JP2004144111A - 電磁クラッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】スラスト方向のがたつきおよびラジアル方向のがたつきを小さくすることのできる電磁クラッチを提供する。
【解決手段】電磁クラッチ100は、回転軸を受け入れる筒状軸20と、アーマチュア9と、ロータ30とを備える。筒状軸20は、長さ方向の中間領域に径方向に突出した径方向突出凸部21を有する。アーマチュア9は、筒状軸20の一方端側から嵌められて筒状軸上で回転自在である。ロータ30は、筒状軸20の他方端側から嵌められて筒状軸と一体になって回転する。径方向突出凸部21は、アーマチュア9とロータ30との間に位置する。
【選択図】 図5
【解決手段】電磁クラッチ100は、回転軸を受け入れる筒状軸20と、アーマチュア9と、ロータ30とを備える。筒状軸20は、長さ方向の中間領域に径方向に突出した径方向突出凸部21を有する。アーマチュア9は、筒状軸20の一方端側から嵌められて筒状軸上で回転自在である。ロータ30は、筒状軸20の他方端側から嵌められて筒状軸と一体になって回転する。径方向突出凸部21は、アーマチュア9とロータ30との間に位置する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば複写機の給紙機構等に使用される電磁クラッチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回転駆動される入力回転要素の駆動力を選択的に伝達する電磁クラッチは、例えば、特許第3061620号公報に開示されている。
【0003】
上記公報に開示された電磁クラッチは、回転軸を受け入れる筒状軸と、電磁コイルを内部に組み込み筒状軸上に配置されたフィールドコアと、筒状軸とともに回転するようにされたロータと、ロータに対面し筒状軸上に回転自在に配置されたアーマチュアと、筒状軸上に回転自在に配置されアーマチュアと一体になって回転する歯車とを備える。
【0004】
電磁クラッチを組み立てる際には、フィールドコア、ロータ、アーマチュアおよび歯車の全てを筒状軸の一方端側から筒状軸上に嵌めるようにしている。
【0005】
フィールドコア内に組み込まれた電磁コイルに通電すると、磁気的吸引力によりアーマチュアが弾性部材の弾性力に抗してロータに吸着する。それにより、アーマチュアとロータとが接続状態となり、歯車に伝達される動力が筒状軸に伝達される。一方、電磁コイルへの通電を停止すると、弾性部材の弾性力によってアーマチュアがロータから離れ、アーマチュアとロータとの接続状態が解除される。それにより、歯車からの動力は、筒状軸に伝達されなくなる。このように、電磁コイルへの通電を制御することにより、歯車に伝達された動力を筒状軸に伝達したり、切り離したりすることができる。
【0006】
【特許文献1】
特許第3061620号公報(段落0026〜0045、図2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許第3061620号公報に開示された電磁クラッチでは、筒状軸上に配置される全ての構成部品を筒状軸の一方端側から嵌めるようにしている。そのため、各部品のクリアランスまたは遊びが累積し、スラスト方向のがたつき、ひいてはラジアル方向のがたつきをも引き起こすという課題が指摘される。そのため、励磁状態の空転時に、ラジアル方向のがたつき等によりエアーギャップ部が不均一な隙間となるため、空転トルクの変動が大きくなってしまう。
【0008】
さらに、特許第3061620号公報に開示された電磁クラッチでは、組み立て順序が制約されるので組み立て作業の融通性がない。
【0009】
さらに、特許第3061620号公報に開示された電磁クラッチでは、防塵対策がなされていないので、電磁クラッチ内にトナー等の異物が入り込むおそれがある。電磁クラッチ内に入り込んだ異物はアーマチュアやロータの表面に付着する。そのため、該異物の存在によりアーマチュアがロータに付着したまま離れなくなり、電磁クラッチが機能しなくなるという問題が生じる可能性がある。
【0010】
本件出願と同一の出願人は、平成13年5月8日に特願2001−137455号として、防塵対策を施した電磁クラッチを提案した。この電磁クラッチを図1および図2に示している。
【0011】
図1に示すように、電磁クラッチ1は、フィールドコア2と、筒状軸5と、スリーブ6と、ロータ7と、弾性部材8と、アーマチュア9と、歯車10と、ブッシング13と、アーマチュアカバー14とを備える。
【0012】
筒状軸5は、たとえばプラスチック等により構成され、その内部に複写機におけるタイミングローラの支持軸のような被動軸の一端が挿入される。筒状軸5の外周上には金属製のスリーブ6が取付けられる。スリーブ6の外周上に、フィールドコア2か取付けられる。フィールドコア2内には電磁コイル3およびそれを覆うボビン4が組込まれる.上記のフィールドコア2、電磁コイル3およびスリーブ6が、ロータ7にアーマチュア9を吸着させる電磁力を発生させる電磁手段として機能する。
【0013】
筒状軸5の外周上には、該筒状軸5と一体となってその周方向に回転するロータ7が取付けられる。このロータ7は、金属材料に絞り加工を施して形成された一体のプレス成形品により構成される。ロータ7は、その内周に軸方向に延びる円筒壁部分7bを有する。このロータ7の円筒壁部分7bが、筒状軸5の周方向に該筒状軸5の外周と係合する係合部7a(図2参照)を含む。
【0014】
ロータ7と隣り合う位置にブッシング13、弾性部材8およびアーマチュア9が筒状軸5に対し回転自在に外嵌される。ロータ7とアーマチュア9間には間隙Dが存在し、上記の電磁手段による電磁力でアーマチュア9がロータ7に吸着することにより間隙Dはゼロとなる。
【0015】
フィールドコア2と歯車10との間にアーマチュアカバー14を設置する。アーマチュアカバー14は、筒状軸5に対し回転自在に外嵌され、フィールドコア2と歯車10との間から電磁クラッチ1の内部にトナー等の異物が侵入するのを防止する機能を果たす。
【0016】
上記のアーマチュアカバー14を設けることにより、歯車10とフィールドコア2間の隙間から電磁クラッチ1の内部にトナー等の異物が侵入するのを抑制することができ、アーマチュア9やロータ7の表面(特にアーマチュア9とロータ7の対向する表面)にトナー等の異物が付着するのを抑制することができる。それにより、アーマチュア9とロータ7とが付着して電磁クラッチ1が機能しなくなるという事態を回避することができる。
