JP2004151288A - 平版印刷版の処理方法及び処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】常に安定に細部まで感光層を剥離除去する処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】(1)支持体上に少なくとも1層の感光層を有する平版印刷版を露光及び現像処理後、該感光層に剥離手段を接触させて該感光層を剥離除去する平版印刷版の処理方法において、前記剥離手段としてベルトを用い、該ベルトを前記平版印刷版の巾方向に移動させて、該ベルトに付着した感光層の剥離物を、前記平版印刷版の巾方向の側方に排出することを特徴とする平版印刷版の処理方法、及び処理装置。(2)前記剥離手段としてブレードを用い、該剥離手段に対向し離間する位置に平版印刷版の支持部材を有し、該支持部材は該支持部材に付着した感光層の剥離物を除去する機構及び前記剥離手段に付着した感光層の剥離物を掻き取るための機構とを併せて有することを特徴とする平版印刷版の処理装置。
【選択図】 図1
【解決手段】(1)支持体上に少なくとも1層の感光層を有する平版印刷版を露光及び現像処理後、該感光層に剥離手段を接触させて該感光層を剥離除去する平版印刷版の処理方法において、前記剥離手段としてベルトを用い、該ベルトを前記平版印刷版の巾方向に移動させて、該ベルトに付着した感光層の剥離物を、前記平版印刷版の巾方向の側方に排出することを特徴とする平版印刷版の処理方法、及び処理装置。(2)前記剥離手段としてブレードを用い、該剥離手段に対向し離間する位置に平版印刷版の支持部材を有し、該支持部材は該支持部材に付着した感光層の剥離物を除去する機構及び前記剥離手段に付着した感光層の剥離物を掻き取るための機構とを併せて有することを特徴とする平版印刷版の処理装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版の処理方法及び処理装置に関する。特に、現像処理後にハロゲン化銀乳剤層等の感光層を剥離除去する方法に特徴を有する処理方法及び処理装置に関する。詳細には、アルミニウム板を支持体とする、銀錯塩拡散転写法を利用したアルミニウム平版印刷版の処理方法に好適に用いられる処理方法及び処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」、第101頁〜第130頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
DTR法を用いた平版印刷版には、転写材料と受像材料を別々にしたツーシートタイプ、或いはそれらを一枚の支持体上に設けたモノシートタイプの二方式が知られており、前者については例えば特開昭57−158844号公報に、後者については例えば特公昭48−30562号、同51−15765号、特開昭51−111103号、同52−150105号などの各公報に詳しく記載されている。
【0004】
アルミニウム板を支持体とする、銀錯塩拡散転写法を利用したモノシートタイプの平版印刷版(以降、アルミニウム平版印刷版と称す)は、特開昭57−118244号、同57−158844号、同63−260491号、特開平3−116151号、同4−282295号、同2000−284487号、同2001−281870号、米国特許第4,567,131号、同第5,427,889号等の公報に詳しく記載されている。
【0005】
前記アルミニウム平版印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を担持し、その上に実質的に硬化されていないハロゲン化銀乳剤層を設けた基本構成からなっている。このアルミニウム平版印刷版の一般的な処理方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュオフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)、仕上げ処理の工程からなっている。
【0006】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0007】
露出した銀画像部及び非画像部には、その保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸等の保護コロイドを含有する仕上げ液の処理、所謂ガム引きと云われる処理が施される。この仕上げ液は、定着液やフィニッシング液とも称され、銀画像部を親油性にする化合物(例えば、メルカプト基またチオン基を有する含窒素複素環化合物)を含有することも一般的である。
【0008】
上記のアルミニウム平版印刷版は、フイルムやポリエチレン樹脂被覆紙等のフレキシブル支持体上に順に下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を設けた平版印刷版に比べて、耐刷力に優れた印刷版が得られ易いという利点を有している反面、種々の問題を抱えている。問題の一つとして、水洗処理時のハロゲン化銀乳剤層の剥離除去がある。アルミニウム平版印刷版において、ハロゲン化銀乳剤層の剥離除去は、銀画像部及びアルミニウム表面自身で構成する非画像部を完全に露出させるために極めて重要な工程である。とりわけ、インキを受容する銀画像部は強い親油性が必要であり、ゼラチン等の親油性を阻害する物質は完全に排除する必要がある。
【0009】
上記水洗処理は、25〜40℃の洗浄液をジェット方式で吹き付けて乳剤層を剥離除去する方法、またはスクラビングローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に採用されている。しかし、ハロゲン化乳剤層等を水洗液で除去することは、ゼラチンや銀等を含む大量の水洗液の廃棄処理が必要であり、環境上及び経済上の大きな問題となっている。
【0010】
ハロゲン化銀乳剤層の剥離除去の別の方法として、特開平3−116151号、同平4−318553号、同2001−142218号、同2001−142219号公報には、剥離シートを乳剤層に密着して乳剤層を剥離することが提案されている。前記剥離シート長尺ロールは、元巻きローラから送られて版面に接触密着し、巻き取りローラで巻き取られる。
【0011】
しかしながら、元巻きローラ、巻き取りローラ、及びその駆動装置等を組み込むことにより、装置が大型化する。また、剥離シートという消耗品が追加されることにより廃棄物が増えることになり、経済性に乏しく、環境負荷が高くなる。
【0012】
また、特開平5−188585号公報では、上記水洗処理の前に、ハロゲン化乳剤層等の感光層(以降、単に感光層という)に剥離手段を接触させて感光層を剥離除去し、水洗液へのゼラチンや銀等の感光層の持ち込み量を減らし、水洗液の交換頻度を減少させる処理方法が提案されている(特許文献1)。
【0013】
特開平5−188585号公報記載の方法では、剥離性能の維持、アルミニウム平版印刷版の円滑な搬送のために、剥離手段及び平版印刷版支持手段に、剥離された感光層の剥離物が蓄積するのを防ぐ必要がある。そこで、特開平5−188585号公報記載の方法では、剥離手段であるブレードに洗浄水を供給して、ブレードに付着した剥離物を洗い流し、平版印刷版支持手段であるバックアップロールを回転させ、バックアップロール下方に接触配置された掻き取りブレードで、バックアップロールに付着した剥離物を除去している。しかし、上記方法では掻き取りブレードに感光層の剥離物が蓄積するという問題がある。
【0014】
【特許文献1】
特開平5−188585号公報(第1頁〜第2頁、図1)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特開平5−188585号公報の更なる改良であり、剥離手段及び平版印刷版の支持手段に付着した剥離物を効率よく除去し、長期間安定に感光層の剥離を行い、更に次工程である水洗処理に用いる水洗液の更なる長寿命化を達成し、廃棄物のより少ない処理方法及び処理装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の処理方法及び処理装置によって達成された。
(1)支持体上に少なくとも1層の感光層を有する平版印刷版を露光及び現像処理後、該感光層に剥離手段を接触させて該感光層を剥離除去する平版印刷版の処理方法において、前記剥離手段としてベルトを用い、該ベルトを前記平版印刷版の巾方向に移動させて、該ベルトに付着した感光層の剥離物を、前記平版印刷版の巾方向の側方に排出することを特徴とする平版印刷版の処理方法、
及び上記処理方法を実施するための処理装置であって、少なくとも現像処理部、感光層剥離部、及び水洗処理部からなり、前記感光層剥離部が、前記感光層を剥離するためのベルトと、該ベルトを平版印刷版の巾方向に移動させる駆動手段を有することを特徴とする平版印刷版の処理装置である。
(2)少なくとも現像処理部、感光層剥離部、及び水洗処理部からなり、前記感光層剥離部が、前記感光層を剥離するための剥離手段と、該剥離手段に対向し離間する位置に平版印刷版の支持部材を有し、該支持部材に付着した感光層の剥離物を除去する機構及び前記剥離手段に付着した感光層の剥離物を掻き取るための機構とを併せて有することを特徴とする平版印刷版の処理装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。ここでは、感光層としてハロゲン化銀乳剤層を用いた銀錯塩拡散転写法を利用したアルミニウム平版印刷版の処理装置について説明するが、本発明によって処理される平版印刷版はこれに限定されるものではない。
【0018】
本発明の処理装置は、現像処理部、感光層剥離部、及び水洗処理部から少なくともなり、必要に応じて仕上げ処理部や乾燥部が設けられる。あらかじめ露光処理されたアルミニウム平版印刷版は、現像処理部において、物理現像核上に金属銀画像部が形成され、感光層剥離部において、感光層であるハロゲン化乳剤層が剥離される。次に、水洗処理部において前記ハロゲン化乳剤層が完全に除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部が露出し、陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。そして、版面の保護のために、仕上げ処理部において仕上げ液が施され、乾燥部で乾燥され排出される。
【0019】
本発明の上記した(1)の発明は、前記感光層剥離部において、ベルトを平版印刷版の巾方向に移動させて感光層を剥離し、感光層の剥離物(以下、単に剥離物と称す)を前記平版印刷版の巾方向の側方に排出することを特徴とするものであり、この処理方法を実施するための処理装置について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。図1及び図2は、感光層剥離部の部分断面図及び概略斜視図である。
【0020】
図1及び図2において、感光層剥離部は主に、ベルト30、支持台9、ベルト保持部材31、車輪32、洗浄槽8、振動源6、振動源駆動装置5、洗浄液供給タンク39、洗浄液供給ポンプ41、排液バルブ13、洗浄液廃液タンク40からなっている。但し、図2には、洗浄槽8及びそれに付随する装置や部材は図示していない。
