JP2004155992A - 管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物、管ライニング材及び管ライニング工法 - Google Patents
管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物、管ライニング材及び管ライニング工法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004155992A JP2004155992A JP2002325163A JP2002325163A JP2004155992A JP 2004155992 A JP2004155992 A JP 2004155992A JP 2002325163 A JP2002325163 A JP 2002325163A JP 2002325163 A JP2002325163 A JP 2002325163A JP 2004155992 A JP2004155992 A JP 2004155992A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- resin composition
- lining material
- pipe lining
- pipe
- thermosetting resin
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Lining Or Joining Of Plastics Or The Like (AREA)
- Macromonomer-Based Addition Polymer (AREA)
Abstract
【課題】管ライニング材を製造する際の硬化性樹脂組成物の良好な含浸作業性と、硬化性樹脂組成物のタレを防止する良好な揺変性との双方を両立させることができ、優れた機械的特性を有し、かつ、回収材を使用し低コストで製造することのできる熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂a重量部、重合性単量体b重量部及び揺変性付与剤c重量部を、0.50 ≦ a/(a+b)≦ 0.70の式を満足するような割合で配合され、粘度が0.5〜8.0Pa・s、揺変度が1.2〜4.4であり、不飽和ポリエステル樹脂が、α,β−エチレン性不飽和二塩基酸を必須成分とする二塩基酸成分、ポリエチレンテレフタレートびネオペンチルグリコールを必須成分とする多価アルコール成分を、特定の割合で反応させて得られるものである管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂a重量部、重合性単量体b重量部及び揺変性付与剤c重量部を、0.50 ≦ a/(a+b)≦ 0.70の式を満足するような割合で配合され、粘度が0.5〜8.0Pa・s、揺変度が1.2〜4.4であり、不飽和ポリエステル樹脂が、α,β−エチレン性不飽和二塩基酸を必須成分とする二塩基酸成分、ポリエチレンテレフタレートびネオペンチルグリコールを必須成分とする多価アルコール成分を、特定の割合で反応させて得られるものである管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物を含浸した管状の管ライニング材を、流体圧によって、管路内に反転挿入し、この管ライニング材を管路の内側壁面に押圧したまま、含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて管路の内側に内張り管をライニングする管ライニング工法において、管ライニング材に使用される熱硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、その熱硬化性樹脂組成物を使用して得られる管ライニング材及びその管ライニング材を使用して行われる管ライニング工法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、ガス管、水道管や下水道管などの主として地中に埋設された管路に対し、既設管の強度補強や防蝕対策、漏水・浸水対策あるいは流量改善などの目的として、既設管内面に液状熱硬化性樹脂組成物を含浸した内張り用管ライニング材を流体圧などにより反転・進行させ、反転した管ライニング材を流体圧力によって既設管内面に圧着し、熱硬化性樹脂を硬化させて既設管内面に合成樹脂管を形成する反転管ライニング工法が脚光を浴びている。
【0003】
この反転管ライニング工法の工程の概略を順を追って説明すると、まず、既設管の内径全長に合致する外側に柔軟なフィルム層を有し、その内側にフェルトあるいは織布あるいは不織布を有する管状体を作製する。次に、主に液状硬化性樹脂及び硬化剤及び必要に応じて硬化促進剤からなる硬化性樹脂組成物がフェルトあるいは織布あるいは不織布に均一に含浸しやすくなるように、この管状体の内部を減圧にして空気を排除し、管状体の一方の端より徐々に管状体の全長にわたり硬化性樹脂組成物を含浸させ管ライニング材を得る。次に、この管ライニング材を冷凍状態又は冷蔵状態に維持しながら既設管の挿入口まで運搬し、空気、水圧等の流体圧により既設管に密着させながら反転し、その後、熱風、熱水蒸気、温水等を用いて既設管に密着させながら硬化させる。最後に、施工した最先端の管ライニング材止め部及び挿入部の余分な管ライニング材を切断し、内張りした管を継ぎ込んで完了する。
【0004】
この反転工法では、まず管ライニング材を製造する際、管状に形成された繊維強化材に硬化性樹脂組成物が含浸されるが、容易な含浸作業性が求められることから、使用される硬化性樹脂組成物の粘度はできるだけ低い方が望ましい。次に、硬化性樹脂組成物が含浸されて得られる管ライニング材を既設管に密着させながら流体圧により反転し、そのまま熱風、熱水蒸気、温水等を用いて硬化させる。しかし、その際、既設管の内側に密着した管ライニング材の中の繊維強化材に含浸した硬化性樹脂組成物が上部や側面部から底部にタレてしまうと、硬化後に得られる内張り管が所定の厚みを得られなくなってしまう。このことから、タレを防止するため、硬化性樹脂組成物には高い揺変性が求められる。さらに、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる既設管の内側に形成される内張り管は、既設管の破損や浸蝕、漏水・浸水の状況を考慮し、少なくとも既設管に形成された内張り管自体が自立管として機能することが望ましい。そのため、内張り管には高い機械的特性が求められる。
【0005】
また、この反転工法では、主に下水道管や農業用水管の補修に用いられていることから、これに使用される硬化性樹脂組成物は、安価であることが求められており、前述の要求特性は、安価な硬化性樹脂組成物を使用して達成されることが好ましい。
【0006】
この反転管ライニング工法について、英国では、現地硬化型パイプを用いたライニングによる下水道修理のための指導要領書が発行されている(非特許文献1参照。)。では、として、仕様書に、反転管ライニング材に使用される材料の要求品質及び管ライニング材の要求性能が記述されている。しかし、この仕様書では、主に使用される材料の品質管理項目と管理幅、管ライニング材の機械的特性・化学的耐久性の試験方法とそれら試験結果により決定される構造厚み設計についての記載に留まり、硬化性樹脂組成物の特性や要求値については具体的に触れられていない。
【0007】
一方、光硬化性樹脂組成物を含浸した繊維層を最内層とし、光不透過性のフィルムが最外層となるようにした管状管ライニング材とその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法は上記の問題点に対する解決策ではなく、工事時間の短縮化を目的としたもので、本発明とは異なる。
【0008】
また、管ライニング材の貯蔵可能期間の延長と速硬化性の両立化を目的に、特定の成分を反応させて得られるエポキシ樹脂を主成分とした主剤と、特定の化学構造を有する硬化剤とを配合したエポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照。)。しかし、エポキシ樹脂は高価であるとともに、エポキシ樹脂に硬化剤を配合したエポキシ樹脂組成物は、取扱いが難しい。また、エポキシ樹脂組成部からなる管ライニング材の使用は、一般には内圧管や上水管に限られており、反転管ライニング工法が最も行われている下水道管や農業用水管では、不飽和ポリエステル樹脂組成物やビニルエステル樹脂組成物が主流である。
【0009】
また、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂、重合性単量体及びイソシアネート化合物からなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。これは、管ライニング材を既設管内で反転する際の含浸した熱硬化性樹脂組成物のしみ出し防止と、繊維層への含浸時の作業時間短縮の双方を解決するために提案されたものであるが、実際には、熱硬化性樹脂組成物の粘度は、重合性単量体と揺変性付与剤の配合量を調整することで制御する方法が採られており、イソシアネート化合物を使用した例はない。
【0010】
さらに、内層と外層が異なる特定の太さの糸からなる不織布で構成された内外二重管構造とし、この内層を構成する不織布に粒径の小さな充填材を混入した粘度及び揺変度の高い硬化性樹脂を含浸させ、外層を構成する不織布には粒径の大きな充填材を混入した硬化性樹脂を含浸させた管ライニング材を使用する補修工法が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。しかし、この提案は、管ライニング材を反転し、硬化させる際、地下水の浸入により、管ライニング材に含浸した硬化性樹脂の硬化不良を防止するとともに、枝管ライニング材との一体化が可能な管ライニング材を提供することが目的であり、本発明の目的とは異なる。
【0011】
また、ライニング材に使用する繊維基材の製造方法とその方法により得られたライニング材を用いて行う補修方法や(特許文献7参照。)、また、ライニング材を製造する際の樹脂の注入方法についても種々の提案がある(例えば、特許文献8参照。)。しかし、これらも管ライニング材に使用する硬化性樹脂についての記載はなく、本発明の目的とは異なっている。
【0012】
以上のように、熱硬化性樹脂組成物を含浸して成る管状の管ライニング材を流体圧によって、管路内に反転挿入し、この管ライニング材を管路の内側壁面に押圧したまま、これに含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて管路の内側に内張り管をライニングする管ライニング工法においては、管ライニング材に使用される熱硬化性樹脂組成物に要求される性能及び/又は管ライニング材に要求される性能に関する検討はほとんど行われていないのが現状である。
【0013】
【非特許文献1】
UK Water Industry Engineering and Operations Committee監修、WRc plc、「Specification For Renovation Of Gravity Sewers By Lining With Cured−in place pipes(現地硬化型パイプを用いたライニングによる下水道修理のための指導要領書)」
【特許文献1】
特開平2−188227号公報(第1〜2頁)
【特許文献2】
特開平3−281223号公報(第1〜3頁)
【特許文献3】
特開平3−281224号公報(第1〜3頁)
【特許文献4】
特開平4−44830号公報(第1〜3頁)
【特許文献5】
特開平4−147834号公報(第1〜2頁)
【特許文献6】
特開平6−297574号公報(第1〜3頁)
【特許文献7】
特開2000−141484号公報(第1〜3頁)
【特許文献8】
特開2001−105496号公報(第1〜3頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の問題を解決し、(1)管ライニング材を製造する際の硬化性樹脂組成物の良好な含浸作業性と、既設管内で反転挿入後、硬化して得られる内張り管が所定の厚みを有するように、硬化性樹脂組成物のタレを防止する良好な揺変性との双方を両立させることができ、(2)優れた機械的特性を有し、かつ、(3)回収材を使用し低コストで製造することのできる熱硬化性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、さらに一層機械的特性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、熱硬化性樹脂組成物のタレを防止する良好な揺変性と、優れた機械的特性を有する管ライニング材を提供するものである。
また、本発明は、良好な揺変性と優れた機械的特性を有し、更に、自立管として機能することができる優れた機械的特性を有する内張り管を形成することのできる管ライニング材を提供するものである。
さらにまた本発明は、上記の管ライニング材を用いた管ライニング工法を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)を必須成分として含有し、不飽和ポリエステル樹脂(a)の配合量をa重量部、重合性単量体(b)の配合量をb重量部とするとき、下記式(1)
0.50 ≦ a/(a+b)≦ 0.70 (1)
を満足するような割合で配合され、粘度が0.5〜8.0Pa・sの範囲内であり、かつ揺変度が1.2〜4.4の範囲内であり、不飽和ポリエステル樹脂(a)が、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、
(III)下記式(A)
【化2】
の繰り返し単位を有するポリエチレンテレフタレートIIIモル(ただし、IIIの値は、ポリエチレンテレフタレート(III)のグラム数を式(A)の式量で割った値である。)
及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモル
を、下記式(2)〜(4)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものである管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物に関する。
0.40 ≦ I/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4)
【0016】
また本発明は、不飽和ポリエステル樹脂(a)が、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、(III)ポリエチレンテレフタレートIIIモル及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモルを、下記式(2)〜(5)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものである上記の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物に関する。
0.40 ≦ II/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4)
1.00≦(III+IV)/(I+III)≦ 1.20 (5)
また、本発明は、管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて得られる硬化物が3.0〜6.0%の範囲の引張り伸び率を有する上記の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、さらに、充填材として、炭酸カルシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含有する上記の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、繊維質の織布又は不織布あるいは両者の混合体からなる繊維強化材に上記の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を含浸させて成る管ライニング材に関する。
また、本発明は、管ライニング材を加熱することにより管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が0.8%以上の引張り伸び率を有し、かつ2.0〜4.5GPaの曲げ弾性率を有する上記管ライニング材に関する。
また、本発明は、上記の管ライニング材を、流体圧によって、管路内に反転挿入し、この管ライニング材を管路の内側壁面に押圧したまま、これに含浸した管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて管路の内側に内張り管をライニングすることを特徴とする管ライニング工法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物(以下、熱硬化性樹脂と称する。)は、不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)を必須成分として含有する。
【0019】
この熱硬化性樹脂組成物の必須成分のひとつである不飽和ポリエステル樹脂(a)としては、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、(III)下記式(A)
【化3】
の繰り返し単位を有するポリエチレンテレフタレートIIIモル(テレフタル酸(II)及びエチレングリコール(III)(ただし、IIIの値は、ポリエチレンテレフタレート(III)のグラム数を式(A)の式量で割った値である。)及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモルを、下記式(2)〜(4)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものが用いられる。
0.40 ≦ II/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4)
【0020】
不飽和ポリエステル樹脂(a)としては、不飽和ポリエステル樹脂(a)が、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、(III)ポリエチレンテレフタレートIIIモル及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモルを、下記式(2)〜(5)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものが好ましい。
0.40 ≦ II/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4)
1.00≦(III+IV)/(I+III)≦ 1.20 (5)
【0021】
二塩基酸成分(I)の必須成分として用いられるα,β−エチレン性不飽和二塩基酸(II)としては、マレイン酸、フマル酸、クロルマレイン酸等が挙げられ、マレイン酸又はフマル酸を用いることが好ましい。これらは、その酸無水物を使用することができる。
必要に応じて用いられる他の二塩基酸成分としては、飽和二塩基酸が好ましく、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらは、必要に応じてα,β−エチレン性不飽和二塩基酸(II)と併用して用いられるが、使用する場合には、管ライニング工法は、既設管の強度補強や防蝕対策、漏水・浸水対策などを目的としているため、イソフタル酸を併用することが好ましい。