【0017】
アーマチュアカバー14は、図1に示すようにアーマチュア9の外周を取り囲み、筒状軸5の軸方向に延び、フィールドコア2の外周上に達する筒状部を有する。このようにアーマチュアカバー14が筒状部を有するので、この筒状部で歯車10とフィールドコア2間の隙間を閉じることができ、上述のように歯車10とフィールドコア2間の隙間から電磁クラッチ1の内部に異物が侵入するのを抑制することができる。
【0018】
また、図1に示すように、アーマチュアカバー14は、アーマチュア9背面の凸部9bを受け入れる凹部14aと、ブッシング13の一部を受け入れる内周の凹部14bと、背面に歯車10と係合する凸部14dとを有する。
【0019】
上記の凹部14a,14bや凸部14dを設けることにより、アーマチュアカバー14は筒状軸5の周方向にブッシング13、アーマチュア9および歯車10と係合することとなる。そのため、アーマチュァカバー14はブッシング13、アーマチュア9および歯車10とともに筒状軸5の周方向に回転し、アーマチュア9と歯車10間で動力を伝達することができる。
【0020】
筒状軸5の周方向にアーマチュアカバー14と係合する係合部を有し、アーマチュアカバー14と一体となって回転する歯車10が筒状軸5に外嵌される。この歯車10は、動力伝達部材としての機能を有し、歯車10に伝達された動力が選択的に筒状軸5に伝達される。それにより、被動軸となる筒状軸5が選択的に回転操作される。
【0021】
なお、歯車10の代わりにプーリやスプロケット等の動力伝達部材を採用することも考えられる。筒状軸5の一端には、シム12を介して止め輪11が取付けられる。これらにより、ブッシング13、弾性部材8、アーマチュア9、アーマチュアカバー14および歯車10の位置決めおよび抜け防止が行なわれる。
【0022】
次に、図2を用いて、図1に示す電磁クラッチの組立方法および各要素の構造についてより詳しく説明する。
【0023】
図2を参照して、筒状軸5の一端にフランジ部5bを設け、他端側に溝部5cを設ける。また、フランジ部5b側に位置する筒状軸5の外表面に係合部5aを設ける。この場合であれば、4つの凸部が間隔をあけて形成されているが、スリーブ6の内周と係合して一体的に回転可能なものであれば係合部5aの形状および数は任意に選択可能である。
【0024】
スリーブ6の内周には、上述の係合部5aと係合する溝部6aが設けられる。溝部6aは、フランジ部5b側の端部からロータ7側の端部に延びている。溝部6a内に係合部5aが挿入される。それにより、筒状軸5とスリーブ6を筒状軸5の周方向に係合させることができる。上記の構造を有するスリーブ6を、筒状軸5の溝部5c側から外周に装着する。
【0025】
次に、スリーブ6の外周上にボビン4を有するフィールドコア2を取付ける。このフィールドコア2も、溝部5c側から装着する。それにより、フィールドコア2の端面とフランジ部5bとが係合する。
【0026】
次に、ロータ7を筒状軸5に外嵌する。このとき、ロータ7の内周には係合部5aを受け入れる溝部(係合部)7aが設けられており、ロータ7を溝部5c側から筒状軸5の外周面に装着する際に、筒状軸5の係合部5aを溝部7a内に挿入する。
【0027】
ブッシング13は、たとえばプラスチックにより構成され、筒状部13bと、その外周に3つの凸部13aとを有する。筒状部13bは、筒状軸5の係合部5aと溝部5c間に位置する筒状軸5の外周面上に取付けられ、ロータ7とアーマチェア9間の間隙Dを調整する機能を有する。
【0028】
具体的には、筒状部13bの軸方向の長さを調整することにより、上記の間隙Dを調整することができる。それにより、ロータ7とアーマチュア9間の間隙を調整するという面倒な作業が不要となるばかりでなく、間隙Dのばらつきをも低減することができる。
【0029】
凸部13aは、ブッシング13の径方向外方に突出し、ロータ7側に押圧部13cを有する。押圧部13cは、凸部13aの一端を筒状部13bの周方向に拡張することにより形成され、弾性部材8と筒状軸5の軸方向に係合し、弾性部材8をアーマチュア9側に押圧固定する機能を有する。上記の構造のブッシング13を、その一方の端面がロータ7と当接するように筒状軸5に外嵌する。
【0030】
弾性部材8は、たとえばステンレス鋼等の金属製であり、環状の形状を有する。この弾性部材8は、外周から径方向外方に突出する3つの弾性部8aと、内周に3つの切欠部8bとを有する。弾性部8aは、筒状軸5の軸方向にアーマチュア9と係合し、アーマチュア9をロータ7から引離す方向に付勢する。切欠部8bは、ブッシング13外周の凸部13aを受け入れ、この凸部13aと筒状軸5の周方向に係合する。かかる構造の弾性部材8を筒状軸5に外嵌する。このとき、切欠部8bにブッシング13の凸部13aを嵌入する。
【0031】
金属製のアーマチュア9は、内周に3つの凹部9aを有し、環状の形状を有する。凹部9aは、ロータ7側の端面において弾性部8aと対応した位置に設けられ、弾性部8aを受け入れる。それにより、アーマチェア9と弾性部8aを筒状軸5の周方向に係合させることができる。
【0032】
アーマチュア9における歯車10側の端面(背面)には、筒状軸5の軸方向に突出する凸部(図1における9b)が設けられる。この凸部がアーマチュアカバー14に設けられる凹部14aに嵌め込まれ、アーマチュア9とアーマチュアカバー14とが筒状軸5の周方向に係合する。アーマチュア9の外周に、3つの切欠部9cを設ける。
【0033】
上記の構造のアーマチュア9を筒状軸5に外嵌する。このとき、弾性部材8の弾性部8aをアーマチュア9の凹部9a内に収容する。
【0034】
アーマチュアカバー14は、たとえばプラスチック製であり、略環状の形状を有する。アーマチュアカバー14の筒状部は、アーマチュアカバー14の外周から筒状軸5の軸方向に延びる。この筒状部内にアーマチュア9を受け入れる。アーマチュアカバー14におけるアーマチュア9側の表面には、3つの凹部14a,14bと、3つの凸部14cとをそれぞれ設ける。
【0035】
