JP2004131421A - 芳香族カーボネート類の製造方法 - Google Patents
芳香族カーボネート類の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004131421A JP2004131421A JP2002297361A JP2002297361A JP2004131421A JP 2004131421 A JP2004131421 A JP 2004131421A JP 2002297361 A JP2002297361 A JP 2002297361A JP 2002297361 A JP2002297361 A JP 2002297361A JP 2004131421 A JP2004131421 A JP 2004131421A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- reactor
- heat recovery
- carbonate
- heat
- vapor
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Landscapes
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
- Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
Abstract
【解決手段】反応器中で、触媒の存在下にジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物とをエステル交換反応させてアルキルアリールカーボネート及び/又はジアリールカーボネートを製造する方法において、反応器に供給される原料液と反応器から発生したベーパーとが間接的に熱交換し得るように構成された第1熱回収部が反応器の気相部に直接に接続された構造を有する反応装置を使用し、第1熱回収部において供給される原料液を上記ベーパーの凝縮熱で加熱しながら、反応器中でエステル交換反応を行わせる芳香族カーボネート類の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族カーボネート類の製造方法に関する。詳しくは本発明は、芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートとからエステル交換反応によりアルキルアリールカーボネート及び/又はジアリ一ルカーボネートを効率よく連続的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物とをエステル交換反応させて、アルキルアリールカーボネートを製造したり、アルキルアリールカーボネートからジアリールカーボネートを製造したりすることはよく知られている。
【0003】
これらの代表的な反応は次式(1)〜(3)で表される。
【0004】
【化1】
R1−OCOO−R2+ArOH→R1−OCOO−Ar+R2OH (1)
R1−OCOO−Ar+ArOH→Ar−OCOO−Ar+R1OH (2)
2R1−OCOO−Ar→Ar−OCOO−Ar+R1−OCOO−R1 (3)
(式中、R1及びR2は脂肪族炭化水素基または脂環族炭化水素基を示し、同じものでも異なるものでもよい。Arは芳香族炭化水素基を示す。)
こうしたエステル交換反応は平衡反応であり、求核性の強い置換基が求核性の弱い置換基に置き換わる方向に進みやすい。原料に低級脂肪族炭化水素基を有するジアルキルカーボネートを使用し、芳香族ヒドロキシ化合物にフェノールを使用するような場合、特に式(1)及び(2)の反応はその原則に反する反応であるために非常に大きく原系側に偏っており、反応速度も一般に遅い。アルカリ金属の水酸化物のような一般的なエステル交換触媒を使用すると脱炭酸を伴う次式(4)のような反応が優勢となり、反応収率が著しく低下してしまう。
【0005】
【化2】
R1−OCOO−R2+ArOH→R1−O−Ar+R2OH+CO2 (4)
芳香族カーボネート類を生成する反応を効率よく進めるために、従来から高活性な触媒の探索がなされてきており、種々の触媒が提案されているが、特に有機錫化合物(例えば特開昭54−48733号公報)や有機チタン化合物(例えば特開昭57−183745号公報)の錯体触媒を使用することにより上記の反応を進行させることが可能である。
【0006】
さらに効率よく芳香族カーボネート類を製造するには、生成物を速やかに除去して平衡をできるだけ生成系側に移す必要がある。副生する脂肪族アルコールを効率よく除去する試みとしては、共沸剤によって留去する方法(例えば特開昭54−48732号公報、特開昭61−291545号公報)、モレキュラーシーブで吸着除去する方法(例えば特開昭58−185536号公報)、浸透気化法または蒸気気化法を利用した方法(例えば特開平5−125021号公報)などが提案されているが、いずれも工業規模のスケールアップが無理であったり、プロセスが複雑になるなどの欠点があり、工業的方法としては適当なものではなかった。
【0007】
上記式(1)のような平衡反応の場合、完全混合型の反応器では平衡組成以上の原料転化率は得られない。そこで反応器を直列多段として各段から生成物を除去し、転化率を段階的に上げながら反応させる方法が有効である。同様の理由で生成物を連続的に抜き出すことのできる反応蒸留が効果的であることが知られている。例えば特公平7−91236号公報では、連続多段蒸留塔に芳香族ヒドロキシ化合物を塔上部から液状で、ジアルキルカーボネートを塔下部からガス状で供給しながら向流で接触させ、副生するアルコールとジアルキルカーボネートとを含む低沸点成分を塔上部より抜き出しながら芳香族カーボネートを含む高沸点成分を塔下部より抜き出している。
【0008】
