JP2004131825A - 水素吸蔵合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶面の半価幅を特定することにより、高性能の、特に残存率の高い水素吸蔵合金を提供する。
【解決手段】β相の(101)面の半価幅が0.1〜0.5°である水素吸蔵合金。半価幅がこの範囲内にある水素吸蔵合金は、微粉化残存率、密度などの性能が良好で、特にツインロール法で製造される水素吸蔵合金はその傾向が顕著になる。
【選択図】 図3
【解決手段】β相の(101)面の半価幅が0.1〜0.5°である水素吸蔵合金。半価幅がこの範囲内にある水素吸蔵合金は、微粉化残存率、密度などの性能が良好で、特にツインロール法で製造される水素吸蔵合金はその傾向が顕著になる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵合金に関し、より詳細には均質かつ高密度でニッケル−MH(Metal Hydride)二次電池用負極活物質、H−EV(EV:電気自動車)、P−EV、電子工具用等に使用できる水素吸蔵合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ニッケル−カドミウム蓄電池に代わる高容量アルカリ蓄電池として、CaCu5型構造をとる水素吸蔵合金を負極に用いたニッケル−水素蓄電池(二次電池)が注目され、民生用二次電池からH−EV用添加として幅広く利用されている。
この水素吸蔵合金は、現在では希土類系の混合物であるMm(ミッシュメタル)とNi又はこれらにAl、Mn、Coを添加して製造される。
このMm−Ni−Mn−Al−Co合金は、La系のそれに比べて比較的安価な材料で負極を構成でき、サイクル寿命が長く、過充電時の発生ガスによる内圧上昇が少ない密閉型ニッケル水素蓄電池を得ることができることから、電極材料として広く用いられている。
【0003】
これらの合金を含む多くの水素吸蔵合金は、通常鋳型鋳造(MC)法で製造されている。
ニッケル−水素電池において、負極活物質である水素吸蔵合金の特性向上が重要であるが、その手段の一つとして急冷凝固による均質性の向上が一般に知られている。
例えばツインロール法は2本のロール間に合金の溶湯を滴下し急冷することにより水素吸蔵合金を製造する方法である(特許文献1参照)。このツインロール法により製造された水素吸蔵合金は、通常のロール鍛造法により製造された水素吸蔵合金と比較して結晶子の配向が少なく、前記2本のロール間で飛散される間に冷却されるため、冷却面の方向に規則性がない。このような水素吸蔵合金は初期の電極活性や放電特性、更に微粉化特性が優れている。
【0004】
鋳型鋳造法により得られた水素吸蔵合金は、一般にツインロール法で得られる水素吸蔵合金より均質性が劣ると認識されている。
しかしながら従来から物性を特定することにより高性能の水素吸蔵合金を得る試みが為されており(例えば特許文献2参照)、特定の性能を有する水素吸蔵合金が得られている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−294954号公報
【特許文献2】
特開2002−75347号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の水素吸蔵合金は、製法によってその特性にばらつきが生じており、対象とする水素吸蔵合金の物性をある特定範囲内に限定することにより、要求される性能を有する水素吸蔵合金を得ることが行われている。
本発明者らは、比較的測定が容易な水素吸蔵合金の物性と該水素吸蔵合金の性能の関係を鋭意検討して本発明に到達したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、β相の(101)面の半価幅が0.1〜0.5°であることを特徴とする水素吸蔵合金である。
【0008】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、各種製法で得られる水素吸蔵合金の充電状態(特に150〜250mAh/g充電時)のX線回折チャートにおける(101)面半価幅(°)とその性能の関係を調べたところ、該半価幅が0.1〜0.4°であるときにその水素吸蔵合金が良好な性質を有することを見出した。
