JP5685295B2 - 手術用具 - Google Patents
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Description
本発明は手術用具に関する。
眼の白内障に対する治療として、患者の白濁した水晶体の嚢内組織を摘出した後に、眼内レンズを嚢内に挿入する手術が広く行われている。白濁した水晶体の嚢内組織の除去のための代表的な手法として、超音波乳化吸引術と呼ばれる手法がある。
この手法では、超音波乳化吸引装置に接続されたハンドピースの先端部材が超音波により振動して、水晶体の嚢内を乳化(液化、ゲル化、破砕)し、乳化された組織をハンドピースから装置まで吸引する。具体的に従来より超音波乳化吸引術用のハンドピースとしては、USハンドピース(UltraSonic Handpiece、超音波ハンドピース)とI/Aハンドピース(Irrigation/Aspiration Handpiece、灌流/吸引ハンドピース)との2つが用いられる。
USハンドピースは、超音波の作用で振動する乳化用の先端部材(チップ)を備えて、その先端部材によって水晶体核など水晶体の大部分を乳化(破砕)する装備とともに、乳化された部分を吸引する装備を備える。I/Aハンドピースは、超音波の作用で振動する装備は備えず、USハンドピースによって大部分が乳化された状態で、例えば水晶体の後嚢の皮質など、嚢内に残った組織を吸引する装備を備える。USハンドピース、I/Aハンドピースはともに施術部位に灌流液を供給する機能も有する。従来の超音波乳化吸引術において、施術者はまずUSハンドピースによって水晶体内の大部分を乳化、吸引した後に、I/Aハンドピースに交換して嚢内の残りの組織を吸引して嚢内の(ほぼ)全てを除去していた。
例えば下記特許文献1には、超音波乳化吸引装置のハンドピースにおいて、吸引する物質でチューブが塞がれても作動可能なハンドピース用先端部材が提案されている。
USハンドピースおよびI/Aハンドピースは、上述のとおり施術部位に灌流液を供給する。灌流液供給の望ましい様子の例が図19に示されている。同図のとおり、灌流液はハンドピース先端の側面に備えられた孔部5からおもに横方向に放出されて、施術部位における広い領域に灌流液を供給することによって、広い領域を乳化してから、多くの破砕された水晶体などとともにハンドピース先端から回収されることが望ましい。
しかし本発明者の知見によれば、実際の灌流液供給の様子は図20のようになる。すなわち、灌流液はハンドピースに取り付けられたスリーブに形成された孔部や、本来、灌流液の出口ではないチップとスリーブの間の隙間から縦方向に放出されてしまい横方向には広がらず、その後やはり縦方向に吸引されてハンドピースに回収されてしまう(ハンドピースの構造に関しては後述)。したがって現状では、効率よく広い領域に灌流液を供給することはできていない。この点を改良することにより、より効率的な白内障手術が可能になると思われる。
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記に鑑み、灌流液放出のための孔部から放出された灌流液が適切に横方向に広がり、灌流液放出のための孔部以外からの灌流液の放出が抑制されること等により、適切に広い領域に灌流液が供給できる白内障手術用の手術用具を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る手術用具は、眼科の手術用器具に備えられた少なくとも灌流液の吸引の機能を有する棒状部の側面を、その側面との間に隙間を有するようにして覆う筒形状の筒状部と、その筒状部における前記棒状部の先端側に形成されて、前記隙間を通じて前記棒状部の根本側から供給された灌流液を流出するための孔部と、灌流液が突き当たることにより自身の形状が変化して灌流液の進行方向の障害となって前記孔部から流出した灌流液の流出方向が前記棒状部の径方向に近づくように前記筒状部に形成された、スリット又は凸部からなる方向変更部と、を備えたことを特徴とする。この発明によれば、筒状部にスリットあるいは凸部からなる方向変更部を形成することにより、灌流液の流出方向を棒状部の径方向に近づけたり、孔部以外からの灌流液の流出に対して障害となり得る。これにより、広い領域に灌流液を効率的に供給した眼科の手術が実現できる。
