JP2004123572A - エチニル基を有する無水フタル酸化合物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】
一般式(I)において、R1は置換基を表し、n1は0から3の整数を表す。n1が2または3のとき、複数のR1は互いに同一でも異なってもよい。R2はα位にヒドロキシ基を有するアルキル基、または下記一般式(II)で表される基を表す。
【化2】
一般式(II)において、R3、R4およびR5は各々独立にアルキル基またはアリール基を表す。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化性樹脂、液晶材料、非線形光学材料、写真用添加剤またはそれらの合成中間体として有用な新規な芳香族アセチレン化合物(エチニル基を有する無水フタル酸化合物)およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族アセチレン化合物の合成は、近年、パラジウム触媒を用いる芳香族ハロゲン化合物とアセチレン化合物とのカップリング反応が開発され、特に銅塩を共存させる萩原−園頭らの方法が反応の収率が良く、多用されるようになってきている(例えば非特許文献1、非特許文献2、特許文献2等)。
一方、非特許文献3には、萩原−園頭らの方法を用い、下記反応ルートにより下記化合物(5)を合成することが記載されている。
【0003】
【化5】
【0004】
しかしながら、上記化合物(5)である、エチニル置換の無水フタル酸化合物を合成するのに、上記のカップリング反応条件下で安定なフタル酸のジメチルエステルを使用し、得られたジメチルエステルの化合物(3)を加水分解した後にフタル酸無水物に導いているため、反応工程が3工程と多く、多量合成を行なう場合、効率、製造コストの面で不利である。しかも、上記反応において、カップリング部位以外に不安定な基を有する化合物の場合、収率低下が予想された。
一方、熱硬化性樹脂、液晶材料、非線形光学材料、写真用添加剤としては、より優れた性能を示す化合物またはこれらの化合物を合成するための中間体の開発が望まれている。特に、熱硬化性樹脂においては、ポリイミド樹脂が使用されており、熱硬化性の優れた樹脂原料の開発が望まれている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−114691号明細書
【非特許文献1】
Tetrahedron Lett.,1975、4467、J.Org.Chem.,59、5818(1994)
【非特許文献2】
J.Org.Chem.,59、5818(1994)
【非特許文献3】
J.Org.Chem.,48、5135(1983)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
発明の目的は、熱硬化性樹脂、液晶材料、非線形光学材料、写真用添加剤またはそれらの合成中間体として有用な新規な芳香族アセチレン化合物(エチニル基を有する無水フタル酸化合物)を提供するものであり、更に、エチニル基を有する無水フタル酸化合物を高効率、低コストで製造する製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討した結果、以下の化合物および製造方法により、上記目的が達成されることを見出した。すなわち、
(1)下記一般式(I)で表される化合物。
【0008】
【化6】
【0009】
一般式(I)において、R1は置換基を表し、n1は0から3の整数を表す。n1が2または3のとき、複数のR1は互いに同一でも異なってもよい。R2はα位にヒドロキシ基を有するアルキル基、または下記一般式(II)で表される基を表す。
【0010】
【化7】
【0011】
一般式(II)において、R3、R4およびR5は各々独立にアルキル基またはアリール基を表す。
(2)下記一般式(III)で表される化合物と下記一般式(IV)で表される化合物を使用することを特徴とする下記一般式(I)で表される化合物の製造方法。
【0012】
【化8】
【0013】
一般式(I)、(III)において、R1は置換基を表し、n1は0から3の整数を表す。n1が2または3のとき、複数のR1は互いに同一でも異なってもよい。
一般式(III)において、Xはハロゲン原子を表す。一般式(I)、(IV)において、R2はα位にヒドロキシ基を有するアルキル基または下記一般式(II)で表される基を表す。
【0014】
【化9】
【0015】
一般式(II)において、R3、R4およびR5は各々独立にアルキル基またはアリール基を表す。
(3)パラジウム触媒、銅塩、および塩基の存在下に反応させることを特徴とする(2)に記載の製造方法。
(4)前記塩基が有機塩基であることを特徴とする(3)に記載の製造方法。
(5) ハロゲンイオン放出可能化合物の存在下で反応させることを特徴とする前記(3)または(4)に記載の製造方法。
(6)非水反応媒体を用いることを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれか1項に記載の製造方法。
(7)前記一般式(III)におけるXが臭素原子または塩素原子であることを特徴とする(2)〜(6)のいずれか1項に記載の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
最初に、本発明の一般式(I)で表される化合物を説明する。
【0017】
一般式(I)において、R1は置換基を表し、置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル部位(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
【0018】
アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、
【0019】
シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0020】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
【0021】
アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、
【0022】
アルキルもしくはアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換もしくは無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル基もしくはアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
【0023】
アリールもしくはヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
【0024】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0025】
