JP2004161912A - 化粧シート - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧シートに関し、特に、建築物の内装、建具の表面化粧、車両内装等に用いるのに適した化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物の内装、建具の表面化粧、車両内装等に用いる化粧シートとしては、ポリ塩化ビニルフィルムを使用し、これに印刷、エンボス加工等で装飾した化粧シート(例えば、特許文献1参照。)が用いられてきたが、近年、これに代わるものとして、(I)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルムを使用した化粧シートが提案され(例えば、特許文献2参照。)、(II)さらに、(I)の改良仕様として、極性官能基をグラフト重合させたポリオレフィン系樹脂にオレフィン系エラストマーを混合させたもの(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)、あるいは、ポリオレフィン系樹脂に相溶化剤を用いてポリウレタン樹脂を混合させたもの(例えば、特許文献5参照。)等も提案されている。
【0003】
しかし、提案されている上記のようなポリオレフィン系樹脂シートを用いた化粧シートは、必ずしも満足できるものではない。すなわち、建築物の内外装用、建具・家具等の表面化粧用、車両内装用等に用いる表面化粧シートには、通常、下記機能(1)〜(10)のような機能が要求される。
機能(1):ポリ塩化ビニル樹脂に匹敵する熱成形性。特に、温度変化にともなう一定荷重時伸度の変化がポリ塩化ビニル樹脂とほぼ同等の緩やかで連続的に変化すること。また、加熱から冷却への工程にともなって、強度低下等の材料力学的特性の劣化が生じないこと。
機能(2):耐クリープ変形性。外装材や内装材には建具や家具による定荷重が長時間かけられる場合が多く、クリープ変形が生じると、荷重部分がめくれたり剥がれたりする。従って、極力クリープ変形が生じない材料であることが求められる。
機能(3):耐寒折り曲げ強度。寒冷時にVカット加工等によって折り曲げ加工を行うと応力緩和が不十分な場合は、折り曲げ部に白化、亀裂、破断等が生じ易くなる。
機能(4):耐有機溶剤性。化粧シートと被着体を接着する接着剤中の溶剤により化粧シートが膨潤・変形するのを防止する。多層構造の化粧シートを得る場合も同様である。
機能(5):破断時伸度、耐衝撃強度。Vカット加工等によって折り曲げ加工をする際の折り曲げ部の亀裂を防止するために、この特性を求められる。
機能(6):適度な曲げ弾性率を持つ。曲げ加工部での化粧シートの追従性が十分であるためには必要とされる。
機能(7):透明性が良好。
機能(8):エンボス加工等にともなう加熱と冷却が加わっても、再結晶による白化、濁りを生じない。
機能(9):易接着性。特に基材シートの場合は、化粧シートの使用時に広範囲の接着剤を用いて容易に各種被着体に接着出来ることが要望される。
機能(10):耐候性に優れること。
機能(11):生産性が良いこと。
機能(12):長期の使用中に塗膜とポリオレフィン系樹脂シートとの密着強度が低下しないこと。すなわち、通常は化粧シートの耐擦傷性向上、艶調整等のため、該化粧シート表面に2液硬化型ポリウレタン等の樹脂からなる上塗り塗膜層(OP;Over Paint varnishとも言う)を形成することが多い。一方、化粧シートの耐候性を付与せしめるため、通常、化粧シートの少なくとも最表面側のポリオレフィン系樹脂シートには、耐候安定剤(光安定剤)、紫外線吸収剤を添加するが、これら耐候安定剤などは、一般のポリオレフィン系樹脂との相溶性が悪く、長期の使用中にシート表面にブリードし、該ブリードした耐候安定剤等が離型剤の如く作用して、上記上塗り塗膜層とシートとの密着性を低下せしめる。
【0004】
前記した(I)の仕様の化粧シートは、工業的に量産が難しく、かつ、ポリオレフィン系樹脂は、結晶化度が高いため等の理由から、ポリ塩化ビニル樹脂に比べて融点前後の物性の変化が急峻であり、従来汎用のポリ塩化ビニルシートに比べ、加工可能な条件範囲が狭い欠点を有しており、上記の機能の内、特に、機能(1)、(5)〜(10)の機能を十分には満足できないものであった。(II)の仕様のものは、オレフィン系エラストマーを混合させたことにより、機能(1)、(5)、(6)の機能は改善され、熱成形性、エンボス加工性等は向上したが、透明性、耐候性、及び耐熱性では不十分なものであった。
【0005】
一方、最近、オレフィン系樹脂を用いた従来の化粧シートの持つ上記のような不都合を解消することを目的として、オレフィン系樹脂を用いながらポリ塩化ビニル系樹脂を用いた化粧シートと同等の熱成形性及び耐候性、透明性を持つ化粧シートを提供することに成功している。
具体的には、主原料がポリプロピレン、エラストマー、着色剤、及び無機充填剤からなる基材シートとしての着色フィルム上に、表面シートとして、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合系からなる分子が複合立体構造を有する無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層し、そして、必要に応じて、基材シート又は表面シートのいずれか又は両方に模様を施してなる化粧シートである(例えば、特許文献6参照。)。
【0006】
更に、最近、特定のオレフィン系樹脂を用いることで機能(11)、(12)のような不都合を解消した化粧シートを提供することについても成功している。具体的には、特定の構造を有するトリアリールトリアジン誘導体、特定の構造を有するエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を用いた配合の樹脂組成物からなる化粧シートであり、必要に応じて、基材シート又は表面シートのいずれか又は両方に模様を施してなる化粧シートである(例えば、特許文献7、特許文献8、特許文献9参照。)。
【0007】
しかし、提案されている上記のようなポリオレフィン系樹脂シートを用いた化粧シートでさえも完全には満足できるものではない。すなわち、建築物の内外装用、建具・家具等の表面化粧用、車輛内装用等に用いる表面化粧シートには、さらに、下記機能(13)〜(14)のような機能が要求される。
機能(13):長期の使用においても外観が悪化しないこと。すなわち上記と同じくポリオレフィン系樹脂シートに配合した耐候添加剤が塗膜を通してブリードし、白化やべたつきなどによる外観の悪化が生じやすい。
機能(14):高濃度で耐候添加剤を配合できること。すなわち、更なる耐候性向上のために、従来以上に耐候添加剤濃度を増加させても上記不具合が発生しないこと。
【0008】
【特許文献1】
特公昭58−14312号公報
【特許文献2】
特開昭54−62255号公報
【特許文献3】
特開平6−210808号公報
【特許文献4】
特表平4−504384号公報
【特許文献5】
特開平7−26038号公報
【特許文献6】
特開平11−221889号公報
【特許文献7】
特開2001−181413号公報
【特許文献8】
特開2001−181414号公報
【特許文献9】
特開2001−181420号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点及び改良すべき課題に鑑み、ポリオレフィン系樹脂を用いた従来の化粧シートの持つ上記のような品質に関し性能を向上させることを目的としている。
すなわち、本発明は、製造工程においてシート表面が接する冷却ロールの汚れが少なく外観の優れた化粧シートを得ること、化粧シートの物性として、経時・耐熱試験におけるブリードが少ないこと、ポリオレフィン系樹脂が接する層(印刷層、透明上塗り塗膜層、基材シート)との密着を阻害しないこと、高濃度に配合しても耐候添加剤がブリードして外観を悪化させないことといった性能を備えた化粧シートを提供することを課題とする。また、ポリオレフィン系樹脂を用いながらポリ塩化ビニル系樹脂を用いた化粧シートと同等以上の熱成形性及び耐候性、透明性を持つ化粧シートを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく多くの実験と研究を行うことにより、化粧シートを単層シートとするか、あるいは少なくとも、基材シートとそれに積層する表面シートの2層構造とし、それぞれのシートに前記した化粧シートに求められる諸機能を分担して持たせることにより、実用性の高いポリオレフィン系樹脂化粧シートが得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、下記式(1)で表されるトリアリールトリアジン誘導体を0.1〜5.0重量部含有してなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートであって、装飾処理を施してなることを特徴とする化粧シートが提供される。