【0022】
多価アルコール成分(IV)としては、ネオペンチルグリコール(V)が必須成分として用いられ、その他必要に応じて用いられる多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、水素化ビスフェノールAなどがある。
【0023】
本発明において、不飽和ポリエステル樹脂(a)の合成にポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略すことがある)(III)が用いられ、ポリエチレンテレフタレート(III)のモル数IIIは、ポリエチレンテレフタレートのグラム数を下記式(A)の式量で割った値として算出する。
【化4】
ポリエチレンテレフタレート(III)としては、ボトルなどから回収された廃PETを用いることができる。具体的には、PETボトルの回収品を米粒大に破砕、洗浄、乾燥した透明ペレットに各色調のペレットが混合したものが主体であるが、フロッピー(登録商標)ディスクの打ち抜き残部、ビデオあるいはオーディオテープの破談端部、菓子や飴、チョコレートなどの飲食品のパッケージ用容器及びこれらの検査過程で発生する不良品等が挙げられる。
【0024】
本発明における不飽和ポリエステル樹脂(a)の合成方法は、ポリエチレンテレフタレート(III)のグリコール分解を利用した方法である。例えば、廃PETに多価アルコール成分(IV)を添加し、窒素等の不活性雰囲気下、必要に応じてエステル交換触媒の存在下で、好ましくは200〜270℃、より好ましくは200〜250℃に加熱して廃PETを好ましくは3〜10時間、より好ましくは5〜7時間溶融状態に保ち、グリコール分解を行なう。このグリコール分解では、ポリエチレンテレフタレートがテレフタル酸及びエチレングリコールに分解されるが、必ずしも完全に分解される必要はなく、通常、200〜270℃の温度でポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなる程度でよい。エステル交換触媒としては、t−ブチルチタネート等を用いることができ、その量は、好ましくはポリエチレンテレフタレート(III)の重量の0.01〜0.10重量%であり、より好ましくは0.02〜0.05重量%である。このグリコール分解の後、反応混合物の温度を好ましくは30〜120℃、より好ましくは40〜100℃に下げ、二塩基酸成分(I)及び必要に応じてハイドロキノン等の重合禁止剤を添加する。重合禁止剤の量は、不飽和ポリエステル樹脂(a)の合成に用いられる必須成分である二塩基酸成分(I)、ポリエチレンテレフタレート(III)及び多価アルコール成分(IV)の総重量の0.001〜0.1重量%とすることが好ましく、0.005〜0.05重量%とすることがより好ましい。その後、好ましくは200〜240℃、より好ましくは210〜230℃で、窒素等の不活性雰囲気下に脱水縮合反応を行ない、不飽和ポリエステル樹脂(a)を得る。
【0025】
不飽和ポリエステル樹脂(a)は、重量平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算で求められるもの、以下同様)が8,000〜50,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜45,000の範囲内であることがより好ましい。また、酸価は5〜35 KOHmg/gの範囲内であることが好ましく、7〜30 KOHmg/gの範囲内であることがより好ましい。
【0026】
この不飽和ポリエステル樹脂(a)は、通常、重合性単量体(b)に溶解して用いられる。重合性単量体(b)としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の多価アルコールのメタクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールのメタクリル酸エステル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、アクリロニトリルなどが挙げられるが、安価で入手の容易なスチレンを用いるのが一般的である。
【0027】
本発明の熱硬化性樹脂組成物では、不飽和ポリエステル樹脂(a)の配合量をa重量部、重合性単量体(b)の配合量をb重量部とするとき、式(1)
0.50 ≦ a/(a+b)≦ 0.70 (1)
を満足するような割合で配合される。 a/(a+b)が0.70を超えると熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて含浸作業性が劣るようになり、一方、0.50未満であると揺変性付与の効果が十分に得られ難くなるとともに機械的特性が著しく低下する。
【0028】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には揺変性付与剤(c)が必須成分として使用される。揺変性付与剤(c)としては、シリカ粉、水素化ヒマシ油、脂肪酸アミド等の公知の揺変性付与剤をそのまま用いることができるが、入手が容易で安価な点からシリカ粉が最も好ましい。具体的には、アエロジル#200(日本アエロジル(株)製、商品名)などが挙げられる。(c)成分の配合割合は、(a)成分及び(b)成分の総量100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲で配合されるのが好ましく、0.05〜3重量部の範囲内で配合されるのがより好ましい。上記の範囲内より少ないと、揺変性付与の効果が十分に得られず、管ライニング材を既設管内で反転挿入後、硬化して得られる内張り管が所定の厚みを有するための熱硬化性樹脂組成物のタレを防止を十分に行えなくなることがある。一方、範囲内より多くなると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて含浸作業性が劣るようになることがある。
【0029】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)を必須成分とし、不飽和ポリエステル樹脂(a)の配合量をa重量部、重合性単量体(b)の配合量をb重量部とするとき、式(1)
0.50 ≦ a/(a+b)≦ 0.70 (1)
を満足するような割合で配合され、粘度が0.5〜8.0Ps・s、好ましくは1.0〜6.0Pa・sの範囲内であり、かつ揺変度が1.2〜4.4、好ましくは1.2〜4.0の範囲内であることを特徴とする。
熱硬化性樹脂組成物の粘度及び揺変度が上記の範囲より小さいと含浸作業性は良好であるが、揺変性付与の効果が十分に得られず、管ライニング材を既設管内で反転挿入後、硬化して得られる内張り管が所定の厚みを有するための熱硬化性樹脂組成物のタレを防止を十分に行えない。一方、粘度及び揺変度が上記の範囲内より大きいと含浸作業性が著しく劣るようになる。
【0030】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)を含有する熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、好ましくは3.0〜6.0%、より好ましくは4.0〜6.0%の範囲の引張り伸び率を有することが望ましい。硬化物は、例えば次のように得ることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物400gに硬化触媒としてベンゾイルパーオキサイド4.0gを加えて樹脂組成物を調製し、35cm角のポリエステルフィルムで被覆した金属板2枚の間に3mm厚のスペーサーを挟んだ型に注入する。これを、乾燥機に投入し、80℃で2時間、さらに120℃で2時間後硬化して硬化物を作製する。
【0031】
硬化物の引張り伸び率は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を所定の形状及び寸法に切断し、23℃においてJIS K7113「プラスチックの引張り試験方法」及びJIS K7162「引張り特性の試験方法」に準じて測定される。硬化物の引張り伸び率が上記の範囲内より小さいと、管ライニング材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を硬化させた後に既設管の内側に形成される内張り管にクラックが発生しやすくなる傾向があり、一方、引張り伸び率が上記の範囲内より大きいと、機械的特性が低下し、自立管として優れた機能を有する内張り管が得られ難くなることがある。
【0032】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに、充填材として、炭酸カルシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含有させることができる。炭酸カルシウムの市販品としては、ス−パ−S、ス−パ−SS、ス−パ−SSS、ス−パ−4S、ス−パ−#1500、ス−パ−#1700、ス−パ−#2000(丸尾カルシウム株式会社製、商品名)、NS#100、NS#200、NS#400、NS#600、NS#1000、NS#3000、S−Lite1200、SS#30、SS#50、SS#80(日東粉化工業株式会社製、商品名)、エスカロン#100、エスカロン#200、エスカロン#400、エスカロン#1500、エスカロン#2000、エスカロン#2200(三共精粉株式会社製、商品名)などが挙げられる。また水酸化アルミニウムの市販品としては、A−30、A−30F、A−325、A−315、A−308、A−305、C−31、C−33、C−331、C−333(アルコア化成株式会社、商品名)、B103、B153、B303、B703、BW53、BW153、BW103(日本軽金属株式会社製、商品名)、H−31、H−32、H−42、H−43、H−100、H−210、H−310、H−320(昭和電工社製、商品名)などが挙げられる。これらは単独あるいは併用して用いることができる。これらの配合割合は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)の総量100重量部に対して、5〜50重量部の範囲内で配合されるのが好ましく、10〜30重量部の範囲内で配合されるのがより好ましい。配合割合が上記の範囲内より多いと、機械的特性は良好であるが含浸作業性が著しく低下するようになり、一方、上記の範囲内より少ないと、充填材を含有することによる機械的特性の向上効果が得られにくい。
【0033】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化に際しては、硬化触媒又は硬化触媒及び硬化促進剤が用いられる。
【0034】
硬化触媒としては、特定の温度で硬化反応を開始する熱硬化剤と、有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤とが挙げられる。特定の温度で硬化反応を開始する熱硬化剤としては、特に、80℃未満でも硬化反応を開始する熱硬化剤が好ましく、パーカーボ―ネート類では、Bis−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、アルキルパーエステル類では、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、α−クメンパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシジ−2−エチルヘキサネ−ト、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、 t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、 t−ブチルパーオキシイソブチレート、2,5−ジメチル−2,5− Bis−(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジアシルパーオキサイド類では、イソブチロイルパーオキサイド、 Bis−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。また、有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤としては、メチルエチルケトンパーキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシジイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。本発明においては、80℃未満でも硬化反応を開始する熱硬化剤と有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤のそれぞれから選ばれて用いられ、必要に応じて80℃未満でも硬化反応を開始する熱硬化剤の中から2種類以上が選ばれて用いられても構わないが、 Bis−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネートが好ましい。また、必要に応じて有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤との組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤の中から2種類以上が選ばれて用いられても構わないが、クメンハイドロパーオキサイドが最も好ましい。硬化剤の使用量は、不飽和ポリエステル樹脂(a)と重合性単量体(b)の総量100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜3重量部の範囲内で用いられるのがより好ましい。
【0035】
硬化促進剤としては最も一般的である有機金属化合物、例えば、金属石鹸(酢酸、オクテン酸、ステアリン酸等の脂肪酸又はナフテン酸のMg、Ca、Zn、AL、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pb、Cu、Zr等の金属の金属塩、特に好ましくは、コバルト塩、マンガン塩)、有機金属錯体(コバルトアセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトナート等の遷移元素のアセチアセトン錯体等)、第三級アミン(N,N−ジメチルアニリン等)などが挙げられる。これらの硬化促進剤は、有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤と組み合わせて用いられる。またこれらは単独でもしくは併用して用いられる。硬化促進剤の使用量は、不飽和ポリエステル樹脂(a)と重合性単量体(b)の総量100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜2重量部の範囲内で用いられるのがより好ましい。
【0036】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、成形条件や要求特性など必要に応じて、硬化時間の調整のための硬化遅延剤や増粘剤などを添加して用いることができる。硬化遅延剤としては、例えば、ハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、メチルハイドロキノンなどが挙げられ、不飽和ポリエステル樹脂(a)及び重合性単量体(b)の総量100重量部に対して0.1重量部以下であることが好ましく、使用する場合0.001重量部以上使用することが好ましい。
【0037】
増粘剤としては、2価の金属酸化物あるいは水酸化物からなる金属化合物が使用され、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらは単独でもしくは併用して用いられる。増粘剤の使用量は、不飽和ポリエステル樹脂(a)及び重合性単量体(b)の総量100重量部に対して、3重量部以下であることが好ましく、使用する場合0.1重量部以上使用することが好ましい。
【0038】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、繊維質の織布又は不織布あるいは両者の混合体からなる繊維強化材を有する管状体に含浸させ管ライニング材を製造できる。繊維強化材としては、ポリエステル繊維が最も一般的であるが、アクリル繊維、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維などの繊維のフェルト、布、不織布などが使用できる。これらの種類、使用量などは、要求特性などに応じて選択することができ、その使用量は、熱硬化性樹脂組成物並びに必要に応じて使用する硬化遅延剤、充填材、増粘剤の総量100重量部に対して、5〜100重量部が好ましい。
【0039】
熱硬化性樹脂組成物を含浸して成る管状の管ライニング材を流体圧によって、管路内に反転挿入し、この管ライニング材を管路の内側壁面に押圧したまま、これに含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて管路の内側に内張り管をライニングする管ライニング工法において、管ライニング材の硬化物が0.8%以上、好ましくは0.8〜2.5%の引張り伸び率を有し、かつ2.0〜4.5GPaの曲げ弾性率を有することが好ましく、管ライニング材の硬化物が1.0%以上、好ましくは1.0〜2.5%の引張り伸び率を有し、かつ2.5〜4.5GPaの曲げ弾性率を有することがより好ましい。
管ライニング材の硬化物は、例えば次のように得ることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物920gに硬化促進剤として6%オクテン酸コバルトを0.92g、熱硬化剤としてBis−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを9.2g及び有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤との組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネートを4.6gを添加して、管ライニング材用樹脂組成物を調製する。次に、厚さ100μmのポリエチレン製フィルムの袋の中に、厚さ9mmで単位面積当たりの重量が0.2g/cm2の大きさ22cm×28cmのポリエステル製フェルトを入れ、調製直後の管ライニング材用樹脂組成物を注入し、真空ポンプを用いて、ポリエチレン製フィルムの袋内を減圧・脱泡しながら、ポリエステル製フェルトに管ライニング材用樹脂組成物を含浸し、ポリエチレン製フィルムを密閉して、管ライニング材を得る。得られた管ライニング材を35cm角のポリエステルフィルムで被覆した2枚の金属板の間に挟み、クランプで固定する。これを、乾燥機に投入し、室温から60℃まで20℃/時間の速度で加熱し、60℃で60分保持した後、次に60℃から85℃まで75分(昇温速度:20℃/時間)で昇温し、最後に85℃で60分保持して管ライニング材硬化物を作製する。
【0040】
