましく、「消臭高填料紙」の場合には、全重量に対してサイズ剤が0.1〜1.0重量%、紙力増強剤が0.1〜0.5重量%、歩留向上剤が0.05〜0.2重量%であることが好ましい。
【0055】
これらの添加剤は、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を製造する途中で調成される「消臭珪藻土紙」用スラリーあるいは「消臭高填料紙」用スラリー中に添加され抄造により紙中に均一に分散されることで、所定の製紙強度等を有する「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」が作製される。また必要に応じて、上記説明した内添剤中に防かび剤などを更に添加しても良い。
【0056】
また上記のサイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤は、作製する「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の特性に応じて、それぞれ最適な種類を選択し、さらに各添加量の割合いを「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」に適した量に最適化することにより、更に「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の強度等を向上することができる。
【0057】
[外添剤(原料)]
本実施形態で使用する添加剤は、上記説明した内添剤の他に外添剤がある。外添剤は、スラリーから形成される紙層の表面近傍のみに塗工され、紙の表面性状を改良し紙層の表面近傍に消臭物質を浸積する。外添剤の塗工方法は種々の方法を用いることができる。例えば、抄造工程で用いるサイズプレスのニップ部に酸化澱粉などの表面紙力剤を所定濃度含む溶液と、消臭剤を所定濃度含む溶液とを2系統で添加し、この溶液中に紙層を所定速度で通過させることで外添剤を紙層の表面近傍のみに塗工してもよい。また、サイズプレスのニップ部に添加する外添剤は、上記の2系統の他に酸化澱粉などの表面紙力剤を所定濃度含む溶液と消臭剤を所定濃度含む溶液とを混合し1系統として添加してもよい。
【0058】
[消臭剤(外添剤用原料)]
消臭剤は、珪藻土や無機質材料などの吸着物質を含む紙の表面近傍に存在し、「吸着物質に吸着した臭気物質を臭いを発生しないものや臭いを発生しにくいものに変換」(消臭)して臭気物質の悪臭を消すものである。
【0059】
消臭剤としては、紙の製造時に紙の化学的性質や機械的性質(製紙強度等)を低下するものでなく、かつ長期間にわたって消臭性能を有するものであればどのようなものを使用してもよい。例えば、消臭剤として最も望ましい物質は、消臭剤が珪藻土や無機質材料などの吸着物質に吸着された臭気物質を室温大気条件下で、酸化して無臭の無害物質とする反応の触媒となるもの、あるいは、酸化して無臭または臭いを発生しにくい物質にする反応の触媒となるものである。
【0060】
しかしながら、臭気物質は他種類にわたるため、消臭剤の有する特性が上記性能に限定される必要はなく、複数の性能を有してもよい。例えば、消臭剤が、ある臭気物質に対しては上記示した触媒性能を有するが、別の臭気物質に対しては中和反応あるいは錯形成反応でその臭気物質を消臭剤中に閉じこめる性能を有するものであってもよい。
【0061】
上記の複数の性能を有する消臭剤の一例がフタロシアニン化合物である。以下、フタロシアニン化合物による各種臭気物質を臭いを発生しない物質または臭いを発生しにくい物質に変換するメカニズムについて詳細に説明する。
【0062】
[フタロシアニン化合物(外添剤用原料)]
フタロシアニン化合物には、種々のものがあるが、その一例として、フタロシアニンポリスルホン酸塩について説明する。フタロシアニンポリスルホン酸塩(以下、MPc(SO3 −)xと略す、ここでMは金属元素、例えば遷移金属元素などでありxは整数である)の一例として、MがCo、Feの場合を示すと、それぞれコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩および鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩となり、これらは、優れた消臭性能を示す。
【0063】
また、上記説明したCo、Fe以外のフタロシアニン化合物として、例えば、MがCu、Ni,Mgの場合である銅フタロシアニンポリスルホン酸塩、ニッケルフタロシアニンポリスルホン酸塩、およびマグネシウムフタロシアニンポリスルホン酸塩も消臭性能を示し、使用することができる。
【0064】
なお、フタロシアニン化合物は、上記説明したフタロシアニンポリスルホン酸塩に限ることはなく、フタロシアニンポリスルホン酸塩と同様の特性を示すものであれば、例えば硝酸塩、カルボン酸塩などの他の塩を用いることもできる。
【0065】
フタロシアニン化合物は、消臭剤として2つの性能を有する。第1の消臭性能は、ホルムアルデヒドなどの臭気物質の酸化反応に対して示す触媒作用であり、フタロシアニン化合物はホルムアルデヒドなどの臭気物質の酸化反応を促進する。第2の消臭性能は、アンモニアなどの臭気物質をフタロシアニン化合物中に閉じこめる性能であり、フタロシアニン化合物はアンモニアなどの臭気物質と中和反応あるいは錯形成反応を起こす。
【0066】
以下、フタロシアニン化合物の一例として、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を用いた場合の消臭性能について説明するが、他のフタロシアニン化合物の場合も同様である。
【0067】
[第1の消臭性能:触媒作用]
