芳香族カーボネート類の製造方法 く技術分野 >
本発明は、 芳香族カーボネート類の製造方法に関する。 詳しくは本発明は、 芳 香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートとからエステル交換反応により アルキルァリールカーボネート及ぴ明 z又はジァリールカーボネートを効率よく連 続的に製造する方法に関する。 田
<背景技術 >
これまで、 ジアルキルカーボネートと芳香族ヒ ドロキシ化合物とをエステル交 換反応させて、 アルキルァリールカーボネートを製造したり、 アルキルァリール カーボネートからジァリールカーボネートを製造したりすることはよく知られて おり、 これらの反応は次式 (1) 〜 (3) で表される。
R1— OCOO— R2+A r OH→R1-OCOO-A r +R2OH (1) R1— OCOO_A r +Ar OH→A r一 OCOO— Ar + OH (2) 2 R^OCOO-A r→A r _OCOO— Ar +R1— OCOO— R1 (3) (式中、 R1及び R2は脂肪族炭化水素基または脂環族炭化水素基を示し、 同じも のでも異なるものでもよい。 A rは芳香族炭化水素基を示す。)
こうしたエステル交換反応は平衡反応であり、 求核性の強い置換基が求核性の 弱い置換基に置き換わる方向に進みやすい。 一方の原料のジアルキルカーボネー トとして低級脂肪族炭化水素基を有するジアルキルカーボネートを使用し、 もう 一方の原料の芳香族ヒ ドロキシ化合物としてフエノールを使用するような場合、 特に式 (1) 及び式 (2) の反応はその原則に反する反応であるために非常に大 きく原系に偏っており、 反応速度も一般に遅い。 アルカリ金属の水酸化物のよう な一般的なエステル交換触媒を使用すると式 (1) の反応でなく、 脱炭酸を伴う 次式 (4) の反応が優勢となり、 反応収率が著しく低下してしまう。
R1— OCOO— R2+A r OH→R1-0-A r +R2OH+CO2 (4) 上記式 (1)、 (2) および (3) の反応を効率よく進めるために、 従来から高 活性な触媒の探索がなされてきており、 種々の触媒が提案されている。 例えば有 機錫化合物 (特開昭 54 -4873 3号公報) や有機チタン化合物 (特開昭 57 一 1 83745号公報) の錯体触媒を使用することにより上記の反応を進行させ ることが可能である。
さらに効率よく芳香族カーボネート類を製造するには、 生成物を反応系から速 やかに除去して平衡をできるだけ生成系に移す必要がある。 副生する脂肪族アル コールを効率よく除去する試みとしては、 共沸剤によって留去する方法 (特開昭 54—48 732号、特開昭 6 1 - 29 1 545号公報)、モレキュラーシープで 吸着除去する方法(特開昭 58 - 1 85536号公報)、浸透気化法または蒸気気 化法を利用した方法(特開平 5— 1 2502 1号公報)などが提案されているが、 いずれも工業的規模のスケールァップが無理であつたり、 プロセスが複雑になる などの欠点があり、 工業的方法としては適当なものではなかった。
上記式 (1) のような平衡反応の場合、 完全混合型の反応器では平衡組成以上 の原料転化率は得られない。 そこで反応器を直列多段として各段から生成物を除 去し、 転化率を段階的に上げながら反応させる方法が有効である。 同様の理由で 生成物を連続的に抜き出すことのできる反応蒸留も効果的であることが知られて いる。 たとえば、 特公平 7— 9 1 236号公報では連続多段蒸留塔に芳香族ヒド ロキシ化合物を塔上部から液状で、 ジアルキルカーボネートを塔下部からガス状 で供給しながら向流で接触させ、 副生するアルコールとジアルキルカーボネート とを含む低沸点成分を塔上部より抜き出しながら芳香族カーボネートを含む高沸 点成分を塔下部より抜き出している。
この方法は原理的には比較的簡素なプロセスで反応を進行させることができる ものの、 当該反応は速度が遅く、 しかも液相反応であるため、 連続多段蒸留塔で は十分な反応時間を確保することが困難である。 反応時間を確保するために付加 的な反応器を付設する方法も考案されているが (特開平 4一 224547号、 特 開平 4一 230242号公報)、結果的に設備は複雑で高価なものになってしまう。
反応蒸留と同じ効果が得られるものとして、 2個以上の直列に連結された攪拌 槽で気液を連続的に向流接触させながら反応を行う方法 (特開平 6— 2 3 4 7 0 7号公報) や、 気泡塔反応器又は少なくとも 2つの気泡塔のカスケード接続にお いて反応を行う方法 (特開平 6— 2 9 8 7 0 0号公報) も提案されている。 これ らの方法では反応時間を自由に設計できる利点があるものの、 いずれも反応段数 が少ないと十分な転化率が得られず、 段数が多いと設備費用が高くなるという欠 点がある。
一般に反応蒸留型の反応設備では多段反応を行い、 下段若しくは後段で発生す るベーパーと上段若しくは前段から来る反応液とを連続的に向流接触させながら 反応及ぴ気液分離を行うので、 下段若しくは後段で与えたエネルギーを効率よく 上段若しくは前段に伝えられる利点がある。 一方、 低沸点生成物 (この場合は脂 肪族アルコール) は上段若しくは前段に行くほど濃縮され、 髙沸点生成物 (この 場合は芳香族カーボネート) は下段若しくは後段に行くほど濃縮されてくるのに 加え、 原料比率が連続的に変化するので反応のコントロールが難しく、 反応器の 設計と運転には困難を伴う。
多段反応で、 各段で生成する脂肪族アルコールを除去しながら反応を行う限りに おいては反応蒸留型の設備である必要はなレ、。 ただし低沸点生成物を除去したベ 一パーの持つエネルギーを有効に回収しないとエネルギー効率が極端に悪化する。 また、 攪拌槽を直列に連結する場合は上記特開平 6— 2 3 4 7 0 7号公報の方 法と同様の設備費用が必要になる。
多段反応を行いながら設備費用を抑制するために、 反応器の液相部を隔壁で区 切り、 ガス相を連続相として、 副生した脂肪族アルコールを含む軽沸留分を反応 器の上部から気相状態で連続的に抜き出しながら反応を行う方法 (特開平 8— 1 8 8 5 5 8号公報) が提案されている。 この方法では、 液相は各反応区画で温度 や液組成を変えることができ、 多段反応とすることができるものの、 各反応区画 のガス相は連続しているので、 ベーパー組成に応じた適切な分離回収処理やエネ ルギー回収ができない欠点がある。