【0012】
【化4】
(式中、R1は、イソオクチル基を表す。)
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、基材シートと表面シートとを少なくとも有する複層シートであって、前記表面シートが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し下記式(1)で表されるトリアリールトリアジン誘導体を0.1〜5.0重量部含有してなるポリオレフィン系樹脂組成物からなり、且つ前記基材シート及び表面シートのいずれか又は両方に装飾処理を施してなることを特徴とする化粧シートが提供される。
【0014】
【化5】
(式中、R1はイソオクチル基を表す。)
【0015】
また、本発明の第3の発明によれば、前記ポリオレフィン系樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、前記式(1)で表されるトリアリールトリアジン誘導体を0.1〜5.0重量部、及び、エチレンと下記式(2)で表される環状アミノビニル化合物との共重合体を2〜10重量部含有してなることを特徴とする第1又は2の発明に記載の化粧シートが提供される。
【0016】
【化6】
(式中、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0017】
また、本発明の第4の発明によれば、前記ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートの表面にイソシアネート基を有する樹脂からなる上塗り塗膜層を設けたことを特徴とする第1〜3のいずれかの発明に記載の化粧シートが提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧シートは、ポリオレフィン系樹脂に対し、紫外線吸収剤のトリアリールトリアジン誘導体、さらに必要に応じて、光安定剤のエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を含有してなるポリオレフィン系樹脂組成物からなり、装飾処理が施されている単層あるいは複層の化粧シートである。以下、各成分、組成物の調製方法、用途等について説明する。
【0019】
I.ポリオレフィン系樹脂組成物
1.ポリオレフィン系樹脂
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1系樹脂、もしくはこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくはポリエチレン系樹脂、又はポリプロピレン系樹脂、もしくはこれらの混合物である。
上記ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の混合物としては、例えば、低密度ポリエチレンとプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物などを挙げることもできる。
【0020】
2.トリアリールトリアジン誘導体
本発明で用いられる紫外線吸収剤のトリアリールトリアジン誘導体は、下記式(1)で表されるトリアリールトリアジン誘導体である。
【0021】
【化7】
【0022】
ここで、式(1)中、R1はイソオクチル基を表す。R1がノルマルオクチル基では、超長期使用や高濃度添加の場合にブリードアウトしやすくなるので好ましくなく、イソオクチル基以外のイソアルキル基でも、紫外線吸収性能とブリード性のバランスが得られないので好ましくない。上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン誘導体としては、R1が1種類のイソオクチル基又は2種類以上のイソオクチル基からなる混合物より選ばれる。用いられるイソオクチル基としては、2−オクチル基、2−メチル−1−ヘプチル基、3−メチル−1−ヘプチル基、4−メチル−1−ヘプチル基、5−メチル−1−ヘプチル基、6−メチル−1−ヘプチル基、3−オクチル基、2−エチル−1−ヘキシル基、3−エチル−1−ヘキシル基、4−エチル−1−ヘキシル基、4−オクチル基、2−プロピル−1−ペンチル基、2−メチル−3−ヘプチル基、2−イソプロピル−1−ペンチル基、2−メチル−2−ヘプチル基、3−メチル−2−ヘプチル基、4−メチル−2−ヘプチル基、5−メチル−2−ヘプチル基、6−メチル−2−ヘプチル基、2,2−ジメチル−1−ヘキシル基、2,3−ジメチル−1−ヘキシル基、2,4−ジメチル−1−ヘキシル基、2,5−ジメチル−1−ヘキシル基、3,3−ジメチル−1−ヘキシル基、3,4−ジメチル−1−ヘキシル基、3,5−ジメチル−1−ヘキシル基、4,4−ジメチル−1−ヘキシル基、4,5−ジメチル−1−ヘキシル基、5,5−ジメチル−1−ヘキシル基、3−メチル−3−ヘプチル基、3−エチル−2−ヘキシル基、4−エチル−2−ヘキシル基、2−メチル−2−エチル−1−ペンチル基、2−メチル−3−エチル−1−ペンチル基、3−メチル−3−エチル−1−ペンチル基、4−メチル−3−ヘプチル基、5−メチル−3−ヘプチル基、6−メチル−3−ヘプチル基、2−エチル−3−メチル−1−ペンチル基、2−エチル−4−メチル−1−ペンチル基、3−エチル−4−メチル−1−ペンチル基、3−エチル−3−ヘキシル基、4−エチル−3−ヘキシル基、2,2−ジエチル−1−ブチル基、4−メチル−4−ヘプチル基、3−メチル−4−ヘプチル基、2−メチル−4−ヘプチル基、2,3−ジメチル−3−ヘキシル基、2,4−ジメチル−3−ヘキシル基、2,5−ジメチル−3−ヘキシル基、2,3−ジメチル−2−エチル−1−ブチル基、2−イソプロピル−3−メチル−1−ブチル基、3,3,4−トリメチル−1−ペンチル基、2−メチル−3−ヘプチル基などがある。
好ましくは、3−メチル−1−ヘプチル基、4−メチル−1−ヘプチル基、5−メチル−1−ヘプチル基、6−メチル−1−ヘプチル基、3−オクチル基、2−エチル−1−ヘキシル基、3−エチル−1−ヘキシル基、4−エチル−1−ヘキシル基、4−オクチル基、2−プロピル−1−ペンチル基、2−メチル−3−ヘプチル基、2−イソプロピル−1−ペンチル基、2−メチル−2−ヘプチル基、3−メチル−2−ヘプチル基、4−メチル−2−ヘプチル基、5−メチル−2−ヘプチル基、6−メチル−2−ヘプチル基、2−メチル−3−エチル−1−ペンチル基、3−メチル−3−エチル−1−ペンチル基、4−メチル−3−ヘプチル基、5−メチル−3−ヘプチル基、6−メチル−3−ヘプチル基、2−エチル−3−メチル−1−ペンチル基、2−エチル−4−メチル−1−ペンチル基、3−エチル−4−メチル−1−ペンチル基、3−エチル−3−ヘキシル基、4−エチル−3−ヘキシル基、2,2−ジエチル−1−ブチル基、4−メチル−4−ヘプチル基、3,3,4−トリメチル−1−ペンチル基、2−メチル−3−ヘプチル基から選ばれる1種又は2種以上のイソオクチル基であり、より好ましくは、3−メチル−1−ヘプチル基、4−メチル−1−ヘプチル基、5−メチル−1−ヘプチル基、2−エチル−1−ヘキシル基、3−エチル−1−ヘキシル基、4−エチル−1−ヘキシル基、5−メチル−2−ヘプチル基、6−メチル−2−ヘプチル基、2−メチル−3−エチル−1−ペンチル基、3−エチル−4−メチル−1−ペンチル基、3−エチル−3−ヘキシル基、4−エチル−3−ヘキシル基、3,3,4−トリメチル−1−ペンチル基から選ばれる1種若しくは2種以上のイソオクチル基又はこれらの混合物であり、特に好ましくは、4−メチル−1−ヘプチル基、2−エチル−1−ヘキシル基、3−エチル−1−ヘキシル基、3−エチル−4−メチル−1−ペンチル基から選ばれる1種若しくは2種以上のイソオクチル基又はこれらの混合物であり、最も好ましくは、3−エチル−1−ヘキシル基、4−メチル−1−ヘプチル基、3−エチル−4−メチル−1−ペンチル基、2−エチル−1−ヘキシル基の混合物である。
【0023】
上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン誘導体は、通常のトリアリールトリアジンの合成方法により、容易に合成することが可能である。例えば、2,4,6−トリクロロトリアジンにルイス酸触媒の存在下でキシレン2モルと3−アルコキシフェノール1モルを付加させてもよく、また、2、6−ジメチルベンズアミジンのハロゲン化水素酸塩とハロゲン化ギ酸エステルより2−ヒドロキシ−4,6−ジアリールトリアジンを合成し、次いで塩化チオニルで処理して2−クロロ−4,6−ジアリールトリアジンとしたのち3−アルコキシフェノールとルイス酸触媒で反応してもよい。
また、上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン誘導体は、市販のものを使用することもできる。
【0024】
