JP2004123629A - ピペラジン誘導体の製造方法および高純度ピペラジン誘導体組成物 - Google Patents
ピペラジン誘導体の製造方法および高純度ピペラジン誘導体組成物 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ピペラジン誘導体の製造法および高純度ピペラジン誘導p体組成物
【解決手段】一般式(1)
【化1】
(式中、R1〜R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数1〜4のアルケニル基、iii)炭素数1〜4のアルキニル基、iV)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアラルキル基、V)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアリール基を示すが、R1〜R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体を含有する組成物をpHが3以下の水溶媒中において、20℃における水との相互溶解度が10重量%以下の有機溶媒を用いて洗浄する。
【選択図】なし
【解決手段】一般式(1)
【化1】
(式中、R1〜R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数1〜4のアルケニル基、iii)炭素数1〜4のアルキニル基、iV)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアラルキル基、V)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアリール基を示すが、R1〜R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体を含有する組成物をpHが3以下の水溶媒中において、20℃における水との相互溶解度が10重量%以下の有機溶媒を用いて洗浄する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造する方法および高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造する方法としては、アミノ基をオキシカルボニル化させる反応が知られている。一般的な方法として、一般式(6)で表されるピペラジン誘導体を、オキシカルボニル化させて、一般式(1)
【0003】
【化6】
【0004】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造する方法が公知であり、有機溶媒−水の混合溶媒中、アルカリ条件下で2相系反応を行う、いわゆるSchotten−Baumannの方法が採用される。これらの詳細な反応条件は、非特許文献1および非特許文献2に記載されている。例えば、前者では炭酸ナトリウム水溶液中でクロロ炭酸ベンジル(Z−Cl)によるベンジルオキシカルボニル化(Z化)を行っている。また、後者では実験例において、カナマイシンA硫酸塩のアミノ基に対して1.3モル倍量のZ−Clを使ってZ化を実施している。
【0005】
その他、特許文献1では、参考例10において、2−メチルピペラジンに対して0.25モル倍量のZ−Clを用い、工業的には一般設備における実施が困難な−78℃の極低温下、ジクロロメタン溶媒中で実施している。この理由は、ピペラジン誘導体が有する2個の窒素原子の両方がZ化されるといった副反応を抑制するためであると考えられる。この場合、Z−Clによる副反応を抑制するため、Z−Clよりも基質である2−メチルピペラジンを多く使用し、極低温下で実施しているが、収率はZ−Clに対して85%、基質に対して21%であり、光学活性体のような高価な基質を用いる場合には、基質/Z−Clのモル比が1より大きい方法は経済的に不利である。さらには、非特許文献3では、N−メシル−N−アシルアニリン誘導体を用いてアシル化、特にZ化、ベンゾイル化、tert−ブトキシカルボニル化(Boc化)等を実施しているが、Z化剤、ベンゾイル化剤、tert−ブトキシカルボニル化剤等のアシル化剤を別途合成する必要があり、工業的には効率的な方法とは言い難い。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−328938号公報
【0007】
【非特許文献1】
プロテクディブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(JOHN WILE Y & SONS,New York,1980)p.218
【0008】
【非特許文献2】
有機化学実験のてびき4−合成反応[II]−”(化学同人,1990)p.24
【0009】
【非特許文献3】
ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイェティー・パーキン・トランス,1,2973(1 998)
【0010】
【本発明が解決しようとする課題】
そこで、水に易溶性のピペラジン誘導体を、成書に示されたSchotten−Baumannの方法に従って液−液2相系で反応させた場合、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体は50%以下と低収率となることが判明し、本発明者等は、このような反応液を精密に分析、評価した結果、一般式(2)〜(5)
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体が副生することが判明した。つまり、公知の方法によりオキシカルボニルピペラジン誘導体を製造した場合、これらの不純物含有量の合計が2液クロ面積%以下となるような高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を合成できないことが分かった。
【0013】
したがって、医薬中間体としても非常に有用な高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体およびその簡便な製造法の創出が求められていた。本発明の目的は、不純物含有量の合計が2液クロ面積%以下となるような高純度オキシカルボニル置換ピペラジンの工業的な製造方法および高純度ピペラジン誘導体組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ピペラジン誘導体をオキシカルボニル化させて、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の製造法について鋭意検討し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、「一般式(1)
【0016】
【化8】
【0017】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体を含有する組成物をpHが3以下の水溶媒中において、20℃における水との相互溶解度が10重量%以下の有機溶媒を用いて洗浄することを特徴とするピペラジン誘導体の製造方法。」
「一般式(1)
【0018】
【化9】
【0019】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体を含有する組成物を240℃以下で蒸留することを特徴とするピペラジン誘導体の製造方法。」および
「一般式(1)
【0020】
【化10】
【0021】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体を含有する組成物に含まれる下記一般式(2)〜(5)
【0022】
【化11】
【0023】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表される不純物含有量の合計が、一般式(1)で表されるピペラジン誘導体含有量と不純物含有量の合計を基準として、2液クロ面積%以下である高純度ピペラジン誘導体組成物。」
である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本反応の具体的な方法を、合成工程、洗浄工程、蒸留工程の3つに分けて例示する。ここで言う「合成工程」とは、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を合成する工程を表し、「洗浄工程」および「蒸留工程」とは、合成工程において取得したオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を、それぞれ洗浄および蒸留により精製する工程を表すものとする。
【0026】
まず、合成工程におけるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の合成法は、特に制限されるものではなく、種々の方法を用いることができるが、一般的には、原料ピペラジン誘導体をオキシカルボニル化剤を用いてオキシカルボニル化する方法が用いられる。
【0027】
つまり、一般式(6)
【0028】
【化12】
【0029】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体に、一般式(7)または一般式(8)
【0030】
【化13】
【0031】
(式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iV)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、V)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を、式中Yは、ハロゲン基を示す。)で表されるオキシカルボニル化剤を作用させて、一般式(1)
【0032】
【化14】
【0033】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iV)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、V)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2,R3,R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造する方法を採用することができ、この方法により合成したオキシカルボニル置換ピペラジンを精製に用いることができる。
【0034】
ここで、一般式(6)で表されるピペラジン誘導体は、1〜4個の置換基で置換されたピペラジン誘導体であり、それらの具体例として、2−メチルピペラジン、2−エチルピペラジン、2−n−ブチルピペラジン、2,3−ジメチルピペラジン、2,3−ジエチル−4,5−ジメチルピペラジン、2−エチル−5−メチルピペラジン、2−メトキシピペラジン、2−イソプロポキシピペラジン、2−n−ブトキシ−5−エチルピペラジン、2−クロロピペラジン、2−ブロモピペラジン、2,6−ジクロロピペラジン、2−メチル−3−クロロピペラジン、2−ピペラジンカルボン酸、2−エチル−3−ピペラジンカルボン酸、2−tert−ブチル−3−ピペラジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボキサミド、2−エチル−3−ピペラジンカルボキサミド、2−tert−ブチルカルボキサミド、3−メトキシ−2−tert−ブチルカルボキサミド、2−n−ブチルカルボキサミドなどを例示することができるが、好ましくは、2−メチルピペラジン、2−エチルピペラジン、2,3−ジメチルピペラジンであり、より好ましくは、2−メチルピペラジンであり、さらに、ラセミ体、光学活性体のいずれでもよい。
【0035】
また、オキシカルボニル化剤としては、”プロテクテイブ・グループス・イン・オルガニック・シンセシス”(JOHN WILEY & SONS,NewYork, 1980)に記載されている化合物を用いることができる。一般式(7)または(8)で表されるオキシカルボニル化剤の具体例として、クロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸ビニル、クロロ炭酸アリル、クロロ炭酸フェニル、クロロ炭酸ベンジル、クロロ炭酸p−ブロモベンジルなどで代表されるクロロ炭酸エステルやジメチルジカーボネート、ジエチルジカーボネート、ジ−tert−ブチルジカーボネート(DiBoc)、ジフェノキシジカーボネート、ジベンジルオキシジカーボネートなどのジカーボネートエステルを挙げることができるが、好ましくは、クロロ炭酸ベンジルやクロロ炭酸エチルなどのクロロ炭酸エステル類およびジ−tert−ブチルジカーボネート(DiBoc)である。