このアーマチュアカバー14を筒状軸5に外嵌する。このとき凹部14aに図1に示すアーマチュア9背面の3つの凸部9bを受け入れ、凹部14bにブッシング13外周の凸部13aを受け入れ、凸部(係合部)14cをアーマチュア9外周の3つの切欠部9cに受け入れる。この凸部14cと切欠部9cによっても、アーマチュア9とアーマチュアカバー14とを筒状軸5の周方向に係合させることができる。
【0036】
歯車10は、たとえばプラスチック製であり、一方の端面に3つの凹部(係合部)10aと、外周に多数の歯を有する。この歯車10を筒状軸5に外嵌する。このとき、凹部10a内に、図1に示すアーマチュアカバー14背面の凸部(係合部)14dを受け入れる。
【0037】
それにより、凸部14dおよび凹部10aを介して、アーマチェアカバー14と歯車10とが、筒状軸5の周方向に係合し、ブッシング13、弾性部材8、アーマチュア9、アーマチュアカバー14および歯車10を、筒状軸5の周方向に直接あるいは間接的に係合させることができる。その結果、ブッシング13、弾性部材8、アーマチュア9、アーマチュアカバー14および歯車10を、筒状軸5の周方向に一体的に回転させることができる。
【0038】
上記のようにして歯車10までを筒状軸5に装着した後、シム12および止め輪11を筒状軸5に取付ける。シム12の数は任意に選択可能であるが、このシム12によって、筒状軸5の軸方向における歯車10等の位置調整を行なえる。また、止め輪11は、筒状軸5外周の溝部5cに取付けられ、各要素の抜けを防止する。
【0039】
以上のように、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチでは、各要素を筒状軸5に一方向から単純に外嵌するだけでよいので、かしめ作業やねじ止め作業が一切不要となる。しかしながら、特許第3061620号公報に開示された電磁クラッチと同様に、各部品のクリアランスや遊びが累積されるので、スラスト方向のがたつきやラジアル方向のがたつきは避けられない。
【0040】
図3は、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチにおけるロータ7と金属製スリーブ6との当接部分を拡大して示している。磁気回路を形成するために、金属製スリーブ6の端面とロータ7の円筒壁部分7bの端面とは、当接した状態に保たれなければならない。
【0041】
前述したように、ロータ7はプレス加工によって所定の形状に形作られている。プレス加工であるがゆえに、ロータ7の円筒壁部分7bの先端の端面は、どうしてもだれてしまい、きれいな垂直面にならない。また、円筒壁部分7bの先端部のバリを除去するために、角部を面取りすることもある。
【0042】
上記のようなロータ7の円筒壁部分7bのだれや面取りのために、円筒壁部分7bの端面と金属製スリーブ6の端面との接触面積が小さくなり、十分な磁気回路を形成することができなくなる。そのため、磁束が十分に流れず、磁力の伝達が不十分となる。
【0043】
さらに、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチでは、図4に示すように、金属製スリーブ6と筒状軸5とを一体的に回転させるために、金属製スリーブ6の内面に溝部6aを設けていた。同様に、ロータ7の円筒壁部分7bの内面にも、係合部(溝部)7aを設けていた。これらの溝部6a,7aの存在は、金属製スリーブ6とロータ7との接触面積を小さくする一因となる。
【0044】
本発明の目的は、スラスト方向のがたつきおよびラジアル方向のがたつきを小さくすることのできる電磁クラッチを提供することである。
【0045】
本発明の他の目的は、組立作業の融通性を発揮することのできる電磁クラッチを提供することである。
【0046】
本発明のさらに他の目的は、ロータと金属製スリーブとの接触面積を確保し、磁力を十分に伝達することのできる電磁クラッチを提供することである。
【0047】
本発明のさらに他の目的は、トナー等の異物が内部に入り込むことを抑制できる電磁クラッチを提供することである。
【0048】
【課題を解決するための手段】
この発明に従った電磁クラッチは、筒状軸と、アーマチュアと、ロータとを備える。筒状軸は、回転軸を受け入れるものであり、長さ方向の中間領域に径方向に突出した凸部を有する。アーマチュアは、筒状軸の一方端側から嵌められて筒状軸上で回転自在である。ロータは、アーマチュアとは逆方向、すなわち、筒状軸の他方端側から嵌められて筒状軸と一体になって回転する。筒状軸の凸部は、アーマチュアとロータとの間に位置する。
【0049】
上記構成を有する本願発明によれば、筒状軸の凸部を間にして、アーマチュア側の部品と、ロータ側との部品とに分けているので、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチに比べて、スラスト方向のがたつきが半減し、ひいては、ラジアル方向のがたつきも半減する。さらに、筒状軸の凸部を境にして一方側に位置する部品の集合体と、他方側に位置する部品の集合体とを別工程で用意でき、しかも筒状軸への装着にあたってはどちらの集合体を先に組み込んでも良いので、組立作業における融通性を発揮できる。
【0050】
好ましくは、電磁クラッチは、筒状軸上に外嵌され、電磁コイルが組み込まれるフィールドコアと、筒状軸と前記フィールドコアとの間に配置され、円周方向に沿って均一な肉厚を有する金属製のスリーブとをさらに備える。金属製スリーブは、ロータの径方向に延びる壁に当接している。
【0051】
ロータの径方向に延びる壁は、筒状軸に対してきれいな垂直平面を形成している。それに加えて、金属製スリーブが円周方向に沿って均一な肉厚を有しているので、上記構成によれば、金属製スリーブとロータとの間で十分な接触面積を確保できる。金属製スリーブは、筒状軸に対して固定されていないが、励磁時にはロータに吸着固定されるので、動作に支障をきたさない。
【0052】
好ましくは、フィールドコアの両端に軸受が組み込まれており、この軸受が金属製スリーブ上に位置するように構成する。このようにすれば、フィールドコアの内周面(たとえば、ボビンの内周面)が筒状軸に対する軸受面とならないので、内周面を形成する材料の材質を低価格のものに変更することができる。
【0053】
