JP2004122138A - 片面溶接装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一対の被溶接鋼板20の側端同士を突合せた溶接線21を片側から溶接する片面溶接装置において、裏当銅板3aの下方に、この裏当銅板3aに沿い、フラックス散布装置により掻き落とされた使用済フラックスF1を受止める底板7bを有する鋼板製のトラフ7を設け、金属製の掻き板を備え、前記トラフ7の底板7bに摺接して、底板7bに落下した使用済フラックスF1を排出方向に移動させるフラックス搬出装置8を昇降フレーム5内に設けると共に、装置本体1に着脱自在に連結されて装置本体1と共に移動して、前記フラックス搬出装置8から排出される使用済フラックスF1を回収するフラックス回収箱11を設ける。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、側端同士を突合せた被溶接鋼板の溶接線を片面側から溶接する片面溶接装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のとおり、片面溶接とは、突合せ溶接において、表側から溶接するだけで開先を裏側まで溶融し、両面から溶接した場合と同じ結果を得ることを可能ならしめるようにした溶接方法である。そのために、被溶接鋼板の開先の裏側に溶融金属を受けるための、フラックスを散布した裏当銅板を密着させる。表側からの溶接により溶融した溶融金属は被溶接鋼板の裏面側に突き抜け、裏当銅板の上面に散布されたフラックスによりビードを形成する。フラックス散布装置を裏当銅板の面上で走行させて裏当銅板の上面にフラックスを散布するが、フラックスを散布する前には、このフラックス散布装置により裏当銅板の上面の使用済フラックスを掻き落とすものである。
【0003】
溶接する継ぎ手を多数有するワークの場合には、ワークを移動させなくてもフラックス散布装置が走行できるように、裏当銅板をフラックス散布装置が走行できる位置まで下降させ得るように構成されている。従って、溶接後に、裏当銅板を下降させてフラックス散布装置を走行させることにより使用済フラックスを掻き落とし、新しいフラックスを散布し、ワークを動かして次の継ぎ手を裏当銅板上に移動させると共に押し当てて溶接することができる。通常、片面溶接装置は2〜3台で使用することが多いため、片面溶接装置は溶接線の間隔に応じて、溶接線と直交する横方向に移動し得るように構成されている。
【0004】
ところで、上記のような片面溶接装置としては、例えば下記のようなものが知られている。以下、片面溶接装置に装備される従来例1に係る「溶接フラックス散布装置」の概要を、添付図面を参照しながら説明する。図6は、溶接フラックス散布装置の平面図であり、図7は図6に示すスクレーパの、裏当銅板の中心線を含む垂直面における拡大断面図である。
【0005】
即ち、図6において、裏当銅板3に沿って走行する台車1に、溶接用フラックスを裏当銅板3の上表面に散布するホッパ5が設けられている。また、溶接により裏当銅板3の上表面に生じたスラグを破砕する破砕具およびこの破砕具をスラグ破砕位置と退避位置に選択的に位置決めする破砕停止具を有する破砕機20が台車1に設けられている。さらに、裏当銅板3の上表面のスラグを剥離するスクレーパおよびこのスクレーパをスラグ剥離位置と退避位置に選択的に位置決めするスクレーパ係止具が台車1に設けられている。従って、台車1の走行により、裏当銅板3の上表面にフラックスが散布されると共に、裏当銅板3の上表面に生じたスラグや残りのフラックスが効果的に除去される。なお、図7において、符号2aは車輪、符号9は倣い台である。また、倣い台9の下面の図における左端下面に設けられ、裏当銅板3に転接してなるものは倣いローラ10であり、作用方向の中ほど下面に設けられ、下端が裏当銅板3に接触してなるものは刷子8であり、右端下面に設けられ、下端が裏当銅板3に接触してなるものはスクレーパ7である(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
ところで、この特許文献1に記載された上記従来例1では、使用済フラックスを効果的に掻き落とす(クリーニング)ことを可能ならしめるフラックス散布装置の提供を目的としているため、片面溶接装置全体の構成については何ら記載されていない。
【0007】