この方法は原理的には比較的簡素なプロセスで反応を進行させることができるものの、当該反応は速度が遅く、しかも液相反応であるため、連続多段蒸留塔では十分な反応時間を確保することが困難である。反応時間を確保するために付加的な反応器を付設する方法も考案されているが(例えば特開平4−224547号公報、特開平4−230242号公報)、結果的に設備は複雑で高価なものになってしまう。
【0009】
反応蒸留と同じ効果が得られるものとして、2個以上の直列に連結された攪拌槽で気液を連続的に向流接触させながら反応を行う方法(例えば特開平6−234707号公報、特許文献1参照)や、気泡塔反応器又は少なくとも2つの気泡塔のカスケードにおいて反応を行う方法(例えば特開平6−298700号公報)も提案されている。これらの方法では反応時間を自由に設計できる利点があるものの、いずれも反応段数が少ないと十分な転化率が得られず、段数が多いと設備費用が高くなるという欠点がある。
【0010】
一般に反応蒸留型の反応設備では多段反応を行い、下段又は後段で発生するベーパーと上段又は前段から来る反応液とを連続的に向流接触させながら反応及び気液分離を行うので、下段又は後段で与えたエネルギーを効率よく上段又は前段に伝えられる利点がある。その一方で、低沸点生成物(この場合は脂肪族アルコール)は上段又は前段に行くほど濃縮され、高沸点生成物(この場合は芳香族カーボネート)は下段又は後段に行くほど濃縮されてくるのに加え、原料比率が連続的に変化するので、反応のコントロールが難しく、反応器の設計と運転には困難を伴う。
【0011】
生成する脂肪族アルコールを除去しながら反応を行う限りにおいては反応蒸留型の設備である必要はない。ただし生成した脂肪族アルコールとともに低沸点原料のジアルキルカーボネートが大量に留去されるため、ベーパーの持つエネルギーを有効に回収しながら低沸点原料をリサイクルする工夫をしないとエネルギー効率が極端に悪化する。
【0012】
多段反応を行いながら設備費用を抑制するために、反応器の液相部を隔壁で区切り、ガス相を連続相として副生した脂肪族アルコールを含む軽沸留分を反応器の上部から気相状態で連続的に抜き出しながら反応を行う方法(例えば特開平8−188558号公報、特許文献2参照)が提案されている。この方法では、液相は各反応区画で温度や組成を変えることができ、多段反応とすることができるものの、各反応区画のガス相は連続しているためにベーパー組成に応じた適切な分離回収処理やエネルギー回収ができないという欠点がある。
【0013】
【特許文献1】
特開平6−234707号公報
【特許文献2】
特開平8−188558号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
このような、従来のエステル交換反応によるアルキルアリールカーボネート及び/又はジアリールカーボネートの製造方法においては、反応を高選択率、高効率で進行させることが難しく、複雑な工程と多大な設備費用が必要であるという問題点があった。
本発明は、触媒の存在下にジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物とからアルキルアリールカーボネート及び/又はジアリールカーボネートを製造する方法として、上記したような欠点がなく、高い選択率で効率よく連続的に製造する方法を提供することを課題としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、このエステル交換反応は液相における平衡反応であり、低沸点生成物の脂肪族アルコールを効率よく抜き出すことで反応の進行を促進することができること、特定構造の反応装置を使用して、反応ベーパーの有する熱を間接的な熱交換により回収することにより、低沸点副生物の濃縮による反応の遅延という反応蒸留の欠点を回避しながら、エネルギー効率を向上させることができること、を見出して、本発明に到達した。
【0016】
即ち、本発明の要旨は、反応器中で、触媒の存在下にジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物とをエステル交換反応させてアルキルアリールカーボネート及び/又はジアリールカーボネートを製造する方法において、反応器に供給される原料液と反応器から発生したベーパーとが間接的に熱交換し得るように構成された第1熱回収部が反応器の気相部に直接に接続された構造を有する反応装置を使用し、第1熱回収部において供給される原料液を上記ベーパーの凝縮熱で加熱しながら、反応器中でエステル交換反応を行わせることを特徴とする芳香族カーボネート類の製造方法、に存する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の反応原料であるジアルキルカーボネートは、次式(5)で表されるものである。
【0018】
【化3】
Rl−OCOO−R2 (5)
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R1及びR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。)
具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどが挙げられる。これらのなかで特に好ましく用いられるものは、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0019】
本発明のもう一方の反応原料である芳香族ヒドロキシ化合物は、次式(6)で表されるものである。
【0020】
【化4】
ArOH (6)
(式中、Arは炭素数6〜20の芳香族基を表す。)