このような、 従来のエステル交換反応によるアルキルァリールカーボネート及
びノ又はジァリールカーボネートの製造方法においては、 反応を高選択率、 高効 率で進行させることが難しく、 複雑な工程と多大な設備費用が必要であるという 問題点があった。
本発明は、 触媒の存在下、 ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物 とからアルキルァリールカーボネー 1、及び/又はジァリールカーボネートを製造 する方法として、 上記したような欠点がなく、 高い選択率で効率よく連続的に製 造する方法を提供することを目的としている。
<発明の開示 >
本発明者は、 上記問題点を解決するため、 鋭意検討を重ねた結果、 このエステ ル交換反応は液相における平衡反応であり、 低沸点生成物の脂肪族アルコールを 効率よく抜き出すことで反応の進行を促進することができること、 反応は平衡に 近づくほど進行しにくくなるので、段階毎に条件を変えた多段反応が有効なこと、 ある段の生成べ一パーを反応液と直接接触させるのではなく、 間接熱交換により 当該段又は前段の反応液の加熱に利用することによって、 エネルギー効率が向上 するとともに、 低沸点副生物の濃縮による反応の遅延を回避することができ、 反 応蒸留より有利な方法となることを見出して、 本発明に到達した。
即ち本発明の要旨は、 触媒の存在下、 ジアルキルカーボネートと芳香族ヒ ドロ キシ化合物とを反応させてアルキルァリールカーボネート及ぴ z又はジァリール カーボネートを製造する方法において、 2個以上の独立した反応領域が直列に接 続された構造の反応装置を使用し、 液相を先頭の反応領域から最終の反応領域へ と順次流通させ、 少なくとも一つの反応領域で発生したベーパーの凝縮熱を、 該 ベーパーを対象反応液に直接接触させることなく、 当該反応領域又は前段の反応 領域への供給液に伝達してそれを加熱しながら、 エステル交換反応を行わせるこ とを特徴とする芳香族カーボネート類の製造方法、 に存する。
<図面の簡単な説明 >
図 1は、 2個の反応器が直列に接続された構造の反応装置の例を示す模式的断
面図である。
図 2は、 3個の反応器が直列に接続された構造の反応装置の例を示す模式的断 面図である。
図 3は、比較例 1における反応器構造及び反応方式を示す模式的断面図である。 図 4は、比較例 2における反応器構造及び反応方式を示す模式的断面図である。 図 5は、 内部を 3つの反応区画に分割した反応器の構造の例を示す模式的断面 図である。
図 6は、実施例 3における反応器構造及び反応方式を示す模式的断面図である。 図 7は、比較例 4における反応器構造及ぴ反応方式を示す模式的断面図である。 図 8は、実施例 4における反応器構造及ぴ反応方式を示す模式的断面図である。 図 9は、比較例 5における反応器構造及び反応方式を示す模式的断面図である。 なお、 図中の符号は以下のとおりである。
L 1、 L 2は原料供給ライン、
1、 2、 3は反応器 (反応槽)、
A 1、 A 2は下部隔壁、
B 1、 B 2は上部隔壁。
<発明を実施するための最良の形態 >
以下、 本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の反応原料であるジアルキルカーボネートは、 次式 (5 ) で表されるも のである。
R L O C O O— R2 ( 5 )
(式中、 R 1および R2は炭素数 1〜1 0のアルキル基を表し、 R 1及ぴ R2はそれ ぞれ同じでも、 異なっていてもよい。)
具体的には、 ジメチルカーポネート、 ジェチルカーボネート、 ジプロピルカー ボネート、ジプチルカーボネート、メチルェチルカーボネートなどが挙げられる。 これらのなかで特に好ましく用いられるものは、 ジメチルカーボネートおよぴジ ェチルカーボネートである。
本発明のもう一方の反応原料である芳香族ヒ ドロキシ化合物は、 次式 (6) で 表されるものである。
A r OH (6)
(式中、 A rは炭素数 6〜20の芳香族基を表す。)
具体的には、 フエノーノレ、 0—、 m―、 または p—クレゾール、 o—、 m―、 または p—ェチノレフエノーノレ、 o—、 m—、 または ρ—プロピノレフエノーノレ、 o 一、 m―、 または p—メ トキシフエノール、 2, 6—ジメチルフエノール、 2, 4ージメチノレフエノーノレ、 3, 4—ジメチノレフエノーノレ、 o—、 m—、 または]3 一クロ口フエノール、 1一ナフトーノレ、 2—ナフトールなどが挙げられる。 これ らの中で特に好ましいのは、 フエノールである。
本発明方法の生成物の一つであるアルキルァリールカーボネートは、次式(7) で表されるものである。
R3— OCOO— Ar (7)
(式中、 Arは式 (6) と同じものを表す。 また R3は式 (5) における R1また は R2と同じものを表す。)
具体的には、 メチ フエニルカーボネート、 ェチノレフエ二ルカーポネート、 プ 口ピノレフェニノレカーボネート、 プチ/レフェニノレカーボネートおよびへキシノレフエ 二ルカーボネートのようなアルキルフエ二ルカ一ボネートがぁり、 さらにメチノレ トルイノレカーボネート、 ェチルトノレイノレカーボネート、 メチルキシリノレカーボネ 一卜、 ェチルキシリルカーボネートなどが挙げられる。
本発明方法の生成物の一つであるジァリールカーボネートは、 次式 (8) で表 されるものである。
A r -OCOO-A r (8)
(式中、 Arは式 (6) と同じものを表す。)
具体的には、 ジフエ二ノレカーボネート、 ジトノレイ/レカーボネート、 ジキシリノレ カーボネート、 ジナフチノレカーボネート、 ビス (クロ口フェニ^/) カーボネート などが挙げられる。
本発明で用いられる触媒は、 ジアルキルカーボネートまたはアルキルァリール
カーボネートと芳香族ヒ ドロキシ化合物とのエステル交換反応およびアルキルァ リ一ルカーポネートの不均化反応を促進するものであるならば、 いかなるもので も使用することができる。 例えば、 次のようなものが挙げられる。
