JP2004122113A - フッ素化合物含有排水の高度処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶解または懸濁して沈殿しないフッ素化合物を含有する排水中のフッ素化合物を環境基準値以下まで容易に処理できる高度処理方法を容易に実施できる装置を提供する。
【解決手段】当該ユニット型装置を構成する容器は、当該固体粒子を収容する固液接触領域Aと、清澄液を収容する分離領域Bとを有し、この二領域の画定は、排水中の固体粒子の沈降特性(沈降速度)により定められるものであり、その排水原液Fiは固液接触領域Aに供給され、またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、この分離領域Bから排出されるように形成したユニット型処理装置により、フッ素含有排水を処理する。また、処理排水をフッ素化合物燃焼排ガスを処理するスクラバに循環使用することにより、排水量を減少させることができる。
【選択図】図3
【解決手段】当該ユニット型装置を構成する容器は、当該固体粒子を収容する固液接触領域Aと、清澄液を収容する分離領域Bとを有し、この二領域の画定は、排水中の固体粒子の沈降特性(沈降速度)により定められるものであり、その排水原液Fiは固液接触領域Aに供給され、またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、この分離領域Bから排出されるように形成したユニット型処理装置により、フッ素含有排水を処理する。また、処理排水をフッ素化合物燃焼排ガスを処理するスクラバに循環使用することにより、排水量を減少させることができる。
【選択図】図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体、電子、電気産業を含む広範囲な産業分野におけるフッ素化合物含有排水を、従来にない低濃度まで除去しうる高度処理を実施するために適したコンパクトなユニット型処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素は、現在、半導体、エレクトロニクス、セラミックス、樹脂、塗料、繊維等の製造工業等の種々の産業分野で欠かすことの出来ない有用な化学物質として大量に使用されている。また、リン酸肥料の製造工程、アルミニウムの電解精錬工程等からの排水等に含有されて排出される場合も多い。一方、フッ素は、人体に対しては大量に摂取した場合、又は化合物の形態によっては微量でも、骨格フッ素中毒、斑状歯、中枢神経障害等の障害を生ずるとされている有害な物質でもあり、環境の保全上、これらの産業に従事する事業者(企業)は、フッ素の排出には、細心の注意と大きな責任を負うことは当然である。
【0003】
近年、半導体製造プロセスや液晶製造プロセスのドライエッチングやクリーニングに使用されるCF4、C2F6、C3F8、C4F8、CHF3、SF6、NF3のごとき所謂PFC等のガスは、オゾン層破壊及び地球温暖化防止等の観点からも厳しく大気中への排出が制限され、現在、これらフッ素化合物含有排ガスは、燃焼や触媒燃焼処理等により例えば99.99%程度まで分解処理されていて、ほとんど大気中へは排出されていないとされている。また、リサイクル法の施行等に伴い、冷蔵庫等から回収されたフロンの処理排水にも同様にかなりのフッ素化合物が含まれている。
【0004】
しかしながら、その代わりに、当該燃焼排ガスをスクラバ等の湿式除害設備によりアルカリ含有洗浄水を噴霧(スクラビング)して水洗処理した排水中には、その分解生成物であるフッ化水素等のフッ素化合物が多量に含有・排出されるようになり、大きな問題となっている。すなわち、本来大気中に排出されるべきフッ素化合物が排水中に移行することになるのである。しかも、PFC等のガスの排出量は、1995年度を100とした場合、2000年に140、2010年には350に増加すると予想され、これに応じて燃焼排ガスをスクラビング処理した洗浄排水中のフッ素化合物量も、激増すると推定される。また、上記したように、リサイクル法の施行等に伴い、冷蔵庫等から回収されたフロンの処理排水にも同様にかなりのフッ素化合物が含まれているという状況にある。
【0005】
かかる観点から、環境の保全について基本理念を定めている環境憲法ともいうべき「環境基本法」は、当然のことながら、フッ素についても環境基準を規定しており、フッ素の環境基準は、0.8(mg/L)(0.8ppm)と規定されているが(平成11年環境庁告示第14号)、当該数値を基礎とし、かつ、上記のごとき排出状況を考慮して、水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)は、フッ素の排水基準の規制値を、従来の15(mg/L)から8(mg/L)に強化した(平成13年6月水質汚濁防止法施行令改正による。)。
【0006】
いずれにせよ、半導体製造や液晶製造等ハイテク産業の分野等でも必須の材料として使用されるフッ素の使用総量が増加するにつれて、排水基準による規制値も今後、より厳しくならざるを得ないと考えられ、基本的には、排水中のフッ素の濃度そのものを、これを希釈することなしに、直接環境基準である0.8(mg/L)以下にしうる技術が望ましい。
【0007】
従来、フッ素化合物含有排水の処理法としては、これに塩化カルシウムや水酸化カルシウム等のカルシウム化合物を添加して、反応させ、フッ素を難溶性のフッ素のカルシウム塩、特にフッ化カルシウム(CaF2)として沈澱せしめるか、または、炭酸カルシウム粒子を充填した充填カラムにフッ素化合物含有排水を通液して接触させ、当該粒子表面に、CaF2を析出させる凝集沈澱法は、フッ素除去処理の方法として古くから実施されている最も一般的な技術の一つである。
【0008】
しかしながらこの方法では、CaF2の溶解度が16.18(mg/L)(20℃)程度であるため、上記より厳しい環境基準(0.8(mg/L)以下)にまでフッ素を除去することは原理的に困難である。しかも、実際の排水においては、フッ素の除去効率は、共存する種々のイオンにより低下するという問題がある。例えば、排水中に硫酸イオンが共存する場合は、処理後の排水中のフッ素濃度は、せいぜい30〜50(mg/L)程度となる(例えば、特許文献1、第500頁、実施例及び表を参照。)
【0009】
さらに問題なのは、排水中にリン酸イオンが存在すると、例えば炭酸カルシウムから、CaF2への転換反応が阻害され、フッ素除去が充分に行われないことである(例えば、特許文献2、第2頁、左欄、段落番号〔0006〕を参照。)。
【0010】
また、CaF2の析出反応は、酸性領域、すなわちpH4〜5,好ましくはpH2〜3程度で進行するため、排水に酸を添加してpH調整後、カルシウム化合物を添加しないと、CaF2が充分生成しない。このpHの調整には、リン酸以外の、塩酸、硝酸等の酸を添加して行われる。これは、上記したようにリン酸を添加した場合、リン酸カルシウムが生成してしまい、CaF2の生成が阻害されるため、リン酸を添加することだけは絶対に行ってはならないとされているためである(例えば、特許文献3、第3頁、左欄、段落番号〔0008〕、同頁、右欄、段落番号〔0017〕を参照。)。
【0011】
なお、従来から、リン酸イオンは、水質の富栄養化を招く元凶物質であるため、工場排水等からは、完全な除去が要請され、その除去についても苦慮されているものであり(例えば、特許文献4,第2頁、左欄、2行〜7行を参照。)、かかるリン酸等をわざわざ処理液に添加し、排水中のリン酸イオン濃度をさらに増加せしめる方法は従来知られていない。
【0012】
【特許文献1】
特開昭53−125993号
【特許文献2】
特開平11−300370号
【特許文献3】
特開平10−57970号
【特許文献4】
特開平5−84493号
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従来、フッ素除去に関する技術としては、上記したような方法が提案されているが、工業的に容易・簡便に実施しうる方法であって、かつ、排水中のフッ素濃度を上記した0.8ppm以下にしうる高度処理技術は、実際上は存在しなかった。また、特に、上記PFCガス等の処理ガス由来の排水中のフッ素化合物は、水酸化ナトリウム等のアルカリを含有する洗浄水を使用してスクラビング処理しているためか、通常の排水に比較して極めて除去し難いという問題もある。
【0014】
本出願人らは、排水中のフッ素化合物の高度除去技術の重要性に鑑み鋭意検討した結果、先に、容易・簡便に実施可能なフッ素の除去方法でありながら、従来にない低濃度まで、すなわち、排水中のフッ素の濃度そのものを、これを希釈することなく、直接環境基準である0.8(mg/L)(0.8ppm)以下にしうる画期的な高度処理方法を提案した(特開2002−370093を参照。)。
【0015】
この方法の基本的原理は、上記先願に詳細に開示しているように、フッ素化合物含有排水に対し、カルシウム化合物とともに、さらにわざわざリン酸類及び/又はリン酸化合物を添加するものであり、かつ、当該リン酸類等を添加する際に、排水中に、カルシウム/リン含有化合物の固体粒子を存在させることにより、排水中のフッ素化合物を、フルオロアパタイトのごとき難溶性化合物の沈殿の構成成分として、促進して取り込ましめるものであるが、本発明の目的は、上記方法を、特に実際の排水発生源の近傍において、容易、簡便、かつ、連続的に実施するのに適した、ユニット型処理装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0017】
(1) フッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液に、カルシウム化合物とリン酸類及び/又はリン酸化合物を添加し、当該添加された排水を、カルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子と接触させ、当該排水中のフッ素化合物を減少させるフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するために適したユニット型処理装置であって、
【0018】
当該ユニット型装置を構成する容器は、当該固体粒子を収容する固液接触領域Aと、
清澄液を収容する分離領域Bとを有し、
【0019】
この二領域の画定は、当該排水中の固体粒子の沈降特性及び/又は当該粒子の流動を制限する手段により定められるものであり、
【0020】
当該排水原液Fiは前記固液接触領域Aに供給され、
またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、前記分離領域Bから排出されるものであることを特徴とする前記ユニット型処理装置。
【0021】
(2) 前記固体粒子の終末沈降速度uptは、前記固液接触領域Aにおける処理液の線速度VlAよりも小さく、かつ、前記分離領域Bにおける処理液の線速度VlBよりも大きいものである(1)項に記載のユニット型処理装置。
【0022】
(3) 前記容器の上部は、流路断面積の大なる分離領域Bを形成し、かつ、容器下部をテーパー状に形成して流路断面積を縮小せしめた固液接触領域Aを形成した(2)項に記載のユニット型処理装置。
【0023】
(4) 前記固液接触領域Aに循環ラインを形成し、排水原液Fiの供給量に比較して充分大なる循環量で当該排水を循環させる(2)項に記載のユニット型処理装置。
【0024】
(5) フッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液に、リン酸類及び/又はリン酸化合物を添加し、当該添加された排水をリン酸カルシウム粒子と接触させ、当該排水中のフッ素化合物を減少させるフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するために適したユニット型処理装置であって、
【0025】
当該ユニット型装置を構成する容器は、当該固体粒子を収容する固液接触領域Aと、
清澄液を収容する分離領域Bとを有し、
【0026】
この二領域の画定は、当該排水中の固体粒子の沈降特性により定められるものであり、
【0027】
当該排水原液Fiは前記固液接触領域Aに供給され、
またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、前記分離領域Bから排出されるものであることを特徴とする前記ユニット型処理装置。
【0028】
(6) 前記固体粒子の終末沈降速度uptは、前記固液接触領域Aにおける処理液の線速度VlAよりも小さく、かつ、前記分離領域Bにおける処理液の線速度VlBよりも大きいものである(5)項に記載のユニット型処理装置。
【0029】