管ライニング材の硬化物の引張り伸び率は、例えば、甘楽イニング材硬化物を所定の形状及び寸法に切断し、23℃においてJIS K7113「プラスチックの引張り試験方法」及びJIS K7162「引張り特性の試験方法」などに準じて測定される。引張り伸び率が上記の範囲内より小さいと、管ライニング材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を硬化させた後に既設管の内側に形成される内張り管にクラックが発生しやすくなる傾向がある。また、管ライニング材の硬化物の曲げ弾性率は、例えば、管ライニング材硬化物を所定の形状及び寸法に切断し、23℃においてJIS K7171「プラスチックの曲げ特性の試験方法」などに準じて測定される。曲げ弾性率が上記の範囲内より小さいと、機械的特性が低下するようになり、自立管として優れた機能を有する内張り管が得られ難くなる傾向があり、一方、曲げ弾性率が上記の範囲内より大きいと、機械的特性は良好であるが、管ライニング材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を硬化させた後に既設管の内側に形成される内張り管にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0041】
本発明における熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られる繊維強化材を有する管状の管ライニング材を用いて、管路の内側に内張り管をライニングする管ライニング工法において、管ライニング材を管路内に反転挿入及び管路の内側壁面に押圧する際の流体の種類及び圧力などの条件は、適宜選択することができる。通常、流体としては、空気、水等が用いられ、圧力は9.8×104〜980×104Pa(1〜100kgf/cm2)が好ましい。さらに、管路の内側壁面に押圧された管ライニング材を含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化する際の加熱温度、加熱時間などの成形条件は、前記の熱硬化剤及び/又は有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤の組み合わせ及び使用量を考慮し、適宜選択することができる。通常、加熱温度は25〜150℃が好ましく、加熱時間は0.5〜100時間が好ましい。
【0042】
【実施例】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0043】
合成例1(不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)の製造)
ポリエチレンテレフタレート1279g(0.45モル)、ネオペンチルグリコール385g(0.25モル)、ジエチレングリコール549g(0.35モル)及びt−ブチルチタネート0.32gから成る配合物を、温度計、撹拌羽根、不活性ガス導入管、コンデンサーを備えた3,000mlの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸798g(0.55モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が25KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が16KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25g(0.005%)を添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの分子量をゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算で求めたところ重量平均分子量で18,600であった。
【0044】
合成例2(不飽和ポリエステル樹脂(UP−2)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート1872g(0.65モル)、ネオペンチルグリコール312g(0.20モル)、ジエチレングリコール318g(0.20モル)及びt−ブチルチタネート0.47gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸515g(0.35モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が25KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が21KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は14,200であった。
【0045】
合成例3(不飽和ポリエステル樹脂(UP−3)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート561g(0.20モル)、ネオペンチルグリコール607g(0.40モル)、ジエチレングリコール696g(0.45モル)及びt−ブチルチタネート0.14gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸1145g(0.80モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が20KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が16KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は24,400であった。
【0046】
合成例4(不飽和ポリエステル樹脂(UP−4)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート1279g(0.45モル)、ネオペンチルグリコール77g(0.05モル)、ジエチレングリコール863g(0.55モル)及びt−ブチルチタネート0.32gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸798g(0.55モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が28KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が20KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は18,400であった。
【0047】
合成例5(不飽和ポリエステル樹脂(UP−5)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート564g(0.20モル)、ネオペンチルグリコール1223g(0.80モル)、ジエチレングリコ−ル78g(0.05モル)及びt−ブチルチタネート0.14gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸1152g(0.80モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が27KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が20KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は19,200であった。
【0048】
合成例6(不飽和ポリエステル樹脂(UP−6)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート1137g(0.40モル)、ネオペンチルグリコール770g(0.50モル)、ジエチレングリコール235g(0.15モル)及びt−ブチルチタネート0.28gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸870g(0.60モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が25KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が20KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は16,000であった。
【0049】
合成例7(不飽和ポリエステル樹脂(UP−7)の製造)
イソフタル酸850g(0.40モル)、ネオペンチルグリコール932g(0.70モル)及びハイドロキノン0.18gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で235℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が5KOHmg/gになったところで反応を止めた。
【0050】
これに、無水マレイン酸753g(0.60モル)、ジエチレンレングリコール475g(0.35モル)を加え、再び225℃まで昇温して、脱水縮合反応を行った。酸価が24KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が16KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの分子量をゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算で求めたところ重量平均分子量で18,400であった。
【0051】
製造例1(熱硬化性樹脂組成物1の製造)
合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(1)を調製した。このとき、JIS K6901に準拠して測定した粘度及び揺変度は、3.6Pa・s及び2.2であった。
【0052】
製造例2(熱硬化性樹脂組成物2の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)60重量部をスチレンモノマ40重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を0.6g加えて、熱硬化性樹脂組成物(2)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、1.0Pa・s及び1.2であった。
【0053】
製造例3(熱硬化性樹脂組成物3の製造)
製造例2と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)60重量部をスチレンモノマ40重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.8g加えて、熱硬化性樹脂組成物(3)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、5.0Pa・s及び4.0であった。
【0054】
製造例4(熱硬化性樹脂組成物4の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g加えて、熱硬化性樹脂組成物(4)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、1.8Pa・s及び1.0であった。
【0055】
製造例5(熱硬化性樹脂組成物5の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.8g加えて、熱硬化性樹脂組成物(5)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、10.2Pa・s及び5.1であった。
【0056】
製造例6(熱硬化性樹脂組成物6の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)45重量部をスチレンモノマ55重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(6)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、0.4Pa・s及び1.0であった。
【0057】
製造例7(熱硬化性樹脂組成物7の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)75重量部をスチレンモノマ25重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(7)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、8.2Pa・s及び1.2であった。
【0058】
製造例8(熱硬化性樹脂組成物8の製造)
製造例1と同様にして、合成例2で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−2)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を0.6g加えて、熱硬化性樹脂組成物(8)を調製した。しかし、このものは室温で結晶性を示し固体であった。
【0059】
製造例9(熱硬化性樹脂組成物9の製造)
製造例1と同様にして、合成例3で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−3)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(9)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、4.5Pa・s及び1.6であった。
【0060】
製造例10(熱硬化性樹脂組成物10の製造)
製造例1と同様にして、合成例4で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−4)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(10)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、3.8Pa・s及び1.3であった。
【0061】
製造例11(熱硬化性樹脂組成物11の製造)
製造例1と同様にして、合成例5で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−5)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(11)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、3.2Pa・s及び1.4であった。
【0062】
製造例12(熱硬化性樹脂組成物12の製造)
製造例1と同様にして、合成例6で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−6)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(12)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、2.2Pa・s及び2.1であった。
【0063】
製造例13(熱硬化性樹脂組成物13の製造)
製造例1と同様にして、合成例6で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−6)55重量部をスチレンモノマ45重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(13)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、0.5Pa・s及び1.0であった。
【0064】
製造例14(熱硬化性樹脂組成物14の製造)
製造例1と同様にして、合成例7で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−7)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(14)を調製した。このとき、JIS K6901に準拠して測定した粘度及び揺変度は、3.4Pa・s及び2.0であった。
【0065】
実施例1(樹脂硬化物A1、管ライニング材樹脂組成物B1及び管ライニング材C1の製造)
製造例1で得られた熱硬化性樹脂組成物(1)400gに硬化剤としてベンゾイルパーオキサイド4.0gを加えて樹脂組成物を調製し、35cm角のポリエステルフィルムで被覆した金属板2枚の間に3mm厚のスペーサーを挟んだ型に注入した。これを、乾燥機に投入し、80℃で2時間、さらに120℃で2時間後硬化して樹脂硬化物(A1)を作製した。
また、製造例1で得られた熱硬化性樹脂組成物(1)920gに硬化促進剤として6%オクテン酸コバルトを0.92g、硬化剤パーロイルTCP(日本油脂社製、商品名、Bis−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート)9.2g及びカヤエステルO−50(化薬アクゾ社製、商品名、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート)4.6gを添加し、管ライニング材用樹脂組成物(B1)を調製した。
次に、厚さ100μmのポリエチレン製フィルムの袋の中に、厚さ9mmで単位面積当たりの重量が0.2g/cm2の大きさ22cm×28cmのポリエステル製フェルトを入れ、調製直後の管ライニング材用樹脂組成物(B1)を注入した。次に、真空ポンプを用いて、ポリエチレン製フィルムの袋内を減圧・脱泡しながら、ポリエステル製フェルトに管ライニング材用樹脂組成物(B1)を含浸し、ポリエチレン製フィルムを密閉して、管ライニング材(C1)を得た。
この管ライニング材(C1)を、35cm角のポリエステルフィルムで被覆した金属板2枚の間に9mm厚のスペーサーと共に挟みクランプで固定した。固定された管ライニング材(C1)が縦になるように乾燥機に投入し、15℃から60℃まで135分(昇温速度:20℃/時間)で昇温し、60℃で60分保持した後、次に60℃から85℃まで75分(昇温速度:20℃/時間)で昇温し、最後に85℃で60分保持して、管ライニング材(C1)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D1)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D1)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B1)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D1)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0066】
実施例2(樹脂硬化物A2、管ライニング材樹脂組成物B2及び管ライニング材C2の製造)
製造例2で得られた熱硬化性樹脂組成物(2)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A2)を作製した。
また、製造例2で得られた熱硬化性樹脂組成物(2)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B2)を調製し、ついで、管ライニング材(C2)を得た。さらにこの管ライニング材(C2)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D2)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D2)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B2)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D2)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0067】
