JP2004159885A - 超音波手術用チップ及びこれを備える超音波手術装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】チップ先端が水晶体核に食い込み過ぎることやパンチアウトの発生を防止しつつ、より小さな切開創での手術を容易に行えるようにする。
【解決手段】超音波振動子を持つハンドピースに取り付けられる超音波手術用チップは、振動子からの超音波振動により眼内の水晶体核を破砕乳化する細管部を持ち、該細管部の先端付近にシリコーンゴム等の軟性部材からなる鍔部を一体的に設けている。鍔部の前側面は細管部の先端より0.5〜1.5mm後方にあり、鍔部は細管部の外周より突出した0.1〜0.5mmの段差を持つ形状である。この鍔部は、チップ先端を水晶体核に打ち込んで保持する際のストッパとして機能する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、白内障によって白濁した水晶体核を破砕乳化する際に、灌流スリーブを用いずに使用する超音波手術用チップ及びこれを有する超音波手術装置に関する。
【0002】
【従来技術】
白内障により白濁した水晶体核を取り除く方法として、超音波振動によって水晶体核を破砕乳化して吸引により取り出す超音波乳化吸引法が知られている。従来、この手術では超音波振動子を持つハンドピースに管状の超音波チップを取りつける共に、このチップに灌流スリーブを被覆し、該灌流スリーブを介して灌流液を供給しつつ、水晶体核を乳化吸引していた(例えば、特許文献1参照)。この手術方法においては、チップの外径(一般に1.1mm程)より遥かに大きな径(一般に2mm程)の灌流スリーブを使用するので、眼球に形成する切開創の幅は3mm程を必要とする。
【0003】
これに対して、近年では、灌流スリーブを用いずに超音波チップを小さな切開創から挿入すると共に、別に設けたサイドポートから灌流液供給用の灌流針を挿入する二手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この術式では、径の大きな灌流スリーブを眼内に挿入しなくて済むので、小さな切開創での手術が可能になり、術後乱視の発生を抑えることができる。
【特許文献1】
特開平10−127682号公報
【特許文献2】
特開2002−204808号公報(第2頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、二手法による灌流針を利用して水晶体核を分割する場合、核にチップを打ち込んで保持すると、チップが核に食い込み過ぎたり、チップが核を突き抜けるパンチアウトが生じることがある。こうした場合、チップと核とを引き離す作業に手間が掛かり、手術時間が長引くことになる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、チップ先端が水晶体核に食い込み過ぎることやパンチアウトの発生を防止しつつ、より小さな切開創での手術を容易に行うことができる超音波手術用チップ及びこれを備える超音波手術装置を提供することを技術課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 超音波振動子を持つハンドピースに取り付けられ、前記振動子からの超音波振動により眼内の水晶体核を破砕乳化する細管部を持つ超音波手術用チップにおいて、眼内に差し込まれる細管部の先端付近に軟性部材からなる鍔部を一体的に設けたことを特徴とする。
(2) (1)の超音波手術用チップにおいて、前記鍔部の前側面は細管部の先端より0.5〜1.5mm後方に設けられていることを特徴とする。
(3) (2)の超音波手術用チップにおいて、前記鍔部は細管部の外周より突出した0.1〜0.5mmの段差を持つ形状であることを特徴とする。
(4) (2)の超音波手術用チップにおいて、細管部の軸方向における前記鍔部の幅は0.1〜2.0mmであることを特徴とする。
(5) (1)の鍔部は、細管部の外周部分に形成された溝にリング状の軟性部材を嵌め込むことにより一体的に設けられていることを特徴とする。
(6) (1)〜(5)の何れかの超音波手術用チップと、該チップを取り付けるための超音波振動用のハンドピースと、を備えることを特徴とする超音波手術装置。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る超音波手術装置の概略構成図である。
【0008】
1は術者に把持されるUSハンドピースであり、その内部の中空部には圧電素子からなる超音波振動子3が保持されている。振動子3は通電線4を介して駆動装置32から供給されるエネルギにより超音波振動を発生する。5は振動子3で発生した超音波振動を増幅するホーンであり、ホーン5と振動子3はボルト及びナット等により一体的に固定されている。