(7) 前記容器の上部は、流路断面積の大なる分離領域Bを形成し、容器下部をテーパー状に形成して流路断面積を縮小せしめた固液接触領域Aを形成した(6)項に記載のユニット型処理装置。
【0030】
(8) 前記固液接触領域Aに循環ラインを形成し、排水原液Fiの供給量に比較して充分大なる循環量で当該排水を循環させる(6)項に記載のユニット型処理装置。
【0031】
(9) 前記ユニット型処理装置は、前記固体粒子を装置内の固液接触領域Aに予め収容したまま排水原液のラインに接続して当該排水の処理を行い、及び/又は、処理後に反応した当該固体粒子をその固液接触領域Aに収容したまま、当該ラインから分離しうるものである(1)項〜(8)項のいずれかに記載のユニット型処理装置。
【0032】
(10) フッ素化合物含有排水原液Fiが、フッ素化合物分解除害設備より排出されるフッ素化合物燃焼排ガスを湿式除害設備に導入して洗浄水を噴霧し当該フッ素化合物を捕集・除去するスクラビング処理して得られた処理排水である(1)項〜(9)項のいずれかに記載のユニット型処理装置。
【0033】
(11) フッ素化合物含有排水原液Fiが、フッ素化合物分解除害設備より排出されるフッ素化合物燃焼排ガスを湿式除害設備に導入して洗浄水を噴霧し、当該フッ素化合物を捕集・除去するスクラビング処理して得られた処理排水であり、かつ、(1)項〜(9)項のいずれかに記載の処理装置により処理された処理排水Foの一部を、当該湿式除害設備に循環し、当該洗浄水の少なくとも一部として利用するフッ素化合物含有排水装置からの排水量の削減方法。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の処理装置により、フッ素化合物を含有する排水原液を処理する工程を示すフロー図である。
【0036】
すなわち、図1に示すように、フッ素化合物を含有する排水の発生源1から排出されるフッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液Fiに、カルシウム化合物3とリン酸類及び/又はリン酸化合物5を添加し、当該添加された排水を、本発明の処理装置10内に導入し、装置内のカルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子15と接触・反応させ、当該排水中のフッ素化合物を所定値以下に減少せしめた処理排水Foが排出される。これが請求項1で規定される本発明の基本的な態様である。
【0037】
(フッ素化合物含有排水)
本発明で対象とする、フッ素化合物が溶解または懸濁しているフッ素化合物含有排水(以下、単に「排水原液」又は「排水」と称することがある。)とは、特に限定するものではなく、例えば、半導体製造産業、液晶製造産業その他電子、電気産業やその原料提供産業、発電所の排水をはじめ、回収フロン処理場、リサイクル産業、ごみ焼却等廃棄物処理産業を代表とする環境事業から発生する排水、アルミニウム電解精錬工業、リン酸肥料の製造業、リン系及びフッ素系化合物等の製造業の排水、並びに土木建設、鉱業、金属処理業の排水、医療や農業、上下水処理設備、河川、地下水を問わず、ありとあらゆるフッ素化合物を溶解した排水等が例示される。
【0038】
本発明の処理装置で処理する排水原液中に溶解または懸濁しているフッ素化合物の濃度は、液中のフッ素として、0.5ppm〜40%(フッ素質量/容積:以下同様)であることが好ましく、さらに好ましくは1ppm〜15%程度である。
【0039】
本発明の装置で処理することにより、基本的には、排水原液中のフッ素濃度を0.8ppm以下に処理しうるものであるが、例えば、排水中のフッ素が15%以下であれば、一回の処理で、フッ素濃度0.5ppm程度まで減少可能であり、また、同様に5%以下であれば、0.1ppm程度まで減少させることが可能である。なお、さらに高濃度のフッ素濃度の排水原液の場合は、必要により複数回、本発明の装置による処理を行うことも可能である。
【0040】
また、まず、カルシウム化合物を添加してフッ素化合物をフッ化カルシウムとして処理する従来の方法を適用し、8ppm程度までフッ素化合物濃度を減少させ、これをさらに0.8ppm以下に減少させる高度処理工程に対し、本発明の処理装置を適用して処理してもよい。
【0041】
なお、本発明の処理の対象とするフッ素化合物は、有機性のフッ素化合物でも無機性のフッ素化合物でもよいが、より好ましくは無機性のフッ素化合物である。
【0042】
(カルシウム化合物)
本発明においてフッ素化合物含有排水原液Fiに添加されるカルシウム化合物3としては、基本的に、少なくともその一部が当該排水に溶解し、液中でフッ素と結合してその難溶性のカルシウム化合物を生成しうるものであり、好ましくは当該排水のpHをアルカリ性にすることができるものであれば特に限定するものではなく、例えば、消石灰、生石灰、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、過酸化カルシウム、次亜リン酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、さらにはリン酸カルシウム等が挙げられる。これらは、天然に産するものでもよいし、各種製造業で主産物、または、副産物として製造されるものでもよい。
【0043】
なお、リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート(第三リン酸カルシウム)、ダイカルシウムフォスフェート(第二リン酸カルシウム)、モノカルシウムフォスフェート(第一リン酸カルシウム)、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるカルシウムを含むアパタイト類であってもよく、さらには天然に産するカルシウムを含むリン酸化合物であるリン鉱石も使用できる。
【0044】
以上のうち、特に好ましいカルシウム化合物は、消石灰及び炭酸カルシウムである。消石灰は、重金属が排水中に含まれる場合に重金属も除去できるので好ましく、炭酸カルシウムは、処理によって生成するスラッジが少ないため好ましい。また、例えば、本発明の処理装置や配管等の材質として充分な耐腐食性を有するものを採用する場合は、溶解度の高い塩化カルシウムも好ましく使用される。
【0045】
これらのカルシウム化合物の添加量は、排水原液中のフッ素化合物濃度、当該カルシウム化合物の種類、その溶解度等によって適宜選択されるが、通常、当該排水原液に対して0.001〜10質量%、好ましくは0.05〜3質量%程度である。
【0046】
なお、カルシウム化合物3はフッ素化合物含有排水原液のラインに添加するのが最も好ましいが、処理装置の例えば固液接触領域Aに供給するようにしてもよい。ただしこの場合、この領域でフッ素化合物濃度が高いと、CaF2の生成より先に、アパタイト化合物等が生成し、フッ素濃度が下がりにくくなることがある。
【0047】
(リン酸類等)
また、フッ素含有排水に添加されるリン酸類及び/又はリン酸化合物(以下、単に「リン酸類等」と称することがある。)5としては、リン酸自体でもよいが、リン酸とアルカリ性化合物の中和反応により生成したリン酸塩でもよく、基本的には、排水中でフッ素化合物及びカルシウム化合物と結合してその難溶性化合物を形成することができ、また好ましくは、当該リン酸類等を添加することにより、処理すべきフッ素化合物含有排水のpHを低下させることができるものであれば、特に限定するものではない。
【0048】
例えば、正リン酸(オルトリン酸)、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリメタリン酸、ウルトラリン酸、テトラメタリン酸、イソテトラポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、及び更なる縮合リン酸等のリン酸類;並びに、
【0049】
リン酸アンモニウム(リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム)、リン酸ナトリウム(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム)、リン酸カリウム(リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム)、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性メタリン酸ナトリウム、酸性メタリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸カリウム、ウルトラリン酸ナトリウム、ウルトラリン酸カリウム、テトラメタリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸カリウム、イソテトラポリリン酸ナトリウム、イソテトラポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、リン酸カルシウム、更には、その他の金属とリン酸から生成するリン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸鉄などのリン酸塩等のリン酸化合物が挙げられる。
【0050】
更に、上記リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート(第三リン酸カルシウム)、ダイカルシウムフォスフェート(第二リン酸カルシウム)、モノカルシウムフォスフェート(第一リン酸カルシウム)、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムが挙げられるが、それだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるアパタイト構造のものであってもよく、また天然に産するリン酸化合物であるリン鉱石であってもよい。
【0051】
上記のリン酸類等のなかで、好ましくは、縮合リン酸を含むリン酸であり、さらに好ましくは正リン酸である。また、上記リン酸類やリン酸化合物は、一種又は二種以上を併用することも可能である。なお、リン酸カルシウム等のリン酸塩を使用する場合、実質的にフッ素化合物含有排水のpHを低下させることが困難な場合は、硫酸や塩酸等の酸と共に使用すればよい。
【0052】
リン酸類等の添加量は、その種類によっても異なりうるが、所定のpHになるように添加すればよく、通常排水原液に対して0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜1.5質量%である。なお、リン酸類等は、フッ素化合物含有排水原液のラインに添加してもよいが、処理装置の例えば固液接触領域Aに供給するようにしてもよい。
【0053】
(カルシウム/リン含有化合物の固体粒子)
カルシウムとリンを含有する化合物(以下「カルシウム/リン含有化合物」と略記することがある。)の固体粒子15としては、フッ素化合物含有排水中で実質的に溶解しないものであれば特に限定するものではないが、リン酸カルシウム粒子が好ましく、例えば、トリカルシウムフォスフェート、ダイカルシウムフォスフェート、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウム粒子が挙げられるが、それだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイト〔Ca5(PO4)3OH〕やフルオロアパタイト〔Ca5(PO4)3F〕に代表されるアパタイト構造のものであってもよく、また天然に産するリン酸化合物であるリン鉱石であってもよい。もっとも好ましくは、トリカルシウムフォスフェート、ハイドロキシアパタイト及びフルオロアパタイトの粒子である。
【0054】
本発明においては、後記するように、その処理は、固液接触領域Aと分離領域Bが画定されたユニット型処理容器で行われ、特に、固体粒子の沈降特性により固液接触領域Aと分離領域Bを画定されるような場合を考慮すると、沈降特性を決定する要素である粒径が、適度なものを選択する必要があり、通常、1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜500μmのものを使用する。
【0055】
(処理装置)
図2は、上記したフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するために適した本発明のユニット型処理装置のモデル図である。
【0056】
当該ユニット型処理装置10を構成する容器は、カルシウム/リン含有化合物の固体粒子を収容する固液接触領域Aと、
清澄液を収容する分離領域Bとを有し、
【0057】
この二領域の画定は、当該排水中における当該固体粒子15の沈降特性により定められるものであり、
【0058】
当該排水原液Fiは前記固液接触領域Aに供給され、
またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、前記分離領域Bから排出されるものである。
【0059】
(なお、上記したように、カルシウム化合物3とリン酸類等5は、排水原液Fiに添加してもよいし、又は直接固液接触領域Aに添加してもよい。図2では、リン酸類等5について直接Aに供給し、ここでFiと接触させる態様を示している。)
【0060】
(沈降特性によるA、Bの画定)
ここで領域Aと領域Bの画定は、上記したように基本的には当該排水中における当該固体粒子の沈降特性(沈降速度)により定められるが、当該固体粒子の終末沈降速度uptは、固液接触領域Aにおける処理液の線速度VlAよりも小さく、分離領域Bにおける処理液の線速度VlBよりも大きいものであるように設定されていることを意味する。これは、具体的には、請求項2に規定されている態様である。
【0061】
このように設定した場合、容易に理解されるように、upt<VlAであるから、当該固体粒子は、固液接触領域Aにおいては沈降することなく、当該領域で処理液に同伴されて浮遊・流動するが、upt>VlBであるため、分離領域Bにおける処理液には同伴されず、その領域外に沈降分離し、分離領域は清澄な領域となるのである。すなわち、このようにして、領域A及びBは、当該固体粒子の沈降特性により画定される。(以下、VlB<upt<VlAなる関係を「沈降/流動速度関係」と称することがある。)
【0062】
処理液中の粒子の終末沈降速度uptは、主として当該粒子15の物性(粒径、密度)や処理液の物性(密度)等により必然的に一定に定まるものであるから、上記沈降/流動速度関係は、所定の粒径の固体粒子に対しては、もっぱら、処理液の流量を変化させることにより、その線速度を変えて実現することが好ましい。
【0063】
図3は、処理容器の領域Aにおける流路断面積と、領域Bにおける流路断面積を、容器にテーパーを形成することにより変化させ、沈降/流動速度関係を実現した例を示す説明図であり、また図4は、図3に対応する容器の斜視図である。
【0064】
すなわち、処理容器10の上部は、大なる流路断面積(SB)の分離領域Bを形成し、一方、容器下部を、テーパー状17、17’に形成して、縮小せしめた流路断面積(SA)の固液接触領域Aを形成したものである。
【0065】
ここで、図3(a)、図4(a)は、テーパー17、17’を容器両側に形成したものであり、図3(b)、図4(b)は、容器片側のみにテーパー17を形成したものであり、いずれの形状のものも、目的に応じて適宜採用しうる。以上は請求項3で規定した態様である。
【0066】
領域Aにおける処理液の線速度は、VlA=Fi/SAで与えられ(但し、Fiは体積流量)、特に容器のより下部におけるSAはきわめて小さいので、線速度は逆にきわめて大きくなり、upt<VlAが容易に実現できる。
【0067】
一方、容器上部の領域Bにおいては、処理液の線速度は、VlB=Fi/SBで表されるが、SBは充分大きいため、当該線速度は小さくなり、upt>VlBが実現できるものである(これを「内部分級型」と称することがある。)。(なお、定常状態においては、当然のことながら、Fi=Foである。)
【0068】
ここで、容器の形状は、図4においては、角形状として示されているが、もちろんこれに限られるものではなく、円筒状(より正確には、下部(テーパー部)が円錐状で上部が円筒状となる。)であってもよい。
また、容器上部に邪魔板18を設置し、処理排水への微小粒子同伴を防止することも可能である。
【0069】
図5は、容器の断面積は、領域A、Bにおいて一定であるが、領域A、Bにおける処理液の流量を変化、異ならしめることにより、沈降/流動速度関係を実現した例である。
【0070】
すなわち、固液接触領域Aに循環ライン20を形成し、排水原液Fiの供給量に比較して充分大なる循環量Frで当該排水を循環させるものである。(当該循環量Frは、固体接触領域Aにおける流量となる。)
【0071】
例えば、供給排水原液流量Fi(=Fo)に対して、少なくとも5〜50倍、好ましくは10〜40倍、さらに好ましくは20〜30倍の流量の循環量とした場合〔すなわち、例えば(Fr/Fi)=5〜50〕、領域AとBの流路断面積SA、SBは同じであるが、それぞれの領域における流量(体積流量)が格段に異なるため、それぞれの領域の処理液の線速度VlA、VlBの両者を大幅に異ならしめることができ、所望の沈降/流動速度関係を実現することができるのである(これも「内部分級型」である。)。
【0072】
なお、粒子の終末沈降速度uptは、沈降管やアンドレアゼンピペット等により粒子又は粒子群の沈降速度を実際に測定してもよいし、また、すでに化学工学の分野では、古くからの精力的な研究により精度の高い実験式が確立されており、固体粒子の粒径が規定されれば、系の物性データ(粒子の密度、処理流体の密度、粘度等)のみから容易に推算可能である。
【0073】
以上は、基本的にVlB<upt<VlAなる条件を形成することにより、領域A及びBを画定するものであるが、さらに別の態様も可能である。
【0074】
これは、VlA≒VlB<uptなる条件、すなわち、粒子の終末沈降速度は、処理液の領域A、領域Bのいずれにおける線速度よりも大きい場合である。
【0075】
この場合は、粒子は固液接触領域Aにおいて沈殿し、甚だしき場合は容器の底部に固着層や充填層を形成するので、この状態では、もはや固液接触操作(及び固液接触反応)が円滑に行われない。従って、領域Aに粒子浮遊手段を適用し、粒子を浮遊せしめることが好ましい。図6はこの状態を示しているもので、図6(a)は、領域Aに機械的撹拌手段30を適用して粒子の最終浮遊回転数で緩く撹拌し、粒子を浮遊せしめており、また、図6(b)は、容器底部に設けた多孔板やノズルから空気等気体を噴出させて、同様に気泡撹拌手段30’により、領域A内で粒子を浮遊せしめるようにしたものである。
【0076】
図7は、さらにそのバリエーションの一つで、大量の排水原液を処理するに適した処理容器の形態を示している。この処理容器10’は、角形または円筒型の容器を横に設置した形態のものであり、排水原液Fiはその下部に供給され、処理排水Foは上部から流出する。従って、領域A、領域Bとも流路断面積は、流量に比較して十分大きいので、通常、処理液の線速度は、VlA≒VlB<uptなる条件を充足する。この場合、粒子が底部に沈降しやすいので、例えば、図7に示したように、容器底部に沿って横型の撹拌機等の機械的撹拌手段30を装入して緩く撹拌を行い、粒子を領域A内に浮遊させて反応を促進させるとともに、粒子が底部に沈降、沈着するのを防止するものである。ここでMはモーターである。なお、後記するように、本ユニット型処理装置をラインに着脱する場合は、モーターMを当該ユニットにセットしたものを一つのユニットとして、取り扱ってもよいし、モーターは、当該ユニットから分離し、ラインにユニットをセットした段階でユニットに取り付けるようにしてもよい。
【0077】
また図6〜図7等において、A領域とB領域の境界部には、バッフルを設置し、A領域の撹拌がB領域に直接及ばないようにし、又は、A領域において撹拌により流動している粒子を当該バッフルで確実にその流動を止めて、B領域に流出することを効果的に阻止することもできる。
【0078】
(粒子流動制限手段によるA、Bの画定)
本発明の装置は、上記したものがもっとも基本的なものであり、固体粒子の沈降特性(沈降速度)により領域Aと領域Bを画定するものであるが、当該粒子の沈降特性によるA、Bの画定の代わりに、又は、これとともに、流動液中の粒子の流動を制限する手段(粒子流動制限手段)を併用することにより、領域Aと領域Bの二つの領域の画定を、より確実に行うことができる。
【0079】
図8は、このような、粒子流動制限手段を使用する、例えば図5の内部循環型装置のバリエーションの一例であって、循環ライン20の途中に、液体サイクロン23等を設置し、循環ライン中を循環する固体粒子15(特に微粒子及び粗粒子)を遠心力(旋回力)で分離して、固液接触領域Aに返送し、当該サイクロンの上部から微粒子が分離された清澄液を処理排水として取り出すものである(この場合は、当該液体サイクロン中にも清澄液を収容する分離領域Bが形成されることになるが、サイクロンは、当該固体粒子に遠心力を印加することにより、当該粒子の処理液に伴われた流動を制限して、サイクロン内で粒子のみを沈降・分離せしめ、より微粒子の同伴の少ない分離領域Bを画定したものである。)。
【0080】
また、図9は、別の粒子流動制限手段を使用するバリエーションを示すものであって、処理容器内に固体粒子15の粒径よりも小さい目開きのスクリーン、濾布、多孔板等(以下、スクリーン等25と称する。)を設置して、当該スクリーン等25により、固液接触領域Aと分離領域Bをより確実に画定するようにしたものである。すなわち、当該スクリーン等が粒子の流動制限手段として作用し、粒子の処理液に伴われた流動は、当該流動制限手段で阻止され、分離領域Bには、微粒子が実質的に存在せず清澄液のみが存在するようにその領域を画定することができ、ここから清澄処理排水が好適に取り出せるのである。
【0081】
図10は、図9のバリエーションの一つであって、処理容器10を、上記したスクリーン等25で固液接触領域Aと分離領域Bに分割し(ただし、上部が領域A、下部が領域Bとする。)、排水原液Fiは上部から領域Aに供給され、処理排水Foは下部の領域Bから抜き出される。この場合、粒子の浮遊補助手段として、図6(a)のように、機械的撹拌手段30や、図6(b)のように気泡撹拌手段30’を領域Aに適用し、固液接触反応を促進させることが好ましい。
【0082】
このように、上記粒子制限手段は、それのみにより、固液接触領域Aと分離領域Bを画定することも可能である。
【0083】
フッ素化合物含有排水原液Fiは、カルシウム化合物及びリン酸類等を添加されて、以上のごとくして固液接触領域Aと分離領域Bを画定して設けた本発明の処理装置10(または10’)に導入される。より具体的には、当該排水原液は当該装置のカルシウム/リン含有化合物固体粒子を収容している固液接触領域Aに導入され、当該領域内で、固体粒子を浮遊状態に保持しながら処理液と混合せしめて、接触・反応させるものである。
【0084】
当該処理操作は、特に加熱は必要なく、室温で行うことができ、また、処理時間(すなわち、正確には、処理装置における処理液の平均滞留時間)は、通常、0.01〜0.8時間、好ましくは0.02〜0.7時間、さらに好ましくは0.03〜0.6時間程度で充分である。
【0085】
(固液接触領域)
本発明においては、固液接触領域Aに導入された処理液中で、添加されたカルシウムとリン化合物からなる、カルシウムとリン化合物の結晶が生成し、これが安定化する際に、処理液中のフッ素化合物がさらに取り込まれて、例えばフルオロアパタイトのごとき極めて溶解度の低い難溶性化合物の結晶を形成するものであるが、その際、当該固液接触領域Aには、カルシウム/リン含有化合物の固体粒子15が浮遊状態で存在するので、おそらく、当該粒子が種晶となり、上記難溶性化合物の結晶生成及び成長が促進され、短時間で確実に当該難溶性化合物の沈殿形成が完了すると考えられる。このように、本発明における固液接触領域は、「固液反応領域」と称することもできる。本発明における「固液接触領域」とは、かかる意義を有するものである。
【0086】
以上のごとくして、本発明の処理装置によれば、フッ素化合物含有排水原液を、少なくともフッ素濃度0.8ppm以下まで、好ましくは0.1ppm程度まで容易に低下せしめることが可能である。
【0087】
なお、当該カルシウムとリン化合物の結晶に対し、フッ素化合物が物理的に吸着されて取り込まれるメカニズムが存在するとも考えられる。
【0088】
(リン酸カルシウム粒子との接触)
以上のごとく、本発明の装置によれば、カルシウム/リン含有化合物粒子の存在下に、カルシウム化合物、フッ素化合物、リン酸類等を処理排水中で接触させる操作を行い、短時間で確実に、当該フッ素化合物を含む難溶性化合物の沈殿形成を行わせることができるが、この技術思想をさらに発展させ、フッ素化合物含有排水を、リン酸類等の存在下に、リン酸カルシウム粒子と接触させることにより、当該フッ素化合物と当該リン酸類等を当該リン酸カルシウム粒子内に取り込ましめて、フッ素化合物(及びリン酸類等)を処理することも可能であり、本発明の装置はかかる処理を実施するためにも好適に使用することができる。
【0089】
すなわち、フッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液に、リン酸類及び/又はリン酸化合物を添加し、当該添加された排水をリン酸カルシウム粒子と接触させ、当該排水中のフッ素化合物を減少させるフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するためにも、上記詳述したユニット型処理装置をそのまま使用することができる。