【0021】
現像処理された平版印刷版3はベルト30と支持台9の間を通過し、次工程である水洗処理部へ送られる。ベルト30と支持台9の隙間は平版印刷版3の厚みより若干狭くなっている。また、ベルトの上方にベルト保持手段31があり、ベルトの上側位置が固定されている。従って、平版印刷版3が通過する時に、ベルト30が平版印刷版3に押し付けられ、平版印刷版3の支持体2の上に塗設されたハロゲン化乳剤層4が剥離除去される。
【0022】
ベルト30は、駆動手段、例えば車輪やモーターで移動させられる。具体的には、ベルト30は複数の車輪32に掛けられており(図2においては2つ)、少なくとも1つの車輪32に図示しないモータが接続されている。図示しないモータが駆動することにより車輪32が回転し、ベルト30は平版印刷版3の巾方向、即ち、平版印刷版の搬送方向Xを横切るように移動する。ベルト30が移動することにより、剥離部Aに蓄積した剥離物14がベルト30に引きずられて、平版印刷版3の巾方向の側方にに排出される。ベルト30の移動は常時行われていても、所定の時間(例えば、ベルト30により剥離処理後、1分程度)だけ行われていてもよいが、好ましくは、図7に示す感材検出器61が平版印刷版3を検出した時点で、ベルト30の移動が開始され、ベルト30が剥離処理中もベルト30の移動が行われ、平版印刷版3がベルト30を通過し剥離処理が行われた後1分程度でベルト30が停止することである。
【0023】
ベルト30に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性を満足できればよく、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム等が好適である。
【0024】
ベルト30は、平版印刷版3の巾方向に動かせればよく、輪になっている必要はないが、好ましい形態は輪である。ベルトの断面形状は特に限定されるものではないが、平版印刷版の搬送性を阻害せずに効果的にハロゲン化乳剤層をを剥離出来ればよく、線接触となる丸状ベルトが好ましい。
【0025】
ベルト保持手段31に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性と、弾性変形せずにベルト30を保持するためにベルト30と比較して弾性率の低い材料であればよい。例えば、ステンレス鋼、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等が好適である。
【0026】
支持台9は、平版印刷版3を挟みベルト30と対向する位置に配置されており、ベルト30を平版印刷版3に均一に接触させるための補助をする機能を有している。支持台9に用いられる材料は、処理液に対する耐食性と平版印刷版3の裏面に接触する時に平版印刷版3を傷つけない程度の硬さ及び面質を有していればよく、硬質塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂等が好適である。
【0027】
車輪32に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性と、ベルト30との間に充分な摩擦抵抗があればよい。例えば、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等が好適である。
【0028】
ベルト30、及び車輪32の一部は、洗浄槽8に貯留された洗浄液7に浸漬されている。そして、洗浄槽8には振動源6、排液バルブ13が取り付けられている。振動源6を駆動することにより、ベルト30と洗浄液7の界面でキャビティが発生し、キャビティの破裂によりベルト30に付着した剥離物が完全に除去される。上記した振動による洗浄処理は、一般に超音波洗浄処理と呼ばれており、以降同様の処理を超音波洗浄処理と記述する。
【0029】
洗浄槽8には数リットルの洗浄液7が貯溜されている 洗浄液7として、特に限定するものではないが、例えば一般の水道水が利用可能であり、更に界面活性剤や若干の有機溶剤を含有させてもよい。
【0030】
振動源6は、処理液により腐食しないよう、耐食性のカバーで覆われた構造で洗浄槽8に取り付けられている。振動源6としては、圧電素子、振動モータ、磁歪素子等が使用可能である。振動源6は、振動源駆動装置5によって任意のタイミングで振動を発生できる。
【0031】
洗浄液7が剥離物によって汚染され洗浄効果を有しなくなった時点で、排液バルブ13が開き、図7に示す洗浄液排液タンク40に排出される。そして、図7に示す洗浄液供給ポンプ41によって、図7に示す洗浄液供給タンク39から洗浄槽8へ供給される。洗浄液7の交換頻度は、例えば、平版印刷版3の処理版数で設定することができる。
【0032】
次に本発明の上記した(2)の発明について説明する。該処理装置は、感光層剥離部において、感光層剥離手段と、該剥離手段に対向し離間する位置に平版印刷版の支持部材を有し、該支持部材は該支持部材に付着した感光層の剥離物を除去する機構及び前記剥離手段に付着した感光層の剥離物を掻き取るための機構とを併せて有することを特徴とする。ここで、平版印刷版のの支持部材はそれ自体が平版印刷版の搬送方向と同方向に回転運動して、該支持部材上に付着した感光層の剥離物を除去し、かつ前記剥離手段に付着した感光層の剥離物を掻き取ることができる機構を備えたものである。
【0033】
上記(2)の処理装置の1つの態様は、剥離手段としてブレードを用い、平版印刷版の支持部材として、その周面の一部に平面を有するカムを用いることを特徴とする。この処理装置について、図3及び図4を用いて詳細に説明する。図3及び図4は、感光層剥離部の概略側面図である。
【0034】
図3、図4において、感光層剥離部は主に、ブレード1、カム34、カム軸35、洗浄槽8、振動源6、振動源駆動装置5、洗浄液供給タンク39、洗浄液供給ポンプ41、排液バルブ13、洗浄液廃液タンク40からなっている。
【0035】
現像処理された平版印刷版3がブレード1とカム34の間を通過し、次工程である水洗処理部へ送られる。ブレード1と接触することにより、平版印刷版3の支持体2の上に塗設されたハロゲン化乳剤層4が除去される。カム34は、ブレード1と対向し離間する位置に配置されており、剥離処理時に平版印刷版3を支持している。カム34は、その周面に少なくとも1つの平面を有する柱状の部材であり、軸方向にカム軸35が取り付けられている。カム34は、カム軸35を介して図示しない側板に軸支されている。剥離処理時、カム34は、上記平面が上面になる位置で停止している。
【0036】
ブレード1に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性を満足できればよく、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム等が好適である。その他にも平版印刷版3に接触させた時に平版印刷版3に傷を付けない程度の硬さ及び面質を有するプラスチック類等が使用可能である。
【0037】
カム34に用いられる材料は、処理液に対する耐食性と平版印刷版3の裏面に接触する時に平版印刷版3を傷つけない程度の硬さ及び面質を有していればよく、硬質塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂等が好適である。
【0038】
図4は、カム34が、剥離手段であるブレード1に付着した剥離物を掻き取るための機構と支持手段であるカム34上の剥離部Aに付着し、残留した剥離物を除去するための機構を併せて有していることを示す。カム軸35には、図示しないが、カム34、及びカム軸35を回転させる回転モータが接続されている。平版印刷版3を剥離処理後、カム34を、カム34がブレード1を掻く方向(図4においては反時計方向)に回転させ、フレード1に付着した剥離物を掻き取る。同時にカム34上の剥離部Aに付着し、残留した剥離物もカム34の下方に除去される。
【0039】
カム34は、回転途中で、前記と同様の洗浄槽8に貯留された洗浄液7に浸漬される。そして、振動源6を駆動することにより、カム34が超音波洗浄処理される。洗浄液7の交換方法、交換頻度は、前記態様と同様である。
【0040】
カム34は、超音波洗浄処理後、更に回転しその平面が上面になる位置で停止する。
【0041】
本発明の上記した(2)の発明の別の態様は、剥離手段としてブレードを用い、平版印刷版の支持部材として外周の一部に突出部を設けた平ベルトを用いることを特徴とする。この処理装置について、図5及び図6を用いて詳細に説明する。図5及び図6は、感光層剥離部の概略側面図である。
【0042】
図5、図6において、感光層剥離部は主に、ブレード1、平ベルト37、平ベルト駆動ローラ38、支持台42、洗浄槽8、振動源6、振動源駆動装置5、洗浄液供給タンク39、洗浄液供給ポンプ41、排液バルブ13、洗浄液廃液タンク40からなっている。そして、平ベルト37の外周の一部に突出部(掻き取り部)43が設けられている。
【0043】
現像処理された平版印刷版3がブレード1と平ベルト37の間を通過し、次工程である水洗処理部へ送られる。ブレード1と接触することにより、平版印刷版3の支持体2の上に塗設された表面のハロゲン化乳剤層4が除去される。また、平ベルト37による平版印刷版3の支持を補助するために、平ベルト37の下に支持台42が設けられている。剥離処理時、平ベルト37は、突出部43を平版印刷版3の搬送を阻害しない位置になるように停止している。
【0044】
平ベルト37は複数の平ベルト駆動ローラ38に掛けられており(図5においては2つ)、少なくとも1つの平ベルト駆動ローラ38に、図示しないが、平ベルト37を掻き取り動作させるための駆動手段が付設されている。例えば、平ベルト駆動ローラ38に回転機構を接続し、平ベルト37を回転できるようになっている。
【0045】
平ベルト37に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性を満足できればよく、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム等が好適である。
【0046】
図6は、平ベルト37が、剥離手段であるブレード1に付着した剥離物を掻き取るための機構と支持手段である平ベルト37上の剥離部Aに付着し、残留した剥離物を除去するための機構を併せて有していることを示す。平版印刷版3を剥離処理後、平ベルト駆動ローラ38に接続された図示しない回転機構を駆動し、平ベルト37の突出部43がブレード1を掻く方向(図6においては反時計方向)に一周させる。突出部43でブレード1を掻くことにより、ブレード1に付着した剥離物を掻き取る。また、平ベルト37を移動し回転させることにより、平ベルト37に付着し、残留した剥離物も剥離位置Aから平ベルト37の下方に除去される。
【0047】