X線回折における半価幅とは、各ピークの最大値の半分に相当する値の幅を意味し、単位は°で表す。この半価幅はピークが鋭いか幅広いかを表す指標となり、値が小さいほどピークが鋭く、値が大きいほどピークが幅広くなる。
【0009】
本発明の水素吸蔵合金で充電状態の半価幅を0.1〜0.5°に限定する理由は、半価幅が0.5°を超えると水素吸蔵合金の性能、例えば微粉化残存率が低下するからであり、又半価幅が0.1°未満の水素吸蔵合金は実質的に製造できないからである。
微粉化残存率とは、合金粉末を所定粒度で分級し平均粒径(D50)が所定値になるように調整し、この粉末をPCT装置にて水素の吸脱蔵を所定回数、例えば10回繰り返した後、回収して再び平均粒径(D50)を測定し、両平均粒径(D50)を使用して次式から算出される値である。
(微粉化残存率)=D50(10サイクル後)/D50(10サイクル前)×100
【0010】
水素吸蔵合金は数種の結晶面を有し、対象とする半価幅は(101)面のX線回折パターンの半価幅とする。
水素吸蔵合金は、一定温度に保ったまま水素圧を上げていくと、金属中に水素が溶解し、水素吸蔵量は増大する。水素圧が比較的低い間は金属内に水素原子が溶解し固溶体を生成する。この水素の固溶した金属相をα相と呼ぶ。水素吸蔵量が更に増加すると、α相の水素吸蔵合金が水素ガスと反応して水素化物相、β相が生成され始め、α相とβ相が混在する領域になり、水素吸蔵量が更に増加するとβ相単独となる。
【0011】
本発明の対象とする水素吸蔵合金は特に限定されないが、CaCu5構造を有するAB5型水素吸蔵合金、例えばMmNiMnAlCo合金等の使用が望ましい。又その製造方法も特に限定されず、ツインロール法(TR)及び鋳型鋳造法(MC)等で製造できるが、ツインロール法で製造することが好ましい。アズキャスト法(ac)で製造される水素吸蔵合金はβ相(101)面の半価幅が0.5°を超えることが多く、アズキャスト法は本発明の水素吸蔵合金の製造方法としては適切でない。
又本発明の水素吸蔵合金の形状は限定されず、粉状、板状、棒状、塊状、鱗片状等の各種形状に成形できる。
更に本発明の水素吸蔵合金の用途も限定されず、前述した二次電池や電動工具の他に、ヒートポンプ、太陽・風力などの自然エネルギーの貯蔵、水素貯蔵、アクチュエータなどの用途に使用できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係わる水素吸蔵合金の表面処理の実施例を記載するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0013】
[実施例1]
Mm(ミッシュメタル)、Al、Mn、Co、Ni及びCuを合金組成でMmAl0.3 Mn0.45Co0.4 Ni3.95になるように、各水素合金原料を秤量、混合し、その混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10−2〜10−3Paまで真空状態にした後、アルゴンガス雰囲気中で加熱溶解した後、段差をつけて逆回転させてある2つのCu製の水冷ロール間に鋳湯し、溶湯をロール間に冷却飛散させ、ツインロール法で鋳造を行った。この合金をアルゴンガス雰囲気中、1030℃で3時間熱処理を行い、鱗片状の水素吸蔵合金を得た。得られた鱗片状の水素吸蔵合金の厚さは約300μmであった。
【0014】
得られた合金を粉砕し、粒径を−20μmに調整した後、X線回折測定を行った。格子定数の測定では珪素を内部標準物質として用い、最小二乗法により精密化を行った。得られたX線回折パターンは図1▲1▼の通りであった。
この合金の軸長(a軸=4.997Å、c軸=4.057Åで、(002)面の半価幅は0.151°であった。
【0015】