【0090】
ただし、この場合は、図1のフローにおいて、排水原液には、リン酸類及び/又はリン酸化合物5のみを添加し、カルシウム化合物3は添加しないこと、及び、カルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子15としてリン酸カルシウム粒子を特定して使用する点のみが異なるだけであり、本発明のユニット型処理装置は、上記と同様な操作によりフッ素含有排水の処理に適用される。この場合も、リン酸類及び/又はリン酸化合物5は、排水原液のラインに供給してもよいし、処理装置の固液分離流域A等に添加してもよい。
【0091】
ここで使用するリン酸カルシウムとしては、すでに述べたように、フッ素化合物含有排水中で実質的に溶解しないものが好ましく、トリカルシウムフォスフェート、ダイカルシウムフォスフェート、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムが挙げられる。より好ましくは、ハイドロキシアパタイトやフルオロアパタイトに代表されるアパタイト構造のものである。
【0092】
なお、この場合、リン酸カルシウムの(Ca)と(P)のモル比(Ca/P)は、処理排水中のフッ素化合物の濃度や添加したリン酸類等の濃度によって変化するが、通常1.2〜2.3程度であることが好ましい。また、当該フッ素化合物含有排水は、pH4以上、好ましくは6以上に調整することが望ましい。
【0093】
リン酸カルシウム粒子の粒径は、例えば1〜5000μm、好ましくは1〜2000μm程度であることが望ましい。
【0094】
排水は、基本的にリン酸類等を予め添加してあるものである。かくして、本発明の処理装置中でフッ素化合物とリン酸類等を共に含有する状態でリン酸カルシウム粒子と接触せしめることにより、おそらくすでに述べたメカニズムと類似のメカニズムにより、当該リン酸カルシウム粒子が液中で一旦溶解し、より安定な結晶へと変換するか再結晶する際、処理排水中のフッ素化合物とリン化合物を共に取り込むため、極めて低濃度までフッ素化合物濃度を処理できる。
【0095】
特に、カルシウム(Ca)とリン(P)のモル比が1.2〜2.3のリン酸カルシウムを用いた場合は、当該再結晶等による生成物が極めて溶解度の低いフルオロアパタイト等のアパタイト構造を含む化合物となるため、より好ましいと推定される。
【0096】
(排水量の削減)
以上のごとく、本発明のユニット型処理装置によれば、フッ素化合物含有排水を高度処理することができる。
【0097】
しかして、その適用のひとつとして、半導体製造プロセス等のドライエッチングやクリーンニングガスを燃焼、分解処理したガスをスクラバで水洗処理した排水の処理が典型的なものとしてあげられるが、従来、スクラバは、大量の洗浄水を噴霧するため、排水量が非常に多くなるという大きな問題があった。本発明によれば、また、以下のようにして、排水量を削減することが可能となる。
【0098】
以下、図11を参照しながら、排水量の削減方法について説明する。
図11において、1は、図1で示したフッ素化合物含有する排水の発生源として示されていたものであるが、図1では、その具体的な内容を示している。
【0099】
40は焼却炉等のフッ素化合物分解除害設備であって、ここに例えばフッ素化合物であるPFCガスを供給し、処理されたフッ素化合物燃焼排ガス43は、スクラバ等の湿式除害設備50に導入され、通常アルカリ含有洗浄水53を噴霧して当該フッ素化合物を捕集・除去するスクラビング処理することにより、フッ素化合物含有処理排水(フッ素化合物含有排水原液)Fiが得られるのである。
【0100】
このフッ素化合物含有処理排水原液Fiは、すでに述べたようにして、本発明のユニット型処理装置10の領域Aに供給され、領域Bから清澄処理排水Foとして排出される。
【0101】
本発明においては、当該処理排水Foの少なくとも一部Forを当該除害設備50へ循環し、当該洗浄水の一部として利用するものである。
【0102】
実際には、フレッシュな洗浄水をFwとすれば、処理排水の循環がない場合は、Fw=Foであるものが、循環を行うことにより、正味の排水量はFo−Forとなり、また、フレッシュな洗浄水は正味の排水量に等しいので、Fw=Fo−Forになるので、フッ素含有排水処理装置からの排水量(及びフレッシュな洗浄水量)が削減される。
【0103】
なお、循環比(For/Fo)は、0.1〜0.9、好ましくは0.2〜0.7、さらに好ましくは0.3〜0.5程度である。これが請求項11に記載されている態様である。
【0104】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、フッ素化合物含有排水の処理前後におけるフッ素の分析は、JIS K 0102記載のイオン電極法によって行った。
【0105】
〔実施例1〕
試験装置として図5に示した内部循環型の容積1リットルのガラス製装置を使用した。当該装置中には、カルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子として第三リン酸カルシウムを5〜200μmに粒度調整したもの15gを仕込んである。
【0106】
試験液として、純水にフッ酸を加えてフッ素濃度を5ppmに調整した液をフッ素化合物含有排水原液とし、これにカルシウム化合物として水酸化カルシウム及びリン酸類として0.1%の正リン酸を添加した。
【0107】
当該ガラス製装置に循環ポンプP’を含む循環ラインを取り付け、上記試験原液を連続的にフィードした。
【0108】
内部循環比は、25〜30とし、滞留時間0.5時間で、12時間試験を継続した。一定時間ごとに処理された試験排水中のフッ素濃度を測定した結果を表1に示す。
【0109】
表1より明らかなごとく、排水中のフッ素濃度は、すべて0.1ppm以下に処理されていることが確認された。また、流出する処理液中にはほとんど第三リン酸カルシウム粒子の混入は認められなかった。
【0110】
【表1】
【0111】
【発明の効果】
(1)本発明のユニット型処理装置においては、装置内部で固液分離操作が行われ、従来の排水処理設備において生成する大量の沈殿の処理に必須であったフィルタープレス等の濾過機を必要としない。このため、本処理装置は、コストが大幅に安いことはもちろん、人手を要することなく、基本的に無人の連続操作が可能であり、容易・簡便にフッ素の除去操作を実施することができる。
【0112】
このように本発明の処理装置は、また、装置内部で処理が完結するユニット型装置であって、装置内にカルシウム/リン含有化合物の固体粒子を予め収容したまま、排水原液の発生源のラインに接続し、及び/又は、処理後の当該固体粒子を装置内に収容したまま当該ラインから分離することが可能である。このことは、以下のとおり、工業的にきわめて大きな意義を有するものである。すなわち、
【0113】
現在半導体製造工場や液晶製造工場では、新聞等メディアに報道されているとおり、増設が常時行われているが、その場合は、ラインが次々と増設(追加)されることになる。本発明のユニット型処理装置では、このように増設したラインのサイトにおいて、発生する排水ラインに当該処理ユニットを接続し、ここで各別に処理することが可能である。すなわち、本発明のユニット型処理装置であれば、いかなるラインの増設に対しても、その都度、きめ細かく対応することが可能である(また、もちろん、ラインを取り除く場合にも容易に対応できる。)。
【0114】
しかるに、従来のごとく、すべての排水を一個所に集めて処理する集合排水の場合は、当該排水に対する処理設備は大型のもの一台を設置することになるが、半導体製品等の需要増のため、大幅なラインの増設が行われ、排水量が大幅に変更される場合等は、極めて対応困難な事態に立ち至るのである。
【0115】
(2)なお、本発明のユニット型処理装置は、各ラインに着脱可能に設置することが可能であるため、次のごとき使用態様が可能である。
【0116】
すなわち、装置の管理者(又は貸与者)は、まずユニット内に新鮮なカルシウム/リン含有化合物の固体粒子を収容したものを半導体工場等に持参し、その排水発生源のラインに当該ユニットを接続・設置する。工場側では、設置された当該処理装置により実質的に無人で一定期間排水処理操作を行わしめる。一定期間後に、再び工場において、反応後のカルシウム/リン含有化合物の固体粒子をユニット内に収容したまま持参し、当該ユニットをラインから取り外し、新しい固体粒子を収容して持参した別のユニットと交換するような工程とすることができる。
【0117】
なお、反応後の当該固体粒子を収容したユニットは、当該処理ユニットの管理者が持ち帰り、内部の固体粒子を再使用する処理を行い、再度新たなユニットに収容して、上記工程が繰り返される。工場側では、当該排水処理に対し、なんらの人手をかける必要はない。
【0118】
すなわち、このように、本発明のユニット型処理装置は、あたかも家庭用浄水器のレンタルビジネスのごとく、当該排水処理設備を保守管理サービスと共にレンタル的に提供する新規なビジネスモデルに使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理装置により、フッ素化合物を含有する排水原液を処理する工程を示すフロー図である。
【図2】本発明のユニット型処理装置のモデル図である。
【図3】容器Aにおける流路断面積と、Bにおける流路断面積を変化させるためテーパーを形成した例を示す説明図である。
【図4】図3に対応する容器の斜視図である。
【図5】A、Bにおける処理液の流量を変化させるため、循環ラインを形成した例を示す説明図である。
【図6】領域Aに粒子浮遊手段を適用し、粒子を浮遊させた状態を示す説明図である。
【図7】大量の排水原液を処理するのに適した容器の形状を示す説明図である。
【図8】粒子流動制限手段として液体サイクロンを使用する本発明の装置のバリエーションを示す説明図である。
【図9】粒子流動制限手段としてスクリーン等を使用する本発明の装置の別のバリエーションを示す説明図である。
【図10】粒子流動制限手段としてスクリーン等を使用する本発明の装置の別のバリエーションを示す説明図である。
【図11】処理排水の少なくとも一部をスクラバ等に循環して洗浄水の一部として利用することにより排水量を削減する装置のフローを示す説明図である。
【符号の説明】
1 フッ素化合物を含有する排水の発生源
3 カルシウム化合物
5 リン酸類及び/又はリン酸化合物
10、10’ 本発明のユニット型処理装置(又は処理容器)
15 カルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子
17、17’テーパー
18 邪魔板
20 循環ライン
23 液体サイクロン等
25 スクリーン等
30 機械的撹拌手段
30’気泡撹拌手段
40 焼却炉等のフッ素化合物分解除害設備
43 フッ素化合物燃焼排ガス
50 スクラバ等湿式除害設備
53 洗浄水
A 固体粒子を収容する固液接触領域
B 清澄液を収容する分離領域
Fi フッ素化合物含有排水原液
Fr 循環ライン20における循環量
Fo 処理排水
For 処理排水の循環量
M モーター
P ポンプ等の供給装置
P’ 循環ポンプ
SA 固液接触領域Aの流路断面積
SB 分離領域Bの流路断面積
upt 粒子の終末沈降速度
VlA 領域Aにおける処理液の線速度
VlB 領域Bにおける処理液の線速度
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体、電子、電気産業を含む広範囲な産業分野におけるフッ素化合物含有排水を、従来にない低濃度まで除去しうる高度処理を実施するために適したコンパクトなユニット型処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素は、現在、半導体、エレクトロニクス、セラミックス、樹脂、塗料、繊維等の製造工業等の種々の産業分野で欠かすことの出来ない有用な化学物質として大量に使用されている。また、リン酸肥料の製造工程、アルミニウムの電解精錬工程等からの排水等に含有されて排出される場合も多い。一方、フッ素は、人体に対しては大量に摂取した場合、又は化合物の形態によっては微量でも、骨格フッ素中毒、斑状歯、中枢神経障害等の障害を生ずるとされている有害な物質でもあり、環境の保全上、これらの産業に従事する事業者(企業)は、フッ素の排出には、細心の注意と大きな責任を負うことは当然である。
【0003】