【0009】
ホーン5の先端には水晶体核を破砕乳化するための管状の超音波チップ6(以下、USチップという)がネジ止め固定されている。USチップ6はチタン合金等の金属からなる。USチップ6の構成の詳細は後述する。USチップ6の内部に設けられた吸引通路6aは、ホーン5及び振動子3等に形成された吸引通路10と連通しており、吸引通路10の後端は吸引チューブ11に接続される。吸引チューブ11には吸引ポンプ等から構成される吸引装置33により吸引圧が付与され、USチップ6の先端から吸引された廃物は図示無き廃液袋に排出される。なお、USハンドピース1には灌流液を供給するための灌流通路8が形成されている。これは、従来のUSチップと灌流スリーブを使用し、USハンドピース1から灌流液を眼内に供給する際に使用される。
【0010】
30はUSハンドピース1が接続される手術装置本体であり、31はその制御装置である。制御装置31には、駆動装置32、吸引装置33、各種の操作スイッチや表示器を持つ入力部34、フットスイッチ35、灌流装置36が接続されている。制御装置31は入力部34からの設定信号とフットスイッチ35の踏み込み位置の信号に対応して駆動装置32、吸引装置33、灌流装置36の動作を制御する。灌流装置36は、例えば、ポールに吊下げられた灌流瓶中の灌流液を制御弁の開閉により送出する構成とすることができる。灌流装置36からの灌流液は、灌流ハンドピース40に取り付けられた分割鈎付灌流針41により眼内に供給される。灌流針41は先端が屈曲した形状をしており、水晶体核を分割するときの鈎としての役目を果たす。そして、屈曲付近に設けられた孔42から灌流液が流出する構造となっている。
【0011】
図2、図3はUSチップ6の構成を説明する図であり、図2はUSチップ6の軸方向の断面図、図3はUSチップ6の先端部の外観斜視図である。USチップ6は、吸引孔を持つ針状の細管部61と、USハンドピース1に連結するための基部62と、細管部61の先端付近に設けられ、細管部61の外周より突出した鍔部63と、からなる。基部62の後端には、USハンドピース1の先端にネジ止め固定するためのネジ部62aが形成されている。鍔部63は軟性部材からなり、本実施形態ではリング状のシリコーンゴムを使用している。細管部61の先端付近の外周には溝66が形成されており、この溝66にシリコーンゴムのリングを嵌め込むことにより、鍔部63がUSチップ6に一体的に固定されている。鍔部63を細管部61に固定する方法は、接着剤であっても良い。鍔部63はチップ先端(細管部61の先端)を水晶体核に打ち込んで保持する際のストッパとして機能する。
【0012】
ここで、本実施形態のUSチップ6における細管部61の外径Aは、従来のUSチップと同じく、直径0.7〜1.2mmである。本実施形態では直径1.1mmである。内径Bも従来のものと同じく、一般に直径0.5〜0.9mmであり、本実施形態では直径0.8mmである。細管部61の軸方向の長さCは、通常、20mm程である。細管部61の外周から突出した鍔部63の段差Dは0.1〜0.5mmが好ましく、本実施形態のものは0.2mmである。段差Dが小さすぎると、水晶体核を吸引して保持するときのストッパの役目が薄れる。段差Dを大きくし過ぎると、眼内に差し込むときに形成する切開創を大きく必要とする。鍔部63の前側面63aが細管部61の先端から後方に位置する距離Eは、0.5〜1.5mmが好ましく、本実施形態では0.8mmである。この距離Eが短すぎると、細管部63による水晶体核の保持がし辛くなる。距離Eが長すぎると、細管部61が水晶体核に深く食い込み過ぎたり、水晶体核を突き抜け易くなる。
【0013】
また、鍔部63の軸方向の幅Fは0.1〜2.0mmが好ましく、本実施形態では0.8mmである。鍔部63の強度がある程度確保されれば、軸方向の幅Fはより薄い方が好ましい。一方、幅Fをあまり長くし過ぎると、細管部61を眼内に差し込んだときに、鍔部63が切開創に当たる等、眼内でのUSチップ6の操作がしにくくなる。
【0014】
本実施形態の鍔部63は、細管部61の外周より突出した段差Dがほぼ一様な円形としたが、少なくとも部分的に突出した段差を持つ形状であれば良い。例えば、図4に示すように、鍔部63の外周形状(前側面63aの形状)が小判形状であっても良い。あるいは、楕円形状や方形形状であっても良い。なお、細管部61の先端面はチップ6の軸方向に対して垂直にカットした形状であるが、15°、30°等で斜めにカットした形状であっても良い。
【0015】
