JP2004152826A - 半導体素子収納用パッケージ - Google Patents
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Abstract
【課題】回路基板上の配線導体と同軸コネクタの中心導体との接合部においてインピーダンスが減少し、高周波信号の反射損失が大きくなり、半導体素子の作動性が損なわれる。
【解決手段】回路基板の絶縁基板2の内層接地導体2’に対して、同軸コネクタ7の中心導体7cが回路基板上の配線導体2aに接続される領域の下方の部位に非形成部を設け、かつ中心導体7cの絶縁体7bより枠体6の内側に突出した部分の長さが高周波信号の波長の4分の1未満であるものとする。配線導体2aと中心導体7cとの接合部でのインピーダンスの変動を効果的に抑制することができ、また、絶縁体7bから突出した中心導体7c内で共振が発生しないので、高周波信号の反射損失を極めて小さくでき、光半導体素子8等の半導体素子の作動性が良好となる。
【選択図】 図1
【解決手段】回路基板の絶縁基板2の内層接地導体2’に対して、同軸コネクタ7の中心導体7cが回路基板上の配線導体2aに接続される領域の下方の部位に非形成部を設け、かつ中心導体7cの絶縁体7bより枠体6の内側に突出した部分の長さが高周波信号の波長の4分の1未満であるものとする。配線導体2aと中心導体7cとの接合部でのインピーダンスの変動を効果的に抑制することができ、また、絶縁体7bから突出した中心導体7c内で共振が発生しないので、高周波信号の反射損失を極めて小さくでき、光半導体素子8等の半導体素子の作動性が良好となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信やマイクロ波通信,ミリ波通信等で使用される、高い周波数で作動する各種の半導体素子をこの半導体素子に電気的に接続される回路基板とともに収容し、この回路基板に接続される同軸コネクタを具備する半導体素子収納用パッケージに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信やマイクロ波通信,ミリ波通信等で使用される、高い周波数で作動する各種の半導体素子をこの半導体素子に電気的に接続される回路基板とともに収容する半導体素子収納用パッケージのうち、光通信分野に用いられる従来の半導体素子収納用パッケージの例を図3に断面図で示す。
【0003】
同図に示すように、従来の半導体素子収納用パッケージ101は、上面にLD(レーザダイオード),PD(フォトダイオード)等の半導体素子108が載置用基台103を介して載置される載置部109を設けた基体104を有する。
【0004】
この基体104は、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金や銅(Cu)−タングステン(W)合金等の金属材料から成る。
【0005】
また、載置部109を囲繞するようにして、基体104の上面に銀ロウ材等のロウ材を介して枠体106が取着されている。枠体106の一側部には、半導体素子108と光結合するための光伝送路として利用される貫通孔106bが形成されている。この枠体106は、Fe−Ni−Co合金等の金属材料から成る。
【0006】
この枠体106の外側面の貫通孔106bの周辺部には、枠体106の熱膨張係数に近似するFe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属材料から成り、戻り光防止用の光アイソレータ111と光ファイバ113とが樹脂接着剤で接着された金属ホルダ112が固定される筒状の固定部材114が、銀ロウ材等のロウ材で接合される。筒状の固定部材114には、その内部に非結晶ガラス等から成り、集光レンズとして機能するとともに半導体素子収納用パッケージ101内部を寒ぐ機能を有する透光性部材110が固定されている。なお、この固定部材114と金属ホルダ112とは、各々の端面同士がYAGレーザ溶接等により固定されている。
【0007】
一方、固定部材114と透光性部材110とは、固定部材114の内周面に形成されたメッキ層と透光性部材110の外周面の一部に形成されたメッキ層とを、Au−Sn合金半田等の低融点ロウ材でロウ付けすることにより固定される。
【0008】
また、同軸コネクタ107は、Fe−Ni−Co合金等の金属材料から成り、枠体106の側部に形成された貫通孔106aの内周面にAu−Sn合金半田等の低融点ロウ材によりロウ付けされる、外周導体である筒状のホルダ107aと、このホルダ107aの内部に充填されたホウケイ酸ガラス等の誘電体から成る絶縁体であるガラス107bと、このガラス107bの中心軸部分に装着され半導体素子収納用パッケージ101内外を導通させる、中心導体107cとから成る。そして、同軸コネクタ107は、外部電気回路と半導体素子108とを回路基板102の配線導体102aおよびボンディングワイヤ115を介して電気的に接続する機能を有するとともに、半導体素子収納用パッケージ101内部を塞ぐ機能を有する。
【0009】
また、同軸コネクタ107は、高周波信号が伝送される中心導体107cと、その外周部、即ち金属材料から成る外周導体107aおよび貫通孔106aの内周面とが、高周波信号伝送時のインピーダンスの整合が可能な同軸構造を構成している。
【0010】
なお、同軸コネクタ107と半導体素子108との電気的接続は、中心導体107cの貫通孔106a内部のインピーダンスとインピーダンスが同一となるように回路基板102上に形成されたマイクロストリップ線路である配線導体102aと同軸コネクタ107の中心導体107cの先端部とを、錫−鉛半田等の低融点ロウ材を介して接合するとともに、配線導体102aと半導体素子108とをボンディングワイヤ115で接続することにより行なわれる。
【0011】
このような半導体素子収納用パッケージ101は、半導体素子108や回路基板102を搭載した載置用基台103を樹脂接着剤,ロウ材等の接着剤を介して載置部109上に載置固定した後、中心導体107cの一端を回路基板102上面の配線導体102aに低融点ロウ材で接合する。次いで、半導体素子108と配線導体102aとをボンディングワイヤ115で電気的に接続する。その後、光アイソレータ111と光ファイバ113が固定されている金属ホルダ112を固定部材114に溶接する。そして、枠体106上面に蓋体105をシーム溶接やロウ付け等により接合することにより、製品としての光半導体装置となる。
【0012】
また、この光半導体装置は、例えば外部から同軸コネクタ107を介して供給される高周波信号により半導体素子108を光励起させ、励起したレーザ光等の光を透光性部材110を通して光ファイバ113に授受させ光ファイバ113内を伝送させることにより、大容量の情報を高速に伝送できる光電変換装置として機能し、光通信分野に多く用いられている。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−141594号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の半導体素子収納用パッケージ101においては、同軸コネクタ107の中心導体107cのインピーダンスとインピーダンスが同一となるように形成された回路基板102上の配線導体102aに同軸コネクタ107の中心導体107cが接合されることにより、配線導体102aに中心導体107cが接合された部位において中心導体107cの表面積が配線導体102aの表面積に加わった分が導体の表面積となり、その分容量性成分が増加することにより、接合部においてインピーダンスが減少するためインピーダンスの不整合が生じることとなって、その結果、高周波信号の入出力時における反射損失が大きくなり、半導体素子108の作動性が損なわれるという問題点を有していた。
