JP2004155676A - 含酸素化合物の製造方法 - Google Patents

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Makoto Tokunaga
信 徳永
Yasushi Hori
容嗣 堀
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Japan Science and Technology Agency
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Takasago International Corp
Japan Science and Technology Agency
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Abstract

【課題】本発明の目的は、酸性化合物やアルカリ性化合物を使用せず、また、酵素反応や微生物を用いた反応のように緩衝液や栄養源の必要もない、簡便で且つ生産効率のよい、アルケニルエステル類の加水分解方法並びにアルケニルエーテル類の開裂方法を開発し、それによって対応するカルボン酸又はアルコールとケトン又はアルデヒドを安価に製造する方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、アルケニルエステル類又はアルケニルエーテル類に周期表で2〜13族に属する金属化合物、好ましくは周期表で8〜11族に属する遷移金属化合物、より好ましくは9族又は10族の遷移金属錯体の存在下、水を作用させることにより対応するカルボン酸又はアルコールとケトン又はアルデヒドを高収率で製造する方法に関する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なアルケニルエステル加水分解反応又はアルケニルエーテル結合開裂反応に関する。詳しくは、酸性化合物やアルカリ性化合物を用いずに、ほぼ当量の水によってアルケニルエステル類を加水分解し、或いはアルケニルエーテル類のエーテル結合を開裂し、カルボン酸又はアルコールと、ケトンやアルデヒド等の含酸素化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、ビニルエステル類の加水分解反応或いはビニルエーテル類の開裂反応は、酸又は塩基触媒存在下で行われるが、例えば、同一分子内に酸性あるいは塩基性条件で分解する官能基や保護基が存在する場合はこの方法は使用できない。
これを避けるために温和な条件下での加水分解反応には、酵素や微生物を触媒として用いる方法が良く知られている(例えば、非特許文献1、2、3及び4参照)。
しかしながら、酵素反応や、微生物を用いた加水分解反応では、基質濃度は重量濃度で0.1%〜1%程度のものや、工業的観点で条件が最適化されたものでも数%程度の場合が多く、かなり希釈された反応条件であるため反応効率及び生産効率が悪い。
また、酵素反応や、微生物を用いた反応では相当量の緩衝液を用いてpHの調整を行う必要がある。更に、栄養源を必要とするものも多い。
一方、遷移金属化合物を用いてビニルエステルを分解する方法としてはパラジウム触媒を用いて酢酸ビニルからアセトアルデヒドと無水酢酸を生成させる方法が知られている(例えば、非特許文献5参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
Sakimae,A.らBiosci.Biotech.Biochem.1992,56,1252−1256
【非特許文献2】
Luzzio,F.A.らTetrahedron:Asymmetry.2002,13,1173−1180
【非特許文献3】
Kashima,Y.らTetrahedron:Asymmetry.2002,13,953−956
【非特許文献4】
「酵素機能と精密有機合成」編集:大野雅二、発行:シーエムシー、1984年
【非特許文献5】
Robert G.CHULTZらJOURNAL OF CATALYSIS 16,133−147(1970)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、酸性化合物やアルカリ性化合物を使用せず、また、酵素反応や微生物を用いた反応のように緩衝液や栄養源の必要もない、簡便で且つ生産効率のよい、アルケニルエステル類の加水分解方法並びにアルケニルエーテル類の開裂方法を開発し、それによって対応するカルボン酸又はアルコールとケトン又はアルデヒドを安価に製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、種々の金属化合物がアルケニルエステル類の加水分解やアルケニルエーテル類の開裂反応に高活性であることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、下記一般式[1]
【化4】
Figure 2004155676
(式中、Rは、置換基を有していても良い炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数3〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(但し、nが0の場合を除く)、置換基を有していてもよい炭素数7〜15のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基又は置換基を有していてもよい複素環基を表す。R,R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数3〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜15のアラルキル基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7の直鎖状又は分岐状のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数8〜16のアラルキルオキシカルボニル基を表し、RとR又はRとRとで隣接している二重結合の炭素と共に環を形成してもよい。nは0又は1である。)
で表される化合物に、周期表で2〜13族に属する金属化合物の存在下、水を作用させることを特徴とする下記一般式[2]
【化5】
Figure 2004155676
(式中、R及びnは前記と同じ意味を表す。)
及び一般式[3]
【化6】
Figure 2004155676
(式中、R、R及びRは前記と同じ意味を表す)
で表される含酸素化合物の製造法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の含酸素化合物の製造法を反応式で示すと以下のようになる。