(a) B u2S nO、 Ph2S nO、 (C8H17) 2S nO、 B u2S n (O P h) 2、 B u2S n (O CH3) 2, B u2S n (OE t ) 2、 B u2S n (O P h) O (O P h)
S n B u 2などのスズィ匕合物、
(b) P b O、 P b (OPh) 2、 P b (OCOCH3) 2などの鉛化合物、
(c) A 1 X3、 T i X3、 T i X4、 Z nX2、 F e X3、 S n X4、 VX5等 (ここで Xはハロゲン、 ァセトキシル基、 アルコキシル基、 ァリールォキシ基を表す) 等 のルイス酸化合物、 具体例として、 A 1 C 13、 A 1 (O P h) 3、 T i C 14、 T i (OPh) 4、 T i (OE t ) 4、 T i (OP r ) 4、 T i (OB u) 4、
(d) Z r (a c a c) 4、 Z r 02等のジルコニウム化合物 (ここで a c a cは ァセチルァセトン錯体リガンドを表す)、
(e ) CuC l、 Cu C l2、 CuB r、 CuB r2、 Cu l、 Cu l2、 C u (O Ac) 2などの鲖化合物 (ここで Acはァセチル基を表す)
上記の中でも特に好ましいものはスズ化合物またはチタン化合物である。
本発明では、 2個以上の独立した反応領域が直列に接続された構造の反応装置 を用いることを特徴とする。個々の反応領域はそれぞれ独立した反応器でもよく、 また、 1個の反応器の内部を隔壁等で区切って形成された反応区画でもよい。 必 要な条件はそれぞれの反応領域で発生するべ一パーを独立して外部に取り出しう ることである。
図 1は、 2個の反応器を接続した構造の反応装置の例を示す。 図 1の反応装置 においては、 反応器 1と反応器 2とを組み合わせて使用する。 反応器 1は高沸点 原料を供給するライン L 1、 低沸点原料を供給するライン L 2、 液抜きだしライ ン L4、 及びべ一パー抜き出しライン V 1を備える。 また反応器 2は前述のライ ン L4、 液抜きだしライン L 5、 及ぴベーパー抜き出しライン V 2を備える。 そ してライン V 2から抜き出されたベーパーは熱交換器 1で供給液を加熱し、 エネ ルギー回収を行う。 あるいは反応器 1に設置した内部コイルゃジャケットにより
反応器 1内の反応液を加熱することも可能である。
反応器 1と反応器 2の反応条件は独立して操作できるので、 反応温度および蒸 気発生量を適切に設定することで熱回収量を最適化することができる。 たとえば 反応器 2の温度を反応器 1より高くすることで熱交換に必要な温度差を確保する ことができ、 反応器 2で発生したベーパーの熱を効率よく反応器 1の液に伝達す ることができる。
本発明では、 2個以上の反応器を接続した反応装置では、 各反応器に熱回収用 の熱交換器を設置することができる。 図 2では、 3個の反応器を接続した構造の 反応装置の例を示す。 この場合、 低沸点原料を、 例えばライン L 2 a、 L 2 b及 ぴ L 2 cの 3ラインのように、 分割フィードとし、 これらを発生べ一パーの凝縮 熱で加熱してその一部を気化させ、 そのエネルギーを各段の反応液の加熱に使用 することができる。
3個の反応器 1〜 3を接続した構造の図 2においては、 高沸点原料の全量 (ラ イン L 1 ) と低沸点原料の一部 (ライン L 2 a ) とを混合して反応器 1に供給す る。 この低温の混合液を、 熱交換器 1において反応器 1で発生した高温べ一パー (ライン V I ) で加熱することにより、 反応器 1で必要なエネルギーの一部が供 給される。 熱交換後の高温べ一パーは一部凝縮した状態でライン L 6から外部に 取り出される。 反応液は液抜きだしライン L 3を通じて反応器 2へ送られる。 反応器 1と反応器 2の温度を同じにする場合には、 液抜きだしライン L 3から 供給される液を反応器 2で発生したベーパーで加熱することはできない。 そこで 反応器 2で発生した高温べ一パーではライン L 2 bから分割フィードされる低沸 点原料を加熱し、 これを気化させる。 気化した低沸点原料は反応器 2の内部で反 応液と接触して液化し、 凝縮熱によって反応液にエネルギーを供給する。 上記高 温べ一パーは熱交換後には一部が凝縮液になっている。 該ベーパー中に含まれる 低沸点生成物を反応器に返送するとエステル交換反応の進行を阻害するが、 反応 器 2で生成した低沸点生成物はべ一パー中に多く分布し、 上記凝縮液中には少な いので、 この凝縮液は気液分離器 1で分離されライン L 7を通じて反応器 1中に 回収することができる。 低沸点生成物を多く含むベーパーはライン V 4を通じて
外部に取り出され、反応器 2の反応液はライン L 4を通じて反応器 3へ送られる。 反応器 3では、 反応器 2と同じ仕組みでライン L 2 cから分割フィードされる 低沸点原料によつて高温べ一パーの熱を回収し、 ベーパーからの凝縮液を気液分 離器 2で分離し、 ライン L 8を通じて反応器 2に回収しながら、 ベーパーはライ ン V 5から外部に取り出し、 反応器 3の反応液をライン L 5から取り出す。
反応器を 4個以上接続する場合も上記と同様にして連続運転が可能である。 一般に完全混合型の反応器に比べてプラグフロー型の反応器は高い原料転化率を 得ることができるが、 上記の反応のように連続的に生成物を除去する必要のある 反応では、 適切なプラグフロー型反応器の設計は困難である。 しかし、 完全混合 型の反応槽を直列に並べることで反応液相部分をブラダフ口一型に近い態様で流 通させることができる。 ところが攪拌槽を複数個設置するプラントでは攪拌槽の 数が多くなると設置費用が著しく増加する欠点がある。
そのためプラグフロ一性を維持しながらも設置費用を抑制するために、 1個の 反応器の内部を隔壁等で区切って形成された複数の反応区画を有する反応装置を 使用することが好ましい。