本発明の効果を阻害しない範囲で、R1として、イソオクチル基以外のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基であるトリアリールトリアジン誘導体が含まれていても構わない。R1としてイソオクチル基以外のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基であるトリアリールトリアジン誘導体の許容量は、トリアリールトリアジン誘導体の種類によって異なるが、全トリアリールトリアジン誘導体に対しておおよそ30モル%未満、好ましくは10モル%未満、更に好ましくは5モル%未満である。30モル%以上の場合、本発明の効果を充分に得られない。
【0025】
本発明の化粧シートに用いられるポリオレフィン系樹脂組成物中の、上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン誘導体の含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し0.1〜5.0重量部、好ましくは0.3〜4.0重量部、更に好ましくは0.3〜1.5重量部である。含有量が上記範囲未満では耐候性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると色相や経済性が劣るので好ましくない。
【0026】
3.エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、上記式(1)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤に加え、さらに光安定剤として、エチレンと下記式(2)で表される環状アミノビニル化合物との共重合体(以下、「エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体」という)を含有させることができる。
【0027】
【化8】
【0028】
上記式(2)中、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。好ましくは、R2及びR3はそれぞれメチル基であり、R4は水素原子である。式(2)で表される環状アミノビニル化合物は、公知の方法で合成することができる。
【0029】
エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体中の環状アミノビニル化合物の含有量は、1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、共重合体のMFRは0.1〜500g/10分、好ましくは0.5〜200g/10分(JIS−K−6922−2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した値)の範囲が望ましい。
【0030】
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、所要単量体を共重合条件に付すことによって製造されるが、高圧法低密度ポリエチレン製造装置での製造が可能である。通常はラジカル重合で製造され、使用される触媒は、遊離基発生開始剤、例えば、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、アゾ化合物等が有用である。重合装置は、エチレンの高圧ラジカル重合法で一般的に用いられている連続攪拌式槽型反応器又は連続式管型反応器等を使用することができる。重合圧力は100〜500MPa程度、重合温度は100〜400℃程度である。
【0031】
本発明の化粧シートに用いられるポリオレフィン系樹脂組成物中におけるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、2〜10重量部である。この含有量が上記範囲未満では耐候性が劣るので好ましくなく、上記範囲を超えると経済性の点で好ましくない。
【0032】
4.その他の配合成分
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、上述した紫外線吸収剤に加えて、他の付加的成分を、本発明の効果を著しく損なわない範囲で配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0033】
また、本発明においては、上述したトリアリールトリアジン誘導体の紫外線吸収剤の他に、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−アミル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の2’−ヒドロキシフェニル−5−クロロベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の2’−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等の2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等の2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サルチル酸フェニル、4−t−ブチル−フェニル−サリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤を用いることができる。
【0034】
その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤等も用いることができる。高い透明度を要求されない場合は、無機系紫外線吸収剤を添加することもできる。無機系紫外線吸収剤としては、粒径0.2μm以下の酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄等が用いられる。なお、これらの紫外線吸収剤の添加量は、通常、前記樹脂組成物全量に対し0.1〜5重量%程度である。
【0035】
紫外線による劣化をさらに防止し、耐候性を向上させるために、他の光安定剤として、ラジカル捕捉剤を加することが好ましい。このラジカル捕捉剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、その他、例えば、特公平4−82625号公報に開示されている化合物等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジル系ラジカル捕捉剤等が使用される。これらラジカル捕掟剤の添加量は、通常、前記樹脂組成物全量に対し0.1〜5重量%程度である。
なお、前記ポリオレフィン系樹脂組成物にヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤からなる光安定剤を添加する場合には、化粧シート(又は複層の場合は表面シート)に隣接するインキ層、接着剤層等の層にはウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の分子中に塩素原子を含まない樹脂を用いると耐候性向上の点で良好である。もし、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィン等の分子中に塩素原子を含む樹脂を用いると、紫外線又は熱の作用によりこれらの樹脂から脱塩素反応で塩化水素が発生し、これがヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤と反応してその作用を失活・阻害するため、耐候性が十分に向上しない。
【0036】
5.ポリオレフィン系樹脂組成物の調製方法
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、上記必須成分と必要に応じて配合される付加的成分とを混合し、溶融混練することにより得られる。
溶融混練としては、例えば、粉末状、ペレット状等の形状の各成分を一軸又は二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ブラベンダープラストグラフ、小型バッチミキサー、連続ミキサー、ミキシングロール等の混練機を使用して行う。混練温度は、一般に180〜270℃で行われる。また、混練機は、上述したものの二種以上を組み合わせることもできる。
【0037】
II.化粧シート
本発明の化粧シートは、上記ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート(以下、単にポリオレフィン樹脂シートとも呼称する)であって、装飾処理が施されている。前記化粧シートは単層シートでも良く、また上記ポリオレフィン系樹脂組成物からなる表面シートと基材シートとを少なくとも有する複層シートとしても良い。
【0038】
1.単層シート
(1)シートの製造
