JP2004152660A - 導電性粉体及びその製造方法並びに導電性シリコーンゴム組成物 - Google Patents

導電性粉体及びその製造方法並びに導電性シリコーンゴム組成物 Download PDF

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Abstract

【解決手段】無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元性を有するケイ素系高分子層又はその一部又は全部をセラミック化した層が形成され、この層の表面上をメッキにより電気陰性度の低い金属で被覆し、更にその上を電気陰性度がより高い金属で被覆した金属被覆粉体であって、その最表層をポリシロキサンで処理してなることを特徴とする導電性粉体。
【課題】本発明の導電性粉体は、シリコーンゴム組成物との親和性が優れ、該組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、マイグレーション等の絶縁不良を起こすことなく、所定のコンタクト部で低い体積低抗率の安定性に優れたものである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性粉体及びその製造方法並びにそれを用いた導電性シリコーンゴム組成物に関し、更に詳しくは、加工性が優れ、マイグレーション等の不具合のない導電性粉体、及びその製造方法、並びにシリコーンゴムを使用する温度領域で安定な高い導電性を発揮できる導電性シリコーンゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
導電性シリコーンゴム組成物は、硬化して導電性に優れたシリコーンゴムを形成するため、耐熱性、耐屈曲性及び高導電性が要求される多くの電気・電子材料の分野で利用されている。このようなゴム組成物に用いられる導電性粉体は、従来は低価格なカーボンが主に用いられていたが、最近電子部品の低抵抗化への要請から、高い導電性を持つ金属粉が用いられるようになってきた。
【0003】
金属粉として金や白金などの貴金属は、高い抗酸化性と高い導電性を持つため、耐熱性の高い導電性付与の粉体として可能性を持っているが、極めて高価であり、比重が高いという問題点のため、商業的には全く使用されていない。また、安価である銅やニッケル粉は、高い導電性を持っているものの、空気中の酸素や水分の影響により粉体表面に酸化膜を形成して導電性を悪化させるという問題点がある。そのため、耐熱性のあるシリコーンゴムが使用される条件下で、比較的酸化膜を形成しにくく導電性が高い銀粉体が、シリコーンゴム用の導電性粉体として頻繁に使用されていた。
【0004】
こうした銀粉を導電性粉体としたシリコーンゴム組成物は、従来より知られている様々な処方で架橋成形され、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物、縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物、パーオキサイド加硫型シリコーンゴム組成物等のシリコーンゴム組成物が、導電性シリコーンゴム組成物として利用されている。
【0005】
しかしながら、銀粉は、マイグレーションと硫化という2つの大きな問題点を持っていた。銀粉は、もともと溶出を起こし易い性質を有しており、水分の存在下で直流電圧が印加されると、電極や配線導体にマイグレーションと呼ばれている銀の電解析出が生じ、本来絶縁されているべき電極間や配線間が短絡するという重大な問題があった。近年の電子部品の小型軽量化に伴い、回路基板に設けられた電極ピッチや配線間の距離は狭くなっているため、こうしたマイグレーションは、即装置の重大な故障に直結する。そこで、このマイグレーションの防止は、導電性材料としての実用化に不可欠になっている。
【0006】
また、硫化とは、空気中に微量存在する排気ガス等からの二酸化硫黄や火山性のガスからの硫化水素等の硫黄を含む弱酸性気体と、銀が反応して硫化銀という導電性の低い物質に変化する現象を言う。これは水分の存在下に加速され、導電性粉体の抵抗率が増加し、結果的に導電性シリコーンゴムの体積抵抗率が上昇・悪化する。
【0007】
これらは、いずれも銀が水分の存在下にイオン化されることが第一ステップであり、イオン化した銀が溶出し再度銀として析出したものがマイグレーションであり、イオン化した銀が硫黄イオンと反応したものが硫化であると解釈すれば対策は共通している。
【0008】
従来より、こうした問題を抑制するために、銀とパラジウムの合金化によるイオン化の抑制が行われていたが、効果の割には高価なパラジウムの使用による価格の沸騰を招くため、実質的に限定的な使用しか行われていなかった。通常は、マイグレーションに関しては、素材レベルよりもむしろ、主に材料レベルでその耐マイグレーション性評価が行われ、その防止策が取られており(例えば、特開2000−357715号公報)、安価な方法として、接点の外部をエポキシ樹脂等の膜で被覆することによる空気や水分との切断等による対策が行われていたが、確実に防止できる方法とは言えなかった。
【0009】
このように、適切な導電性粉体の選択のために、その原料である導電性粉体レベルでの耐マイグレーション性の評価方法の確立と防止方法の実現が望まれていた。
【0010】
導電性粉体の処理に関しては、既に、カーボンファンクショナルシランのような有機ケイ素化合物により表面処理した金属粉体を導電性粉体として用いることで、材料としての硬化物の特性が改良されたり(特開昭59−223735号公報)、硬化性の経時変化を抑制でき、結果的に電気特性がよくなる(特許第2868986号明細書)ことは報告されているが、本マイグレーション問題に関しては、単なる銀粉体等のような金属粉を導電性粉体に用いている限り、決して解決されないでいた。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−357715号公報
【特許文献2】
特開昭59−223735号公報
【特許文献3】
特許第2868986号明細書
【特許文献4】
特開平11−306855号公報
【特許文献5】
特開2000−319541号公報
【特許文献6】
特開2000−319542号公報
【特許文献7】
特開2001−23435号公報
【特許文献8】
特開2001−152045号公報
【特許文献9】
特開2001−172506号公報
【特許文献10】
特開2001−200158号公報
【特許文献11】
特開2001−200180号公報
【特許文献12】
特開2002−4057号公報
【特許文献13】
特開2002−133948号公報
【特許文献14】