【0036】
一般式(6)で表されるピペラジン誘導体に、一般式(7)あるいは一般式(8)で表されるオキシカルボニル化剤を作用させて得られる一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体は、それらの反応剤に対応して得られるが、具体例としては、1−メトキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−メトキシカルボニル−2−エチルピペラジン、1−メトキシカルボニル−3−メチルピペラジン、2−エチル−1−メトキシカルボニルピペラジン、1−エトキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−tert−ブトキシカルボニル−2−エチルピペラジン、1−tert−ブトキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−tert−ブトキシカルボニル−2,3−ジメチルピペラジン、1−tert−ブトキシ−2−メトキシ−3−メチルピペラジン、1−ビニルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−ビニルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−アリルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−アリルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−メチルプロピニルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−ベンジルオキシカルボニル−3,5−ジメチルピペラジン、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メトキシピペラジン、1−(p−メチルフェニルメチル)オキシカルボニルピペラジン、1−(p−メチルフェニルメチル)オキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−フェノキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−フェノキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−フェノキシカルボニル−2,5−ジメチルピペラジンなどを挙げることができ、ラセミ体、光学活性体のいずれでもよい
また、合成工程で用いる、一般式(6)で表されるピペラジン誘導体は、フリーの状態であっても、また塩を形成していても良い。例えば、後者においては、酒石酸塩、O−、O’−ジ−p−トルオイル酒石酸塩、O−,O’−ジ−p−トルオイル酒石酸塩、O,O’−ジベンゾイル酒石酸塩、O−、O’−ジアニソイル酒石酸塩等の酒石酸類、安息香酸塩、3,5−ジニトロ安息香酸塩、1,3−ベンゼンジカルボン酸塩等の安息香酸類、フェノール、ニトロフェノール、レゾルシノール、カテコール等のフェノール塩、塩酸、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、四塩化銅塩、四臭化銅塩、三塩化コバルト塩等の金属ハロゲン化物塩などを例示できるが、好ましくは酒石酸およびその誘導体との塩である。
【0037】
次に、合成工程で用いる、一般式(7)あるいは一般式(8)で表されるオキシカルボニル化剤の添加量は、通常原料ピペラジン誘導体に対して、0.9〜1.2モル倍量が用いられるが、好ましくは0.95〜1.1モル倍量であり、さらに好ましくは0.98〜1.05モル倍量である。この反応には、ピペラジン骨格の2個の窒素原子のいずれもがオキシカルボニル化される副反応が存在する。この副反応は、オキシカルボニル化剤の使用量が原料ピペラジン誘導体に対して1モル倍量以上の場合に一層起こりやすくなり、1モル倍未満の場合、ピペラジン誘導体が未反応原料として残る可能性が高くなる。したがって、使用量は、原料ピペラジン誘導体の反応性等に応じて適宜変更すべきであるが、0.9〜1.2モル倍量用いるのが経済的に有利である。
【0038】
合成工程における、一般式(7)あるいは一般式(8)で表されるオキシカルボニル化剤の添加条件に、特に制限はないが、一般には温度−25〜60℃の範囲で滴下されるが、好ましくは−10〜40℃、より好ましくは−5〜30℃の範囲である。添加時間は温度に応じて調整すれば良く、特に制限されるものではないが、通常、2〜12時間である。
【0039】
合成工程に用いる反応溶媒は、水に溶解しても、溶解しなくても良いが、20℃における相互溶解度が1重量%以上のものが好ましい。反応溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンタノールなどのアルコール類、ジエチエルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンなどの芳香族炭化水素類、ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素を用いることができるが、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンタノールなどのアルコール類、および、ジエチエルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテルなどのエーテル類であり、より好ましくは、、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンタノールなどのアルコール類であり、さらに、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノールなどの低級アルコール類である。ここで用いる溶媒類は単独で用いても良く、また複数の反応溶媒同士の混合溶媒として用いても良い。また、水を含んだ溶媒は、均一溶液であっても、相分離していても構わないが、均一溶液の状態である方がより好ましい。反応溶媒が水を含む場合、反応溶媒における水の割合、つまり、{水の重量/(水の重量+有機溶媒の重量)}×100(重量%)に従って算出される値は、20重量%以下が好ましく、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0040】
合成工程で用いる反応溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、通常、反応剤を添加する前のピペラジン誘導体の濃度、つまり、{原料ピペラジン誘導体の重量/(原料ピペラジン誘導体の重量+反応溶媒の重量)}×100(重量%)に従って算出される値が、5〜40重量%になるように仕込み、好ましくは5〜30重量%であり、より好ましくは10〜30重量%であり、さらに好ましくは、15〜25重量%である。
【0041】
合成工程で取得したオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体は、酸性反応液中では塩を形成している場合が多く、濃縮等により析出した塩を濾過により回収することもで、さらにはアルカリ条件下で抽出することによりフリーの状態で回収することもできる。
【0042】
しかし、合成工程について本発明者等が鋭意検討した結果、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の純度は、一般式(2)〜(5)で表されるピペラジン誘導体あるいはアルコールの混入により、純度90液クロ面積%以下と非常に低いことが分かった。一般式(2)で表されるピペラジン誘導体は、2個の窒素原子が共にオキシカルボニル化される副反応によって生じた不純物であり、一般式(3)および一般式(4)で表されるピペラジン誘導体は、オキシカルボニル置換基の脱炭酸を経由して生成したと推定される不純物である。さらに、一般式(5)で表されるアルコールは、オキシカルボニル化剤が加水分解された不純物と推定される。つまり、一般的な方法に従って一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造した場合、主に一般式(2)〜(5)で表される不純物の混入により、純度90液クロ面積%以下の低純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体しか得られない。
【0043】
したがって、高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を取得するには、洗浄および/または蒸留に代表される精製工程を付与することが不可欠であると言える。
【0044】
そこで、まず、洗浄工程について具体的な方法を説明する。
【0045】
合成工程で生じる一般式(2)〜(5)で表される4種の不純物の内、一般式(2)で表されるピペラジン誘導体および一般式(5)で表されるアルコールは中性化合物であり、有機溶媒を用いて洗浄することにより、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体から比較的容易に除去することができる。具体的には、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の反応液を酸の添加により酸性水溶液としてオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を酸性塩とする。そこに有機溶媒を添加、攪拌した場合、該塩酸塩は水層側に分配するため、一般式(2)および一般式(5)で表される不純物を有機溶媒層側に抽出し、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体から除去するという方法である。
【0046】
酸性水溶液の調製方法は、特に限定されないが、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の合成反応液に、鉱酸を添加して実施するのが簡便である。鉱酸としては、塩酸、硫酸などが好ましく用いられ、反応液のpHは3以下で実施される。pHが大きいとそれだけ一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体が酸性塩を形成しにくくなるため、洗浄時に有機溶媒中に分配され、回収率低下の原因となる。
【0047】
また、酸性水溶液におけるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の濃度は、通常、5〜40重量%範囲内であり、好ましくは、10〜30重量%の範囲であり、さらに好ましくは、15〜25重量%の範囲である。
【0048】
洗浄工程に用いる有機溶媒は、工業的に入手可能なものならば、特に制限されるものではないが、抽出時のオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の回収率を考慮して、20℃における水との相互溶解度が10%以下のものが用いられる。具体的には、トルエン、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、1−ブタノール、2−ブタノールイソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、イソプロピルエーテル、イソブチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、3−ペンタノン、tert−ブチルメチルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサンノン、2−ヘプタノン等のケトン類を挙げることができるが、好ましくは芳香族炭化水素類およびアルコール類であり、さらに、好ましくは芳香族炭化水素類であり、特に、好ましくはトルエンである。
【0049】