平ベルト37及び突出部43は、回転途中で、前記と同様の洗浄槽8に貯留された洗浄液7に浸漬される。そして、振動源6を駆動することにより、平ベルト37及び突出部43が超音波洗浄処理される。洗浄液7の交換方法、交換頻度は、前記態様と同様である。
【0048】
次に、本発明の処理方法を実施するのに好適な処理装置の全体構成について詳細に説明する。図7は、本発明の自動処理装置の一例を示す概略側面図である。図7の自動処理装置は大別して平版印刷版の現像処理部51、感光層剥離部52、水洗処理部53、仕上げ処理部54、乾燥部55から成り立っている。
【0049】
現像処理部51は、主として感材検出器61、現像処理部入口ローラ対68、現像液を平版印刷版3に塗布するスロットダイ62、支持台63、現像絞りローラ対69、現像液回収槽64、現像液廃液タンク66、現像液供給タンク65、現像液供給ポンプ67からなっている。
【0050】
図7において、あらかじめ露光処理された平版印刷版3は、現像処理部入口ローラ対68によってスロットダイ62に送られる。そして、スロットダイ62で所定量(例えば平版印刷版1平方メートル当たり約20〜100ml)の現像液を塗布され、現像処理が施される。現像処理時間は、スロットダイ62から現像絞りローラ対69の距離と搬送速度で調整できる。例えば現像時間は5〜20秒程度に設定される。
【0051】
現像処理において、平版印刷版の先頭部分に対して充分な塗布量を与えるために、支持台63をスロットダイ62と対向して下側に配置し、スロットダイ62と支持台63の間に現像液の液溜めを形成できる間隙を設ける。間隙の距離は、0.5〜1.5mmが適当である。また、スロットダイ62よりも搬送方向上流側に感材検出器61を置き、平版印刷版3がスロットダイ62に到達する前に現像液供給ポンプ67によって現像液供給タンク65から現像液をスロットダイ62に供給し、あらかじめ液溜めを形成しておく。
【0052】
現像処理に使用された現像液は、その一部が現像絞りローラ対69によって絞り取られ、現像液回収槽64を介して現像液廃液タンクに貯溜される。
【0053】
現像処理部51によって現像処理された平版印刷版3は、現像絞りローラ対69によって、感光層剥離部52に送られる。
【0054】
現像処理部51で用いられる現像液は、現像主薬、例えばポリヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、或いはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、チオサリチル酸、メソイオン性化合物等の添加剤を含ませることができる。また親油化剤としてメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有させるのが好ましい。現像液のpHは通常10〜14、好ましくは12〜14である。
【0055】
現像処理部51によって現像処理された平版印刷版3は、本発明の特徴である上記した感光層剥離部52で、ハロゲン化乳剤層4が剥離除去され、水洗処理部53へ送られる。
【0056】
本発明における水洗処理部53は、前工程で剥離除去できなかったハロゲン化銀乳剤層を完全に剥離除去する作業と剥離処理に使用されていない水洗液を塗布する作業からなる。
【0057】
水洗処理部53は、主として水洗処理部入口ローラ対83、スクラビングローラ71、スクラビングローラ71に水洗液を噴射するシャワーパイプ73、水洗液貯溜第1タンク75、水洗液供給第1ポンプ77、濾過フィルタ86、搬送ローラ対84、版面ローラ82、水洗液供給シャワーパイプ74、水洗処理部絞りローラ対85、水洗液貯溜第2タンク76、水洗液供給第2ポンプ77、水洗液補充ポンプ79、水洗液補充タンク81、排液バルブ72、水洗液廃液タンク80からなっている。
【0058】
スクラビングローラ71は水洗処理工程における一般的な乳剤層の剥離除去方法であり、ゴムローラの表面に木綿等の天然繊維で作られた布、あるいは合成繊維、または天然繊維と合成繊維の複合素材による布が巻かれている。
【0059】
平版印刷版3は水洗処理部53の水洗処理部入口ローラ対83によって水洗処理部52へ導かれ、水洗液貯溜第1タンク75から水洗液供給第1ポンプ77によって濾過フィルター86を通過した水洗液をシャワーパイプ73から噴射させ、高速に回転するスクラビングローラ71によって平版印刷版の乳剤層を完全に剥離除去する。シャワーパイプ73により噴射された水洗液及び搬送ローラ対84で平版印刷版3から絞り取られた水洗液は、水洗液貯溜第1タンク75に回収される。
【0060】
その後、平版印刷版3は、版面ローラ82を通過して水洗処理部絞りローラ対85により、仕上げ処理部54へ送られる。このとき、平版印刷版3の版面上は、版面ローラ82と水洗処理部絞りローラ対85で遮断されるために、上方から水洗液供給シャワーパイプ74を通して供給された水洗液は、遮断された版面上に溜まるので、水洗処理が充分にかつ均一に行われる。平版印刷版3が通過するときに水洗処理部絞りローラ対85で絞り取られた水洗液、及び水洗液供給シャワーパイプ74により噴射された水洗液は、水洗液貯溜第2タンク76に回収される。
【0061】
未使用の水洗液は、水洗液補充タンク81から水洗液補充ポンプ79によって、水洗液貯溜第2タンク76に補充され、水洗液貯溜第2タンク76に水洗液が充満されると、オーバーフローして水洗液貯溜第1タンク75に補充される。水洗液貯溜第2タンク76に貯溜される水洗液は、剥離処理に使用された水洗液が搬送ローラ対84によって、それ以降に混入され難いことと未使用の水洗液が補充されることにより、未使用の水洗液の性状に近い状態を保持でき、水洗液貯溜第2タンク76に貯溜されている水洗液を上記方法により塗布することによりインキ受理性を向上させることができる。
【0062】
水洗液貯溜第1タンク75及び水洗液貯溜第2タンク76に貯溜された水洗液は、剥離処理能力及びインキ受理性向上効果が見られなくなった時点で、排液バルブ72を開くことにより、水洗液廃液タンク80に排出される。
【0063】
本発明において、ハロゲン化銀乳剤層4を剥離除去するための水洗液と、後の版面に塗布する剥離処理に使用されていない水洗液とは、その組成が同じであっても異なっていても良い。両方の水洗液とも水道水、イオン交換処理した純水、或いは蒸留水のような単なる水であってもよく、また、親油化剤としてメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有する化合物や版面を中和するための中性から酸性領域の緩衝剤、蛋白質分解酵素、防腐剤、各種界面活性剤等を含むものであってもよい。好ましくは少なくとも乳剤層を完全に剥離除去した版面に塗布する水洗液(水洗液貯溜第2タンク76に貯溜された水洗液)は、インキ受理性をより向上させるために親油化剤としてメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有させることであり、この場合、ハロゲン化銀乳剤層を剥離除去するための水洗液(水洗液貯溜第1タンク75に貯溜された水洗液)は、前記した水であってもよいが、より好ましくは両方の水洗液に上記親油化剤を含有させることであり、更に蛋白質分解酵素を含有させるのが好ましい。また、両方の水洗液には、pHを4〜8、好ましくは4.5〜7の範囲に緩衝させる緩衝剤、例えば燐酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤またはそれらの混合物や防腐剤を含有することができる。
【0064】
上記したメルカプト基またはチオン基を有する化合物としては、特公昭48−29723号、特開昭58−127928号に記載されているものが好ましく用いられる。特にメルカプト基またはチオン基を有する含窒素複素環化合物が好ましい。含窒素複素環化合物の具体的な例としては、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、チアゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、ピラゾリン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等であり、又これらの環は2個以上の縮合生成した環であってもよく、ベンゼン環やナフタリン環と縮合したものであってもよい。
【0065】
係る化合物の具体例としては、2−メルカプト−4−フェニルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2−メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2−メルカプト−4−フェニルチアゾール、3−ブチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アセタミド−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ヘプタデシル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−テトラゾール、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニル−ピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
上記メルカプト基またはチオン基を有する化合物は、水洗液中に0.01〜10g/リットル程度添加するのが好ましい。
【0067】
水洗液中には更に蛋白質分解酵素を含有させるのが好ましい。蛋白質分解酵素は、ゼラチンなどの蛋白質を加水分解できる植物性または動物性酵素で公知のものが用いられる。例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、細菌プロティナーゼ(例えば、長瀬産業(株)製のビオプラーゼ)等が挙げられる。この中でも特に、トリプシン、パパイン、フィシン、細菌プロティナーゼが好ましい。水洗液中への酵素の含有量は、0.5〜50g/リットル程度が適当である。
【0068】
水洗処理部53によって露出した銀画像部及び非画像部は、各々の親油性及び親水性を高めるため、及び版面の保護のために、仕上げ処理部54で仕上げ液による処理が施され、次いで乾燥部55で乾燥し排版される。
【0069】
仕上げ処理部54は、主として仕上げ液供給パイプ92、仕上げ液供給パイプ92から供給された仕上げ液をローラの巾方向に拡散させる液拡散ローラ91、仕上げ液拡散ローラ91を介して供給される仕上げ液を平版印刷版3に供給する仕上げ液供給ロール対93、仕上げ液供給時の余剰の仕上げ液を回収するための仕上げ液回収槽94、仕上げ液供給ポンプ95、仕上げ液供給タンク96からなっている。乾燥部55は、主としてドライヤ101、排版ロール対102からなっている。
【0070】
仕上げ液は、非画像部の保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸等の保護コロイドを通常含有するが、好ましくは更に前述したメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有することであり、更に蛋白質分解酵素含有するのが好ましい。