特開2002−167512号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、シリコーンゴム組成物の成分に対する良好な混合・加工性を有し、またマイグレーションを防止して、シリコーンゴムを使用する温度領域で安定な高い導電性を発揮できる導電性粉体及びその製造方法、並びにそれを用いた導電性シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上述した文献に、基材粉体の表面をポリシラン等のケイ素系高分子で処理することで、無電解メッキが容易になること、この無電解メッキによる金属で被覆された導電性粉体は、核となる粉体とそれを覆っている金属の間の密着性が極めて向上し、高信頼性を要求されるシリコーンゴム用の導電性粉体として使用できることを開示している。
【0014】
本発明者らは、これを利用して、上記のマイグレーション問題を解決する方法を見出したものである。即ち、まず、原料である導電性粉体における耐マイグレーション性の評価手法を開発した。次に、これをもとにイオン化を防ぐための導電性粉体を選定したところ、電気陰性度の異なる2種類以上の金属で構成された金属被覆粉体が、マイグレーション性を阻止するのに望ましいことを見出した。更に、この金属被覆粉体の最表層をポリシロキサンで処理した導電性粉体を用いれば、耐マイグレーション性が大きく高まることを見出した。
【0015】
つまり、本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面を、還元性を有するケイ素系高分子で処理し、この上を無電解メッキした後、最表層をポリシロキサンで処理すれば、電子材料用途に使用できるマイグレーション等の問題のない導電性粉体を容易に製造できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0016】
従って、本発明は、
[I]無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元性を有するケイ素系高分子層又はその一部又は全部をセラミック化した層が形成され、この層の表面上をメッキにより電気陰性度の低い金属で被覆し、更にその上を電気陰性度がより高い金属で被覆した金属被覆粉体であって、その最表層をポリシロキサンで処理してなることを特徴とする導電性粉体
[II]無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元性を有するケイ素系高分子層又はその一部又は全部をセラミック化した層が形成され、この層の表面上をメッキにより電気陰性度の低い金属で被覆し、更にその上を電気陰性度がより高い金属で被覆した金属被覆粉体の最表層を、ポリシロキサンに対して溶解度パラメーターの差が2〜5である溶剤に溶解されたポリシロキサンで処理することを特徴とする導電性粉体の製造方法
[III]上記導電性粉体を含有してなる導電性シリコーンゴム組成物、特に
[IV](A)下記平均組成式
SiO(4−a)/2
(式中、Rは炭素数1〜10の同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基、aは1.95〜2.05の正数を表す。)
で示されるオルガノポリシロキサン:100重量部、
(B)上記導電性粉体:50〜500重量部、
(C)架橋剤:硬化有効量
を含有することを特徴とする[III]記載の導電性シリコーンゴム組成物
を提供する。
【0017】
本発明による導電性粉体を用いれば、良好な加工性を有し、シリコーンゴムを使用する温度領域において安定で高い導電性を有する導電性シリコーンゴム組成物を得ることができる。
【0018】
また、本組成物を架橋して得られたシリコーンゴムは、低比重、高耐熱性、高導電性の特性を安定して発揮できるため、高信頼性の電子材料用途に使用できる。特に、高温での酸化による導電性の低下が抑えられ、マイグレーション等の絶縁不良を起こすことなく、低い電気抵抗率を安定に保持できるため、ゴムコネクター、電磁波シールド用のガスケットや面状発熱体等の用途に好適に用い得る。
【0019】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の導電性粉体は、無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元性を有するケイ素系高分子層又はその一部又は全部をセラミック化した層が形成され、この層の表面上をメッキにより、電気陰性度の低い金属で被覆し、更にその上を電気陰性度が高い金属で被覆した金属被覆粉体であって、更に最表層をポリシロキサンで処理した導電性粉体である。
【0020】
ここで、核となる粉体としては、無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体が選ばれるが、200℃以上の耐熱性のある無機粉体が望ましい。その形状は球状、棒状、針状、中空状、その他不定形状であっても、外観上粒状又は粉状として扱われるもの全てを包含するが、分散性の点とコストを最小にする必要性から表面の貴金属を最小量にできる球状が望ましい。
【0021】
このような無機粉体として、金属又は非金属の酸化物、アルミノ珪酸塩を含む金属珪酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物又はカーボンであり、例えばシリカ、アルミナ、珪酸アルミナ、タルク、マイカ、シラスバルーン、グラファイト、ガラスファイバー、シリコンファイバー、カーボンファイバー、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカー、亜鉛華、窒化アルミ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素のようなものが挙げられる。
【0022】
ポリシロキサンに分散させたときに比重差により沈降しない低比重導電性粉体用途に使用するためには、中空粒子が望ましく、本核となる中空粒子としては、無機中空粉体あるいは耐熱性のある有機中空粉体などが利用できる。ガラス中空粉体は、Cel−star(東海工業)、スコッチライト(住友3M)、中空ガラスビーズ(東芝バロティーニ)の名称で市販されており、アルミノシリケートからなる中空粉体は、E−Spheres(秩父小野田)、Fillite(日本フィライト)、シラスバルーン(丸中白土)が用い得る。
【0023】
高度な信頼性を要求される電子材料に使用するためには、イオン性の金属を含んでおらず、耐熱的にも安定な無機粉体が望ましく、特にはケイ素系高分子化合物と相性のよいシリカであることが望ましい。特に、比表面積を低くするため、表面に繋がる空洞を内部に持たないものが望ましく、溶融石英粉が好適に用い得る。
【0024】
核粉体の平均粒径は、0.1〜500μm、より望ましくは1〜100μmである。0.1μm未満では、比表面積が高くなるため、メッキ金属の量が多くなり高価となる場合が生じる。また、500μmを超えると母材に混合しにくくなり、硬化物の表面が凸凹となる場合が生じる。