実施例3(樹脂硬化物A3、管ライニング材樹脂組成物B3及び管ライニング材C3の製造)
製造例3で得られた熱硬化性樹脂組成物(3)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A3)を作製した。
また、製造例3で得られた熱硬化性樹脂組成物(3)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B3)を調製し、ついで、管ライニング材(C3)を得た。さらにこの管ライニング材(C3)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D3)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D3)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B3)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D3)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0068】
実施例4(樹脂硬化物A12、管ライニング材樹脂組成物B12及び管ライニング材C12の製造)
製造例12で得られた熱硬化性樹脂組成物(12)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A12)を作製した。
また、製造例12で得られた熱硬化性樹脂組成物(12)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B12)を調製し、ついで、管ライニング材(C12)を得た。さらにこの管ライニング材(C12)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D12)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D12)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B12)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D12)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0069】
比較例1(樹脂硬化物A4、管ライニング材樹脂組成物B4及び管ライニング材C4の製造)
製造例4で得られた熱硬化性樹脂組成物(4)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A4)を作製した。
また、製造例4で得られた熱硬化性樹脂組成物(4)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B4)を調製し、ついで、管ライニング材(C4)を得た。さらにこの管ライニング材(C4)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D4)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D4)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B4)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D4)底部に樹脂溜まりが見られた。
【0070】
比較例2(樹脂硬化物A5、管ライニング材樹脂組成物B5及び管ライニング材C5の製造)
製造例5で得られた熱硬化性樹脂組成物(5)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A5)を作製した。
また、製造例で得られた熱硬化性樹脂組成物(5)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B5)を調製し、ついで、管ライニング材(C5)を得た。さらにこの管ライニング材(C5)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D5)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D5)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B5)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D5)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0071】
比較例3(樹脂硬化物A6、管ライニング材樹脂組成物B6及び管ライニング材C6の製造)
製造例6で得られた熱硬化性樹脂組成物(6)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A6)を作製した。
また、製造例6で得られた熱硬化性樹脂組成物(6)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B6)を調製し、ついで、管ライニング材(C6)を得た。さらにこの管ライニング材(C6)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D6)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D6)の厚さは、6mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B6)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D6)底部に樹脂溜まりが見られた。
【0072】
比較例4(樹脂硬化物A7、管ライニング材樹脂組成物B及び管ライニング材Cの製造)
製造例7で得られた熱硬化性樹脂組成物(7)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A7)を作製した。
また、製造例7で得られた熱硬化性樹脂組成物(7)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B7)を調製し、ついで、管ライニング材(C7)を得た。さらにこの管ライニング材(C7)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D7)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D7)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B7)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D7)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0073】
比較例5(樹脂硬化物A8、管ライニング材樹脂組成物B4及び管ライニング材C4の製造)
製造例8で得られた熱硬化性樹脂組成物(8)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A8)を作製しようとしたが熱硬化性樹脂組成物(8)が室温で固体であるため作製できなかった。
また、管ライニング材用樹脂組成物(B8)の調製、管ライニング材(C8)及び管ライニング材硬化物(D8)の作製も行えなかった。
【0074】
比較例6(樹脂硬化物A9、管ライニング材樹脂組成物B9及び管ライニング材C9の製造)
製造例9で得られた熱硬化性樹脂組成物(9)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A9)を作製した。
また、製造例9で得られた熱硬化性樹脂組成物(9)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B9)を調製し、ついで、管ライニング材(C9)を得た。さらにこの管ライニング材(C9)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D9)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D9)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B9)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D9)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0075】
比較例7(樹脂硬化物A10、管ライニング材樹脂組成物B10及び管ライニング材C10の製造)
製造例10で得られた熱硬化性樹脂組成物(10)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A10)を作製した。
また、製造例10で得られた熱硬化性樹脂組成物(10)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B10)を調製し、ついで、管ライニング材(C10)を得た。さらにこの管ライニング材(C10)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D10)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D10)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B10)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D10)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0076】
比較例8(樹脂硬化物A11、管ライニング材樹脂組成物B11及び管ライニング材C11の製造)
製造例11で得られた熱硬化性樹脂組成物(11)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A11)を作製した。
また、製造例で得られた熱硬化性樹脂組成物(11)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B11)を調製し、ついで、管ライニング材(C11)を得た。さらにこの管ライニング材(C11)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D11)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D11)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B11)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D11)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0077】
比較例9(樹脂硬化物A13、管ライニング材樹脂組成物B13及び管ライニング材C13の製造)
製造例13で得られた熱硬化性樹脂組成物(13)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A13)を作製した。
また、製造例で得られた熱硬化性樹脂組成物(13)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B13)を調製し、ついで、管ライニング材(C13)を得た。さらにこの管ライニング材(C13)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D13)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D13)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B13)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D13)底部に樹脂溜まりが見られた。
【0078】
比較例10(樹脂硬化物A14、管ライニング材樹脂組成物B14及び管ライニング材C14の製造)
製造例14で得られた熱硬化性樹脂組成物(14)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A14)を作製した。
また、製造例14で得られた熱硬化性樹脂組成物(14)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B14)を調製し、ついで、管ライニング材(C14)を得た。さらにこの管ライニング材(C14)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D14)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D14)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B14)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D14)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0079】
表1に不飽和ポリエステル樹脂の原料化合物の配合割合を示した。
【0080】
【表1】
【0081】
樹脂硬化物A8及びA11を除く得られた樹脂硬化物A1〜A13について、引張り特性を調べた。また、D8及びD11を除く得られた管ライニング材硬化物D1〜D13について、それぞれ曲げ特性及び引張り特性を調べた。その結果をa/b比とともに表2に示す。なお、試験方法は以下に示すとおりとした。
【0082】
曲げ特性 : JIS K7171に準じて、加熱硬化後の管ライニング材を用いて、硬化物の強度試験を行った。
引張り特性 : JIS K7113に準じて、加熱硬化後の樹脂硬化物及び管ライニング材を用いて、硬化物の強度試験を行った。
【0083】
【表2】
【0084】
【発明の効果】
請求項1、2の発明は、管ライニング材を製造する際の容易な含浸作業性と管ライニング材硬化後の内張り管の所定厚みを維持するための硬化性樹脂組成物タレを防止する優れた揺変性の双方を満足し、かつ自立管として機能することができる優れた機械的特性を有する内張り管を得るため、熱硬化性樹脂組成物、さらにはこの熱硬化性樹脂組成物を使用して得られる管ライニング材及びこれを使用した管ライニング工法を提供するものであって、請求項1記載の発明は、管ライニング材を製造する際の硬化性樹脂組成物の良好な含浸作業性と、既設管内で反転挿入後、硬化して得られる内張り管が所定の厚みを有するため、硬化性樹脂組成物のタレを防止する良好な揺変性の双方を両立できる熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
また、上記の発明は、良好な含浸作業性と揺変性の双方を両立し、かつ回収材を使用し安価で優れた機械的特性を有する熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果をより一層奏するものである。
また、請求項4記載の発明は、さらに一層機械的特性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
請求項5記載の発明は、熱硬化性樹脂組成物のタレを防止する良好な揺変性と、優れた機械的特性を有する管ライニング材を提供できる。
さらに、請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果を一層し、自立管として機能することができる優れた機械的特性を有する内張り管を提供することができる。
さらにまた、請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の内張り管を製造することができる管ライニング工法を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物を含浸した管状の管ライニング材を、流体圧によって、管路内に反転挿入し、この管ライニング材を管路の内側壁面に押圧したまま、含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて管路の内側に内張り管をライニングする管ライニング工法において、管ライニング材に使用される熱硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、その熱硬化性樹脂組成物を使用して得られる管ライニング材及びその管ライニング材を使用して行われる管ライニング工法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、ガス管、水道管や下水道管などの主として地中に埋設された管路に対し、既設管の強度補強や防蝕対策、漏水・浸水対策あるいは流量改善などの目的として、既設管内面に液状熱硬化性樹脂組成物を含浸した内張り用管ライニング材を流体圧などにより反転・進行させ、反転した管ライニング材を流体圧力によって既設管内面に圧着し、熱硬化性樹脂を硬化させて既設管内面に合成樹脂管を形成する反転管ライニング工法が脚光を浴びている。
【0003】
この反転管ライニング工法の工程の概略を順を追って説明すると、まず、既設管の内径全長に合致する外側に柔軟なフィルム層を有し、その内側にフェルトあるいは織布あるいは不織布を有する管状体を作製する。次に、主に液状硬化性樹脂及び硬化剤及び必要に応じて硬化促進剤からなる硬化性樹脂組成物がフェルトあるいは織布あるいは不織布に均一に含浸しやすくなるように、この管状体の内部を減圧にして空気を排除し、管状体の一方の端より徐々に管状体の全長にわたり硬化性樹脂組成物を含浸させ管ライニング材を得る。次に、この管ライニング材を冷凍状態又は冷蔵状態に維持しながら既設管の挿入口まで運搬し、空気、水圧等の流体圧により既設管に密着させながら反転し、その後、熱風、熱水蒸気、温水等を用いて既設管に密着させながら硬化させる。最後に、施工した最先端の管ライニング材止め部及び挿入部の余分な管ライニング材を切断し、内張りした管を継ぎ込んで完了する。
【0004】
この反転工法では、まず管ライニング材を製造する際、管状に形成された繊維強化材に硬化性樹脂組成物が含浸されるが、容易な含浸作業性が求められることから、使用される硬化性樹脂組成物の粘度はできるだけ低い方が望ましい。次に、硬化性樹脂組成物が含浸されて得られる管ライニング材を既設管に密着させながら流体圧により反転し、そのまま熱風、熱水蒸気、温水等を用いて硬化させる。しかし、その際、既設管の内側に密着した管ライニング材の中の繊維強化材に含浸した硬化性樹脂組成物が上部や側面部から底部にタレてしまうと、硬化後に得られる内張り管が所定の厚みを得られなくなってしまう。このことから、タレを防止するため、硬化性樹脂組成物には高い揺変性が求められる。さらに、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる既設管の内側に形成される内張り管は、既設管の破損や浸蝕、漏水・浸水の状況を考慮し、少なくとも既設管に形成された内張り管自体が自立管として機能することが望ましい。そのため、内張り管には高い機械的特性が求められる。