【0015】
また、絶縁体107bより突出した中心導体107cの長さが特に考慮されていなかったため、絶縁体107bより突出した部分の中心導体107cにおいて高周波信号の共振が発生してしまう場合があり、その共振により反射損失が大きくなって半導体素子108の作動性が損なわれる場合があるという問題点も有していた。
【0016】
本発明は上記問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、高周波信号の入出力時における回路基板上の配線導体と同軸コネクタの中心導体との接合部で生じる反射損失を非常に小さなものに抑制することができ、それにより半導体素子の作動性を良好なものとした半導体素子収納用パッケージを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体素子収納用パッケージは、上面に半導体素子および回路基板が載置用基台を介して載置される載置部を有する基体と、この基体の前記上面に前記載置部を囲繞するように取着されるとともに側部に貫通孔が形成された枠体と、前記載置部に載置された前記載置用基台およびこの載置用基台に載置された前記回路基板と、筒状の外周導体およびその中心軸に設置された中心導体ならびにそれらの間に介在させた絶縁体から成るとともに、前記貫通孔に嵌着されて、前記絶縁体より突出した前記中心導体の下側が前記回路基板の上面の配線導体に接続される同軸コネクタとを具備して成り、前記回路基板が複数の絶縁層を積層して成る絶縁基板の上面に前記配線導体を有するとともに前記絶縁層間に前記配線導体と対向する内層接地導体を有する半導体素子収納用パッケージであって、前記内層接地導体は、前記中心導体の下側が前記配線導体に接続される領域の下方の部位に非形成部が設けられており、かつ前記中心導体の前記絶縁体より前記枠体の内側に突出した部分の長さが前記中心導体により伝送される高周波信号の波長の4分の1未満であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、同軸コネクタの中心導体は回路基板の絶縁基板の内層に形成された内層接地導体に設けられた非形成部の上方において配線導体に接合されていることから、両者の接合部における導体の表面積の増加に伴う内層接地導体との間での容量性成分の増加を非形成部によって減少させることができてインピーダンスの減少を抑えることができるため、回路基板上の配線導体と同軸コネクタの中心導体との接合部でのインピーダンスの変動を効果的に抑制することができ、インピーダンスを整合させて高周波信号の入出力時に発生する反射損失を非常に小さなものに抑えることができる。
【0019】
また、絶縁体より枠体の内側に突出した部分の中心導体の長さを、中心導体により伝送される高周波信号の波長の4分の1未満としたことから、中心導体のこの部分において共振の発生を防止することができるので、反射損失が大きくなるような悪影響を効果的に抑えることが可能となる。
【0020】
これらにより、本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、高周波信号の入出力時における反射損失を極めて小さなものとすることができ、搭載される半導体素子の作動性が良好なものとすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の半導体素子収納用パッケージについて以下に詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の半導体素子収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は、図1に示す半導体素子収納用パッケージにおける同軸コネクタ周辺部の要部拡大平面図である。この図1においては本発明の半導体素子収納用パッケージを光半導体素子収納用パッケージに適用した例を示している。
【0023】
これらの図において、1は、容器本体の底面を構成する基体4と、容器本体の側壁を構成する枠体6と、高周波信号の入出力端子である同軸コネクタ7と、透光性部材10や金属ホルダ12を設置固定するとともに光ファイバ13を取着する筒状の光ファイバの固定部材14とから成る半導体素子収納用パッケージである。
【0024】
これら基体4,枠体6,同軸コネクタ7,固定部材14,透光性部材10および蓋体5で、内部に半導体素子としての光半導体素子8を収容する容器が基本的に構成される。
【0025】
また、固定部材14の外側端面には、光アイソレータ11と光ファイバ13とが樹脂接着剤等で接着された金属ホルダ12が、YAGレーザ溶接等により固定される。
【0026】
半導体素子収納用パッケージ1において、同軸コネクタ7は、筒状の外周導体7aと、外周導体7aの内部に充填されたホウケイ酸ガラス等から成る絶縁体7bと、絶縁体7bの中心部分に装着されて外周導体7aの中心軸に設置された、半導体素子収納用パッケージ1の内外を導通する中心導体7cとで構成される。
【0027】
この同軸コネクタ7は、外周導体7aと中心導体7cとの間に絶縁体7bを充填して介在させた構造であり、その外周部、即ち金属材料から成る外周導体7aおよび貫通孔6aの内周面と中心導体7cとが、高周波信号の伝送時のインピーダンス整合が可能な同軸構造を構成している。
【0028】
さらに、中心導体7cは、絶縁体7bから枠体6の内側に向けて突出しており、その先端部が、載置用基台3上に載置された、上面に高周波信号の伝送路としてのマイクロストリップ線路を構成する配線導体2aがメタライズ金属層等により形成された、アルミナセラミックス等のセラミックス基板(絶縁基板)2から成る、インピーダンス整合用等の回路基板に至っている。
【0029】
この例においては、回路基板の絶縁基板2は複数の絶縁層が積層されて成り、その絶縁層間である内層には内層接地導体2’が形成されており、それに対向するように上面に形成された配線導体2aは、同軸コネクタ7の中心導体7cのインピーダンスと同一となるように形成された、例えばマイクロストリップ線路であり、その一端側は、光半導体素子8とボンディングワイヤ15を介して電気的に接続される。また、他端側は、同軸コネクタ7の中心導体7cの先端部と接合されており、これにより中心導体7cと光半導体素子8とを電気的に接続する機能を有する。なお、この配線導体2aは、その両側に所定の間隔をあけて同一面接地導体が形成された、いわゆるグランド付きコプレーナ線路として構成されてもよい。
【0030】
この配線導体2aは、メタライズ金属層から成る場合であれば、モリブデン(Mo),マンガン(Mn),タングステン(W)等の金属粉末に有機溶剤,溶媒を添加混合して得た金属ペーストを、回路基板の絶縁基板2となるセラミックグリーンシートに予めスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布し、焼成することにより形成される。