また、例えば下記のような「片面溶接装置」が知られている。以下、この従来例2に係る「片面溶接装置」の概要を、その全体側面図の図8を参照しながら説明する。即ち、この従来例2に係る片面溶接装置1は、被溶接鋼板2,2を片面溶接する溶接機10を備えている。この溶接機10は、被溶接鋼板2,2(保持台4)の上方にある溶接機ビーム11に配設されており、複数の溶接ヘッド12からなる溶接ユニット13を有している。これら各溶接ヘッド12は、溶接線3の上方に位置して溶接線3の延在する方向に並列され、各溶接ヘッド12に各ワイヤリール14から溶接ヤイヤ15が連続送給されるように構成されている。
前記溶接ユニット13には、フラックス散布回収器16に接続されるホース17が配設されている。また、前記溶接機ビーム11は、溶接線3の延在する方向に延びており、この溶接機ビーム11の上に敷設されてなるレール19を走行する走行台車18に、各ワイヤリール14とフラックス散布回収器16が搭載されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−344146号公報(第3−4頁、第1−2図)
【特許文献2】
特開2000−288785号公報(第3−5頁、第1図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1,2の何れにも記載されていないが、フラックス散布装置により裏当銅板の表面から掻き落とされた使用済フラックスは、一般に図示しない装置本体の最下部に設置された装置内ベルトコンベアにより装置本体の一端側に搬送される。そして、装置内ベルトコンベアにより搬送されてきた使用済フラックスは、床面に設置された他の床上ベルトコンベア上に排出される。
そして、床上ベルトコンベアから定置式の回収箱に使用済フラックスが排出されるように構成されている。なお、前記床上ベルトコンベアは、装置本体が移動可能に構成されている関係上、装置本体が移動しても装置内ベルトコンベアから排出される使用済フラックスを受け取るために、装置内ベルトコンベアと直交する向きに設置されている。
【0010】
上記構成によれば、片面溶接装置全体の高さが必然的に高くなる。即ち、装置本体の本来の高さに加えて、(装置内ベルトコンベアの高さ)+(床上ベルトコンベアの高さ)+(回収箱の高さ)が必要である。通常、片面溶接する被溶接鋼板の高さ位置が予め決められているから、片面溶接装置を設置する場合には、床面にピットを設けて据え付ける必要がある。そのため、土木工事費に起因して片面溶接装置の設備費が高くなるだけでなく、深くなるほど作業者等がピットに落下した時の危険性が高くなる。また、ピットに溜まった水の排水作業や堆積したごみの除去作業を行う必要があるが、床面には片面溶接装置が走行するためのレールが多数あり、複数の片面溶接装置間のスペースが狭く入り組んでいるために作業し難いので好ましくない。従って、片面溶接装置のコスト低減、安全性の向上、作業性の向上、メインテナンス性の向上にとって、片面溶接装置の高さを可能な限り低くすることが極めて重要である。
【0011】
さらに、片面溶接の場合には溶融金属が裏当部から漏出することがあるから、漏出した溶融金属(1000℃前後)が、装置内ベルトコンベア上に溜まり、コンベアベルトが焼損するという恐れが生じる。
【0012】
従って、本発明の目的は、片面溶接装置の高さが低く、しかも装置内ベルトコンベアを設ける必要のない片面溶接装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る片面溶接装置が採用した手段は、一対の被溶接鋼板の側端同士を突合せた溶接線を片面側から溶接する片面溶接装置において、前記被溶接鋼板の上方に配置され、溶接線に沿って走行する走行自在な溶接手段と、被溶接鋼板の下方に配置され、溶接線を中心とする両側の被溶接鋼板を押上げる昇降自在な裏当手段と、この裏当手段に沿って走行し、裏当手段の裏当銅板の面上にフラックスを散布し、かつ使用済フラックスを掻き落とすフラックス散布手段と、裏当銅板の下方の裏当手段を昇降させる昇降フレーム内に、この裏当銅板に沿って配置され、掻き落とされた使用済フラックスを受け止める底面を有する金属製のトラフと、トラフの底面を摺動してこの底面に落下した使用済フラックスを系外へ搬出するフラックス搬出手段とからなる装置本体を備えると共に、床面上に移動可能に