近年、半導体製造プロセスや液晶製造プロセスのドライエッチングやクリーニングに使用されるCF4、C2F6、C3F8、C4F8、CHF3、SF6、NF3のごとき所謂PFC等のガスは、オゾン層破壊及び地球温暖化防止等の観点からも厳しく大気中への排出が制限され、現在、これらフッ素化合物含有排ガスは、燃焼や触媒燃焼処理等により例えば99.99%程度まで分解処理されていて、ほとんど大気中へは排出されていないとされている。また、リサイクル法の施行等に伴い、冷蔵庫等から回収されたフロンの処理排水にも同様にかなりのフッ素化合物が含まれている。
【0004】
しかしながら、その代わりに、当該燃焼排ガスをスクラバ等の湿式除害設備によりアルカリ含有洗浄水を噴霧(スクラビング)して水洗処理した排水中には、その分解生成物であるフッ化水素等のフッ素化合物が多量に含有・排出されるようになり、大きな問題となっている。すなわち、本来大気中に排出されるべきフッ素化合物が排水中に移行することになるのである。しかも、PFC等のガスの排出量は、1995年度を100とした場合、2000年に140、2010年には350に増加すると予想され、これに応じて燃焼排ガスをスクラビング処理した洗浄排水中のフッ素化合物量も、激増すると推定される。また、上記したように、リサイクル法の施行等に伴い、冷蔵庫等から回収されたフロンの処理排水にも同様にかなりのフッ素化合物が含まれているという状況にある。
【0005】
かかる観点から、環境の保全について基本理念を定めている環境憲法ともいうべき「環境基本法」は、当然のことながら、フッ素についても環境基準を規定しており、フッ素の環境基準は、0.8(mg/L)(0.8ppm)と規定されているが(平成11年環境庁告示第14号)、当該数値を基礎とし、かつ、上記のごとき排出状況を考慮して、水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)は、フッ素の排水基準の規制値を、従来の15(mg/L)から8(mg/L)に強化した(平成13年6月水質汚濁防止法施行令改正による。)。
【0006】
いずれにせよ、半導体製造や液晶製造等ハイテク産業の分野等でも必須の材料として使用されるフッ素の使用総量が増加するにつれて、排水基準による規制値も今後、より厳しくならざるを得ないと考えられ、基本的には、排水中のフッ素の濃度そのものを、これを希釈することなしに、直接環境基準である0.8(mg/L)以下にしうる技術が望ましい。
【0007】
従来、フッ素化合物含有排水の処理法としては、これに塩化カルシウムや水酸化カルシウム等のカルシウム化合物を添加して、反応させ、フッ素を難溶性のフッ素のカルシウム塩、特にフッ化カルシウム(CaF2)として沈澱せしめるか、または、炭酸カルシウム粒子を充填した充填カラムにフッ素化合物含有排水を通液して接触させ、当該粒子表面に、CaF2を析出させる凝集沈澱法は、フッ素除去処理の方法として古くから実施されている最も一般的な技術の一つである。
【0008】
しかしながらこの方法では、CaF2の溶解度が16.18(mg/L)(20℃)程度であるため、上記より厳しい環境基準(0.8(mg/L)以下)にまでフッ素を除去することは原理的に困難である。しかも、実際の排水においては、フッ素の除去効率は、共存する種々のイオンにより低下するという問題がある。例えば、排水中に硫酸イオンが共存する場合は、処理後の排水中のフッ素濃度は、せいぜい30〜50(mg/L)程度となる(例えば、特許文献1、第500頁、実施例及び表を参照。)
【0009】
さらに問題なのは、排水中にリン酸イオンが存在すると、例えば炭酸カルシウムから、CaF2への転換反応が阻害され、フッ素除去が充分に行われないことである(例えば、特許文献2、第2頁、左欄、段落番号〔0006〕を参照。)。
【0010】
また、CaF2の析出反応は、酸性領域、すなわちpH4〜5,好ましくはpH2〜3程度で進行するため、排水に酸を添加してpH調整後、カルシウム化合物を添加しないと、CaF2が充分生成しない。このpHの調整には、リン酸以外の、塩酸、硝酸等の酸を添加して行われる。これは、上記したようにリン酸を添加した場合、リン酸カルシウムが生成してしまい、CaF2の生成が阻害されるため、リン酸を添加することだけは絶対に行ってはならないとされているためである(例えば、特許文献3、第3頁、左欄、段落番号〔0008〕、同頁、右欄、段落番号〔0017〕を参照。)。
【0011】
なお、従来から、リン酸イオンは、水質の富栄養化を招く元凶物質であるため、工場排水等からは、完全な除去が要請され、その除去についても苦慮されているものであり(例えば、特許文献4,第2頁、左欄、2行〜7行を参照。)、かかるリン酸等をわざわざ処理液に添加し、排水中のリン酸イオン濃度をさらに増加せしめる方法は従来知られていない。
【0012】
【特許文献1】
特開昭53−125993号
【特許文献2】
特開平11−300370号
【特許文献3】
特開平10−57970号
【特許文献4】
特開平5−84493号
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従来、フッ素除去に関する技術としては、上記したような方法が提案されているが、工業的に容易・簡便に実施しうる方法であって、かつ、排水中のフッ素濃度を上記した0.8ppm以下にしうる高度処理技術は、実際上は存在しなかった。また、特に、上記PFCガス等の処理ガス由来の排水中のフッ素化合物は、水酸化ナトリウム等のアルカリを含有する洗浄水を使用してスクラビング処理しているためか、通常の排水に比較して極めて除去し難いという問題もある。
【0014】
本出願人らは、排水中のフッ素化合物の高度除去技術の重要性に鑑み鋭意検討した結果、先に、容易・簡便に実施可能なフッ素の除去方法でありながら、従来にない低濃度まで、すなわち、排水中のフッ素の濃度そのものを、これを希釈することなく、直接環境基準である0.8(mg/L)(0.8ppm)以下にしうる画期的な高度処理方法を提案した(特開2002−370093を参照。)。
【0015】
この方法の基本的原理は、上記先願に詳細に開示しているように、フッ素化合物含有排水に対し、カルシウム化合物とともに、さらにわざわざリン酸類及び/又はリン酸化合物を添加するものであり、かつ、当該リン酸類等を添加する際に、排水中に、カルシウム/リン含有化合物の固体粒子を存在させることにより、排水中のフッ素化合物を、フルオロアパタイトのごとき難溶性化合物の沈殿の構成成分として、促進して取り込ましめるものであるが、本発明の目的は、上記方法を、特に実際の排水発生源の近傍において、容易、簡便、かつ、連続的に実施するのに適した、ユニット型処理装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0017】
(1) フッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液に、カルシウム化合物とリン酸類及び/又はリン酸化合物を添加し、当該添加された排水を、カルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子と接触させ、当該排水中のフッ素化合物を減少させるフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するために適したユニット型処理装置であって、
【0018】
当該ユニット型装置を構成する容器は、当該固体粒子を収容する固液接触領域Aと、
清澄液を収容する分離領域Bとを有し、
【0019】
この二領域の画定は、当該排水中の固体粒子の沈降特性及び/又は当該粒子の流動を制限する手段により定められるものであり、
【0020】
当該排水原液Fiは前記固液接触領域Aに供給され、
またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、前記分離領域Bから排出されるものであることを特徴とする前記ユニット型処理装置。
【0021】
(2) 前記固体粒子の終末沈降速度uptは、前記固液接触領域Aにおける処理液の線速度VlAよりも小さく、かつ、前記分離領域Bにおける処理液の線速度VlBよりも大きいものである(1)項に記載のユニット型処理装置。
【0022】
(3) 前記容器の上部は、流路断面積の大なる分離領域Bを形成し、かつ、容器下部をテーパー状に形成して流路断面積を縮小せしめた固液接触領域Aを形成した(2)項に記載のユニット型処理装置。
【0023】
(4) 前記固液接触領域Aに循環ラインを形成し、排水原液Fiの供給量に比較して充分大なる循環量で当該排水を循環させる(2)項に記載のユニット型処理装置。
【0024】
(5) フッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液に、リン酸類及び/又はリン酸化合物を添加し、当該添加された排水をリン酸カルシウム粒子と接触させ、当該排水中のフッ素化合物を減少させるフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するために適したユニット型処理装置であって、
【0025】
当該ユニット型装置を構成する容器は、当該固体粒子を収容する固液接触領域Aと、
清澄液を収容する分離領域Bとを有し、
【0026】
この二領域の画定は、当該排水中の固体粒子の沈降特性により定められるものであり、
【0027】
当該排水原液Fiは前記固液接触領域Aに供給され、
またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、前記分離領域Bから排出されるものであることを特徴とする前記ユニット型処理装置。
【0028】
(6) 前記固体粒子の終末沈降速度uptは、前記固液接触領域Aにおける処理液の線速度VlAよりも小さく、かつ、前記分離領域Bにおける処理液の線速度VlBよりも大きいものである(5)項に記載のユニット型処理装置。
【0029】
(7) 前記容器の上部は、流路断面積の大なる分離領域Bを形成し、容器下部をテーパー状に形成して流路断面積を縮小せしめた固液接触領域Aを形成した(6)項に記載のユニット型処理装置。
【0030】
(8) 前記固液接触領域Aに循環ラインを形成し、排水原液Fiの供給量に比較して充分大なる循環量で当該排水を循環させる(6)項に記載のユニット型処理装置。
【0031】
(9) 前記ユニット型処理装置は、前記固体粒子を装置内の固液接触領域Aに予め収容したまま排水原液のラインに接続して当該排水の処理を行い、及び/又は、処理後に反応した当該固体粒子をその固液接触領域Aに収容したまま、当該ラインから分離しうるものである(1)項〜(8)項のいずれかに記載のユニット型処理装置。
【0032】
(10) フッ素化合物含有排水原液Fiが、フッ素化合物分解除害設備より排出されるフッ素化合物燃焼排ガスを湿式除害設備に導入して洗浄水を噴霧し当該フッ素化合物を捕集・除去するスクラビング処理して得られた処理排水である(1)項〜(9)項のいずれかに記載のユニット型処理装置。
【0033】
(11) フッ素化合物含有排水原液Fiが、フッ素化合物分解除害設備より排出されるフッ素化合物燃焼排ガスを湿式除害設備に導入して洗浄水を噴霧し、当該フッ素化合物を捕集・除去するスクラビング処理して得られた処理排水であり、かつ、(1)項〜(9)項のいずれかに記載の処理装置により処理された処理排水Foの一部を、当該湿式除害設備に循環し、当該洗浄水の少なくとも一部として利用するフッ素化合物含有排水装置からの排水量の削減方法。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の処理装置により、フッ素化合物を含有する排水原液を処理する工程を示すフロー図である。
【0036】
すなわち、図1に示すように、フッ素化合物を含有する排水の発生源1から排出されるフッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液Fiに、カルシウム化合物3とリン酸類及び/又はリン酸化合物5を添加し、当該添加された排水を、本発明の処理装置10内に導入し、装置内のカルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子15と接触・反応させ、当該排水中のフッ素化合物を所定値以下に減少せしめた処理排水Foが排出される。これが請求項1で規定される本発明の基本的な態様である。
【0037】
(フッ素化合物含有排水)
本発明で対象とする、フッ素化合物が溶解または懸濁しているフッ素化合物含有排水(以下、単に「排水原液」又は「排水」と称することがある。)とは、特に限定するものではなく、例えば、半導体製造産業、液晶製造産業その他電子、電気産業やその原料提供産業、発電所の排水をはじめ、回収フロン処理場、リサイクル産業、ごみ焼却等廃棄物処理産業を代表とする環境事業から発生する排水、アルミニウム電解精錬工業、リン酸肥料の製造業、リン系及びフッ素系化合物等の製造業の排水、並びに土木建設、鉱業、金属処理業の排水、医療や農業、上下水処理設備、河川、地下水を問わず、ありとあらゆるフッ素化合物を溶解した排水等が例示される。