一つの好ましい実施形態では、電磁クラッチは、筒状軸上に外嵌される動力伝達用の歯車と、アーマチュアと歯車との間に配置されるアーマチュアカバーとを備える。アーマチュアカバーは、アーマチュアの外周を取り囲みフィールドコアの外周上に達する筒状部を有し、アーマチュアおよび歯車とともに回転する。アーマチュアカバーは、歯車とフィールドコアとの間の隙間から内部への異物の侵入を防止することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
図5および図6を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、図5および図6に示した電磁クラッチ100と、図1および図2に示した電磁クラッチ1とを比較すると、フィールドコア2、弾性部材8、アーマチュア9、歯車10、ブッシング13およびアーマチュアカバー14に関しては、両者に実質的な差はない。したがって、これらの要素の説明を省略する。
【0055】
図5および図6に示す電磁クラッチ100が図1および図2に示す電磁クラッチ1と異なっている点は、筒状軸20、ロータ30および金属製スリーブ40の形状にある。これらの相違点について、詳しく説明する。
【0056】
回転軸を受け入れる筒状軸20は、長さ方向の中間領域に径方向に突出して延在している径方向突出凸部21を有する。この径方向突出凸部21を除いて、筒状軸20は単純円筒形状である。すなわち、図1および図2に示した筒状軸5と異なり、両端にフランジ部が形成されておらず、またその外周面に係合部を有していない。筒状軸20の両端には、止め輪11および52を受け入れるためのリング溝23および24が形成されている。筒状軸20の径方向突出凸部21のうち、ロータ30側に向く面には、ロータ30に係合するための係合凸部22が設けられている。
【0057】
ロータ30は、径方向に延在する径方向延在壁31を有する。径方向延在壁31の中心には、筒状軸20を挿通させるための中央穴32が設けられている。図6に示すように、中央穴32の外周縁には、筒状軸20の径方向突出凸部21にも受けられている係合凸部22に係合する係合凹部33が設けられる。係合凸部22と係合凹部33とが係合関係になることによって、ロータ30と筒状軸20とは一体となって回転する。
【0058】
金属製スリーブ40は、図2に示したスリーブ6と異なり、その内周面が滑らかな単純円筒形状を有している。言い換えれば、金属製スリーブ40は、円周方向に沿って均一な肉厚を有している。金属製スリーブ40は、筒状軸20に対して固定されていないが、励磁時にはロータ30に吸着固定されてロータ30と一体になって回転するので、動作に支障をきたすようなことはない。
【0059】
円周方向に沿って均一な厚みを有する金属製スリーブ40の端面は、ロータ30の径方向延在壁31に広い面積で安定して当接する。したがって、安定した磁気回路が形成され、十分な磁力伝達を図ることができる。
【0060】
フィールドコア2の両端の中央開口には、軸受50および軸受51が装着される。これら軸受50および51は、金属製スリーブ40上に位置する。軸受50および51を備えることにより、フィールドコア2の内周面を筒状軸20に対する軸受面にする必要は無くなる。したがって、フィールドコア2の内周面を構成する材料の材質、例えば、ボビンの材質を低価格のものに変更することができる。
【0061】
電磁クラッチ100の組み立てに際しては、筒状軸20の径方向突出凸部21を境にして一方側に位置する集合体と、他方側に位置する集合体とを別工程で用意できる。具体的には、歯車10と、アーマチュアカバー14と、アーマチュア9と、弾性部材8と、ブッシング13とを含む集合体を用意し、この集合体を筒状軸20の一方端側から筒状軸上に装着する。装着後、止め輪11を筒状軸20のリング溝23に嵌める。
【0062】
また、ロータ30と、金属製スリーブ40と、軸受50,51と、フィールドコア2とを含む集合体を用意し、この集合体を筒状軸20の他方端側から筒状軸上に装着する。装着後、止め輪52を筒状軸20のリング溝24に嵌める。
【0063】
上記のように、2つの集合体を別個に用意することができ、しかも2つの集合体の筒状軸への装着の順序に制約はないので、組み立ての融通性を大いに発揮することができる。
【0064】
図5に示す完成状態では、筒状軸20上の部品は、径方向突出凸部21を間にして、アーマチュア側の部品とロータ側の部品とに分かれている。したがって、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチと比べて、スラスト方向のがたつきが半減し、ひいては、ラジアル方向のがたつきも半減する。
【0065】
さらに、金属製スリーブ40が2個の軸受50,51によって支持されるので、ラジアル方向のがたつきを一層低減できる。こうして、本発明の実施形態によれば、エアーギャップ部の隙間が均一になるので、空転トルクを改善できる。
【0066】
筒状軸20が径方向突出凸部21を有することにより、筒状軸20上の部品の固定のための強度を分散できる。すなわち、筒状軸20の両端における抜け止め構造または固定構造を例えば樹脂製の止め輪11および52で実現することが可能になる。
【0067】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して説明したが、図示した構造は例示的なものである。以上に説明した実施形態、または図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願と同一の出願人によってなされた特願2001−137455号に開示された電磁クラッチを示す断面図である。
【図2】図1の電磁クラッチの分解斜視図である。
【図3】図1の電磁クラッチにおける金属製スリーブとロータとの当接部分の拡大断面図である。
【図4】図1の電磁クラッチの金属製スリーブの横断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の断面図である。
【図6】図5の電磁クラッチの分解斜視図である。
【符号の説明】
2 フィールドコア、3 電磁コイル、4 ボビン、8 弾性部材、9 アーマチュア、10 歯車、11 止め輪、13 ブッシング、14 アマチュアカバー、20 筒状軸、21 径方向突出凸部、22 係合凸部、23,24 リング溝、30 ロータ、31 径方向延在壁、32 中央穴、33 係合凹部、40 金属製スリーブ、50,51 軸受、 52 止め輪。