具体的には、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、o−、m−、又はp−エチルフェノール、o−、m−、又はp−ブロピルフェノール、o−、m−、又はp−メトキシフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、o−、m−、又はp−クロロフェノール、1−ナフトール、2−ナフトールなどが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、フェノールである。
【0021】
本発明方法の生成物の一つであるアルキルアリールカーボネートは次式(7)で表されるものである。
【0022】
【化5】
R3−OCOO−Ar (7)
(式中、R3は式(5)におけるR1又はR2と同じものを表す。また、Arは式(6)におけるのと同じものを表す。)
具体的には、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、プロピルフェニルカーボネート、ブチルフェニルカーボネート、及びヘキシルフェニルカーボネートのようなアルキルフェニルカーボネートがあり、さらにメチルトルイルカーボネート又はエチルトルイルカーボネート、メチルキシリルカーボネート又はエチルキシリルカーボネート、メチルクロロフェノール又はエチルクロロフェノールなどが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、メチルフェニルカーボネート及びエチルフェニルカーボネートである。
【0023】
本発明方法の生成物の一つであるジアリールカーボネートは、次式(8)で表されるものである。
【0024】
【化6】
Ar−OCOO−Ar (8)
(式中、Arは式(6)におけるのと同じものを表す。)
具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトルイルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートなどが挙げられる。この中で特に好ましいのはジフェニルカーボネートである。
【0025】
本発明で用いられる触媒は、ジアルキルカーボネート又はアルキルアリールカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物とのエステル交換反応及びアルキルアリールカーボネートの不均化反応を促進するものであれば、いかなるものでも使用することができる。例えば、次のようなものが挙げられる。
(a)Bu2SnO、Ph2SnO、(C8H17)2SnO、Bu2Sn(OPh)2、Bu2Sn(OCH3)2、Bu2Sn(OEt)2、Bu2Sn(OPh)O(OPh)SnBu2などのスズ化合物、
(b)PbO、Pb(OPh)2、Pb(OCOCH3)2などの鉛化合物、
(c)AlX3、TiX3、TiX4、ZnX2、FeX3、SnX4、VX5等(ここでXはハロゲン、アセトキシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基を表す。)等のルイス酸化合物、具体例として、AlCl3、Al(OPh)3、TiCl4、Ti(OPh)4、Ti(OEt)4、Ti(OPr)4、Ti(OBu)4、
(d)Zr(acac)4、ZrO2等のジルコニウム化合物(ここでacacはアセチルアセトン配位子を表す)、
(e)CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、CuI2、Cu(OAc)2などの銅化合物(ここでAcはアセチル基を表す)。
【0026】
上記の中でも特に好ましいものはスズ化合物又はチタン化合物である。
本発明方法は、反応器の気相部(通常、上部)に直接に接続された間接熱交換による熱回収部を備えた反応装置を使用することを特徴とする。
図1は、このような反応器と熱回収部とを組み合わせた反応装置の1例を示す模式的断面図である。図1において、Dは反応器であり、これは完全混合槽でも、また、内部を隔壁等で区切ってプラグ流反応器に近い特性を備えたものでもよい。内部を隔壁で区切った場合にも反応ベーパーは一括して取り出すので、気相は自由に流通できる形式のものが好ましい。
反応器では、エステル交換反応の進行及び生成する脂肪族アルコールの蒸発による除去のためにエネルギーが必要である。そのために反応器には内部コイルや外部ジャケット、或いは外付けのリボイラーを設置して加熱する方式とするのが好ましい。
【0027】
また、必要に応じて反応器内の反応液を攪拌混合することも好ましい。この場合の攪拌装置としてはインペラーを用いる機械的な攪拌機、オリフィスミキサー、ベンチュリーミキサー、ノズルミキサー、ジェット攪拌機、エアリフト型攪拌機、エジェクター型攪拌機等が使用できる。
反応液は反応器の底部又は側面に設置された液出口ラインL3から抜き出される。
Aは第1熱回収部(熱交換部)であって、ここでは反応器で発生したベーパーと反応器に供給される原料液とが隔壁を隔てて間接的に接触してベーパーの有する熱の回収が行われる。反応器で発生したベーパーは第1熱回収部内のベーパー流路内を上昇しながら、ラインL1から供給された原料液で冷却されて一部凝縮する。一方、原料液はベーパーの凝縮熱で加熱されてから流路L2を経て反応器に供給される。
【0028】
第1熱回収部Aの構造は、原料液がコイル状のチューブ内を流通し、ベーパーがその外側を通過する形式や、ベーパーが垂直のチューブ内を上昇し、原料液がその外側を流通する形式、あるいはスパイラル状の隔壁を隔てて両者が熱交換する形式等のものを使用することができる。
