JP2002241344A - 光学活性アルコールの製造方法 - Google Patents

光学活性アルコールの製造方法

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JP2002241344A
JP2002241344A JP2001036171A JP2001036171A JP2002241344A JP 2002241344 A JP2002241344 A JP 2002241344A JP 2001036171 A JP2001036171 A JP 2001036171A JP 2001036171 A JP2001036171 A JP 2001036171A JP 2002241344 A JP2002241344 A JP 2002241344A
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Naoki Hirayama
直樹 平山
Tetsuya Kato
徹哉 加藤
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】安定かつ高活性な錯体を用いて塩基に不安定な
エステル官能基をそのまま保持してカルボニル基のみを
収率よく不斉還元する技術を提供する。 【解決手段】式(1) M(L)m(Y)nl (1) (式中、Mは遷移金属を表し、Lは単座もしくは2座の
ホスフィンを表し、Yは光学活性含窒素化合物を表し、
Xはヒドリド、塩素原子もしくは臭素原子を表し、m、
n、lはそれぞれ1〜3の整数を表す。)で示される遷
移金属錯体を用いて、式(2) R1−(C=O)−COOR2 (2) (式中、R1と R2は、置換基を有しても良い炭化水素
基または複素環基を表し、R1とR2は各々同一であって
も異なっていてもよく、R1とR2は連結して環を形成し
てもよい。)で示されるカルボニル化合物を水素添加還
元反応により不斉還元する光学活性アルコールの製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光学活性含窒素化合
物を含有する遷移金属錯体を用いて、同一分子内にエス
テル官能基を有するカルボニル化合物を不斉水素添加還
元する場合に、塩基を使用しないことを特徴とする光学
活性アルコールの製造方法である。
【0002】
【従来の技術】カルボニル化合物を不斉水素添加還元す
る均一系触媒の中でも、光学活性含窒素化合物を含有す
る遷移金属錯体を用いる技術としては以下のa)とb)
が挙げられる。a)ホスフィンと光学活性アミンを各々
配位子とするルテニウム錯体を用い、還元反応時に塩基
を必須とする不斉水素添加技術(特許第2935453
号公報、特願平11−189558号公報、特願平11
−189559号公報、特願平11−189600号公
報、テトラヘドロンレターズ,vol.40,pp.5043-5046(199
9)、有機合成化学協会誌,vol.57,pp.553-563(1996)、ア
ンゲバンテ インターナショナル エデイション,vol.3
7,pp.1703(1998)、アメリカ化学会誌,vol.122,pp.510(2
000)、特願2000−178116号公報、特願200
0−269310号公報、特願2000−272224
号公報、「新しい金属錯体を用いた最近の水素化反応講
演要旨集」;触媒学会有機金属研究会発行;平成10年5
月29日刊)。b)光学活性アミンから合成した光学活性
シッフ塩基化合物を配位子としたルテニウム錯体、ロジ
ウム錯体、またはイリジウム錯体を用いた不斉水素添加
技術(テトラヘドロンレターズ,vol.31,pp.4139(199
0)、ジャーナル オブモレキュラー キャタリシス,vo
l.A112,pp.L157-L161(1996))。
【0003】その他には含窒素化合物が非光学活性化合
物であるが、含窒素化合物と光学活性ホスフィンを配位
子とする遷移金属錯体を用いる不斉水素添加技術として
以下のc)技術がある。c)光学活性ホスフィンとピリ
ジンを有するロジウム錯体、及び光学活性ホスフィンと
トリエチルアミンを有するルテニウム錯体を用いるケト
ンの不斉水素添加技術である(ケミストリー レター
ズ,pp.495(1979)、特願平1−211551号公報、日
本化学会誌,pp.823(1976)、日本化学会誌,pp.283(197
1))。
【0004】さらには、水素供与体が水素分子ではなく