【0071】
本発明が対象とする平版印刷版は、アルミニウム支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する。ハロゲン化銀乳剤は、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、ヨウ臭化銀等から選択されるが、塩化銀主体(塩化銀50モル%以上のものを意味する)が好ましい。
【0072】
また乳剤のタイプとしてはネガ型、ポジ型のいずれでもよい。これらのハロゲン化銀乳剤は必要に応じて化学増感或いはスペクトル増感することができる。
【0073】
本発明において、走査型露光用平版印刷版に好適に用いられる増感色素は、アルゴンレーザー対応として、特願平7−283280号、同平8−27723号に記載の増感色素、赤色及び赤外レーザー対応として、特願平2−251853号、同平3−274055号、同平4−9853号、特願平8−45874号に記載の増感色素が挙げられる。
【0074】
ハロゲン化銀乳剤層の親水性コロイドとしてはゼラチンを用いることがハロゲン化銀粒子を作成する際に好ましい。ゼラチンには酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等各種ゼラチン(例えばフタル化ゼラチン、アミド化ゼラチン等)も用いることができる。また、更にポリビニルピロリドン、各種でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース等の親水性高分子化合物を含有させることができる。用いられる親水性コロイドとしては、現像後の剥離性を容易にするために実質的に硬膜剤を含まないことが望ましい。ハロゲン化銀乳剤層中のゼラチン量は1〜10g/m2程度で、好ましくは2〜5g/m2である。
【0075】
本発明に用いられる粗面化され陽極酸化されたアルミニウム板は、例えば米国特許第5,427,889号公報に記載されているものが挙げられる。
【0076】
本発明が対象とする平版印刷版は、アルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理核現像層は設けなくてよいが、設ける方が好ましい。物理核現像層の物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。保護コロイドとして各種親水性コロイドを用いることもできる。これらの詳細及び製法については、例えば、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」を参照し得る。
【0077】
本発明において、物理核現像槽とハロゲン化銀乳剤層の間に、特願平3−116151号公報記載の水膨潤性中間層、同平4−282295号公報に記載の疎水性重合体ビーズを含有する中間層を設けてもよい。
【0078】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明する。
実施例1
アルミニウム支持体の電解粗面化処理及び陽極酸化は米国特許第5,427,889号公報に記載の方法に従って、平均直径約5μmのプラト−上に直径0.03〜0.30μmのピットを100μm2当たり約5,600個有し、かつ これらのピットの平均直径が0.08μmである厚さ0.30mmのアルミニウム板を得た。このアルミ板は粗面化処理後に陽極酸化したものであり、平均粗さ(Ra)は0.5〜0.6μmであった。
【0079】
このアルミニウム支持体にカレー・リー(Carey Lea)法により作成された銀 ゾルからなる物理現像核液を塗布し、その後乾燥した。物理現像核層に含まれる銀量は、3mg/m2であった。
【0080】
ハロゲン化銀乳剤として、保護コロイドとして、アルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.2μmの、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウムを銀1モル当り0.006mmolドープさせた塩ヨウ臭化銀乳剤(AgBr20モル%、AgI0.4モル%)を作成した。更に、この乳剤に硫黄金増感を施し、赤感性増感色素を銀1g当り3mg用いて分光増感した。
【0081】
このようにして作成したハロゲン化銀乳剤に界面活性剤を加え、前記物理現像核が塗布されたアルミニウム支持体上に銀量が2g/m2、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン)が3g/m2になるように塗布、乾燥して平版印刷材料を得た。
【0082】
上記平版印刷材料を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機で画像出力し、図7及び図1、図2に示される構成の自動処理装置で処理した。自動処理装置は、現像処理部(25℃の現像液100ml/m2をスロットダイで塗布、現像時間12秒)、感光層剥離部、水洗処理部(33℃の水洗液をスクラビングローラ及び版面にシャワー噴射しながら乳剤層を剥離除去する。水洗処理部は18秒間で通過する)、仕上げ処理部(21℃の仕上げ液を液供給ローラで塗布、5秒間で通過する)及び乾燥部から構成されている。
【0083】
感光層剥離部では、ベルトを平版印刷版の巾方向に移動させながら平版印刷版に接触させてハロゲン化乳剤層を除去した。また、ベルトは移動中に洗浄槽中のの洗浄液に浸漬され、そこで超音波洗浄処理された。洗浄液として一般の水道水を用いた。50版処理して、全ての平版印刷版に対して感光層が一様に安定して剥離されていることが目視で確認できた。そして、剥離処理後の平版印刷版に対して水洗処理を行いハロゲン化乳剤層を細部まで除去し、仕上げ液を塗布して乾燥させ、印刷可能な印刷版を作製した。上記処理に用いる現像液、水洗液、仕上液の組成を下記に示す。
【0084】
比較例の剥離方法として、平版印刷版をブレードとバックアップロールの間を通過させ、該ブレードを搬送方向に対して直交する方向に配置して接触させて、ハロゲン化乳剤層を除去し、その後、バックアップロール下方にある掻き取りブレードでバックアップロールの清掃を行った。50版処理して、一様に感光層が剥離されていない平版印刷版がいくつかあることが目視で確認できた。前記ブレードによる剥離以前の平版印刷版に対する処理である露光、現像、前記ブレードによる剥離以降の処理である水洗、仕上げは、実施例1と同様とした。また、使用する平版印刷版、現像液、水洗液、及び仕上げ液も、実施例1と同様のものを用いた。
【0085】
実施例1、及び比較例の方法で作製された平版印刷版について、印刷機スプリント((株)小森コーポレーション社製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ(株)社製のGEOS−G H藍)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷を行った。
【0086】
その結果、実施例1の処理方法で作製された平版印刷版は、50版全てがインキ受理性に優れ、10万枚以上の高耐刷力を有する平版印刷版であり、安定に製版できていることが確認できた。比較例の処理方法で作製された平版印刷版は、一部の版が、実施例1の処理方法で作製された平版印刷版よりインキ受理性、耐刷性共に劣るものがあった。実施例1の処理方法の方が、継続して製版した時の水洗液の交換頻度も少なくなり廃棄物の軽減ができた。
【0087】
実施例2
実施例2では、図3及び図4の感光層剥離部を用い、剥離処理後に、カムを回転させて、ブレードに付着した剥離物を掻き取り、併せて該カムに付着した剥離物を該カムの下方に落とし、その後、カムを洗浄槽中の洗浄液に漬け超音波洗浄処理した。50版処理して、全ての平版印刷版に対して感光層が一様に安定して剥離されていることが、目視で確認できた。剥離以前の平版印刷版に対する処理である露光、現像、前記ブレードによる剥離以降の処理である水洗、仕上げは、実施例1と同様とした。また、使用する平版印刷版、現像液、洗浄液、水洗液、及び仕上げ液も、実施例1と同様のものを用いた。
【0088】
実施例2で作製された平版印刷版について、印刷機スプリント((株)小森コーポレーション社製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ(株)社製のGEOS−G H藍)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷を行った。
【0089】
その結果、実施例2の処理方法で作製された平版印刷版は、50版全てがインキ受理性に優れ、10万枚以上の高耐刷力を有する平版印刷版であり、安定に製版できていることが確認できた。実施例1と同様に、実施例2の処理方法は継続して製版した時の水洗液の交換頻度も少なくなり廃棄物の軽減ができた。
【0090】
実施例3
実施例3では、図5及び図6の感光層剥離部を用い、剥離処理後に平ベルトを回転させて、平ベルトの外周にある突出部でブレードに付着した剥離物を掻き取り、併せて該平ベルトに付着した剥離物を該平ベルトの下方に落とし、その後、前記平ベルト及び前記突出部を洗浄槽中の洗浄液に漬け超音波洗浄処理した。50版処理して、全ての平版印刷版に対して感光層が一様に安定して剥離されていることが、目視で確認できた。前記ブレードによる剥離以前の平版印刷版に対する処理である露光、現像、前記ブレードによる剥離以降の処理である水洗、仕上げは、実施例1と同様とした。また、使用する平版印刷版、現像液、洗浄液、水洗液、及び仕上げ液は、実施例1と同様のものを用いた。
【0091】
実施例3で作製された平版印刷版について、印刷機スプリント((株)小森コーポレーション社製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ(株)社製のGEOS−G H藍)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷を行った。
【0092】
その結果、実施例3の処理方法で作製された平版印刷版は、50版全てがインキ受理性に優れ、10万枚以上の高耐刷力を有する平版印刷版であり、安定に製版できていることが確認できた。実施例1、実施例2と同様に、実施例3の処理方法は継続して製版した時の水洗液の交換頻度も少なくなり廃棄物の軽減ができた。
【0093】
【発明の効果】
本発明の剥離方法により、常に安定に細部まで感光層を剥離除去し、次工程である水洗処理に用いる水洗液の更なる長寿命化を達成し、廃棄物のより少ない処理方法及び処理装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す部分断面図
【図2】本発明の一例を示す概略斜視図
【図3】本発明の一例を示す概略側面図
【図4】本発明の一例を示す概略側面図
【図5】本発明の一例を示す概略側面図
【図6】本発明の一例を示す概略側面図
【図7】本発明の自動現像機の一例を示す概略側面図
【符号の説明】
3 平版印刷板
4 ハロゲン化乳剤層
14 剥離物