【0005】
また、この反転工法では、主に下水道管や農業用水管の補修に用いられていることから、これに使用される硬化性樹脂組成物は、安価であることが求められており、前述の要求特性は、安価な硬化性樹脂組成物を使用して達成されることが好ましい。
【0006】
この反転管ライニング工法について、英国では、現地硬化型パイプを用いたライニングによる下水道修理のための指導要領書が発行されている(非特許文献1参照。)。では、として、仕様書に、反転管ライニング材に使用される材料の要求品質及び管ライニング材の要求性能が記述されている。しかし、この仕様書では、主に使用される材料の品質管理項目と管理幅、管ライニング材の機械的特性・化学的耐久性の試験方法とそれら試験結果により決定される構造厚み設計についての記載に留まり、硬化性樹脂組成物の特性や要求値については具体的に触れられていない。
【0007】
一方、光硬化性樹脂組成物を含浸した繊維層を最内層とし、光不透過性のフィルムが最外層となるようにした管状管ライニング材とその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法は上記の問題点に対する解決策ではなく、工事時間の短縮化を目的としたもので、本発明とは異なる。
【0008】
また、管ライニング材の貯蔵可能期間の延長と速硬化性の両立化を目的に、特定の成分を反応させて得られるエポキシ樹脂を主成分とした主剤と、特定の化学構造を有する硬化剤とを配合したエポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照。)。しかし、エポキシ樹脂は高価であるとともに、エポキシ樹脂に硬化剤を配合したエポキシ樹脂組成物は、取扱いが難しい。また、エポキシ樹脂組成部からなる管ライニング材の使用は、一般には内圧管や上水管に限られており、反転管ライニング工法が最も行われている下水道管や農業用水管では、不飽和ポリエステル樹脂組成物やビニルエステル樹脂組成物が主流である。
【0009】
また、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂、重合性単量体及びイソシアネート化合物からなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。これは、管ライニング材を既設管内で反転する際の含浸した熱硬化性樹脂組成物のしみ出し防止と、繊維層への含浸時の作業時間短縮の双方を解決するために提案されたものであるが、実際には、熱硬化性樹脂組成物の粘度は、重合性単量体と揺変性付与剤の配合量を調整することで制御する方法が採られており、イソシアネート化合物を使用した例はない。
【0010】
さらに、内層と外層が異なる特定の太さの糸からなる不織布で構成された内外二重管構造とし、この内層を構成する不織布に粒径の小さな充填材を混入した粘度及び揺変度の高い硬化性樹脂を含浸させ、外層を構成する不織布には粒径の大きな充填材を混入した硬化性樹脂を含浸させた管ライニング材を使用する補修工法が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。しかし、この提案は、管ライニング材を反転し、硬化させる際、地下水の浸入により、管ライニング材に含浸した硬化性樹脂の硬化不良を防止するとともに、枝管ライニング材との一体化が可能な管ライニング材を提供することが目的であり、本発明の目的とは異なる。
【0011】
また、ライニング材に使用する繊維基材の製造方法とその方法により得られたライニング材を用いて行う補修方法や(特許文献7参照。)、また、ライニング材を製造する際の樹脂の注入方法についても種々の提案がある(例えば、特許文献8参照。)。しかし、これらも管ライニング材に使用する硬化性樹脂についての記載はなく、本発明の目的とは異なっている。
【0012】
以上のように、熱硬化性樹脂組成物を含浸して成る管状の管ライニング材を流体圧によって、管路内に反転挿入し、この管ライニング材を管路の内側壁面に押圧したまま、これに含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて管路の内側に内張り管をライニングする管ライニング工法においては、管ライニング材に使用される熱硬化性樹脂組成物に要求される性能及び/又は管ライニング材に要求される性能に関する検討はほとんど行われていないのが現状である。
【0013】
【非特許文献1】
UK Water Industry Engineering and Operations Committee監修、WRc plc、「Specification For Renovation Of Gravity Sewers By Lining With Cured−in place pipes(現地硬化型パイプを用いたライニングによる下水道修理のための指導要領書)」
【特許文献1】
特開平2−188227号公報(第1〜2頁)
【特許文献2】
特開平3−281223号公報(第1〜3頁)
【特許文献3】
特開平3−281224号公報(第1〜3頁)
【特許文献4】
特開平4−44830号公報(第1〜3頁)
【特許文献5】
特開平4−147834号公報(第1〜2頁)
【特許文献6】
特開平6−297574号公報(第1〜3頁)
【特許文献7】
特開2000−141484号公報(第1〜3頁)
【特許文献8】
特開2001−105496号公報(第1〜3頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の問題を解決し、(1)管ライニング材を製造する際の硬化性樹脂組成物の良好な含浸作業性と、既設管内で反転挿入後、硬化して得られる内張り管が所定の厚みを有するように、硬化性樹脂組成物のタレを防止する良好な揺変性との双方を両立させることができ、(2)優れた機械的特性を有し、かつ、(3)回収材を使用し低コストで製造することのできる熱硬化性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、さらに一層機械的特性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、熱硬化性樹脂組成物のタレを防止する良好な揺変性と、優れた機械的特性を有する管ライニング材を提供するものである。
また、本発明は、良好な揺変性と優れた機械的特性を有し、更に、自立管として機能することができる優れた機械的特性を有する内張り管を形成することのできる管ライニング材を提供するものである。
さらにまた本発明は、上記の管ライニング材を用いた管ライニング工法を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)を必須成分として含有し、不飽和ポリエステル樹脂(a)の配合量をa重量部、重合性単量体(b)の配合量をb重量部とするとき、下記式(1)
0.50 ≦ a/(a+b)≦ 0.70 (1)
を満足するような割合で配合され、粘度が0.5〜8.0Pa・sの範囲内であり、かつ揺変度が1.2〜4.4の範囲内であり、不飽和ポリエステル樹脂(a)が、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、
(III)下記式(A)
【化2】
の繰り返し単位を有するポリエチレンテレフタレートIIIモル(ただし、IIIの値は、ポリエチレンテレフタレート(III)のグラム数を式(A)の式量で割った値である。)
及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモル
を、下記式(2)〜(4)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものである管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物に関する。
0.40 ≦ I/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4)
【0016】
また本発明は、不飽和ポリエステル樹脂(a)が、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、(III)ポリエチレンテレフタレートIIIモル及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモルを、下記式(2)〜(5)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものである上記の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物に関する。
0.40 ≦ II/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4)
1.00≦(III+IV)/(I+III)≦ 1.20 (5)
また、本発明は、管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて得られる硬化物が3.0〜6.0%の範囲の引張り伸び率を有する上記の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、さらに、充填材として、炭酸カルシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含有する上記の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、繊維質の織布又は不織布あるいは両者の混合体からなる繊維強化材に上記の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を含浸させて成る管ライニング材に関する。
また、本発明は、管ライニング材を加熱することにより管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が0.8%以上の引張り伸び率を有し、かつ2.0〜4.5GPaの曲げ弾性率を有する上記管ライニング材に関する。
また、本発明は、上記の管ライニング材を、流体圧によって、管路内に反転挿入し、この管ライニング材を管路の内側壁面に押圧したまま、これに含浸した管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて管路の内側に内張り管をライニングすることを特徴とする管ライニング工法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物(以下、熱硬化性樹脂と称する。)は、不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)を必須成分として含有する。
【0019】
この熱硬化性樹脂組成物の必須成分のひとつである不飽和ポリエステル樹脂(a)としては、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、(III)下記式(A)
【化3】
の繰り返し単位を有するポリエチレンテレフタレートIIIモル(テレフタル酸(II)及びエチレングリコール(III)(ただし、IIIの値は、ポリエチレンテレフタレート(III)のグラム数を式(A)の式量で割った値である。)及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモルを、下記式(2)〜(4)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものが用いられる。
0.40 ≦ II/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4)
【0020】
不飽和ポリエステル樹脂(a)としては、不飽和ポリエステル樹脂(a)が、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、(III)ポリエチレンテレフタレートIIIモル及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモルを、下記式(2)〜(5)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものが好ましい。
0.40 ≦ II/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4)
1.00≦(III+IV)/(I+III)≦ 1.20 (5)
【0021】
二塩基酸成分(I)の必須成分として用いられるα,β−エチレン性不飽和二塩基酸(II)としては、マレイン酸、フマル酸、クロルマレイン酸等が挙げられ、マレイン酸又はフマル酸を用いることが好ましい。これらは、その酸無水物を使用することができる。
必要に応じて用いられる他の二塩基酸成分としては、飽和二塩基酸が好ましく、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらは、必要に応じてα,β−エチレン性不飽和二塩基酸(II)と併用して用いられるが、使用する場合には、管ライニング工法は、既設管の強度補強や防蝕対策、漏水・浸水対策などを目的としているため、イソフタル酸を併用することが好ましい。
【0022】
多価アルコール成分(IV)としては、ネオペンチルグリコール(V)が必須成分として用いられ、その他必要に応じて用いられる多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、水素化ビスフェノールAなどがある。
【0023】
本発明において、不飽和ポリエステル樹脂(a)の合成にポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略すことがある)(III)が用いられ、ポリエチレンテレフタレート(III)のモル数IIIは、ポリエチレンテレフタレートのグラム数を下記式(A)の式量で割った値として算出する。
【化4】
ポリエチレンテレフタレート(III)としては、ボトルなどから回収された廃PETを用いることができる。具体的には、PETボトルの回収品を米粒大に破砕、洗浄、乾燥した透明ペレットに各色調のペレットが混合したものが主体であるが、フロッピー(登録商標)ディスクの打ち抜き残部、ビデオあるいはオーディオテープの破談端部、菓子や飴、チョコレートなどの飲食品のパッケージ用容器及びこれらの検査過程で発生する不良品等が挙げられる。
【0024】
本発明における不飽和ポリエステル樹脂(a)の合成方法は、ポリエチレンテレフタレート(III)のグリコール分解を利用した方法である。例えば、廃PETに多価アルコール成分(IV)を添加し、窒素等の不活性雰囲気下、必要に応じてエステル交換触媒の存在下で、好ましくは200〜270℃、より好ましくは200〜250℃に加熱して廃PETを好ましくは3〜10時間、より好ましくは5〜7時間溶融状態に保ち、グリコール分解を行なう。このグリコール分解では、ポリエチレンテレフタレートがテレフタル酸及びエチレングリコールに分解されるが、必ずしも完全に分解される必要はなく、通常、200〜270℃の温度でポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなる程度でよい。エステル交換触媒としては、t−ブチルチタネート等を用いることができ、その量は、好ましくはポリエチレンテレフタレート(III)の重量の0.01〜0.10重量%であり、より好ましくは0.02〜0.05重量%である。このグリコール分解の後、反応混合物の温度を好ましくは30〜120℃、より好ましくは40〜100℃に下げ、二塩基酸成分(I)及び必要に応じてハイドロキノン等の重合禁止剤を添加する。重合禁止剤の量は、不飽和ポリエステル樹脂(a)の合成に用いられる必須成分である二塩基酸成分(I)、ポリエチレンテレフタレート(III)及び多価アルコール成分(IV)の総重量の0.001〜0.1重量%とすることが好ましく、0.005〜0.05重量%とすることがより好ましい。その後、好ましくは200〜240℃、より好ましくは210〜230℃で、窒素等の不活性雰囲気下に脱水縮合反応を行ない、不飽和ポリエステル樹脂(a)を得る。
【0025】
不飽和ポリエステル樹脂(a)は、重量平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算で求められるもの、以下同様)が8,000〜50,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜45,000の範囲内であることがより好ましい。また、酸価は5〜35 KOHmg/gの範囲内であることが好ましく、7〜30 KOHmg/gの範囲内であることがより好ましい。
【0026】
この不飽和ポリエステル樹脂(a)は、通常、重合性単量体(b)に溶解して用いられる。重合性単量体(b)としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の多価アルコールのメタクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールのメタクリル酸エステル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、アクリロニトリルなどが挙げられるが、安価で入手の容易なスチレンを用いるのが一般的である。
【0027】
本発明の熱硬化性樹脂組成物では、不飽和ポリエステル樹脂(a)の配合量をa重量部、重合性単量体(b)の配合量をb重量部とするとき、式(1)
0.50 ≦ a/(a+b)≦ 0.70 (1)
を満足するような割合で配合される。 a/(a+b)が0.70を超えると熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて含浸作業性が劣るようになり、一方、0.50未満であると揺変性付与の効果が十分に得られ難くなるとともに機械的特性が著しく低下する。
【0028】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には揺変性付与剤(c)が必須成分として使用される。揺変性付与剤(c)としては、シリカ粉、水素化ヒマシ油、脂肪酸アミド等の公知の揺変性付与剤をそのまま用いることができるが、入手が容易で安価な点からシリカ粉が最も好ましい。具体的には、アエロジル#200(日本アエロジル(株)製、商品名)などが挙げられる。(c)成分の配合割合は、(a)成分及び(b)成分の総量100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲で配合されるのが好ましく、0.05〜3重量部の範囲内で配合されるのがより好ましい。上記の範囲内より少ないと、揺変性付与の効果が十分に得られず、管ライニング材を既設管内で反転挿入後、硬化して得られる内張り管が所定の厚みを有するための熱硬化性樹脂組成物のタレを防止を十分に行えなくなることがある。一方、範囲内より多くなると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて含浸作業性が劣るようになることがある。
【0029】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)を必須成分とし、不飽和ポリエステル樹脂(a)の配合量をa重量部、重合性単量体(b)の配合量をb重量部とするとき、式(1)
0.50 ≦ a/(a+b)≦ 0.70 (1)