又X線回折とは別に、X線回折前の合金を粉砕し、粒径を+20/−53μmの粒度幅に調整した後、250℃の水素加圧状態で活性化処理を行い、水素の吸蔵・脱離を2回繰り返した後、45℃で水素吸蔵特性(PCT曲線)を測定した。そのPCT曲線を図2に示した(−○−)。指標として下記の数値を用いた。
(1) 水素吸蔵量(H/M0.5):圧力0.5MPa時のH/M
(2) プラトー圧力(P0.5):H/M=0.5での平衡圧力
(3) 平坦性指標(Pf):Log<(H/M=0.2での圧力)/(H/M=0.6での圧力)>
この合金の平坦性指標(Pf)は0.210であった。
【0016】
この合金を密閉容器中に収容した(充電容量0mAh/g)。この容器内に加圧水素を徐々に供給し、供給水素量と内圧から吸蔵水素量を算出し、充電容量が、それぞれ0、30、70mAh/gである水素吸蔵合金(α相)を作製した。
充電容量が130mAh/gになると、α相とβ相が混在する状態になるため、両相を分離し、充電容量が130mAh/gであるα相水素吸蔵合金とβ相水素吸蔵合金を作製した。
同様にして充電容量が、それぞれ180、230、280mAh/gである水素吸蔵合金(β相)を作製した。
これらの各水素吸蔵合金のX線回折パターンを測定し、(101)面の半価幅を計測した。その結果を図3(α相が−●−、β相が−○−)及び表1に示した。
【0017】
[実施例2]
Mm、Al、Mn、Co、Ni及びCuを合金組成でMmAl0.3 Mn0.45Co0.4 Ni3.95になるように、各水素合金原料を秤量、混合し、その混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10−2〜10−3Paまで真空状態にした後、アルゴンガス雰囲気中で加熱溶解した後、1500℃でCu製の水冷鋳型に注湯して鋳型鋳造を行った。更に、この合金をアルゴンガス雰囲気中で、1030℃で3時間熱処理を行い、塊状の水素吸蔵合金を得た。
得られた合金を粉砕し、粒径を−20μmに調整した後、X線回折測定を行った。得られたX線回折パターンは図1▲2▼の通りであった。
この合金の軸長(a軸=4.998Å、c軸=4.057Åで、(002)面の半価幅は0.177°であった。この鋳型鋳造法(MC)で得られた水素吸蔵合金の軸長はツインロール法で得られた水素吸蔵合金とほぼ同じであったが、半価幅は0.026°大きかった。
【0018】
次いで実施例1と同様にして、これらの水素吸蔵合金の水素吸蔵特性(PCT曲線)を測定し、そのPCT曲線を図2に示した(−●−)。
この合金の平坦性指標(Pf)は0.3030であり、ツインロール法で得られた水素吸蔵合金とは大きな差があった。
次いで実施例1と同様にして、充電容量が、それぞれ0、30、70、130、180、230及び280mAh/gである水素吸蔵合金の充電状態のサンプルを作製した。
実施例1と同様にして、これらの各水素吸蔵合金のX線回折パターンを測定し、(101)面の半価幅を計測した。その結果を図3(α相が−◆−、β相が−◇−)及び表1に示した。
【0019】
[比較例1]
Mm、Al、Mn、Co、Ni及びCuを合金組成でMmAl0.3 Mn0.45Co0.4 Ni3.95になるように、各水素合金原料を秤量、混合し、その混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10−2〜10−3Paまで真空状態にした後、アルゴンガス雰囲気中で加熱溶解した後、アズキャスト法で水素吸蔵合金を作製した。
【0020】
次いで実施例1と同様にして、充電容量が、それぞれ0、30、70及び130mAh/gである水素吸蔵合金(α相)、及び130、180、230及び280mAh/gである水素吸蔵合金(β相)を作製した。
実施例1と同様にして、これらの各水素吸蔵合金のX線回折パターンを測定し、(101)面の最大ピークの半価幅を計測した。その結果を図3(α相が−■−、β相が−□−)及び表1に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
[実施例4]
表2に示した組成の異なる7種類のMmNia−Mnb−Alc−Cod合金