30 ベルト
34 カム
37 平ベルト
43 突出部
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版の処理方法及び処理装置に関する。特に、現像処理後にハロゲン化銀乳剤層等の感光層を剥離除去する方法に特徴を有する処理方法及び処理装置に関する。詳細には、アルミニウム板を支持体とする、銀錯塩拡散転写法を利用したアルミニウム平版印刷版の処理方法に好適に用いられる処理方法及び処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を用いた平版印刷版については、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」、第101頁〜第130頁に幾つかの例が記載されている。
【0003】
DTR法を用いた平版印刷版には、転写材料と受像材料を別々にしたツーシートタイプ、或いはそれらを一枚の支持体上に設けたモノシートタイプの二方式が知られており、前者については例えば特開昭57−158844号公報に、後者については例えば特公昭48−30562号、同51−15765号、特開昭51−111103号、同52−150105号などの各公報に詳しく記載されている。
【0004】
アルミニウム板を支持体とする、銀錯塩拡散転写法を利用したモノシートタイプの平版印刷版(以降、アルミニウム平版印刷版と称す)は、特開昭57−118244号、同57−158844号、同63−260491号、特開平3−116151号、同4−282295号、同2000−284487号、同2001−281870号、米国特許第4,567,131号、同第5,427,889号等の公報に詳しく記載されている。
【0005】
前記アルミニウム平版印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を担持し、その上に実質的に硬化されていないハロゲン化銀乳剤層を設けた基本構成からなっている。このアルミニウム平版印刷版の一般的な処理方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュオフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)、仕上げ処理の工程からなっている。
【0006】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0007】
露出した銀画像部及び非画像部には、その保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸等の保護コロイドを含有する仕上げ液の処理、所謂ガム引きと云われる処理が施される。この仕上げ液は、定着液やフィニッシング液とも称され、銀画像部を親油性にする化合物(例えば、メルカプト基またチオン基を有する含窒素複素環化合物)を含有することも一般的である。
【0008】
上記のアルミニウム平版印刷版は、フイルムやポリエチレン樹脂被覆紙等のフレキシブル支持体上に順に下塗層、ハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を設けた平版印刷版に比べて、耐刷力に優れた印刷版が得られ易いという利点を有している反面、種々の問題を抱えている。問題の一つとして、水洗処理時のハロゲン化銀乳剤層の剥離除去がある。アルミニウム平版印刷版において、ハロゲン化銀乳剤層の剥離除去は、銀画像部及びアルミニウム表面自身で構成する非画像部を完全に露出させるために極めて重要な工程である。とりわけ、インキを受容する銀画像部は強い親油性が必要であり、ゼラチン等の親油性を阻害する物質は完全に排除する必要がある。
【0009】
上記水洗処理は、25〜40℃の洗浄液をジェット方式で吹き付けて乳剤層を剥離除去する方法、またはスクラビングローラで乳剤層を剥離する方法が一般的に採用されている。しかし、ハロゲン化乳剤層等を水洗液で除去することは、ゼラチンや銀等を含む大量の水洗液の廃棄処理が必要であり、環境上及び経済上の大きな問題となっている。
【0010】
ハロゲン化銀乳剤層の剥離除去の別の方法として、特開平3−116151号、同平4−318553号、同2001−142218号、同2001−142219号公報には、剥離シートを乳剤層に密着して乳剤層を剥離することが提案されている。前記剥離シート長尺ロールは、元巻きローラから送られて版面に接触密着し、巻き取りローラで巻き取られる。
【0011】
しかしながら、元巻きローラ、巻き取りローラ、及びその駆動装置等を組み込むことにより、装置が大型化する。また、剥離シートという消耗品が追加されることにより廃棄物が増えることになり、経済性に乏しく、環境負荷が高くなる。
【0012】
また、特開平5−188585号公報では、上記水洗処理の前に、ハロゲン化乳剤層等の感光層(以降、単に感光層という)に剥離手段を接触させて感光層を剥離除去し、水洗液へのゼラチンや銀等の感光層の持ち込み量を減らし、水洗液の交換頻度を減少させる処理方法が提案されている(特許文献1)。
【0013】
特開平5−188585号公報記載の方法では、剥離性能の維持、アルミニウム平版印刷版の円滑な搬送のために、剥離手段及び平版印刷版支持手段に、剥離された感光層の剥離物が蓄積するのを防ぐ必要がある。そこで、特開平5−188585号公報記載の方法では、剥離手段であるブレードに洗浄水を供給して、ブレードに付着した剥離物を洗い流し、平版印刷版支持手段であるバックアップロールを回転させ、バックアップロール下方に接触配置された掻き取りブレードで、バックアップロールに付着した剥離物を除去している。しかし、上記方法では掻き取りブレードに感光層の剥離物が蓄積するという問題がある。
【0014】
【特許文献1】
特開平5−188585号公報(第1頁〜第2頁、図1)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特開平5−188585号公報の更なる改良であり、剥離手段及び平版印刷版の支持手段に付着した剥離物を効率よく除去し、長期間安定に感光層の剥離を行い、更に次工程である水洗処理に用いる水洗液の更なる長寿命化を達成し、廃棄物のより少ない処理方法及び処理装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の処理方法及び処理装置によって達成された。
(1)支持体上に少なくとも1層の感光層を有する平版印刷版を露光及び現像処理後、該感光層に剥離手段を接触させて該感光層を剥離除去する平版印刷版の処理方法において、前記剥離手段としてベルトを用い、該ベルトを前記平版印刷版の巾方向に移動させて、該ベルトに付着した感光層の剥離物を、前記平版印刷版の巾方向の側方に排出することを特徴とする平版印刷版の処理方法、
及び上記処理方法を実施するための処理装置であって、少なくとも現像処理部、感光層剥離部、及び水洗処理部からなり、前記感光層剥離部が、前記感光層を剥離するためのベルトと、該ベルトを平版印刷版の巾方向に移動させる駆動手段を有することを特徴とする平版印刷版の処理装置である。
(2)少なくとも現像処理部、感光層剥離部、及び水洗処理部からなり、前記感光層剥離部が、前記感光層を剥離するための剥離手段と、該剥離手段に対向し離間する位置に平版印刷版の支持部材を有し、該支持部材に付着した感光層の剥離物を除去する機構及び前記剥離手段に付着した感光層の剥離物を掻き取るための機構とを併せて有することを特徴とする平版印刷版の処理装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。ここでは、感光層としてハロゲン化銀乳剤層を用いた銀錯塩拡散転写法を利用したアルミニウム平版印刷版の処理装置について説明するが、本発明によって処理される平版印刷版はこれに限定されるものではない。
【0018】
本発明の処理装置は、現像処理部、感光層剥離部、及び水洗処理部から少なくともなり、必要に応じて仕上げ処理部や乾燥部が設けられる。あらかじめ露光処理されたアルミニウム平版印刷版は、現像処理部において、物理現像核上に金属銀画像部が形成され、感光層剥離部において、感光層であるハロゲン化乳剤層が剥離される。次に、水洗処理部において前記ハロゲン化乳剤層が完全に除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部が露出し、陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。そして、版面の保護のために、仕上げ処理部において仕上げ液が施され、乾燥部で乾燥され排出される。
【0019】
本発明の上記した(1)の発明は、前記感光層剥離部において、ベルトを平版印刷版の巾方向に移動させて感光層を剥離し、感光層の剥離物(以下、単に剥離物と称す)を前記平版印刷版の巾方向の側方に排出することを特徴とするものであり、この処理方法を実施するための処理装置について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。図1及び図2は、感光層剥離部の部分断面図及び概略斜視図である。
【0020】
図1及び図2において、感光層剥離部は主に、ベルト30、支持台9、ベルト保持部材31、車輪32、洗浄槽8、振動源6、振動源駆動装置5、洗浄液供給タンク39、洗浄液供給ポンプ41、排液バルブ13、洗浄液廃液タンク40からなっている。但し、図2には、洗浄槽8及びそれに付随する装置や部材は図示していない。
【0021】
現像処理された平版印刷版3はベルト30と支持台9の間を通過し、次工程である水洗処理部へ送られる。ベルト30と支持台9の隙間は平版印刷版3の厚みより若干狭くなっている。また、ベルトの上方にベルト保持手段31があり、ベルトの上側位置が固定されている。従って、平版印刷版3が通過する時に、ベルト30が平版印刷版3に押し付けられ、平版印刷版3の支持体2の上に塗設されたハロゲン化乳剤層4が剥離除去される。
【0022】
ベルト30は、駆動手段、例えば車輪やモーターで移動させられる。具体的には、ベルト30は複数の車輪32に掛けられており(図2においては2つ)、少なくとも1つの車輪32に図示しないモータが接続されている。図示しないモータが駆動することにより車輪32が回転し、ベルト30は平版印刷版3の巾方向、即ち、平版印刷版の搬送方向Xを横切るように移動する。ベルト30が移動することにより、剥離部Aに蓄積した剥離物14がベルト30に引きずられて、平版印刷版3の巾方向の側方にに排出される。ベルト30の移動は常時行われていても、所定の時間(例えば、ベルト30により剥離処理後、1分程度)だけ行われていてもよいが、好ましくは、図7に示す感材検出器61が平版印刷版3を検出した時点で、ベルト30の移動が開始され、ベルト30が剥離処理中もベルト30の移動が行われ、平版印刷版3がベルト30を通過し剥離処理が行われた後1分程度でベルト30が停止することである。
【0023】
ベルト30に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性を満足できればよく、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム等が好適である。