配設され、フラックス搬出手段により搬出されてきた使用済フラックスを回収するフラックス回収箱を備えてなることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2に係る片面溶接装置が採用した手段は、請求項1に記載の片面溶接装置において、前記フラックス搬出手段は、掻き板を備えたコンベアチェーンであることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3に係る片面溶接装置が採用した手段は、請求項1に記載の片面溶接装置において、前記フラックス搬出手段は、スクリュ式コンベアであることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4に係る片面溶接装置が採用した手段は、請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の片面溶接装置において、前記フラックス回収箱は、連結手段により前記装置本体に着脱自在に連結されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5に係る片面溶接装置が採用した手段は、請求項4に記載の片面溶接装置において、前記フラックス回収箱の底板は開閉可能に構成されてなることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態1に係る片面溶接装置を、添付図面を参照しながら説明する。図1は片面溶接装置の全体側面図であり、図2は図1のA−A線断面図で、溶接機を省略して示す図である。また、図3はフラックス散布装置の斜視図であり、図4(a)はフラックス回収箱を含むフラックス搬出手段の部分斜視図であり、図4(b)は掻き板付リンクの平面図である。
【0019】
先ず、図1,2を順次参照しながら、本実施の形態1に係る片面溶接装置の全体構成を説明する。本実施の形態に係る片面溶接装置は、後述する構成になる装置本体1を備えている。この装置本体1は、側端同士を突合せた被溶接鋼板20の上方に溶接トーチを有する溶接装置2を備えている。この溶接装置2は、前記装置本体1の長手方向に沿って平行に設けられてなる図示しないビ−ムに支持されており、側端同士を突合せた被溶接鋼板20の溶接線21に沿って往復移動し得るように構成されている。
【0020】
前記被溶接鋼板20の下方側には、溶接線21を中心とする両側の被溶接鋼板20を、上に配設されてなる裏当銅板3aを介して押上げる裏当手段である裏当装置3が配設されている。そして、この裏当装置3の上には、前記裏当銅板3aの長手方向に沿って往復移動して、この裏当銅板3aの上面にビードを形成させるためのフラックスを散布すると共に、使用済フラックスを掻き落とす、後述する構成になるフラックス散布装置4が配設されている。
【0021】
前記裏当装置3は、垂直配設されてなる複数本の昇降装置6により昇降される昇降フレーム5の上に配置されている。この昇降フレーム5の内側には、図2に示すように、昇降フレーム5の長手方向に沿い、横断断面形状がロート状、つまり上広がりの傾斜板7aを有し、かつ平坦な底板7bを有する、鋼板製のトラフ7が配設されている。さらに、この昇降フレーム5の内側には、トラフ7の底面を摺動して底面に落下した使用済フラックスを系外へ搬出する、フラックス搬出手段である後述するフラックス搬出装置8が配設されている。
【0022】
前記昇降フレーム5は、床面上に敷設されてなる本体移動用レールR1を転動する複数の車輪9aが設けられ、図2における左右方向、つまり溶接線21と直交する方向に往復移動する走行台車9により支持されている。より具体的には、この昇降フレーム5は、走行台車9に基端部付近が固着されてなる昇降装置6を介して走行台車9により支持されている。
【0023】
前記走行台車9の上部、かつ前記裏当装置3を挟む両側位置には、側端部が突合された被溶接鋼板の下面に転接する複数のローラ装置10が設けられている。このローラ装置10は、裏当装置3の一側の裏当装置3に近い位置の駆動ローラ10aと、この駆動ローラ10aより裏当装置3から離れた位置のディスクローラ10bとを備えている。また、裏当装置3の他側の裏当装置3に近い位置のディスクローラ10cと、このディスクローラ10cより裏当装置3から離れた位置のディスクローラ10dとを備えている。なお、このローラ装置10は裏当装置3の長手方向に所定の間隔で複数組配設されており、被溶接鋼板を支持し、かつ片面溶接するために突合せ部を裏当て装置3上に移動させて位置決めし、溶接完了後に溶接鋼板を送り出すための搬出入コンベアの働きをするものである。