本発明の化粧シートは、上述したポリオレフィン系樹脂組成物を、必要に応じて適宜ブレンドし、カレンダー製法、押出成形法等の常用の方法により製膜することにより得られる。前記化粧シートは、延伸シート、未延伸シートのいずれも使用可能である。化粧シートの厚みは、30〜200マイクロメータ、好ましくは40〜100マイクロメータである。
【0039】
(2)易接着層
なお、前記化粧シートが単層シートのときは、前記のポリオレフィン樹脂シート自体に直接模様を印刷したり、接着剤を塗布することも可能であるが、インキや接着剤とポリオレフィン樹脂シートとの接着力を、より強固なものにする必要がある場合には、ポリオレフィン樹脂シート表面に易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことができる。
前記易接着層(プライマー層、或いはアンカー層とも云う)としては、例えば、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン(あるいはウレタン樹脂とも呼称する)、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンが使用されるが、特に前記ポリオレフィン樹脂シート表面に、コロナ放電処理等の易接着処理を施して、水酸基、カルボキシル基等の活性水素含有極性官能基を付与した後、該表面上にポリウレタンまたは塩素化ポリプロピレンの易接着層を形成することが望ましい。
【0040】
前記アクリルとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル・(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなるアクリル樹脂(但し、ここで(メタ)アクリルとはアクリル又はメタアクリルを意味するものとし、以下同様である)等が挙げられる。
【0041】
前記ポリウレタンとは、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンである。
ポリオールとは、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が用いられる。
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式イソシアネートが用いられる。あるいは、これらイソシアネートの付加体、または多量体も用いられる。
【0042】
(3)装飾処理
本発明の化粧シートに施される装飾処理としては、例えば、顔料添加による着色(透明又は不透明着色)、模様の印刷、エンボス加工(加熱プレス)やヘアライン加工等による凹凸模様賦形、金属薄膜層の形成等が挙げられる。
【0043】
上記添加する顔料としては、例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(或いは染料も含む)、アルミニウム、真鍮、等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等である。これらは、粉末、或いは鱗片状箔片として添加、分散せしめられる。
【0044】
上記模様の印刷としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等、公知の印刷法を用いインキ(或いは塗料)にて模様を形成する。模様としては、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、或いは全面ベタ等がある。模様はシートの表面、裏面、表裏両面、或いは層間に設ける。
模様印刷に用いられるインキ(或いは塗料)としては、バインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等を用い、一種又は二種以上混合して用いる。これに前記に列挙した様な公知の顔料を添加した物を用いる。
【0045】
ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートに直接印刷する場合は、バインダーとして、塩素化ポリオレフィン、ポリウレタン等が接着性の点で好ましいが、易接着プライマーを適当に選択して層形成すれば、其の他のバインダーを用いても十分な接着性を与える。
【0046】
エンボス加工としては、ポリオレフィン樹脂を加熱軟化させ、エンボス版で加圧、賦形し、冷却固定して形成するもので、公知の枚葉、或いは輪転式のエンボス機が用いられる。
凹凸模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
更に必要に応じて、凹凸模様の凹部に公知のワイピング法(特公昭58−14312号公報等参照)によって、着色インキを充填することもできる。着色インキとしては上記と同様のものが仕様可能である。但し、耐磨耗性の点で、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーとするものが好ましい。
【0047】
金属薄膜は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用い、真空蒸着、スパッタリング等の方法で製膜する。或いはこれらの組み合わせでも良い。該金属薄膜は、化粧シートの全面に設けても、或いは、部分的にパターン状に設けても良い。
【0048】
なお、本発明の化粧シートが単層の場合の層構成の一例を図1に示す。図1(A)では、ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート1に顔料2が配合されて化粧シート3が形成されている。図1(B)では、ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート1の一方の表面に易接着層(プライマー層)4が形成されており、該易接着層の表面に模様5が施されている。図1(C)では、ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート1の表面に凹凸模様7が施されている。図1(D)では、ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート1の表面にワイピング法によって着色インキ8が充填され、さらに模様5が施されている。
【0049】
2.複層シート
本発明の化粧シートが複層の場合、該化粧シートは、基材シート上に前記ポリオレフィン系樹脂組成物からなる表面シートを積層し、必要に応じて前記基材シート又は表面シートのいずれか又は両方に装飾処理を施してなることを特徴とする。化粧シートが複層の場合は、例えば、基材シートには前述した化粧シートに要求される機能(1)〜(14)のうち、機能(1)〜(6)及び(9)を主に担わせることとし、基材シートの表面に積層する表面シートには機能(1)〜(8)及び(10)〜(14)を主に担わせることとすることができる。
【0050】
(1)基材シート
基材シートは、ポリオレフィンを主体とする樹脂材料からなる。ポリオレフィンとしては、基本的性能が優れるものとして、前記ポリオレフィン系樹脂材料を用いてもよいが、その他ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・ブテン−1共重合体、ポリブテン−1、ブテン−1・プロピレン・エチレン・3元共重合体、ブテン−1・ヘキセン−1・オクテン−1・3元共重合体、ポリメチルペンテン、或いは特開平6−16832号公報等に記載のオレフィン系エラストマー等のエラストマーが使用される。厚さは30〜200μm程度で、延伸シート、未延伸シートのいずれも使用可能であるが、Vカット加工等の成形適性上は、未延伸シートの方が良好である。
【0051】
前記エラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、ポリオレフィン系樹脂(本発明においては、ポリプロピレン)の結晶化を抑え、柔軟性をアップさせる。ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブダジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブダジエンゴム、アクリロニトリル・ブダジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等がある。オレフィンエラストマーとしては、2種類又は3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種加えた弾性共重合体であり、オレフィンはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィン系共重合体ゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。なお、これらのエラストマーは、必要に応じて適度に架橋させる。架橋剤としては、硫黄、脂肪族有機過酸化物、芳香族有機過酸化物等公知の物が用いられる。