を満足するような割合で配合され、粘度が0.5〜8.0Ps・s、好ましくは1.0〜6.0Pa・sの範囲内であり、かつ揺変度が1.2〜4.4、好ましくは1.2〜4.0の範囲内であることを特徴とする。
熱硬化性樹脂組成物の粘度及び揺変度が上記の範囲より小さいと含浸作業性は良好であるが、揺変性付与の効果が十分に得られず、管ライニング材を既設管内で反転挿入後、硬化して得られる内張り管が所定の厚みを有するための熱硬化性樹脂組成物のタレを防止を十分に行えない。一方、粘度及び揺変度が上記の範囲内より大きいと含浸作業性が著しく劣るようになる。
【0030】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)を含有する熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、好ましくは3.0〜6.0%、より好ましくは4.0〜6.0%の範囲の引張り伸び率を有することが望ましい。硬化物は、例えば次のように得ることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物400gに硬化触媒としてベンゾイルパーオキサイド4.0gを加えて樹脂組成物を調製し、35cm角のポリエステルフィルムで被覆した金属板2枚の間に3mm厚のスペーサーを挟んだ型に注入する。これを、乾燥機に投入し、80℃で2時間、さらに120℃で2時間後硬化して硬化物を作製する。
【0031】
硬化物の引張り伸び率は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を所定の形状及び寸法に切断し、23℃においてJIS K7113「プラスチックの引張り試験方法」及びJIS K7162「引張り特性の試験方法」に準じて測定される。硬化物の引張り伸び率が上記の範囲内より小さいと、管ライニング材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を硬化させた後に既設管の内側に形成される内張り管にクラックが発生しやすくなる傾向があり、一方、引張り伸び率が上記の範囲内より大きいと、機械的特性が低下し、自立管として優れた機能を有する内張り管が得られ難くなることがある。
【0032】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに、充填材として、炭酸カルシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含有させることができる。炭酸カルシウムの市販品としては、ス−パ−S、ス−パ−SS、ス−パ−SSS、ス−パ−4S、ス−パ−#1500、ス−パ−#1700、ス−パ−#2000(丸尾カルシウム株式会社製、商品名)、NS#100、NS#200、NS#400、NS#600、NS#1000、NS#3000、S−Lite1200、SS#30、SS#50、SS#80(日東粉化工業株式会社製、商品名)、エスカロン#100、エスカロン#200、エスカロン#400、エスカロン#1500、エスカロン#2000、エスカロン#2200(三共精粉株式会社製、商品名)などが挙げられる。また水酸化アルミニウムの市販品としては、A−30、A−30F、A−325、A−315、A−308、A−305、C−31、C−33、C−331、C−333(アルコア化成株式会社、商品名)、B103、B153、B303、B703、BW53、BW153、BW103(日本軽金属株式会社製、商品名)、H−31、H−32、H−42、H−43、H−100、H−210、H−310、H−320(昭和電工社製、商品名)などが挙げられる。これらは単独あるいは併用して用いることができる。これらの配合割合は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)の総量100重量部に対して、5〜50重量部の範囲内で配合されるのが好ましく、10〜30重量部の範囲内で配合されるのがより好ましい。配合割合が上記の範囲内より多いと、機械的特性は良好であるが含浸作業性が著しく低下するようになり、一方、上記の範囲内より少ないと、充填材を含有することによる機械的特性の向上効果が得られにくい。
【0033】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化に際しては、硬化触媒又は硬化触媒及び硬化促進剤が用いられる。
【0034】
硬化触媒としては、特定の温度で硬化反応を開始する熱硬化剤と、有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤とが挙げられる。特定の温度で硬化反応を開始する熱硬化剤としては、特に、80℃未満でも硬化反応を開始する熱硬化剤が好ましく、パーカーボ―ネート類では、Bis−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、アルキルパーエステル類では、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、α−クメンパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシジ−2−エチルヘキサネ−ト、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、 t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、 t−ブチルパーオキシイソブチレート、2,5−ジメチル−2,5− Bis−(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジアシルパーオキサイド類では、イソブチロイルパーオキサイド、 Bis−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。また、有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤としては、メチルエチルケトンパーキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシジイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。本発明においては、80℃未満でも硬化反応を開始する熱硬化剤と有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤のそれぞれから選ばれて用いられ、必要に応じて80℃未満でも硬化反応を開始する熱硬化剤の中から2種類以上が選ばれて用いられても構わないが、 Bis−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネートが好ましい。また、必要に応じて有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤との組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤の中から2種類以上が選ばれて用いられても構わないが、クメンハイドロパーオキサイドが最も好ましい。硬化剤の使用量は、不飽和ポリエステル樹脂(a)と重合性単量体(b)の総量100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜3重量部の範囲内で用いられるのがより好ましい。
【0035】
硬化促進剤としては最も一般的である有機金属化合物、例えば、金属石鹸(酢酸、オクテン酸、ステアリン酸等の脂肪酸又はナフテン酸のMg、Ca、Zn、AL、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pb、Cu、Zr等の金属の金属塩、特に好ましくは、コバルト塩、マンガン塩)、有機金属錯体(コバルトアセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトナート等の遷移元素のアセチアセトン錯体等)、第三級アミン(N,N−ジメチルアニリン等)などが挙げられる。これらの硬化促進剤は、有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤と組み合わせて用いられる。またこれらは単独でもしくは併用して用いられる。硬化促進剤の使用量は、不飽和ポリエステル樹脂(a)と重合性単量体(b)の総量100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜2重量部の範囲内で用いられるのがより好ましい。
【0036】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、成形条件や要求特性など必要に応じて、硬化時間の調整のための硬化遅延剤や増粘剤などを添加して用いることができる。硬化遅延剤としては、例えば、ハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、メチルハイドロキノンなどが挙げられ、不飽和ポリエステル樹脂(a)及び重合性単量体(b)の総量100重量部に対して0.1重量部以下であることが好ましく、使用する場合0.001重量部以上使用することが好ましい。
【0037】
増粘剤としては、2価の金属酸化物あるいは水酸化物からなる金属化合物が使用され、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらは単独でもしくは併用して用いられる。増粘剤の使用量は、不飽和ポリエステル樹脂(a)及び重合性単量体(b)の総量100重量部に対して、3重量部以下であることが好ましく、使用する場合0.1重量部以上使用することが好ましい。
【0038】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、繊維質の織布又は不織布あるいは両者の混合体からなる繊維強化材を有する管状体に含浸させ管ライニング材を製造できる。繊維強化材としては、ポリエステル繊維が最も一般的であるが、アクリル繊維、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維などの繊維のフェルト、布、不織布などが使用できる。これらの種類、使用量などは、要求特性などに応じて選択することができ、その使用量は、熱硬化性樹脂組成物並びに必要に応じて使用する硬化遅延剤、充填材、増粘剤の総量100重量部に対して、5〜100重量部が好ましい。
【0039】
熱硬化性樹脂組成物を含浸して成る管状の管ライニング材を流体圧によって、管路内に反転挿入し、この管ライニング材を管路の内側壁面に押圧したまま、これに含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて管路の内側に内張り管をライニングする管ライニング工法において、管ライニング材の硬化物が0.8%以上、好ましくは0.8〜2.5%の引張り伸び率を有し、かつ2.0〜4.5GPaの曲げ弾性率を有することが好ましく、管ライニング材の硬化物が1.0%以上、好ましくは1.0〜2.5%の引張り伸び率を有し、かつ2.5〜4.5GPaの曲げ弾性率を有することがより好ましい。
管ライニング材の硬化物は、例えば次のように得ることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物920gに硬化促進剤として6%オクテン酸コバルトを0.92g、熱硬化剤としてBis−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを9.2g及び有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤との組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネートを4.6gを添加して、管ライニング材用樹脂組成物を調製する。次に、厚さ100μmのポリエチレン製フィルムの袋の中に、厚さ9mmで単位面積当たりの重量が0.2g/cm2の大きさ22cm×28cmのポリエステル製フェルトを入れ、調製直後の管ライニング材用樹脂組成物を注入し、真空ポンプを用いて、ポリエチレン製フィルムの袋内を減圧・脱泡しながら、ポリエステル製フェルトに管ライニング材用樹脂組成物を含浸し、ポリエチレン製フィルムを密閉して、管ライニング材を得る。得られた管ライニング材を35cm角のポリエステルフィルムで被覆した2枚の金属板の間に挟み、クランプで固定する。これを、乾燥機に投入し、室温から60℃まで20℃/時間の速度で加熱し、60℃で60分保持した後、次に60℃から85℃まで75分(昇温速度:20℃/時間)で昇温し、最後に85℃で60分保持して管ライニング材硬化物を作製する。
【0040】
管ライニング材の硬化物の引張り伸び率は、例えば、甘楽イニング材硬化物を所定の形状及び寸法に切断し、23℃においてJIS K7113「プラスチックの引張り試験方法」及びJIS K7162「引張り特性の試験方法」などに準じて測定される。引張り伸び率が上記の範囲内より小さいと、管ライニング材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を硬化させた後に既設管の内側に形成される内張り管にクラックが発生しやすくなる傾向がある。また、管ライニング材の硬化物の曲げ弾性率は、例えば、管ライニング材硬化物を所定の形状及び寸法に切断し、23℃においてJIS K7171「プラスチックの曲げ特性の試験方法」などに準じて測定される。曲げ弾性率が上記の範囲内より小さいと、機械的特性が低下するようになり、自立管として優れた機能を有する内張り管が得られ難くなる傾向があり、一方、曲げ弾性率が上記の範囲内より大きいと、機械的特性は良好であるが、管ライニング材に含浸した熱硬化性樹脂組成物を硬化させた後に既設管の内側に形成される内張り管にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0041】
本発明における熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られる繊維強化材を有する管状の管ライニング材を用いて、管路の内側に内張り管をライニングする管ライニング工法において、管ライニング材を管路内に反転挿入及び管路の内側壁面に押圧する際の流体の種類及び圧力などの条件は、適宜選択することができる。通常、流体としては、空気、水等が用いられ、圧力は9.8×104〜980×104Pa(1〜100kgf/cm2)が好ましい。さらに、管路の内側壁面に押圧された管ライニング材を含浸した熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化する際の加熱温度、加熱時間などの成形条件は、前記の熱硬化剤及び/又は有機金属化合物又は金属を含有する硬化促進剤又は第三級アミンとの組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤の組み合わせ及び使用量を考慮し、適宜選択することができる。通常、加熱温度は25〜150℃が好ましく、加熱時間は0.5〜100時間が好ましい。
【0042】
【実施例】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0043】
合成例1(不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)の製造)
ポリエチレンテレフタレート1279g(0.45モル)、ネオペンチルグリコール385g(0.25モル)、ジエチレングリコール549g(0.35モル)及びt−ブチルチタネート0.32gから成る配合物を、温度計、撹拌羽根、不活性ガス導入管、コンデンサーを備えた3,000mlの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸798g(0.55モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が25KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が16KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25g(0.005%)を添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの分子量をゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算で求めたところ重量平均分子量で18,600であった。
【0044】
合成例2(不飽和ポリエステル樹脂(UP−2)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート1872g(0.65モル)、ネオペンチルグリコール312g(0.20モル)、ジエチレングリコール318g(0.20モル)及びt−ブチルチタネート0.47gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸515g(0.35モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が25KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が21KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は14,200であった。
【0045】
合成例3(不飽和ポリエステル樹脂(UP−3)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート561g(0.20モル)、ネオペンチルグリコール607g(0.40モル)、ジエチレングリコール696g(0.45モル)及びt−ブチルチタネート0.14gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸1145g(0.80モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が20KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が16KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は24,400であった。
【0046】
合成例4(不飽和ポリエステル樹脂(UP−4)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート1279g(0.45モル)、ネオペンチルグリコール77g(0.05モル)、ジエチレングリコール863g(0.55モル)及びt−ブチルチタネート0.32gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸798g(0.55モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が28KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が20KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は18,400であった。
【0047】