【0025】
核粉体の比重は0.5〜5、より望ましくは0.6〜4である。0.5未満では、粒子の壁が薄くなるため機械的に破壊され易くなる場合が生じ、また、5を超えると、金属を被覆した場合の比重がポリシロキサンよりも高くなり、ゴム組成物とした場合経時で導電性粉体が沈降分離し易くなる場合が生じる。
【0026】
この粉体を、還元性を有するケイ素系高分子で処理し、粉体の表面に還元性ケイ素系高分子の層を形成する。還元作用を持つケイ素系高分子としては、Si−Si結合及び/又はSi−H結合を有するポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラザン等が挙げられ、中でも、ポリシランが好適に用い得る。
【0027】
特に、下記式(1)で表されるポリシランが好適である。
(R Si) (1)
(式中、R,Rは水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、XはR、アルコキシ基、ハロゲン原子、酸素原子、又は窒素原子を示し、mは0.1≦m≦2、nは0≦n≦1、pは0≦p≦0.5であり、かつ、1≦m+n+p≦2.5を満足する数である。qは4≦q≦100,000を満足する整数である。)
【0028】
本発明に用いる上記ポリシランにおいて、R,Rの種類は、水素原子、脂肪族又は脂環式炭化水素基としては、炭素数1〜12、好ましくは1〜6であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14、より好ましくは6〜10のものが好適であり、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。なお、置換炭化水素基としては、上記に例示した非置換の炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基などで置換したもの、例えばモノフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、m−ジメチルアミノフェニル基等が挙げられる。Xは、Rと同様の基、アルコキシ基、ハロゲン原子、酸素原子又は窒素原子であり、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜4のもの、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、通常メトキシ基、エトキシ基が用いられる。mは0.1≦m≦2、特に0.5≦m≦1、nは0≦n≦1、特に0.5≦n≦1、pは0≦p≦0.5、特に0≦p≦0.2であり、かつ、1≦m+n+p≦2.5、特に1.5≦m+n+p≦2を満足する数であり、qは4≦q≦100,000、特に10≦q≦10,000の範囲の整数である。
【0029】
本発明において、粉体をトルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素溶媒中にてケイ素系高分子化合物で処理し、粉体表面に該ケイ素系高分子化合物の層を形成した後、この粉体を凝集のない状態で分散させ、次いでこの粉体を塩化パラジウムのような標準酸化還元電位0.54V以上の金属からなる金属塩で処理して、ケイ素系高分子化合物層上に金属コロイドを析出させ、その後無電解メッキ液で処理して、粉体の最表面に金属層を析出させる。必要により、最後に得られた粉体を200℃以上の温度で熱処理して、該ケイ素系高分子化合物の一部又は全部をセラミック化することで、金属被覆粉体からなる導電性粉体を製造する。
【0030】
無電解メッキ処理時のメッキ液は、必須成分であるメッキ金属塩液と還元剤液と任意成分である錯化剤、pH調整剤、界面活性剤などからなる。
【0031】
本導電性粉体は、粉体表面上に、ケイ素系高分子化合物層、第一金属層及び第二金属層が順次形成されて、特に、電気陰性度の低い金属で被覆し、更にその上を電気陰性度が高い金属で被覆することを特徴とする。
【0032】
メッキ金属塩液の金属の電気陰性度としてはPaulingにより求められ、化学便覧等に記載されており、亜鉛/1.6、鉄/1.8、ニッケル/1.8、銅/1.9、銀/1.9、コバルト/1.8、タングステン/1.7、亜鉛/1.6、金/2.4、白金/2.2、パラジウム/2.2などの金属を含んでなるものが好適に用いられる。この単独の金属の他、合金、例えばNi−Co、Ni−W、Ni−Fe、Co−W、Co−Fe、Ni−Cu、Ni−P、Au−Pd、Au−Pt、Pd−Ptなどから構成させることができる。かかる合金被膜を形成させるには所望に応じた複数の金属塩を添加すればよい。特に、第一金属層は、ニッケル、亜鉛、鉄、コバルトから選ばれる電気陰性度の低い金属よりなり、第二金属層は電気陰性度が高い金、銀、白金、パラジウムから選ばれる金属よりなる導電性粉体であることが望ましい。特には、第一金属層がニッケル、第二金属層が金あるいは銀である粉体−ケイ素系高分子−ニッケル−金あるいは銀という4層構造を持つ金属被覆粉体が望ましい。更には、粉体の最表面となる第二金属層は、貴金属の中でも高い導電率を持ち、高温、多湿雰囲気下に長時間置かれても酸化や硫化により抵抗率が上がることのない金が望ましく、第一金属層は、低価格、耐食性、適度な硬度があり、第二金属層の下地層として安定に保持する層となるニッケルが望ましい。
【0033】
メッキ液は、更に、次亜リン酸ナトリウム、ホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤、酢酸ナトリウムのようなpH調整剤、フェニレンジアミンや酒石酸ナトリウムカリウムのような錯化剤を含む。メッキ金属塩液と還元剤液の配合割合は、それらの組み合わせにより異なるため一様ではないが、還元剤が酸化等による無効分解で消費されるため金属塩より過剰に用いられ、通常は金属塩の1.1〜5倍モルの還元剤が使用される。なお、無電解メッキ液は、市販されており、安価に入手することができる。
【0034】
メッキ温度は、15〜100℃とし得るが、より望ましくは、浴中の金属イオン拡散速度が速く、メッキ金属のつきまわりがよく、かつ浴成分の揮発による減少、溶媒の減少などが比較的少ない40〜95℃、好ましくは65〜85℃で管理する。40℃より低いとメッキ反応の進行が非常に遅くなる場合が生じ、95℃より高いと溶媒に水を用いていることから溶媒の蒸発が激しく、浴管理が難しくなる場合が生じる。
【0035】
このようにして粉体上に金属層を形成できるが、電気陰性度の低い第一の金属層が酸化されないうちにすぐに、電気陰性度の高い第二の金属層を形成させることが好ましい。この中で、金が安定性の面から、また銀が価格の面から最も望ましい。最初の金属層を形成させた粉体に対する次の金属層の表面被膜を形成する方法としては、無電解メッキ、電気メッキ、置換メッキのいずれの方法でもよい。無電解メッキの場合は、上記と同様の方法で行うことができる。
【0036】