洗浄工程で用いる有機溶媒の使用量は、通常、酸性水溶液に対して、0.3〜10重量倍であり、好ましくは、1〜5重量倍であり、より好ましくは、1〜3重量倍である。洗浄の際、適宜、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等に代表される無機塩を添加し、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体酸性塩を塩析させて回収率を上げることもできる。
【0050】
また、反応工程に用いた反応溶媒の影響により、目的のオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体酸性塩の水層側への分配率が低下するような場合は、反応溶媒を予め、減圧濃縮や共沸等の操作により留去させることで回収率を改善することが可能である。例えば、反応溶媒が水にも有機溶媒にも溶解する場合、酸性水溶液を濃縮温度50〜100℃、4〜100kPaの減圧下で濃縮して反応溶媒を留去した後に洗浄溶媒を添加する。
【0051】
洗浄工程は、通常、0〜80℃の範囲で実施され、好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃である。
【0052】
次に、蒸留工程について具体的に説明する。
【0053】
一般式(3)および(4)で表される不純物は、洗浄工程時の酸性水溶液中において、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体と同様に塩酸塩を形成するため洗浄工程での除去が困難と予想される。
【0054】
したがって、一般式(3)および一般式(4)で表されるピペラジン誘導体は、蒸留によって除去することが可能である。つまり、一般式(3)で表されるピペラジン誘導体は、低沸成分としてカットされ、一般式(4)で表されるピペラジン誘導体は高沸成分としてカットされる。また、蒸留工程では、洗浄工程において除去しきれずに残存した一般式(2)で表されるピペラジン誘導体、および一般式(5)で表されるアルコールを、それぞれ高沸成分、および低沸成分として除去することも可能である。
【0055】
次に、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の熱安定性について説明する。
【0056】
本発明者等は、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の熱安定性を精査に評価、解析した結果、該化合物は部分的に熱分解することが分かった。つまり、オキシカルボニル基は熱により脱炭酸を起こすことが判明した。この化合物の安定性は、温度並びに加熱時間に大きく影響されることを確認した。
【0057】
例えば、純度99.3液クロ面積%の1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンは、120℃、160℃、および200℃で12時間静置した場合、液クロ純度がそれぞれ99.0液クロ面積%、95.6液クロ面積%および59.7液クロ面積%に低下し、一般式(3)で表される化合物に対応する、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジンが0.2液クロ面積%、3.2液クロ面積%、および30.7液クロ面積%に増加することに気付いた。
【0058】
また、該化合物を160℃で1時間静置した場合、純度は98.8液クロ面積%であり、12時間の場合に比べて分解した割合が少ないことが分かる。
【0059】
つまり、一般式(1)で表されるベンジルオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体は、加熱温度が高いほど、また、加熱時間が長いほど分解し易いと言える。
【0060】
したがって、蒸留工程では、温度や時間の操作条件に注意する必要があり、蒸留操作は、減圧度を最大にして、できる限り低温で、且つ加熱時間を短時間で実施するのが好ましい。具体的には、缶内温度が240℃以下が好ましいと言える。
【0061】
蒸留時の圧力は、低いほど好ましく、具体的には、1.33〜1330Paであり、好ましくは1.33〜133Paである。
【0062】
設備的には、バッチ式蒸留装置および薄膜蒸留装置いずれを用いることもできる。
バッチ式蒸留装置の場合、加熱時間を短縮するために原料の仕込量は蒸留缶全容量に対して1/2以下が好ましく、より好ましくは1/3以下であり、さらに好ましくは1/4以下である。こうした工夫により、蒸留原料の熱履歴時間を短縮することができ、熱分解を削減することができる。
【0063】
一方、薄膜蒸留装置の場合、原料フィード速度は、薄膜部分の温度、内圧、薄膜蒸留設備のサイズや機器仕様、あるいはピペラジン誘導体の種類によって異なる。オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の沸点に応じて、缶内圧力、熱源温度および原料フィード速度を調整することにより蒸留条件を最適化するのが好ましい。具体的には、伝熱面積が0.005〜0.02m2の薄膜蒸留器を使用する場合、缶内圧力は1.33〜133Pa、原料フィード速度は2〜30L/hが好ましく、更に好ましくは1.33〜133Pa、5〜20L/hである。
【0064】
いずれの装置で蒸留する場合も、原料中に低沸点の溶媒が1〜10重量%含まれている場合、予め、より低温で、例えば150℃で低沸カットを実施して該溶媒の含有量を2重量%以下とした後に、製品蒸留を実施するのが好ましい。
【0065】
いずれの装置を用いた場合にも蒸留工程を実施することは可能であるが、より好ましくは薄膜蒸留装置である。実験室スケールでは両方の装置による差は明確に現れないが、工業的スケールにおいて蒸留を実施した場合、薄膜蒸留装置がより有利と考えられる。その場合、蒸留後半の留分は長時間の熱履歴を受けるために薄膜蒸留装置の場合、加熱源との接触時間が最短に抑えられるため、加熱源の温度をバッチ式蒸留装置の場合に比べて高くすることが可能となり、熱的に不安定な高沸点化合物の蒸留により適していると言える。したがって、本発明におけるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の蒸留に適していると言える。蒸留工程を実施すれば、洗浄工程で除去できなかった一般式(2)および一般式(3)で表される不純物を除去することができる。
【0066】
したがって、蒸留工程は、洗浄工程と組み合わせて実施すると、より一層効果を発揮する。
【0067】
次に、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体に含まれる、一般式(2)〜(5)で表される不純物の測定方法、並びに液クロ面積百分率を元に算出する不純物含有量の算出方法について説明する。
【0068】
一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体に含まれる不純物含量の測定には、液体クロマトグラフィーが用いられる。分析に用いられる液体クロマトグラフィー用分析カラムは、オクタデシル系組成物からなる充填剤のカラムを用いる。具体的には、カプセルパック C18,120Å,5μm,4.6mm×150mm(資生堂)を用いると良い。
【0069】
以下、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンの分析条件を具体的に示す。
【0070】
移動相は、5mM ドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSと略す)水溶液(pH2.5,リン酸)/アセトニトリルであり、経時的にその組成を変化させるグラジエント方式で分析する。つまり、移動相中のアセトニトリル含有量を、分析開始から15分までは31容量%、その後、10分かけて45容量%まで一定の割合でアセトニトリル含有量を増やし、25〜40分は45容量%とする。検出器は、UV測定装置を用い、検出波長は210nmとする。この検出波長は非常に重要であり、検出波長を変化させると分析値が変化する可能性がある。これは、化合物によってUV吸収の極大波長が異なるためであり、本系においては一般式(1)〜(5)で表される化合物の吸収感度の比が0.6〜1.5である、波長210〜230nmとするのが良い。カラムオーブンの温度は40℃で分析を行う。以上の分析条件で分析を行った場合、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンおよび一般式(2)〜(5)に相当する不純物、つまり、1,4−ビス(カルボベンジルオキシ)−2−メチルピペラジン、1−ベンジル−3−メチルピペラジン、4−ベンジルオキシカルボニル−1−ベンジル−2−メチルピペラジン、ベンジルアルコールの保持時間は、順番に、23.1分、31.0分、31.0分、30.0分、2.7分である。これらの面積百分率の値を用いて不純物含有量を求めることができる。
【0071】
本発明において、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体に含まれる、一般式(2)〜(5)で表される不純物の含量は、一般式(2)〜(5)で表される不純物と一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の合計を基準として、つまり、算出式
{A1/(A1+A2+A3+A4+A5)}×100(%)にしたがって求めることができる。ここで、A1、A2、A3、A4およびA5は、それぞれ、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の面積百分率、一般式(2)で表される不純物の面積百分率、一般式(3)で表される不純物の面積百分率、一般式(4)で表される不純物の面積百分率、および一般式(5)で表される不純物の面積百分率を表す。同様にして、各不純物の含有量を求めることができる。例えば、一般式(2)で表される不純物については、{A2/(A1+A2+A3+A4+A5)}×100(%)にしたがって求めることができる。
【0072】
本発明により、不純物含量の合計が2液クロ面積%以下となるような高純度オキシカルボニル置換ピペラジンの工業的な製造方法および高純度ピペラジン誘導体組成物を提供することができ、本発明は、光学活性体の精製において、特に有用である。
【0073】
かくして得たピペラジン誘導体は、医薬品の原料等として有用な化合物である。
【0074】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
なお、反応液中の生成物含量および主な不純物含有量の分析は、液体クロマトグラフィーにより行った。ここでは、2−メチルピペラジンのベンジルオキシカルボニル化反応時の分析条件を以下に示した。
サンプル前処理
50mlメスフラスコに1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン約0.1g相当のサンプルを採取し、アセトニトリルを用いて標線まで希釈する。次に、この溶液の内、0.3mlを5mlサンプル瓶に採取し、O,O’−ジ−p−トルオイル−D−酒石酸無水物溶液1.5mlを添加し、攪拌後、70℃の温浴で1h静置する。その後、2%リン酸水0.5mlを添加し、10分間静置する。
【0076】
得られた1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンの純度は、本文中記載の算出式にしたがって求めた。
【0077】
実際の実験は、反応工程、洗浄工程および蒸留工程の3つからなり、必要に応じて洗浄工程、蒸留工程を省略して実施した。
【0078】
実施例1(洗浄工程あり、蒸留工程なし)
<反応工程>
100ml四つ口フラスコにラセミ体の2−メチルピペラジン5.0g(=0.0499モル)を取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<洗浄工程>
その後、0℃で2時間攪拌した後、1−ブタノール31gを減圧留去させ、水30gを添加した後、35%塩酸水でpHを0.8に調整した。次に、トルエン22gを加え、30分攪拌後、上層を除去し、再びトルエンを同量加え、同様の操作を繰り返し、洗浄操作を実施した。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応液内のpHを11.5とした。この際、遊離した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンにより白濁した。この白濁液にトルエン40gを加え30分攪拌後、下層を除去した。上層は60〜70℃の温度で減圧濃縮後、トルエンを留去して1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン10.13gを得た。