【0038】
本発明の処理装置で処理する排水原液中に溶解または懸濁しているフッ素化合物の濃度は、液中のフッ素として、0.5ppm〜40%(フッ素質量/容積:以下同様)であることが好ましく、さらに好ましくは1ppm〜15%程度である。
【0039】
本発明の装置で処理することにより、基本的には、排水原液中のフッ素濃度を0.8ppm以下に処理しうるものであるが、例えば、排水中のフッ素が15%以下であれば、一回の処理で、フッ素濃度0.5ppm程度まで減少可能であり、また、同様に5%以下であれば、0.1ppm程度まで減少させることが可能である。なお、さらに高濃度のフッ素濃度の排水原液の場合は、必要により複数回、本発明の装置による処理を行うことも可能である。
【0040】
また、まず、カルシウム化合物を添加してフッ素化合物をフッ化カルシウムとして処理する従来の方法を適用し、8ppm程度までフッ素化合物濃度を減少させ、これをさらに0.8ppm以下に減少させる高度処理工程に対し、本発明の処理装置を適用して処理してもよい。
【0041】
なお、本発明の処理の対象とするフッ素化合物は、有機性のフッ素化合物でも無機性のフッ素化合物でもよいが、より好ましくは無機性のフッ素化合物である。
【0042】
(カルシウム化合物)
本発明においてフッ素化合物含有排水原液Fiに添加されるカルシウム化合物3としては、基本的に、少なくともその一部が当該排水に溶解し、液中でフッ素と結合してその難溶性のカルシウム化合物を生成しうるものであり、好ましくは当該排水のpHをアルカリ性にすることができるものであれば特に限定するものではなく、例えば、消石灰、生石灰、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、過酸化カルシウム、次亜リン酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、さらにはリン酸カルシウム等が挙げられる。これらは、天然に産するものでもよいし、各種製造業で主産物、または、副産物として製造されるものでもよい。
【0043】
なお、リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート(第三リン酸カルシウム)、ダイカルシウムフォスフェート(第二リン酸カルシウム)、モノカルシウムフォスフェート(第一リン酸カルシウム)、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるカルシウムを含むアパタイト類であってもよく、さらには天然に産するカルシウムを含むリン酸化合物であるリン鉱石も使用できる。
【0044】
以上のうち、特に好ましいカルシウム化合物は、消石灰及び炭酸カルシウムである。消石灰は、重金属が排水中に含まれる場合に重金属も除去できるので好ましく、炭酸カルシウムは、処理によって生成するスラッジが少ないため好ましい。また、例えば、本発明の処理装置や配管等の材質として充分な耐腐食性を有するものを採用する場合は、溶解度の高い塩化カルシウムも好ましく使用される。
【0045】
これらのカルシウム化合物の添加量は、排水原液中のフッ素化合物濃度、当該カルシウム化合物の種類、その溶解度等によって適宜選択されるが、通常、当該排水原液に対して0.001〜10質量%、好ましくは0.05〜3質量%程度である。
【0046】
なお、カルシウム化合物3はフッ素化合物含有排水原液のラインに添加するのが最も好ましいが、処理装置の例えば固液接触領域Aに供給するようにしてもよい。ただしこの場合、この領域でフッ素化合物濃度が高いと、CaF2の生成より先に、アパタイト化合物等が生成し、フッ素濃度が下がりにくくなることがある。
【0047】
(リン酸類等)
また、フッ素含有排水に添加されるリン酸類及び/又はリン酸化合物(以下、単に「リン酸類等」と称することがある。)5としては、リン酸自体でもよいが、リン酸とアルカリ性化合物の中和反応により生成したリン酸塩でもよく、基本的には、排水中でフッ素化合物及びカルシウム化合物と結合してその難溶性化合物を形成することができ、また好ましくは、当該リン酸類等を添加することにより、処理すべきフッ素化合物含有排水のpHを低下させることができるものであれば、特に限定するものではない。
【0048】
例えば、正リン酸(オルトリン酸)、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリメタリン酸、ウルトラリン酸、テトラメタリン酸、イソテトラポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、及び更なる縮合リン酸等のリン酸類;並びに、
【0049】
リン酸アンモニウム(リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム)、リン酸ナトリウム(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム)、リン酸カリウム(リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム)、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性メタリン酸ナトリウム、酸性メタリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸カリウム、ウルトラリン酸ナトリウム、ウルトラリン酸カリウム、テトラメタリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸カリウム、イソテトラポリリン酸ナトリウム、イソテトラポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、リン酸カルシウム、更には、その他の金属とリン酸から生成するリン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸鉄などのリン酸塩等のリン酸化合物が挙げられる。
【0050】
更に、上記リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート(第三リン酸カルシウム)、ダイカルシウムフォスフェート(第二リン酸カルシウム)、モノカルシウムフォスフェート(第一リン酸カルシウム)、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムが挙げられるが、それだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるアパタイト構造のものであってもよく、また天然に産するリン酸化合物であるリン鉱石であってもよい。
【0051】
上記のリン酸類等のなかで、好ましくは、縮合リン酸を含むリン酸であり、さらに好ましくは正リン酸である。また、上記リン酸類やリン酸化合物は、一種又は二種以上を併用することも可能である。なお、リン酸カルシウム等のリン酸塩を使用する場合、実質的にフッ素化合物含有排水のpHを低下させることが困難な場合は、硫酸や塩酸等の酸と共に使用すればよい。
【0052】
リン酸類等の添加量は、その種類によっても異なりうるが、所定のpHになるように添加すればよく、通常排水原液に対して0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜1.5質量%である。なお、リン酸類等は、フッ素化合物含有排水原液のラインに添加してもよいが、処理装置の例えば固液接触領域Aに供給するようにしてもよい。
【0053】
(カルシウム/リン含有化合物の固体粒子)
カルシウムとリンを含有する化合物(以下「カルシウム/リン含有化合物」と略記することがある。)の固体粒子15としては、フッ素化合物含有排水中で実質的に溶解しないものであれば特に限定するものではないが、リン酸カルシウム粒子が好ましく、例えば、トリカルシウムフォスフェート、ダイカルシウムフォスフェート、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウム粒子が挙げられるが、それだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイト〔Ca5(PO4)3OH〕やフルオロアパタイト〔Ca5(PO4)3F〕に代表されるアパタイト構造のものであってもよく、また天然に産するリン酸化合物であるリン鉱石であってもよい。もっとも好ましくは、トリカルシウムフォスフェート、ハイドロキシアパタイト及びフルオロアパタイトの粒子である。
【0054】
本発明においては、後記するように、その処理は、固液接触領域Aと分離領域Bが画定されたユニット型処理容器で行われ、特に、固体粒子の沈降特性により固液接触領域Aと分離領域Bを画定されるような場合を考慮すると、沈降特性を決定する要素である粒径が、適度なものを選択する必要があり、通常、1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜500μmのものを使用する。
【0055】
(処理装置)
図2は、上記したフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するために適した本発明のユニット型処理装置のモデル図である。
【0056】
当該ユニット型処理装置10を構成する容器は、カルシウム/リン含有化合物の固体粒子を収容する固液接触領域Aと、
清澄液を収容する分離領域Bとを有し、
【0057】
この二領域の画定は、当該排水中における当該固体粒子15の沈降特性により定められるものであり、
【0058】
当該排水原液Fiは前記固液接触領域Aに供給され、
またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、前記分離領域Bから排出されるものである。
【0059】
(なお、上記したように、カルシウム化合物3とリン酸類等5は、排水原液Fiに添加してもよいし、又は直接固液接触領域Aに添加してもよい。図2では、リン酸類等5について直接Aに供給し、ここでFiと接触させる態様を示している。)
【0060】
(沈降特性によるA、Bの画定)
ここで領域Aと領域Bの画定は、上記したように基本的には当該排水中における当該固体粒子の沈降特性(沈降速度)により定められるが、当該固体粒子の終末沈降速度uptは、固液接触領域Aにおける処理液の線速度VlAよりも小さく、分離領域Bにおける処理液の線速度VlBよりも大きいものであるように設定されていることを意味する。これは、具体的には、請求項2に規定されている態様である。
【0061】
このように設定した場合、容易に理解されるように、upt<VlAであるから、当該固体粒子は、固液接触領域Aにおいては沈降することなく、当該領域で処理液に同伴されて浮遊・流動するが、upt>VlBであるため、分離領域Bにおける処理液には同伴されず、その領域外に沈降分離し、分離領域は清澄な領域となるのである。すなわち、このようにして、領域A及びBは、当該固体粒子の沈降特性により画定される。(以下、VlB<upt<VlAなる関係を「沈降/流動速度関係」と称することがある。)
【0062】
処理液中の粒子の終末沈降速度uptは、主として当該粒子15の物性(粒径、密度)や処理液の物性(密度)等により必然的に一定に定まるものであるから、上記沈降/流動速度関係は、所定の粒径の固体粒子に対しては、もっぱら、処理液の流量を変化させることにより、その線速度を変えて実現することが好ましい。
【0063】
図3は、処理容器の領域Aにおける流路断面積と、領域Bにおける流路断面積を、容器にテーパーを形成することにより変化させ、沈降/流動速度関係を実現した例を示す説明図であり、また図4は、図3に対応する容器の斜視図である。
【0064】
すなわち、処理容器10の上部は、大なる流路断面積(SB)の分離領域Bを形成し、一方、容器下部を、テーパー状17、17’に形成して、縮小せしめた流路断面積(SA)の固液接触領域Aを形成したものである。
【0065】
ここで、図3(a)、図4(a)は、テーパー17、17’を容器両側に形成したものであり、図3(b)、図4(b)は、容器片側のみにテーパー17を形成したものであり、いずれの形状のものも、目的に応じて適宜採用しうる。以上は請求項3で規定した態様である。
【0066】
領域Aにおける処理液の線速度は、VlA=Fi/SAで与えられ(但し、Fiは体積流量)、特に容器のより下部におけるSAはきわめて小さいので、線速度は逆にきわめて大きくなり、upt<VlAが容易に実現できる。
【0067】