第1熱回収部Aの熱回収効率は、原料液及びベーパーの温度、伝熱面積及び伝熱係数に依存するが、熱回収効率が十分に高くならずに第1熱回収部Aを通過したベーパーがなお高いエネルギーを有している場合がある。その場合は第1熱回収部に加えて第2の熱回収部を設置してさらにエネルギー回収を行うこともできる。図1のCは、このような第2熱回収部(熱交換部)であり、通常、原料液以外の低温の流体をラインL5から導入してベーパーの凝縮熱によって加熱し、加熱された流体をL6から取り出すことができる。第2熱回収部の構造としては第1熱回収部と同様のものが使用できる。
【0029】
設備内に適当な低温流体がない場合は図1のように水を加熱して水蒸気とし、これを別の設備の加熱源として利用してもよい。なお、反応器に供給される原料液が十分に低温度である場合には、原料液を先ず第2熱回収部に供給して第1の熱交換を行わせ、温度の上昇した原料液を次いで第1熱回収部に供給して第2の熱交換を行わせるようにすることもできる。
【0030】
第2熱回収部Cでは、第1熱回収部Aを通過したベーパーがL5から供給された低温流体で冷却され、その一部が凝縮する。この凝縮液は第1熱回収部Aを通過するベーパーより低温なので、そのまま落下すると第1熱回収部Aを上昇するベーパーと接触して該ベーパーの温度を低下させ、熱回収効率を低下させる。そのため、第2熱回収部Cの下部(第1熱回収部Aの上部)に集液部(図1のB)を設置して、そこで上記凝縮液を集め、この凝縮液が第1熱回収部A部ベーパーと接触することなく反応器Dに戻るようにする。
【0031】
図2及び図3は、集液部Bの構造の例を示す模式図である。図2及び図3において、集液部Bを構成する捕集部aはベーパーの上昇方向に対してスリット状に設置され、第2熱回収部Cから落下する凝縮液を捕集面a1で捕集し、かつ第1熱回収部Aから上昇するベーパーの流れは妨げないように配置されている。捕集部aの下部には穴a2が設けられ、そこから落下する凝縮液は受容部bの樋b1で受けられる。受容部bで集められた液は、下方に伸びたパイプb2を通じて反応器Dへ送られる。あるいはパイプb2を外部へ導き、ラインL1から供給する原料液とともに第1熱回収部Aで予熱した後、反応器Dへ送ってもよい。
【0032】
本発明方法においては、必ずしも溶媒を使用する必要はないが、反応に不活性な溶媒、例えばエーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などを使用することができる。
本発明方法における反応温度は、通常、50〜300℃、好ましくは100〜250℃である。反応温度が高いほど反応速度は向上するが、アルキル芳香族エーテル等の副生物が増加する傾向にあり、余り高くすることは好ましくない。反応器内の圧力は使用する反応原料の種類、反応器内の組成等によっても異なるが、通常、10〜3000kPaの範囲の加圧ないし減圧下で行うことができる。特に好ましい範囲は、50〜2000kPa(0.5〜20atm)である。
【0033】
触媒は、通常、原料液に溶解して反応器に供給される。触媒の量は、供給される反応原料に対して通常、0.0001〜10モル%、好ましくは0.001〜5モル%である。少なすぎると反応速度が不十分となり、多すぎるとアルキル芳香族エーテルなどの副生量が増加する傾向がある。反応器での液の平均滞留時間は、その他の反応条件にもよるが、通常、0.1〜20時間、好ましくは0.3〜10時間である。
【0034】
反応器からラインL3を経て抜き出される液相は、蒸留などの精製手段に付して、目的とするアルキルアリールカーボネート及び/又はジアリールカーボネートを取得することができる。
【0035】
【実施例】
次に実施例により本発明の具体的態様をより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示す反応装置を使用して、ジメチルカーボネートとフェノールとのエステル交換反応を行った。
ジメチルカーボネート、フェノール及び触媒からなる原料液をラインL1から連続的に供給した。原料液は、熱交換部Aにおいて反応器Dから上昇するベーパーで加熱されながらL2を通って反応器Dへ送られる。熱交換部Aとしてはスパイラル型の熱交換器を使用した。反応液はラインL3から、反応器内の液面を一定に保持しながら連続的に抜き出した。上昇するベーパーは熱交換部Aで原料液を加熱して一部凝縮しながら集液部Bの間隙を抜けて熱交換部Cに達する。熱交換部Cとしては熱交換部Aと同じくスパイラル型の熱交換器を使用した。熱交換部CではL5から供給された水を加熱してL6より水蒸気を発生させながら一部凝縮し、非凝縮分はL4から系外へ抜き出した。熱交換部Cで凝縮した液は集液部Bで集め、熱交換部Aを上昇するベーパーと接触することなく反応器Dへ戻した。
【0036】
ラインL1からジメチルカーボネート90重量部/hr、フェノール94重量部/hr及び触媒としてのジブチル酸化錫2.5重量部/hrを供給した。原料液の温度は60℃とした。反応器Dとしては容積0.23m3(0.55mφ*1.0mH)のオートクレーブを使用し、液面は70%で操作した。反応器の圧力を400kPa、反応温度を226℃とし、反応液の滞留時間が1時間となる条件で8時間連続運転をおこなった。
【0037】
熱交換部Aの上部におけるベーパー温度は200℃で、ラインL2における原料液の温度は180℃であった。
熱交換部Cには300kPa、100℃の温水を供給し、ベーパーの熱で水蒸気を発生させた。この水蒸気は実プラントで加熱源として有効利用される。熱交換部Cの出口L4におけるベーパー温度は150℃であった。
【0038】
L3から抜き出した反応液中には80.3重量部/hrのフェノールが残存しており、L4から抜き出したベーパー中にも0.5重量部/hrのフェノールが含まれていた。フェノールの転化率は14.2%であった。
反応器に供給した熱量と熱交換部Cで回収した熱量とからこの操作に要した熱量を求め、フェノール1モルを反応させるのに要した熱量を計算すると、1.35*105cal/molであった。
【0039】
[比較例1]