この工程終了後に、不要な金属塩、還元剤、錯化剤、界面活性剤等を除くため、十分な洗浄を行うとよい。金属層の厚さは、0.01〜20μm、望ましくは0.1〜10μmである。0.01μm未満では、粉体を完全に被い、かつ十分な硬度や耐食性が得られにくくなる場合が生じ、また、20μmを超えると、金属の量が多くなり、高価となり、かつ比重が高くなるため、経済的に望ましくない場合が生じる。更に、価格を押さえるために、電気陰性度の低い第一の金属層が、電気陰性度の高い第二の金属層より厚いことが望ましく、第一の金属層が0.1〜10.0μm、望ましくは0.2〜5.0μm、第二の金属層が、0.005〜5μm、望ましくは0.01〜1.0μmであることがよい。
【0037】
最後に、この金属被覆粉体を、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性気体、あるいは水素、アルゴン−水素、アンモニア等の還元性気体の存在下に150℃以上の温度で熱処理することが望ましい。不活性気体あるいは還元性気体の処理条件は、通常200〜900℃で、処理時間は1分〜24時間が好適である。より望ましくは、200〜500℃で、処理時間は30分〜4時間行うのがよい。これにより、粉体と金属間にある還元性ケイ素系高分子の一部あるいは全部は、セラミックに変化させられ、より高い耐熱性と絶縁性と密着性を持つことになる。このときの雰囲気を水素のような還元系で行うことにより、金属中の酸化物を減少させ、ケイ素系高分子を安定な構造に変えることで、粉体と金属が強固に結合し高い導電性を安定的に示す粉体を得ることができる。
【0038】
この粉末は、更なる耐マイグレーション性向上のために、その表面をポリシロキサンにより処埋する。このポリシロキサンとしては、R SiO1/2単位とR SiO2/2単位からなる低粘度オイルからガム状までのジオルガノポリシロキサン;R SiO1/2単位とSiO単位からなるシリコーンレジン、RSiO3/2単位からなるシリコーンレジン、R SiO2/2単位とRSiO3/2単位からなるシリコーンレジン、R SiO2/2単位とRSiO3/2単位とSiO単位からなるシリコーンレジン等のシリコーンレジンが例示され、これらのポリシロキサンの単独もしくは2種以上の組み合わせからなるものであってもよい。
【0039】
上記ポリシロキサンの単位式中、Rは置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10のもので、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等の置換アルキル基が例示される。一分子中のRは全て同一でもよく、また異なるものがあってもよいが、メチル基とビニル基が好ましく、特に全R基中の95モル%以上がメチル基であることが好ましい。また、Rはその一部が水酸基(シラノール基)であってもよい。シラノール基は末端に有することが好ましく、またシラノール基は一価の炭化水素基と併存していることが好ましい。
【0040】
とりわけ、本ポリシロキサンは、マイグレーション性を防止しながら加工性を付与する成分であり、前記したR SiO1/2及びSiO単位からなるMQレジンと称されるものと、R SiO1/2及びR SiO2/2単位からなる鎖状ポリシロキサンオイルと称されるものの組み合わせが好適に用い得る。
【0041】
上記金属被覆粉体を上記ポリシロキサンで処理する方法としては、上記金属被覆粉体を上記ポリシロキサン自体に湿潤するか、又はポリシロキサンの有機溶剤溶液に浸漬した後、濾過により粉体と溶剤を分離し乾燥することにより、その最表層をポリシロキサンで処理した導電性粉体を製造することができる。この場合、ポリシロキサンの粘度が比較的高い場合や粉体表面に薄いポリシロキサンの被膜を形成するために、有機溶剤溶液を使用することが好ましい。特に、ポリシロキサンに対して溶解度パラメーターの差が2以上5以下である溶剤を用いて処理をする、導電性粉体の製造方法が好適に挙げられる。この場合、溶剤の溶解度パラメーター(SP価)は、例えば溶剤ハンドブック(浅原編p.62〜63)、ポリシロキサンの溶解度パラメーターは、例えばシリコーンハンドブック(伊藤編p.140)に記載されているが、ジメチルシリコーンは、7.2である。
【0042】
溶解度パラメーターが2未満である溶剤は、ポリシロキサンを溶解・溶出させ易いため、所定の量のポリシロキサンを付着させ難い場合が生じ、溶解度パラメーターが5を超える溶剤は、ポリシロキサンを溶解しにくいため、粉体表面に均質にポリシロキサンを付着させ難いため、導電性が粉体のサンプリング場所で異なる場合が生じることがある。
【0043】
このような有機溶剤としては、例えばエタノール/11.2、プロパノール/10.2等のアルコール系有機溶剤やアセトン/9.4等のケトン系有機溶剤、ジオキサン/9.8等のエーテル系有機溶剤が挙げられる。
【0044】
上記オルガノポリシロキサンで処理する場合の条件は適宜選定されるが、処理温度は10〜70℃、特に20〜50℃、処理時間は1〜100分、特に15〜60分であることが好ましい。また、かかる処理を複数回(例えば2〜4回)繰り返すことができる。更に、上記ポリシロキサンを上記溶剤に溶解して用いる場合、ポリシロキサンの濃度は0.1〜15重量%、特に1〜5重量%とすることが好ましい。
【0045】
また、上記金属被覆粉体を表面処理した後の乾燥条件は特に限定されず、室温から105℃の温度範囲で、更には50℃以上の温度で4〜24時間程度処理することが好ましい。
【0046】
なお、このように金属被覆粉体表面はポリシロキサンで処理されるが、その場合の被膜の厚さは特に限定されず、薄膜であればあるほどシリコーンゴム組成物に配合して得られるシリコーンゴムの導電性が優れている点で好ましいが、シリコーンゴム組成物との親和性が低下するおそれがあり、またマイグレーション性が大きくなるおそれがあるので、目的により被膜の厚さを適宜選択する必要があるが、好ましくは0.1μm以下であり、より好ましくは0.001〜0.1μm、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。
【0047】
本発明の導電性粉体は、種々の導電性用途に使用し得るが、特にシリコーンゴム組成物に配合して、導電性シリコーンゴム組成物を得ることが好ましい。この導電性シリコーンゴム組成物としては、この導電性粉体を含有し、硬化して導電性シリコーンゴムとなるものなら特に制限されない。
【0048】
この場合、本発明に係る導電性シリコーンゴム組成物としては、特に
(A)下記平均組成式
SiO(4−a)/2
(式中、Rは炭素数1〜10の同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基、aは1.95〜2.05の正数を表す。)
で示されるオルガノポリシロキサン:100重量部、
(B)上記導電性粉体:50〜500重量部、