前記エラストマーの添加量としては、基材シートを構成する樹脂材料全量に対し、10〜60重量%、好ましくは30重量%程度である。エラストマーが10重量%未満であると一定荷重時伸度の変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性の低下が生じ、又エラストマーが60重量%を超えると透明性、耐候性及び耐クリープ性の低下が生じる。
【0052】
基材シートは、上述したポリオレフィンを配合ベースとし、これに着色剤を配合してなる樹脂材料からなる着色フィルムとするのが好ましい。かかる着色剤は、基材シートに化粧シートとして必要な色彩を持たせるためのものであり、例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料或いは染料、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。着色は透明着色、不透明(隠蔽)着色いずれでも可であるが、一般的には、被着体を隠蔽するために不透明着色が好ましい。
【0053】
また、基材シートを構成する樹脂材料には、無機充填剤を配合することもできる。かかる無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、クレー、タルク等の平均粒径0.1〜10μm程度の粉末が用いられる。添加量としては、1〜60重量%程度、より好ましくは5〜30重量%である。1重量%未満であると耐クリープ変形性及び易接着性の低下が生じ、60量%を超えると破断時伸度及び耐衝撃性の低下が生じる。
【0054】
さらに、必要に応じて、熱安定剤、難燃剤、ラジカル捕捉剤等を添加する。熱安定剤は、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系等公知のものであり、熱加工時の熱変色等の劣化の防止性をより向上させる場合に用いられる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の粉末が用いられ、これらは、難燃性を付与する必要がある場合に添加する。
【0055】
これらの材料をブレンドしたものをカレンダー製法等の常用の方法により製膜して不透明着色基材シートを得る。得られる基材シートは、化粧シートの基材シートに求められる前記機能(1)〜(6)、(9)の機能(必要とされる機能)を満足する。基材シートの厚みは、50〜200μm程度、好ましくは100μm程度である。
【0056】
基材シートの表面には、好ましくは、易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理が施される。易接着層(プライマー層、或いはアンカー層とも云う)としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンが使用されるが、特に、ウレタン樹脂が望ましい。
【0057】
上記アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル・(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなるアクリル樹脂(ただし、ここで(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルを意味する)等が用いられる。
【0058】
また、上記ウレタン樹脂(ポリウレタン)とはポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンである。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が用いられる。
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(ないしは脂環族)イソシアネートが用いられる。或いは、これらのイソシアネートの付加体又は多量体を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネートの3量体等がある。
【0059】
易接着処理を施した表面には、必要に応じて模様(層)を形成してもよい。図2(A)は易接着層を形成した1例であり、基材シート11に積層した表面シート12と模様(層)13との間に易接着層14を設けている。図2(D)に示すように、基材シート11が被着体31に面する側に易接着層14を設ける場合もある。模様は、基材シート又は後述する表面シートのいずれか一方、或いは両方に形成することができる。図2(C)及び図2(D)は、模様(層)13を基材シート11と表面シート12間に設けた例である。
【0060】
装飾処理としては、図2(A)に示すような模様13の印刷、図2(B)に示すようなエンボス加工(加熱プレス)、ヘアライン加工等による凹凸模様15の賦形等であってよく、さらに、凹凸模様15の凹部に公知のワイピング法によって、着色インキ16を充填することもできる。また、金属薄膜を形成してもよい。模様印刷としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等公知の印刷法を用いインキ(或いは塗料)にて模様を形成する。模様としては、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、或いは全面ベタ等がある。
【0061】
上記インキ(或いは)塗料としては、バインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等を用い、1種又は1種以上混合して用いる。これに前記に列挙した様な公知の顔料を添加した物を用いる。基材シートに直接印刷する場合は、バインダーとして塩素化ポリオレフィン、ウレタン樹脂等が接着性の点で好ましいが、易接着プライマーを適当に選択して層形成すれば、其の他のバインダーを用いても十分な接着性を与える。
【0062】
エンボス加工としては、基材シートを加熱軟化させ、エンボス版で加圧、賦形し、冷却固定して形成するもので、公知の枚葉、或いは輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等である。着色インキは前記と同様の物が可能である。但し、耐磨耗性の点で、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーとする物が好ましい。
【0063】
金属薄膜は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用い、真空蒸着、スパッタリング等の方法で製膜する。或いはこれらの組み合わせでも良い。該金属薄膜は、全面に設けても、或いは部分的にパターン状に設けても良い。
【0064】
(2)表面シート
本発明による化粧シートにおいて、上記のように必要に応じて装飾処理が施された基材シートの表面に、ポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルムを表面シートとして積層する。前記ポリオレフィン系樹脂組成物としては、単層シートの場合に該シートを構成するポリオレフィン系樹脂組成物と同様の樹脂組成物が用いられる。ポリオレフィン系樹脂の好ましいものは、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体である。
【0065】
本発明の表面シートを構成するポリオレフィン系樹脂組成物には、化粧シートの表面層として求められる機能を補強するために、所望により、各種添加剤、補強材、充填剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が添加されていてもよい。難熱剤は、基材シートの場合と同様であってよい。
【0066】
もし、表面シート中に、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を添加する場合には、表面シートに隣接するインキ層、接着剤層等の層にはウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の分子中に塩素原子を含まない樹脂を用いると耐候性向上の点で良好である。また、もし、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィン等の分子中に塩素原子を含む樹脂を用いると、紫外線又は熱の作用によりこれらの樹脂から脱塩素反応で塩化水素が発生し、これがヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤と反応してその作用を失活・阻害するため、耐候性が十分に向上しない。
【0067】