【0079】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが98.0液クロ面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.40液クロ面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.04液クロ面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.10液クロ面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン未検出(溶媒トルエンが1.46液クロ面積%)であった。したがって、不純物の合計は0.55液クロ面積%であった。
【0080】
実施例2(洗浄工程なし、蒸留工程あり)
<反応工程>
100ml四つ口フラスコにラセミ体の2−メチルピペラジン5.0(=0.0499モル)gを取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5液クロ面積%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<蒸留工程>
反応工程において取得した、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン10.2gを10mlのハート型フラスコに採取し、真空下で蒸留を行った。オイルバスが170℃から留出が始まり、最終的に200℃まで昇温した。留分の沸点は、170℃/200Paであった。
【0081】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが99.1液クロ面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.32液クロ面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.42液クロ面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.15液クロ面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン(溶媒トルエンは未検出)未検出であり、不純物の合計は0.89液クロ面積%であった。
【0082】
実施例3(洗浄工程あり、蒸留工程あり)
<反応工程>
100ml四つ口フラスコにラセミ体の2−メチルピペラジン5.0(=0.0499モル)gを取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5重量%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<洗浄工程>
その後、0℃で2時間攪拌した後、1−ブタノール28gを減圧留去させ、水30gを添加した後、35%塩酸水でpHを0.7に調整した。次に、トルエン22gを加え、30分攪拌後、上層を除去し、再びトルエンを同量加え、同様の操作を繰り返し、洗浄操作を実施した。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応液内のpHを11.8とした。この際、遊離した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンにより白濁した。この白濁液にトルエン40gを加え30分攪拌後、下層を除去した。上層は60〜70℃の温度で減圧濃縮後、トルエンを留去して留分8.59gを取得した。
<蒸留工程>
実施例1と全く同様の方法により取得した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン10.32gを10mlのハート型フラスコに採取し、真空下で蒸留を行った。オイルバスが145℃から留出が始まり、最終的に170℃まで昇温した。内圧は40〜53Paで、塔頂部の温度は131〜140℃であった。
【0083】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが99.7液クロ面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.03液クロ面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン液クロ面積0.18液クロ面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.04液クロ面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン(および溶媒トルエン)が未検出であった。したがって、不純物の合計は0.25液クロ面積%であった。
【0084】
実施例4(洗浄工程あり、蒸留工程あり)
<反応工程>
100ml四つ口フラスコにの(S)−2−メチルピペラジン5.0(=0.0499モル、光学純度99.4%ee.)gを取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5重量%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<洗浄工程>
その後、0℃で2時間攪拌した後、1−ブタノール30gを減圧留去させ、水30gを添加した後、35%塩酸水でpHを1.0に調整した。次に、トルエン22gを加え、30分攪拌後、上層を除去し、再びトルエンを同量加え、同様の操作を繰り返し、洗浄操作を実施した。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応液内のpHを11.8とした。この際、遊離した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンにより白濁した。この白濁液にトルエン40gを加え30分攪拌後、下層を除去した。上層は60〜70℃の温度で減圧濃縮後、トルエンを留去して、留分8.65gを取得した。
<蒸留工程>
実施例1の合成工程と全く同様の方法により取得した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン10.32gを10mlのハート型フラスコに採取し、真空下で蒸留を行った。オイルバスが145℃から留出が始まり、最終的に170℃まで昇温した。内圧は40〜53Paで、塔頂部の温度は131〜140℃であった。
【0085】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが99.7面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.03面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.12面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.08面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン(および溶媒トルエンは)未検出であった。したがって、不純物の合計は0.23重量%であった。また、光学純度は99.4%ee.であった。
【0086】
実施例5(洗浄工程あり、蒸留工程あり)
<反応工程>
1l四つ口フラスコにの(S)−2−メチルピペラジン50.0(=0.499モル、光学純度99.4%ee.)gを取り、1−ブタノール440gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル92.5g(=0.534モル,純度98.5重量%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<洗浄工程>
その後、0℃で2時間攪拌した後、1−ブタノール300gを減圧留去させ、水300gを添加した後、35%塩酸水でpHを1.0に調整した。次に、トルエン220gを加え、30分攪拌後、上層を除去し、再びトルエンを同量加え、同様の操作を繰り返し、洗浄操作を実施した。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応液内のpHを12.1とした。この際、遊離した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンにより白濁した。この白濁液にトルエン400gを加え30分攪拌後、下層を除去した。上層は60〜70℃の温度で減圧濃縮後、トルエンを留去して、留分88.5gを取得した。
<蒸留工程>
取得した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン85.0gを送液ポンプを用いて、薄膜蒸留装置(伝熱面積0.02m2)に0.6L/hで供給した。熱媒の温度は150℃であり、真空度は360Paにて低沸カットを実施し、缶残液82.8gを取得した。
【0087】
次に、缶残液を再び送液ポンプを用いて、同一の薄膜蒸留装置に0.6L/hで供給した。熱媒の温度は220℃であり、真空度は87〜116Paにて製品蒸留を実施し、留分76.1gを得た。
【0088】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが99.4液クロ面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.25液クロ面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.03液クロ面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.02液クロ面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジンは未検出(および溶媒トルエンは0.08面積%)であった。したがって、不純物の合計は0.30液クロ面積%であった。また、光学純度は99.4%ee.であった。
【0089】
比較例(洗浄工程なし、蒸留工程なし)
100ml四つ口フラスコにラセミ体の2−メチルピペラジン5.0(=0.0499モル)gを取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5重量%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
【0090】
実施例1と全く同様の方法により取得した1−ブタノールを留去した濃縮液に、水30gを添加し、48%水酸化ナトリウムを用いてpHを11.2とした。その液にトルエン40gを加え、下層を除去した後、上層を減圧濃縮しトルエンを留去して、製品11.1gを得た。
【0091】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが87.2面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.52面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.01面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.10面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン11.9面積%(溶媒トルエンが1.9面積%)であった。したがって、不純物の合計は12.6重量%であった。
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、ピペラジン誘導体の副反応などにより混入する不純物を効率よく取り除く方法を提供することができ、本発明により得られるピペラジン誘導体は不純物の混入量が極めて少ない。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造する方法および高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造する方法としては、アミノ基をオキシカルボニル化させる反応が知られている。一般的な方法として、一般式(6)で表されるピペラジン誘導体を、オキシカルボニル化させて、一般式(1)