(C)本組成物を硬化させるに十分な量である架橋剤
を含有する導電性シリコーンゴム組成物が好ましい。
【0049】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、
SiO(4−a)/2
(式中、Rは炭素数1〜10の同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基、aは1.95〜2.05の正数を表す。)
で示され、本発明の組成物の主剤であり、強度に大きな影響を与えるものである。
【0050】
Rは、同一又は異種の置換もしくは非置換の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の一価炭化水素基であるが、このような一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロ置換アルキル基等の一価炭化水素基が例示され、好ましくはメチル基、フェニル基、ビニル基であり、メチル基が50モル%以上、特に80モル%以上であることが好ましい。aは1.95〜2.05の正数である。
【0051】
後述する架橋剤が、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金系触媒を用いる場合は、Rは一分子中に少なくとも2個の脂肪族不飽和基(アルケニル基)を有することが必要で、R中の脂肪族不飽和基の含有量は、0.01〜10モル%、特に0.05〜5モル%であることが好ましい。具体的なアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、へキセニル基、ヘプテニル基等が例示され、好ましくはビニル基である。該アルケニル基の結合位置は特に限定されず、例えば分子鎖末端、分子鎖側鎖、分子鎖末端と分子鎖側鎖が挙げられる。
【0052】
このような(A)成分は、具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が例示される。
【0053】
架橋剤が、有機過酸化物である場合は、上記と同様なアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましいが、有機過酸化物の種類によっては、アルケニル基を含まないオルガノポリシロキサンも使用できる。具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体が例示される。
【0054】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、又は一部分岐を有する直鎖状が好ましい。なお、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種を単独で又は重合度や分子構造の異なる2種以上を混合して用いてよい。
【0055】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの重合度は、RSiO(4−a)/2単位として100以上の整数であり、好ましくは200〜100,000である。この単位が100未満ではゴム強度特性が悪く、本発明の目的を達し得ない場合がある。(A)成分の粘度としては、25℃において、2,000センチポイズ以上、特に1万センチポイズ以上が好ましく、具体的には、通常シリコーン生ゴムと呼ばれる形態のオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0056】
(B)成分は、上述した本発明のポリシロキサン処理を施した導電性粉体であり、この(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して50〜500重量部の範囲であり、好ましくは100〜400重量部の範囲である。これは、(B)成分の配合量が、(A)成分100重量部に対して50重量部未満であると、得られたシリコーンゴムの導電性が著しく低下するためであり、また500重量部を超えると、得られた組成物の流動性が著しく低下し、その組成物の取扱い作業が著しく困難となるためである。
【0057】
(C)成分は、(A)成分を硬化し得る量の架橋剤である。この架橋剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒、又は有機過酸化物が好ましい。
【0058】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、架橋剤として機能するもので、ケイ素原子に結合している水素原子が(A)成分のオルガノポリシロキサン中のアルケニル基とヒドロシリル化反応して架橋する。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、一分子中にケイ素原子に直接結合している水素原子を少なくとも2個含有するものが好ましく、下記平均組成式
SiO(4−s−t)/2
(式中、RはRと同様の基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものである。s,tは0≦s<3、0<t<3、0<s+t<3の数である。)
で表されるものが好ましく、特に限定はされないが、例えば下記式で示されるものが挙げられる。
MeSiO[SiMeO][SiHMeO]SiMe
MeSiO[SiHMeO]SiMe
[SiHMeO](環状シロキサン)、
MeHSiO[SiMeO]SiHMe
MeHSiO[SiMeO][SiHMeO]SiHMe
(式中、Meはメチル基を示し、a,b,c,e,f及びgは2以上の整数、dは3以上の整数を表す。)
【0059】
また、MeHSiO1/2単位及び/又はMeHSiO2/2単位を含み、更にMeSiO1/2単位、MeSiO2/2単位、(CSiO2/2単位、MeSiO3/2単位、(C)SiO3/2単位及びSiO単位から選ばれる少なくとも1種の単位を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。
【0060】
これらの1種又は2種以上を選んで配合するが、その配合量はケイ素原子に直接結合した水素原子(SiH基)の全原子数(モル数)(H)と(A)成分のオルガノポリシロキサン中の全アルケニル基のモル数(Vi)の比(H)/(Vi)が0.1〜15、特に1〜10の範囲になるように配合することが好ましい。この比が0.1未満になると架橋密度が低くなってゴム強度も低くなる場合があり、15を超えると加熱時に水素ガスによる発泡が生じ易くなる場合がある。
【0061】