【化7】
Figure 2004155676
【0007】
上記反応式において、nが0の場合には、アルケニルエーテル類の開裂反応となり、アルコール類とケトン又はアルデヒドが生成し、nが1の場合には、アルケニルエステル類の加水分解反応となり、カルボン酸とケトン又はアルデヒドが生成する。
【0008】
上記一般式[1]及び[2]において、Rで表される置換基を有していても良い炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、2−ボルニル基などが挙げられ、置換基を有していても良い炭素数3〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基の具体例としては、例えば、2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、5−ヘキセニル基、3或いは4−シクロペンテニル基、3或いは4−シクロヘキセニル基等が挙げられ、置換基を有していても良い炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
また、置換基を有していてもよい炭素数7〜15のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基、4−メチルベンジル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられ、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられ、置換基を有していてもよい複素環基の具体例としては、例えば、1,3−ジオキソラン−4−イル基、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル基、ピペリジル基、ピペリジノ基、ピペラジル基、モルホリノ基、モルホリニル基、ピリジル基、チエニル基、フェニルチエニル基、チアゾリル基、オキサゾリジル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、インドリル基、キノリル基、ピリミジル基等が挙げられる。
【0009】
これらアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、複素環基等が有していても良い置換基としては、本発明に係る反応に支障を来さない置換基であればどのような置換基でも良いが、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、フェニル基、ベンジル基、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニルオキシ基、ベンゾイル基、ベンジルオキシ基、メトキシメチル基、2H−テトラヒドロピラン−2−イルオキシ基、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、ベンジルオキシカルボニルオキシ基、オキシラン−2−イル基、1,3−ジオキソラン−4−イル基、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−イル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アセトキシアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、アニリノ基、ベンジルアミノ基等が挙げられる。
【0010】
上記一般式[1]及び[3]において、R、R及びRで表される置換基を有していても良い炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数3〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜15のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基及び置換基を有していてもよい複素環基の具体例としては、上記Rにおけるそれらと全く同じものが挙げられる。また、これらアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基等が有していても良い置換基も、Rの場合と同様、本発明に係る反応に支障を来さない置換基であればどのような置換基でも良く、その具体例も上記Rにおけるそれらと全く同じものが挙げられる。
上記一般式[1]及び[3]において、R、R及びRで表される置換基を有していてもよい炭素数2〜7の直鎖状又は分岐状のアルコキシカルボニル基の具体例としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
また、置換基を有してもよい炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基の具体例としては、例えば、フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、キシリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、メトキシフェニルオキシカルボニル基、フルオロフェニルオキシカルボニル基、トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、アセチルアミノフェニルオキシカルボニル基、メチルナフチルオキシカルボニル基、メトキシナフチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
更に、置換基を有してもよい炭素数8〜16のアラルキルオキシカルボニル基の具体例としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ナフチルメチルオキシカルボニル基、α−メチルベンジルオキシカルボニル基、4−メチルベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
また、RとR又はRとRとが隣接する二重結合の炭素と共に形成する環としては、例えば、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロオクテン環、2−ボルネン環、2−ノルボルネン環、1−メンテン環、インデン環等が挙げられる。
【0011】
本発明の製造法において、原料として用いられる一般式[1]で示されるアルケニルエステル類或いはアルケニルエーテル類は、市販品をそのまま用いても、必要に応じて適宜精製して用いても、或いは自体公知の一般的な製法で自製したものを用いても何れにてもよい。