【0003】
【化6】
【0004】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造する方法が公知であり、有機溶媒−水の混合溶媒中、アルカリ条件下で2相系反応を行う、いわゆるSchotten−Baumannの方法が採用される。これらの詳細な反応条件は、非特許文献1および非特許文献2に記載されている。例えば、前者では炭酸ナトリウム水溶液中でクロロ炭酸ベンジル(Z−Cl)によるベンジルオキシカルボニル化(Z化)を行っている。また、後者では実験例において、カナマイシンA硫酸塩のアミノ基に対して1.3モル倍量のZ−Clを使ってZ化を実施している。
【0005】
その他、特許文献1では、参考例10において、2−メチルピペラジンに対して0.25モル倍量のZ−Clを用い、工業的には一般設備における実施が困難な−78℃の極低温下、ジクロロメタン溶媒中で実施している。この理由は、ピペラジン誘導体が有する2個の窒素原子の両方がZ化されるといった副反応を抑制するためであると考えられる。この場合、Z−Clによる副反応を抑制するため、Z−Clよりも基質である2−メチルピペラジンを多く使用し、極低温下で実施しているが、収率はZ−Clに対して85%、基質に対して21%であり、光学活性体のような高価な基質を用いる場合には、基質/Z−Clのモル比が1より大きい方法は経済的に不利である。さらには、非特許文献3では、N−メシル−N−アシルアニリン誘導体を用いてアシル化、特にZ化、ベンゾイル化、tert−ブトキシカルボニル化(Boc化)等を実施しているが、Z化剤、ベンゾイル化剤、tert−ブトキシカルボニル化剤等のアシル化剤を別途合成する必要があり、工業的には効率的な方法とは言い難い。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−328938号公報
【0007】
【非特許文献1】
プロテクディブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(JOHN WILE Y & SONS,New York,1980)p.218
【0008】
【非特許文献2】
有機化学実験のてびき4−合成反応[II]−”(化学同人,1990)p.24
【0009】
【非特許文献3】
ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイェティー・パーキン・トランス,1,2973(1 998)
【0010】
【本発明が解決しようとする課題】
そこで、水に易溶性のピペラジン誘導体を、成書に示されたSchotten−Baumannの方法に従って液−液2相系で反応させた場合、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体は50%以下と低収率となることが判明し、本発明者等は、このような反応液を精密に分析、評価した結果、一般式(2)〜(5)
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体が副生することが判明した。つまり、公知の方法によりオキシカルボニルピペラジン誘導体を製造した場合、これらの不純物含有量の合計が2液クロ面積%以下となるような高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を合成できないことが分かった。
【0013】
したがって、医薬中間体としても非常に有用な高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体およびその簡便な製造法の創出が求められていた。本発明の目的は、不純物含有量の合計が2液クロ面積%以下となるような高純度オキシカルボニル置換ピペラジンの工業的な製造方法および高純度ピペラジン誘導体組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ピペラジン誘導体をオキシカルボニル化させて、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の製造法について鋭意検討し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、「一般式(1)
【0016】
【化8】
【0017】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体を含有する組成物をpHが3以下の水溶媒中において、20℃における水との相互溶解度が10重量%以下の有機溶媒を用いて洗浄することを特徴とするピペラジン誘導体の製造方法。」
「一般式(1)
【0018】
【化9】
【0019】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体を含有する組成物を240℃以下で蒸留することを特徴とするピペラジン誘導体の製造方法。」および
「一般式(1)
【0020】
【化10】
【0021】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体を含有する組成物に含まれる下記一般式(2)〜(5)
【0022】
【化11】
【0023】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iv)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアラルキル基、v)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表される不純物含有量の合計が、一般式(1)で表されるピペラジン誘導体含有量と不純物含有量の合計を基準として、2液クロ面積%以下である高純度ピペラジン誘導体組成物。」
である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本反応の具体的な方法を、合成工程、洗浄工程、蒸留工程の3つに分けて例示する。ここで言う「合成工程」とは、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を合成する工程を表し、「洗浄工程」および「蒸留工程」とは、合成工程において取得したオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を、それぞれ洗浄および蒸留により精製する工程を表すものとする。
【0026】
まず、合成工程におけるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の合成法は、特に制限されるものではなく、種々の方法を用いることができるが、一般的には、原料ピペラジン誘導体をオキシカルボニル化剤を用いてオキシカルボニル化する方法が用いられる。
【0027】
つまり、一般式(6)
【0028】
【化12】
【0029】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示すが、R1、R2、R3、R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるピペラジン誘導体に、一般式(7)または一般式(8)
【0030】
【化13】
【0031】
(式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iV)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、V)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を、式中Yは、ハロゲン基を示す。)で表されるオキシカルボニル化剤を作用させて、一般式(1)
【0032】
【化14】
【0033】
(式中、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていても良く、i)水素原子、ii)炭素数1〜4のアルキル基、iii)炭素数1〜4のアルコキシ基、iv)ハロゲン基、v)カルボキシル基、vi)カルバモイル基、vii)アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルカルバモイル基を示し、式中Xは、i)炭素数1〜4のアルキル基、ii)炭素数2〜4のアルケニル基、iii)炭素数2〜4のアルキニル基、iV)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアラルキル基、V)芳香環が、無置換、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、あるいはハロゲン基で置換されたアリール基を示すが、R1、R2,R3,R4の全てが水素原子である場合を除く。)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造する方法を採用することができ、この方法により合成したオキシカルボニル置換ピペラジンを精製に用いることができる。
【0034】
ここで、一般式(6)で表されるピペラジン誘導体は、1〜4個の置換基で置換されたピペラジン誘導体であり、それらの具体例として、2−メチルピペラジン、2−エチルピペラジン、2−n−ブチルピペラジン、2,3−ジメチルピペラジン、2,3−ジエチル−4,5−ジメチルピペラジン、2−エチル−5−メチルピペラジン、2−メトキシピペラジン、2−イソプロポキシピペラジン、2−n−ブトキシ−5−エチルピペラジン、2−クロロピペラジン、2−ブロモピペラジン、2,6−ジクロロピペラジン、2−メチル−3−クロロピペラジン、2−ピペラジンカルボン酸、2−エチル−3−ピペラジンカルボン酸、2−tert−ブチル−3−ピペラジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボキサミド、2−エチル−3−ピペラジンカルボキサミド、2−tert−ブチルカルボキサミド、3−メトキシ−2−tert−ブチルカルボキサミド、2−n−ブチルカルボキサミドなどを例示することができるが、好ましくは、2−メチルピペラジン、2−エチルピペラジン、2,3−ジメチルピペラジンであり、より好ましくは、2−メチルピペラジンであり、さらに、ラセミ体、光学活性体のいずれでもよい。
【0035】
また、オキシカルボニル化剤としては、”プロテクテイブ・グループス・イン・オルガニック・シンセシス”(JOHN WILEY & SONS,NewYork, 1980)に記載されている化合物を用いることができる。一般式(7)または(8)で表されるオキシカルボニル化剤の具体例として、クロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸ビニル、クロロ炭酸アリル、クロロ炭酸フェニル、クロロ炭酸ベンジル、クロロ炭酸p−ブロモベンジルなどで代表されるクロロ炭酸エステルやジメチルジカーボネート、ジエチルジカーボネート、ジ−tert−ブチルジカーボネート(DiBoc)、ジフェノキシジカーボネート、ジベンジルオキシジカーボネートなどのジカーボネートエステルを挙げることができるが、好ましくは、クロロ炭酸ベンジルやクロロ炭酸エチルなどのクロロ炭酸エステル類およびジ−tert−ブチルジカーボネート(DiBoc)である。
【0036】