また、前記方向変更部は、前記孔部の内壁面に、その孔部の開口面に沿った方向に形成されたスリットを含むとしてもよい。この発明によれば、孔部の内壁面に、その孔部の開口面に沿った方向に形成されたスリットを形成することにより、灌流液の流出方向を棒状部の径方向に近づけたり、孔部以外からの灌流液の流出に対して障害となり得る。これにより、広い領域に灌流液を効率的に供給した眼科の手術が実現できる。
また、前記方向変更部は、前記筒状部の内壁面に、その筒状部の周方向に沿った方向に形成されたスリットを含むとしてもよい。この発明によれば、筒状部の内壁面に、その筒状部の周方向に沿った方向にスリットを形成することにより、孔部以外への灌流液の進行の障害となり、灌流液の流出方向を棒状部の径方向に近づけることができる。これにより、広い領域に灌流液を効率的に供給した眼科の手術が実現できる。
また、前記方向変更部は、前記孔部の内壁面に形成された凸部を含むとしてもよい。この発明によれば、孔部の内壁面に凸部を形成することにより、灌流液の流出方向を棒状部の径方向に近づけることができる。これにより、広い領域に灌流液を効率的に供給した眼科の手術が実現できる。
また、前記方向変更部は、前記筒状部の外壁面に形成された凸部を含むとしてもよい。この発明によれば、筒状部の外壁面に凸部を形成することにより、灌流液の流出方向を棒状部の径方向に近づけることができる。これにより、広い領域に灌流液を効率的に供給した眼科の手術が実現できる。
また、前記方向変更部は、前記筒状部の内壁面に形成された凸部を含むとしてもよい。この発明によれば、筒状部の内壁面に凸部を形成することにより、孔部以外への灌流液の進行の障害となり、灌流液の流出方向を棒状部の径方向に近づけることができる。これにより、広い領域に灌流液を効率的に供給した眼科の手術が実現できる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ説明する。図1および図2は本発明の手術用具の1実施形態としてのスリーブ1を示す図である。
スリーブ1は、径が小さい小径部2と、径が大きい大径部3からなる略円筒形状を有し、その先端近傍に孔部4、5を有する。なお先端とはスリーブ1が取り付けられるハンドピースにおいて手術部位へ挿入される側を指すとする。また先端側の逆側は根元側と呼称する。小径部2はスリーブ1の円筒形状における相対的に先端側の部位であり、ハンドピースのチップを隙間を有しつつ覆う部位である。
大径部3はスリーブ1の円筒形状における相対的に根元側の部位であり、ハンドピースの把持部に取り付けられる部位である。孔部4はスリーブ1の先端に形成された貫通孔であり、チップの先端がここから露出される。孔部5はスリーブ1の先端近傍の側面に形成された貫通孔であり、ここを通って灌流液が手術部位へ供給される。
スリーブ1がハンドピースに取り付けられた状態の例が図3から図5に示されている。図3は全体の様子であり、図4はUSハンドピース10に取り付けた場合、図5はI/Aハンドピース11に取り付けた場合の先端近傍の例である。
上述のとおりUSハンドピース10は白内障手術において白濁した水晶体を超音波振動により破砕、乳化して吸引するために用いられる。I/Aハンドピース11は、水晶体の大部分がUSハンドピース10によって乳化、吸引された後に、嚢内に残った皮質などを吸引するために用いられる。
USハンドピース10は、施術者が把持する円筒状の把持部分を有し、その把持部分の先端側端部にUSチップ12が取り付けられる。USチップ12は電力が供給されて超音波振動の原理で振動する。USチップ12は内部が軸方向に空洞となった略円筒形状を有し、その先端における開口部分が鋭利なカッタ120として形成された吸引孔121となっている。超音波振動によりカッタ120が振動して水晶体を破砕し、灌流液と混合して乳化する。乳化された水晶体は、灌流液などからなる廃液とともに吸引孔121から吸引される。
I/Aハンドピース11は、施術者が把持する円筒状の把持部分の先端側端部にI/Aチップ13が取り付けられた状態で使用される。I/Aチップ13は内部が空洞となった略円筒形状において先端側端部が閉鎖された頭部130となった形状を有する。頭部130の近傍の側面に吸引孔131が形成されている。頭部130は、I/Aチップ13が水晶体嚢内に挿入された際に先端側が嚢の内面などに接触しても傷つけないために例えば曲面状に形成されている。嚢内に残った皮質などは、灌流液などからなる廃液とともに吸引孔131から吸引される。
図4、図5のように取り付けられた状態で、スリーブ1に形成された孔部5から施術部位に灌流液が供給される。把持部分の根本側には灌流液通路100、廃液通路101、電力ケーブル102などのケーブルやチューブが接続されている(図3は簡略化された図であり、実際は2本あるいは3本のケーブルあるいはチューブが接続されているとすればよい)。