まず、フタロシアニン化合物の第1の消臭性能について、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を例として説明する。コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩は、下式1)〜3)に示すように、刺激臭を有するホルムアルデヒドなどの臭気物質に対しては、それらを酸化して無臭の無害物質(水と二酸化炭素)に変換する触媒となり、微量で悪臭と感じる硫黄系臭気、例えば、腐卵臭を有する硫化水素やタマネギ様臭を有するメルカプタン類(RSHと略す)などの臭気物質に対しては、それらを酸化して無臭の硫黄または臭いを発生しにくいジスルフィド(RSSRと略す)と水とに変換する触媒となる。他のフタロシアニン化合物、例えば、鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩などでも同様にこの第1の消臭性能を有する。
【0068】
1)ホルムアルデヒド
HCHO + O2 → CO2 + H2O
2)硫化水素
2H2S + O2 → 2S + 2H2O
3)メルカプタン類(RSH)
4RSH + 2O2 → 2RSSR + 2H2O
[第2の消臭性能:中和反応、錯形成反応]
次に、フタロシアニン化合物の第2の消臭性能について、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を例として説明する。コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩は、下式4)〜5)に示すように、アンモニアあるいはアミン類(RNH2と略す)などの臭気物質と中和反応し、あるいはアンモニアあるいはアミン類(RNH2と略す)などの臭気物質が水に溶解したイオン(NH4 +、RNH3 +)と錯形成反応し、これら臭気物質をフタロシアニン化合物中に閉じこめる。他のフタロシアニン化合物、例えば、鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩などでも同様にこの第2の消臭性能を有する。
【0069】
4)アンモニア
(中和反応)
4NH4 ++CoPc(SO3 −)x→CoPc(SO3 −NH4 +)x
(錯形成反応)
2NH3+CoPc(SO3 −)x→(NH3)2…CoPc(SO3 −)x
5)アミン類
(中和反応)
RNH3 ++CoPc(SO3 −)x→CoPc(SO3 −RH3 +)x
(錯形成反応)
RNH2+CoPc(SO3 −)x→(RNH2)2…CoPc(SO3 −)x
[表面紙力剤(外添剤用原料)]
外添剤用として用いる表面紙力剤は、表面強度の改善を図るために用いられ、例えば、酸化澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂などを用いるのが好ましい。
【0070】
[消臭珪藻土紙、消臭高填料紙に含まれる消臭剤の割合]
外添剤に含まれる消臭剤の割合は、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の所望する特性(消臭性能、白色紙の着色の程度等)および紙の製造コストによって変化するので、その割合は、要求される紙の色、製造コストおよび消臭性能などを考慮して適時決めればよい。
【0071】
例えば、消臭剤としてフタロシアニン化合物を用いる場合には、紙中に添加されるフタロシアニン化合物の量が多いほど消臭剤としての性能は向上するが、フタロシアニン化合物は高価なため添加量を増やすと製造コストが増加する。また、フタロシアニン化合物は、種々の色を有しているので、消臭剤を含まない珪藻土紙あるいは高填料紙(各々白色である)中に、消臭剤としてフタロシアニン化合物を所定量以上添加すると紙の色が白色から変化する。
【0072】
例えば、消臭剤としてフタロシアニン化合物であるコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を用いる場合、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩は青色であるので、消臭剤を含まない場合に白色を示す珪藻土紙あるいは高填料紙は、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩が所定量以上添加されると紙の色が白色から青白色に変化する。
【0073】
したがって、消臭剤としてコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を用いる場合の添加量は、例えば、「消臭珪藻土紙」や「消臭高填料紙」などの紙100部に対して、消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)が0.001〜0.1部(全紙中の0.001〜0.1重量%)であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.02部(全紙中の0.005〜0.02重量%)であることが好ましい(上記範囲では、紙の色はほぼ白色である)。
【0074】
上記のように全紙中に0.001〜0.1重量%の消臭剤を含む紙を製造する場合には、0.002〜0.6重量%の消臭剤を含む外添剤溶液をサイズプレスのニップ部に供給することが好ましい。また、サイズプレスには紙を供給速度110〜160m/分で供給することにより紙の表面に消臭剤を含む外添剤を塗工すればよい。
【0075】
また、「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」への消臭剤を除いた外添剤の合計量は、「消臭珪藻土紙」や「消臭高填料紙」等の紙100部に対して、3〜5部(全紙中の3〜5重量%)であることが好ましい。また、消臭剤や表面紙力剤を含む外添剤の溶液は、抄造工程で用いるサイズプレス等に、酸化澱粉などの表面紙力剤を含む溶液と消臭剤を含む溶液との2溶液に分けて供給することが好ましい。
【0076】