一般式(6)で表されるピペラジン誘導体に、一般式(7)あるいは一般式(8)で表されるオキシカルボニル化剤を作用させて得られる一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体は、それらの反応剤に対応して得られるが、具体例としては、1−メトキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−メトキシカルボニル−2−エチルピペラジン、1−メトキシカルボニル−3−メチルピペラジン、2−エチル−1−メトキシカルボニルピペラジン、1−エトキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−tert−ブトキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−tert−ブトキシカルボニル−2−エチルピペラジン、1−tert−ブトキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−tert−ブトキシカルボニル−2,3−ジメチルピペラジン、1−tert−ブトキシ−2−メトキシ−3−メチルピペラジン、1−ビニルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−ビニルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−アリルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−アリルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−メチルプロピニルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−ベンジルオキシカルボニル−3,5−ジメチルピペラジン、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メトキシピペラジン、1−(p−メチルフェニルメチル)オキシカルボニルピペラジン、1−(p−メチルフェニルメチル)オキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−フェノキシカルボニル−2−メチルピペラジン、1−フェノキシカルボニル−3−メチルピペラジン、1−フェノキシカルボニル−2,5−ジメチルピペラジンなどを挙げることができ、ラセミ体、光学活性体のいずれでもよい
また、合成工程で用いる、一般式(6)で表されるピペラジン誘導体は、フリーの状態であっても、また塩を形成していても良い。例えば、後者においては、酒石酸塩、O−、O’−ジ−p−トルオイル酒石酸塩、O−,O’−ジ−p−トルオイル酒石酸塩、O,O’−ジベンゾイル酒石酸塩、O−、O’−ジアニソイル酒石酸塩等の酒石酸類、安息香酸塩、3,5−ジニトロ安息香酸塩、1,3−ベンゼンジカルボン酸塩等の安息香酸類、フェノール、ニトロフェノール、レゾルシノール、カテコール等のフェノール塩、塩酸、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、四塩化銅塩、四臭化銅塩、三塩化コバルト塩等の金属ハロゲン化物塩などを例示できるが、好ましくは酒石酸およびその誘導体との塩である。
【0037】
次に、合成工程で用いる、一般式(7)あるいは一般式(8)で表されるオキシカルボニル化剤の添加量は、通常原料ピペラジン誘導体に対して、0.9〜1.2モル倍量が用いられるが、好ましくは0.95〜1.1モル倍量であり、さらに好ましくは0.98〜1.05モル倍量である。この反応には、ピペラジン骨格の2個の窒素原子のいずれもがオキシカルボニル化される副反応が存在する。この副反応は、オキシカルボニル化剤の使用量が原料ピペラジン誘導体に対して1モル倍量以上の場合に一層起こりやすくなり、1モル倍未満の場合、ピペラジン誘導体が未反応原料として残る可能性が高くなる。したがって、使用量は、原料ピペラジン誘導体の反応性等に応じて適宜変更すべきであるが、0.9〜1.2モル倍量用いるのが経済的に有利である。
【0038】
合成工程における、一般式(7)あるいは一般式(8)で表されるオキシカルボニル化剤の添加条件に、特に制限はないが、一般には温度−25〜60℃の範囲で滴下されるが、好ましくは−10〜40℃、より好ましくは−5〜30℃の範囲である。添加時間は温度に応じて調整すれば良く、特に制限されるものではないが、通常、2〜12時間である。
【0039】
合成工程に用いる反応溶媒は、水に溶解しても、溶解しなくても良いが、20℃における相互溶解度が1重量%以上のものが好ましい。反応溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンタノールなどのアルコール類、ジエチエルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンなどの芳香族炭化水素類、ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素を用いることができるが、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンタノールなどのアルコール類、および、ジエチエルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテルなどのエーテル類であり、より好ましくは、、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンタノールなどのアルコール類であり、さらに、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノールなどの低級アルコール類である。ここで用いる溶媒類は単独で用いても良く、また複数の反応溶媒同士の混合溶媒として用いても良い。また、水を含んだ溶媒は、均一溶液であっても、相分離していても構わないが、均一溶液の状態である方がより好ましい。反応溶媒が水を含む場合、反応溶媒における水の割合、つまり、{水の重量/(水の重量+有機溶媒の重量)}×100(重量%)に従って算出される値は、20重量%以下が好ましく、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0040】
合成工程で用いる反応溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、通常、反応剤を添加する前のピペラジン誘導体の濃度、つまり、{原料ピペラジン誘導体の重量/(原料ピペラジン誘導体の重量+反応溶媒の重量)}×100(重量%)に従って算出される値が、5〜40重量%になるように仕込み、好ましくは5〜30重量%であり、より好ましくは10〜30重量%であり、さらに好ましくは、15〜25重量%である。
【0041】
合成工程で取得したオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体は、酸性反応液中では塩を形成している場合が多く、濃縮等により析出した塩を濾過により回収することもで、さらにはアルカリ条件下で抽出することによりフリーの状態で回収することもできる。
【0042】
しかし、合成工程について本発明者等が鋭意検討した結果、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の純度は、一般式(2)〜(5)で表されるピペラジン誘導体あるいはアルコールの混入により、純度90液クロ面積%以下と非常に低いことが分かった。一般式(2)で表されるピペラジン誘導体は、2個の窒素原子が共にオキシカルボニル化される副反応によって生じた不純物であり、一般式(3)および一般式(4)で表されるピペラジン誘導体は、オキシカルボニル置換基の脱炭酸を経由して生成したと推定される不純物である。さらに、一般式(5)で表されるアルコールは、オキシカルボニル化剤が加水分解された不純物と推定される。つまり、一般的な方法に従って一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を製造した場合、主に一般式(2)〜(5)で表される不純物の混入により、純度90液クロ面積%以下の低純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体しか得られない。
【0043】
したがって、高純度オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を取得するには、洗浄および/または蒸留に代表される精製工程を付与することが不可欠であると言える。
【0044】
そこで、まず、洗浄工程について具体的な方法を説明する。
【0045】
合成工程で生じる一般式(2)〜(5)で表される4種の不純物の内、一般式(2)で表されるピペラジン誘導体および一般式(5)で表されるアルコールは中性化合物であり、有機溶媒を用いて洗浄することにより、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体から比較的容易に除去することができる。具体的には、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の反応液を酸の添加により酸性水溶液としてオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体を酸性塩とする。そこに有機溶媒を添加、攪拌した場合、該塩酸塩は水層側に分配するため、一般式(2)および一般式(5)で表される不純物を有機溶媒層側に抽出し、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体から除去するという方法である。
【0046】
酸性水溶液の調製方法は、特に限定されないが、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の合成反応液に、鉱酸を添加して実施するのが簡便である。鉱酸としては、塩酸、硫酸などが好ましく用いられ、反応液のpHは3以下で実施される。pHが大きいとそれだけ一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体が酸性塩を形成しにくくなるため、洗浄時に有機溶媒中に分配され、回収率低下の原因となる。
【0047】
また、酸性水溶液におけるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の濃度は、通常、5〜40重量%範囲内であり、好ましくは、10〜30重量%の範囲であり、さらに好ましくは、15〜25重量%の範囲である。
【0048】
洗浄工程に用いる有機溶媒は、工業的に入手可能なものならば、特に制限されるものではないが、抽出時のオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の回収率を考慮して、20℃における水との相互溶解度が10%以下のものが用いられる。具体的には、トルエン、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、1−ブタノール、2−ブタノールイソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、イソプロピルエーテル、イソブチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、3−ペンタノン、tert−ブチルメチルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサンノン、2−ヘプタノン等のケトン類を挙げることができるが、好ましくは芳香族炭化水素類およびアルコール類であり、さらに、好ましくは芳香族炭化水素類であり、特に、好ましくはトルエンである。
【0049】
洗浄工程で用いる有機溶媒の使用量は、通常、酸性水溶液に対して、0.3〜10重量倍であり、好ましくは、1〜5重量倍であり、より好ましくは、1〜3重量倍である。洗浄の際、適宜、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等に代表される無機塩を添加し、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体酸性塩を塩析させて回収率を上げることもできる。
【0050】
また、反応工程に用いた反応溶媒の影響により、目的のオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体酸性塩の水層側への分配率が低下するような場合は、反応溶媒を予め、減圧濃縮や共沸等の操作により留去させることで回収率を改善することが可能である。例えば、反応溶媒が水にも有機溶媒にも溶解する場合、酸性水溶液を濃縮温度50〜100℃、4〜100kPaの減圧下で濃縮して反応溶媒を留去した後に洗浄溶媒を添加する。
【0051】
洗浄工程は、通常、0〜80℃の範囲で実施され、好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃である。
【0052】
次に、蒸留工程について具体的に説明する。
【0053】