R1として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、ホスフィノ基またはシリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ホスフィノ基またはシリル基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはシリル基であり、特に好ましくはアルキル基またはアリール基である。
【0026】
n1は0から3の整数を表し、好ましくは0、1または2であり、更に好ましくは0または1であり、最も好ましくは0である。
n1が2または3のとき、複数のR1は互いに同一でも異なってもよい。さらに、n1が2または3のときには、複数のR1は互いに結合し、環構造となっていてもよい(具体例としては、下記に示すI−6,I−19等)。
【0027】
R2はα位にヒドロキシ基を有するアルキル基(例えば、1−メチル−1−ヒドロキシエチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、1−フェニル−1−ヒドロキシエチル)、または一般式(II)で表される基を表す。このうち、R2はα位にヒドロキシ基を有するアルキル基が好ましい。該アルキル基には、α位のヒドロキシ基以外に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記のR1と同様のものが挙げられる。好ましい置換基は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基である。
一般式(II)において、R3、R4およびR5は各々独立にアルキル基(例えばメチル、エチル、ブチル)またはアリール基(例えば、フェニル)を表す。R3、R4およびR5はいずれもアルキル基が好ましく、最も好ましくは、いずれもメチル基である場合である。
【0028】
R2は好ましくは、炭素数の合計が1〜5であってα位にヒドロキシ基を有するアルキル基または炭素数の合計が6以下(即ち、3〜6)のトリアルキルシリル基であり、更に好ましくは1−メチル−1−ヒドロキシエチル基またはトリメチルシリル基であり、最も好ましくは1−メチル−1−ヒドロキシエチル基である。
【0029】
以下に、本発明の一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明の化合物がこれらに限定されるものではない。
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
【化13】
【0034】
【化14】
【0035】
次に、本発明の前記一般式(I)で表される化合物の製造方法について、詳細に説明する。
本発明の前記一般式(I)で表される化合物は、前記一般式(III)で表される化合物と前記一般式(IV)で表される化合物を使用する(即ち、反応させる)ことを特徴とする。
ここで、まず一般式(III)で表される化合物および一般式(IV)で表される化合物を説明する。
一般式(III)において、R1およびn1は一般式(I)におけるR1およびn1と各々同義であり、好ましい範囲も同一である。
【0036】
一般式(III)におけるXはハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、最も好ましくは臭素原子である。
【0037】
一般式(IV)におけるR2は一般式(I)におけるR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0038】
以下に一般式(III)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化15】
【0040】
【化16】
【0041】
【化17】
【0042】
【化18】
【0043】
次に、一般式(III)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物を使用して原料として、一般式(I)で表される化合物を製造する方法について説明する。
本発明の製造方法は、ハロゲン置換のフタル酸無水物を直接エチニル化し、エチニル基が置換したフタル酸無水物を製造すること、並びに製造ルートに特徴を有する。
【0044】
一般式(IV)で表される化合物は一般式(III)で表される化合物1モルに対して、0.1〜20モル、好ましくは0.5〜5モル用いられる。
【0045】
本発明においては、特に反応触媒を使用することが好ましく、該触媒としては、パラジウム触媒と銅触媒を併用するものである。
パラジウム触媒としては、入手可能な0価または2価のパラジウム金属や塩(錯体を含む)などのパラジウム化合物を用いることができ、これらは活性炭などに担持されていてもよい。好ましく用いられるものとして、パラジウム(0)炭素、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などを挙げることができる。このなかでビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドが特に好ましく用いられる。パラジウム触媒は、一般式(III)で表される化合物1モルに対して1×10−6〜10モル、好ましくは1×10−5〜1モル、より好ましくは1×10−4×10−1モル用いられる。
【0046】
銅塩としては1価または2価の銅塩を用いることができるが、好ましくは1価の銅塩が用いられる。特に好ましくはヨウ化銅が用いられる。銅塩は一般式(III)で表される化合物1モルに対して、好ましくは1×10−4〜1×10−1モル用いられる。
【0047】
本発明においては、更にホスフィン系化合物(3価のリン化合物)を加えて反応を行うこともできる。なかでもトリフェニルホスフィンが最もよく用いられるが、リン原子を2個分子内に有する3価のリン化合物も使用することができる。ホスフィン系化合物は、好ましくは一般式(III)で表される化合物1モルに対して1×10−4〜1×10−2モル用いられる。
【0048】
本発明においては、前記触媒に加え、塩基を使用するのが好ましい。
塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシドなどの他、有機塩基であるトリエチルアミン、ジエチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5、4、0]−7−ウンデセン(DBU)などを用いることができる。好ましくは、有機塩基が用いられ、特にトリエチルアミン、ジエチルアミンが用いられる。塩基は一般式(III)で表される化合物1モルに対して1〜100モル、好ましくは1〜10モル用いられる。なお、該有機塩基は、以後に説明する反応溶媒として使用するのが好ましい。
【0049】
また、特開平10−114691号に記載のハロゲンイオン放出可能化合物を添加することも好ましい。ハロゲンイオン放出可能化合物は、M+X―として表される。