【0031】
本発明の半導体素子収納用パッケージ1においては、回路基板の絶縁基板2は、その上面で配線導体2aに同軸コネクタ7の中心導体7cの下側が接続される領域の下方において、その内層に配線導体2aと対向するように形成された内層接地導体2’のその下方の部位に、導体の非形成部が設けられており、かつ同軸コネクタ7の中心導体7cの絶縁体7bより枠体6の内側に突出した部分の長さが中心導体7cにより伝送される高周波信号の波長の4分の1未満であることが重要である。
【0032】
これは、絶縁基板2の上面の配線導体2aと同軸コネクタ7の中心導体7cとの接合部でインピーダンスが減少する主要因が、同軸コネクタ7の中心導体7cのインピーダンスとインピーダンスが同一となるように形成された配線導体2aに中心導体7cが接合されることにより、接合部における導体の表面積が増加し、これに伴って内層接地導体2’との間での容量性成分が増加することによりインピーダンスが減少するためであるのに対し、本発明の半導体素子収納用パッケージ1によれば、同軸コネクタ7の中心導体7cの下側が回路基板の上面の配線導体2aに接続される領域の下方の部位の内層接地導体2’に非形成部を設けることによって、接合部における導体の表面積の増加による内層接地導体2’との間での容量性成分の増加を抑えることができてインピーダンスの減少を抑えることができるため、インピーダンスの変動を効果的に抑制してインピーダンスの不整合の発生を抑制することができるからである。
【0033】
ここで、内層接地導体2’の、絶縁基板2の上面で配線導体2aに同軸コネクタ7の中心導体7cの下側が接続される領域の下方の部位に設けられる非形成部の大きさは、中心導体7cおよび配線導体2aによって伝送される高周波信号の周波数に応じ、配線導体2aおよび中心導体7cのインピーダンスに対して、中心導体7cの下側が配線導体2aに接続される接合部において導体の表面積が増加することによって内層接地導体2’との間での容量性成分が増加するのを非形成部で抑制して接合部におけるインピーダンスの不整合が発生を抑制することができるように、接合部の仕様に応じて、接合部における容量性成分の増加を抑制できるような大きさに適宜選択して設定すればよい。
【0034】
なお、このような非形成部を設けた内層接地導体2’を絶縁基板2の内層に形成するには、配線導体2aと同様に、回路基板の絶縁基板2となるセラミックグリーンシートに予めスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布し、他のセラミックグリーンシートと積層して焼成することによって形成すればよい。
【0035】
また、同軸コネクタ7について、絶縁体7bより枠体6の内側に突出した部分の中心導体7cの長さを中心導体7cにより伝送される高周波信号の波長の4分の1未満とするのは、これによって、中心導体7cのこの部分で共振の発生を防止することができ、中心導体7cにより伝搬される高周波信号のエネルギー放射が起こらないようにすることができるので、反射損失の増大を防止して非常に小さなものとすることができ、高周波伝送特性の劣化を効果的に抑えることが可能となるからである。
【0036】
これらにより、高周波信号の入出力時における反射損失を非常に小さなものとすることができ、光半導体素子8の作動性が損なわれることはない。
【0037】
また、同軸コネクタ7は、外部電気回路(図示せず)と光半導体素子8とを電気的に接続する機能を有するとともに、半導体素子収納用パッケージ1の枠体6に形成した貫通孔6aを塞ぐことによって容器本体の内部を気密封止する機能も有している。
【0038】
このような同軸コネクタ7が嵌着される枠体6は、載置部9を囲繞するようにして基体4の上面に例えば銀ロウ等のロウ材を介して接合されることによって取着される。
【0039】
枠体6の一側部には同軸コネクタ7を嵌着するための貫通孔6aを、対向する側部には光半導体素子8と光ファイバ13とを光結合するための光伝送路として利用される貫通孔6bをそれぞれ形成する。この枠体6は、基体4との接合による熱歪みを小さくして接合強度を強くするため、および半導体素子収納用パッケージ1の外部に対する電磁気的遮蔽を行なうために、基体4の熱膨張係数に近似するFe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属材料で形成するのがよい。そして、枠体6は、例えばFe−Ni−Co合金等のインゴットをプレス加工により枠状に成形することによって作製される。
【0040】
枠体6の一側部に形成されている貫通孔6aは、同軸コネクタ7を枠体6に取着するための取着孔である。また、枠体6の対向する他の側部に形成されている貫通孔6bは、固定部材14を枠体6に取着するための取着孔である。これらの貫通孔6a,6bは、枠体6の側部にドリルによる孔あけ加工を施すこと等により、所定の位置・形状・寸法に形成される。
【0041】
枠体6の貫通孔6bには筒状の固定部材14が取着され、固定部材14の内部には透光性部材10が取着されている。枠体6の貫通孔6bに取着される固定部材14は、光アイソレータ11および光ファイバ13が接着された金属ホルダ12を枠体6に固定する際の接合媒体として機能するとともに、光半導体素子8が励起した光を光ファイバ13に伝達させる機能を有する。
【0042】
また、枠体6の表面には、耐食性に優れかつロウ材との濡れ性に優れる金属、具体的には、厚さ0.5μm〜9μmのNi層と厚さ0.5μm〜9μmのAu層とをメッキ法により順次被着させておくのがよい。これにより、枠体6が酸化腐食するのを有効に防止できるとともに、貫通孔6a,6bにそれぞれ同軸コネクタ7および固定部材14を強固に接合できる。
【0043】
本発明の半導体素子収納用パッケージ1における基体4は、光半導体素子8および回路基板が載置される載置用基台3を支持するための支持部材として、および光半導体素子8から発生する熱を載置用基台3を通して受けて外部に放散するための放熱板として機能し、その上面の略中央部に光半導体素子8および回路基板が載置用基台3を介して載置される載置部9を有する。この載置部9には、載置用基台3が載置され、Sn−Pb半田等の低融点ロウ材を介して接着固定される。また、光半導体素子8から発生する熱は、この載置用基台3および低融点ロウ材を介して基体4から外部に効率良く放散され、光半導体素子8の作動性を良好なものとする。
【0044】
この基体4は、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属材料から成り、そのインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の金属加工を施すことにより所定の形状に製作される。
【0045】
また、基体4の表面には、耐食性に優れかつロウ材との濡れ性に優れる金属、具体的には、厚さ0.5μm〜9μmのNi層と厚さ0.5μm〜9μmのAu層とをメッキ法により順次被着させておくのがよい。これにより、基体4の酸化腐食を有効に防止できるとともに、基体4の上面に載置用基台3をロウ材を介して強固に接着固定することができる。
【0046】