シランを用いる技術がある(テトラヘドロンレターズ,v
ol.40,pp.5617(1999)、ジャーナル オブ オルガノメ
タリックケミストリー,vol.97,pp.547(1997))。また、
イソプロピルアルコールなどを水素供与体とする水素移
動型還元技術では、光学活性アミンを配位子とする遷移
金属錯体を用いて光学活性アルコールを製造する技術が
ある(テトラヘドロン,vol.50,pp.4347(1994)、特許第
2962668号公報、テトラヘドロンレターズ,vol.3
4,pp.6897(1993)、アメリカ化学会誌,vol.118,pp.2521
(1996)、特願平11ー335385号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように不斉水素化
技術にはいくつかの公知技術があるが、各々の技術には
以下の課題がある。
【0006】第一に触媒性能から公知技術を比較する。
a)はc)の改良技術であり、a)では触媒活性と触媒
(錯体)の安定性が向上している。a)ではc)よりも
低用量の触媒で、かつ低い水素圧力下に速やかにアセト
フェノンを不斉還元している。錯体の安定性ではa)は
b)とc)に対して向上している。ただし、a)では還
元反応の進行に塩基の添加を必須とするために、エステ
ルなどの塩基に弱い官能基を有するカルボニル化合物の
還元にはa)は適用できない。また、a)は芳香族ケト
ン、2−アルコキシシクロヘキサノン、2−アミノシク
ロヘキサノン、4-アルキルシクロヘキサノンもしくはα
βー不飽和ケトンを主な対象とし、βーケトエステルな
どには適用できないと記載されているように(アメリカ
化学会誌,vol.117,pp.2675(1996))、a)が対象とでき
る基質の範囲は広くない。b)は対象基質をベンゾイル
ぎ酸エステルのみに限定しており適用範囲が非常に狭
い。しかも還元反応時に高い水素圧を要し、触媒使用量
も多いために(20mol%対ケトン)、触媒活性は高くな
い。
【0007】高い触媒活性と安定性を有する錯体を用
い、塩基に弱い官能基を有するカルボニル化合物に対し
て、塩基に弱い官能基を保持した状態で不斉水素添加還
元できる技術はない。
【0008】次に経済的観点から公知技術を比較する。
シラン還元技術は水素供与源に高価なシランを使用する
ため不利である。水素移動型還元技術では水素供与源が
溶媒である。そのためにカルボニル化合物に対して約60
倍〜90倍(重量比)もの大量の溶媒を用いる課題がある
(特願平11ー335385号公報の実施例参照)。過
多な溶媒使用は反応装置を巨大化させ、かつ取扱い操作
性、環境への配慮の観点からみても利点が少ない。
【0009】工業的には水素添加反応が好ましい。水素
添加反応は安価な水素分子(ガス)を水素供与源とし、
少量の溶媒で反応できるためにコンパクトな反応装置を
用いて製造できる利点がある。
【0010】つまり、カルボニル化合物の不斉還元技術
には、触媒活性と錯体の安定性の各々が高いものから低
いものまでいくつか存在する。しかし、残念ながら、高
い触媒活性かつ高い安定性を有する錯体は還元反応の進
行には塩基の添加を必須とし、そのために塩基に弱い官
能基を有するカルボニル化合物を不斉還元することはで
きない。塩基を使用しない公知不斉還元技術では、上記
の理由から性能面でも経済面でも満足した製造方法とは
ならない。塩基に弱い官能基を有するカルボニル化合物
を高い触媒活性かつ高い安定性を有する錯体を用いて不
斉還元できる技術はない。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に鋭意検討した。その結果、安定かつ高活性な錯体であ
る式(1) M(L)m(Y)nl (1) (式中、Mは第VIII族遷移金属を表し、Lは単座もしく
は2座のホスフィンを表し、Yは光学活性含窒素化合物
を表し、Xはヒドリド、塩素原子もしくは臭素原子を表
し、m、n、lはそれぞれ1〜3の整数を表す。)で示
される遷移金属錯体は、式(2) R1−(C=O)−COOR2 (2) (式中、R1と R2は、置換基を有しても良い炭化水素
基または複素環基を表し、R1とR2は各々同一であって
も異なっていてもよく、R1とR2は連結して環を形成して
もよい。)で示されるカルボニル化合物の不斉水素添加
還元反応を、塩基を存在させない条件下に、進行させる
ことを見出した。
【0012】すなわち、本発明は、「式(1) M(L)m(Y)nl (1) (式中、Mは遷移金属を表し、Lは単座もしくは2座の