(▲1▼〜▲7▼)を、表2に示した熱処理温度及び鋳造方法で作製した。それぞれのβ相の(101)面の半価幅は表2に示す通りであり、合金▲1▼〜▲4▼の半価幅が0.5°以下で、合金▲5▼〜▲7▼の半価幅は0.5°を超えていた。
各合金に300サイクルの水素吸蔵−脱離を行った後の微粉化残存率を測定したところ表2に示す通りであり、半価幅が0.5°以下の合金▲1▼〜▲4▼では微粉化残存率が65%以上であり、半価幅が0.5°を超える合金▲5▼〜▲7▼では微粉化残存率が65%未満であり、水素吸蔵合金の性能を示す重要な指標である微粉化残存率に相違が観察された。なお表2中のB/Aはミッシュメタル(Mm)と他の金属の比を意味する。
本実施例における合金(▲1▼〜▲7▼)のβ相の(101)面の半価幅と微粉化残存率の関係を図4に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】
本発明は、β相の(101)面の半価幅が0.1〜0.5°であることを特徴とする水素吸蔵合金(請求項1)である。
半価幅が0.1〜0.5°である水素吸蔵合金は、微粉化残存率、密度などの性能が良好で、水素吸蔵合金はそのX線回折パターンが通常測定されるため、特に手間を掛けることなく、簡単な測定のみで得られる水素吸蔵合金の性能を予測し、高性能水素吸蔵合金を得ることができるようになる。
この傾向は、充電容量が150〜250mAh/gである場合(請求項2)に特に顕著である。
又半価幅が上記範囲内にあり、かつツインロール法で作製された水素吸蔵合金(請求項3)は、特定範囲内の半価幅による効果と優れた製法であるツインロール法の効果が相俟って更に優れた性能を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び2で得られた水素吸蔵合金のX線回折パターンの図。
【図2】実施例1及び2で得られたPCT曲線を示すグラフ。
【図3】実施例1、2及び3で得られた水素吸蔵合金の充電容量とX線回折パターンの最大ピークの半価幅との関係を示すグラフ。
【図4】実施例4における水素吸蔵合金のβ相の(101)面の半価幅と微粉化残存率の関係を示すグラフ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵合金に関し、より詳細には均質かつ高密度でニッケル−MH(Metal Hydride)二次電池用負極活物質、H−EV(EV:電気自動車)、P−EV、電子工具用等に使用できる水素吸蔵合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ニッケル−カドミウム蓄電池に代わる高容量アルカリ蓄電池として、CaCu5型構造をとる水素吸蔵合金を負極に用いたニッケル−水素蓄電池(二次電池)が注目され、民生用二次電池からH−EV用添加として幅広く利用されている。
この水素吸蔵合金は、現在では希土類系の混合物であるMm(ミッシュメタル)とNi又はこれらにAl、Mn、Coを添加して製造される。
このMm−Ni−Mn−Al−Co合金は、La系のそれに比べて比較的安価な材料で負極を構成でき、サイクル寿命が長く、過充電時の発生ガスによる内圧上昇が少ない密閉型ニッケル水素蓄電池を得ることができることから、電極材料として広く用いられている。
【0003】
これらの合金を含む多くの水素吸蔵合金は、通常鋳型鋳造(MC)法で製造されている。
ニッケル−水素電池において、負極活物質である水素吸蔵合金の特性向上が重要であるが、その手段の一つとして急冷凝固による均質性の向上が一般に知られている。
例えばツインロール法は2本のロール間に合金の溶湯を滴下し急冷することにより水素吸蔵合金を製造する方法である(特許文献1参照)。このツインロール法により製造された水素吸蔵合金は、通常のロール鍛造法により製造された水素吸蔵合金と比較して結晶子の配向が少なく、前記2本のロール間で飛散される間に冷却されるため、冷却面の方向に規則性がない。このような水素吸蔵合金は初期の電極活性や放電特性、更に微粉化特性が優れている。
【0004】
鋳型鋳造法により得られた水素吸蔵合金は、一般にツインロール法で得られる水素吸蔵合金より均質性が劣ると認識されている。