また、基体4の上面には、載置部9を囲繞するようにして枠体6が取着されており、枠体6の内側に載置用基台3とこれに載置された光半導体素子8および回路基板とを収容するための空所が形成される。
【0047】
なお、以上の説明では、基体4と枠体6とはそれぞれ別体で作製したものを接合した場合について述べたが、基体4と枠体6とは、一体的に形成されたもの、例えばメタル・インジェクション・モールド(MIM)法等によって作製されたものであってもよい。
【0048】
また、透光性部材10は、固定部材14の内部空間を塞ぎ、基体4と枠体6と蓋体5とから成る容器の気密性を保持するとともに、固定部材14の内部空間を通して、光半導体素子8からの光あるいは光半導体素子8への光をそのまま固定部材14に取着接続される光ファイバ13に伝達し、あるいは光ファイバ13から伝達させる機能を有する。
【0049】
この透光性部材10は、例えば、熱膨張係数が4×10−6/℃〜12×10−6/℃(室温〜400℃)のサファイア(単結晶アルミナ)や、酸化珪素,酸化鉛を主成分とした鉛系の非晶質ガラスや、ホウ酸,ケイ砂を主成分としたホウケイ酸系の非晶質ガラス等で形成されている。なお、これらの非晶質ガラスは、結晶軸が存在しないことから、透光性部材10を通過させて光半導体素子8と光ファイバ13との間で光を授受させる場合に、その光は透光性部材10で複屈折を起こすことなくそのまま光半導体素子8と光ファイバ13との間で授受され、光半導体素子8と光ファイバ13との間での光の授受が高効率となって光信号の伝達効率が高くなる点で好ましいものである。
【0050】
また、透光性部材10は、球状,半球状,凸レンズ状,ロッドレンズ状等の形状とすることができ、外部のレーザ光等の光を光ファイバ13により伝送させて光半導体素子8に入力させたり、または光半導体素子8で出力したレーザ光等の光を光ファイバ13に入力させるための集光用部材として用いられる。
【0051】
この透光性部材10は、その熱膨張係数が枠体6のそれと異なっていても固定部材14が熱膨張差による応力を吸収し緩和するので、結晶軸がこのような応力のためにある方向に揃うことにより、光の屈折率が変化するようなことは発生し難い。従って、このような透光性部材10を用いることにより、光半導体素子8と光ファイバ13との間の光の結合効率を高くすることができる。
【0052】
また、透光性部材10の固定部材14への取着は、例えば、透光性部材10の外周部に予めメタライズ金属層等の金属層を被着しておき、この金属層と固定部材14の内周面とを200℃〜400℃程度の融点を有するAu−Sn合金半田等の低融点ロウ材を介してロウ付けすることにより行なわれる。この場合、透光性部材10の固定部材14への取着がAu−Sn合金等のロウ付けにより行なわれることから、取着の信頼性が極めて高くなり、これにより固定部材14と透光性部材10との取着部における光半導体素子8を収容する容器の気密封止が完全となり、容器内部に収容する光半導体素子8を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。
【0053】
本発明の半導体素子収納用パッケージ1における載置用基台3は、シリコン(Si)やCu−W合金等の熱伝導性の高い金属材料等から成り、光半導体素子8および回路基板を支持する支持部材として機能するとともに、光半導体素子8から基体4へ熱を伝えるための伝熱媒体として機能する。さらに、その高さを適宜設定することにより、透光性部材10と光半導体素子8との光軸を合致させる機能を有する。
【0054】
また、枠体6の上面には、例えば、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属材料やアルミナセラミックス等のセラミックス材料等から成る蓋体5が取着され、これにより基体4と枠体6と蓋体5とからなる容器の内部に光半導体素子8が回路基板とともに気密に封止される。蓋体5の枠体6の上面への取着は、良好な気密性を確保するには、例えば、シームウェルド法,YAGレーザ溶接法等の溶接法や、Au−Sn合金半田等の低融点ロウ材によるロウ付け法等によって接合することにより行なわれる。
【0055】
かくして本発明の半導体素子収納用パッケージ1によれば、基体4の載置部9に載置用基台3を介して光半導体素子8および回路基板を載置固定するとともに、光半導体素子8の各電極をボンディングワイヤ15を介して回路基板上の配線導体2aに電気的に接続して、同軸コネクタ7の中心導体7cと電気的に接続し、次に、枠体6の上面に蓋体5を取着し、基体4と枠体6と蓋体5とからなる容器内部に光半導体素子8を回路基板とともに収納し、最後に、枠体6に取着された固定部材14に光アイソレータ11および光ファイバ13を取着した金属ホルダ12を溶接して取着することにより、最終製品としての光半導体装置となる。
【0056】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0057】
【発明の効果】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、同軸コネクタの中心導体は回路基板の絶縁基板の内層に形成された内層接地導体に設けられた非形成部の上方において配線導体に接合されていることから、両者の接合部における導体の表面積の増加に伴う内層接地導体との間での容量性成分の増加を非形成部によって減少させることができてインピーダンスの減少を抑えることができるため、回路基板上の配線導体と同軸コネクタの中心導体との接合部でのインピーダンスの変動を効果的に抑制することができ、インピーダンスを整合させて高周波信号の入出力時に発生する反射損失を非常に小さなものに抑えることができる。
【0058】
また、絶縁体より枠体の内側に突出した部分の中心導体の長さを、中心導体により伝送される高周波信号の波長の4分の1未満としたことから、中心導体のこの部分において共振の発生を防止することができるので、反射損失が大きくなるような悪影響を効果的に抑えることが可能となる。
【0059】
これらにより、本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、高周波信号の入出力時における回路基板上の配線導体と同軸コネクタの中心導体との接合部で生じる反射損失を極めて小さなものとすることができ、搭載される半導体素子の作動性が良好な半導体素子収納用パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体素子収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す半導体素子収納用パッケージにおける同軸コネクタ周辺部の要部拡大平面図である。
【図3】従来の半導体素子収納用パッケージの例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・半導体素子収納用パッケージ
2・・・絶縁基板
2’・・・内層接地導体
2a・・・配線導体
3・・・載置用基台
4・・・基体
5・・・蓋体
6・・・枠体
6a・・・同軸コネクタ装着用の貫通孔
6b・・・光伝送路用の貫通孔
7・・・同軸コネクタ
7a・・・外周導体
7b・・・絶縁体
7c・・・中心導体
8・・・光半導体素子(半導体素子)
9・・・載置部
10・・・透光性部材
11・・・光アイソレータ
12・・・金属ホルダ
13・・・光ファイバ