ホスフィンを表し、Yは光学活性含窒素化合物を表し、
Xはヒドリド、塩素原子もしくは臭素原子を表し、m、
n、lはそれぞれ1〜3の整数を表す。)で示される遷
移金属錯体を用いて、式(2) R1−(C=O)−COOR2 (2) (式中、R1とR2は、置換基を有しても良い炭化水素基
または複素環基を表し、R1とR2は各々同一であっても
異なっていてもよく、R1とR2は連結して環を形成して
もよい。)で示されるカルボニル化合物を水素添加還元
反応により不斉還元する光学活性アルコールの製造方
法。」である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の原料であるカルボニル化
合物は、前記の一般式(2)で示されるが、R1と R2
おいても、前記のとおり、置換基を有しても良い炭化水
素基または複素環基を表すが、ここで炭化水素基は、炭
素数が1〜15である、鎖状または環状もしくは両者が結
合した飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、単環また
は多環の芳香族炭化水素もしくは芳香脂肪族炭化水素か
ら選ばれるものでよく、アルキル基、アルケニル基、シ
クロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキル
アルキル基、アリール基、アラルキル基等がある。複素
環基としては、各種のヘテロ原子を環構成原子としたも
のがある。アルキル基は直鎖もしくは分岐したメチル
基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘ
キシル基等が挙げられ、アラルキル基としてはベンジル
基、ジフェニルメチル基等が挙げられ、アルケニル基と
しては2−プロペニル基、トランス−β−スチリル基等
が挙げられ、複素環基としてはピリジル基、キノキサリ
ル基、インドリル基等が挙げられる。これらの基がさら
に置換基で置換されている場合の置換基は、フッ素原
子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシル
基、シアノ基、ニトロ基、置換アミノ基に加えて、前記
と同様のアルキル基、アルキル基、アルケニル基、シク
ロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキルア
ルキル基、アリール基、アラルキル基等が例示される。
アルコキシル基とは酸素原子に上記定義の置換基を有し
ても良い炭化水素基または複素環基が結合したものを示
し、例えばメトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基
が挙げられる。置換アミノ基とはアミノ基がメチル基、
アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンジル基、ベ
ンゾイル基、p-ニトロベンジル基、メタンスルホニル
基、トルエンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、カ
ルボニル基により置換されたアミノ基を表し、好ましく
は、N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N-アセ
チルアミノ基、N-トリフルオロアセチルアミノ基、N-(t
-ブトキシカルボニル)アミノ基、N-(p-トルエンスルホ
ニル)アミノ基、N-メタンスルホニルアミノ基、N-トリ
フルオロメタンスルホニルアミノ基である。
【0014】式(2)で示されるカルボニル化合物は置
換もしくは非置換のベンゾイルぎ酸エステル、または置
換もしくは非置換のピルビン酸エステルのいずれかであ
ることが好ましい。
【0015】置換ベンゾイルぎ酸エステルとは、ベンゾ
イル基のベンゼン環の水素原子がアルコキシル基、シア
ノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、
置換基を有しても良い炭化水素基、複素環基、ニトロ
基、置換アミノ基もしくは水酸基により置換されたベン
ゾイルぎ酸エステルを示し、非置換とはベンゾイル基の
ベンゼン環の置換基が水素原子であるベンゾイルぎ酸エ
ステルを示し、好ましい例としてはm-クロロベンゾイル
ぎ酸メチルエステル、ベンゾイルぎ酸メチルエステルあ
るいはベンゾイルぎ酸エチルエステルが例示される。
【0016】置換ピルビン酸エステルとは、3位の炭素