【0012】
本発明で用いられる金属化合物としては周期表で2〜13族に属する金属化合物が挙げられるが、人体に対する影響や入手の難易性等を考慮すると、周期表で2族に属する金属化合物や、8〜11族に属する遷移金属化合物が好ましく、より好ましくは周期表で8〜11族に属する遷移金属化合物、就中、9族又は10族の遷移金属化合物が挙げられる。具体例としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム化合物等が挙げられ、パラジウム錯体が特に好ましい。
これらの遷移金属化合物の中、遷移金属錯体は、配位子を有しているものでも、配位子を有していないものでもどちらも使用可能である。
配位子としては、通常この種錯体において使用される配位子は何れも使用可能である。例えば、陰イオン性配位子としては、BF 、PF 、SbF 、BPh 、CFS0 、X(I,Br,Cl,F)、任意の力ルボキシレート、ホスフェート及びホスホネート、サレン、アセチルアセトネートなどが挙げられ、
中性配位子としては、ホスフィン系、アミン系、イミン系、オキサゾリン系、エーテル系等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明で用いられる遷移金属化合物の具体例としては、例えば、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム([PdCl(CHCN)])、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム([PdCl(PhCN)])、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム([PdCl(PPh])、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、パラジウム(II)ビスヘキサフルオロペンタンジオナート、パラジウム(II)ビスペンタンジオナート、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(オルトフェナントロリン)パラジウム、ジクロロ[エチレン−1,2−ビスオキサゾリン]パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、[PdCl(binap)]、[Pd(HO)(binap)](BF、[PdCl(pybox)]、[PdCl(sparteine)]、[Pd(salen)]、アセチルアセトナトビス(エチレン)ロジウム(I)、クロロビス(エチレン)ロジウムダイマー、ジカルボニル(アセチルアセトナト)ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマー、ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニルロジウム(0)、塩化ノルボルナジエンロジウム(I)ダイマー、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、(トリカルボニル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ジクロロビス(アセトニトリル)白金([PtCl(CHCN)])、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、塩化テトラアミン白金(II)n水和物、テトラクロロ白金(II)酸カリウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
また、これら遷移金属化合物以外の本発明で使用可能な金属化合物としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウム、トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム[Sc(OTf)]、チタンテトライソプロポキシド、ジクロロ(ベンゼン)ルテニウム ダイマー[RuCl(C)]、トリフルオロメタンスルホン酸銅[Cu(OTf)]、酢酸第二銅、塩化第二銅、酢酸第二水銀、硫酸第二水銀、トリフルオロ酢酸第二水銀、酢酸第二タリウム、硫酸第二タリウム、トリフルオロ酢酸第二タリウム、アルミニウムイソプロポキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明で用いられるこれら遷移金属化合物、その他の金属化合物の使用量はいわゆる触媒量でよく、通常、アルケニルエステル類又はアルケニルエーテル類に対して10モル%以下で十分である。
【0016】
本発明に係る反応は、原料のアルケニルエステル類又はアルケニルエーテル類が固体でない限り、無溶媒でも充分に反応が進行するが、通常は有機溶媒中で行われる。
溶媒は任意のものを用いることができるが、水と混ざるものが好ましい。但し、基質が高い濃度で存在するときは、水が分離した状態となり、その状態でも反応が進行する。
具体的にはアルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、メトキシメタノール等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等)、アセトニトリル、N,N‐ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、配位子を有していないパラジウム化合物(PdCl等)を用いると、パラジウム黒が析出しやすく、触媒活性の失活の原因となるが、この場合には配位性のあるアセトニトリル等が有効でパラジウム黒の生成を抑える効果がある。
【0017】
反応温度は、あまりに低温では反応が有利な速度で進行せず、あまりに高温では触媒が分解するので、通常は0℃から100℃の範囲から選ばれ、好ましくは20〜90℃の範囲で実施される。反応時間は、原料として使用するアルケニルエステル又はアルケニルエーテルの種類、金属化合物の種類及び量、反応温度その他の条件等により自ずから異なるが、通常数十分〜数十時間である。
本発明に係る反応は、空気中等の酸素の存在下でも進行するが、金属化合物の種類により、或いは原料や生成物の種類により酸素に敏感なものもあるので、そのような場合には、空気や酸素を排除して、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うのが望ましい。但し、配位子を有していないパラジウム化合物(PdCl等)を用いると、パラジウム黒が析出しやすく、そのときは空気や酸素の存在がパラジウム黒の生成を抑える効果があるので、大気中での反応が好ましい。