14・・・固定部材
15・・・ボンディングワイヤ
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信やマイクロ波通信,ミリ波通信等で使用される、高い周波数で作動する各種の半導体素子をこの半導体素子に電気的に接続される回路基板とともに収容し、この回路基板に接続される同軸コネクタを具備する半導体素子収納用パッケージに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信やマイクロ波通信,ミリ波通信等で使用される、高い周波数で作動する各種の半導体素子をこの半導体素子に電気的に接続される回路基板とともに収容する半導体素子収納用パッケージのうち、光通信分野に用いられる従来の半導体素子収納用パッケージの例を図3に断面図で示す。
【0003】
同図に示すように、従来の半導体素子収納用パッケージ101は、上面にLD(レーザダイオード),PD(フォトダイオード)等の半導体素子108が載置用基台103を介して載置される載置部109を設けた基体104を有する。
【0004】
この基体104は、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金や銅(Cu)−タングステン(W)合金等の金属材料から成る。
【0005】
また、載置部109を囲繞するようにして、基体104の上面に銀ロウ材等のロウ材を介して枠体106が取着されている。枠体106の一側部には、半導体素子108と光結合するための光伝送路として利用される貫通孔106bが形成されている。この枠体106は、Fe−Ni−Co合金等の金属材料から成る。
【0006】
この枠体106の外側面の貫通孔106bの周辺部には、枠体106の熱膨張係数に近似するFe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属材料から成り、戻り光防止用の光アイソレータ111と光ファイバ113とが樹脂接着剤で接着された金属ホルダ112が固定される筒状の固定部材114が、銀ロウ材等のロウ材で接合される。筒状の固定部材114には、その内部に非結晶ガラス等から成り、集光レンズとして機能するとともに半導体素子収納用パッケージ101内部を寒ぐ機能を有する透光性部材110が固定されている。なお、この固定部材114と金属ホルダ112とは、各々の端面同士がYAGレーザ溶接等により固定されている。
【0007】
一方、固定部材114と透光性部材110とは、固定部材114の内周面に形成されたメッキ層と透光性部材110の外周面の一部に形成されたメッキ層とを、Au−Sn合金半田等の低融点ロウ材でロウ付けすることにより固定される。
【0008】
また、同軸コネクタ107は、Fe−Ni−Co合金等の金属材料から成り、枠体106の側部に形成された貫通孔106aの内周面にAu−Sn合金半田等の低融点ロウ材によりロウ付けされる、外周導体である筒状のホルダ107aと、このホルダ107aの内部に充填されたホウケイ酸ガラス等の誘電体から成る絶縁体であるガラス107bと、このガラス107bの中心軸部分に装着され半導体素子収納用パッケージ101内外を導通させる、中心導体107cとから成る。そして、同軸コネクタ107は、外部電気回路と半導体素子108とを回路基板102の配線導体102aおよびボンディングワイヤ115を介して電気的に接続する機能を有するとともに、半導体素子収納用パッケージ101内部を塞ぐ機能を有する。
【0009】
また、同軸コネクタ107は、高周波信号が伝送される中心導体107cと、その外周部、即ち金属材料から成る外周導体107aおよび貫通孔106aの内周面とが、高周波信号伝送時のインピーダンスの整合が可能な同軸構造を構成している。
【0010】
なお、同軸コネクタ107と半導体素子108との電気的接続は、中心導体107cの貫通孔106a内部のインピーダンスとインピーダンスが同一となるように回路基板102上に形成されたマイクロストリップ線路である配線導体102aと同軸コネクタ107の中心導体107cの先端部とを、錫−鉛半田等の低融点ロウ材を介して接合するとともに、配線導体102aと半導体素子108とをボンディングワイヤ115で接続することにより行なわれる。
【0011】
このような半導体素子収納用パッケージ101は、半導体素子108や回路基板102を搭載した載置用基台103を樹脂接着剤,ロウ材等の接着剤を介して載置部109上に載置固定した後、中心導体107cの一端を回路基板102上面の配線導体102aに低融点ロウ材で接合する。次いで、半導体素子108と配線導体102aとをボンディングワイヤ115で電気的に接続する。その後、光アイソレータ111と光ファイバ113が固定されている金属ホルダ112を固定部材114に溶接する。そして、枠体106上面に蓋体105をシーム溶接やロウ付け等により接合することにより、製品としての光半導体装置となる。
【0012】
また、この光半導体装置は、例えば外部から同軸コネクタ107を介して供給される高周波信号により半導体素子108を光励起させ、励起したレーザ光等の光を透光性部材110を通して光ファイバ113に授受させ光ファイバ113内を伝送させることにより、大容量の情報を高速に伝送できる光電変換装置として機能し、光通信分野に多く用いられている。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−141594号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の半導体素子収納用パッケージ101においては、同軸コネクタ107の中心導体107cのインピーダンスとインピーダンスが同一となるように形成された回路基板102上の配線導体102aに同軸コネクタ107の中心導体107cが接合されることにより、配線導体102aに中心導体107cが接合された部位において中心導体107cの表面積が配線導体102aの表面積に加わった分が導体の表面積となり、その分容量性成分が増加することにより、接合部においてインピーダンスが減少するためインピーダンスの不整合が生じることとなって、その結果、高周波信号の入出力時における反射損失が大きくなり、半導体素子108の作動性が損なわれるという問題点を有していた。
【0015】
また、絶縁体107bより突出した中心導体107cの長さが特に考慮されていなかったため、絶縁体107bより突出した部分の中心導体107cにおいて高周波信号の共振が発生してしまう場合があり、その共振により反射損失が大きくなって半導体素子108の作動性が損なわれる場合があるという問題点も有していた。
【0016】