なお、上記の説明は一例であり、例えばコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩の代わりに鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩を用いる場合にも上記説明したのと同様なことがいえる。すなわち、鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩は緑色を有しているため消臭剤を含まない「珪藻土紙」あるいは「高填料紙」に消臭剤として鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩を所定量以上添加すると、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩の場合と同様に紙の色が白色から緑白色に変化する。したがって、鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩を消臭剤として用いる場合には、消臭性能と紙の着色などを考慮して決定すればよい。
【0077】
[消臭珪藻土紙あるいは消臭高填料紙の配合:図1]
以上説明した各原料より「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を製造するための好適な配合およびより好適な配合をまとめたものを図1に示す。
【0078】
[消臭珪藻土紙の製造方法:図2]
上記説明した各原料を用いる本実施形態の「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」の製造方法について以下説明する。まず「消臭珪藻土紙」の製造方法について、図2を参照して説明する。
【0079】
[原料の調成]
図2の原料で、パルプ、珪藻土、内添剤、外添剤について説明する。所定のフリーネスを有するパルプは、上記説明した原料パルプから選択され、公知技術により調成された原料パルプから所定濃度、例えば、数%のパルプスラリーを作製し、このパルプスラリーを叩解装置であるDDRで所定のフリーネス(例えば、100〜200ml)となるまで叩解することによって得られる。
【0080】
珪藻土は、使用前に十分精製・乾燥されたもの、または乾燥品を焼成したものを用いる。
【0081】
また内添剤は、上記説明した中から選択されたサイズ剤、紙力増強剤、および歩留向上剤を所望の特性(製紙強度等)が得られるように所定量ずつ配合して得られる。また外添剤は、上記説明した中から選択された表面紙力剤と消臭剤とをそれぞれ所望の特性(表面強度または消臭性能、色)が得られる2つの溶液とし、この2溶液を抄造工程で用いるサイズプレス等にそれぞれ添加する。
【0082】
[調成工程]
次に、図2Aの調成工程(珪藻土入りパルプスラリーの調成)について説明する。上記調成された原料パルプ、珪藻土、内添剤を「珪藻土紙」中に所定濃度となるように配合してから均一に混合し、珪藻土入りパルプのインレット濃度、約1〜2重量%のスラリーを得る。
【0083】
[抄造工程]
次に、図2Aの抄造工程(「消臭珪藻土紙」の抄造)について説明する。調成工程で調成された珪藻土入りパルプスラリーは、長網多筒式抄紙機を用いて「消臭珪藻土紙」に抄造される。
【0084】
すなわち、所定濃度に調成された珪藻土入りパルプスラリーをストイックインレットに送り、ワイヤーパートにおいて珪藻土入りパルプスラリーをワイヤー上に流出させて、原料を脱水し紙層を形成させてから、プレスパートでさらに紙層の水分を低下させる。次のプレドライヤーパートで紙層を乾燥させてから、図2Bに示すサイズプレスを用いて「消臭珪藻土紙」の表面に外添剤を塗工後、再びアフタードライヤーパートにて乾燥させる。
【0085】
図2Bはサイズプレスの一例として2ロールサイズプレスを示したものである。紙層は、2本のゴム被覆ロールによってを挟み込まれ、ロールの上部に形成されるニップ部には供液部から外添剤の溶液、すなわち、酸化澱粉とポリアクリルアミド系樹脂を含む溶液(酸化澱粉とポリアクリルアミド系樹脂の合計5〜20重量%、残り水)と消臭剤を含む溶液(フタロシアニン化合物0.1〜3重量%、残り水)とがそれぞれ供給される。紙層は、図の上部から所定速度で下部にローラにより連続的に供給され、ニップ部で外添剤と所定時間接触することにより、紙層の表面から外添剤が塗工される。このように外添剤を紙層の表面に塗工することにより、紙の表面性状(表面強度、紙のインクにじみ、毛羽立ち)が改良され、さらに紙の表面近傍に消臭剤が含浸される。
【0086】
例えば、全紙中に0.001〜0.1重量%の消臭剤を含む紙を製造する場合には、0.002〜0.6重量%の消臭剤を含む外添剤溶液をサイズプレスのニップ部に供給する。また、サイズプレスには紙を供給速度110〜160m/分で供給することにより紙の表面に消臭剤を含む外添剤が含浸(塗工)される。
【0087】
なお、サイズプレスのニップ部に添加する外添剤は、上記の2系統(図2B)に限ることはなく、酸化澱粉などの表面紙力剤を所定濃度含む溶液と消臭剤を所定濃度含む溶液とを混合し1系統として添加してもよい。また、上記の2系統は、全紙中に含まれる消臭剤の濃度を変更する場合に適した方法である。
【0088】
[仕上工程]
次に、図2Aの仕上工程(表面仕上げ)について説明する。乾燥させた「消臭珪藻土紙」をスーパーキャレンダーに通紙することにより、所定の紙厚、表面平滑度を有する「消臭珪藻土紙」を得る。
【0089】
[消臭高填料紙の製造方法:図3]
次に、上記説明した各原料を用いる本実施形態の消臭剤を含む「消臭高填料紙」の製造方法について、図3を参照して説明する。
【0090】
なお図3の消臭剤を含む「消臭高填料紙」の製造方法は、図2の消臭剤を含む「消臭珪藻土紙」の製造方法と類似する製造方法である。従って、以下に示す「消臭高填料紙」の製造方法では、「消臭珪藻土紙」と共通する部分の内容の説明は省略し、異なる点についてのみ説明することとする。
【0091】
[原料の調成]
まず図3の原料(パルプ、珪藻土、無機質材料、内添剤、外添剤)について説明する。
【0092】
パルプ、珪藻土、無機質材料、内添剤、外添剤の調成方法は、「消臭珪藻土紙」の場合と同様であるので、その説明は重複するので省略する。
【0093】
また無機質材料は、上記説明した無機質材料から選択された無機質材料を必要に応じて1種あるいは2種以上複合して用いる。
【0094】
[調成工程]
次に、図3の調成工程(珪藻土および無機質材料入りパルプスラリーの調成)について説明する。上記調成された原料パルプ、珪藻土、無機質材料および内添する添加剤を「消臭高填料紙」中に所定濃度となるように配合してから均一に混合し、珪藻土および無機質材料を含むパルプのインレット濃度約1〜2重量%のスラリーを得る。