【0018】
反応後の後処理は、濾過、溶媒回収、各種クロマトグラフィー、蒸留、再結晶等、自体公知の後処理方法、生成物の単離精製方法等を適宜組み合わせて行うことにより容易に達成される。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、下記の実施例において、ガスクロマトグラフィーによる分析は、ガスクロマトグラフ:アジレントGC−6850に、キャピラリーカラム:アジレントHP−1(0.25mmφ×30m)を装填したものを用いて行った。また、生成物の同定は、NMRスペクトル(Bruker ARX400)、及び薄層クロマトグラフ(メルクTLCプレート、シリカゲル60F254)を用いて行った。
【0020】
実施例1 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
安息香酸ビニル1.48g(10mmol)、[PdCl(CHCN)] 26.0mg(0.1mmol、安息香酸ビニルに対し1mol%)及び水0.3mL(16.7mmol)をアルゴン雰囲気下、イソプロパノール1.5mL中で撹拌、混合し、40℃で30分間撹拌、反応させた。反応後、析出した結晶を濾取し、少量のイソプロパノールで洗浄後、乾燥して、無色板状晶の安息香酸をほぼ定量的に得た。なお、同反応により生成したアセトアルデヒドは、GC−MSにより確認した。以下、同様。
【0021】
実施例2 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに1mol%の[PdCl(PhCN)] を使用し、それ以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
【0022】
実施例3 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに1mol%の[RuCl(C)]を使用し、反応温度を80℃、反応時間を24時間とした以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
【0023】
実施例4 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに1mol%のKPtClを使用し、反応時間を24時間とした以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
【0024】
実施例5 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに5mol%のCuClを使用し、反応時間を19時間とした以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
【0025】
実施例6 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに1mol%のHgSOを使用し、反応時間を1時間とした以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
【0026】
実施例7 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに5mol%のHg(OAc)を使用し、反応時間を24時間とした以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
【0027】
実施例8 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに5mol%のHg(OCOCFを使用し、反応時間を18時間とした以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
【0028】
実施例9 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに5mol%の[Pd(binap)(HO)](BFを使用し、反応時間を19時間とした以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
binap=2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル
【0029】
実施例10 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに5mol%の[PdCl(CHCN)] を使用し、溶媒のイソプロパノールをテトラヒドロフランに代えて、反応温度90℃、反応時間5時間とした以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
【0030】
実施例11 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
実施例1において、1mol%の[PdCl(CHCN)] の代りに5mol%の[PdCl(CHCN)] を使用し、溶媒のイソプロパノールをN,N−ジメチルホルムアミドに代えて、反応時間を1時間とした以外は実施例1と全く同様にして反応及び後処理を行ない実施例1と同様の結果を得た。
【0031】
実施例12 桂皮酸ビニルからの桂皮酸の合成
桂皮酸ビニル1.74g(10mmol)、水0.2mL(11.1mmol)及び[PdCl(CHCN)] 5.2mg(0.02mmol)をアセトニトリル2mL中で混合し、大気開放下、70℃で3時間撹拌、反応させた。反応後、アセトニトリルと水、及び残存するアセトアルデヒドを留去し、残渣を乾燥して1.45gの桂皮酸を得た。収率98%。
【0032】
実施例13 酢酸ビニルからの酢酸の合成
酢酸ビニル0.86g(10mmol)、水0.2mL(11.1mmol)及び[PdCl(CHCN)] 5.2mg(0.02mmol)を、大気開放下、70℃で3時間撹拌、還流、反応させた。ガスクロマトグラフィーにより反応物を測定したところ酢酸ビニルの転化率が95%以上で酢酸が生成していた。
【0033】
実施例14 2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸ビニルからの2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸の合成
2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸ビニル0.26g(1.0mmol)、水0.1mL(5.6mmol)及び[PdCl(CHCN)] 5.2mg(0.02mmol)を、アセトニトリル0.5mL中で混合し、大気開放下、70℃で0.25時間撹拌、反応させた。析出した結晶を濾取し、乾燥して0.23gの2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸を得た。収率99%。