本発明は上記問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、高周波信号の入出力時における回路基板上の配線導体と同軸コネクタの中心導体との接合部で生じる反射損失を非常に小さなものに抑制することができ、それにより半導体素子の作動性を良好なものとした半導体素子収納用パッケージを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体素子収納用パッケージは、上面に半導体素子および回路基板が載置用基台を介して載置される載置部を有する基体と、この基体の前記上面に前記載置部を囲繞するように取着されるとともに側部に貫通孔が形成された枠体と、前記載置部に載置された前記載置用基台およびこの載置用基台に載置された前記回路基板と、筒状の外周導体およびその中心軸に設置された中心導体ならびにそれらの間に介在させた絶縁体から成るとともに、前記貫通孔に嵌着されて、前記絶縁体より突出した前記中心導体の下側が前記回路基板の上面の配線導体に接続される同軸コネクタとを具備して成り、前記回路基板が複数の絶縁層を積層して成る絶縁基板の上面に前記配線導体を有するとともに前記絶縁層間に前記配線導体と対向する内層接地導体を有する半導体素子収納用パッケージであって、前記内層接地導体は、前記中心導体の下側が前記配線導体に接続される領域の下方の部位に非形成部が設けられており、かつ前記中心導体の前記絶縁体より前記枠体の内側に突出した部分の長さが前記中心導体により伝送される高周波信号の波長の4分の1未満であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、同軸コネクタの中心導体は回路基板の絶縁基板の内層に形成された内層接地導体に設けられた非形成部の上方において配線導体に接合されていることから、両者の接合部における導体の表面積の増加に伴う内層接地導体との間での容量性成分の増加を非形成部によって減少させることができてインピーダンスの減少を抑えることができるため、回路基板上の配線導体と同軸コネクタの中心導体との接合部でのインピーダンスの変動を効果的に抑制することができ、インピーダンスを整合させて高周波信号の入出力時に発生する反射損失を非常に小さなものに抑えることができる。
【0019】
また、絶縁体より枠体の内側に突出した部分の中心導体の長さを、中心導体により伝送される高周波信号の波長の4分の1未満としたことから、中心導体のこの部分において共振の発生を防止することができるので、反射損失が大きくなるような悪影響を効果的に抑えることが可能となる。
【0020】
これらにより、本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、高周波信号の入出力時における反射損失を極めて小さなものとすることができ、搭載される半導体素子の作動性が良好なものとすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の半導体素子収納用パッケージについて以下に詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の半導体素子収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は、図1に示す半導体素子収納用パッケージにおける同軸コネクタ周辺部の要部拡大平面図である。この図1においては本発明の半導体素子収納用パッケージを光半導体素子収納用パッケージに適用した例を示している。
【0023】
これらの図において、1は、容器本体の底面を構成する基体4と、容器本体の側壁を構成する枠体6と、高周波信号の入出力端子である同軸コネクタ7と、透光性部材10や金属ホルダ12を設置固定するとともに光ファイバ13を取着する筒状の光ファイバの固定部材14とから成る半導体素子収納用パッケージである。
【0024】
これら基体4,枠体6,同軸コネクタ7,固定部材14,透光性部材10および蓋体5で、内部に半導体素子としての光半導体素子8を収容する容器が基本的に構成される。
【0025】
また、固定部材14の外側端面には、光アイソレータ11と光ファイバ13とが樹脂接着剤等で接着された金属ホルダ12が、YAGレーザ溶接等により固定される。
【0026】
半導体素子収納用パッケージ1において、同軸コネクタ7は、筒状の外周導体7aと、外周導体7aの内部に充填されたホウケイ酸ガラス等から成る絶縁体7bと、絶縁体7bの中心部分に装着されて外周導体7aの中心軸に設置された、半導体素子収納用パッケージ1の内外を導通する中心導体7cとで構成される。
【0027】
この同軸コネクタ7は、外周導体7aと中心導体7cとの間に絶縁体7bを充填して介在させた構造であり、その外周部、即ち金属材料から成る外周導体7aおよび貫通孔6aの内周面と中心導体7cとが、高周波信号の伝送時のインピーダンス整合が可能な同軸構造を構成している。
【0028】
さらに、中心導体7cは、絶縁体7bから枠体6の内側に向けて突出しており、その先端部が、載置用基台3上に載置された、上面に高周波信号の伝送路としてのマイクロストリップ線路を構成する配線導体2aがメタライズ金属層等により形成された、アルミナセラミックス等のセラミックス基板(絶縁基板)2から成る、インピーダンス整合用等の回路基板に至っている。
【0029】
この例においては、回路基板の絶縁基板2は複数の絶縁層が積層されて成り、その絶縁層間である内層には内層接地導体2’が形成されており、それに対向するように上面に形成された配線導体2aは、同軸コネクタ7の中心導体7cのインピーダンスと同一となるように形成された、例えばマイクロストリップ線路であり、その一端側は、光半導体素子8とボンディングワイヤ15を介して電気的に接続される。また、他端側は、同軸コネクタ7の中心導体7cの先端部と接合されており、これにより中心導体7cと光半導体素子8とを電気的に接続する機能を有する。なお、この配線導体2aは、その両側に所定の間隔をあけて同一面接地導体が形成された、いわゆるグランド付きコプレーナ線路として構成されてもよい。
【0030】
この配線導体2aは、メタライズ金属層から成る場合であれば、モリブデン(Mo),マンガン(Mn),タングステン(W)等の金属粉末に有機溶剤,溶媒を添加混合して得た金属ペーストを、回路基板の絶縁基板2となるセラミックグリーンシートに予めスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布し、焼成することにより形成される。
【0031】
本発明の半導体素子収納用パッケージ1においては、回路基板の絶縁基板2は、その上面で配線導体2aに同軸コネクタ7の中心導体7cの下側が接続される領域の下方において、その内層に配線導体2aと対向するように形成された内層接地導体2’のその下方の部位に、導体の非形成部が設けられており、かつ同軸コネクタ7の中心導体7cの絶縁体7bより枠体6の内側に突出した部分の長さが中心導体7cにより伝送される高周波信号の波長の4分の1未満であることが重要である。
【0032】
これは、絶縁基板2の上面の配線導体2aと同軸コネクタ7の中心導体7cとの接合部でインピーダンスが減少する主要因が、同軸コネクタ7の中心導体7cのインピーダンスとインピーダンスが同一となるように形成された配線導体2aに中心導体7cが接合されることにより、接合部における導体の表面積が増加し、これに伴って内層接地導体2’との間での容量性成分が増加することによりインピーダンスが減少するためであるのに対し、本発明の半導体素子収納用パッケージ1によれば、同軸コネクタ7の中心導体7cの下側が回路基板の上面の配線導体2aに接続される領域の下方の部位の内層接地導体2’に非形成部を設けることによって、接合部における導体の表面積の増加による内層接地導体2’との間での容量性成分の増加を抑えることができてインピーダンスの減少を抑えることができるため、インピーダンスの変動を効果的に抑制してインピーダンスの不整合の発生を抑制することができるからである。