次に、以上のようなUSチップを持つ超音波手術装置を使用した手術の例を説明する。手術に際し、USチップ6の細管部61を挿入するための切開創を角膜に形成する。ここで、術後乱視の発生を抑えるためや術後の縫合を無しに手術を済ませるために、切開創はより小さいことが望ましい。折り畳み式の眼内レンズを使用する場合には、小切開での手術がより有効になる。本実施形態のUSチップ6を使用した手術では灌流スリーブを使用しないため、切開創の幅は細管部61と先端付近の鍔部63が挿入できる程度の幅であれば良い。本実施形態のUSチップ6では幅1.6mm程度の切開創から挿入可能であった。細管部61を挿入する際には鍔部63が一時的に切開創を通過できれば良いので、鍔部31の軸方向の幅が薄いことにより、切開創をさほど拡大することなく細管部61を挿入できる。
【0016】
また、本実施形態のUSチップ6を使用した手術では、灌流ハンドピース40に設けた灌流針41から灌流液を眼内に供給する二手法を用いる。灌流針41の外径寸法も一般に直径1mm程度かそれ以下であるので、灌流針41を挿入するための切開創も小さくて済む。
【0017】
眼内にUSチップ6の細管部61と灌流針41を挿入した状態で術者がフットスイッチ35を操作すると、制御装置31はフットスイッチ35のポジションに応じた信号入力により、灌流装置36による灌流液の供給、吸引装置33による吸引の付与、駆動装置32によるUSハンドピース1の各動作を制御する。駆動装置32の制御により振動子3が駆動されると超音波振動が発生し、USチップ6の細管部61が軸方向に振動する。この振動により細管部61はその先端で水晶体核に衝撃を加えて核を破砕乳化する。破砕乳化した核は吸引圧の付与により先端の吸引孔から吸引され、体外に排出される。細管部31を挿入した切開創から灌流液が僅かに洩れることにより、細管部31の振動による摩擦熱が冷却される。
【0018】
水晶体核を分割して除去する場合には、USチップ6に超音波振動を掛けながら水晶体核(又は核塊)に細管部61の先端を打ち込み、吸引圧を付与して水晶体核を細管部61の先端で保持する。このとき、図5に示す如く、鍔部63がストッパの役目を果たす。鍔部63は軟質部材からなるため、この鍔部63では核を破砕乳化まで至らせず、鍔部63より前側にある細管部61の先端部分までが核に打ち込まれる。核がUSチップ6の先端で保持されたら、超音波振動を停止した状態で、灌流針41の屈曲した鈎部を核に当てつつ移動することにより、核を分割する。核を適度な大きさに分割できたら、USチップ6に超音波振動を与えることにより核を乳化吸引し、眼内から除去する。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、チップ先端が水晶体核に食い込み過ぎることやパンチアウトの発生を防止しつつ、より小さな切開創での手術を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波手術装置の概略構成図である。
【図2】USチップの軸方向の断面図である。
【図3】USチップの先端部の外観斜視図である。
【図4】USチップに設けられた鍔部の別の例を示す図である。
【図5】水晶体核をUSチップで保持する状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 USハンドピース
3 超音波振動子
6 超音波チップ
30 手術装置本体
31 制御装置
32 駆動装置
33 吸引装置
61 細管部
62 基部
63 鍔部
63a 前側面
66 溝

Claims (6)

  1. 超音波振動子を持つハンドピースに取り付けられ、前記振動子からの超音波振動により眼内の水晶体核を破砕乳化する細管部を持つ超音波手術用チップにおいて、眼内に差し込まれる細管部の先端付近に軟性部材からなる鍔部を一体的に設けたことを特徴とする超音波手術用チップ。
  2. 請求項1の超音波手術用チップにおいて、前記鍔部の前側面は細管部の先端より0.5〜1.5mm後方に設けられていることを特徴とする超音波手術用チップ。
  3. 請求項2の超音波手術用チップにおいて、前記鍔部は細管部の外周より突出した0.1〜0.5mmの段差を持つ形状であることを特徴とする超音波手術用チップ。
  4. 請求項2の超音波手術用チップにおいて、細管部の軸方向における前記鍔部の幅は0.1〜2.0mmであることを特徴とする超音波手術用チップ。
  5. 請求項1の鍔部は、細管部の外周部分に形成した溝にリング状の軟性部材を嵌め込むことにより一体的に設けられていることを特徴とする超音波手術用チップ。
  6. 上記請求項1〜5の何れかの超音波手術用チップと、該チップを取り付けるための超音波振動用のハンドピースと、を備えることを特徴とする超音波手術装置。
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