しかしながら従来から物性を特定することにより高性能の水素吸蔵合金を得る試みが為されており(例えば特許文献2参照)、特定の性能を有する水素吸蔵合金が得られている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−294954号公報
【特許文献2】
特開2002−75347号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の水素吸蔵合金は、製法によってその特性にばらつきが生じており、対象とする水素吸蔵合金の物性をある特定範囲内に限定することにより、要求される性能を有する水素吸蔵合金を得ることが行われている。
本発明者らは、比較的測定が容易な水素吸蔵合金の物性と該水素吸蔵合金の性能の関係を鋭意検討して本発明に到達したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、β相の(101)面の半価幅が0.1〜0.5°であることを特徴とする水素吸蔵合金である。
【0008】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、各種製法で得られる水素吸蔵合金の充電状態(特に150〜250mAh/g充電時)のX線回折チャートにおける(101)面半価幅(°)とその性能の関係を調べたところ、該半価幅が0.1〜0.4°であるときにその水素吸蔵合金が良好な性質を有することを見出した。
X線回折における半価幅とは、各ピークの最大値の半分に相当する値の幅を意味し、単位は°で表す。この半価幅はピークが鋭いか幅広いかを表す指標となり、値が小さいほどピークが鋭く、値が大きいほどピークが幅広くなる。
【0009】
本発明の水素吸蔵合金で充電状態の半価幅を0.1〜0.5°に限定する理由は、半価幅が0.5°を超えると水素吸蔵合金の性能、例えば微粉化残存率が低下するからであり、又半価幅が0.1°未満の水素吸蔵合金は実質的に製造できないからである。
微粉化残存率とは、合金粉末を所定粒度で分級し平均粒径(D50)が所定値になるように調整し、この粉末をPCT装置にて水素の吸脱蔵を所定回数、例えば10回繰り返した後、回収して再び平均粒径(D50)を測定し、両平均粒径(D50)を使用して次式から算出される値である。
(微粉化残存率)=D50(10サイクル後)/D50(10サイクル前)×100
【0010】
水素吸蔵合金は数種の結晶面を有し、対象とする半価幅は(101)面のX線回折パターンの半価幅とする。
水素吸蔵合金は、一定温度に保ったまま水素圧を上げていくと、金属中に水素が溶解し、水素吸蔵量は増大する。水素圧が比較的低い間は金属内に水素原子が溶解し固溶体を生成する。この水素の固溶した金属相をα相と呼ぶ。水素吸蔵量が更に増加すると、α相の水素吸蔵合金が水素ガスと反応して水素化物相、β相が生成され始め、α相とβ相が混在する領域になり、水素吸蔵量が更に増加するとβ相単独となる。
【0011】
本発明の対象とする水素吸蔵合金は特に限定されないが、CaCu5構造を有するAB5型水素吸蔵合金、例えばMmNiMnAlCo合金等の使用が望ましい。又その製造方法も特に限定されず、ツインロール法(TR)及び鋳型鋳造法(MC)等で製造できるが、ツインロール法で製造することが好ましい。アズキャスト法(ac)で製造される水素吸蔵合金はβ相(101)面の半価幅が0.5°を超えることが多く、アズキャスト法は本発明の水素吸蔵合金の製造方法としては適切でない。
又本発明の水素吸蔵合金の形状は限定されず、粉状、板状、棒状、塊状、鱗片状等の各種形状に成形できる。
更に本発明の水素吸蔵合金の用途も限定されず、前述した二次電池や電動工具の他に、ヒートポンプ、太陽・風力などの自然エネルギーの貯蔵、水素貯蔵、アクチュエータなどの用途に使用できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係わる水素吸蔵合金の表面処理の実施例を記載するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0013】