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば複写機の給紙機構等に使用される電磁クラッチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回転駆動される入力回転要素の駆動力を選択的に伝達する電磁クラッチは、例えば、特許第3061620号公報に開示されている。
【0003】
上記公報に開示された電磁クラッチは、回転軸を受け入れる筒状軸と、電磁コイルを内部に組み込み筒状軸上に配置されたフィールドコアと、筒状軸とともに回転するようにされたロータと、ロータに対面し筒状軸上に回転自在に配置されたアーマチュアと、筒状軸上に回転自在に配置されアーマチュアと一体になって回転する歯車とを備える。
【0004】
電磁クラッチを組み立てる際には、フィールドコア、ロータ、アーマチュアおよび歯車の全てを筒状軸の一方端側から筒状軸上に嵌めるようにしている。
【0005】
フィールドコア内に組み込まれた電磁コイルに通電すると、磁気的吸引力によりアーマチュアが弾性部材の弾性力に抗してロータに吸着する。それにより、アーマチュアとロータとが接続状態となり、歯車に伝達される動力が筒状軸に伝達される。一方、電磁コイルへの通電を停止すると、弾性部材の弾性力によってアーマチュアがロータから離れ、アーマチュアとロータとの接続状態が解除される。それにより、歯車からの動力は、筒状軸に伝達されなくなる。このように、電磁コイルへの通電を制御することにより、歯車に伝達された動力を筒状軸に伝達したり、切り離したりすることができる。
【0006】
【特許文献1】
特許第3061620号公報(段落0026〜0045、図2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許第3061620号公報に開示された電磁クラッチでは、筒状軸上に配置される全ての構成部品を筒状軸の一方端側から嵌めるようにしている。そのため、各部品のクリアランスまたは遊びが累積し、スラスト方向のがたつき、ひいてはラジアル方向のがたつきをも引き起こすという課題が指摘される。そのため、励磁状態の空転時に、ラジアル方向のがたつき等によりエアーギャップ部が不均一な隙間となるため、空転トルクの変動が大きくなってしまう。
【0008】
さらに、特許第3061620号公報に開示された電磁クラッチでは、組み立て順序が制約されるので組み立て作業の融通性がない。
【0009】
さらに、特許第3061620号公報に開示された電磁クラッチでは、防塵対策がなされていないので、電磁クラッチ内にトナー等の異物が入り込むおそれがある。電磁クラッチ内に入り込んだ異物はアーマチュアやロータの表面に付着する。そのため、該異物の存在によりアーマチュアがロータに付着したまま離れなくなり、電磁クラッチが機能しなくなるという問題が生じる可能性がある。
【0010】
本件出願と同一の出願人は、平成13年5月8日に特願2001−137455号として、防塵対策を施した電磁クラッチを提案した。この電磁クラッチを図1および図2に示している。
【0011】
図1に示すように、電磁クラッチ1は、フィールドコア2と、筒状軸5と、スリーブ6と、ロータ7と、弾性部材8と、アーマチュア9と、歯車10と、ブッシング13と、アーマチュアカバー14とを備える。
【0012】
筒状軸5は、たとえばプラスチック等により構成され、その内部に複写機におけるタイミングローラの支持軸のような被動軸の一端が挿入される。筒状軸5の外周上には金属製のスリーブ6が取付けられる。スリーブ6の外周上に、フィールドコア2か取付けられる。フィールドコア2内には電磁コイル3およびそれを覆うボビン4が組込まれる.上記のフィールドコア2、電磁コイル3およびスリーブ6が、ロータ7にアーマチュア9を吸着させる電磁力を発生させる電磁手段として機能する。
【0013】
筒状軸5の外周上には、該筒状軸5と一体となってその周方向に回転するロータ7が取付けられる。このロータ7は、金属材料に絞り加工を施して形成された一体のプレス成形品により構成される。ロータ7は、その内周に軸方向に延びる円筒壁部分7bを有する。このロータ7の円筒壁部分7bが、筒状軸5の周方向に該筒状軸5の外周と係合する係合部7a(図2参照)を含む。
【0014】
ロータ7と隣り合う位置にブッシング13、弾性部材8およびアーマチュア9が筒状軸5に対し回転自在に外嵌される。ロータ7とアーマチュア9間には間隙Dが存在し、上記の電磁手段による電磁力でアーマチュア9がロータ7に吸着することにより間隙Dはゼロとなる。
【0015】
フィールドコア2と歯車10との間にアーマチュアカバー14を設置する。アーマチュアカバー14は、筒状軸5に対し回転自在に外嵌され、フィールドコア2と歯車10との間から電磁クラッチ1の内部にトナー等の異物が侵入するのを防止する機能を果たす。
【0016】
上記のアーマチュアカバー14を設けることにより、歯車10とフィールドコア2間の隙間から電磁クラッチ1の内部にトナー等の異物が侵入するのを抑制することができ、アーマチュア9やロータ7の表面(特にアーマチュア9とロータ7の対向する表面)にトナー等の異物が付着するのを抑制することができる。それにより、アーマチュア9とロータ7とが付着して電磁クラッチ1が機能しなくなるという事態を回避することができる。
【0017】
アーマチュアカバー14は、図1に示すようにアーマチュア9の外周を取り囲み、筒状軸5の軸方向に延び、フィールドコア2の外周上に達する筒状部を有する。このようにアーマチュアカバー14が筒状部を有するので、この筒状部で歯車10とフィールドコア2間の隙間を閉じることができ、上述のように歯車10とフィールドコア2間の隙間から電磁クラッチ1の内部に異物が侵入するのを抑制することができる。
【0018】
また、図1に示すように、アーマチュアカバー14は、アーマチュア9背面の凸部9bを受け入れる凹部14aと、ブッシング13の一部を受け入れる内周の凹部14bと、背面に歯車10と係合する凸部14dとを有する。
【0019】
上記の凹部14a,14bや凸部14dを設けることにより、アーマチュアカバー14は筒状軸5の周方向にブッシング13、アーマチュア9および歯車10と係合することとなる。そのため、アーマチュァカバー14はブッシング13、アーマチュア9および歯車10とともに筒状軸5の周方向に回転し、アーマチュア9と歯車10間で動力を伝達することができる。
【0020】