実施例1で使用したオートクレーブと同じサイズの蒸発缶の上部に、0.55m径の棚段式蒸留部を設置した構造の反応蒸留方式の反応装置を使用した。棚段部には各段の液深が3cmとなるシーブトレイ8段を、段間隔30cmで設置した。この蒸留塔の2段目トレイ上に60℃のフェノール94重量部/hrとジブチル酸化錫2.5重量部/hrを供給した。また、60℃のジメチルカーボネート90重量部/hrを予熱器で蒸発させ、ベーパー状で7段目トレイ上に供給した。操作圧力300kPa、還流比0.01で8時間連続運転したときの塔底温度は226℃、塔頂温度は185℃、コンデンサーの凝縮温度は118℃であった。
この操作において、実施例1と同じく、フェノール1モルを反応させるのに要した熱量を計算すると、1.69*105cal/molであった。
なお、反応蒸留方式では、理論的にはさらにエネルギー効率を上げることが可能であるが、そのためには各段の液滞留時間を大きくすることが必要である。液滞留時間を大きくするために液深を大きくすると圧力損失が増大する。本発明者の試算では0.55mの塔径で実施例1と同じ効率を得ようとすると、各段14cmの液深が必要である。高圧蒸留塔のシーブトレイ上の液深は通常、2.5〜10cm程度であり、14cmの液深での運転は困難である。
また、塔径を大きくして液滞留時間を大きくしようとするとベーパーの偏流が起きやすくなり、建設費も増大する。本発明者の試算では、3cmの液深で実施例と同じ効率を得ようとすると、1.2mの塔径が必要である。
【0040】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、反応器に直接に接続された間接熱交換部で反応器に供給したエネルギーの一部を回収し、エネルギー効率を向上させることにより、複雑な工程を経ることなく、高い選択率で効率よく連続的に芳香族カーボネート類を製造することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に使用される反応装置の一例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明方法に使用される反応装置の集液部の構造の一例を示す模式図である。
【図3】本発明方法に使用される反応装置の集液部の構造の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
A:第1熱回収部(熱交換部)
B:集液部
C:第2熱回収部(熱交換部)
D:反応器
L1:原料液供給ライン
L3:生成物抜き出しライン
L5:低温流体供給ライン
Claims (6)
- 反応器中で、触媒の存在下にジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物とをエステル交換反応させてアルキルアリールカーボネート及び/又はジアリールカーボネートを製造する方法において、反応器に供給される原料液と反応器から発生したベーパーとが間接的に熱交換し得るように構成された第1熱回収部が反応器の気相部に直接に接続された構造を有する反応装置を使用し、第1熱回収部において供給される原料液を上記ベーパーの凝縮熱で加熱しながら、反応器中でエステル交換反応を行わせることを特徴とする芳香族カーボネート類の製造方法。
- 第1熱回収部が、コイル式熱交換器、多管式熱交換器又はスパイラル式熱交換器の構造を有する、請求項1に記載の芳香族カーボネート類の製造方法。
- 上記第1熱回収部の上部にさらに、外部から供給される流体と第1熱回収部を通過した上記ベーパーとが間接的に熱交換し得るように構成された第2熱回収部を設置した構造を有する反応装置を使用し、上記流体を上記ベーパーで加熱して熱回収を行う、請求項1又は2に記載の芳香族カーボネート類の製造方法。
- 第2熱回収部が、コイル式熱交換器、多管式熱交換器又はスパイラル式熱交換器の構造を有する、請求項3に記載の芳香族カーボネート類の製造方法。
- 第2熱回収部に外部から供給する流体として原料液以外の流体を使用する、請求項3又は4に記載の芳香族カーボネート類の製造方法。
- 上記第2熱回収部の下部に第2熱回収部での凝縮液を集めるための集液部を設置した構造を有する反応装置を使用し、該集液部で集められた凝縮液を第1熱回収部を通過するベーパーと接触させることなく反応器へ戻す、請求項3〜5のいずれかに記載の芳香族カーボネート類の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002297361A JP3979256B2 (ja) | 2002-10-10 | 2002-10-10 | 芳香族カーボネート類の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002297361A JP3979256B2 (ja) | 2002-10-10 | 2002-10-10 | 芳香族カーボネート類の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004131421A true JP2004131421A (ja) | 2004-04-30 |
JP3979256B2 JP3979256B2 (ja) | 2007-09-19 |
Family
ID=32287084
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002297361A Expired - Lifetime JP3979256B2 (ja) | 2002-10-10 | 2002-10-10 | 芳香族カーボネート類の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3979256B2 (ja) |