[実施例1]
Mm(ミッシュメタル)、Al、Mn、Co、Ni及びCuを合金組成でMmAl0.3 Mn0.45Co0.4 Ni3.95になるように、各水素合金原料を秤量、混合し、その混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10−2〜10−3Paまで真空状態にした後、アルゴンガス雰囲気中で加熱溶解した後、段差をつけて逆回転させてある2つのCu製の水冷ロール間に鋳湯し、溶湯をロール間に冷却飛散させ、ツインロール法で鋳造を行った。この合金をアルゴンガス雰囲気中、1030℃で3時間熱処理を行い、鱗片状の水素吸蔵合金を得た。得られた鱗片状の水素吸蔵合金の厚さは約300μmであった。
【0014】
得られた合金を粉砕し、粒径を−20μmに調整した後、X線回折測定を行った。格子定数の測定では珪素を内部標準物質として用い、最小二乗法により精密化を行った。得られたX線回折パターンは図1▲1▼の通りであった。
この合金の軸長(a軸=4.997Å、c軸=4.057Åで、(002)面の半価幅は0.151°であった。
【0015】
又X線回折とは別に、X線回折前の合金を粉砕し、粒径を+20/−53μmの粒度幅に調整した後、250℃の水素加圧状態で活性化処理を行い、水素の吸蔵・脱離を2回繰り返した後、45℃で水素吸蔵特性(PCT曲線)を測定した。そのPCT曲線を図2に示した(−○−)。指標として下記の数値を用いた。
(1) 水素吸蔵量(H/M0.5):圧力0.5MPa時のH/M
(2) プラトー圧力(P0.5):H/M=0.5での平衡圧力
(3) 平坦性指標(Pf):Log<(H/M=0.2での圧力)/(H/M=0.6での圧力)>
この合金の平坦性指標(Pf)は0.210であった。
【0016】
この合金を密閉容器中に収容した(充電容量0mAh/g)。この容器内に加圧水素を徐々に供給し、供給水素量と内圧から吸蔵水素量を算出し、充電容量が、それぞれ0、30、70mAh/gである水素吸蔵合金(α相)を作製した。
充電容量が130mAh/gになると、α相とβ相が混在する状態になるため、両相を分離し、充電容量が130mAh/gであるα相水素吸蔵合金とβ相水素吸蔵合金を作製した。
同様にして充電容量が、それぞれ180、230、280mAh/gである水素吸蔵合金(β相)を作製した。
これらの各水素吸蔵合金のX線回折パターンを測定し、(101)面の半価幅を計測した。その結果を図3(α相が−●−、β相が−○−)及び表1に示した。
【0017】
[実施例2]
Mm、Al、Mn、Co、Ni及びCuを合金組成でMmAl0.3 Mn0.45Co0.4 Ni3.95になるように、各水素合金原料を秤量、混合し、その混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10−2〜10−3Paまで真空状態にした後、アルゴンガス雰囲気中で加熱溶解した後、1500℃でCu製の水冷鋳型に注湯して鋳型鋳造を行った。更に、この合金をアルゴンガス雰囲気中で、1030℃で3時間熱処理を行い、塊状の水素吸蔵合金を得た。
得られた合金を粉砕し、粒径を−20μmに調整した後、X線回折測定を行った。得られたX線回折パターンは図1▲2▼の通りであった。
この合金の軸長(a軸=4.998Å、c軸=4.057Åで、(002)面の半価幅は0.177°であった。この鋳型鋳造法(MC)で得られた水素吸蔵合金の軸長はツインロール法で得られた水素吸蔵合金とほぼ同じであったが、半価幅は0.026°大きかった。
【0018】
次いで実施例1と同様にして、これらの水素吸蔵合金の水素吸蔵特性(PCT曲線)を測定し、そのPCT曲線を図2に示した(−●−)。
この合金の平坦性指標(Pf)は0.3030であり、ツインロール法で得られた水素吸蔵合金とは大きな差があった。
次いで実施例1と同様にして、充電容量が、それぞれ0、30、70、130、180、230及び280mAh/gである水素吸蔵合金の充電状態のサンプルを作製した。