一般式(3)および(4)で表される不純物は、洗浄工程時の酸性水溶液中において、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体と同様に塩酸塩を形成するため洗浄工程での除去が困難と予想される。
【0054】
したがって、一般式(3)および一般式(4)で表されるピペラジン誘導体は、蒸留によって除去することが可能である。つまり、一般式(3)で表されるピペラジン誘導体は、低沸成分としてカットされ、一般式(4)で表されるピペラジン誘導体は高沸成分としてカットされる。また、蒸留工程では、洗浄工程において除去しきれずに残存した一般式(2)で表されるピペラジン誘導体、および一般式(5)で表されるアルコールを、それぞれ高沸成分、および低沸成分として除去することも可能である。
【0055】
次に、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の熱安定性について説明する。
【0056】
本発明者等は、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の熱安定性を精査に評価、解析した結果、該化合物は部分的に熱分解することが分かった。つまり、オキシカルボニル基は熱により脱炭酸を起こすことが判明した。この化合物の安定性は、温度並びに加熱時間に大きく影響されることを確認した。
【0057】
例えば、純度99.3液クロ面積%の1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンは、120℃、160℃、および200℃で12時間静置した場合、液クロ純度がそれぞれ99.0液クロ面積%、95.6液クロ面積%および59.7液クロ面積%に低下し、一般式(3)で表される化合物に対応する、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジンが0.2液クロ面積%、3.2液クロ面積%、および30.7液クロ面積%に増加することに気付いた。
【0058】
また、該化合物を160℃で1時間静置した場合、純度は98.8液クロ面積%であり、12時間の場合に比べて分解した割合が少ないことが分かる。
【0059】
つまり、一般式(1)で表されるベンジルオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体は、加熱温度が高いほど、また、加熱時間が長いほど分解し易いと言える。
【0060】
したがって、蒸留工程では、温度や時間の操作条件に注意する必要があり、蒸留操作は、減圧度を最大にして、できる限り低温で、且つ加熱時間を短時間で実施するのが好ましい。具体的には、缶内温度が240℃以下が好ましいと言える。
【0061】
蒸留時の圧力は、低いほど好ましく、具体的には、1.33〜1330Paであり、好ましくは1.33〜133Paである。
【0062】
設備的には、バッチ式蒸留装置および薄膜蒸留装置いずれを用いることもできる。
バッチ式蒸留装置の場合、加熱時間を短縮するために原料の仕込量は蒸留缶全容量に対して1/2以下が好ましく、より好ましくは1/3以下であり、さらに好ましくは1/4以下である。こうした工夫により、蒸留原料の熱履歴時間を短縮することができ、熱分解を削減することができる。
【0063】
一方、薄膜蒸留装置の場合、原料フィード速度は、薄膜部分の温度、内圧、薄膜蒸留設備のサイズや機器仕様、あるいはピペラジン誘導体の種類によって異なる。オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の沸点に応じて、缶内圧力、熱源温度および原料フィード速度を調整することにより蒸留条件を最適化するのが好ましい。具体的には、伝熱面積が0.005〜0.02m2の薄膜蒸留器を使用する場合、缶内圧力は1.33〜133Pa、原料フィード速度は2〜30L/hが好ましく、更に好ましくは1.33〜133Pa、5〜20L/hである。
【0064】
いずれの装置で蒸留する場合も、原料中に低沸点の溶媒が1〜10重量%含まれている場合、予め、より低温で、例えば150℃で低沸カットを実施して該溶媒の含有量を2重量%以下とした後に、製品蒸留を実施するのが好ましい。
【0065】
いずれの装置を用いた場合にも蒸留工程を実施することは可能であるが、より好ましくは薄膜蒸留装置である。実験室スケールでは両方の装置による差は明確に現れないが、工業的スケールにおいて蒸留を実施した場合、薄膜蒸留装置がより有利と考えられる。その場合、蒸留後半の留分は長時間の熱履歴を受けるために薄膜蒸留装置の場合、加熱源との接触時間が最短に抑えられるため、加熱源の温度をバッチ式蒸留装置の場合に比べて高くすることが可能となり、熱的に不安定な高沸点化合物の蒸留により適していると言える。したがって、本発明におけるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の蒸留に適していると言える。蒸留工程を実施すれば、洗浄工程で除去できなかった一般式(2)および一般式(3)で表される不純物を除去することができる。
【0066】
したがって、蒸留工程は、洗浄工程と組み合わせて実施すると、より一層効果を発揮する。
【0067】
次に、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体に含まれる、一般式(2)〜(5)で表される不純物の測定方法、並びに液クロ面積百分率を元に算出する不純物含有量の算出方法について説明する。
【0068】
一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体に含まれる不純物含量の測定には、液体クロマトグラフィーが用いられる。分析に用いられる液体クロマトグラフィー用分析カラムは、オクタデシル系組成物からなる充填剤のカラムを用いる。具体的には、カプセルパック C18,120Å,5μm,4.6mm×150mm(資生堂)を用いると良い。
【0069】
以下、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンの分析条件を具体的に示す。
【0070】
移動相は、5mM ドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSと略す)水溶液(pH2.5,リン酸)/アセトニトリルであり、経時的にその組成を変化させるグラジエント方式で分析する。つまり、移動相中のアセトニトリル含有量を、分析開始から15分までは31容量%、その後、10分かけて45容量%まで一定の割合でアセトニトリル含有量を増やし、25〜40分は45容量%とする。検出器は、UV測定装置を用い、検出波長は210nmとする。この検出波長は非常に重要であり、検出波長を変化させると分析値が変化する可能性がある。これは、化合物によってUV吸収の極大波長が異なるためであり、本系においては一般式(1)〜(5)で表される化合物の吸収感度の比が0.6〜1.5である、波長210〜230nmとするのが良い。カラムオーブンの温度は40℃で分析を行う。以上の分析条件で分析を行った場合、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンおよび一般式(2)〜(5)に相当する不純物、つまり、1,4−ビス(カルボベンジルオキシ)−2−メチルピペラジン、1−ベンジル−3−メチルピペラジン、4−ベンジルオキシカルボニル−1−ベンジル−2−メチルピペラジン、ベンジルアルコールの保持時間は、順番に、23.1分、31.0分、31.0分、30.0分、2.7分である。これらの面積百分率の値を用いて不純物含有量を求めることができる。
【0071】
本発明において、オキシカルボニル置換ピペラジン誘導体に含まれる、一般式(2)〜(5)で表される不純物の含量は、一般式(2)〜(5)で表される不純物と一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の合計を基準として、つまり、算出式
{A1/(A1+A2+A3+A4+A5)}×100(%)にしたがって求めることができる。ここで、A1、A2、A3、A4およびA5は、それぞれ、一般式(1)で表されるオキシカルボニル置換ピペラジン誘導体の面積百分率、一般式(2)で表される不純物の面積百分率、一般式(3)で表される不純物の面積百分率、一般式(4)で表される不純物の面積百分率、および一般式(5)で表される不純物の面積百分率を表す。同様にして、各不純物の含有量を求めることができる。例えば、一般式(2)で表される不純物については、{A2/(A1+A2+A3+A4+A5)}×100(%)にしたがって求めることができる。
【0072】
本発明により、不純物含量の合計が2液クロ面積%以下となるような高純度オキシカルボニル置換ピペラジンの工業的な製造方法および高純度ピペラジン誘導体組成物を提供することができ、本発明は、光学活性体の精製において、特に有用である。
【0073】
かくして得たピペラジン誘導体は、医薬品の原料等として有用な化合物である。
【0074】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
なお、反応液中の生成物含量および主な不純物含有量の分析は、液体クロマトグラフィーにより行った。ここでは、2−メチルピペラジンのベンジルオキシカルボニル化反応時の分析条件を以下に示した。
サンプル前処理
50mlメスフラスコに1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン約0.1g相当のサンプルを採取し、アセトニトリルを用いて標線まで希釈する。次に、この溶液の内、0.3mlを5mlサンプル瓶に採取し、O,O’−ジ−p−トルオイル−D−酒石酸無水物溶液1.5mlを添加し、攪拌後、70℃の温浴で1h静置する。その後、2%リン酸水0.5mlを添加し、10分間静置する。
【0076】
得られた1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンの純度は、本文中記載の算出式にしたがって求めた。
【0077】
実際の実験は、反応工程、洗浄工程および蒸留工程の3つからなり、必要に応じて洗浄工程、蒸留工程を省略して実施した。
【0078】
実施例1(洗浄工程あり、蒸留工程なし)
<反応工程>
100ml四つ口フラスコにラセミ体の2−メチルピペラジン5.0g(=0.0499モル)を取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<洗浄工程>
その後、0℃で2時間攪拌した後、1−ブタノール31gを減圧留去させ、水30gを添加した後、35%塩酸水でpHを0.8に調整した。次に、トルエン22gを加え、30分攪拌後、上層を除去し、再びトルエンを同量加え、同様の操作を繰り返し、洗浄操作を実施した。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応液内のpHを11.5とした。この際、遊離した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンにより白濁した。この白濁液にトルエン40gを加え30分攪拌後、下層を除去した。上層は60〜70℃の温度で減圧濃縮後、トルエンを留去して1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン10.13gを得た。
【0079】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが98.0液クロ面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.40液クロ面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.04液クロ面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.10液クロ面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン未検出(溶媒トルエンが1.46液クロ面積%)であった。したがって、不純物の合計は0.55液クロ面積%であった。
【0080】
実施例2(洗浄工程なし、蒸留工程あり)
<反応工程>
100ml四つ口フラスコにラセミ体の2−メチルピペラジン5.0(=0.0499モル)gを取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5液クロ面積%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<蒸留工程>