【0024】
前記フラックス散布装置4は、前記裏当銅板3aの長手方向に沿って往復移動するホッパ台車4aを備えている。このホッパ台車4aには,裏当銅板3aの上面に散布するフラックスF0が投入されるホッパ4bが搭載されると共に、ブラシ位置調整装置4dで高さ調整され、裏当銅板3aの上面から使用済フラックスF1を掻き落とす昇降自在な掻き落としブラシ4cが設けられている。なお、このフラックス散布装置4により裏当銅板3aの上面にフラックスF0を散布するために、また裏当銅板3aの上面から使用済フラックスF1を掻き落とすために走行する場合には、昇降装置6により昇降フレーム5を介して裏当装置3が下降されるものである。
【0025】
前記フラックス搬出装置8は、図1、図4(a),(b)に示すように構成されている。即ち、昇降フレーム5の長手方向の一方の端部付近に駆動スプロケット8aが設けられると共に、他方の端部付近に従動スプロケット8bが設けられている。これら駆動スプロケット8aと従動スプロケット8bには、左右の両側に突出する掻き板8eを有する掻き板付リンク8dが無端状に連結されてなるフラックス掻きチェーン8cが掛装されている。そして、下側に循環してきた掻き板付リンク8dが前記トラフ7の底板7bの上面を摺動するように構成されている。従って、前記フラックス散布装置4の掻き落としブラシにより裏当銅板3aの表面から掻き落とされてトラフ7の底板7bの上面に落下した使用済フラックスF1は掻き板付リンク8dの掻き板8eにより押されて排出側に移動し、装置本体1の外方に排出されることとなる。
【0026】
このような装置本体1の使用済フラックスF1の排出側には、排出される使用済フラックスF1を受取って回収するフラックス回収箱11が配設されている。このフラックス回収箱11は、前記本体移動用レールR1と平行に敷設されてなる回収箱移動用レールR2に沿って往復移動し得るように構成されている。
そして、このフラックス回収箱11は、図2に示すように、連結手段である、挿脱自在な連結ピン12により着脱自在に連結されている。さらに、このフラックス回収箱11の底板11aの一端側が図示しないヒンジで連結されると共に、他端側が図示しない底板ロック装置により固定されており、この底板ロック装置の操作により自在に開閉し得るように構成されている。
【0027】
つまり、このフラックス回収箱11は排出される使用済みフラックスF1を回収するときには、連結ピン12により連結されて装置本体1と共に移動する。
一方、回収された使用済フラックスF1をフラックス回収箱11から取り出すときには、連結ピン12の抜取りにより装置本体1から切り離して装置本体1から離れた位置に移動させた後、クレーンで吊持して廃棄場所の上方で底板ロック装置の操作により底板11aを開ければ良い。
【0028】
なお、前記フラックス回収箱11をクレーンで吊持して反転させることにより、回収された使用済みフラックスF1を排出することができるので、必ずしも底板11aを開閉式にする必要がないものである。しかしながら、クレーンで吊持した状態でのフラックス回収箱11の反転には安全上不安があり、安全面と使用済フラックスの排出作業能率が向上するという効果を考慮すると、上記のとおり、底板11aを開閉式にする方が好ましい。
【0029】
以下、本実施の形態1に係る片面溶接装置の作用態様を説明する。即ち、フラックス回収箱11は、従来例のように定置式ではなく、連結ピン12により装置本体1に連結することにより、装置本体と共に移動しながらフラックス搬出装置8から排出される使用済フラックスF1を回収することができる。つまり、本実施の形態に係る片面溶接装置のフラックス回収箱11は、従来例の床上ベルトコンベアと、回収箱との働きをすることになる。そのため、従来例のように、床上ベルトコンベアを設ける必要がないから、この床上ベルトコンベアの高さ分、片面溶接装置の高さを低くすることができる。
【0030】