筒状軸5の周方向にアーマチュアカバー14と係合する係合部を有し、アーマチュアカバー14と一体となって回転する歯車10が筒状軸5に外嵌される。この歯車10は、動力伝達部材としての機能を有し、歯車10に伝達された動力が選択的に筒状軸5に伝達される。それにより、被動軸となる筒状軸5が選択的に回転操作される。
【0021】
なお、歯車10の代わりにプーリやスプロケット等の動力伝達部材を採用することも考えられる。筒状軸5の一端には、シム12を介して止め輪11が取付けられる。これらにより、ブッシング13、弾性部材8、アーマチュア9、アーマチュアカバー14および歯車10の位置決めおよび抜け防止が行なわれる。
【0022】
次に、図2を用いて、図1に示す電磁クラッチの組立方法および各要素の構造についてより詳しく説明する。
【0023】
図2を参照して、筒状軸5の一端にフランジ部5bを設け、他端側に溝部5cを設ける。また、フランジ部5b側に位置する筒状軸5の外表面に係合部5aを設ける。この場合であれば、4つの凸部が間隔をあけて形成されているが、スリーブ6の内周と係合して一体的に回転可能なものであれば係合部5aの形状および数は任意に選択可能である。
【0024】
スリーブ6の内周には、上述の係合部5aと係合する溝部6aが設けられる。溝部6aは、フランジ部5b側の端部からロータ7側の端部に延びている。溝部6a内に係合部5aが挿入される。それにより、筒状軸5とスリーブ6を筒状軸5の周方向に係合させることができる。上記の構造を有するスリーブ6を、筒状軸5の溝部5c側から外周に装着する。
【0025】
次に、スリーブ6の外周上にボビン4を有するフィールドコア2を取付ける。このフィールドコア2も、溝部5c側から装着する。それにより、フィールドコア2の端面とフランジ部5bとが係合する。
【0026】
次に、ロータ7を筒状軸5に外嵌する。このとき、ロータ7の内周には係合部5aを受け入れる溝部(係合部)7aが設けられており、ロータ7を溝部5c側から筒状軸5の外周面に装着する際に、筒状軸5の係合部5aを溝部7a内に挿入する。
【0027】
ブッシング13は、たとえばプラスチックにより構成され、筒状部13bと、その外周に3つの凸部13aとを有する。筒状部13bは、筒状軸5の係合部5aと溝部5c間に位置する筒状軸5の外周面上に取付けられ、ロータ7とアーマチェア9間の間隙Dを調整する機能を有する。
【0028】
具体的には、筒状部13bの軸方向の長さを調整することにより、上記の間隙Dを調整することができる。それにより、ロータ7とアーマチュア9間の間隙を調整するという面倒な作業が不要となるばかりでなく、間隙Dのばらつきをも低減することができる。
【0029】
凸部13aは、ブッシング13の径方向外方に突出し、ロータ7側に押圧部13cを有する。押圧部13cは、凸部13aの一端を筒状部13bの周方向に拡張することにより形成され、弾性部材8と筒状軸5の軸方向に係合し、弾性部材8をアーマチュア9側に押圧固定する機能を有する。上記の構造のブッシング13を、その一方の端面がロータ7と当接するように筒状軸5に外嵌する。
【0030】
弾性部材8は、たとえばステンレス鋼等の金属製であり、環状の形状を有する。この弾性部材8は、外周から径方向外方に突出する3つの弾性部8aと、内周に3つの切欠部8bとを有する。弾性部8aは、筒状軸5の軸方向にアーマチュア9と係合し、アーマチュア9をロータ7から引離す方向に付勢する。切欠部8bは、ブッシング13外周の凸部13aを受け入れ、この凸部13aと筒状軸5の周方向に係合する。かかる構造の弾性部材8を筒状軸5に外嵌する。このとき、切欠部8bにブッシング13の凸部13aを嵌入する。
【0031】
金属製のアーマチュア9は、内周に3つの凹部9aを有し、環状の形状を有する。凹部9aは、ロータ7側の端面において弾性部8aと対応した位置に設けられ、弾性部8aを受け入れる。それにより、アーマチェア9と弾性部8aを筒状軸5の周方向に係合させることができる。
【0032】
アーマチュア9における歯車10側の端面(背面)には、筒状軸5の軸方向に突出する凸部(図1における9b)が設けられる。この凸部がアーマチュアカバー14に設けられる凹部14aに嵌め込まれ、アーマチュア9とアーマチュアカバー14とが筒状軸5の周方向に係合する。アーマチュア9の外周に、3つの切欠部9cを設ける。
【0033】
上記の構造のアーマチュア9を筒状軸5に外嵌する。このとき、弾性部材8の弾性部8aをアーマチュア9の凹部9a内に収容する。
【0034】
アーマチュアカバー14は、たとえばプラスチック製であり、略環状の形状を有する。アーマチュアカバー14の筒状部は、アーマチュアカバー14の外周から筒状軸5の軸方向に延びる。この筒状部内にアーマチュア9を受け入れる。アーマチュアカバー14におけるアーマチュア9側の表面には、3つの凹部14a,14bと、3つの凸部14cとをそれぞれ設ける。
【0035】
このアーマチュアカバー14を筒状軸5に外嵌する。このとき凹部14aに図1に示すアーマチュア9背面の3つの凸部9bを受け入れ、凹部14bにブッシング13外周の凸部13aを受け入れ、凸部(係合部)14cをアーマチュア9外周の3つの切欠部9cに受け入れる。この凸部14cと切欠部9cによっても、アーマチュア9とアーマチュアカバー14とを筒状軸5の周方向に係合させることができる。
【0036】
歯車10は、たとえばプラスチック製であり、一方の端面に3つの凹部(係合部)10aと、外周に多数の歯を有する。この歯車10を筒状軸5に外嵌する。このとき、凹部10a内に、図1に示すアーマチュアカバー14背面の凸部(係合部)14dを受け入れる。
【0037】
それにより、凸部14dおよび凹部10aを介して、アーマチェアカバー14と歯車10とが、筒状軸5の周方向に係合し、ブッシング13、弾性部材8、アーマチュア9、アーマチュアカバー14および歯車10を、筒状軸5の周方向に直接あるいは間接的に係合させることができる。その結果、ブッシング13、弾性部材8、アーマチュア9、アーマチュアカバー14および歯車10を、筒状軸5の周方向に一体的に回転させることができる。
【0038】
上記のようにして歯車10までを筒状軸5に装着した後、シム12および止め輪11を筒状軸5に取付ける。シム12の数は任意に選択可能であるが、このシム12によって、筒状軸5の軸方向における歯車10等の位置調整を行なえる。また、止め輪11は、筒状軸5外周の溝部5cに取付けられ、各要素の抜けを防止する。