灌流液通路100は、図示されない制御装置に接続されて、その装置から施術部位へ灌流液を供給する通路である。廃液通路101は、図示されない制御装置に接続されて、その装置が吸引力を発生させることにより、乳化された水晶体、施術部位へ供給された灌流液などからなる廃液を施術部位から同装置へと吸引する通路である。電力ケーブル102は、図示されない制御装置に接続されて、その装置から上記の超音波振動の部位へ電力を供給するケーブルである。
図2に戻って、本発明のスリーブ1は主要な特徴として孔部5にスリット50を有する。図2に示すとおり、スリット50は、孔部5の内壁面に形成する。そして円筒形状の同内壁面に対して、スリット50の切り口が周方向に沿うように、スリット50の切込み方向が孔部5の開口面に略平となるように形成すればよい。さらにスリット50は図示のとおり、孔部5の全内壁面のうちでスリーブ先端側の内壁面にのみ形成すればよい。スリーブ1の材質は、従来のスリーブと同様に、弾性を有するゴム、シリコン、樹脂などとすればよい。
以上のようなスリーブ1による効果が図6に示されている。図6はスリーブ1がUSハンドピース10に装着された場合も、I/Aハンドピース11に装着された場合も含んでいる。図示のとおり、スリーブ1がUSハンドピース10あるいはI/Aハンドピース11に装着された状態で、灌流液通路100を通じて灌流液が供給され、スリーブ1とUSチップ12あるいはI/Aチップ13の間の隙間を通じてハンドピース先端側に進み、スリーブ1の孔部5から施術部位へ放出される。
灌流液のうちの多くの部分は、孔部5から外部へ放出される際に、進んできた勢いにより、孔部5の内壁面、特にハンドピース先端側の内壁面に突き当たることとなる。孔部5のハンドピース先端側の内壁面には、上述のとおりスリット50が形成されている。灌流液がスリット50に突き当たると、スリーブ1が弾性を有する材質で形成されていることにより、スリット50が水圧で開口する。これにより、開口したスリット50が障害となって、開口したスリット50に突き当たった灌流液はその進行方向が変更される。
図6には本発明での灌流液の進行方向の例が実線の矢印で、スリットが形成されていない従来例における灌流液の進行方向の例が破線の矢印で示されている。図6に例示するとおり、本発明ではスリット50を形成した効果により、開口したスリット50がスリーブ1の内側を通って孔部4の方向へ進む灌流液の障害となって、望ましくない孔部4からの灌流液の放出が抑制される。さらに、孔部5から流出する灌流液が開口したスリット50に当たって進行方向が変更されることにより、灌流液の進行方向が従来と比較してより横方向(ハンドピース、スリーブ1、チップ12、13にとって径方向)に変更できる。これにより、従来のUSハンドピースやI/Aハンドピースにおける図20のような灌流液の進行方向の例が抑制できて、図19のような望ましい例に近づけることができる。
本発明のスリーブは以上の例には限定されない。図7から図18は別の実施形態を示す。図7のスリーブ1aでは、小径部2の内壁面における孔部5よりも先端側の位置に、小径部2の全周方向に渡って周方向にスリット51が形成されている。スリット51は、図7のとおり、例えば先端側に向けて斜め方向に切り込んで形成すればよい。
このスリットの効果は図8に示されている。同図のとおり、灌流液が供給されるとその水圧によってスリット51が開口し、開口したスリット51がスリーブ1の内側を通って孔部4の方向へ進む灌流液の障害となって、望ましくない孔部4からの灌流液の放出が抑制される。これにより、灌流液の進行方向が孔部5の方へ適切に変更されるとともに、孔部5から放出される灌流液の進行方向もハンドピースの径方向により近くなる。このようにスリット51の形成によって灌流液の進行方向が図19に例示したような望ましい方向に変更される。
次に、図9のスリーブ1bには、上述のスリット50とスリット51がともに形成されている。この構成により、図10に示されているように、図6に示された上述の効果と図8に示された上述の効果が同時に達成される。よって灌流液の進行方向を図19に例示したような望ましい方向に効果的に変更させることが可能となる。
次に、図11のスリーブ1cには、孔部5の内壁面に凸部52が形成されている。図11のとおり、凸部52は孔部5の内壁面全体のうちでハンドピース先端側の場所に、孔部5の中心側に向かうように突出して形成すればよい。