【0095】
[抄造工程]
次に、図3の抄造工程(「消臭高填料紙」の抄造)について説明する。調成工程で調成された珪藻土および無機質材料入りパルプスラリーは、「消臭珪藻土紙」で説明したのと同様の方法で長網多筒式抄紙機を用いて「消臭高填料紙」に抄造される。
【0096】
[仕上工程]
次に、図3の仕上工程(表面仕上げ)について説明する。乾燥させた「消臭高填料紙」をスーパーキャレンダーに通紙することにより、所定の紙厚、表面平滑度を有する「消臭高填料紙」を得る。
【0097】
このようにして得られる「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」は、製紙強度が強く、適正な層間強度等を有しているため加工時の作業性に富んでおりかつ表面が滑らかで、印刷適正に優れている。
【0098】
なお上記説明した「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙のいずれであってもよく、用いるパルプは、NBKP、LBKPなどの化学パルプの他、TMPなどの高歩留パルプを含む中質原紙あるいは回収古紙パルプも使用できる。
【0099】
また、内添剤としては、上記説明した紙力増強剤、歩留向上剤、サイズ剤の他に、例えば、顔料、着色染料、等の抄紙用補助薬品をパルプスラリーに必要に応じて添加してもよい。外添剤としては、上記説明した消臭剤、表面紙力剤の他に、例えば、サイズ剤や耐水化剤などの薬品を添加してもよい。
【0100】
また、抄造については、長網多筒式抄紙機に限ることはなく、公知の抄紙機で抄造してもよい。
【0101】
なお本実施形態では、上記のようにして得られた「消臭珪藻土紙」あるいは「消臭高填料紙」を、抄造した後、その原紙をスーパーキャレンダーに通紙して仕上げ処理しているが、キャレンダー圧力、ニップ数については特に限定されず、要求される品質に応じて適宜選択して使用することができる。またスーパーキャレンダーにオンライン方式で仕上げ処理する場合も同様である。
【0102】
【実施例】
<実施例1>
[紙の製紙強度およびワイヤー上の歩留まり率:図4、5]
上記説明した「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の製造方法に基づいて、各種配合の「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」をそれぞれ作製し、それらの製紙強度およびワンパスリテンションを測定した結果を図4および図5に示す。なお図中の消臭剤にはコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩が用いられ、それぞれ0.02重量%ずつ含まれている。
【0103】
また図4および図5には、本実施例の「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」と比較するために比較例1および比較例2の配合で作製した紙の製紙強度およびワイヤー上の歩留まり率を示すワンパスリテンションを評価した結果をあわせて示す。
【0104】
[例1「消臭珪藻土紙」の製紙強度など:図4]
図4の「消臭珪藻土紙1」〜「消臭珪藻土紙4」は、フリーネスが100mlまたは200mlのパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP))に珪藻土を全重量に対して30重量%または80重量%、内添剤として全重量の1.0重量%、外添剤として消臭剤を全重量の0.02重量%、消臭剤を除く外添剤を全重量の4.0重量%含有させたものである。
【0105】
また「比較例1−1」および「比較例1−2」は、「消臭珪藻土紙1」および「消臭珪藻土紙2」と同じ配合で、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)のフリーネスを450mlとしたものである。
【0106】
「消臭珪藻土紙1」〜「消臭珪藻土紙4」は、図4に示すように「消臭珪藻土紙」としての製紙強度を有することが示されたが、「比較例1−1」および「比較例1−2」は、「消臭珪藻土紙」としての製紙強度を有さないことが示された。また「消臭珪藻土紙1」〜「消臭珪藻土紙4」のワイヤー上の歩留まり率を示すワンパスリテンション(82〜93%)は、「比較例1−1」および「比較例1−2」のワンパスリテンション(59〜60%)に比べて高いことも示された。
【0107】
上記の結果から、珪藻土を全重量の30〜80重量%含む「消臭珪藻土紙」が壁紙としての特性(強度、ワンパスリテンションなど)を示すには、フリーネスが100〜200mlのパルプと所定量の内添剤(サイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤)を含む必要があることが示された。
【0108】
[例2「消臭高填料紙」の製紙強度など:図5]
図5の「消臭高填料紙1」〜「消臭高填料紙6」は、フリーネスが100mlまたは200mlのパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP))に珪藻土と無機質材料を全重量に対して30、50重量%または85重量%、内添剤を全重量の1.0重量%、外添剤として消臭剤を全重量の0.02重量%、消臭剤を除く外添剤を全重量の4.0重量%含有させたものである。
【0109】
また「比較例2−1」および「比較例2−2」は、「消臭高填料紙1」および「消臭高填料紙3」と同じ配合で、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)のフリーネスを450mlとしたものである。
【0110】
「消臭高填料紙1」〜「消臭高填料紙6」は、図5に示すように「消臭高填料紙」としての製紙強度を有することが示されたが、「比較例2−1」および「比較例2−2」は、「消臭高填料紙」としての製紙強度を有さないことが示された。また「消臭高填料紙1」〜「消臭高填料紙6」のワイヤー上の歩留まり率を示すワンパスリテンション(80〜90%)は、「比較例2−1」および「比較例2−2」のワンパスリテンション(56〜57%)に比べて高いことも示された。