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005123657A1 (ja) * | 2004-06-17 | 2005-12-29 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | 芳香族カーボネートの製造方法 |
WO2006001256A1 (ja) * | 2004-06-25 | 2006-01-05 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | 芳香族カーボネートの工業的製造法 |
WO2006001257A1 (ja) * | 2004-06-25 | 2006-01-05 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | 芳香族カーボネートの工業的製造方法 |
JP2009114172A (ja) * | 2007-09-14 | 2009-05-28 | Bayer Materialscience Ag | ジアルキルカーボネートからのジアリール及び/又はアルキルアリールカーボネートの製造方法 |
US7777067B2 (en) | 2004-07-13 | 2010-08-17 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | Industrial process for production of an aromatic carbonate |
US7812189B2 (en) | 2004-08-25 | 2010-10-12 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | Industrial process for production of high-purity diphenyl carbonate |
KR101042069B1 (ko) | 2006-11-09 | 2011-06-16 | 주식회사 엘지화학 | 아로마틱 카보네이트의 제조방법 및 그 제조장치 |
US8044226B2 (en) | 2004-10-14 | 2011-10-25 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | Process for production of high-purity diaryl carbonate |
JP2014097450A (ja) * | 2012-11-14 | 2014-05-29 | Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd | 蒸発缶 |
-
2002
- 2002-10-10 JP JP2002297361A patent/JP3979256B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (16)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7919644B2 (en) | 2004-06-17 | 2011-04-05 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | Process for producing an aromatic carbonate |
JPWO2005123657A1 (ja) * | 2004-06-17 | 2008-04-10 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | 芳香族カーボネートの製造方法 |
JP5014787B2 (ja) * | 2004-06-17 | 2012-08-29 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | 芳香族カーボネートの製造方法 |
EA012748B1 (ru) * | 2004-06-17 | 2009-12-30 | Асахи Касеи Кемикалз Корпорейшн | Способ получения ароматического карбоната и полученный ароматический карбонат |
WO2005123657A1 (ja) * | 2004-06-17 | 2005-12-29 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | 芳香族カーボネートの製造方法 |
WO2006001256A1 (ja) * | 2004-06-25 | 2006-01-05 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | 芳香族カーボネートの工業的製造法 |
WO2006001257A1 (ja) * | 2004-06-25 | 2006-01-05 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | 芳香族カーボネートの工業的製造方法 |
EA010603B1 (ru) * | 2004-06-25 | 2008-10-30 | Асахи Касеи Кемикалз Корпорейшн | Способ промышленного производства ароматического карбоната |
EA011128B1 (ru) * | 2004-06-25 | 2008-12-30 | Асахи Касеи Кемикалз Корпорейшн | Способ промышленного получения ароматического карбоната |