【0024】
ベルト30は、平版印刷版3の巾方向に動かせればよく、輪になっている必要はないが、好ましい形態は輪である。ベルトの断面形状は特に限定されるものではないが、平版印刷版の搬送性を阻害せずに効果的にハロゲン化乳剤層をを剥離出来ればよく、線接触となる丸状ベルトが好ましい。
【0025】
ベルト保持手段31に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性と、弾性変形せずにベルト30を保持するためにベルト30と比較して弾性率の低い材料であればよい。例えば、ステンレス鋼、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等が好適である。
【0026】
支持台9は、平版印刷版3を挟みベルト30と対向する位置に配置されており、ベルト30を平版印刷版3に均一に接触させるための補助をする機能を有している。支持台9に用いられる材料は、処理液に対する耐食性と平版印刷版3の裏面に接触する時に平版印刷版3を傷つけない程度の硬さ及び面質を有していればよく、硬質塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂等が好適である。
【0027】
車輪32に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性と、ベルト30との間に充分な摩擦抵抗があればよい。例えば、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等が好適である。
【0028】
ベルト30、及び車輪32の一部は、洗浄槽8に貯留された洗浄液7に浸漬されている。そして、洗浄槽8には振動源6、排液バルブ13が取り付けられている。振動源6を駆動することにより、ベルト30と洗浄液7の界面でキャビティが発生し、キャビティの破裂によりベルト30に付着した剥離物が完全に除去される。上記した振動による洗浄処理は、一般に超音波洗浄処理と呼ばれており、以降同様の処理を超音波洗浄処理と記述する。
【0029】
洗浄槽8には数リットルの洗浄液7が貯溜されている 洗浄液7として、特に限定するものではないが、例えば一般の水道水が利用可能であり、更に界面活性剤や若干の有機溶剤を含有させてもよい。
【0030】
振動源6は、処理液により腐食しないよう、耐食性のカバーで覆われた構造で洗浄槽8に取り付けられている。振動源6としては、圧電素子、振動モータ、磁歪素子等が使用可能である。振動源6は、振動源駆動装置5によって任意のタイミングで振動を発生できる。
【0031】
洗浄液7が剥離物によって汚染され洗浄効果を有しなくなった時点で、排液バルブ13が開き、図7に示す洗浄液排液タンク40に排出される。そして、図7に示す洗浄液供給ポンプ41によって、図7に示す洗浄液供給タンク39から洗浄槽8へ供給される。洗浄液7の交換頻度は、例えば、平版印刷版3の処理版数で設定することができる。
【0032】
次に本発明の上記した(2)の発明について説明する。該処理装置は、感光層剥離部において、感光層剥離手段と、該剥離手段に対向し離間する位置に平版印刷版の支持部材を有し、該支持部材は該支持部材に付着した感光層の剥離物を除去する機構及び前記剥離手段に付着した感光層の剥離物を掻き取るための機構とを併せて有することを特徴とする。ここで、平版印刷版のの支持部材はそれ自体が平版印刷版の搬送方向と同方向に回転運動して、該支持部材上に付着した感光層の剥離物を除去し、かつ前記剥離手段に付着した感光層の剥離物を掻き取ることができる機構を備えたものである。
【0033】
上記(2)の処理装置の1つの態様は、剥離手段としてブレードを用い、平版印刷版の支持部材として、その周面の一部に平面を有するカムを用いることを特徴とする。この処理装置について、図3及び図4を用いて詳細に説明する。図3及び図4は、感光層剥離部の概略側面図である。
【0034】
図3、図4において、感光層剥離部は主に、ブレード1、カム34、カム軸35、洗浄槽8、振動源6、振動源駆動装置5、洗浄液供給タンク39、洗浄液供給ポンプ41、排液バルブ13、洗浄液廃液タンク40からなっている。
【0035】
現像処理された平版印刷版3がブレード1とカム34の間を通過し、次工程である水洗処理部へ送られる。ブレード1と接触することにより、平版印刷版3の支持体2の上に塗設されたハロゲン化乳剤層4が除去される。カム34は、ブレード1と対向し離間する位置に配置されており、剥離処理時に平版印刷版3を支持している。カム34は、その周面に少なくとも1つの平面を有する柱状の部材であり、軸方向にカム軸35が取り付けられている。カム34は、カム軸35を介して図示しない側板に軸支されている。剥離処理時、カム34は、上記平面が上面になる位置で停止している。
【0036】
ブレード1に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性を満足できればよく、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム等が好適である。その他にも平版印刷版3に接触させた時に平版印刷版3に傷を付けない程度の硬さ及び面質を有するプラスチック類等が使用可能である。
【0037】
カム34に用いられる材料は、処理液に対する耐食性と平版印刷版3の裏面に接触する時に平版印刷版3を傷つけない程度の硬さ及び面質を有していればよく、硬質塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂等が好適である。
【0038】
図4は、カム34が、剥離手段であるブレード1に付着した剥離物を掻き取るための機構と支持手段であるカム34上の剥離部Aに付着し、残留した剥離物を除去するための機構を併せて有していることを示す。カム軸35には、図示しないが、カム34、及びカム軸35を回転させる回転モータが接続されている。平版印刷版3を剥離処理後、カム34を、カム34がブレード1を掻く方向(図4においては反時計方向)に回転させ、フレード1に付着した剥離物を掻き取る。同時にカム34上の剥離部Aに付着し、残留した剥離物もカム34の下方に除去される。
【0039】
カム34は、回転途中で、前記と同様の洗浄槽8に貯留された洗浄液7に浸漬される。そして、振動源6を駆動することにより、カム34が超音波洗浄処理される。洗浄液7の交換方法、交換頻度は、前記態様と同様である。
【0040】
カム34は、超音波洗浄処理後、更に回転しその平面が上面になる位置で停止する。
【0041】
本発明の上記した(2)の発明の別の態様は、剥離手段としてブレードを用い、平版印刷版の支持部材として外周の一部に突出部を設けた平ベルトを用いることを特徴とする。この処理装置について、図5及び図6を用いて詳細に説明する。図5及び図6は、感光層剥離部の概略側面図である。
【0042】
図5、図6において、感光層剥離部は主に、ブレード1、平ベルト37、平ベルト駆動ローラ38、支持台42、洗浄槽8、振動源6、振動源駆動装置5、洗浄液供給タンク39、洗浄液供給ポンプ41、排液バルブ13、洗浄液廃液タンク40からなっている。そして、平ベルト37の外周の一部に突出部(掻き取り部)43が設けられている。
【0043】
現像処理された平版印刷版3がブレード1と平ベルト37の間を通過し、次工程である水洗処理部へ送られる。ブレード1と接触することにより、平版印刷版3の支持体2の上に塗設された表面のハロゲン化乳剤層4が除去される。また、平ベルト37による平版印刷版3の支持を補助するために、平ベルト37の下に支持台42が設けられている。剥離処理時、平ベルト37は、突出部43を平版印刷版3の搬送を阻害しない位置になるように停止している。
【0044】
平ベルト37は複数の平ベルト駆動ローラ38に掛けられており(図5においては2つ)、少なくとも1つの平ベルト駆動ローラ38に、図示しないが、平ベルト37を掻き取り動作させるための駆動手段が付設されている。例えば、平ベルト駆動ローラ38に回転機構を接続し、平ベルト37を回転できるようになっている。
【0045】
平ベルト37に用いられる材質は特に限定されるものではないが、処理液に対する耐食性を満足できればよく、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム等が好適である。
【0046】
図6は、平ベルト37が、剥離手段であるブレード1に付着した剥離物を掻き取るための機構と支持手段である平ベルト37上の剥離部Aに付着し、残留した剥離物を除去するための機構を併せて有していることを示す。平版印刷版3を剥離処理後、平ベルト駆動ローラ38に接続された図示しない回転機構を駆動し、平ベルト37の突出部43がブレード1を掻く方向(図6においては反時計方向)に一周させる。突出部43でブレード1を掻くことにより、ブレード1に付着した剥離物を掻き取る。また、平ベルト37を移動し回転させることにより、平ベルト37に付着し、残留した剥離物も剥離位置Aから平ベルト37の下方に除去される。
【0047】
平ベルト37及び突出部43は、回転途中で、前記と同様の洗浄槽8に貯留された洗浄液7に浸漬される。そして、振動源6を駆動することにより、平ベルト37及び突出部43が超音波洗浄処理される。洗浄液7の交換方法、交換頻度は、前記態様と同様である。
【0048】
次に、本発明の処理方法を実施するのに好適な処理装置の全体構成について詳細に説明する。図7は、本発明の自動処理装置の一例を示す概略側面図である。図7の自動処理装置は大別して平版印刷版の現像処理部51、感光層剥離部52、水洗処理部53、仕上げ処理部54、乾燥部55から成り立っている。
【0049】
現像処理部51は、主として感材検出器61、現像処理部入口ローラ対68、現像液を平版印刷版3に塗布するスロットダイ62、支持台63、現像絞りローラ対69、現像液回収槽64、現像液廃液タンク66、現像液供給タンク65、現像液供給ポンプ67からなっている。
【0050】
図7において、あらかじめ露光処理された平版印刷版3は、現像処理部入口ローラ対68によってスロットダイ62に送られる。そして、スロットダイ62で所定量(例えば平版印刷版1平方メートル当たり約20〜100ml)の現像液を塗布され、現像処理が施される。現像処理時間は、スロットダイ62から現像絞りローラ対69の距離と搬送速度で調整できる。例えば現像時間は5〜20秒程度に設定される。
【0051】
現像処理において、平版印刷版の先頭部分に対して充分な塗布量を与えるために、支持台63をスロットダイ62と対向して下側に配置し、スロットダイ62と支持台63の間に現像液の液溜めを形成できる間隙を設ける。間隙の距離は、0.5〜1.5mmが適当である。また、スロットダイ62よりも搬送方向上流側に感材検出器61を置き、平版印刷版3がスロットダイ62に到達する前に現像液供給ポンプ67によって現像液供給タンク65から現像液をスロットダイ62に供給し、あらかじめ液溜めを形成しておく。
【0052】