ここで、Mはアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム)を表すか、または水素原子、アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルベンジル)もしくはアリール基(例えばフェニル)を窒素原子、硫黄原子またはリン原子上に有する化合物残基を表し、好ましくはアルカリ金属、または水素原子もしくはアルキル基を窒素原子もしくはリン原子上に有する化合物残基を表し、より好ましくはアルキル基を窒素原子もしくはリン原子上に有する化合物残基を表し、特に好ましくはアルキル基を窒素原子上に有する化合物残基を表す。Xはハロゲン原子上に有する化合物残基を表し、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。
【0050】
上記のハロゲンイオン放出可能な化合物としては、アルカリ金属塩(例えば、LiBr、NaCl、KF)、テトラアルキルアンモニウムハライド(例えば、トリエチルアンモニウムクロライド、ジエチルベンジルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロミドなど)、ホスホニウムハライド(例えば、テトラホスホニウムブロマイドなど)であり、好ましくはテトラアルキルアンモニウムハライドまたはホスホニウムハライドであり、更に好ましくはテトラアルキルアンモニウムハライドである。
より具体的に好ましい化合物としては、テトラアルキルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウムブロミド、テトラアルキルホスホニウムクロリドまたはテトラアルキルホスホニウムブロミドが挙げられる。
ハロゲンイオン放出可能な化合物は、一般式(III)で表される化合物1モルに対して0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル用いられる。
【0051】
反応溶媒としては非水系溶媒が好ましく、より好ましくは芳香族炭化水素系溶媒(例えばトルエン)、ニトリル系溶媒(例えばアセトニトリル)、アミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルアセトアミド)、エーテル系溶媒(例えばTHF)、アミン系溶媒(例えばトリエチルアミン、ピロリジン、ジエチルアミノピペリジン、ピリジン)等が用いられる。
本発明においては、アミン系溶媒を使用するのが更に好ましく、トリエチルアミン、ジエチルアミンピペリジン、ピロリジン等の有機塩基を溶媒量用いることもできる。なお、この場合、アミン系溶媒と他の溶媒を併用することもでき、これらの溶媒としては、前記のアミン系以外の溶媒が挙げられるが、アミン系溶媒のみが好ましい。
【0052】
反応温度は0〜150℃、好ましくは20〜130℃、更に好ましくは20〜100℃である。
【0053】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づき、更に詳細に説明する。
実施例1.
下記式に基づき例示化合物(I−1)を合成した。
【0054】
【化19】
【0055】
3ツ口フラスコに化合物(III−1)114g、化合物(11)50.5g、トリフェニルホスフィン0.45g、トリエチルアミン450ml、ビストリフェニルホスフィン塩化パラジウム(II)0.14g、塩化銅(I)1.33gを入れ、4時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターにて濃縮して得られた残留物に酢酸エチル1300ml、水1000mlを添加して抽出した。得られた酢酸エチル層を飽和食塩水100mlと水600mlの混合水溶液で4回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残留物に酢酸エチル50mlとヘキサン50mlからなる混合溶液を添加して溶解し、攪拌しながらここへ酢酸エチル80mlとヘキサン600mlからなる混合溶液を1時間かけて滴下した。そのまま3時間攪拌した後、12時間放置し、得られた結晶を濾過して目的の例示化合物(I−1)を43.7g得た(収率38%)。
NMR(CDCl3):δ=8.011(d、J=1.2Hz,1H)、7.956(d、J=8.1Hz,1H)、7.884(dd、J=1.2,8.1Hz,1H)、2.085(brs、1H)、1.656(s、6H)
融点:130〜131℃
【0056】
実施例2.
下記式に基づき例示化合物(I−8)を合成した。
【0057】
【化20】
【0058】
3ツ口フラスコに化合物(III−1)114g、プロパルギルアルコール33.6g、トリフェニルホスフィン0.45g、トリエチルアミン450ml、ビストリフェニルホスフィン塩化パラジウム(II)0.14g、塩化銅(I)1.33g、テトラブチルアンモニウムブロミド80.6gを入れ、4時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターにて濃縮して得られた残留物に酢酸エチル1300ml、水1000mlを添加して抽出した。得られた酢酸エチル層を飽和食塩水100mlと水600mlの混合水溶液で4回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残留物に酢酸エチル50mlとヘキサン50mlからなる混合溶液を添加して溶解し、攪拌しながらここへ酢酸エチル80mlとヘキサン500mlからなる混合溶液を1時間かけて滴下した。そのまま3時間攪拌した後、12時間放置し、得られた結晶を濾過して目的の例示化合物(I−8)を31.3g得た(収率31%)。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、ハロフタル酸無水物から直接芳香族アセチレン化合物を簡便に、高効率で製造することができる。
Claims (7)
- パラジウム触媒、銅塩、および塩基の存在下で反応させることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
- 前記塩基が有機塩基であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
- ハロゲンイオン放出可能化合物の存在下で反応させることを特徴とする請求項3または4に記載の製造方法。
- 非水反応媒体を用いることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 前記一般式(III)におけるXが臭素原子または塩素原子であることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の製造方法。
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