白金系触媒はヒドロシリル化反応を促進する触媒で、金属白金でも白金化合物でもよい。具体的には、塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯体等が例示される。その添加量は、前記(A)成分、(B)成分及び上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量に対して1〜5,000ppm、特に5〜2,000ppmとすることが好ましい。1ppm未満の添加量では架橋密度が低く凝集力が低下する場合があり、5,000ppmを超えると可使時間が短くなる場合があり、経済的にも不利になる。更に、可使時間を長くする目的で、各種のエチニル化合物、アミン化合物、リン化合物等を付加反応(ヒドロシリル化反応)の抑制剤として配合することができる。
【0062】
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化クミル、過酸化t−ブチルクミル、過酸化t−ブチル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化2−メチルベンゾイル、過酸化4−メチルベンゾイル、過酸化t−ブチルイソブチレート、過酸化t−ブチルベンゾエート、過酸化t−ブチル−2−エチルヘキサレート、2,2−ビス過酸化t−ブチルオクタン、1,1−ビス過酸化t−ブチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ過酸化ベンゾイルヘキサン等が挙げられる。(C)成分の架橋剤(有機過酸化物)は、これらの1種又は2種以上を選んで配合するが、その配合量は前記(A)〜(C)成分の合計量に対して0.5〜5重量%、特に1〜3重量%とすることが好ましく、0.5重量%未満の添加量では架橋密度が低くゴム強度が低下する傾向があり、5重量%を超えると過酸化物の分解残渣が残存し易くなる場合がある。
【0063】
本発明に係る導電性シリコーンゴム組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ、他の導電剤、補強剤、発泡剤、難燃剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤を加えることができる。
【0064】
導電剤は、(B)成分と併用して、従来から知られている導電性カーボンブラック、導電性亜鉛華、導電性酸化チタン等の導電剤を添加してもよい。
【0065】
補強剤は、補強性シリカ粉末を好適に用い得る。このシリカ粉末は、機械的強度の優れたシリコーンゴムを得るために添加されるものであるが、この目的のためには、比表面積が50m/g以上、特に100〜300m/gであることが好ましい。比表面積が50m/gに満たないと硬化物の機械的強度が低くなってしまう。このような補強性シリカとしては、例えば煙霧質シリカ、沈降シリカ等が挙げられ、またこれらの表面をクロロシランやヘキサメチルジシラザンなどで疎水化したものも好適に用いられる。補強性シリカ粉末の添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100重量部に対して0〜70重量部、特に3〜50重量部とすることが好ましい。また、ベンガラ等の着色剤、粉砕石英、炭酸カルシウムなどの増量剤を添加してもよい。
【0066】
発泡剤は、スポンジを成形するための無機、有機の発泡剤を添加してもよい。この発泡剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルフォンヒドラジド、アゾジカルボンアミドなどが例示され、その添加量は(A)成分のオルガノポリシロキサン100重量部に対し1〜10重量部の範囲が好適である。このように、本発明組成物に発泡剤を添加すると、スポンジ状のシリコーンゴムを得ることができる。
【0067】
難燃剤は、本発明のシリコーンゴム組成物を難燃性、耐火性にするために、白金含有材料、白金化合物と二酸化チタン、白金と炭酸マンガン、白金とγ−Fe、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。
【0068】
分散剤としては、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、重合度が100未満であるシラノール基含有低分子量シロキサンなど、通常のものが用い得るが、添加量は本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0069】
一般に本発明で使用するシリコーンゴム組成物を得るには、例えば、まず(A)成分と(B)、(C)成分を混合する方法を採用し得る。本発明に係るシリコーンゴム組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ドウミキサー(ニーダー)などのゴム混練り機を用いて均一に混合して、必要に応じて加熱処理を施すことにより得ることができる。
【0070】
このようにして得られたシリコーンゴム組成物は、金型加圧成形、押出成形、カレンダー成形などの種々の成形法によって必要とされる用途に成形することができる。なお、硬化は、硬化方法、成形物の肉厚により適宜選択することができるが、通常80〜250℃で10秒〜30日の条件にて行うことができる。
【0071】
(C)成分が、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金系触媒の場合は、硬化条件として100〜130℃で1〜15分間が、(C)成分が有機過酸化物の場合は、硬化条件として120〜200℃で1〜30分間が一般的に用いられる。
【0072】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は重量部を示し、Phはフェニル基、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0073】
[参考例1]ポリシランの製造方法
フェニルハイドロジェンポリシラン(以下、PPHSと略記する)を以下の方法により製造した。
アルゴン置換したフラスコ内にビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウムのTHF溶液にメチルリチウムのジエチルエーテル溶液を添加し、30分室温で反応させた後、溶剤を減圧にて留去することで、系内で触媒を調製した。これに、フェニルトリヒドロシランを触媒の10,000倍モル添加し、100℃から150℃で3時間、次いで200℃で8時間加熱撹拌を行った。生成物をトルエンに溶解させ、塩酸水洗を行うことで、触媒を失活除去した。このトルエン溶液に硫酸マグネシウムを加え水分を除去し、濾過した。これにより、ほぼ定量的に重量平均分子量1,200、ガラス転移点65℃のPPHSを得た。これは、NMRにより、[=SiPh−][−SiPhH−];a/b=1/1の構造を有していた。
【0074】
[参考例2]銀メッキシリカ粉体の製造(銀−Niメッキシリカ)
核粉体としては、球状シリカ粉体US−10(三菱レーヨン製;平均粒径10μm;真比重2.2)を分級して粒径を揃えたものを用いた。
【0075】