上記のとおり、片面溶接装置の高さを低くすることができるので、片面溶接装置を設置するに際しては、ピットを設ける必要があってもその深さを従来例よりも遥かに浅くすることができる。従って、土木工事費が低減されるから設備費が安価になるだけでなく、片面溶接装置も低くなるので安価である。また、作業者等がピットに落下した時の危険性が少なくなり、そしてピットが浅いため清掃も容易に行えるから、片面溶接装置のコスト低減、安全性の向上、作業性の向上、メインテナンス性の向上に対して大いに寄与することができるという優れた効果を奏することができる。
【0031】
また、本実施の形態1に係る片面溶接装置では、従来例における装置内コンベアに代わるものとして、金属製の下記のものが用いられている。すなわち、鋼板製のトラフ7と、このトラフ7の底板7bに摺接して、フラックス散布装置4の掻き落としブラシ4cにより当接銅板3aの表面から掻き落とされた使用済フラックスF1をトラフ7の排出側に移動させる、コンベアチェーンであるフラックス掻きチェーン8cを備えたフラックス搬出装置8とである。そのため、たとえ溶融金属が裏当部から漏出してトラフ7内に落下したとしても、従来の装置内ベルトコンベアのコンベアベルトのように焼損するような恐れがないので、片面溶接装置のランニングコストの低減、および稼働率の向上が可能になるという効果が得られる。
【0032】
本発明の実施の形態2に係る片面溶接装置を説明する。但し、本実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、トラフの構成とフラックス搬出装置の相違にあり、これら以外は全く同一であるから、トラフとフラックス搬出装置の部分斜視図の図5を参照しながら、同一機能を有するものに同一符号を付してその相違する点について説明する。
【0033】
即ち、鋼板製のトラフ7は傾斜板7aを備えており、2枚の傾斜板7aの下部を繋ぐ底板7bは樋状に形成されている。そして、この鋼板製のトラフ7の内側には、回転軸8gと、この回転軸8gに周設され、トラフ7の樋状の底板7bの表面に摺接する螺旋羽根8hを供えたスクリュ式コンベア8fからなるフラックス搬出装置8が配設されている。従って、本実施の形態2によれば、たとえ溶融金属が裏当部から漏出してトラフ7内に落下したとしても、従来の装置内ベルトコンベアのコンベアベルトのように、スクリュ式コンベア8fが焼損するような恐れがないので、上記実施の形態1に係る片面溶接装置のフラックス掻きチェーン8cの場合と同様に、片面溶接装置のランニングコストの低減、および稼働率の向上が可能になるという効果が得られる。なお、本実施の形態2では、上記のとおり、スクリュ式コンベア8fは回転軸8gを備えているが、螺旋羽根8hのみの構成であってもよい。
【0034】
なお、上記実施の形態1または2に係る片面溶接装置は、本発明の具体例に過ぎないから、上記実施の形態に係る構成に限定されるものではなく、また本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内における設計変更等は自由自在である。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の請求項1乃至5に係る片面溶接装置によれば、フラックス回収箱は、従来例のように定置式ではなく、着脱自在な連結手段により装置本体に連結することにより、装置本体と共に移動しながらフラックス搬出手段から排出される使用済フラックスを回収することができる。つまり、本発明の請求項1乃至3に係る片面溶接装置のフラックス回収箱は、従来例の床上ベルトコンベアと、回収箱との働きをすることになる。そのため、従来例のように、床上ベルトコンベアを設ける必要がないから、この床上ベルトコンベアの高さ分、片面溶接装置の高さを低くすることができる。
【0036】
上記のとおり、片面溶接装置の高さを低くすることができるので、片面溶接装置を設置するに際しては、ピットを設ける必要があってもその深さを従来例よりも遥かに浅くすることができる。従って、土木工事費が低減されるから設備費が安価になるだけでなく、フラックス回収箱を取出す必要がなくピットに近づく必要がないから作業者等がピットに落下するような恐れが少なくなり、またピットが浅いため清掃も容易に行えるから、片面溶接装置のコスト低減、安全性の向上、作業性の向上、メインテナンス性の向上に対して大いに寄与することができるという優れた効果を奏することができる。
【0037】