【0111】
上記の結果から、珪藻土と無機質材料を全重量の30〜85重量%含む「消臭高填料紙」が壁紙としての特性(強度、ワンパスリテンションなど)を示すには、フリーネスが100〜200mlのパルプと所定量の内添剤(サイズ剤、紙力増強剤および歩留向上剤)を含む必要があることが示された。
【0112】
<実施例2>
[消臭性能:図6〜図7]
次に、本実施形態の「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」の消臭性能について説明する。図1は、上記の製造方法で製造された充分な製紙強度を有し、かつ優れた消臭性能を示す消臭剤が添加されていても着色せず白色紙として使用できる「消臭珪藻土紙」および「消臭高填料紙」を示している。
【0113】
以下の説明では、これらの紙の一例として、珪藻土50重量%と、消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)0.005、0.01、0.02重量%と含む「消臭珪藻土紙」(試料1〜試料3)および消臭剤を含まない珪藻土紙(比較試料1)を用いて各種臭気物質に対する消臭性能試験を行った結果について説明する。
【0114】
なお、「消臭高填料紙」はすでに説明したように「消臭珪藻土紙」に含まれる珪藻土の一部を無機質材料にかえただけのものであり、珪藻土と無機質材料を含む「消臭高填料紙」の各種臭気物質に対する吸着性能は、珪藻土のみを含む「消臭珪藻土紙」と比べて若干異なる場合もある。しかしながら、「消臭高填料紙」と「消臭珪藻土紙」とが同じ消臭剤を含む場合には、吸着した各種臭気物質を上記説明したように臭いの発生しない物質あるいは臭いの発生しにくい物質に変換する消臭性能は本質的に同じである。したがって、「消臭高填料紙」における各種臭気物質に対する消臭性能試験は下記に示す「消臭珪藻土紙」と類似の傾向を示す。そこで、以下の説明では、「消臭珪藻土紙」を用いて行った各種臭気物質に対する消臭性能試験について説明し、「消臭高填料紙」の消臭性能試験は省略する。
【0115】
なお、消臭剤であるコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩を0.03重量%以上含む「消臭珪藻土紙」は、その得られた紙の色が白色として許容される以上に着色したため、白色紙としての使用は困難と判断し消臭性能試験から除外した。
【0116】
[消臭試験]
まず、消臭性能の試験方法について説明する。
【0117】
消臭性能に用いる試料1〜試料3と比較試料1はそれぞれ10cm角に切断して、容積が5リットルのテトラパックに入れた。次に、室温で、既定濃度の臭気物質を含むガスを各テトラパックに入れ、各試料を臭気物質と接触させて、臭気物質が各試料に吸着される量を測定した。すなわち、所定時間(1,3、6時間、必要に応じて12,18時間)経過ごとに各テトラパックからガスを採取し、各試料に吸着されないで気相に残存するガス濃度をガス検知管で測定した。なお上記試験に用いた臭気物質とテトラパックに導入する各ガスの定濃度は、ホルムアルデヒド(100ppm)、硫化水素(15ppm)、メルカプタン類の一例としてメチルメルカプタン(15ppm)、アンモニア(40ppm)、アミン類の一例としてトリメチルアミン(70ppm)である。
【0118】
[高温脱離試験]
なお、ホルムアルデヒドについては、上記試験の後、下記に示す高温下における脱離試験を行った。すなわち、上記試験で18時間後のホルムアルデヒドのガス濃度を測定した後、テトラパックから各試料を取り出し、別の5リットルのテトラパックにそれぞれ移した。そして各テトラバックに3リットルの空気を入れたのち、各テトラバックをそれぞれ45℃の恒温器の中に入れ6時間保持した。次に、6時間後の各試料からテトラパック内に放出されたガス濃度をガス検知管で測定し、各試料に吸着されたホルムアルデヒドが45℃で脱離する量もあわせて測定した。
【0119】
以下、各ガスに対する試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能について説明する。
【0120】
[例3 ホルムアルデヒドの消臭性能]
[ホルムアルデヒドの消臭試験:図6A]
図6Aは臭気物質としてホルムアルデヒドを用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0121】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに100ppm導入されたホルムアルデヒドは、経過時間の増加(0→1→3→6→18Hr)とともに除々に減少(100→32.8→24.6→23.1→20.4ppm)し、18時間後に20.4ppmまで減少した。これは、珪藻土がホルムアルデヒドを徐々に吸着したためである。
【0122】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存するホルムアルデヒドの量は減少し、18時間後にはそれぞれ14.5ppm(試料1)、12.1ppm(試料2)、9.8ppm(試料3)となった。
【0123】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くのホルムアルデヒドを吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着されたホルムアルデヒドが消臭剤によって酸化され二酸化炭素と水に変換されるためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くのホルムアルデヒドを吸着することができることになる。
【0124】
[ホルムアルデヒドの高温脱離試験:図6D]
次に、図6Dを用いて、高温脱離試験について説明する。
【0125】
図6Dは、図6Aの消臭試験後に行ったホルムアルデヒドの高温脱離試験後の試料1〜試料3と比較試料1の比較結果である。
【0126】