このような構造の反応装置の例としては、 反応器の内部が、 下部を液相の流通 路を残して閉じられた区画に区分すると共に上部には空隙部を設けた下部隔壁と、 反応器の上部においては気相部を閉じられた区画に区分すると共に下部には空隙 部を設けた上部隔壁とを組み合わせて複数の反応区画に区切られており、 その中 を液相は先頭の反応区画から最終の反応区画へと順次連続相で流通し、 気相は各 反応区画毎に液封により独立して取り出される構造になっている。 各反応区画の 反応条件は圧力を除いて独立に設定できるので、 この構造の反応器を使用するこ とにより、 図 2の場合と全く同じ形態で連続運転を行うことが可能である。
上記の反応器についてより詳細に説明する。
本発明では、 特定構造の反応器、 即ち反応器の下部においては液相部を液相の 流通路を残して閉じられた区画に区分すると共に上部においては空隙部を有する 「下部隔壁」 と、 反応器の上部においては気相部を閉じられた区画に区分すると 共に下部においては空隙部を有する 「上部隔壁」 とを備え、 これらの隔壁により
隣接区画間の流通が可能な 2以上の区画に分割された液相部と独立した 2以上の 区画に分割された気相部とから構成される反応器、 を使用することが好ましい。
「下部隔壁」 と 「上部隔壁」 とは、 通常、 同数であり、 かつ通常、 交互に配置さ れて、 反応器を該数より一つ大きい数の、 気相及び液相からなる 「反応区画」 に 分割する。
例えば、 図 5は内部を 3つの反応区画に分割した反応器の構造の例を示す模式 的断面図である。 図 5において、 反応槽 1は液相を仕切る下部隔壁 A 1、 A 2、 気相を仕切る上部隔壁 B 1、 B 2を備えており、 このうち上部隔壁は液相部内に 深く浸漬されている。 さらに反応槽 1は原料供給ライン L l、 L 2、 各反応区画 からのべ一パー抜き出しライン L 3 a、 L 3 b、 L 3 c、 反応液を抜き出すライ ン L 4を有する。 なお、 図 5では省略しているが、 各反応区画に対して反応に必 要なエネルギーを与えるために、 各反応区画に設置した内部コイルや反応槽外部 に設けたジャケットに熱媒を循環させたり、 もしくは反応器外部にリボイラーを 設置して熱を供給する方式とすることも望ましい。
本発明で使用される反応器は、 上記のように液相部が下部隔壁により隣接区画 間の流通が可能な 2以上の区画に分割されており、 液相は先頭の区画から最終の 区画へと順次流通するように構成されている。 液相を隣接区画間で流通させる仕 組みは、 特に限定されず、 下部隔壁の上端での溢流、 下部隔壁の上端部に設けら れた切り欠き部での溢流、 下部隔壁の中間部に 1力所又は複数箇所設けられた連 通孔を通しての流通、 またはこれらの組み合わせなどを適宜採用することができ る。 特に、 液相を隣接区画間で流通させる仕組みとして下部隔壁の上端での溢流 及び/又は下部隔壁の上端部に設けられた切り欠き部での溢流のみを採用した場 合には、 ある液相区画内での反応液の滞留時間の分布があまり大きくならないよ うに、 上部隔壁の下端が液相部の下部 (深部) に位置するようにして、 反応液の 流路を規制するのが好ましい。
一般に完全混合型の反応器に比べてプラグフロー型の反応器は高い原料転化率 を得ることができるが、 上記のように液相が先頭の区画から最終の区画へと順次 流通するように構成されている反応器を使用することにより、 従来提案されてき
た完全混合型の反応槽を直列に並べる方法に比べて容易に反応液相部分をプラグ フロー型に近い態様で流通させることができる。
さらに本発明で用いられる反応器は、 反応の進行過程で副生する脂肪族アルコ 一ルゃジアルキルカーボネート、 またはそれらの混合物を含む軽質留分をべーパ 一抜き出しライン L 3 a、 L 3 b、 L 3 cから気相状態で連続的に抜き出すこと ができる構造を有する。 反応器内部の気相部分は、 液封により独立した区画に分 割された構造になっているので、 各べ一パー抜き出しラインからはそれぞれ異な る組成のベーパーが得られる。 反応器の先頭部分ではエステル交換反応が比較的 進行しやすいので脂肪族アルコールの割合が大きく、 逆に後段部分ではエステル 交換反応が進行しにくくなつて原料のジアルキルカーボネートや芳香族ヒドロキ シ化合物の割合が大きくなる。 そのため、 これらのベーパーを組成に応じた条件 で処理し、 副生した脂肪族アルコールを除去して原料をリサイクルすることが可 能になる。 そうすることにより生成したベーパーの全てを同じ条件で処理する場 合に比べて、 脂肪族アルコール分離に要するエネルギーの効率を高めることがで きる。蒸留塔を使用し、ベーパー組成に応じた条件で処理する方法としては通常、 蒸留塔の異なる位置にそれぞれのベーパーを供給する方法が好ましい。 同様のベ 一パー処理は攪拌槽を直列に並べる方法においても可能であるが、 攪拌槽を複数 設置すると設備費用が高くなるため、 本発明の反応器を使用する方が経済的に有 利である。
また、 各反応区画にはそれぞれ熱を与えることが可能なので、 各反応区画の反 応温度を独立して制御することができる。 そのため、 後段の反応区画の温度を前 段より高くすれば反応を促進することができるとともに、 後段で発生したベーパ 一で前段の反応液を加熱することも可能となり、 それによつてエネルギー効率を より高めることができる。
本発明の方法では、 液相を先頭の区画から最終の区画へと順次流通させ、 液相 部の先頭の区画に触媒および芳香族ヒドロキシ化合物を連続的に液相状態で導入 し、 反応器の 1つ以上の区画にジアルキルカーボネートを連続的に液相状態若し くは気相状態で導入する。 また、 同様に芳香族ヒ ドロ.キシ化合物を反応器の 1つ
以上の区画に連続的に液相状態若しくは気相状態で導入することもできる。 この ように、 区切られた一部またはすベての反応区画にジアルキルカーボネートある いは芳香族ヒ ドロキシ化合物を気相または液相状態で導入することにより、 反応 で副生する脂肪族アルコールの蒸発を促進し、 反応平衡を生成系へと有利に導く ことができる。
なお、 上記各図には表示されていないが、 本発明の反応装置において、 各反応 領域に対して反応に必要なエネルギーを与えるため、 各反応領域に設置した内部 コイルや反応器外部に設けたジャケットに熱媒を循環させたり、 反応器外部にリ ボイラーを設置したりして熱を供給することもでき、 かつ一般に好ましい。