現像処理に使用された現像液は、その一部が現像絞りローラ対69によって絞り取られ、現像液回収槽64を介して現像液廃液タンクに貯溜される。
【0053】
現像処理部51によって現像処理された平版印刷版3は、現像絞りローラ対69によって、感光層剥離部52に送られる。
【0054】
現像処理部51で用いられる現像液は、現像主薬、例えばポリヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、或いはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、チオサリチル酸、メソイオン性化合物等の添加剤を含ませることができる。また親油化剤としてメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有させるのが好ましい。現像液のpHは通常10〜14、好ましくは12〜14である。
【0055】
現像処理部51によって現像処理された平版印刷版3は、本発明の特徴である上記した感光層剥離部52で、ハロゲン化乳剤層4が剥離除去され、水洗処理部53へ送られる。
【0056】
本発明における水洗処理部53は、前工程で剥離除去できなかったハロゲン化銀乳剤層を完全に剥離除去する作業と剥離処理に使用されていない水洗液を塗布する作業からなる。
【0057】
水洗処理部53は、主として水洗処理部入口ローラ対83、スクラビングローラ71、スクラビングローラ71に水洗液を噴射するシャワーパイプ73、水洗液貯溜第1タンク75、水洗液供給第1ポンプ77、濾過フィルタ86、搬送ローラ対84、版面ローラ82、水洗液供給シャワーパイプ74、水洗処理部絞りローラ対85、水洗液貯溜第2タンク76、水洗液供給第2ポンプ77、水洗液補充ポンプ79、水洗液補充タンク81、排液バルブ72、水洗液廃液タンク80からなっている。
【0058】
スクラビングローラ71は水洗処理工程における一般的な乳剤層の剥離除去方法であり、ゴムローラの表面に木綿等の天然繊維で作られた布、あるいは合成繊維、または天然繊維と合成繊維の複合素材による布が巻かれている。
【0059】
平版印刷版3は水洗処理部53の水洗処理部入口ローラ対83によって水洗処理部52へ導かれ、水洗液貯溜第1タンク75から水洗液供給第1ポンプ77によって濾過フィルター86を通過した水洗液をシャワーパイプ73から噴射させ、高速に回転するスクラビングローラ71によって平版印刷版の乳剤層を完全に剥離除去する。シャワーパイプ73により噴射された水洗液及び搬送ローラ対84で平版印刷版3から絞り取られた水洗液は、水洗液貯溜第1タンク75に回収される。
【0060】
その後、平版印刷版3は、版面ローラ82を通過して水洗処理部絞りローラ対85により、仕上げ処理部54へ送られる。このとき、平版印刷版3の版面上は、版面ローラ82と水洗処理部絞りローラ対85で遮断されるために、上方から水洗液供給シャワーパイプ74を通して供給された水洗液は、遮断された版面上に溜まるので、水洗処理が充分にかつ均一に行われる。平版印刷版3が通過するときに水洗処理部絞りローラ対85で絞り取られた水洗液、及び水洗液供給シャワーパイプ74により噴射された水洗液は、水洗液貯溜第2タンク76に回収される。
【0061】
未使用の水洗液は、水洗液補充タンク81から水洗液補充ポンプ79によって、水洗液貯溜第2タンク76に補充され、水洗液貯溜第2タンク76に水洗液が充満されると、オーバーフローして水洗液貯溜第1タンク75に補充される。水洗液貯溜第2タンク76に貯溜される水洗液は、剥離処理に使用された水洗液が搬送ローラ対84によって、それ以降に混入され難いことと未使用の水洗液が補充されることにより、未使用の水洗液の性状に近い状態を保持でき、水洗液貯溜第2タンク76に貯溜されている水洗液を上記方法により塗布することによりインキ受理性を向上させることができる。
【0062】
水洗液貯溜第1タンク75及び水洗液貯溜第2タンク76に貯溜された水洗液は、剥離処理能力及びインキ受理性向上効果が見られなくなった時点で、排液バルブ72を開くことにより、水洗液廃液タンク80に排出される。
【0063】
本発明において、ハロゲン化銀乳剤層4を剥離除去するための水洗液と、後の版面に塗布する剥離処理に使用されていない水洗液とは、その組成が同じであっても異なっていても良い。両方の水洗液とも水道水、イオン交換処理した純水、或いは蒸留水のような単なる水であってもよく、また、親油化剤としてメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有する化合物や版面を中和するための中性から酸性領域の緩衝剤、蛋白質分解酵素、防腐剤、各種界面活性剤等を含むものであってもよい。好ましくは少なくとも乳剤層を完全に剥離除去した版面に塗布する水洗液(水洗液貯溜第2タンク76に貯溜された水洗液)は、インキ受理性をより向上させるために親油化剤としてメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有させることであり、この場合、ハロゲン化銀乳剤層を剥離除去するための水洗液(水洗液貯溜第1タンク75に貯溜された水洗液)は、前記した水であってもよいが、より好ましくは両方の水洗液に上記親油化剤を含有させることであり、更に蛋白質分解酵素を含有させるのが好ましい。また、両方の水洗液には、pHを4〜8、好ましくは4.5〜7の範囲に緩衝させる緩衝剤、例えば燐酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤またはそれらの混合物や防腐剤を含有することができる。
【0064】
上記したメルカプト基またはチオン基を有する化合物としては、特公昭48−29723号、特開昭58−127928号に記載されているものが好ましく用いられる。特にメルカプト基またはチオン基を有する含窒素複素環化合物が好ましい。含窒素複素環化合物の具体的な例としては、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、チアゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、ピラゾリン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等であり、又これらの環は2個以上の縮合生成した環であってもよく、ベンゼン環やナフタリン環と縮合したものであってもよい。
【0065】
係る化合物の具体例としては、2−メルカプト−4−フェニルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2−メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2−メルカプト−4−フェニルチアゾール、3−ブチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アセタミド−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ヘプタデシル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−テトラゾール、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニル−ピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
上記メルカプト基またはチオン基を有する化合物は、水洗液中に0.01〜10g/リットル程度添加するのが好ましい。
【0067】
水洗液中には更に蛋白質分解酵素を含有させるのが好ましい。蛋白質分解酵素は、ゼラチンなどの蛋白質を加水分解できる植物性または動物性酵素で公知のものが用いられる。例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、細菌プロティナーゼ(例えば、長瀬産業(株)製のビオプラーゼ)等が挙げられる。この中でも特に、トリプシン、パパイン、フィシン、細菌プロティナーゼが好ましい。水洗液中への酵素の含有量は、0.5〜50g/リットル程度が適当である。
【0068】
水洗処理部53によって露出した銀画像部及び非画像部は、各々の親油性及び親水性を高めるため、及び版面の保護のために、仕上げ処理部54で仕上げ液による処理が施され、次いで乾燥部55で乾燥し排版される。
【0069】
仕上げ処理部54は、主として仕上げ液供給パイプ92、仕上げ液供給パイプ92から供給された仕上げ液をローラの巾方向に拡散させる液拡散ローラ91、仕上げ液拡散ローラ91を介して供給される仕上げ液を平版印刷版3に供給する仕上げ液供給ロール対93、仕上げ液供給時の余剰の仕上げ液を回収するための仕上げ液回収槽94、仕上げ液供給ポンプ95、仕上げ液供給タンク96からなっている。乾燥部55は、主としてドライヤ101、排版ロール対102からなっている。
【0070】
仕上げ液は、非画像部の保護のためにアラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸等の保護コロイドを通常含有するが、好ましくは更に前述したメルカプト基またはチオン基を有する化合物を含有することであり、更に蛋白質分解酵素含有するのが好ましい。
【0071】
本発明が対象とする平版印刷版は、アルミニウム支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する。ハロゲン化銀乳剤は、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩臭化銀、塩ヨウ化銀、ヨウ臭化銀等から選択されるが、塩化銀主体(塩化銀50モル%以上のものを意味する)が好ましい。
【0072】
また乳剤のタイプとしてはネガ型、ポジ型のいずれでもよい。これらのハロゲン化銀乳剤は必要に応じて化学増感或いはスペクトル増感することができる。
【0073】
本発明において、走査型露光用平版印刷版に好適に用いられる増感色素は、アルゴンレーザー対応として、特願平7−283280号、同平8−27723号に記載の増感色素、赤色及び赤外レーザー対応として、特願平2−251853号、同平3−274055号、同平4−9853号、特願平8−45874号に記載の増感色素が挙げられる。
【0074】
ハロゲン化銀乳剤層の親水性コロイドとしてはゼラチンを用いることがハロゲン化銀粒子を作成する際に好ましい。ゼラチンには酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等各種ゼラチン(例えばフタル化ゼラチン、アミド化ゼラチン等)も用いることができる。また、更にポリビニルピロリドン、各種でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース等の親水性高分子化合物を含有させることができる。用いられる親水性コロイドとしては、現像後の剥離性を容易にするために実質的に硬膜剤を含まないことが望ましい。ハロゲン化銀乳剤層中のゼラチン量は1〜10g/m2程度で、好ましくは2〜5g/m2である。