【0033】
ここで、内層接地導体2’の、絶縁基板2の上面で配線導体2aに同軸コネクタ7の中心導体7cの下側が接続される領域の下方の部位に設けられる非形成部の大きさは、中心導体7cおよび配線導体2aによって伝送される高周波信号の周波数に応じ、配線導体2aおよび中心導体7cのインピーダンスに対して、中心導体7cの下側が配線導体2aに接続される接合部において導体の表面積が増加することによって内層接地導体2’との間での容量性成分が増加するのを非形成部で抑制して接合部におけるインピーダンスの不整合が発生を抑制することができるように、接合部の仕様に応じて、接合部における容量性成分の増加を抑制できるような大きさに適宜選択して設定すればよい。
【0034】
なお、このような非形成部を設けた内層接地導体2’を絶縁基板2の内層に形成するには、配線導体2aと同様に、回路基板の絶縁基板2となるセラミックグリーンシートに予めスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布し、他のセラミックグリーンシートと積層して焼成することによって形成すればよい。
【0035】
また、同軸コネクタ7について、絶縁体7bより枠体6の内側に突出した部分の中心導体7cの長さを中心導体7cにより伝送される高周波信号の波長の4分の1未満とするのは、これによって、中心導体7cのこの部分で共振の発生を防止することができ、中心導体7cにより伝搬される高周波信号のエネルギー放射が起こらないようにすることができるので、反射損失の増大を防止して非常に小さなものとすることができ、高周波伝送特性の劣化を効果的に抑えることが可能となるからである。
【0036】
これらにより、高周波信号の入出力時における反射損失を非常に小さなものとすることができ、光半導体素子8の作動性が損なわれることはない。
【0037】
また、同軸コネクタ7は、外部電気回路(図示せず)と光半導体素子8とを電気的に接続する機能を有するとともに、半導体素子収納用パッケージ1の枠体6に形成した貫通孔6aを塞ぐことによって容器本体の内部を気密封止する機能も有している。
【0038】
このような同軸コネクタ7が嵌着される枠体6は、載置部9を囲繞するようにして基体4の上面に例えば銀ロウ等のロウ材を介して接合されることによって取着される。
【0039】
枠体6の一側部には同軸コネクタ7を嵌着するための貫通孔6aを、対向する側部には光半導体素子8と光ファイバ13とを光結合するための光伝送路として利用される貫通孔6bをそれぞれ形成する。この枠体6は、基体4との接合による熱歪みを小さくして接合強度を強くするため、および半導体素子収納用パッケージ1の外部に対する電磁気的遮蔽を行なうために、基体4の熱膨張係数に近似するFe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属材料で形成するのがよい。そして、枠体6は、例えばFe−Ni−Co合金等のインゴットをプレス加工により枠状に成形することによって作製される。
【0040】
枠体6の一側部に形成されている貫通孔6aは、同軸コネクタ7を枠体6に取着するための取着孔である。また、枠体6の対向する他の側部に形成されている貫通孔6bは、固定部材14を枠体6に取着するための取着孔である。これらの貫通孔6a,6bは、枠体6の側部にドリルによる孔あけ加工を施すこと等により、所定の位置・形状・寸法に形成される。
【0041】
枠体6の貫通孔6bには筒状の固定部材14が取着され、固定部材14の内部には透光性部材10が取着されている。枠体6の貫通孔6bに取着される固定部材14は、光アイソレータ11および光ファイバ13が接着された金属ホルダ12を枠体6に固定する際の接合媒体として機能するとともに、光半導体素子8が励起した光を光ファイバ13に伝達させる機能を有する。
【0042】
また、枠体6の表面には、耐食性に優れかつロウ材との濡れ性に優れる金属、具体的には、厚さ0.5μm〜9μmのNi層と厚さ0.5μm〜9μmのAu層とをメッキ法により順次被着させておくのがよい。これにより、枠体6が酸化腐食するのを有効に防止できるとともに、貫通孔6a,6bにそれぞれ同軸コネクタ7および固定部材14を強固に接合できる。
【0043】
本発明の半導体素子収納用パッケージ1における基体4は、光半導体素子8および回路基板が載置される載置用基台3を支持するための支持部材として、および光半導体素子8から発生する熱を載置用基台3を通して受けて外部に放散するための放熱板として機能し、その上面の略中央部に光半導体素子8および回路基板が載置用基台3を介して載置される載置部9を有する。この載置部9には、載置用基台3が載置され、Sn−Pb半田等の低融点ロウ材を介して接着固定される。また、光半導体素子8から発生する熱は、この載置用基台3および低融点ロウ材を介して基体4から外部に効率良く放散され、光半導体素子8の作動性を良好なものとする。
【0044】
この基体4は、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属材料から成り、そのインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の金属加工を施すことにより所定の形状に製作される。
【0045】
また、基体4の表面には、耐食性に優れかつロウ材との濡れ性に優れる金属、具体的には、厚さ0.5μm〜9μmのNi層と厚さ0.5μm〜9μmのAu層とをメッキ法により順次被着させておくのがよい。これにより、基体4の酸化腐食を有効に防止できるとともに、基体4の上面に載置用基台3をロウ材を介して強固に接着固定することができる。
【0046】
また、基体4の上面には、載置部9を囲繞するようにして枠体6が取着されており、枠体6の内側に載置用基台3とこれに載置された光半導体素子8および回路基板とを収容するための空所が形成される。
【0047】
なお、以上の説明では、基体4と枠体6とはそれぞれ別体で作製したものを接合した場合について述べたが、基体4と枠体6とは、一体的に形成されたもの、例えばメタル・インジェクション・モールド(MIM)法等によって作製されたものであってもよい。
【0048】
また、透光性部材10は、固定部材14の内部空間を塞ぎ、基体4と枠体6と蓋体5とから成る容器の気密性を保持するとともに、固定部材14の内部空間を通して、光半導体素子8からの光あるいは光半導体素子8への光をそのまま固定部材14に取着接続される光ファイバ13に伝達し、あるいは光ファイバ13から伝達させる機能を有する。
【0049】
この透光性部材10は、例えば、熱膨張係数が4×10−6/℃〜12×10−6/℃(室温〜400℃)のサファイア(単結晶アルミナ)や、酸化珪素,酸化鉛を主成分とした鉛系の非晶質ガラスや、ホウ酸,ケイ砂を主成分としたホウケイ酸系の非晶質ガラス等で形成されている。なお、これらの非晶質ガラスは、結晶軸が存在しないことから、透光性部材10を通過させて光半導体素子8と光ファイバ13との間で光を授受させる場合に、その光は透光性部材10で複屈折を起こすことなくそのまま光半導体素子8と光ファイバ13との間で授受され、光半導体素子8と光ファイバ13との間での光の授受が高効率となって光信号の伝達効率が高くなる点で好ましいものである。
【0050】