合成例5(不飽和ポリエステル樹脂(UP−5)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート564g(0.20モル)、ネオペンチルグリコール1223g(0.80モル)、ジエチレングリコ−ル78g(0.05モル)及びt−ブチルチタネート0.14gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸1152g(0.80モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が27KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が20KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は19,200であった。
【0048】
合成例6(不飽和ポリエステル樹脂(UP−6)の製造)
合成例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート1137g(0.40モル)、ネオペンチルグリコール770g(0.50モル)、ジエチレングリコール235g(0.15モル)及びt−ブチルチタネート0.28gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で205℃まで昇温し、通常の方法にてグリコール分解反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの粒状物が見られなくなったところで、反応温度を120℃に下げ、これに、無水マレイン酸870g(0.60モル)及びハイドロキノン0.15g(0.005%)を加え、再び窒素気流下で225℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が25KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が20KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの重量平均分子量は16,000であった。
【0049】
合成例7(不飽和ポリエステル樹脂(UP−7)の製造)
イソフタル酸850g(0.40モル)、ネオペンチルグリコール932g(0.70モル)及びハイドロキノン0.18gから成る配合物を、合成例1と同様の装置に仕込み、窒素気流下で235℃まで昇温し、通常の方法にて脱水縮合反応を行った。酸価が5KOHmg/gになったところで反応を止めた。
【0050】
これに、無水マレイン酸753g(0.60モル)、ジエチレンレングリコール475g(0.35モル)を加え、再び225℃まで昇温して、脱水縮合反応を行った。酸価が24KOHmg/gになったところで、反応温度を215℃に下げ、そのまま反応を続けた。酸価が16KOHmg/gになったところで反応を止めた。これに、ハイドロキノン0.25gを添加して、不飽和ポリエステル樹脂を得た。このものの分子量をゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算で求めたところ重量平均分子量で18,400であった。
【0051】
製造例1(熱硬化性樹脂組成物1の製造)
合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(1)を調製した。このとき、JIS K6901に準拠して測定した粘度及び揺変度は、3.6Pa・s及び2.2であった。
【0052】
製造例2(熱硬化性樹脂組成物2の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)60重量部をスチレンモノマ40重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を0.6g加えて、熱硬化性樹脂組成物(2)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、1.0Pa・s及び1.2であった。
【0053】
製造例3(熱硬化性樹脂組成物3の製造)
製造例2と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)60重量部をスチレンモノマ40重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.8g加えて、熱硬化性樹脂組成物(3)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、5.0Pa・s及び4.0であった。
【0054】
製造例4(熱硬化性樹脂組成物4の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g加えて、熱硬化性樹脂組成物(4)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、1.8Pa・s及び1.0であった。
【0055】
製造例5(熱硬化性樹脂組成物5の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.8g加えて、熱硬化性樹脂組成物(5)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、10.2Pa・s及び5.1であった。
【0056】
製造例6(熱硬化性樹脂組成物6の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)45重量部をスチレンモノマ55重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(6)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、0.4Pa・s及び1.0であった。
【0057】
製造例7(熱硬化性樹脂組成物7の製造)
製造例1と同様にして、合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−1)75重量部をスチレンモノマ25重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(7)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、8.2Pa・s及び1.2であった。
【0058】
製造例8(熱硬化性樹脂組成物8の製造)
製造例1と同様にして、合成例2で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−2)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を0.6g加えて、熱硬化性樹脂組成物(8)を調製した。しかし、このものは室温で結晶性を示し固体であった。
【0059】
製造例9(熱硬化性樹脂組成物9の製造)
製造例1と同様にして、合成例3で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−3)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(9)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、4.5Pa・s及び1.6であった。
【0060】
製造例10(熱硬化性樹脂組成物10の製造)
製造例1と同様にして、合成例4で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−4)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(10)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、3.8Pa・s及び1.3であった。
【0061】
製造例11(熱硬化性樹脂組成物11の製造)
製造例1と同様にして、合成例5で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−5)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(11)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、3.2Pa・s及び1.4であった。
【0062】
製造例12(熱硬化性樹脂組成物12の製造)
製造例1と同様にして、合成例6で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−6)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(12)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、2.2Pa・s及び2.1であった。
【0063】
製造例13(熱硬化性樹脂組成物13の製造)
製造例1と同様にして、合成例6で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−6)55重量部をスチレンモノマ45重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(13)を調製した。このときの粘度及び揺変度は、0.5Pa・s及び1.0であった。
【0064】
製造例14(熱硬化性樹脂組成物14の製造)
製造例1と同様にして、合成例7で得られた不飽和ポリエステル樹脂(UP−7)65重量部をスチレンモノマ35重量部に溶解し、さらに2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.003g及びアエロジル#200を1.2g加えて、熱硬化性樹脂組成物(14)を調製した。このとき、JIS K6901に準拠して測定した粘度及び揺変度は、3.4Pa・s及び2.0であった。
【0065】
実施例1(樹脂硬化物A1、管ライニング材樹脂組成物B1及び管ライニング材C1の製造)
製造例1で得られた熱硬化性樹脂組成物(1)400gに硬化剤としてベンゾイルパーオキサイド4.0gを加えて樹脂組成物を調製し、35cm角のポリエステルフィルムで被覆した金属板2枚の間に3mm厚のスペーサーを挟んだ型に注入した。これを、乾燥機に投入し、80℃で2時間、さらに120℃で2時間後硬化して樹脂硬化物(A1)を作製した。
また、製造例1で得られた熱硬化性樹脂組成物(1)920gに硬化促進剤として6%オクテン酸コバルトを0.92g、硬化剤パーロイルTCP(日本油脂社製、商品名、Bis−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート)9.2g及びカヤエステルO−50(化薬アクゾ社製、商品名、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート)4.6gを添加し、管ライニング材用樹脂組成物(B1)を調製した。
次に、厚さ100μmのポリエチレン製フィルムの袋の中に、厚さ9mmで単位面積当たりの重量が0.2g/cm2の大きさ22cm×28cmのポリエステル製フェルトを入れ、調製直後の管ライニング材用樹脂組成物(B1)を注入した。次に、真空ポンプを用いて、ポリエチレン製フィルムの袋内を減圧・脱泡しながら、ポリエステル製フェルトに管ライニング材用樹脂組成物(B1)を含浸し、ポリエチレン製フィルムを密閉して、管ライニング材(C1)を得た。
この管ライニング材(C1)を、35cm角のポリエステルフィルムで被覆した金属板2枚の間に9mm厚のスペーサーと共に挟みクランプで固定した。固定された管ライニング材(C1)が縦になるように乾燥機に投入し、15℃から60℃まで135分(昇温速度:20℃/時間)で昇温し、60℃で60分保持した後、次に60℃から85℃まで75分(昇温速度:20℃/時間)で昇温し、最後に85℃で60分保持して、管ライニング材(C1)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D1)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D1)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B1)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D1)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0066】
実施例2(樹脂硬化物A2、管ライニング材樹脂組成物B2及び管ライニング材C2の製造)
製造例2で得られた熱硬化性樹脂組成物(2)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A2)を作製した。
また、製造例2で得られた熱硬化性樹脂組成物(2)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B2)を調製し、ついで、管ライニング材(C2)を得た。さらにこの管ライニング材(C2)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D2)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D2)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B2)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D2)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0067】
実施例3(樹脂硬化物A3、管ライニング材樹脂組成物B3及び管ライニング材C3の製造)
製造例3で得られた熱硬化性樹脂組成物(3)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A3)を作製した。
また、製造例3で得られた熱硬化性樹脂組成物(3)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B3)を調製し、ついで、管ライニング材(C3)を得た。さらにこの管ライニング材(C3)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D3)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D3)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B3)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D3)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0068】
実施例4(樹脂硬化物A12、管ライニング材樹脂組成物B12及び管ライニング材C12の製造)
製造例12で得られた熱硬化性樹脂組成物(12)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A12)を作製した。
また、製造例12で得られた熱硬化性樹脂組成物(12)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B12)を調製し、ついで、管ライニング材(C12)を得た。さらにこの管ライニング材(C12)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D12)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D12)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B12)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D12)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0069】
比較例1(樹脂硬化物A4、管ライニング材樹脂組成物B4及び管ライニング材C4の製造)
製造例4で得られた熱硬化性樹脂組成物(4)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A4)を作製した。
また、製造例4で得られた熱硬化性樹脂組成物(4)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B4)を調製し、ついで、管ライニング材(C4)を得た。さらにこの管ライニング材(C4)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D4)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D4)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B4)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D4)底部に樹脂溜まりが見られた。
【0070】
比較例2(樹脂硬化物A5、管ライニング材樹脂組成物B5及び管ライニング材C5の製造)
製造例5で得られた熱硬化性樹脂組成物(5)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A5)を作製した。
また、製造例で得られた熱硬化性樹脂組成物(5)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B5)を調製し、ついで、管ライニング材(C5)を得た。さらにこの管ライニング材(C5)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D5)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D5)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B5)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D5)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0071】
比較例3(樹脂硬化物A6、管ライニング材樹脂組成物B6及び管ライニング材C6の製造)
製造例6で得られた熱硬化性樹脂組成物(6)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A6)を作製した。
また、製造例6で得られた熱硬化性樹脂組成物(6)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B6)を調製し、ついで、管ライニング材(C6)を得た。さらにこの管ライニング材(C6)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D6)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D6)の厚さは、6mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B6)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D6)底部に樹脂溜まりが見られた。
【0072】