PPHS0.5gをトルエン200gに溶解させ、この溶液を本核粉体100gに加え1時間撹拌した。ロータリーエバポレーターにて、60℃の温度、45mmHgの圧力で、トルエンを留去させ、乾燥させた。
【0076】
このポリシラン処理粉体は疎水化されているので、界面活性剤として、サーフィノール504(日信化学工業(株)製界面活性剤)の0.5%水溶液50gにこの処理粉体100gを撹拌しながら投入し、水に分散させた。
【0077】
パラジウム処理は、上記粉体の水分散体150gに対し1%PdCl水溶液を70g(塩化パラジウムとして0.7g、パラジウムとして0.4g)添加して、30分撹拌後、濾過し、水洗した。これらの処理により、粉体表面はパラジウムコロイドが付着した黒灰色に着色した粉体が得られた。この粉体は濾過により単離し、水洗後、直ちにメッキ化を行った。
【0078】
ニッケルメッキ用還元液として、イオン交換水で希釈した次亜リン酸ナトリウム2.0M、酢酸ナトリウム1.0M、グリシン0.5Mの混合溶液100gを用いた。パラジウムコロイド析出粉体を、KS−538(信越化学工業(株)製消泡剤)0.5gと共にニッケルメッキ還元液中に分散させた。撹拌しながら液温を室温から65℃に上げた。イオン交換水で希釈した水酸化ナトリウム2.0Mを空気ガスにより同伴させながら滴下し、同時にイオン交換水で希釈した硫酸ニッケル1.0Mを窒素ガスにより同伴させながら、還元液中に滴下した。これにより、細かい発泡と共に粉体が黒色となり、粉体表面に金属ニッケルが析出した。この粉体は、全面に金属ニッケルが析出していた。
【0079】
この粉体を、銀メッキ液(高純度化学研究所製)S−700 100g中に分散させた。撹拌しながら液温を室温から70℃に上げると、細かい発泡と共に粉体が銀色となり、粉体表面に銀が析出した。
【0080】
メッキ溶液中に浮遊している粉体は、濾過、水洗、乾燥(50℃で30分)の後、水素で置換された電気炉にて200℃で1時間焼成した。実体顕微鏡観察により、粉体全表面が銀により覆われた粉体が得られていることが分かった。
【0081】
この粉体は、銀−Niメッキシリカと表記する。顕微鏡により観察した外観は球状銀色、比重は2.9であった。金属の含有量は、銀12重量%、ニッケル20重量%であった。
【0082】
導電性粉体の抵抗率は、4端子を持つ円筒状のセルに粉体を充填し、両末端の面積0.2cmの端子からSMU−257(ケースレ社製電流源)より−10〜10mAの電流を流し、円筒の中央部に0.2cm離して設置した端子から、2000型ケースレ社製ナノボルトメーターで電圧降下を測定することで求めた。抵抗率は、1.0mΩ・cmであった。
【0083】
[参考例3]金メッキシリカ粉体の製造(金−Niメッキシリカ)
銀メッキの代わりに、金メッキ液として、高純度化学研究所製金メッキ液K−24N 100gを希釈せず用いた。その他は参考例2と同様に操作した。全面に金属ニッケルが析出した粉体を、金メッキ液中に分散させた。撹拌しながら液温を室温から95℃に上げると、細かい発泡と共に粉体が金色となり、粉体表面に金が析出した粉体を得た。
【0084】
この粉体は、金−Niメッキシリカと表記する。顕微鏡により観察した外観は黄色、比重は3.9であった。金属の含有量は、金8重量%、ニッケル50重量%で、抵抗率は、1.1mΩ・cmであった。
【0085】
(導電性粉体の製造とその物性)
[実施例1]
銀−Niメッキシリカ100gを0.5Lの回転タンクに入れ、アセトン150gを加えて1時間回転させてこれに分散させた。処理用ポリシロキサンとしてVFオイル(分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、粘度5000cs)とVMQレジン(MeSiO0.5、ViMeSiO0.5及びSiO単位からなるもので、(MeSiO0.5+ViMeSiO0.5単位)/SiO単位のモル比が0.85、ビニル含有量:0.086モル/100g、平均分子量4000)の50/50w/wの混合物1gを10gのアセトンに分散させた溶液(以下、処理用ポリシロキサンと略記する。)を上記分散液に加えて混合した。
30分撹拌後、濾過によりアセトンと処理粉を分離した。アセトンで完全に回転タンクから濾過器に移し、5mmHgの減圧下に60℃で減圧乾燥させた。この粉体の電気抵抗率は1.1mΩ・cmであった。
【0086】
粉体の耐マイグレーション性評価
この粉体のマイグレーション性は、図1の(マイグレーション測定セル)装置に充填して測定した。
この装置は、直径6mm、高さ2mmの円柱状中空部を有する絶縁ゴム製充填塔1の上記中空部内に導電性粉体2を充填し、また、直径15mm、高さ0.7mmの円柱状中空部を有するプラスチック製スペーサー3の上記中空部に水含有ゼラチン4(マルハ社製ゼラチンリーフを30分間水に浸漬させておいたもの)を高さ0.7mmとなるように挿入し、上記充填塔1とプラスチック製スペーサー3とを重ね合わせたものを2枚の電極(金メッキ銅板)5,6で挟み、圧縮固定し、上記プラスチック製スペーサー3側の電極をマイナス極として、5Vの電圧を印加したときに流れる電流を測定した。この場合、電圧+5Vを印加し、6秒おきに電流値を測定して、50mAになるまでの時間でマイグレーション性を評価した。
【0087】
その結果、図2の通り、1日間以上測定したが全く絶縁破壊を起こさず、耐マイグレーション性が極めて良好なことがわかった。
【0088】
[比較例1]
比較のために、この粉体をポリシロキサンで処理せずにマイグレーション性を測定評価したところ、図2の通り、10時間測定して完全に絶縁破壊を起こし、耐マイグレーション性が悪いことがわかった。
【0089】
[実施例2]
銀−Niメッキシリカの代わりに、金−Niメッキシリカを用いた。この粉体の電気抵抗率は1.3mΩ・cmと良好な低い値であった。また、この粉体のマイグレーション性は、1日間以上測定したが、全く絶縁破壊を起こさず、耐マイグレーション性が極めて良好なことがわかった。
【0090】
[比較例2]
比較用の導電粉として、銀粉(三井金属鉱業(株)製:3050HD:比重10.5)を用いた。この粉体の電気抵抗率は0.3mΩ・cmと良好な低い値であった。
しかし、この粉体のマイグレーション性は、図2の通り、3時間程度ですぐに絶縁破壊を起こし、耐マイグレーション性が極めて悪いことがわかった。
【0091】
[比較例3]
比較例2の銀粉を実施例1と同様な方法で、ポリシロキサンで処理した。この粉体の電気抵抗率は0.5mΩ・cmであった。この粉体のマイグレーション性は、図2の通り、比較例1とほぼ同時期に絶縁破壊を起こし、耐マイグレーション性がポリシロキサン処理だけでは、改善されないことがわかった。
【0092】
[比較例4]