表面シートは、上述した表面シートを構成する樹脂材料を、必要に応じて適宜ブレンドし、カレンダー製法、押出成形法等の常用の方法により製膜することにより得られる。得られたフィルムは、化粧シートの表面シートに求められる前記機能(1)〜(8)及び(10)〜(14)、特に、機能(13)、(14)を満足する。表面シートの厚みは30〜200μm程度、好ましくは40〜100μmである。上記表面シートの基材シートとの接触面には、好ましくは、基材シートの場合と同様にして、易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことができる。
【0068】
前記した基材シートと表面シートは、通常の手段により積層することができる。積層方法としては、溶融押出塗工(エクストルージョンコート)、熱プレスによる融着、或いは、2液硬化型ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の接着剤を用いたドライラミネート等であってよい。なお、表面シートは、一般的に透明(無色又は着色)とするが、不透明(隠蔽)着色でも良い。
【0069】
本発明の化粧シートは、複層シートの場合も、その表面シート側の表面に、必要に応じて模様層を形成することができる。模様処理としては、図2(C)に示すようなエンボス加工(加熱プレス)、ヘアライン加工等による凹凸模様賦形15、或いは、模様の印刷であってよい。模様印刷法、模様の種類、インキ(或いは)塗料の種類、バインダー等は、基材シートの場合と同様であってよい。更に必要に応じて、凹凸模様の凹部に公知のワイピング法によって、着色インキを充填することもできる。その際に、必要に応じて、エンボス加工面に前記したコロナ放電処理等の易接着処理を施し、着色インキの充填を行う。
好ましくは、さらにその表面シートの上に、耐擦傷性向上、艶調整のために上塗り塗膜層を形成することができる。バインダーとして塩素化ポリオレフィン、2液硬化ポリウレタン樹脂等が好ましい。
【0070】
3.上塗り塗膜層(OP層)
本発明の化粧シートには、該化粧シート(複層シートの場合は表面シート)の表面側に、分子中にイソシアネート基を有する樹脂からなる上塗り塗膜層を形成することができる。
分子中にイソシアネート基を有する樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、或いは1液硬化型ウレタン樹脂が用いられる。2液硬化型ウレタン樹脂としては、易接着層の樹脂系として前記したものと同様のポリオールとイソシアネートを混合したものを用いることができる。
【0071】
なお、2液硬化型ウレタン樹脂を用いる場合の好ましい態様として、イソシアネート中のイソシアネート基(NCO基)の数(モル数)をそれと反応させるポリオールの水酸基(OH基)の数(反応当量)よりも多くし、ポリオールとイソシアネートとが反応した後でも未反応のイソシアネート基を確実にしかも多数残留させる態様がある。この場合、NCO基/OH基の比は最大1.4程度までとする。
【0072】
1液型湿気硬化ウレタン樹脂は、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを必須成分とする組成物である。前記プレポリマーは、通常は分子両末端に各々イソシアネート基を1個以上有するポリイソシアネートプレポリマーであり、室温で固体の熱可塑性樹脂の状態にあるものである。イソシアネート基同士が空気中の水分により反応して鎖延長反応を起こして、その結果、分子鎖中に尿素結合を有する反応物が生じて、この尿素結合にさらに分子末端のイソシアネート基が反応して、ビウレット結合を起こして分岐し、架橋反応を起こす。
【0073】
分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの分子鎖の骨格構造は任意であるが、具体的には、ウレタン結合を有するポリウレタン骨格、エステル結合を有するポリエステル骨格、ポリブタジエン骨格等である。適宜これら1種又は2種以上の骨格構造を採用する。なお、分子鎖中にウレタン結合がある場合は、このウレタン結合とも末端イソシアネート基が反応して、アロファネート結合を生じて、このアロファネート結合によっても架橋反応を起こす。
【0074】
この様な上塗り塗膜層には、さらに必要に応じ、紫外線吸収剤(前記のトリアリールトリアジン型等各種のものから選ぶことができる)、アルミナ(特に球状α−アルミナが好ましい)、シリカ等の微粒子からなる減摩剤兼艶消剤、銀ゼオライト等の抗菌剤等を添加する。艶消剤を添加した場合は、上塗り塗膜層は艶調整コートとして機能する。
【0075】
以上のように、化粧シート(又は表面シート)中に添加する紫外線吸収剤として分子中にOH基を有する有機系のものを使用し、且つその表面にイソシアネート基を有する樹脂を使用して上塗り塗膜層を形成すると、紫外線吸収剤が経時的にブリードアウト(滲出)して上塗り塗膜層に入ったときに、その紫外線吸収剤のOH基と上塗り塗膜層中のイソシアネート基とがウレタン反応し、上塗り塗膜層中に捕捉されるので、紫外線吸収剤の経時的なブリードアウトが防止される。特に有機系の紫外線吸収剤がブリードアウトし易いポリオレフィン樹脂の場合に有効であり、本発明で化粧シート(又は複層の場合は表面シート)に採用する上記ポリオレフィン系樹脂組成物の場合にも好適である。
好ましくは、さらにその上塗り塗膜層の上に、さらに艶調整保護コート層を形成することができる。バインダーとして塩素化ポリオレフィン、2液硬化ポリウレタン等が好ましい。
【0076】
III.用途
本発明の化粧シートは、そのまま化粧材として用いても良いが、該シートを他の被着体(裏打材)に積層して使用することもできる。積層は、被着体に化粧シート自体が(熱融点等で)接着可能な場合は、接着剤層は省いても良く、また、化粧シート自体では被着体と接着しない場合は、適当な接着剤にて積層してもよい。
被着体が最終製品であり、その表面化粧の為に化粧シートを積層する場合も有れば、必要に応じ化粧シートの力学的強度の補強、或いは隠蔽性の付与のため化粧シート裏面に被着体を積層する場合も有る。
【0077】
被着体としては、例えば、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品(成形品)、シート(或いはフィルム)等の各種形状の物品が対象となる。板材、立体形状物品、或いはシート(フィルム)のいづれにも用いられる素材としては、例えば、杉、檜、松、ラワン、チーク等の樹木からなる木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質板、鉄、アルミニウム等の金属、アクリル、ポリカーボネート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアセテート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ABS、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、セルロース系樹脂、ゴム等の樹脂、専ら板材、或いは立体形状物品として用いられる素材としては、例えば、硝子、陶磁器、等のセラミックス、ALC(発泡軽量コンクリート)等のセメント、硅酸カルシウム、石膏等の非セメント窯業系材料、専らシート(或いはフィルム)として用いられる素材としては、例えば、上質紙、和紙等の紙、炭素、石綿、チタン酸カリウム、硝子、合成樹脂等の繊維からなる不織布又は織布等がある。
【0078】
これら各種被着体への積層方法としては、例えば、接着剤層を間に介して板状基材に加圧ローラーで加圧して積層する方法、特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載される様に、化粧シートを射出成形の雌雄両金型間に挿入して、両金型を閉じ、雄型のゲートから熔融樹脂を射出充填して後、冷却して樹脂成形品の成形と同時にその表面に化粧シートを接着積層する、所謂射出成形同時ラミネート方法、特公昭56−45768号公報、特公昭60−58014号公報等に記載される様に、成形品の表面に化粧シートを間に接着剤層を介して対向乃至は載置し、成形品側からの真空吸引による圧力差により化粧シートを成形品表面に積層する、所謂真空プレス積層方法、特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報等に記載される様に、円柱、多角柱等の柱状基材の長軸方向に、化粧シートを間に接着剤層を介して供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、柱状体を構成する複数の側面に順次化粧シートを加圧接着して積層してゆく、所謂ラッピング加工方法、実公大15−31122号公報、特開昭48−47972号公報等に記載される様に、先ず化粧シートを板状基材に接着剤層を介して積層し、次いで板状基材の化粧シートとは反対側の面に、化粧シートと板状基材との界面に到達する、断面がV字状、又はU字状溝を切削し、次いで該溝内に接着剤を塗布した上で、該溝を折り曲げ箱体又は柱状体を成形する、所謂Vカット又はUカット加工方法等がある。