比較例4(樹脂硬化物A7、管ライニング材樹脂組成物B及び管ライニング材Cの製造)
製造例7で得られた熱硬化性樹脂組成物(7)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A7)を作製した。
また、製造例7で得られた熱硬化性樹脂組成物(7)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B7)を調製し、ついで、管ライニング材(C7)を得た。さらにこの管ライニング材(C7)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D7)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D7)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B7)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D7)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0073】
比較例5(樹脂硬化物A8、管ライニング材樹脂組成物B4及び管ライニング材C4の製造)
製造例8で得られた熱硬化性樹脂組成物(8)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A8)を作製しようとしたが熱硬化性樹脂組成物(8)が室温で固体であるため作製できなかった。
また、管ライニング材用樹脂組成物(B8)の調製、管ライニング材(C8)及び管ライニング材硬化物(D8)の作製も行えなかった。
【0074】
比較例6(樹脂硬化物A9、管ライニング材樹脂組成物B9及び管ライニング材C9の製造)
製造例9で得られた熱硬化性樹脂組成物(9)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A9)を作製した。
また、製造例9で得られた熱硬化性樹脂組成物(9)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B9)を調製し、ついで、管ライニング材(C9)を得た。さらにこの管ライニング材(C9)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D9)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D9)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B9)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D9)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0075】
比較例7(樹脂硬化物A10、管ライニング材樹脂組成物B10及び管ライニング材C10の製造)
製造例10で得られた熱硬化性樹脂組成物(10)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A10)を作製した。
また、製造例10で得られた熱硬化性樹脂組成物(10)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B10)を調製し、ついで、管ライニング材(C10)を得た。さらにこの管ライニング材(C10)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D10)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D10)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B10)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D10)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0076】
比較例8(樹脂硬化物A11、管ライニング材樹脂組成物B11及び管ライニング材C11の製造)
製造例11で得られた熱硬化性樹脂組成物(11)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A11)を作製した。
また、製造例で得られた熱硬化性樹脂組成物(11)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B11)を調製し、ついで、管ライニング材(C11)を得た。さらにこの管ライニング材(C11)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D11)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D11)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B11)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D11)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0077】
比較例9(樹脂硬化物A13、管ライニング材樹脂組成物B13及び管ライニング材C13の製造)
製造例13で得られた熱硬化性樹脂組成物(13)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A13)を作製した。
また、製造例で得られた熱硬化性樹脂組成物(13)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B13)を調製し、ついで、管ライニング材(C13)を得た。さらにこの管ライニング材(C13)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D13)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D13)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B13)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D13)底部に樹脂溜まりが見られた。
【0078】
比較例10(樹脂硬化物A14、管ライニング材樹脂組成物B14及び管ライニング材C14の製造)
製造例14で得られた熱硬化性樹脂組成物(14)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、樹脂硬化物(A14)を作製した。
また、製造例14で得られた熱硬化性樹脂組成物(14)を用いる以外はすべて、実施例1と同様にして、管ライニング材用樹脂組成物(B14)を調製し、ついで、管ライニング材(C14)を得た。さらにこの管ライニング材(C14)を硬化させ、管ライニング材硬化物(D14)を得た。このとき得られた管ライニング硬化物(D14)の厚さは、9mmで、管ライニング材用樹脂組成物(B14)のタレによる厚みの減少及び管ライニング材硬化物(D14)底部に樹脂溜まりは見られなかった。
【0079】
表1に不飽和ポリエステル樹脂の原料化合物の配合割合を示した。
【0080】
【表1】
【0081】
樹脂硬化物A8及びA11を除く得られた樹脂硬化物A1〜A13について、引張り特性を調べた。また、D8及びD11を除く得られた管ライニング材硬化物D1〜D13について、それぞれ曲げ特性及び引張り特性を調べた。その結果をa/b比とともに表2に示す。なお、試験方法は以下に示すとおりとした。
【0082】
曲げ特性 : JIS K7171に準じて、加熱硬化後の管ライニング材を用いて、硬化物の強度試験を行った。
引張り特性 : JIS K7113に準じて、加熱硬化後の樹脂硬化物及び管ライニング材を用いて、硬化物の強度試験を行った。
【0083】
【表2】
【0084】
【発明の効果】
請求項1、2の発明は、管ライニング材を製造する際の容易な含浸作業性と管ライニング材硬化後の内張り管の所定厚みを維持するための硬化性樹脂組成物タレを防止する優れた揺変性の双方を満足し、かつ自立管として機能することができる優れた機械的特性を有する内張り管を得るため、熱硬化性樹脂組成物、さらにはこの熱硬化性樹脂組成物を使用して得られる管ライニング材及びこれを使用した管ライニング工法を提供するものであって、請求項1記載の発明は、管ライニング材を製造する際の硬化性樹脂組成物の良好な含浸作業性と、既設管内で反転挿入後、硬化して得られる内張り管が所定の厚みを有するため、硬化性樹脂組成物のタレを防止する良好な揺変性の双方を両立できる熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
また、上記の発明は、良好な含浸作業性と揺変性の双方を両立し、かつ回収材を使用し安価で優れた機械的特性を有する熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果をより一層奏するものである。
また、請求項4記載の発明は、さらに一層機械的特性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
請求項5記載の発明は、熱硬化性樹脂組成物のタレを防止する良好な揺変性と、優れた機械的特性を有する管ライニング材を提供できる。
さらに、請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果を一層し、自立管として機能することができる優れた機械的特性を有する内張り管を提供することができる。
さらにまた、請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の内張り管を製造することができる管ライニング工法を提供することができる。
Claims (7)
- 不飽和ポリエステル樹脂(a)、重合性単量体(b)及び揺変性付与剤(c)を必須成分として含有し、不飽和ポリエステル樹脂(a)の配合量をa重量部、重合性単量体(b)の配合量をb重量部とするとき、下記式(1)
0.50 ≦ a/(a+b)≦ 0.70 (1)
を満足するような割合で配合され、粘度が0.5〜8.0Pa・sの範囲内であり、かつ揺変度が1.2〜4.4の範囲内であり、不飽和ポリエステル樹脂(a)が、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、
(III)下記式(A)
及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモル
を、下記式(2)〜(4)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものである管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物。
0.40 ≦ II/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4) - 不飽和ポリエステル樹脂(a)が、(I)(II)α,β−エチレン性不飽和二塩基酸IIモルを必須成分とする二塩基酸成分Iモル、(III)ポリエチレンテレフタレートIIIモル及び(IV)(V)ネオペンチルグリコールVモルを必須成分とする多価アルコール成分IVモルを、下記式(2)〜(5)のいずれも満足するような割合で反応させて得られるものである請求項1記載の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物。
0.40 ≦ II/(II+III)≦ 0.70 (2)
0.30 ≦III/(II+III)≦ 0.60 (3)
0.10 ≦V/(II+III)≦ 0.75 (4)
1.00≦(III+IV)/(I+III)≦ 1.20 (5) - 管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて得られる硬化物が3.0〜6.0%の範囲の引張り伸び率を有する請求項1又は2記載の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物。
- さらに、充填材として、炭酸カルシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物。
- 繊維質の織布又は不織布あるいは両者の混合体からなる繊維強化材に請求項1〜4のいずれかに記載の管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を含浸させて成る管ライニング材。
- 管ライニング材を加熱することにより管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が0.8%以上の引張り伸び率を有し、かつ2.0〜4.5GPaの曲げ弾性率を有する請求項5記載の管ライニング材。
- 請求項5又は6記載の管ライニング材を、流体圧によって、管路内に反転挿入し、この管ライニング材を管路の内側壁面に押圧したまま、これに含浸した管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて管路の内側に内張り管をライニングすることを特徴とする管ライニング工法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002325163A JP2004155992A (ja) | 2002-11-08 | 2002-11-08 | 管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物、管ライニング材及び管ライニング工法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002325163A JP2004155992A (ja) | 2002-11-08 | 2002-11-08 | 管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物、管ライニング材及び管ライニング工法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004155992A true JP2004155992A (ja) | 2004-06-03 |
Family
ID=32804474
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002325163A Pending JP2004155992A (ja) | 2002-11-08 | 2002-11-08 | 管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物、管ライニング材及び管ライニング工法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004155992A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011042164A (ja) * | 2009-07-24 | 2011-03-03 | Sekisui Chem Co Ltd | 既設管の更生工法 |
-
2002
- 2002-11-08 JP JP2002325163A patent/JP2004155992A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011042164A (ja) * | 2009-07-24 | 2011-03-03 | Sekisui Chem Co Ltd | 既設管の更生工法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN1280353C (zh) | 含聚(亚芳基醚)的热固性组合物,其制备方法及由其制得的制品 | |
JP2007291179A (ja) | 硬化性樹脂組成物、ライニング材及び管状ライニング材 | |
CA2607932A1 (en) | Low-density, class a sheet molding compounds containing divinybenzene | |
JP5057879B2 (ja) | 成形材料及び成形品 | |
WO1997033942A1 (fr) | Composition de resine polyester non saturee et materiau de moulage en feuille | |
JP4884732B2 (ja) | 硬化性樹脂組成物、ライニング材及び管状ライニング材 | |
JP4055300B2 (ja) | 管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物、管ライニング材及び管ライニング工法 | |
JP2004155992A (ja) | 管ライニング材用熱硬化性樹脂組成物、管ライニング材及び管ライニング工法 | |
JP7173734B2 (ja) | 成形材料及びその成形品 | |
JP2004161814A (ja) | 重合性樹脂組成物、並びにこれを用いた管ライニング材及び管ライニング工法 | |
JP2007177127A (ja) | 熱硬化性成形材料 | |
JP3667385B2 (ja) | 硬化性樹脂組成物 | |
JP2000273323A (ja) | 硬化剤組成物、熱硬化性樹脂組成物、これを用いた管ライニング材及び管ライニング工法 | |
KR20050033184A (ko) | 비굴착 상하수관 보수용 에폭시 수지 조성물 | |
WO2022107859A1 (ja) | 樹脂製パイプ | |
JP2003171430A (ja) | 低臭気重合性樹脂組成物、これを用いた管ライニング材及び管ライニング工法 | |
WO2022224988A1 (ja) | 凹部充填材キット、その硬化物及び凹部充填法 | |
TW200401798A (en) | Liquid duroplastics | |
JP6251490B2 (ja) | 不飽和ポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたスライス台 | |
WO2022224989A1 (ja) | 凹部充填材キット、その硬化物及び凹部充填法 | |
JP3682970B2 (ja) | 不飽和ポリエステル樹脂、レジンコンクリート組成物 | |
JP2000143958A (ja) | 軟質frpシート用不飽和ポリエステル樹脂とその用途 | |
JP2004050060A (ja) | 既設管路の補修工法 | |
JP3435841B2 (ja) | レジンコンクリート組成物 | |
JP2004161813A (ja) | 圧入嵌合成形品用熱硬化性成形材料および成形品 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051013 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20080130 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080212 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081202 |