また、 反応領域 (反応区画) の数は、 2個およびそれ以上であって特に制限さ れないが、 必要以上に増やしても効果は漸減するので、 通常 2〜3 0個、 好まし くは 2〜 1 5個である。
さらに、 各反応領域を構成する各反応器内および区切られた各反応区画には外 部から強制的な攪拌を施してもよいが、 必須なものではなく、 自然な流体の流れ や対流あるいは蒸発に伴う気泡の発生による混合などで十分な場合もある。 用い ることのできる外部からの攪拌方式としては攪拌翼を用いるもの、 ポ 'ンプ循環に よる攪拌、 あるいはガスや蒸気吹き込み式の攪拌などが挙げられる。
本発明の芳香族カーボネート類の製造方法では、 区切られた一部または全ての 反応領域にジアルキルカーボネートあるいは芳香族ヒ ドロキシ化合物を気相また は液相の状態で導入することにより、 反応で副生する脂肪族アルコールの蒸発を 促進し、 反応平衡を生成系へと有利に導くことができる。 また、 後段で生成した 脂肪族アルコールの大部分は前段の反応液と混合することなく外部へ抜き出され るので、 前段の反応領域に脂肪族アルコールが蓄積して、 反応の進行を阻害する こともない。
本発明方法においては、 必ずしも溶媒を使用する必要はないが、 反応に不活性 な溶媒、 例えばエーテル類、 脂肪族炭化水素類、 芳香族炭化水素類などを使用す ることができる。 反応装置 (反応槽) の最終の反応領域 (反応区画) から抜き出 される液相は、 蒸留などの精製手段に付して、 目的とするアルキルァリールカー
ボネートおよび またはジァリールカーボネートを取得することができる。
本発明方法における反応温度は、 反応原料の種類、 組成等にも依存するが、 通 常50〜300 、 好ましくは 100〜250°Cである。 反応温度が高いほど反 応速度は向上する力 S、アルキル芳香族エーテル等の副生物が増加する傾向にあり、 あまり高くすることは好ましくない。反応器内の圧力は使用する反応原料の種類、 反応器内の組成によっても異なるが、 通常、 1 0〜3000 k P aの範囲の加圧 ないし減圧下で行うことができる。 特に好ましい範囲は、 50〜2000 k P a (0. 5〜20 a tm) である。
触媒は、 通常、 反応原料に溶解または分散させて反応領域 (反応槽) に供給さ れる。 触媒の使用量は、 供給される反応原料に対して通常 0. 000 1〜1 0モ ル%、 好ましくは 0. 001〜5モル%である。 少なすぎると反応速度が不十分 となり、多すぎるとアルキル芳香族エーテルなどの副生量が増加する傾向がある。 反応装置 (反応槽) での液の平均滞留時間は、 その他の反応条件にもよるが、 通 常は 0. 1〜 20時間、 好ましくは 0. 3〜 1 0時間である。
<実施例〉
次に実施例により本発明の具体的態様をより詳細に説明するが、 本発明はその 要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。 [実施例 1 ]
2基の反応器を使用し、 後段の反応温度を前段より高くして、 後段で発生した 高温べ一パーにより前段の反応液を加熱してエネルギーを効率的に利用した例で あ 。
図 1に示す反応方式で、 内容積 300m lの反応器を 2基使用してジメチルカ ーボネートとフヱノールとのエステル交換反応を行った。 反応器内の液面の高さ は約 50%を維持した。
液フィードライン L 1からフエノール 94 g/h r (lmo l /h r) 及び触 媒 (ジブチル酸化錫) 0. 6 g/h r、 液フィードライン L 2からジメチルカ一
ボネート 90 g //h r (1 mo 1 /h r)を供給した。原料液の供給温度は 60 °C とした。反応器の圧力は 2基とも 500 k P aで、反応温度は反応器 1を 1 80°C、 反応器 2を 200°Cとした。
反応液は熱交換器 1において、 反応器 2で発生したベーパーにより加熱された 後、 ライン L 3、 反応器 1、 ライン L4、 反応器 2の順で通過し、 さらに液抜き 出しライン L 5から抜き出した。 反応器 1で発生したベーパーはべ一パー抜きだ しライン V 1を経て外部に抜き出した。 反応器 2で発生したベーパーはライン V 2から熱交換器 1に導き、 ここで凝縮しながら原料液を加熱し、 ライン L 6から 外部に抜き出した。
この条件で 8時間連続運転し、 ライン L 5から抜きだされる反応液を採取して 組成を分析したところ、 5. 9重量%のメチルフエ-ルカーボネートと 1. 6重 量%のジフエニルカーボネートとが検出された。 ライン L 5の流量は 1 24 g/ h rであり、 生成したメチルフエ二ルカーボネートとジフヱ二ノレカーボネートは 合計で 0. ◦ 5 7m o 1 Zh rに相当する。 反応に要した熱量は 49. 6 k J/ h rであった。
生成物 1 m o 1あたりのエネルギー効率を求めると、 1 1. 5 X 1 0— 4mo l /k Jであった。
[実施例 2]
3基の反応器を使用し、 各段で発生した高温べ一パーにより各段の原料液を加 熱してエネルギーを効率的に利用した例である。
図 2に示す反応方式で、 内容積 20 Om 1の反応器を 3基使用して、 ジメチル カーボネートとフヱノールとのエステル交換反応を行った。 反応器内の液面の高 さは約 50%を維持した。
液フィードライン L 1から実施例 1と同じ量のフエノール及び触媒 (ジブチル 酸化錫) を連続的に供給しながら、 実施例 1と同じ量のジメチルカーボネートを 液フィードライン L 2からライン L 2 a、 L 2 b及ぴ L 2 cを通じて分割して供 給した。 ライン L 2 a、 L 2 b及ぴ L 2 cの流量は 8 : 1 : 1の比率に調整した。
反応器の条件は 3基とも 500 k P a、 200 とした。 反応液は反応器 1、 ライン L 3、 反応器 2、 ライン L4、 反応器 3の順に通過させ、 最終的に液抜き 出しライン L 5から抜き出した。
ライン L 1のフエノールおよび触媒はライン L 2 aのジメチルカーボネートと 混合して熱交換器 1に供給した。 熱交換器 1で原料液は反応器 1で発生したベー パーによって加熱され、 反応器 1に入る。 熱交換後のベーパーは 80°Cの凝縮液 となりライン L 6から外部に抜き出した。