特に、本発明の化粧シートを凹凸立体物に貼り合わせる方法としては、上記方法のうち、ラッピング加工法、Vカット加工法、射出成形同時ラミネート法、真空成形同時ラミネート法等が好ましい。
【0079】
本発明の化粧シートは各種被着体に積層し、所定の成形加工等を施して、各種用途に用いることができる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺、廻縁、幅木等の建具、乃至は造作部材の表面化粧、家具又は弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輛内装、航空機内装、窓硝子の化粧等である。
【0080】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における生産性、及び各製品物性の評価方法は以下の通りである。
【0081】
1.生産性
(1)チルロールの汚れ
Tダイ押出機にて製膜を行う場合、チルロールをあらかじめ溶剤にて拭き取りを行い、その後連続製膜を行いながらチルロールの汚れを目視にて観察した。
(2)エンボス版の汚れ
エンボス加工を行う場合のエンボス版をあらかじめ溶剤にて拭き取りを行い、その後連続でエンボス加工を行いながらエンボス版の汚れを目視にて観察した。
【0082】
2.製品物性
(1)耐熱促進試験
上塗り塗膜を施した化粧シートを、40℃、80℃、100℃の各温度に設定したオーブン中に入れて所定期間放置し(所定期間;40℃=400日まで、80℃=5週間まで、100℃=10日まで)、途中経時で外観を確認した(40℃=10日毎、80℃=1週間毎、100℃=1日毎)。また、上塗り塗膜層の密着性をセロハン粘着テープにて試験した(テープ密着試験)。具体的な試験方法としては、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社、商品名「セロテープ(登録商標)」、産業用24mm幅)を塗膜表面に貼り、室温(20℃)にて布でこすり圧着した。該テープ表面を室温にまで冷却し、手で一気にセロハン粘着テープを剥離した。塗膜のセロハン粘着テープへの付着の有無を目視で確認した。
(2)耐候性促進試験
カーボンアーク燈型サンシャインウエザオメーターを用いてブラックパネル温度63℃で、120分中18分降雨で試験した後(以下、S.W.O.M試験という)、目視で観察をして、OP層等の各層間の浮き、脱落などの異常の有無を検査した。
(3)耐候性促進試験
アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製)を用いブラックパネル温度63℃にて、照度60mW/cm2、光源からの距離240mm、照射スペクトル帯域295〜450mm、5時間照射し、1時間結露で試験した後(以下、S−UV試験という)、目視で観察をして、OP層等の各層間の浮き、脱落などの異常の有無を検査した。
【0083】
〔実施例1〕
ポリエチレン樹脂(HDPE:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)HD・HJ560)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が3−エチル−1−ヘキシル基)0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)をブレンダーで混合したのち、溶融押出して得られる樹脂組成物をTダイ押出機にて、80μmに成膜し、両面にコロナ放電処理を施した。
次に、着色インキ(バインダーはアクリルポリオール100重量部と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート8重量部、顔料はアクリルウレタン系インキ弁柄、カーボンブラック、酸化チタンからなる)にて、木目模様をグラビア印刷し、反対面(表面)にアクリルポリオール100重量部と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート10重量部、艶消し剤はシリカ粒子(平均粒径2μm)からなるインキをグラビア印刷にて2μm厚みの透明上塗り塗膜層(OP層)を形成し、化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表1に示す。
【0084】
〔実施例2〕
着色基材シートとして、アイソタクチックポリプロピレン100重量部に水素添加スチレン−ブタジエンゴム60重量部、炭酸カルシウム微粒子からなる無機充填剤25重量部、チタン白、弁柄、黄鉛計5重量部からなる着色顔料により着色した厚さ60μm厚みのポリオレフィン系樹脂シートを製造した。この着色原反に、コロナ放電処理後実施例1と同様のインキを用いグラビア印刷にて木目模様を印刷し、反対面(裏面)にもコロナ放電処理後、シリカを8重量%含むウレタン樹脂プライマーコート(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート+アクリルポリオール)をグラビア印刷にて形成し、印刷済み着色基材シートを得た。
その後、該基材シートの印刷面上にポリエステルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートからなる接着剤層を10μm形成し、あらかじめ成膜しておいた実施例1記載の樹脂組成物からなる80μm厚みの透明表面シートとドライラミネートにて貼り合わせた。着色絵柄印刷済み着色基材シートと透明表面シートからなる複層シートを更に加熱処理し、木目導管模様のエンボス(以下、「EM」とも呼称する)版を用いエンボス加工をした。該エンボス加工面にコロナ放電処理を行い、アクリルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート及び平均粒径2μmのシリカ粒子からなる透明上塗り塗膜層(OP層)をグラビアロールコーティングにて3μm厚みに形成し、化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表1に示す。
【0085】
〔実施例3〕
高密度ポリエチレン60重量%をベースに熱可塑性エラストマーとして、水素添加スチレン−ブタジエンゴムを30重量%、無機添加剤として炭酸カルシウム微粒子10重量%、また、着色顔料として弁柄とカーボンブラックを5重量%添加して、熱安定剤及びヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を5重量%ブレンドしたものをカレンダー製法にて厚み60μmに成膜した不透明着色シートを得た。この着色基材シート(着色PE)に、コロナ放電処理後グラビア印刷にて実施例1と同様のインキを用い木目模様を印刷し、反対面にもコロナ放電処理後、シリカを8重量%含むウレタン系プライマーコート(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート+アクリルポリオール)をグラビア印刷にて形成し、印刷済み着色基材シートを得た。
その後、ポリエステルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートからなる接着剤層を10μm形成し、その面に実施例1記載の樹脂組成物をTダイから樹脂温度240℃、60μm厚みにて溶融押出し、着色絵柄印刷済み基材シートと透明表面シートからなる複層シートを得た。該複層シートを更に加熱処理し、木目導管模様のEM版を用いエンボス加工をした。該エンボス加工面にコロナ放電処理を行い、EMによる凹部に着色インキ(バインダーはアクリルポリオール100重量部と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート8重量部、顔料は弁柄とカーボンブラックからなる)を充填し、更にその表面にアクリルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート及び平均粒径2μmの艶消し剤(シリカ粒子)からなる透明上塗り塗膜層(OP層)をグラビアロールコーティングにて2μm厚みに形成し、化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表1に示す。
【0086】