一方、容器上部の領域Bにおいては、処理液の線速度は、VlB=Fi/SBで表されるが、SBは充分大きいため、当該線速度は小さくなり、upt>VlBが実現できるものである(これを「内部分級型」と称することがある。)。(なお、定常状態においては、当然のことながら、Fi=Foである。)
【0068】
ここで、容器の形状は、図4においては、角形状として示されているが、もちろんこれに限られるものではなく、円筒状(より正確には、下部(テーパー部)が円錐状で上部が円筒状となる。)であってもよい。
また、容器上部に邪魔板18を設置し、処理排水への微小粒子同伴を防止することも可能である。
【0069】
図5は、容器の断面積は、領域A、Bにおいて一定であるが、領域A、Bにおける処理液の流量を変化、異ならしめることにより、沈降/流動速度関係を実現した例である。
【0070】
すなわち、固液接触領域Aに循環ライン20を形成し、排水原液Fiの供給量に比較して充分大なる循環量Frで当該排水を循環させるものである。(当該循環量Frは、固体接触領域Aにおける流量となる。)
【0071】
例えば、供給排水原液流量Fi(=Fo)に対して、少なくとも5〜50倍、好ましくは10〜40倍、さらに好ましくは20〜30倍の流量の循環量とした場合〔すなわち、例えば(Fr/Fi)=5〜50〕、領域AとBの流路断面積SA、SBは同じであるが、それぞれの領域における流量(体積流量)が格段に異なるため、それぞれの領域の処理液の線速度VlA、VlBの両者を大幅に異ならしめることができ、所望の沈降/流動速度関係を実現することができるのである(これも「内部分級型」である。)。
【0072】
なお、粒子の終末沈降速度uptは、沈降管やアンドレアゼンピペット等により粒子又は粒子群の沈降速度を実際に測定してもよいし、また、すでに化学工学の分野では、古くからの精力的な研究により精度の高い実験式が確立されており、固体粒子の粒径が規定されれば、系の物性データ(粒子の密度、処理流体の密度、粘度等)のみから容易に推算可能である。
【0073】
以上は、基本的にVlB<upt<VlAなる条件を形成することにより、領域A及びBを画定するものであるが、さらに別の態様も可能である。
【0074】
これは、VlA≒VlB<uptなる条件、すなわち、粒子の終末沈降速度は、処理液の領域A、領域Bのいずれにおける線速度よりも大きい場合である。
【0075】
この場合は、粒子は固液接触領域Aにおいて沈殿し、甚だしき場合は容器の底部に固着層や充填層を形成するので、この状態では、もはや固液接触操作(及び固液接触反応)が円滑に行われない。従って、領域Aに粒子浮遊手段を適用し、粒子を浮遊せしめることが好ましい。図6はこの状態を示しているもので、図6(a)は、領域Aに機械的撹拌手段30を適用して粒子の最終浮遊回転数で緩く撹拌し、粒子を浮遊せしめており、また、図6(b)は、容器底部に設けた多孔板やノズルから空気等気体を噴出させて、同様に気泡撹拌手段30’により、領域A内で粒子を浮遊せしめるようにしたものである。
【0076】
図7は、さらにそのバリエーションの一つで、大量の排水原液を処理するに適した処理容器の形態を示している。この処理容器10’は、角形または円筒型の容器を横に設置した形態のものであり、排水原液Fiはその下部に供給され、処理排水Foは上部から流出する。従って、領域A、領域Bとも流路断面積は、流量に比較して十分大きいので、通常、処理液の線速度は、VlA≒VlB<uptなる条件を充足する。この場合、粒子が底部に沈降しやすいので、例えば、図7に示したように、容器底部に沿って横型の撹拌機等の機械的撹拌手段30を装入して緩く撹拌を行い、粒子を領域A内に浮遊させて反応を促進させるとともに、粒子が底部に沈降、沈着するのを防止するものである。ここでMはモーターである。なお、後記するように、本ユニット型処理装置をラインに着脱する場合は、モーターMを当該ユニットにセットしたものを一つのユニットとして、取り扱ってもよいし、モーターは、当該ユニットから分離し、ラインにユニットをセットした段階でユニットに取り付けるようにしてもよい。
【0077】
また図6〜図7等において、A領域とB領域の境界部には、バッフルを設置し、A領域の撹拌がB領域に直接及ばないようにし、又は、A領域において撹拌により流動している粒子を当該バッフルで確実にその流動を止めて、B領域に流出することを効果的に阻止することもできる。
【0078】
(粒子流動制限手段によるA、Bの画定)
本発明の装置は、上記したものがもっとも基本的なものであり、固体粒子の沈降特性(沈降速度)により領域Aと領域Bを画定するものであるが、当該粒子の沈降特性によるA、Bの画定の代わりに、又は、これとともに、流動液中の粒子の流動を制限する手段(粒子流動制限手段)を併用することにより、領域Aと領域Bの二つの領域の画定を、より確実に行うことができる。
【0079】
図8は、このような、粒子流動制限手段を使用する、例えば図5の内部循環型装置のバリエーションの一例であって、循環ライン20の途中に、液体サイクロン23等を設置し、循環ライン中を循環する固体粒子15(特に微粒子及び粗粒子)を遠心力(旋回力)で分離して、固液接触領域Aに返送し、当該サイクロンの上部から微粒子が分離された清澄液を処理排水として取り出すものである(この場合は、当該液体サイクロン中にも清澄液を収容する分離領域Bが形成されることになるが、サイクロンは、当該固体粒子に遠心力を印加することにより、当該粒子の処理液に伴われた流動を制限して、サイクロン内で粒子のみを沈降・分離せしめ、より微粒子の同伴の少ない分離領域Bを画定したものである。)。
【0080】
また、図9は、別の粒子流動制限手段を使用するバリエーションを示すものであって、処理容器内に固体粒子15の粒径よりも小さい目開きのスクリーン、濾布、多孔板等(以下、スクリーン等25と称する。)を設置して、当該スクリーン等25により、固液接触領域Aと分離領域Bをより確実に画定するようにしたものである。すなわち、当該スクリーン等が粒子の流動制限手段として作用し、粒子の処理液に伴われた流動は、当該流動制限手段で阻止され、分離領域Bには、微粒子が実質的に存在せず清澄液のみが存在するようにその領域を画定することができ、ここから清澄処理排水が好適に取り出せるのである。
【0081】
図10は、図9のバリエーションの一つであって、処理容器10を、上記したスクリーン等25で固液接触領域Aと分離領域Bに分割し(ただし、上部が領域A、下部が領域Bとする。)、排水原液Fiは上部から領域Aに供給され、処理排水Foは下部の領域Bから抜き出される。この場合、粒子の浮遊補助手段として、図6(a)のように、機械的撹拌手段30や、図6(b)のように気泡撹拌手段30’を領域Aに適用し、固液接触反応を促進させることが好ましい。
【0082】
このように、上記粒子制限手段は、それのみにより、固液接触領域Aと分離領域Bを画定することも可能である。
【0083】
フッ素化合物含有排水原液Fiは、カルシウム化合物及びリン酸類等を添加されて、以上のごとくして固液接触領域Aと分離領域Bを画定して設けた本発明の処理装置10(または10’)に導入される。より具体的には、当該排水原液は当該装置のカルシウム/リン含有化合物固体粒子を収容している固液接触領域Aに導入され、当該領域内で、固体粒子を浮遊状態に保持しながら処理液と混合せしめて、接触・反応させるものである。
【0084】
当該処理操作は、特に加熱は必要なく、室温で行うことができ、また、処理時間(すなわち、正確には、処理装置における処理液の平均滞留時間)は、通常、0.01〜0.8時間、好ましくは0.02〜0.7時間、さらに好ましくは0.03〜0.6時間程度で充分である。
【0085】
(固液接触領域)
本発明においては、固液接触領域Aに導入された処理液中で、添加されたカルシウムとリン化合物からなる、カルシウムとリン化合物の結晶が生成し、これが安定化する際に、処理液中のフッ素化合物がさらに取り込まれて、例えばフルオロアパタイトのごとき極めて溶解度の低い難溶性化合物の結晶を形成するものであるが、その際、当該固液接触領域Aには、カルシウム/リン含有化合物の固体粒子15が浮遊状態で存在するので、おそらく、当該粒子が種晶となり、上記難溶性化合物の結晶生成及び成長が促進され、短時間で確実に当該難溶性化合物の沈殿形成が完了すると考えられる。このように、本発明における固液接触領域は、「固液反応領域」と称することもできる。本発明における「固液接触領域」とは、かかる意義を有するものである。
【0086】
以上のごとくして、本発明の処理装置によれば、フッ素化合物含有排水原液を、少なくともフッ素濃度0.8ppm以下まで、好ましくは0.1ppm程度まで容易に低下せしめることが可能である。
【0087】
なお、当該カルシウムとリン化合物の結晶に対し、フッ素化合物が物理的に吸着されて取り込まれるメカニズムが存在するとも考えられる。
【0088】
(リン酸カルシウム粒子との接触)
以上のごとく、本発明の装置によれば、カルシウム/リン含有化合物粒子の存在下に、カルシウム化合物、フッ素化合物、リン酸類等を処理排水中で接触させる操作を行い、短時間で確実に、当該フッ素化合物を含む難溶性化合物の沈殿形成を行わせることができるが、この技術思想をさらに発展させ、フッ素化合物含有排水を、リン酸類等の存在下に、リン酸カルシウム粒子と接触させることにより、当該フッ素化合物と当該リン酸類等を当該リン酸カルシウム粒子内に取り込ましめて、フッ素化合物(及びリン酸類等)を処理することも可能であり、本発明の装置はかかる処理を実施するためにも好適に使用することができる。
【0089】
すなわち、フッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液に、リン酸類及び/又はリン酸化合物を添加し、当該添加された排水をリン酸カルシウム粒子と接触させ、当該排水中のフッ素化合物を減少させるフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するためにも、上記詳述したユニット型処理装置をそのまま使用することができる。
【0090】
ただし、この場合は、図1のフローにおいて、排水原液には、リン酸類及び/又はリン酸化合物5のみを添加し、カルシウム化合物3は添加しないこと、及び、カルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子15としてリン酸カルシウム粒子を特定して使用する点のみが異なるだけであり、本発明のユニット型処理装置は、上記と同様な操作によりフッ素含有排水の処理に適用される。この場合も、リン酸類及び/又はリン酸化合物5は、排水原液のラインに供給してもよいし、処理装置の固液分離流域A等に添加してもよい。
【0091】
ここで使用するリン酸カルシウムとしては、すでに述べたように、フッ素化合物含有排水中で実質的に溶解しないものが好ましく、トリカルシウムフォスフェート、ダイカルシウムフォスフェート、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムが挙げられる。より好ましくは、ハイドロキシアパタイトやフルオロアパタイトに代表されるアパタイト構造のものである。
【0092】
なお、この場合、リン酸カルシウムの(Ca)と(P)のモル比(Ca/P)は、処理排水中のフッ素化合物の濃度や添加したリン酸類等の濃度によって変化するが、通常1.2〜2.3程度であることが好ましい。また、当該フッ素化合物含有排水は、pH4以上、好ましくは6以上に調整することが望ましい。
【0093】
リン酸カルシウム粒子の粒径は、例えば1〜5000μm、好ましくは1〜2000μm程度であることが望ましい。
【0094】
排水は、基本的にリン酸類等を予め添加してあるものである。かくして、本発明の処理装置中でフッ素化合物とリン酸類等を共に含有する状態でリン酸カルシウム粒子と接触せしめることにより、おそらくすでに述べたメカニズムと類似のメカニズムにより、当該リン酸カルシウム粒子が液中で一旦溶解し、より安定な結晶へと変換するか再結晶する際、処理排水中のフッ素化合物とリン化合物を共に取り込むため、極めて低濃度までフッ素化合物濃度を処理できる。
【0095】
特に、カルシウム(Ca)とリン(P)のモル比が1.2〜2.3のリン酸カルシウムを用いた場合は、当該再結晶等による生成物が極めて溶解度の低いフルオロアパタイト等のアパタイト構造を含む化合物となるため、より好ましいと推定される。
【0096】
(排水量の削減)
以上のごとく、本発明のユニット型処理装置によれば、フッ素化合物含有排水を高度処理することができる。
【0097】
しかして、その適用のひとつとして、半導体製造プロセス等のドライエッチングやクリーンニングガスを燃焼、分解処理したガスをスクラバで水洗処理した排水の処理が典型的なものとしてあげられるが、従来、スクラバは、大量の洗浄水を噴霧するため、排水量が非常に多くなるという大きな問題があった。本発明によれば、また、以下のようにして、排水量を削減することが可能となる。