反応工程において取得した、1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン10.2gを10mlのハート型フラスコに採取し、真空下で蒸留を行った。オイルバスが170℃から留出が始まり、最終的に200℃まで昇温した。留分の沸点は、170℃/200Paであった。
【0081】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが99.1液クロ面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.32液クロ面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.42液クロ面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.15液クロ面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン(溶媒トルエンは未検出)未検出であり、不純物の合計は0.89液クロ面積%であった。
【0082】
実施例3(洗浄工程あり、蒸留工程あり)
<反応工程>
100ml四つ口フラスコにラセミ体の2−メチルピペラジン5.0(=0.0499モル)gを取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5重量%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<洗浄工程>
その後、0℃で2時間攪拌した後、1−ブタノール28gを減圧留去させ、水30gを添加した後、35%塩酸水でpHを0.7に調整した。次に、トルエン22gを加え、30分攪拌後、上層を除去し、再びトルエンを同量加え、同様の操作を繰り返し、洗浄操作を実施した。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応液内のpHを11.8とした。この際、遊離した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンにより白濁した。この白濁液にトルエン40gを加え30分攪拌後、下層を除去した。上層は60〜70℃の温度で減圧濃縮後、トルエンを留去して留分8.59gを取得した。
<蒸留工程>
実施例1と全く同様の方法により取得した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン10.32gを10mlのハート型フラスコに採取し、真空下で蒸留を行った。オイルバスが145℃から留出が始まり、最終的に170℃まで昇温した。内圧は40〜53Paで、塔頂部の温度は131〜140℃であった。
【0083】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが99.7液クロ面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.03液クロ面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン液クロ面積0.18液クロ面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.04液クロ面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン(および溶媒トルエン)が未検出であった。したがって、不純物の合計は0.25液クロ面積%であった。
【0084】
実施例4(洗浄工程あり、蒸留工程あり)
<反応工程>
100ml四つ口フラスコにの(S)−2−メチルピペラジン5.0(=0.0499モル、光学純度99.4%ee.)gを取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5重量%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<洗浄工程>
その後、0℃で2時間攪拌した後、1−ブタノール30gを減圧留去させ、水30gを添加した後、35%塩酸水でpHを1.0に調整した。次に、トルエン22gを加え、30分攪拌後、上層を除去し、再びトルエンを同量加え、同様の操作を繰り返し、洗浄操作を実施した。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応液内のpHを11.8とした。この際、遊離した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンにより白濁した。この白濁液にトルエン40gを加え30分攪拌後、下層を除去した。上層は60〜70℃の温度で減圧濃縮後、トルエンを留去して、留分8.65gを取得した。
<蒸留工程>
実施例1の合成工程と全く同様の方法により取得した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン10.32gを10mlのハート型フラスコに採取し、真空下で蒸留を行った。オイルバスが145℃から留出が始まり、最終的に170℃まで昇温した。内圧は40〜53Paで、塔頂部の温度は131〜140℃であった。
【0085】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが99.7面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.03面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.12面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.08面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン(および溶媒トルエンは)未検出であった。したがって、不純物の合計は0.23重量%であった。また、光学純度は99.4%ee.であった。
【0086】
実施例5(洗浄工程あり、蒸留工程あり)
<反応工程>
1l四つ口フラスコにの(S)−2−メチルピペラジン50.0(=0.499モル、光学純度99.4%ee.)gを取り、1−ブタノール440gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル92.5g(=0.534モル,純度98.5重量%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
<洗浄工程>
その後、0℃で2時間攪拌した後、1−ブタノール300gを減圧留去させ、水300gを添加した後、35%塩酸水でpHを1.0に調整した。次に、トルエン220gを加え、30分攪拌後、上層を除去し、再びトルエンを同量加え、同様の操作を繰り返し、洗浄操作を実施した。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応液内のpHを12.1とした。この際、遊離した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンにより白濁した。この白濁液にトルエン400gを加え30分攪拌後、下層を除去した。上層は60〜70℃の温度で減圧濃縮後、トルエンを留去して、留分88.5gを取得した。
<蒸留工程>
取得した1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジン85.0gを送液ポンプを用いて、薄膜蒸留装置(伝熱面積0.02m2)に0.6L/hで供給した。熱媒の温度は150℃であり、真空度は360Paにて低沸カットを実施し、缶残液82.8gを取得した。
【0087】
次に、缶残液を再び送液ポンプを用いて、同一の薄膜蒸留装置に0.6L/hで供給した。熱媒の温度は220℃であり、真空度は87〜116Paにて製品蒸留を実施し、留分76.1gを得た。
【0088】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが99.4液クロ面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.25液クロ面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.03液クロ面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.02液クロ面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジンは未検出(および溶媒トルエンは0.08面積%)であった。したがって、不純物の合計は0.30液クロ面積%であった。また、光学純度は99.4%ee.であった。
【0089】
比較例(洗浄工程なし、蒸留工程なし)
100ml四つ口フラスコにラセミ体の2−メチルピペラジン5.0(=0.0499モル)gを取り、1−ブタノール44gを加え、溶解させた。その溶液を0℃まで冷却後、クロロ炭酸ベンジル9.25g(=0.0534モル,純度98.5重量%;HPLC定量分析)を液温が0〜8℃の範囲で滴下した。
【0090】
実施例1と全く同様の方法により取得した1−ブタノールを留去した濃縮液に、水30gを添加し、48%水酸化ナトリウムを用いてpHを11.2とした。その液にトルエン40gを加え、下層を除去した後、上層を減圧濃縮しトルエンを留去して、製品11.1gを得た。
【0091】
得られた化合物を分析した結果、目的物1−ベンジルオキシカルボニル−3−メチルピペラジンが87.2面積%、不純物は、ベンジルアルコール0.52面積%、1−ベンジル−4−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン0.01面積%、1−ベンジル−2−メチルピペラジン0.10面積%、1,4−ジベンジルオキシカルボニル−2−メチルピペラジン11.9面積%(溶媒トルエンが1.9面積%)であった。したがって、不純物の合計は12.6重量%であった。
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、ピペラジン誘導体の副反応などにより混入する不純物を効率よく取り除く方法を提供することができ、本発明により得られるピペラジン誘導体は不純物の混入量が極めて少ない。
Claims (12)
- 一般式(1)
- 20℃における水との相互溶解度が10重量%以下の有機溶媒が、芳香族炭化水素であることを特徴とする請求項1記載のピペラジン誘導体の製造方法。
- 一般式(1)
- 一般式(1)
(1)pHが3以下の水溶媒中において、20℃における水との相互溶解度が10重量%以下の有機溶媒を用いて洗浄する工程、および
(2)蒸留により精製する工程
を実施することを特徴とするピペラジン誘導体の製造方法。 - 薄膜蒸留することを特徴とする請求項3記載のピペラジン誘導体の製造方法。
- 一般式(1)におけるR1がメチル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のピペラジン誘導体の製造方法。
- 一般式(1)におけるXがtert−ブチル基、フェニル基、ベンジル基のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のピペラジン誘導体の製造方法。
- ピペラジン誘導体が光学活性体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のピペラジン誘導体の製造方法。
- 一般式(1)
- 一般式(1)〜(5)におけるR1がメチル基であることを特徴とする請求項9記載の高純度ピペラジン誘導体組成物。
- 一般式(1)〜(5)におけるXがtert−ブチル基、フェニル基、ベンジル基のいずれかであることを特徴とする請求項9または10記載の高純度ピペラジン誘導体組成物。
- 一般式(1)〜(5)におけるR1がメチル基、R2〜R4が水素原子、且つ、Xがベンジル基であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項記載の高純度ピペラジン誘導体組成物。
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