また、透光性部材10は、球状,半球状,凸レンズ状,ロッドレンズ状等の形状とすることができ、外部のレーザ光等の光を光ファイバ13により伝送させて光半導体素子8に入力させたり、または光半導体素子8で出力したレーザ光等の光を光ファイバ13に入力させるための集光用部材として用いられる。
【0051】
この透光性部材10は、その熱膨張係数が枠体6のそれと異なっていても固定部材14が熱膨張差による応力を吸収し緩和するので、結晶軸がこのような応力のためにある方向に揃うことにより、光の屈折率が変化するようなことは発生し難い。従って、このような透光性部材10を用いることにより、光半導体素子8と光ファイバ13との間の光の結合効率を高くすることができる。
【0052】
また、透光性部材10の固定部材14への取着は、例えば、透光性部材10の外周部に予めメタライズ金属層等の金属層を被着しておき、この金属層と固定部材14の内周面とを200℃〜400℃程度の融点を有するAu−Sn合金半田等の低融点ロウ材を介してロウ付けすることにより行なわれる。この場合、透光性部材10の固定部材14への取着がAu−Sn合金等のロウ付けにより行なわれることから、取着の信頼性が極めて高くなり、これにより固定部材14と透光性部材10との取着部における光半導体素子8を収容する容器の気密封止が完全となり、容器内部に収容する光半導体素子8を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。
【0053】
本発明の半導体素子収納用パッケージ1における載置用基台3は、シリコン(Si)やCu−W合金等の熱伝導性の高い金属材料等から成り、光半導体素子8および回路基板を支持する支持部材として機能するとともに、光半導体素子8から基体4へ熱を伝えるための伝熱媒体として機能する。さらに、その高さを適宜設定することにより、透光性部材10と光半導体素子8との光軸を合致させる機能を有する。
【0054】
また、枠体6の上面には、例えば、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属材料やアルミナセラミックス等のセラミックス材料等から成る蓋体5が取着され、これにより基体4と枠体6と蓋体5とからなる容器の内部に光半導体素子8が回路基板とともに気密に封止される。蓋体5の枠体6の上面への取着は、良好な気密性を確保するには、例えば、シームウェルド法,YAGレーザ溶接法等の溶接法や、Au−Sn合金半田等の低融点ロウ材によるロウ付け法等によって接合することにより行なわれる。
【0055】
かくして本発明の半導体素子収納用パッケージ1によれば、基体4の載置部9に載置用基台3を介して光半導体素子8および回路基板を載置固定するとともに、光半導体素子8の各電極をボンディングワイヤ15を介して回路基板上の配線導体2aに電気的に接続して、同軸コネクタ7の中心導体7cと電気的に接続し、次に、枠体6の上面に蓋体5を取着し、基体4と枠体6と蓋体5とからなる容器内部に光半導体素子8を回路基板とともに収納し、最後に、枠体6に取着された固定部材14に光アイソレータ11および光ファイバ13を取着した金属ホルダ12を溶接して取着することにより、最終製品としての光半導体装置となる。
【0056】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0057】
【発明の効果】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、同軸コネクタの中心導体は回路基板の絶縁基板の内層に形成された内層接地導体に設けられた非形成部の上方において配線導体に接合されていることから、両者の接合部における導体の表面積の増加に伴う内層接地導体との間での容量性成分の増加を非形成部によって減少させることができてインピーダンスの減少を抑えることができるため、回路基板上の配線導体と同軸コネクタの中心導体との接合部でのインピーダンスの変動を効果的に抑制することができ、インピーダンスを整合させて高周波信号の入出力時に発生する反射損失を非常に小さなものに抑えることができる。
【0058】
また、絶縁体より枠体の内側に突出した部分の中心導体の長さを、中心導体により伝送される高周波信号の波長の4分の1未満としたことから、中心導体のこの部分において共振の発生を防止することができるので、反射損失が大きくなるような悪影響を効果的に抑えることが可能となる。
【0059】
これらにより、本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、高周波信号の入出力時における回路基板上の配線導体と同軸コネクタの中心導体との接合部で生じる反射損失を極めて小さなものとすることができ、搭載される半導体素子の作動性が良好な半導体素子収納用パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体素子収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す半導体素子収納用パッケージにおける同軸コネクタ周辺部の要部拡大平面図である。
【図3】従来の半導体素子収納用パッケージの例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・半導体素子収納用パッケージ
2・・・絶縁基板
2’・・・内層接地導体
2a・・・配線導体
3・・・載置用基台
4・・・基体
5・・・蓋体
6・・・枠体
6a・・・同軸コネクタ装着用の貫通孔
6b・・・光伝送路用の貫通孔
7・・・同軸コネクタ
7a・・・外周導体
7b・・・絶縁体
7c・・・中心導体
8・・・光半導体素子(半導体素子)
9・・・載置部
10・・・透光性部材
11・・・光アイソレータ
12・・・金属ホルダ
13・・・光ファイバ
14・・・固定部材
15・・・ボンディングワイヤ
Claims (1)
- 上面に半導体素子および回路基板が載置用基台を介して載置される載置部を有する基体と、該基体の前記上面に前記載置部を囲繞するように取着されるとともに側部に貫通孔が形成された枠体と、前記載置部に載置された前記載置用基台および該載置用基台に載置された前記回路基板と、筒状の外周導体およびその中心軸に設置された中心導体ならびにそれらの間に介在させた絶縁体から成るとともに、前記貫通孔に嵌着されて、前記絶縁体より突出した前記中心導体の下側が前記回路基板の上面の配線導体に接続される同軸コネクタとを具備して成り、前記回路基板が複数の絶縁層を積層して成る絶縁基板の上面に前記配線導体を有するとともに前記絶縁層間に前記配線導体と対向する内層接地導体を有する半導体素子収納用パッケージであって、前記内層接地導体は、前記中心導体の下側が前記配線導体に接続される領域の下方の部位に非形成部が設けられており、かつ前記中心導体の前記絶縁体より前記枠体の内側に突出した部分の長さが前記中心導体により伝送される高周波信号の波長の4分の1未満であることを特徴とする半導体素子収納用パッケージ。
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-
2002
- 2002-10-29 JP JP2002313790A patent/JP2004152826A/ja active Pending
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