US7777067B2 (en) | 2004-07-13 | 2010-08-17 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | Industrial process for production of an aromatic carbonate |
US7812189B2 (en) | 2004-08-25 | 2010-10-12 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | Industrial process for production of high-purity diphenyl carbonate |
US8044226B2 (en) | 2004-10-14 | 2011-10-25 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | Process for production of high-purity diaryl carbonate |
US8044167B2 (en) | 2004-10-14 | 2011-10-25 | Asahi Kasei Chemicals Corporation | Process for production of high-purity diaryl carbonate |
KR101042069B1 (ko) | 2006-11-09 | 2011-06-16 | 주식회사 엘지화학 | 아로마틱 카보네이트의 제조방법 및 그 제조장치 |
JP2009114172A (ja) * | 2007-09-14 | 2009-05-28 | Bayer Materialscience Ag | ジアルキルカーボネートからのジアリール及び/又はアルキルアリールカーボネートの製造方法 |
JP2014097450A (ja) * | 2012-11-14 | 2014-05-29 | Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd | 蒸発缶 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP3979256B2 (ja) | 2007-09-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4292210B2 (ja) | 高純度ジフェニルカーボネートの工業的製造方法 | |
EP1801095B1 (en) | Process for production of high-purity diaryl carbonate | |
TWI422576B (zh) | 由二烷基碳酸酯類製備二芳基及/或烷基芳基碳酸酯類之方法 | |
KR101651673B1 (ko) | 디알킬 카르보네이트로부터의 디아릴 카르보네이트의 제조 방법 | |
KR101931793B1 (ko) | 디아릴 카보네이트의 제조방법 및 장치 | |
WO1992018458A1 (en) | Continuous production process of diarylcarbonates | |
JP5362331B2 (ja) | ジアリールカーボネートを精製する方法 | |
JP5362223B2 (ja) | 高純度ジフェニルカーボネートを工業的規模で製造する方法 | |
JP4236205B2 (ja) | 高純度ジフェニルカーボネートの工業的製造法 | |
JP3979256B2 (ja) | 芳香族カーボネート類の製造方法 | |
JP4292211B2 (ja) | 高純度ジアリールカーボネートの工業的製造方法 | |
US5523451A (en) | Process for the continuous preparation of aryl carbonates | |
EP0832872B1 (en) | Process for producing diaryl carbonate | |
JP2006528134A (ja) | 廃棄物流の回収方法及び装置 | |
WO2007069531A1 (ja) | 芳香族カーボネートの工業的製造法 | |
US8003817B2 (en) | Process for the preparation of diaryl carbonates or arylalkyl carbonates from dialkyl carbonates | |
JP3546098B2 (ja) | ジアリールカーボネートの連続的製造方法 | |
WO2004016577A1 (ja) | 芳香族カーボネート類の製造方法 | |
JP2004075577A (ja) | 芳香族カーボネート類の製造方法 | |
JPH08188558A (ja) | 芳香族カーボネート類の連続的製造方法 | |
JP4193442B2 (ja) | 芳香族カーボネート類の製造方法 | |
JP3551685B2 (ja) | シュウ酸ジアリールの製法 | |
JP2007326782A (ja) | 副生アルコール類の工業的分離装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050607 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070523 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070605 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070618 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100706 Year of fee payment: 3 |