すなわち、比較試料1では、室温で18時間後にテトラパック気相中に残留するホルムアルデヒドは20.4ppmであるので、導入されたホルムアルデヒド100ppmのうちの残り(79.6ppmに相当)が珪藻土に吸着されている。このホルムアルデヒドを吸着した消臭珪藻土紙を別のテトラパックに移して45℃の恒温装置で6時間放置するとホルムアルデヒドが珪藻土から脱離し4.5ppmのホルムアルデヒドがテトラパックに放出される。このことから珪藻土はホルムアルデヒドを強固に吸着し、環境温度が45℃まで上昇しても4.5ppm程度しかホルムアルデヒドを放出しないことが分かる。
【0127】
一方、試料1では、室温で18時間後にテトラパック気相中に残留するホルムアルデヒドは14.5ppmであるので、導入されたホルムアルデヒド100ppmのうち比較試料1に比べ多くのホルムアルデヒド(85.5ppmに相当)が珪藻土に吸着されているが、上記の環境温度45℃で試料1から放出されるホルムアルデヒドは2.8ppmである。このことから消臭剤を0.005%含む試料1は、珪藻土のみの比較試料1よりその放出量が少ないことが分かる。これは、消臭剤を含む試料1では吸着したホルムアルデヒドが消臭剤によって酸化され無臭の二酸化炭素と水に変換されたためである。
【0128】
試料2,3についても試料1と同様のことが言えるが、試料1に比べ消臭剤を多く含む試料2,3では、珪藻土に吸着されるホルムアルデヒドの量は増加する。しかし上記の環境温度45℃で試料2,3から放出されるホルムアルデヒドは2.3または1.0ppmと試料1の2.8ppmより減少していることから消臭剤を多く含むほど珪藻土に吸着されたホルムアルデヒドが消臭剤によってより多く酸化され珪藻土から放出されるホルムアルデヒドが減少することが分かる。
【0129】
以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くのホルムアルデヒドを吸着でき、かつホルムアルデヒドを酸化して無臭の二酸化炭素と水に変換できること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることがわかる。ただし、消臭剤が上記のように着色性の場合には、消臭剤の量が多すぎると白色の珪藻土紙や高填料紙に着色して白色紙が得られなくなるため実用的ではない。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0130】
[例4 硫化水素の消臭性能:図6B]
図6Bは臭気物質として硫化水素を用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0131】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに15ppm導入された硫化水素は、経過時間の増加(0→1→3→6Hr)とともに除々に減少(15→13.3→11.1→9.8ppm)し、6時間後に9.8ppmまで減少した。これは、珪藻土が硫化水素を徐々に吸着したためである。
【0132】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存する硫化水素の量は減少し、6時間後にはそれぞれ2.7ppm(試料1)、1.8ppm(試料2)、1.2ppm(試料3)となった。
【0133】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くの硫化水素を吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着された硫化水素が消臭剤によって酸化され無臭の硫黄と水に変換されるためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くの硫化水素を吸着できることになる。
【0134】
以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くの硫化水素を吸着でき、かつ硫化水素が消臭剤によって酸化され無臭の硫黄と水に変換されること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることは上述したホルムアルデヒドの消臭性能の比較結果と同様である。また、消臭剤の量が多すぎると白色の珪藻土紙や高填料紙が着色する点もホルムアルデヒドの場合と同様である。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0135】
[例5 メチルメルカプタンの消臭性能:図6C]
図6Cは臭気物質としてメチルメルカプタンを用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0136】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに15ppm導入されたメチルメルカプタンは、経過時間の増加(0→1→3→6→12Hr)とともに除々に減少(15→13.5→13.0→12.6→11.2ppm)し、12時間後に11.2ppmまで減少した。これは、珪藻土がメチルメルカプタンを徐々に吸着したためである。
【0137】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存するメチルメルカプタンの量は減少し、12時間後にはそれぞれ6.1ppm(試料1)、5.0ppm(試料2)、3.7ppm(試料3)となった。
【0138】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くのメチルメルカプタンを吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着されたメチルメルカプタンが消臭剤によって酸化されジスルフィド(RSSRと略す)と水に変換されるためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くのメチルメルカプタンを吸着できることになる。
【0139】