原子上の水素原子がアルコキシル基、シアノ基、フッ素
原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、置換基を有し
ても良い炭化水素基、複素環基、ニトロ基もしくは置換
アミノ基により置換されたピルビン酸エステルを示し、
非置換とは3位の炭素原子上の置換基が水素原子である
ピルビン酸エステルを示し、好ましい例としては3-クロ
ロピルビン酸エチルエステル、3-フェニルピルビン酸ベ
ンジルエステル、ピルビン酸メチルエステルなどが例示
される。
【0017】本発明では、式(1) M(L)m(Y)nl (1) (式中、Mは遷移金属を表し、Lは単座もしくは2座の
ホスフィンを表し、Yは光学活性含窒素化合物を表し、
Xはヒドリド、塩素原子もしくは臭素原子を表し、m、
n、lはそれぞれ1〜3の整数を表す。)で示される遷
移金属錯体を用いる。遷移金属錯体としては、式(3) Ru(L1m'(Y1n'2 (3) (式中、L1はトリフェニルホスフィン、トリメチルホ
スフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベン
ゼンまたは2,2´−ビス(ジフェニルホスフィノ)−
1,1´−ビナフチルのいずれかであり、Y1は単座も
しくは2座の光学活性アミンを表し、m´とn´はそれ
ぞれ1または2を表す。)で示される錯体である場合が
好ましく、さらに、式(3)で示される錯体のY1がα
−メチルベンジルアミン、α−メチルナフチルアミン、
2,2´−ジアミノ−1,1´−ビナフチル、1,2−
ジアミノシクロヘキサンもしくは1,2−ジフェニル−
1,2−ジアミノエタンのいずれかである場合が好まし
く、式(3)で示される錯体のL1がトリフェニルホス
フィンまたは2,2´−ビス(ジフェニルホスフィノ)
−1,1´-ビナフチルであり、Y1が2,2´-ジアミノ−
1,1´−ビナフチル、1,2−ジアミノシクロヘキサ
ンもしくは1,2−ジフェニル−1,2−ジアミノエタ
ンのいずれかであり、m´は1または2を表し、n´は
1を表す。)で示される錯体を使用するのが特に好まし
い。
【0018】本発明では、前記式(2)で示されるカル
ボニル化合物を前記式(1)もしくは(3)で示される
遷移金属錯体を用いて不斉還元するが、その錯体の遷移
金属はルテニウム、ロジウム、白金、パラジウム、イリ
ジウムが好ましい例として挙げられ、より好ましくはル
テニウム、ロジウムであり、さらに好ましくは2価のル
テニウムである。
【0019】また、前記式(1)もしくは(3)で示さ
れる遷移金属錯体を構成する成分であるホスフィンと
は、式(4)
【0020】
【化1】
【0021】(式中、R3〜R5は置換基を有しても良い
炭化水素基または複素環基のいずれかを表し、それぞれ
同一であっても異なっていてもよく、置換基を有しても
良い炭化水素基または複素環基とは、前記式(2)で示
されるカルボニル化合物の定義と同一である。)で示さ
れる化合物を示し、好ましい例としてトリメチルホスフ
ィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホ
スフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベン
ゼンまたは2,2´−ビス(ジフェニルホスフィノ)−
1,1´−ビナフチル等が例示される。単座ホスフィン
とは分子内に単独のホスフィンを有する化合物を示し、
2座ホスフィンとは分子内に二つのホスフィンを有する
化合物を示し、ホスフィンが不斉炭素原子を有する、あ
るいはリン原子が不斉な場合等にはラセミ、メソ、光学
活性体がありうるが、本発明はそれら全てを包含する。
【0022】また、前記式(1)もしくは(3)で示さ
れる遷移金属錯体を構成する成分である、光学活性含窒
素化合物に属する単座もしくは2座の光学活性アミンの
好ましい例としては、以下の式(5)〜式(9)
【0023】
【化2】
【0024】(式中、R6〜R9は水素原子もしくは置換
基を有しても良い炭化水素基または複素環基のいずれか
を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
置換基を有しても良い炭化水素基または複素環基とは、
前記式(2)で示されるカルボニル化合物の定義と同一
である。)で示される化合物が例示され、さらに好まし
くはα-メチルベンジルアミン、α-メチルナフチルアミ