実施例1と同様にして、これらの各水素吸蔵合金のX線回折パターンを測定し、(101)面の半価幅を計測した。その結果を図3(α相が−◆−、β相が−◇−)及び表1に示した。
【0019】
[比較例1]
Mm、Al、Mn、Co、Ni及びCuを合金組成でMmAl0.3 Mn0.45Co0.4 Ni3.95になるように、各水素合金原料を秤量、混合し、その混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10−2〜10−3Paまで真空状態にした後、アルゴンガス雰囲気中で加熱溶解した後、アズキャスト法で水素吸蔵合金を作製した。
【0020】
次いで実施例1と同様にして、充電容量が、それぞれ0、30、70及び130mAh/gである水素吸蔵合金(α相)、及び130、180、230及び280mAh/gである水素吸蔵合金(β相)を作製した。
実施例1と同様にして、これらの各水素吸蔵合金のX線回折パターンを測定し、(101)面の最大ピークの半価幅を計測した。その結果を図3(α相が−■−、β相が−□−)及び表1に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
[実施例4]
表2に示した組成の異なる7種類のMmNia−Mnb−Alc−Cod合金
(▲1▼〜▲7▼)を、表2に示した熱処理温度及び鋳造方法で作製した。それぞれのβ相の(101)面の半価幅は表2に示す通りであり、合金▲1▼〜▲4▼の半価幅が0.5°以下で、合金▲5▼〜▲7▼の半価幅は0.5°を超えていた。
各合金に300サイクルの水素吸蔵−脱離を行った後の微粉化残存率を測定したところ表2に示す通りであり、半価幅が0.5°以下の合金▲1▼〜▲4▼では微粉化残存率が65%以上であり、半価幅が0.5°を超える合金▲5▼〜▲7▼では微粉化残存率が65%未満であり、水素吸蔵合金の性能を示す重要な指標である微粉化残存率に相違が観察された。なお表2中のB/Aはミッシュメタル(Mm)と他の金属の比を意味する。
本実施例における合金(▲1▼〜▲7▼)のβ相の(101)面の半価幅と微粉化残存率の関係を図4に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】
本発明は、β相の(101)面の半価幅が0.1〜0.5°であることを特徴とする水素吸蔵合金(請求項1)である。
半価幅が0.1〜0.5°である水素吸蔵合金は、微粉化残存率、密度などの性能が良好で、水素吸蔵合金はそのX線回折パターンが通常測定されるため、特に手間を掛けることなく、簡単な測定のみで得られる水素吸蔵合金の性能を予測し、高性能水素吸蔵合金を得ることができるようになる。
この傾向は、充電容量が150〜250mAh/gである場合(請求項2)に特に顕著である。
又半価幅が上記範囲内にあり、かつツインロール法で作製された水素吸蔵合金(請求項3)は、特定範囲内の半価幅による効果と優れた製法であるツインロール法の効果が相俟って更に優れた性能を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び2で得られた水素吸蔵合金のX線回折パターンの図。
【図2】実施例1及び2で得られたPCT曲線を示すグラフ。
【図3】実施例1、2及び3で得られた水素吸蔵合金の充電容量とX線回折パターンの最大ピークの半価幅との関係を示すグラフ。
【図4】実施例4における水素吸蔵合金のβ相の(101)面の半価幅と微粉化残存率の関係を示すグラフ。
Claims (3)
- β相の(101)面の半価幅が0.1〜0.5°であることを特徴とする水素吸蔵合金。
- 充電容量が150〜250mAh/gである請求項1に記載の水素吸蔵合金。
- ツインロール法で製造された請求項1又は2に記載の水素吸蔵合金。
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- 2002-10-11 JP JP2002299136A patent/JP2004131825A/ja active Pending
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