以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くのメチルメルカプタンを吸着でき、かつメチルメルカプタンを酸化して臭いとして飛びにくいジスルフィドに変換できること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることはホルムアルデヒドの消臭性能の比較結果と同様である。また、消臭剤の量が多すぎると白色の消臭珪藻土紙や高填料紙が着色する点も同様である。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0140】
[例6 アンモニアの消臭性能:図7A]
図7Aは臭気物質としてアンモニアを用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0141】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに40ppm導入された硫化水素は、経過時間の増加(0→1→3→6Hr)とともに除々に減少(40→4.9→3.5→3.0ppm)し、6時間後に3ppmまで減少した。これは、珪藻土がアンモニアを徐々に吸着したためである。
【0142】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存するアンモニアの量は減少し、6時間後にはそれぞれ2.4ppm(試料1)、1.8ppm(試料2)、1.2ppm(試料3)となった。
【0143】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くのアンモニアを吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着されたアンモニアが中和反応や錯生成反応によって消臭剤に取り込まれたためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くのアンモニアを吸着できることになる。 以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くのアンモニアを吸着でき、かつ珪藻土に吸着されたアンモニアを中和反応や錯生成反応によって消臭剤に取り込むことができること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることがわかる。また、消臭剤の量が多すぎると白色の珪藻土紙や高填料紙が着色する点は上述のホルムアルデヒドなどの場合と同様である。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0144】
[例7 トリメチルアミンの消臭性能:図6A]
図7Bは臭気物質としてアミン類としてトリメチルアミンを用いたときの上記説明した消臭試験による試料1〜試料3と比較試料1の消臭性能の比較結果である。
【0145】
消臭剤を含まない珪藻土のみの比較試料1では、試験開始時にテトラパックに70ppm導入された硫化水素は、経過時間の増加(0→1→3→6Hr)とともに除々に減少(70→18.6→11.8→7.6ppm)し、6時間後に7.6ppmまで減少した。これは、珪藻土がトリメチルアミンを徐々に吸着したためである。
【0146】
一方、消臭剤を含む試料1〜3でも同様の傾向を示すが、試料中に含まれる消臭剤が増加(0.005→0.01→0.02重量%)するほどテトラバックに残存するトリメチルアミンの量は減少し、6時間後にはそれぞれ4.2ppm(試料1)、3.4ppm(試料2)、2.2ppm(試料3)となった。
【0147】
このように珪藻土に消臭剤(コバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩)を含めることにより、珪藻土のみより多くのトリメチルアミンを吸着できるのは、消臭剤を含む試料1〜3では、珪藻土に吸着されたトリメチルアミンが中和反応や錯生成反応によって消臭剤に取り込まれたためである。そのため、消臭剤を多く含む珪藻土ほど消臭剤を含まない珪藻土に比べ多くのトリメチルアミンを吸着できることになる。
【0148】
以上の結果から、珪藻土に消臭剤を含めることにより、珪藻土のみより多くのトリメチルアミン(アミン類)を吸着でき、かつ珪藻土に吸着されたトリメチルアミンを中和反応や錯生成反応によって消臭剤に取り込むことができること、試料中の消臭剤の量が増加するほど消臭効果が大きくなることはアンモニアの消臭性能の比較結果と同様である。また、消臭剤の量が多すぎると白色の珪藻土紙や高填料紙が着色する点も同様である。そのため、最適な消臭剤の添加量は、これらの条件を加味した紙の使用条件に応じて決定される(その一例を図1に示す)。
【0149】
上記説明したように本実施形態で用いた各種紙は、紙中に各種臭気物質を吸着する吸着物質として珪藻土などと、この珪藻土などに吸着された臭気物質をその種類に応じて臭いを発生しない物質や臭いの発生しにくい物質に変換する消臭剤とを含む。そのためこれらの紙を例えば壁紙として使用すると、例えば、建材から発生する「シックハウス症候群」を引き起こす各種の臭気物質を吸着し、その臭気物質を臭いを発生しない物質や臭いの発生しにくい物質などに変換することができる。
【0150】
【発明の効果】
以上説明したように、住宅の壁紙、襖紙、障子紙、家具の内張等に使用される紙であって、本発明の製造方法により製造された消臭剤を含む上記の各紙は、建材などから発生した臭気物質を紙に吸着でき、さらにこの吸着した臭気物質を臭いの発生しない物質または臭いの発生しにくい物質に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態の消臭剤を含む消臭珪藻土紙および消臭高填料紙の組成を示す図である。
【図2A】本発明に係る一実施形態の消臭珪藻土紙の製造方法を説明する図である。
【図2B】紙の表面近傍に消臭剤を添加する方法を説明する図である。
【図3】本発明に係る一実施形態の消臭高填料紙の製造方法を説明する図である。
【図4】本発明に係る一実施形態の消臭珪藻土紙の配合と製紙強度などの関係を説明する図である。
【図5】本発明に係る一実施形態の消臭高填料紙の配合と製紙強度などの関係を説明する図である。