【0039】
以上のように、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチでは、各要素を筒状軸5に一方向から単純に外嵌するだけでよいので、かしめ作業やねじ止め作業が一切不要となる。しかしながら、特許第3061620号公報に開示された電磁クラッチと同様に、各部品のクリアランスや遊びが累積されるので、スラスト方向のがたつきやラジアル方向のがたつきは避けられない。
【0040】
図3は、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチにおけるロータ7と金属製スリーブ6との当接部分を拡大して示している。磁気回路を形成するために、金属製スリーブ6の端面とロータ7の円筒壁部分7bの端面とは、当接した状態に保たれなければならない。
【0041】
前述したように、ロータ7はプレス加工によって所定の形状に形作られている。プレス加工であるがゆえに、ロータ7の円筒壁部分7bの先端の端面は、どうしてもだれてしまい、きれいな垂直面にならない。また、円筒壁部分7bの先端部のバリを除去するために、角部を面取りすることもある。
【0042】
上記のようなロータ7の円筒壁部分7bのだれや面取りのために、円筒壁部分7bの端面と金属製スリーブ6の端面との接触面積が小さくなり、十分な磁気回路を形成することができなくなる。そのため、磁束が十分に流れず、磁力の伝達が不十分となる。
【0043】
さらに、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチでは、図4に示すように、金属製スリーブ6と筒状軸5とを一体的に回転させるために、金属製スリーブ6の内面に溝部6aを設けていた。同様に、ロータ7の円筒壁部分7bの内面にも、係合部(溝部)7aを設けていた。これらの溝部6a,7aの存在は、金属製スリーブ6とロータ7との接触面積を小さくする一因となる。
【0044】
本発明の目的は、スラスト方向のがたつきおよびラジアル方向のがたつきを小さくすることのできる電磁クラッチを提供することである。
【0045】
本発明の他の目的は、組立作業の融通性を発揮することのできる電磁クラッチを提供することである。
【0046】
本発明のさらに他の目的は、ロータと金属製スリーブとの接触面積を確保し、磁力を十分に伝達することのできる電磁クラッチを提供することである。
【0047】
本発明のさらに他の目的は、トナー等の異物が内部に入り込むことを抑制できる電磁クラッチを提供することである。
【0048】
【課題を解決するための手段】
この発明に従った電磁クラッチは、筒状軸と、アーマチュアと、ロータとを備える。筒状軸は、回転軸を受け入れるものであり、長さ方向の中間領域に径方向に突出した凸部を有する。アーマチュアは、筒状軸の一方端側から嵌められて筒状軸上で回転自在である。ロータは、アーマチュアとは逆方向、すなわち、筒状軸の他方端側から嵌められて筒状軸と一体になって回転する。筒状軸の凸部は、アーマチュアとロータとの間に位置する。
【0049】
上記構成を有する本願発明によれば、筒状軸の凸部を間にして、アーマチュア側の部品と、ロータ側との部品とに分けているので、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチに比べて、スラスト方向のがたつきが半減し、ひいては、ラジアル方向のがたつきも半減する。さらに、筒状軸の凸部を境にして一方側に位置する部品の集合体と、他方側に位置する部品の集合体とを別工程で用意でき、しかも筒状軸への装着にあたってはどちらの集合体を先に組み込んでも良いので、組立作業における融通性を発揮できる。
【0050】
好ましくは、電磁クラッチは、筒状軸上に外嵌され、電磁コイルが組み込まれるフィールドコアと、筒状軸と前記フィールドコアとの間に配置され、円周方向に沿って均一な肉厚を有する金属製のスリーブとをさらに備える。金属製スリーブは、ロータの径方向に延びる壁に当接している。
【0051】
ロータの径方向に延びる壁は、筒状軸に対してきれいな垂直平面を形成している。それに加えて、金属製スリーブが円周方向に沿って均一な肉厚を有しているので、上記構成によれば、金属製スリーブとロータとの間で十分な接触面積を確保できる。金属製スリーブは、筒状軸に対して固定されていないが、励磁時にはロータに吸着固定されるので、動作に支障をきたさない。
【0052】
好ましくは、フィールドコアの両端に軸受が組み込まれており、この軸受が金属製スリーブ上に位置するように構成する。このようにすれば、フィールドコアの内周面(たとえば、ボビンの内周面)が筒状軸に対する軸受面とならないので、内周面を形成する材料の材質を低価格のものに変更することができる。
【0053】
一つの好ましい実施形態では、電磁クラッチは、筒状軸上に外嵌される動力伝達用の歯車と、アーマチュアと歯車との間に配置されるアーマチュアカバーとを備える。アーマチュアカバーは、アーマチュアの外周を取り囲みフィールドコアの外周上に達する筒状部を有し、アーマチュアおよび歯車とともに回転する。アーマチュアカバーは、歯車とフィールドコアとの間の隙間から内部への異物の侵入を防止することができる。
【0054】
【発明の実施の形態】
図5および図6を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、図5および図6に示した電磁クラッチ100と、図1および図2に示した電磁クラッチ1とを比較すると、フィールドコア2、弾性部材8、アーマチュア9、歯車10、ブッシング13およびアーマチュアカバー14に関しては、両者に実質的な差はない。したがって、これらの要素の説明を省略する。
【0055】
図5および図6に示す電磁クラッチ100が図1および図2に示す電磁クラッチ1と異なっている点は、筒状軸20、ロータ30および金属製スリーブ40の形状にある。これらの相違点について、詳しく説明する。
【0056】
回転軸を受け入れる筒状軸20は、長さ方向の中間領域に径方向に突出して延在している径方向突出凸部21を有する。この径方向突出凸部21を除いて、筒状軸20は単純円筒形状である。すなわち、図1および図2に示した筒状軸5と異なり、両端にフランジ部が形成されておらず、またその外周面に係合部を有していない。筒状軸20の両端には、止め輪11および52を受け入れるためのリング溝23および24が形成されている。筒状軸20の径方向突出凸部21のうち、ロータ30側に向く面には、ロータ30に係合するための係合凸部22が設けられている。