ン、2,2’−ジアミノ−1,1´−ビナフチル、1,
2−ジアミノシクロヘキサンまたは1,2−ジフェニル
−1,2−ジアミノエタンが例示され、光学活性アミン
の絶対配置は単座の場合は(S)または(R)、2座の
場合には(S,S)、(R,R)、(S,R)、または
(R,S)のいずれでもよく、その光学純度は2%ee
から100%eeまでの範囲が好ましい。
【0025】前記式(1)もしくは式(3)で示される
錯体の調製法は特に限定されないが、LもしくはL1
トリフェニルホスフィンの場合には、例えば、トリス
(トリフェニルホスフィノ)ルテニウム(II)塩化物と光
学活性含窒素化合物を不活性ガス雰囲気下に有機溶媒中
などで混合して調製する方法が挙げられる。溶媒は、
N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルムもしくは
ジクロロメタン等が好ましく、反応温度は0℃から50
℃、反応時間は1から8時間が好ましい。LもしくはL
1が1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンも
しくは2,2´−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,
1´−ビナフチルの場合には、例えば、ベンゼンルテニ
ウム(II)塩化物2量体と1,2−ビス(ジフェニル
ホスフィノ)ベンゼンもしくは2,2´−ビス(ジフェ
ニルホスフィノ)−1,1´−ビナフチルを不活性ガス
雰囲気下にN,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中で
攪拌し、その後、光学活性含窒素化合物を先の反応液に
添加する方法が挙げられる。反応温度は10℃から15
0℃が好ましく、反応時間は2分から8時間が好まし
い。溶媒は錯体調製反応に支障をきたさなければ、特に
限定されない。
【0026】調製した錯体溶液は、特に精製することな
く溶液状態でカルボニル化合物の還元触媒として用いて
もよいし、減圧下に溶媒を留去して使用してもよい。溶
媒留去後の錯体を、洗浄、再結晶、クロマトグラフィー
などの一般的な精製単離操作を行っても良い。
【0027】本発明における式(1)もしくは式(3)
で示される錯体を用いて、式(2)で示されるカルボニ
ル化合物の不斉水素添加還元反応を行う場合に、式
(1)もしくは式(3)で示される錯体の使用量は式
(2)で示されるカルボニル化合物に対して1/100000倍
モルから当量モルの範囲の使用量が好ましい。反応は溶
媒存在下あるいは無溶媒で行うが、溶媒の好ましい例と
してエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール
などのアルコール溶媒が例示される。反応温度は0℃か
ら150℃の範囲が好ましいが、50℃から150℃の
範囲がより好ましい反応温度として例示される。反応時
間は5分から48時間の範囲が好ましい。還元反応時の
水素圧は0.4気圧から200気圧の範囲が好ましい
が、より好ましくは1気圧から15気圧の範囲である。
還元反応の終了後には、濃縮、蒸留、クロマト精製など
の一般的な有機合成の方法により、還元体である光学活
性アルコールを単離することができ、光学活性アルコー
ルの光学活性とは、光学純度が1%ee〜100%ee
の範囲であるアルコールを示す。
【0028】
【実施例】以下、詳細は実施例で説明する。
【0029】実施例1 30mgのジクロロ[(S)−BINAP][(S,
S)−DPEN]ルテニウム(II)(関東化学製)
(ケトンに対して1/50倍モル)と177mgのピル
ビン酸エチルエステル(東レ製)を2.5mlのメタノ
ール(片山化学製)に添加後、10気圧の水素雰囲気下
に反応温度が100℃で30分間攪拌した。反応液を室
温まで冷却し、溶媒を減圧下に濃縮し、残さとして黄色
油状物を163mg得た(収率92%)。残さを1H−
NMR分析すると乳酸エチルエステルであった。生成物
はGC分析からも同定できた。
【0030】本発明条件下に反応を行うと、エステル基
を保持した状態でケトン官能基のみを選択的に不斉還元
できた。
【0031】実施例2 6.1mgのジクロロ[(S)−BINAP][(S,
S)−DPEN]ルテニウム(II)(関東化学製)
(ケトンに対して1/2500倍モル)と2.50gの
ベンゾイルぎ酸メチルエステル(東京化成製)を40m
lのメタノール(片山化学製)に添加後、10気圧の水