【0034】
実施例15 2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸ビニルからの2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸の合成
実施例14において、[PdCl(CHCN)] の代わりに[PdCl(binap)]を用いた以外は実施例14と全く同様にして反応及び後処理を行ない、0.21gの2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸を得た。収率91%。
【0035】
実施例16 ベンジルビニルエーテルからのベンジルアルコールの合成
ベンジルビニルエーテル268mg(2.0mmol)、水0.054mL(3.0mmol)及び[PdCl(CHCN)]5.2mg(0.02mmol)をイソプロパノール0.5mL中で撹拌、混合し、アルゴン雰囲気下、40℃で20分間撹拌、反応させた。反応液をガスクロマトグラフで分析したところ、ベンジルアルコールが定量的に生成していた。
【0036】
実施例17〜24 ベンジルビニルエーテルからのベンジルアルコールの合成
実施例16において、触媒量、触媒種及び反応時間を変えて、それぞれ反応を行った結果を表1にまとめて示す。
【0037】
【表1】
Figure 2004155676
【0038】
実施例25 1−アセトキシシクロヘキセンからのシクロヘキサノンの合成
1−アセトキシシクロヘキセン280mg(2.0mmol)、水72mg(4.0mmol)及び[PdCl(CHCN)] 5.2mg(0.02mmol)をイソプロパノール0.5mL中で撹拌、混合し、60℃で15時間撹拌、反応させた。反応液をガスクロマトグラフで分析したところ、シクロヘキサノンが定量的に生成していた。
【0039】
実施例26 2−ボルニルビニルエーテルからのボルネオールの合成
2−ボルニルビニルエーテル360mg(2.0mmol)、水54mg(3.0mmol)及び[PdCl(CHCN)]5.2mg(0.02mmol、1mol%)をアセトニトリル0.5mL中で撹拌、混合し20℃で1時間反応させた。反応溶液をガスクロマトグラフで分析したところ、ボルネオールが定量的に生成していた。
【0040】
実施例27 2−アセトキシボルネンからのカンファーの合成
2−アセトキシボルネン392mg(2.0mmol)、水54mg(3.0mmol)及び[PdCl(CHCN)]5.2mg(0.02mmol、1mol%)をアセトニトリル0.5mL中で撹拌、混合し60℃で1時間反応させた。反応溶液をガスクロマトグラフで分析したところ、カンファーが定量的に生成していた。
【0041】
実施例28 安息香酸ビニルからの安息香酸の合成
安息香酸ビニル14.8g(100mmol)、[PdCl(CHCN)] 5.2mg(0.02mmol、安息香酸ビニルに対し0.02mol%)及び水3.0mL(167mmol)をアルゴン雰囲気下、イソプロパノール15mL中で撹拌、混合し、60℃で42時間撹拌、反応させた。反応後、析出した結晶を濾取し、少量のイソプロパノールで洗浄後、乾燥して、無色板状晶の安息香酸をほぼ定量的に得た。
【0042】
【発明の効果】
本発明は、新規で、簡便且つ生産効率の高いアルケニルエステル類の加水分解方法及びアルケニルエーテル類のエーテル結合開裂方法を提供するものであり、本発明の方法によれば、酸性化合物やアルカリ性化合物を用いる必要が無く、また、酵素反応や微生物を用いた反応のように緩衝液や栄養源の必要もなく、ほぼ当量の水によってアルケニルエステル類を加水分解し、或いはアルケニルエーテル類のエーテル結合を開裂し、対応するカルボン酸又はアルコールと、ケトン又はアルデヒドを高収率で製造することが出来る。

Claims (8)

  1. 下記一般式[1]
    Figure 2004155676
    (式中、Rは、置換基を有していても良い炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数3〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(但し、nが0の場合を除く)、置換基を有していてもよい炭素数7〜15のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基又は置換基を有していてもよい複素環基を表す。R,R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数3〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜15のアラルキル基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7の直鎖状又は分岐状のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数8〜16のアラルキルオキシカルボニル基を表し、RとR又はRとRとで隣接している二重結合の炭素と共に環を形成してもよい。nは0又は1である。)
    で表される化合物に、周期表で2〜13族に属する金属化合物の存在下、水を作用させることを特徴とする下記一般式[2]
    Figure 2004155676
    (式中、R及びnは前記と同じ意味を表す。)
    及び一般式[3]
    Figure 2004155676
    (式中、R、R及びRは前記と同じ意味を表す)
    で表される含酸素化合物の製造法。
  2. 一般式[1]及び一般式[2]において、nが0である請求項1に記載の製造法。
  3. 一般式[1]及び一般式[2]において、nが1である請求項1に記載の製造法。
  4. 周期表で2〜13族に属する金属化合物が周期表で8〜11族に属する遷移金属化合物である請求項1〜3の何れかに記載の製造法。
  5. 周期表で8〜11族に属する遷移金属化合物が周期表で9族又は10族に属する遷移金属化合物である請求項4に記載の製造法。
  6. 周期表で9族又は10族に属する遷移金属化合物がパラジウム化合物である請求項5に記載の製造法。
  7. パラジウム化合物が配位子を有するパラジウム錯体である請求項6に記載の製造法。
  8. 有機溶媒中で反応を行う請求項1〜7の何れかに記載の製造法。
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