【0057】
ロータ30は、径方向に延在する径方向延在壁31を有する。径方向延在壁31の中心には、筒状軸20を挿通させるための中央穴32が設けられている。図6に示すように、中央穴32の外周縁には、筒状軸20の径方向突出凸部21にも受けられている係合凸部22に係合する係合凹部33が設けられる。係合凸部22と係合凹部33とが係合関係になることによって、ロータ30と筒状軸20とは一体となって回転する。
【0058】
金属製スリーブ40は、図2に示したスリーブ6と異なり、その内周面が滑らかな単純円筒形状を有している。言い換えれば、金属製スリーブ40は、円周方向に沿って均一な肉厚を有している。金属製スリーブ40は、筒状軸20に対して固定されていないが、励磁時にはロータ30に吸着固定されてロータ30と一体になって回転するので、動作に支障をきたすようなことはない。
【0059】
円周方向に沿って均一な厚みを有する金属製スリーブ40の端面は、ロータ30の径方向延在壁31に広い面積で安定して当接する。したがって、安定した磁気回路が形成され、十分な磁力伝達を図ることができる。
【0060】
フィールドコア2の両端の中央開口には、軸受50および軸受51が装着される。これら軸受50および51は、金属製スリーブ40上に位置する。軸受50および51を備えることにより、フィールドコア2の内周面を筒状軸20に対する軸受面にする必要は無くなる。したがって、フィールドコア2の内周面を構成する材料の材質、例えば、ボビンの材質を低価格のものに変更することができる。
【0061】
電磁クラッチ100の組み立てに際しては、筒状軸20の径方向突出凸部21を境にして一方側に位置する集合体と、他方側に位置する集合体とを別工程で用意できる。具体的には、歯車10と、アーマチュアカバー14と、アーマチュア9と、弾性部材8と、ブッシング13とを含む集合体を用意し、この集合体を筒状軸20の一方端側から筒状軸上に装着する。装着後、止め輪11を筒状軸20のリング溝23に嵌める。
【0062】
また、ロータ30と、金属製スリーブ40と、軸受50,51と、フィールドコア2とを含む集合体を用意し、この集合体を筒状軸20の他方端側から筒状軸上に装着する。装着後、止め輪52を筒状軸20のリング溝24に嵌める。
【0063】
上記のように、2つの集合体を別個に用意することができ、しかも2つの集合体の筒状軸への装着の順序に制約はないので、組み立ての融通性を大いに発揮することができる。
【0064】
図5に示す完成状態では、筒状軸20上の部品は、径方向突出凸部21を間にして、アーマチュア側の部品とロータ側の部品とに分かれている。したがって、特願2001−137455号に開示された電磁クラッチと比べて、スラスト方向のがたつきが半減し、ひいては、ラジアル方向のがたつきも半減する。
【0065】
さらに、金属製スリーブ40が2個の軸受50,51によって支持されるので、ラジアル方向のがたつきを一層低減できる。こうして、本発明の実施形態によれば、エアーギャップ部の隙間が均一になるので、空転トルクを改善できる。
【0066】
筒状軸20が径方向突出凸部21を有することにより、筒状軸20上の部品の固定のための強度を分散できる。すなわち、筒状軸20の両端における抜け止め構造または固定構造を例えば樹脂製の止め輪11および52で実現することが可能になる。
【0067】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して説明したが、図示した構造は例示的なものである。以上に説明した実施形態、または図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願と同一の出願人によってなされた特願2001−137455号に開示された電磁クラッチを示す断面図である。
【図2】図1の電磁クラッチの分解斜視図である。
【図3】図1の電磁クラッチにおける金属製スリーブとロータとの当接部分の拡大断面図である。
【図4】図1の電磁クラッチの金属製スリーブの横断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の断面図である。
【図6】図5の電磁クラッチの分解斜視図である。
【符号の説明】
2 フィールドコア、3 電磁コイル、4 ボビン、8 弾性部材、9 アーマチュア、10 歯車、11 止め輪、13 ブッシング、14 アマチュアカバー、20 筒状軸、21 径方向突出凸部、22 係合凸部、23,24 リング溝、30 ロータ、31 径方向延在壁、32 中央穴、33 係合凹部、40 金属製スリーブ、50,51 軸受、 52 止め輪。
Claims (4)
- 回転軸を受け入れるものであり、長さ方向の中間領域に径方向に突出した凸部を有する筒状軸と、
前記筒状軸の一方端側から嵌められて前記筒状軸上で回転自在なアーマチュアと、
前記筒状軸の他方端側から嵌められて前記筒状軸と一体になって回転するロータとを備え、
前記凸部は、前記アーマチュアと前記ロータとの間に位置する、電磁クラッチ。 - 前記筒状軸上に外嵌され、電磁コイルが組み込まれるフィールドコアと、
前記筒状軸と前記フィールドコアとの間に配置され、円周方向に沿って均一な肉厚を有する金属製のスリーブとをさらに備え、
前記金属製スリーブは、前記ロータの径方向に延びる壁に当接している、請求項1に記載の電磁クラッチ。 - 前記フィールドコアの両端に軸受が組み込まれており、
前記軸受が前記金属製スリーブ上に位置する、請求項2に記載の電磁クラッチ。 - 前記筒状軸上に外嵌される動力伝達用の歯車と、
前記アーマチュアと前記歯車との間に配置され、前記アーマチュアの外周を取り囲み前記フィールドコアの外周上に達する筒状部を有し、前記アーマチュアおよび前記歯車とともに回転するアーマチュアカバーを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の電磁クラッチ。
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Legal Events
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