【0075】
本発明に用いられる粗面化され陽極酸化されたアルミニウム板は、例えば米国特許第5,427,889号公報に記載されているものが挙げられる。
【0076】
本発明が対象とする平版印刷版は、アルミニウム支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に物理核現像層は設けなくてよいが、設ける方が好ましい。物理核現像層の物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。保護コロイドとして各種親水性コロイドを用いることもできる。これらの詳細及び製法については、例えば、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」を参照し得る。
【0077】
本発明において、物理核現像槽とハロゲン化銀乳剤層の間に、特願平3−116151号公報記載の水膨潤性中間層、同平4−282295号公報に記載の疎水性重合体ビーズを含有する中間層を設けてもよい。
【0078】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明する。
実施例1
アルミニウム支持体の電解粗面化処理及び陽極酸化は米国特許第5,427,889号公報に記載の方法に従って、平均直径約5μmのプラト−上に直径0.03〜0.30μmのピットを100μm2当たり約5,600個有し、かつ これらのピットの平均直径が0.08μmである厚さ0.30mmのアルミニウム板を得た。このアルミ板は粗面化処理後に陽極酸化したものであり、平均粗さ(Ra)は0.5〜0.6μmであった。
【0079】
このアルミニウム支持体にカレー・リー(Carey Lea)法により作成された銀 ゾルからなる物理現像核液を塗布し、その後乾燥した。物理現像核層に含まれる銀量は、3mg/m2であった。
【0080】
ハロゲン化銀乳剤として、保護コロイドとして、アルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.2μmの、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウムを銀1モル当り0.006mmolドープさせた塩ヨウ臭化銀乳剤(AgBr20モル%、AgI0.4モル%)を作成した。更に、この乳剤に硫黄金増感を施し、赤感性増感色素を銀1g当り3mg用いて分光増感した。
【0081】
このようにして作成したハロゲン化銀乳剤に界面活性剤を加え、前記物理現像核が塗布されたアルミニウム支持体上に銀量が2g/m2、ゼラチン(アルカリ処理ゼラチン)が3g/m2になるように塗布、乾燥して平版印刷材料を得た。
【0082】
上記平版印刷材料を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機で画像出力し、図7及び図1、図2に示される構成の自動処理装置で処理した。自動処理装置は、現像処理部(25℃の現像液100ml/m2をスロットダイで塗布、現像時間12秒)、感光層剥離部、水洗処理部(33℃の水洗液をスクラビングローラ及び版面にシャワー噴射しながら乳剤層を剥離除去する。水洗処理部は18秒間で通過する)、仕上げ処理部(21℃の仕上げ液を液供給ローラで塗布、5秒間で通過する)及び乾燥部から構成されている。
【0083】
感光層剥離部では、ベルトを平版印刷版の巾方向に移動させながら平版印刷版に接触させてハロゲン化乳剤層を除去した。また、ベルトは移動中に洗浄槽中のの洗浄液に浸漬され、そこで超音波洗浄処理された。洗浄液として一般の水道水を用いた。50版処理して、全ての平版印刷版に対して感光層が一様に安定して剥離されていることが目視で確認できた。そして、剥離処理後の平版印刷版に対して水洗処理を行いハロゲン化乳剤層を細部まで除去し、仕上げ液を塗布して乾燥させ、印刷可能な印刷版を作製した。上記処理に用いる現像液、水洗液、仕上液の組成を下記に示す。
【0084】
比較例の剥離方法として、平版印刷版をブレードとバックアップロールの間を通過させ、該ブレードを搬送方向に対して直交する方向に配置して接触させて、ハロゲン化乳剤層を除去し、その後、バックアップロール下方にある掻き取りブレードでバックアップロールの清掃を行った。50版処理して、一様に感光層が剥離されていない平版印刷版がいくつかあることが目視で確認できた。前記ブレードによる剥離以前の平版印刷版に対する処理である露光、現像、前記ブレードによる剥離以降の処理である水洗、仕上げは、実施例1と同様とした。また、使用する平版印刷版、現像液、水洗液、及び仕上げ液も、実施例1と同様のものを用いた。
【0085】
実施例1、及び比較例の方法で作製された平版印刷版について、印刷機スプリント((株)小森コーポレーション社製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ(株)社製のGEOS−G H藍)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷を行った。
【0086】
その結果、実施例1の処理方法で作製された平版印刷版は、50版全てがインキ受理性に優れ、10万枚以上の高耐刷力を有する平版印刷版であり、安定に製版できていることが確認できた。比較例の処理方法で作製された平版印刷版は、一部の版が、実施例1の処理方法で作製された平版印刷版よりインキ受理性、耐刷性共に劣るものがあった。実施例1の処理方法の方が、継続して製版した時の水洗液の交換頻度も少なくなり廃棄物の軽減ができた。
【0087】
実施例2
実施例2では、図3及び図4の感光層剥離部を用い、剥離処理後に、カムを回転させて、ブレードに付着した剥離物を掻き取り、併せて該カムに付着した剥離物を該カムの下方に落とし、その後、カムを洗浄槽中の洗浄液に漬け超音波洗浄処理した。50版処理して、全ての平版印刷版に対して感光層が一様に安定して剥離されていることが、目視で確認できた。剥離以前の平版印刷版に対する処理である露光、現像、前記ブレードによる剥離以降の処理である水洗、仕上げは、実施例1と同様とした。また、使用する平版印刷版、現像液、洗浄液、水洗液、及び仕上げ液も、実施例1と同様のものを用いた。
【0088】
実施例2で作製された平版印刷版について、印刷機スプリント((株)小森コーポレーション社製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ(株)社製のGEOS−G H藍)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷を行った。
【0089】
その結果、実施例2の処理方法で作製された平版印刷版は、50版全てがインキ受理性に優れ、10万枚以上の高耐刷力を有する平版印刷版であり、安定に製版できていることが確認できた。実施例1と同様に、実施例2の処理方法は継続して製版した時の水洗液の交換頻度も少なくなり廃棄物の軽減ができた。
【0090】
実施例3
実施例3では、図5及び図6の感光層剥離部を用い、剥離処理後に平ベルトを回転させて、平ベルトの外周にある突出部でブレードに付着した剥離物を掻き取り、併せて該平ベルトに付着した剥離物を該平ベルトの下方に落とし、その後、前記平ベルト及び前記突出部を洗浄槽中の洗浄液に漬け超音波洗浄処理した。50版処理して、全ての平版印刷版に対して感光層が一様に安定して剥離されていることが、目視で確認できた。前記ブレードによる剥離以前の平版印刷版に対する処理である露光、現像、前記ブレードによる剥離以降の処理である水洗、仕上げは、実施例1と同様とした。また、使用する平版印刷版、現像液、洗浄液、水洗液、及び仕上げ液は、実施例1と同様のものを用いた。
【0091】
実施例3で作製された平版印刷版について、印刷機スプリント((株)小森コーポレーション社製オフセット印刷機の商標)、インキ(大日本インキ(株)社製のGEOS−G H藍)及び市販のPS版用給湿液を用いて印刷を行った。
【0092】
その結果、実施例3の処理方法で作製された平版印刷版は、50版全てがインキ受理性に優れ、10万枚以上の高耐刷力を有する平版印刷版であり、安定に製版できていることが確認できた。実施例1、実施例2と同様に、実施例3の処理方法は継続して製版した時の水洗液の交換頻度も少なくなり廃棄物の軽減ができた。
【0093】
【発明の効果】
本発明の剥離方法により、常に安定に細部まで感光層を剥離除去し、次工程である水洗処理に用いる水洗液の更なる長寿命化を達成し、廃棄物のより少ない処理方法及び処理装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す部分断面図
【図2】本発明の一例を示す概略斜視図
【図3】本発明の一例を示す概略側面図
【図4】本発明の一例を示す概略側面図
【図5】本発明の一例を示す概略側面図
【図6】本発明の一例を示す概略側面図
【図7】本発明の自動現像機の一例を示す概略側面図
【符号の説明】
3 平版印刷板
4 ハロゲン化乳剤層
14 剥離物
30 ベルト
34 カム
37 平ベルト
43 突出部
Claims (5)
- 支持体上に少なくとも1層の感光層を有する平版印刷版を露光及び現像処理後、該感光層に剥離手段を接触させて該感光層を剥離除去する平版印刷版の処理方法において、前記剥離手段としてベルトを用い、該ベルトを前記平版印刷版の巾方向に移動させて、該ベルトに付着した感光層の剥離物を、前記平版印刷版の巾方向の側方に排出することを特徴とする平版印刷版の処理方法。
- 支持体上に少なくとも1層の感光層を有する平版印刷版の処理装置であって、該処理装置は少なくとも現像処理部、感光層剥離部及び水洗処理部からなり、前記感光層剥離部は、感光層を剥離するためのベルトと、該ベルトを平版印刷版の巾方向に移動させる駆動手段とを有することを特徴とする平版印刷版の処理装置。
- 支持体上に少なくとも1層の感光層を有する平版印刷版の処理装置であって、該処理装置は少なくとも現像処理部、感光層剥離部及び水洗処理部からなり、前記感光層剥離部は、感光層を剥離するための剥離手段と、該剥離手段に対向し離間する位置に平版印刷版の支持部材を有し、該支持部材は該支持部材に付着した感光層の剥離物を除去する機構及び前記剥離手段に付着した感光層の剥離物を掻き取るための機構とを併せて有することを特徴とする平版印刷版の処理装置。
- 前記平版印刷版の支持部材が、平面を有するカムである請求項3記載の平版印刷版の処理装置。
- 前記平版印刷版の支持部材が、 外周の一部に突出部を設けた平ベルトである請求項3記載の平版印刷版の処理装置。
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-
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- 2002-10-30 JP JP2002315409A patent/JP2004151288A/ja active Pending
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