比較用の導電粉として、銀メッキガラス粉(東芝タンガロイ社製:比重2.7)を用いた。この粉体は、ポリシランもニッケルも用いられていない市販の導電性粉体である。この銀粉を実施例1と同様な方法で、ポリシロキサンで処理した。この電気抵抗率は1.0mΩ・cmであった。しかし、この粉体のマイグレーション性は、図2の通り、10時間以内に絶縁破壊を起こし、耐マイグレーション性が悪いことがわかった。
上記の結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
Figure 2004152660
耐マイグレーション性評価
◎:極めてよい ○:よい ×:悪い ××:極めて悪い
総合評価
◎:極めてよい ○:よい ×:悪い ××:極めて悪い
【0094】
[実施例3,4、比較例5,6]
次に、上記導電性粉末をジメチルシロキサン単位99.85モル%とメチルビニルシロキサン単位0.15モル%とからなる平均重合度が約8,000のメチルビニルポリシロキサン(シロキサンポリマー)に表2に示す通り添加し、50%ベンゾイルパーオキサイドを得られたコンパウンド100部に対して2部添加し、165℃で10分間加熱加圧処理し、1mmのシートを得、電気特性及びシート物性(硬度、引っ張り強度、伸び)を測定した。結果を表2に示す。
ここで、導電性粉体は、以下のものを用いた。
実施例3:(B−1)ポリシロキサン処理−銀−Niメッキシリカ(実施例1で製造したもの)
実施例4:(B−2)ポリシロキサン処理−金−Niメッキシリカ(実施例2で製造したもの)
比較例5:(比較−1)ポリシロキサン処理−銀粉末(比較例3で製造したもの)
比較例6:(比較−2)ポリシロキサン処理−銀メッキシリカ粉末(比較例4で製造したもの)
この厚さ1mmの導電性ゴムシートを調製後、調製直後(初期)、200℃で24時間後、100時間後、200時間後の体積抵抗率をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。
【0095】
[実施例5]
導電性粉体は、以下のものを用い、50%ベンゾイルパーオキサイドの代わりに、粘度30センチポイズの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H結合水素原子含有量=1.5重量%:平均組成式MeSiO[MeHSiO]38SiMe:以下、Hシロキサンと略記する。)1.5部、エチニルシクロヘキサノール(以下、制御剤と略記する。)0.5部及びCat−PL−50T(塩化白金酸のジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液:以下、白金触媒と略記する。)0.3部を混合して、1mmのシートを得、実施例3と同様にして電気特性及びシート物性(硬度、引っ張り強度、伸び)を測定した。結果を表2に示す。
実施例5の導電性粉体:(B−2)ポリシロキサン処理−金−Niメッキシリカ(実施例2で製造したもの)
この厚さ1mmの導電性ゴムシートを調製後、調製直後(初期)、200℃で24時間後、100時間後、200時間後の体積抵抗率をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
Figure 2004152660
評価
◎:非常に良好 ○:良好 △:やや不良 ×:不良
硬化条件
A:120℃,1分 B:165℃,5分
【0097】
以上のように、4段階で評価した結果、実施例は、導電安定性の全てにおいて○〜◎であったが、比較例は、×になっており、明らかに本発明の効果が認められた。
【0098】
【発明の効果】
本発明に係るポリシロキサンで処理した2種の金属からなる金属被覆粉体を導電性粉体として用いることで、高安定性と高信頼性の電子材料用途に使用できるシリコーンゴム組成物を与える。本発明の導電性粉体は、シリコーンゴム組成物との親和性が優れ、該組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、マイグレーション等の絶縁不良を起こすことなく、所定のコンタクト部で低い体積低抗率の安定性に優れたものであるため、信頼性の高いコネクターや導電性ガスケット材料の原料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイグレーション測定セル装置の概略断面図である。
【図2】実施例1,2、比較例1〜4のマイグレーション試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 充填塔
2 導電性粉体
3 プラスチック製スペーサー
4 水含有ゼラチン
5,6 電極(金メッキ銅板)

Claims (7)

  1. 無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元性を有するケイ素系高分子層又はその一部又は全部をセラミック化した層が形成され、この層の表面上をメッキにより電気陰性度の低い金属で被覆し、更にその上を電気陰性度がより高い金属で被覆した金属被覆粉体であって、その最表層をポリシロキサンで処理してなることを特徴とする導電性粉体。
  2. 還元性を有するケイ素系高分子がポリシランであり、金属被覆粉体が、電気陰性度の異なる2種類以上の金属で構成された金属のうち、最表面金属が銀、金、パラジウム、白金から選ばれる貴金属である請求項1に記載の導電性粉体。
  3. 無機粉体又は有機樹脂粉体からなる基材粉体の表面に還元性を有するケイ素系高分子層又はその一部又は全部をセラミック化した層が形成され、この層の表面上をメッキにより電気陰性度の低い金属で被覆し、更にその上を電気陰性度がより高い金属で被覆した金属被覆粉体の最表層を、ポリシロキサンに対して溶解度パラメーターの差が2〜5である溶剤に溶解されたポリシロキサンで処理することを特徴とする導電性粉体の製造方法。
  4. 還元性を有するケイ素系高分子がポリシランであり、金属被覆粉体が、電気陰性度の異なる2種類以上の金属で構成された金属のうち、最表面金属が、銀、金、パラジウム、白金から選ばれる貴金属である請求項3に記載の製造方法。
  5. 請求項1又は2記載の導電性粉体を含有するシリコーンゴム組成物。
  6. (A)下記平均組成式
    SiO(4−a)/2
    (式中、Rは炭素数1〜10の同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基、aは1.95〜2.05の正数を表す。)
    で示されるオルガノポリシロキサン:100重量部、
    (B)請求項1又は2記載の導電性粉体:50〜500重量部、
    (C)架橋剤:硬化有効量
    を含有することを特徴とする請求項5記載の導電性シリコーンゴム組成物。
  7. (C)成分の架橋剤が、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金系触媒、又は有機過酸化物からなる請求項6に記載の導電性シリコーンゴム組成物。
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