素雰囲気下に反応温度が100℃で4時間攪拌した。反
応中は反応進行に伴う水素圧の減少を確認した。反応液
を室温まで冷却し、溶媒のメタノールを濃縮した。シリ
カゲルカラムクロマトグラフィーにより単離して、還元
体であるマンデル酸メチルエステルを1.85g淡黄色
固体として得た(収率:73%)。
【0032】GC(ガスクロマトグラフィー): カラム;CBP-20,50m×0.25mm,0.4μm(SHIMADZU),カラム
圧;2kgf/cm2 温度条件;140℃→1.0℃/min→160℃(50min) ベンゾイルぎ酸メチルエステル :20分 マンデル酸メチルエステル :29分 不斉収率は4%eeであった。測定法を以下に記載す
る。200mgのマンデル酸メチルエステルを50ml
のクロロホルムに溶解し、1mlのトリエチルアミン、
1mlの無水トリフルオロ酢酸、20mgの4ー(ジメ
チルアミノ)ピリジンを添加し、室温で1時間攪拌し
た。反応液を50mlの水に添加して抽出し、有機層を
濃縮乾固した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーに
より精製して1−フェニル−1−(トリフルオロアセチ
ル)酢酸メチルエステルを黄色油状物として得た。1m
gの1−フェニル−1−(トリフルオロアセチル)酢酸
メチルエステルを1mlのイソプロピルアルコールに希
釈して、以下のHPLC条件により不斉収率を測定し
た。
【0033】 カラム;ダイセルOD 4.6mm Φ× 250mm 展開液;ヘキサン:イソプロピルアルコール=95:5 カラム温度;40℃ 流量;1ml/min 検出;U
V 254nm 実施例3 15.3mgのジクロロ[(S)−BINAP]
[(S,S)−DPEN]ルテニウム(II)(関東化
学製)(ケトンに対して1/100倍モル)と250m
gのベンゾイルぎ酸メチルエステル(東京化成製)を
2.5mlのエタノール(片山化学製)に添加後、10
気圧の水素雰囲気下に反応温度が100℃で20分間攪
拌した。反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下に濃縮
し、残さとして黄色油状物を230mg得た(収率:9
1%)。残さを1H−NMR分析するとマンデル酸メチ
ルエステルであった。還元体のエステル交換体であるマ
ンデル酸エチルエステルは痕跡量しか生成していなかっ
た。同様な結果は、GC分析からも確認できた(分析条
件は実施例2と同一)。
【0034】つまり、本発明条件下に反応を行うことに
より、エステル基を保持した状態でケトン官能基のみを
選択的に不斉還元できた。
【0035】比較例1 6.1mgのジクロロ[(S)−BINAP][(S,
S)−DPEN]ルテニウム(II)(ケトンに対して
1/2500倍モル)と2.10gのアセトフェノン
(東京化成製)を40mlのエタノールに添加後、10
気圧の水素雰囲気下に反応温度が100℃で4時間攪拌
した。反応液をGC分析すると還元体である1−フェニ
ルエタノールは全く生成しておらず、原料のアセトフェ
ノンを回収した。反応中に水素圧の変動は観察されなか
った。さらに15気圧の水素雰囲気下に150℃で4時
間攪拌したが反応は全く進行しなかった。
【0036】次に、反応液を室温まで冷却し、250m
gの水酸化カリウム(和光純薬製)を添加し、10気圧
の水素雰囲気下に反応温度が40℃で4時間攪拌する
と、アセトフェノンが全て還元されていた。
【0037】公知技術記載通り、分子内に単独のカルボ
ニル基を有するアセトフェノンは塩基の共存下には水素
添加還元反応が進行したが、塩基が存在しないと水素添
加不斉還元反応が全く進行しないことがわかった。
【0038】比較例2 15.3mgのジクロロ[(S)−BINAP]
[(S,S)−DPEN]ルテニウム(II)(関東化
学製)(ケトンに対して1/100倍モル)と250m
gのベンゾイルぎ酸メチルエステル(東京化成製)を
2.5mlのエタノール(片山化学製)に添加後、62
mgの水酸化カリウムを添加し、10気圧の水素雰囲気
下に反応温度が100℃で20分間攪拌した(実施例3
の反応条件に塩基を添加した条件である。)。反応液を
室温まで冷却し、溶媒を減圧下に濃縮した。反応液の一
部をアセトンにより希釈してGC分析した。GC分析よ
り原料ケトンが消費されたことを確認した。生成物はケ
トン還元体であったが、メチルエステルがほぼ全てエチ
ルエステルに交換されていた。