また、本発明の請求項1乃至5に係る片面溶接装置では、従来例の装置内コンベアに代わるものとして、金属製のトラフと、このトラフの底面に摺接して、フラックス散布装置により当接銅板の表面から掻き落とされた使用済フラックスをトラフの排出側に移動させる金属製の掻き板を備えたフラックス搬出手段が用いられている。そのため、たとえ溶融金属が裏当部から漏出してトラフ内に落下したとしても、従来の装置内ベルトコンベアのコンベアベルトのように焼損するような恐れがないので、ランニングコストの低減、稼働率の向上が可能になるという効果が得られる。
【0038】
また、本発明の請求項3に係る片面溶接装置によれば、フラックス回収箱の底板が開閉可能に構成されている。従って、回収された使用済フラックスをフラックス回収箱から排出するに際して、クレーンで吊持した状態で底板を開ければ良いので、使用済フラックスの排出作業能率が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る片面溶接装置の全体側面図である。
【図2】図1のA−A線断面図で、溶接機を省略して示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係り、フラックス散布装置の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係り、図4(a)はフラックス回収箱を含むフラックス搬出手段の部分斜視図であり、図4(b)は掻き板付リンクの平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係り、トラフとフラックス搬出装置の部分斜視図である。
【図6】従来例1(特許文献1)に係り、溶接フラックス散布装置の平面図である。
【図7】図5に示すスクレーパの、裏当銅板の中心線を含む垂直面における拡大断面図である。
【図8】従来例2(特許文献2)に係る片面溶接装置の全体側面図である。
【符号の説明】
1…装置本体
2…溶接装置
3…裏当装置、3a…裏当銅板
4…フラックス散布装置、4a…ホッパ台車、4b…ホッパ、4c…掻き落としブラシ、4d…ブラシ位置調整装置
5…昇降フレーム
6…昇降装置
7…トラフ、7a…傾斜板、7b…底板
8…フラックス搬出装置、8a…駆動スプロケット、8b…従動スプロケット、8c…フラックス掻きチェーン、8d…掻き板付リンク、8e…掻き板、8f…スクリュ式コンベア、8g…回転軸、8h…螺旋羽根
9…走行台車、9a…車輪
10…ローラ装置
11…フラックス回収箱、11a…底板
12…連結ピン
20…被溶接鋼板、21…溶接線
F0…フラックス(使用前)、F1…使用済フラックス
R1…本体有働用レール、R2…回収箱移動用レール
Claims (5)
- 一対の被溶接鋼板の側端同士を突合せた溶接線を片面側から溶接する片面溶接装置において、前記被溶接鋼板の上方に配置され、溶接線に沿って走行する走行自在な溶接手段と、被溶接鋼板の下方に配置され、溶接線を中心とする両側の被溶接鋼板を押上げる昇降自在な裏当手段と、この裏当手段に沿って走行し、裏当手段の裏当銅板の面上にフラックスを散布し、かつ使用済フラックスを掻き落とすフラックス散布手段と、裏当銅板の下方の裏当手段を昇降させる昇降フレーム内に、この裏当銅板に沿って配置され、掻き落とされた使用済フラックスを受け止める底面を有する金属製のトラフと、トラフの底面を摺動してこの底面に落下した使用済フラックスを系外へ搬出するフラックス搬出手段とからなる装置本体を備えると共に、床面上に移動可能に配設され、フラックス搬出手段により搬出されてきた使用済フラックスを回収するフラックス回収箱を備えてなることを特徴とする片面溶接装置。
- 前記フラックス搬出手段は、掻き板を備えたコンベアチェーンであることを特徴とする請求項1に記載の片面溶接装置。
- 前記フラックス搬出手段は、スクリュ式コンベアであることを特徴とする請求項1に記載の片面溶接装置。
- 前記フラックス回収箱は、連結手段により前記装置本体に着脱自在に連結されてなることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の片面溶接装置。
- 前記フラックス回収箱の底板は開閉可能に構成されてなることを特徴とする請求項4に記載の片面溶接装置。
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