こうした構成により、図12に示すとおり、灌流液が供給されると凸部52に当接して灌流液の進行方向が横方向(スリーブ1cの径方向)により近い方向へ変更される。このように凸部52の形成によって灌流液の進行方向が図19に例示したような望ましい方向に変更される。
次に、図13のスリーブ1dでは、スリーブ1dの外壁面に凸部53が形成されている。破線は凸部53の外縁を示す仮想的な線である。図13のとおり、凸部53はスリーブ1dの外壁面のうちで孔部5よりも先端側に隣接する場所に、孔部5に対してひさしのように張り出す形状で形成すればよい。
こうした構成により、図14に示すとおり、灌流液が供給されると凸部53が障害となって、灌流液の進行方向が横方向(スリーブ1dの径方向)により近い方向へ変更される。このように凸部53の形成によって灌流液の進行方向が図19に例示したような望ましい方向に変更される。
次に、図15のスリーブ1eでは、スリーブ1eの内壁面に凸部54が形成されている。破線は凸部54の外縁を示す仮想的な線である。図15のとおり、例えば凸部54はスリーブ1eの内壁面のうちで孔部5よりも先端側に、全周に渡って突出する形状で形成すればよい。凸部54の形成は、全周のうちの一部でもよい。
こうした構成により、図16に示すとおり、凸部54が、孔部5よりもハンドピース先端側においてチップ12(13)とスリーブ1eの隙間を埋めることとなる。これにより、灌流液が供給されると凸部54が障害となって、灌流液の孔部4方向への進行が抑制されて、灌流液の進行方向が孔部5の方へ適切に変更されるとともに、孔部5から放出される灌流液の進行方向が横方向(スリーブ1dの径方向)により近い方向へ変更される。このように凸部54の形成によって灌流液の進行方向が図19に例示したような望ましい方向に変更される。
次に、図17のスリーブ1fには、上述の凸部53と凸部54がともに形成されている。この構成により、図18に示されているように、図14に示された上述の効果と図16に示された上述の効果が同時に達成される。よって灌流液の進行方向を図19に例示したような望ましい方向に効果的に変更させることが可能となる。
以上説明した本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載された趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更可能である。さらに上記実施例は、上記のような図5と図7の組み合わせに限らず、任意に組み合わせて実施してよい。小径部に形成するスリットまたは凸部は、上記例に限らず灌流液の進行方向を横方向に変更できる位置に形成すればよい。
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f スリーブ
2 小径部(筒状部)
5 孔部
12 USチップ(棒状部)
13 I/Aチップ(棒状部)
50、51 スリット(方向変更部)
52、53、54 凸部(方向変更部)
2 小径部(筒状部)
5 孔部
12 USチップ(棒状部)
13 I/Aチップ(棒状部)
50、51 スリット(方向変更部)
52、53、54 凸部(方向変更部)
Claims (4)
- 眼科の手術用器具に備えられた少なくとも灌流液の吸引の機能を有する棒状部の側面を、その側面との間に隙間を有するようにして覆う筒形状の筒状部と、
その筒状部における前記棒状部の先端側に形成されて、前記隙間を通じて前記棒状部の根本側から供給された灌流液を流出するための孔部と、
灌流液が突き当たることにより自身の形状が変化して灌流液の進行方向の障害となって前記孔部から流出した灌流液の流出方向が前記棒状部の径方向に近づくように前記筒状部に形成された、スリット又は凸部からなる方向変更部と、
を備えたことを特徴とする手術用具。 - 前記方向変更部は、前記孔部の内壁面に、その孔部の開口面に沿った方向に形成されたスリットを含む請求項1に記載の手術用具。
- 前記方向変更部は、前記筒状部の内壁面に、その筒状部の周方向に沿った方向に形成されたスリットを含む請求項1又は2に記載の手術用具。
- 前記方向変更部は、前記孔部の内壁面に形成された凸部を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の手術用具。
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2013
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