【図6A】臭気物質としてホルムアルデヒドを用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
【図6B】臭気物質として硫化水素を用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
【図6C】臭気物質としてメチルメルカプタンを用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
【図6D】図6Aの消臭試験後に行ったホルムアルデヒドの高温脱離試験後の試料1〜試料3と比較試料1を比較した結果である。
【図7A】臭気物質としてアンモニアを用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
【図7B】臭気物質としてトリメチルアミンを用いたときの試料1〜試料3と比較試料1との消臭性能の比較結果を示す図である。
Claims (17)
- 臭気物質を吸着することが可能な紙であって、
前記吸着された臭気物質を臭いの発生しないまたは臭いの発生しにくい物質に変換する消臭剤を更に含むことを特徴とする紙。 - 前記消臭剤は前記紙の表面近傍に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の紙。
- 前記消臭剤はフタロシアニン化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の紙。
- 前記フタロシアニン化合物にはコバルトフタロシアニンポリスルホン酸塩または鉄フタロシアニンポリスルホン酸塩が含まれることを特徴とする請求項3に記載の紙。
- 前記消臭剤は前記紙中に0.001〜0.1重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の紙。
- 前記吸着された臭気物質にはホルムアルデヒド、メルカプタン類、および硫化水素の少なくとも1つを含み、前記フタロシアニン化合物は、該ホルムアルデヒド、メルカプタン類、および硫化水素の酸化反応を促進する触媒作用を有することを特徴とする請求項3に記載の紙。
- 前記吸着された臭気物質にはアンモニアおよびアミン類の少なくとも1つを含み、前記フタロシアニン化合物は、該アンモニアおよびアミン類と中和反応または錯形成反応をすることを特徴とする請求項3に記載の紙。
- 前記紙は、
全重量の30〜80重量%の珪藻土と、
所定のフリーネスとなるように叩解されたパルプと、
前記珪藻土と前記パルプとの間の少なくとも結合強度を高める内添剤と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の紙。 - 前記紙は、
所定のフリーネスとなるように叩解されたパルプと、
珪藻土と、
無機質材料と、
前記パルプ、前記珪藻土および前記無機質材料の間の少なくとも結合強度を高める内添剤とを含み、
前記珪藻土と前記無機質材料とを合わせた量が全重量の30〜85重量%となるように調成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙。 - 臭気物質を吸着することが可能な紙の製造方法であって、
パルプスラリーから紙層を形成する紙層形成工程と、
前記臭気物質を吸着する紙層の表面に前記吸着された臭気物質を臭いの発生しないまたは臭いの発生しにくい物質に変換する消臭剤を塗工する塗工工程と
を有することを特徴とする紙の製造方法。 - 前記塗工工程は、サイズプレスを用いて行われることを特徴とする請求項11に記載の紙の製造方法。
- 前記塗工工程では、前記サイズプレスの2本のロールで前記紙を挟み込み、該ロール間に形成されるニップ部に前記消臭剤を含む外添剤溶液を供給して、前記紙の表面に前記外添剤溶液を塗工することを特徴とする請求項10に記載の紙の製造方法。
- 前記外添剤溶液として、表面紙力剤を含む溶液と前記消臭剤を含む溶液とを前記ニップ部に供給することを特徴とする請求項12に記載の紙の製造方法。
- 前記消臭剤は、前記消臭剤が前記紙中に0.001〜0.1重量%含まれるように前記外添剤溶液に含まれることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の紙の製造方法。
- 前記消臭剤は、前記外添剤溶液中に0.002〜0.6重量%含まれることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の紙の製造方法。
- パルプを所定のフリーネスとなるように叩解する叩解工程と、
前記叩解したパルプを、珪藻土と、さらに前記叩解したパルプと前記珪藻土との間の少なくとも結合強度を高める内添剤と混合してパルプスラリーを調成する調成工程とを更に有し、
前記紙層形成工程では、前記パルプスラリーから形成される紙層に含まれる前記珪藻土が全量の30〜80重量%となるように調成されていることを特徴とする請求項10に記載の紙の製造方法。 - パルプを所定のフリーネスとなるように叩解する叩解工程と、
前記叩解したパルプを、珪藻土と、無機質材料と、さらに前記叩解したパルプ、前記珪藻土および前記無機質材料の間の少なくとも結合強度を高める内添剤と混合してパルプスラリーを調成する調成工程とを更に有し、
前記紙層形成工程では、前記パルプスラリーから形成される紙層に含まれる前記珪藻土と前記無機質材料とを合わせた量が全重量の30〜85重量%となるように調成されていることを特徴とする請求項10に記載の紙の製造方法。
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JP2007193141A (ja) * | 2006-01-19 | 2007-08-02 | Fuji Xerox Co Ltd | 電子写真用転写紙及び画像記録方法 |
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2002
- 2002-11-13 JP JP2002329603A patent/JP2004162208A/ja not_active Withdrawn
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