【0039】比較例3 6.1mgのジクロロ[(S)−BINAP][(S,
S)−DPEN]ルテニウム(II)(関東化学製)
(ケトンに対して1/2500倍モル)と2.50gの
ベンゾイルぎ酸メチルエステル(東京化成製)、68m
gの水酸化カリウムを40mlの1,4−ジオキサン
(片山化学製)に添加後、10気圧の水素雰囲気下に反
応温度が100℃で4時間攪拌した。反応液を室温まで
冷却し、GCにより反応液を分析するとケトン還元反応
は全く進行していないことがわかった。GC分析条件は
実施例2と同一である。
【0040】比較例4 比較例3と同様にして、反応溶媒を1,4−ジオキサン
からシクロヘキサン、あるいはトルエンとして還元反応
を行ったが、ケトン還元反応は全く進行しなかった。
【0041】つまり、従来技術a)は、塩基を共存させ
た反応条件下でも反応溶媒としてアルコールを使用しな
いと水素添加還元反応は全く進行しないことがわかっ
た。すなわち、従来技術a)は、アルコール溶媒中で塩
基を共存させることが必須であるため、本発明のエステ
ルを含有するカルボニル化合物は取り扱えないことがわ
かった。
【0042】
【発明の効果】本発明の新規な不斉還元技術により、安
定かつ高活性な錯体を用いて塩基に不安定なエステル官
能基をそのまま保持してカルボニル基のみを収率よく不
斉還元することができた。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式(1)M(L)m(Y)nl
    (1) (式中、Mは遷移金属を表し、Lは単座もしくは2座の
    ホスフィンを表し、Yは光学活性含窒素化合物を表し、
    Xはヒドリド、塩素原子もしくは臭素原子を表し、m、
    n、lはそれぞれ1〜3の整数を表す。)で示される遷
    移金属錯体を用いて、式(2) R1−(C=O)−COOR2 (2) (式中、R1とR2は、置換基を有しても良い炭化水素基
    または複素環基を表し、R1とR2は各々同一であっても
    異なっていてもよく、R1とR2は連結して環を形成して
    もよい。)で示されるカルボニル化合物を水素添加還元
    反応により不斉還元する光学活性アルコールの製造方
    法。
  2. 【請求項2】式(1)で示される遷移金属錯体が式
    (3) Ru(L1m'(Y1n'2 (3) (式中、L1はトリフェニルホスフィン、トリメチルホ
    スフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベン
    ゼンまたは2,2´−ビス(ジフェニルホスフィノ)−
    1,1´−ビナフチルのいずれかであり、Y1は単座も
    しくは2座の光学活性アミンを表し、m´とn´はそれ
    ぞれ1または2を表す。)で示される錯体である請求項
    1記載の光学活性アルコールの製造方法。
  3. 【請求項3】式(2)で示されるカルボニル化合物が置
    換もしくは非置換のベンゾイルぎ酸エステル、または置
    換もしくは非置換のピルビン酸エステルのいずれかであ
    る請求項1または2記載の光学活性アルコールの製造方
    法。
  4. 【請求項4】式(3)で示される錯体のY1がα−メチ
    ルベンジルアミン、α−メチルナフチルアミン、2,2
    ´−ジアミノ−1,1´−ビナフチル、1,2−ジアミ
    ノシクロヘキサンもしくは1,2−ジフェニル−1,2
    −ジアミノエタンのいずれかである請求項2または3の
    光学活性アルコールの製造方法。
  5. 【請求項5】式(3)で示される錯体のL1がトリフェ
    ニルホスフィンまたは2,2´−ビス(ジフェニルホス
    フィノ)−1,1´-ビナフチルであり、Y1が2,2´-ジ
    アミノ−1,1´−ビナフチル、1,2−ジアミノシク
    ロヘキサンもしくは1,2−ジフェニル−1,2−ジア
    ミノエタンのいずれかであり、m´は1または2を表
    し、n´は1を表す。)で示される請求項2〜4のいず
    れか1項記載の光学活性アルコールの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010285443A (ja) * 2010-07-26 2010-12-24 Kanto Chem Co Inc 光学活性アルコールの製法
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