反応器 2で発生した 200°Cのべ一パーはライン V 2から熱交換器 2に導き、 ライン L 2 bのジメチルカーボネートを加熱して 1 66 °Cに冷却され、 気液分離 器 1で分離された凝縮液をライン L 7から反応器 1に戻すとともに、 凝縮しなか つたべ一パーをライン V 4から外部に抜き出した。 熱交換器 2で加熱されたライ ン L 2 bのジメチルカーボネートは 1 58 °Cのべ一パーで反応器 2に供給された。 反応器 3で発生した 200°Cのべ一パーは反応器 2のべ一パーと同様にライン V3から熱交換器 3に導き、 ライン L 2 cのジメチルカーボネートを加熱して 1 50°Cに冷却され、 気液分離器 2で分離された凝縮液をライン L 8から反応器 2 に戻すとともに、 凝縮しなかったベーパーをライン V 5から外部に抜き出した。 熱交換器 3で加熱されたライン L 2 cのジメチルカーボネートは 1 58°Cのべ一 パーで反応器 3に供給された。
この条件で 8時間連続運転し、 ライン L 5から抜きだされる反応液を採取して 組成を分析したところ、 6. 4重量0 /0のメチルフエ二ルカーポネートと 1 · 8重 量。 /0のジフエ-ルカーポネートが検出された。 ライン L 5の流量は 1 27 g/h rであり、 生成したメチルフエ-ルカーボネートとフエ-ルカーボネートは合計 で 0. 065mo 1 Zh rに相当する。 反応に要した熱量は 53. 3 k J /h r であった。
生成物 1 m o 1あたりのエネルギー効率を求めると、 1 2. 2 X 1 0 "4m o 1 /k Jで、 実施例 1よりも高いエネルギー効率が得られた。
[比較例 1 ]
実施例 2と同じ方法で反応液を流しているが、 発生べ一パーの熱回収を行わな かった例である。
図 3に示す反応方式で、 内容積 2 0 O m 1の反応器を 3基使用し、 ジメチルカ ーボネートとフエノールとのエステル交換反応を行った。 反応器内の液面の高さ は約 5 0 %を維持した。
図 3の液フィードライン L 1から実施例 1と同じ量のフエノールと触媒 (ジブ チル酸化錫) を連続的に供給しながら、 実施例 1と同じ量のジメチルカーボネー トを液フィードライン L 2からライン L 2 a、 L 2 b及び L 2 cを通じて分割し て各反応器に供給した。 ライン L 2 a , L 2 b , L 2 cの流量は 5 : 2 : 3の比 率に調整した。
反応器の条件は 3基とも 5 0 0 k P a、 2 0 0 °Cとした。 反応液は反応器 1、 ライン L 3、 反応器 2、 ライン L 4、 反応器 3の順に通過させ、 最終的に液抜き 出しライン L 5から抜き出した。 反応器 1から発生したベーパーはべ一パー抜き だしライン V 1を経て外部に抜き出した。 反応器 2で発生したベーパーはライン V 2からコンデンサーに導き、 1 6 0 °Cに冷却して凝縮液をライン L 6から反応 器 1に戻すとともに、 凝縮しなかったベーパーをべ一パー抜き出しライン V 4か ら外部に抜き出した。 反応器 3で発生したベーパーは同様にライン V 3からコン デンサ一に導き、 1 6 0 °Cに冷却して凝縮液をライン L 7から反応器 2に戻すと ともに、 凝縮しなかったベーパーをべ一パー抜き出しライン V 5から外部に抜き 出した。
この条件で 8時間連続運転し、 ライン L 5から抜きだされる反応液を採取して 組成を分析したところ、 6 . 7重量0 /0のメチルフエ二ルカーボネートと 1 · 8重 量0 /0のジフエ-ルカーボネートが検出された。 ライン L 5の流量は 1 3 5 g Z h rであり、 生成したメチルフエニルカーボネートとジフエニルカーボネートは合 計で 0 . 0 7 2 m o 1 rに相当する。 反応に要した熱量は 9 3 . 4 k J / h rであった。
生成物 1 m o 1あたりのエネルギー効率を求めると、 7 · 7 X 1 0一4 m o 1 / k Jで、 実施例と比較するとエネルギー効率は悪いことがわかった。
[比較例 2 ]
3基の反応器を直列に接続し、 原料のフエノールとジメチルカーボネートとを 向流接触させた例である。
図 4に示した反応方式で、 3基の 20 Om 1オートクレープを直列に接続し、 ジメチルカーボネートとフエノールとを向流接触させてエステル交換反応を行つ た。 反応器内の液面の高さは約 50%を維持した。
図 4の液フィードライン L 1から実施例 1と同じ量のフヱノールと触媒 (ジブ チル酸化錫) を連続的に反応器 1に供給した。 実施例 1と同じ量のジメチルカ一 ボネートを液フィードライン L 2から蒸発器に供給し、 ここで全量を気化させて ライン V I aから反応器 3に供給した。
反応器の圧力はガスの流通のために反応器 1から反応器 3に向けて高くなるよ う設定し、 反応器 1を 500 k P a、 反応器 2を 550 k P a, 反応器 3を 60 O k P aとした。 反応温度は反応器 3が 200°Cとなるよう加熱し、 反応器 1、 反応器 2は加熱しなかった。
反応液は反応器 1、 ライン L 3 a、 反応器 2、 ライン L 3 b、 反応器 3の順に 通過させ、 最終的に液抜き出しライン L 3 cから抜き出した。
反応器 3で発生した 200°Cのべ一パーはライン V 1 bから反応器 2に供給し、 反応器 2で発生したベーパーはライン V 1 cから反応器 1に供給した。 さらに反 応器 1で発生したベーパーはライン V 2から外部に抜き出した。
この条件で 8時間連続運転し、 ライン L 3 cから抜きだされる反応液を採取し て組成を分析したところ、 7. 4重量%のメチルフエ二ルカーボネートと 1. 6 重量。 /0のジフエニルカーボネートが検出された。 ライン L 3 cの流量は 149 g /h rであり、 生成したメチルフエニルカーボネートとジフエ二ルカーポネート は合計で 0. 084m o 1 /h rに相当する。 反応に要した熱量は 7 3. 2 k J /h rであった。
生成物 1 mo 1あたりのエネノレギー効率を求めると、 1 1. 5 X 1 0— 4mo l / k Jで、 実施例 1と同等であるが、 実施例 2より低かつた。