【0098】
以下、図11を参照しながら、排水量の削減方法について説明する。
図11において、1は、図1で示したフッ素化合物含有する排水の発生源として示されていたものであるが、図1では、その具体的な内容を示している。
【0099】
40は焼却炉等のフッ素化合物分解除害設備であって、ここに例えばフッ素化合物であるPFCガスを供給し、処理されたフッ素化合物燃焼排ガス43は、スクラバ等の湿式除害設備50に導入され、通常アルカリ含有洗浄水53を噴霧して当該フッ素化合物を捕集・除去するスクラビング処理することにより、フッ素化合物含有処理排水(フッ素化合物含有排水原液)Fiが得られるのである。
【0100】
このフッ素化合物含有処理排水原液Fiは、すでに述べたようにして、本発明のユニット型処理装置10の領域Aに供給され、領域Bから清澄処理排水Foとして排出される。
【0101】
本発明においては、当該処理排水Foの少なくとも一部Forを当該除害設備50へ循環し、当該洗浄水の一部として利用するものである。
【0102】
実際には、フレッシュな洗浄水をFwとすれば、処理排水の循環がない場合は、Fw=Foであるものが、循環を行うことにより、正味の排水量はFo−Forとなり、また、フレッシュな洗浄水は正味の排水量に等しいので、Fw=Fo−Forになるので、フッ素含有排水処理装置からの排水量(及びフレッシュな洗浄水量)が削減される。
【0103】
なお、循環比(For/Fo)は、0.1〜0.9、好ましくは0.2〜0.7、さらに好ましくは0.3〜0.5程度である。これが請求項11に記載されている態様である。
【0104】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、フッ素化合物含有排水の処理前後におけるフッ素の分析は、JIS K 0102記載のイオン電極法によって行った。
【0105】
〔実施例1〕
試験装置として図5に示した内部循環型の容積1リットルのガラス製装置を使用した。当該装置中には、カルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子として第三リン酸カルシウムを5〜200μmに粒度調整したもの15gを仕込んである。
【0106】
試験液として、純水にフッ酸を加えてフッ素濃度を5ppmに調整した液をフッ素化合物含有排水原液とし、これにカルシウム化合物として水酸化カルシウム及びリン酸類として0.1%の正リン酸を添加した。
【0107】
当該ガラス製装置に循環ポンプP’を含む循環ラインを取り付け、上記試験原液を連続的にフィードした。
【0108】
内部循環比は、25〜30とし、滞留時間0.5時間で、12時間試験を継続した。一定時間ごとに処理された試験排水中のフッ素濃度を測定した結果を表1に示す。
【0109】
表1より明らかなごとく、排水中のフッ素濃度は、すべて0.1ppm以下に処理されていることが確認された。また、流出する処理液中にはほとんど第三リン酸カルシウム粒子の混入は認められなかった。
【0110】
【表1】
【0111】
【発明の効果】
(1)本発明のユニット型処理装置においては、装置内部で固液分離操作が行われ、従来の排水処理設備において生成する大量の沈殿の処理に必須であったフィルタープレス等の濾過機を必要としない。このため、本処理装置は、コストが大幅に安いことはもちろん、人手を要することなく、基本的に無人の連続操作が可能であり、容易・簡便にフッ素の除去操作を実施することができる。
【0112】
このように本発明の処理装置は、また、装置内部で処理が完結するユニット型装置であって、装置内にカルシウム/リン含有化合物の固体粒子を予め収容したまま、排水原液の発生源のラインに接続し、及び/又は、処理後の当該固体粒子を装置内に収容したまま当該ラインから分離することが可能である。このことは、以下のとおり、工業的にきわめて大きな意義を有するものである。すなわち、
【0113】
現在半導体製造工場や液晶製造工場では、新聞等メディアに報道されているとおり、増設が常時行われているが、その場合は、ラインが次々と増設(追加)されることになる。本発明のユニット型処理装置では、このように増設したラインのサイトにおいて、発生する排水ラインに当該処理ユニットを接続し、ここで各別に処理することが可能である。すなわち、本発明のユニット型処理装置であれば、いかなるラインの増設に対しても、その都度、きめ細かく対応することが可能である(また、もちろん、ラインを取り除く場合にも容易に対応できる。)。
【0114】
しかるに、従来のごとく、すべての排水を一個所に集めて処理する集合排水の場合は、当該排水に対する処理設備は大型のもの一台を設置することになるが、半導体製品等の需要増のため、大幅なラインの増設が行われ、排水量が大幅に変更される場合等は、極めて対応困難な事態に立ち至るのである。
【0115】
(2)なお、本発明のユニット型処理装置は、各ラインに着脱可能に設置することが可能であるため、次のごとき使用態様が可能である。
【0116】
すなわち、装置の管理者(又は貸与者)は、まずユニット内に新鮮なカルシウム/リン含有化合物の固体粒子を収容したものを半導体工場等に持参し、その排水発生源のラインに当該ユニットを接続・設置する。工場側では、設置された当該処理装置により実質的に無人で一定期間排水処理操作を行わしめる。一定期間後に、再び工場において、反応後のカルシウム/リン含有化合物の固体粒子をユニット内に収容したまま持参し、当該ユニットをラインから取り外し、新しい固体粒子を収容して持参した別のユニットと交換するような工程とすることができる。
【0117】
なお、反応後の当該固体粒子を収容したユニットは、当該処理ユニットの管理者が持ち帰り、内部の固体粒子を再使用する処理を行い、再度新たなユニットに収容して、上記工程が繰り返される。工場側では、当該排水処理に対し、なんらの人手をかける必要はない。
【0118】
すなわち、このように、本発明のユニット型処理装置は、あたかも家庭用浄水器のレンタルビジネスのごとく、当該排水処理設備を保守管理サービスと共にレンタル的に提供する新規なビジネスモデルに使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理装置により、フッ素化合物を含有する排水原液を処理する工程を示すフロー図である。
【図2】本発明のユニット型処理装置のモデル図である。
【図3】容器Aにおける流路断面積と、Bにおける流路断面積を変化させるためテーパーを形成した例を示す説明図である。
【図4】図3に対応する容器の斜視図である。
【図5】A、Bにおける処理液の流量を変化させるため、循環ラインを形成した例を示す説明図である。
【図6】領域Aに粒子浮遊手段を適用し、粒子を浮遊させた状態を示す説明図である。
【図7】大量の排水原液を処理するのに適した容器の形状を示す説明図である。
【図8】粒子流動制限手段として液体サイクロンを使用する本発明の装置のバリエーションを示す説明図である。
【図9】粒子流動制限手段としてスクリーン等を使用する本発明の装置の別のバリエーションを示す説明図である。
【図10】粒子流動制限手段としてスクリーン等を使用する本発明の装置の別のバリエーションを示す説明図である。
【図11】処理排水の少なくとも一部をスクラバ等に循環して洗浄水の一部として利用することにより排水量を削減する装置のフローを示す説明図である。
【符号の説明】
1 フッ素化合物を含有する排水の発生源
3 カルシウム化合物
5 リン酸類及び/又はリン酸化合物
10、10’ 本発明のユニット型処理装置(又は処理容器)
15 カルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子
17、17’テーパー
18 邪魔板
20 循環ライン
23 液体サイクロン等
25 スクリーン等
30 機械的撹拌手段
30’気泡撹拌手段
40 焼却炉等のフッ素化合物分解除害設備
43 フッ素化合物燃焼排ガス
50 スクラバ等湿式除害設備
53 洗浄水
A 固体粒子を収容する固液接触領域
B 清澄液を収容する分離領域
Fi フッ素化合物含有排水原液
Fr 循環ライン20における循環量
Fo 処理排水
For 処理排水の循環量
M モーター
P ポンプ等の供給装置
P’ 循環ポンプ
SA 固液接触領域Aの流路断面積
SB 分離領域Bの流路断面積
upt 粒子の終末沈降速度
VlA 領域Aにおける処理液の線速度
VlB 領域Bにおける処理液の線速度
Claims (11)
- フッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液に、カルシウム化合物とリン酸類及び/又はリン酸化合物を添加し、当該添加された排水を、カルシウムとリンを含有する化合物の固体粒子と接触させ、当該排水中のフッ素化合物を減少させるフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するために適したユニット型処理装置であって、
当該ユニット型装置を構成する容器は、当該固体粒子を収容する固液接触領域Aと、
清澄液を収容する分離領域Bとを有し、
この二領域の画定は、当該排水中の固体粒子の沈降特性及び/又は当該粒子の流動を制限する手段により定められるものであり、
当該排水原液Fiは前記固液接触領域Aに供給され、
またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、前記分離領域Bから排出されるものであることを特徴とする前記ユニット型処理装置。 - 前記固体粒子の終末沈降速度uptは、前記固液接触領域Aにおける処理液の線速度VlAよりも小さく、かつ、前記分離領域Bにおける処理液の線速度VlBよりも大きいものである請求項1に記載のユニット型処理装置。
- 前記容器の上部は、流路断面積の大なる分離領域Bを形成し、かつ、容器下部をテーパー状に形成して流路断面積を縮小せしめた固液接触領域Aを形成した請求項2に記載のユニット型処理装置。
- 前記固液接触領域Aに循環ラインを形成し、排水原液Fiの供給量に比較して充分大なる循環量で当該排水を循環させる請求項2に記載のユニット型処理装置。
- フッ素化合物が溶解しているかまたは沈降しないで懸濁しているフッ素化合物含有排水原液に、リン酸類及び/又はリン酸化合物を添加し、当該添加された排水をリン酸カルシウム粒子と接触させ、当該排水中のフッ素化合物を減少させるフッ素化合物含有排水の高度処理を実施するために適したユニット型処理装置であって、
当該ユニット型装置を構成する容器は、当該固体粒子を収容する固液接触領域Aと、
清澄液を収容する分離領域Bとを有し、
この二領域の画定は、当該排水中の固体粒子の沈降特性により定められるものであり、
当該排水原液Fiは前記固液接触領域Aに供給され、
またフッ素化合物が処理された処理排水Foは、前記分離領域Bから排出されるものであることを特徴とする前記ユニット型処理装置。 - 前記固体粒子の終末沈降速度uptは、前記固液接触領域Aにおける処理液の線速度VlAよりも小さく、かつ、前記分離領域Bにおける処理液の線速度VlBよりも大きいものである請求項5に記載のユニット型処理装置。
- 前記容器の上部は、流路断面積の大なる分離領域Bを形成し、容器下部をテーパー状に形成して流路断面積を縮小せしめた固液接触領域Aを形成した請求項6に記載のユニット型処理装置。
- 前記固液接触領域Aに循環ラインを形成し、排水原液Fiの供給量に比較して充分大なる循環量で当該排水を循環させる請求項6に記載のユニット型処理装置。
- 前記ユニット型処理装置は、前記固体粒子を装置内の固液接触領域Aに予め収容したまま排水原液のラインに接続して当該排水の処理を行い、及び/又は、処理後に反応した当該固体粒子をその固液接触領域Aに収容したまま、当該ラインから分離しうるものである請求項1〜8のいずれかに記載のユニット型処理装置。
- フッ素化合物含有排水原液Fiが、フッ素化合物分解除害設備より排出されるフッ素化合物燃焼排ガスを湿式除害設備に導入して洗浄水を噴霧し当該フッ素化合物を捕集・除去するスクラビング処理して得られた処理排水である請求項1〜9のいずれかに記載のユニット型処理装置。
- フッ素化合物含有排水原液Fiが、フッ素化合物分解除害設備より排出されるフッ素化合物燃焼排ガスを湿式除害設備に導入して洗浄水を噴霧し、当該フッ素化合物を捕集・除去するスクラビング処理して得られた処理排水であり、かつ、請求項1〜9のいずれかに記載の処理装置により処理された処理排水Foの一部を、当該湿式除害設備に循環し、当該洗浄水の少なくとも一部として利用するフッ素化合物含有排水装置からの排水量の削減方法。
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