〔実施例4〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が3−エチル−1−ヘキシル基である誘導体49モル%、4−メチル−1−ヘプチル基である誘導体20モル%、3−エチル−4−メチル−1−ペンチル基である誘導体19モル%、2−エチル−1−ヘキシル基である誘導体10モル%を含有する誘導体組成物、イソオクチル誘導体の合計量は98モル%)0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)をブレンダーで混合し、後は実施例1と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表1に示す。
【0087】
〔実施例5〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が3−エチル−1−ヘキシル基)0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)をブレンダーで混合したのち、溶融押出して得られる樹脂組成物をTダイ押出機にて、80μmに製膜し、両面にコロナ放電処理を施し、透明表面シートを得た。
次に実施例2と同様にして印刷済み着色基材シートを得た後、透明表面シートとドライラミネーションにて張り合わせ、得られた複層シートに実施例2と同様にして装飾処理を施し、化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表1に示す。
【0088】
〔実施例6〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が3−エチル−1−ヘキシル基)5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シート層に用いる他は、実施例3と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表1に示す。
【0089】
〔実施例7〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が3−エチル−1−ヘキシル基)0.1重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シート層に用いる他は、実施例3と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表1に示す。
【0090】
〔比較例1〕
ポリエチレン樹脂(HDPE:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)HD・HJ560)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1がノルマルオクチル基0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を用いる他は実施例1と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表2に示す。
【0091】
〔比較例2〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1がノルマルオクチル基0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シートとして用いる他は、実施例2と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表2に示す。
【0092】
〔比較例3〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が3−エチル−1−ヘキシル基)6重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シートとして用いる他は、実施例3と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表2に示す。
【0093】
〔比較例4〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が3−エチル−1−ヘキシル基)0.05重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シートとして用いる他は、実施例3と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表2に示す。
【0094】
〔比較例5〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が2−エチル−1−ブチル基)0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シートとして用いる他は、実施例3と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表2に示す。
【0095】
〔比較例6〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が4−メチル−1−ペンチル基)0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シートとして用いる他は、実施例3と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表3に示す。
【0096】
〔比較例7〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1がシクロヘキシル基)0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シートとして用いる他は、実施例3と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表3に示す。
【0097】
〔比較例8〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が3−エチル−1−オクチル基)0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量%と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シートとして用いる他は、実施例3と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表3に示す。
【0098】
〔比較例9〕
ポリプロピレン樹脂(PP:日本ポリケム(株)製ノバテック(登録商標)PP・FG3D)100重量部に対し、トリアリールトリアジン誘導体(上記式(1)のR1が2,2−ジメチル−1−オクチル基)0.5重量部、及びエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体(上記式(2)のR2、R3がメチル基、R4が水素原子であるエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)4重量部と、0.05重量部のフェノール系安定剤(テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)からなる樹脂組成物を透明表面シートとして用いる他は、実施例3と同様にして化粧シートを得た。製品物性等の評価結果を表3に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【発明の効果】
本発明の化粧シートは、製造工程においてシート表面が接する冷却ロールの汚れが少ないなどにより外観に優れたシートであり、また物性面では、経時・耐熱試験におけるブリードが少ない、層間の密着性がよい、といった性能を備えている。また、ポリオレフィン系樹脂を用いながらポリ塩化ビニル系樹脂を用いた化粧シートと同等以上の熱成形性及び耐候性、透明性を持つものであり、特に建築物の内装、建具の表面化粧、車両内装等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】化粧シートが単層の場合の層構成の一例を説明する図である。
【図2】化粧シートが複層の場合の層構成の一例を説明する図である。
【符号の説明】
1 ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシート
2 顔料
3 化粧シート
4 プライマー層
5 模様
7 凹凸模様
8 着色インキ
11 基材シート
12 表面シート
13 模様
14 易接着層
15 凹凸模様
16 着色インキ
31 被着体
Claims (4)
- 前記ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートの表面にイソシアネート基を有する樹脂からなる上塗り塗膜層を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧シート。
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