3009347
以上、実施例 1、 2、比較例 1、 2に示されたとおり、本発明の方法によれば、 軽質留分を留去しつつ液相部分を複数に分画された反応領域を直列に通すことに より反応平衡を原系に偏らせる脂肪族アルコール等の軽質留分を極限まで低下さ せることが多大の設備費を要することなく可能であり、 かつ容易に十分な反応容 量を確保することができることから芳香族カーボネートを高い収率、 高い選択率 で連続的に製造できる。 また、 本発明の方法は、 反応温度、 反応圧力、 滞留時間 等に対し、 多様な条件を容易に選択することが可能であり、 さらに、 きわめて簡 略化された装置を用いて極めて高い収率 ·選択率が得られるという効果が得られ る。
[実施例 3 ]
図 5に示した構造の、 内容積 6 O Om lで 3個の反応区画に分割された反応器 を使用し、 図 6に示した反応方式で、 ジメチルカーボネートとフヱノールとのェ ステル交換反応を行った。
図 6において、 液フィードライン L 1からフエノール 94 g/h r ( 1 m o 1 /h r ) 及ぴ触媒 (ジブチル酸化錫) 0. 6 g/h rを連続的に供給しながら、 ジメチルカーボネートを液フイードライン L 2からライン L 2 a, L 2 b, L 2 cを通じて各反応区画に 90 gZh r (lmo 1 Zh r ) で供給した。 ライン L 2 a , L 2 b , L 2 cの流量は 5 : 2 : 3の比率に調整した。
反応器の圧力は 500 k P a、 温度は 200°Cとし、 反応液は溢流により第 1 区画から第 2区画を通って第 3区画に至り、 液抜き出しライン L 3から抜き出し た。 第 1区画から発生したベーパーはべ一パー抜き出しライン V 1を経て外部に 抜き出した。第 2区画で発生したベーパーはライン V 2からコンデンサ一に導き、 1 60°Cに冷却して凝縮液をライン L4から第 1区画に戻すとともに、 凝縮しな かったベーパーをべ一パー抜き出しライン V 4から外部に抜き出した。 第 3区画 で発生したベーパーは同様にライン V 3からコンデンサーに導き、 1 60°Cに冷 却して凝縮液をライン L 5から第 2区画に戻すとともに、 凝縮しなかったベーパ
一をべ一パー抜き出しライン V 5から外部に抜き出した。
上記の条件で 8時間連続運転し、 ライン L 3から抜き出される反応液を採取し て組成を分析したところ、 6. 7重量%のメチルフエニルカーボネートと 1. 8 重量%のジフエニルカーボネートとが検出された。 ライン L 3の流量は 1 35 g /h rであり、 生成したメチルフエニルカーボネート及びジフエ二ルカーボネー トは合計で 0. 072mo 1 rに相当する。 反応に要した熱量は 93. 4 k jZh rであった。 なお、 反応器内の液面の高さは約 50%を維持した。
生成物 1 mo 1当たりのエネルギー効率を求めると、 7 · 7 X 1 0— 4mo l Z k Jであった。
[比較例 3 ]
内容積 500m lのォートクレーブにフエノール 94 g/h r ( 1 m o 1 / h r )、 触媒 (ジブチル酸化錫) 0. 6 gZh r、 及びジメチルカーボネート 90 g Zh r ( l mo 1/h r) を連続的にフィードし、 反応器液面の高さを約 60 % に維持しながら反応液を連続的に抜き出した。 反応器の圧力は 500 k P aで温 度は 200°Cとし、 生成するべ一パーは連続的に外部へ抜き出した。
8時間反応を継続し、 反応液を採取して組成を分析したところ、 5. 9重量% のメチルフエ二ルカーポネートと 1. 6重量0 /0のジフエニルカーボネートが検出 された。 反応液の抜き出し量は 1 22 g/h rであり、 生成したメチルフエニル カーボネート及ぴジフェニ^^カーボネートは合計で 0. 05 7mo 1 / . rに相 当する。 反応に要した熱量は 82. 0 k j/h rであった。
生成物 1 m o 1あたりのエネルギー効率を求めると、 7. 0 X 1 0一4 m o 1 / k Jで、 実施例 3に比べてエネルギー当たりの生成量が少なかった。
[比較例 4 ]
気相を仕切る上部隔壁がなく、 液相が 3区画に分割されて気相が連続した図 7 に示す反応器を使用してフヱノールとジメチルカーボネートとのエステル交換反 応を行った。
T JP2003/009347 フエノ一ル及ぴ触媒 (ジプチル酸化錫) は実施例 3と同じ流量で液フィ一ドラ イン L 1から供給し、 ジメチルカーボネートは実施例 3と同様に液フィードライ ンし 2 &, 2 3, 1^ 2 0を通じて各反応区画に供給した。ただしライン L 2 a , L 2 b , L 2 cの流量は 6 : 2 : 2の比率に調整した。
反応器の圧力は 5 0 0 k P a、 温度は 2 0 0 °Cとし、 反応液は溢流により第 1 区画から第 2区画を通って第 3区画に至り、 液抜き出しライン L 3から抜き出し た。 各反応区画から発生したベーパーは反応器内で均一となり、 ベーパー抜き出 しライン V 1を経て外部に抜き出した。
上記の条件で 8時間連続運転し、 ライン L 3から抜き出される反応液を採取し て組成を分析したところ、 6 . 5重量0 /0のメチルフエ-ルカーボネートと 1 . 8 重量%のジフエ-ルカーボネートが検出された。 ライン L 3の流量は 1 2 2 g / h rであり、 生成したメチルフヱ-ルカーボネート及びジフヱニルカーボネート は合計で 0 . 0 6 2 m o 1 / h rに相当する。 反応に要した熱量は 8 1 . 9 k J / h rであった。
生成物 1 m o 1当たりのエネルギー効率を求めると、 7 . 6 X 1 0 -4m o 1 / k Jで、 比較例 1に比べてエネルギー当たりの生成量は多くなったが、 実施例 3 に比べると少なかった。
[実施例 4 ]
図 5に示した反応器を使用し、 図 8に示した反応方式でジメチルカーボネート とフヱノールとのエステル交換反応を行った。
図 8において、 液フィードライン L 1から実施例 3と同じ量のフエノール及ぴ 触媒 (ジブチル酸化錫) を連続的に供給しながら、 ジメチルカ一ボネートを液フ イードライン L 2からライン L 2 a, L 2 b , L 2 cに分割して供給した。 ライ ン L 2 a, L 2 b , L 2 cの流量は 8 : 1 : 1の比率に調整した。
ライン L 1のフエノールおょぴ触媒はライン L 2 aのジメチルカーボネートと 混合し、 ライン L 3を通って熱交換器 E 1に供給した。 熱交換器 E 1で原料液は 反応器の第 1区画で発生したベーパーによって加熱され、 反応器の第 1区画に入
る。 熱交換後のベーパーは 80°Cの凝縮液となり、 ライン L 6から外部に抜き出 した。
反応器の圧力は 500 k P a、 温度は 200 °Cとし、 反応液は溢流により第 1 区画から第 2区画を通って第 3区画に至り、 液抜き出しライン L 5から抜き出し た。
第 2区画で発生した 200°Cのべ一パーはライン V 2から熱交換器 E 2に導き、 ライン L 2 bのジメチルカーボネートを加熱して 1 66 °Cに冷却され、 凝縮液を 気液分離器で分離しライン L 4 aから第 1区画に戻すとともに、 凝縮しなかった ベーパーをライン V 4から外部に抜き出した。 熱交換器 E 2で加熱されたライン L 2 bのジメチルカーボネートは 1 58 °Cのべ一パーで反応器の第 2区画に供給 された。
第 3区画で発生した 200°Cのべ一パーは第 2区画のベーパーと同様にライン V 3から熱交換器 E 3に導き、 ライン L 2 cのジメチルカーボネートを加熱して 1 50°Cに冷却され、 凝縮液を気液分離器で分離しライン L4 bから第 2区画に 戻すとともに、 凝縮しなかったベーパーをライン V 5から外部に抜き出した。 熱 交換器 E 3で加熱されたライン L 2 cのジメチルカーボネートは 1 58°Cのべ一 パーで反応器の第 3区画に供給された。
上記の条件で 8時間連続運転し、 ライン L 5から抜き出される反応液を採取し て組成を分析したところ、 6. 4重量0 /0のメチルフエ二ルカーボネートと 1. 8 重量0 /0のジフヱニルカーボネートが検出された。 ライン L 5の流量は 1 27 gZ h rであり、 生成したメチルフエニルカーボネート及びジフエニルカーボネート は合計で 0. 06 5mo 1 /h rに相当する。 反応に要した熱量は 53. 3 k J /h rであった。
生成物 1 m ο 1当たりのエネルギー効率を求めると、 1 2. 20 X 1 0— 4mo 1 / k Jで、 高いエネルギー効率が得られた。
[比較例 5]
3基の 20 Om 1オートクレープを直列に接続し、 図 9に示した反応方式でジ
メチルカーボネートとフエノールとを向流接触させてエステル交換反応を行った。 図 9において、 液フィードライン L 1から実施例 1と同じ量のフヱノール及び 触媒 (ジブチル酸化錫) を連続的に反応器 R 1に供給した。 ジメチルカーボネー トは液フィードライン L 2から熱交換器 E 1に供給し、 ここで全量を気化させて ライン V 1 aから反応器 R 3に供給した。
反応器の圧力はガスの流通のために反応器 R 1から反応器 R 3に向けて高くな るよう設定し、 反応器 R 1を 500 k P a、 反応器 R 2を 5 50 k P a, 反応器 R 3を 600 k P aとした。 反応温度は反応器 R 3が 200 °Cとなるように加熱 し、 反応器 R l、 反応器 R 2は加熱しなかった。
反応液は反応器 R 1、 ライン L 3 a、 反応器 R 2、 ライン L 3 b、 反応器 R 3 の順に通過させ、 最終的に液抜き出しライン L 3 cから抜き出した。
反応器 R 3で発生した 200°Cのべ一パーはライン V 1 bから反応器 R 2に供 給し、反応器 R 2で発生したベーパーはライン V 1 cから反応器 R 1に供給した。 さらに反応器 R 1で発生したべ一パーはライン V 2から外部に抜き出した。
上記の条件で 8時間連続運転し、 ライン L 3 cから抜き出される反応液を採取 して組成を分析したところ、 7. 4重量0 /0のメチルフエニルカーボネートと 1 · 6重量%のジフエニルカーボネートが検出された。 ライン L 3 cの流量は 149 g/h rであり、 生成したメチルフヱニルカーボネート及ぴジフヱ二ルカーボネ ートは合計で 0. 084mo 1 /h rに相当する。 反応に要した熱量は 73. 2 k J /h rであった。
生成物 1 mo 1当たりのエネルギー効率を求めると、 1 1. 47 X 1 0一4 m o 1 /k Jで、 高いエネルギー効率ではあるものの、 実施例 4より低かった。
以上、 実施例 3、 4、 比較例 3、 4、 5に示されたとおり、 本発明の特定の反 応器を用いることにより、 平衡反応であって平衡が大きく原系に偏っており、 し かも反応速度の遅い芳香族ヒ ドロキシ化合物とジアルキルカーボネートとのエス テル交換反応において、 芳香族カーボネートを高いエネルギー効率で連続的に製 造することができる。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、 本発明の精神と範 囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にと つて明らかである。
本出願は、 2002年 8月 12 日出願の日本特許出願 (特願 2002— 234884)、 2002 年 8月 13 日出願の日本特許出願 (特願 2002— 235385) に基づくものであり、 そ の内容はここに参照として取り込まれる。 く産業上の利用可能性〉
本発明の方法によれば、 軽質留分を留去しつつ液相部分を複数に分画された反 応領域を直列に通すことにより反応平衡を原系に偏らせる脂肪族アルコール等の 軽質留分を極限まで低下させることが多大の設備費を要することなく可能であり、 かつ容易に十分な反応容量を確保することができることから芳香族力ーポネート を高い収率、 高い選択率で連続的に製造できる。 また、 本発明の方法は、 反応温 度、 反応圧力、 滞留時間等に対し、 多様な条件を容易に選択することが可能であ り、 さらに、 きわめて簡略化された装置を用いて極めて高い収率 ·選択率が得ら れるという効果が得られる。