JP2009119382A - 晶析反応装置及び晶析反応方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】回収した難溶性塩の結晶に含まれるイオン類の量を低減することができる晶析反応装置を提供する。
【解決手段】晶析対象物質を含む原水に晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応装置であって、原水に前記晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させるための晶析反応槽と、晶析反応槽において生成した結晶を含むスラリの少なくとも一部を引抜く引抜手段と、引抜いた引抜スラリを脱水する脱水手段と、脱水した結晶を洗浄する洗浄手段と、を有する晶析反応装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、液中の晶析対象物質に晶析剤を添加して難溶性塩を晶析させ、結晶として処理、回収する晶析反応装置及び晶析反応方法に関する。例えば、フッ酸含有原水中のフッ素をカルシウム剤と反応させてフッ化カルシウムを回収したり、リン酸含有原水中のリン酸とカルシウム剤とを反応させてリン酸カルシウムを回収する等の晶析対象物質と昌析剤とを反応させる晶析法を用いて難溶性塩を回収する回収技術に関する。
従来、液中のフッ素、リン等の晶析対象物質にカルシウム剤等の晶析剤を添加してフッ化カルシウム、リン酸カルシウム等の難溶性塩を晶析させ、結晶として処理、回収する技術が提案されている。例えば、晶析対象物質としてフッ素を含有する原水にカルシウム剤を添加してフッ化カルシウムを回収し再利用するには、種晶が充填された晶析反応槽内にフッ素含有原水と晶析剤であるカルシウム剤とを注入し、種晶表面にフッ化カルシウムを析出させて、フッ化カルシウム結晶を得る方法等が提案されている。
2HF + CaCl2 → CaF2↓ + 2HCl
例えば、液を晶析反応槽に上向流で供給して、晶析反応槽内の難溶性塩の結晶を流動させながら処理する流動床式晶析装置(特許文献1)等が提案されている。
このような装置では、晶析反応槽内の結晶がある程度大きく成長すると、晶析反応槽内から一部の結晶を引抜く。引抜いた結晶はスラリ状であり、貯留槽などに貯留される。その後、回収して再利用したり運搬する都合上、水分を出来るだけ減少させるために脱水装置等により脱水される。
図4に従来の晶析反応装置の一例の概略構成図を示す。晶析反応装置50は、晶析反応槽52と、結晶スラリ槽54と、脱水装置56とを備える。晶析反応装置50において、フッ素含有原水等の晶析対象物質を含有する原水、カルシウム剤等の晶析剤、pH調整剤が晶析反応槽52に添加され、難溶性塩の結晶が生成される。晶析反応槽52内の結晶がある程度大きく成長すると、晶析反応槽52内から一部の結晶が引抜かれる。引抜かれた結晶はスラリ状であり、結晶スラリ槽54に貯留され、その後、結晶を含むスラリはフィルタプレス型、遠心脱水型等の脱水装置56により脱水され、回収結晶が得られる。
特開2003−225680号公報
上記晶析反応装置において、晶析反応槽から引抜かれる結晶はスラリ状であり、スラリの液中には多くのイオン類が含まれる。例えば、フッ化カルシウムの結晶をフッ酸製造の原料として回収する場合、原水のフッ酸に対して、塩化カルシウムを晶析剤として添加し、水酸化ナトリウムをpH調整剤として添加する。晶析反応槽の反応液のpHは通常2〜3に調整されるので、液は酸性であり、液中にはNaイオン、Clイオン、反応しきれなかったCaイオン、Fイオンなどが高濃度で存在し、脱水しても結晶中に残留することになる。フッ化カルシウムを回収してフッ酸の製造原料として再利用するには、これらをまずキルンなどで乾燥して水分を蒸発させるが、Naイオン、Clイオンなどの塩分含有量が高いとキルンを腐蝕する問題もあるし、製造するフッ酸の純度を悪化させる問題もある。
本発明は、回収した難溶性塩の結晶に含まれるイオン類の量を低減することができる晶析反応装置及び晶析反応方法である。
本発明は、晶析対象物質を含む原水に晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応装置であって、前記原水に前記晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させるための晶析反応槽と、前記晶析反応槽において生成した結晶を含むスラリの少なくとも一部を引抜く引抜手段と、前記引抜いた引抜スラリを脱水する脱水手段と、前記脱水した結晶を洗浄する洗浄手段と、を有する晶析反応装置である。
また、前記晶析反応装置において、前記脱水手段が前記洗浄手段を具備することが好ましい。
また、前記晶析反応装置において、前記引抜スラリを中和する中和手段を有し、前記脱水手段は前記中和した中和スラリを脱水することが好ましい。
また、本発明は、晶析対象物質を含む原水に晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応方法であって、前記原水に前記晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応工程と、前記晶析反応工程において生成した結晶を含むスラリの少なくとも一部を引抜く引抜工程と、前記引抜いた引抜スラリを脱水する脱水工程と、前記脱水した結晶を洗浄する洗浄工程と、を含む晶析反応方法である。
また、前記晶析反応方法において、前記引抜スラリを中和する中和工程を含み、前記脱水工程において前記中和した中和スラリを脱水することが好ましい。
本発明では、晶析対象物質を含む原水に晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応装置及び晶析反応方法において、晶析反応工程において生成した結晶を含むスラリの少なくとも一部を引抜き、その引抜いたスラリを脱水、洗浄することにより、回収した難溶性塩の結晶に含まれるイオン類の量を低減することができる。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る晶析反応装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。図1の晶析反応装置1は、晶析反応槽10と、結晶スラリ槽12と、脱水手段としての脱水装置14とを備える。
図1の晶析反応装置1において、晶析反応槽10には、原水添加配管24、晶析剤添加配管26、pH調整剤添加配管28、処理水排出配管30が接続されており、モータを備える撹拌手段である撹拌羽根等の撹拌装置16が設置されている。結晶スラリ槽12には、晶析反応槽10からのスラリ排出配管32が引抜手段としてのバルブ18を介して接続されており、撹拌装置20が設置されている。脱水装置14には、結晶スラリ槽12からのスラリ排出配管34がポンプ22を介して接続されている。
本実施形態に係る晶析反応方法及び晶析反応装置1の動作について説明する。
フッ素、リン等の晶析対象物質を含有する晶析対象物質含有原水(以下、単に「原水」と呼ぶ場合がある。)が原水貯槽等から原水添加配管24を通して晶析反応槽10に添加される。また、カルシウム剤等の晶析剤が晶析剤貯槽等から晶析剤添加配管26を通して晶析反応槽10に添加される。晶析反応槽10において、原水に含まれる晶析対象物質と、晶析剤とが反応して難溶性塩の結晶が生成される(晶析反応工程)。晶析反応槽10において、必要に応じてpH調整剤添加配管28からpH調整剤が添加されて晶析反応液のpH調整が行われてもよいし、晶析反応液は撹拌装置16によって撹拌されてもよい。
晶析反応槽10内の難溶性塩の結晶がある程度大きく成長すると、バルブ18が開状態とされ、晶析反応槽10内からスラリ排出配管32を通して難溶性塩の結晶を含むスラリの少なくとも一部が引抜かれる(引抜工程)。引抜かれた結晶はスラリ状であり、結晶スラリ槽12に貯留される。結晶スラリ槽12において、引抜スラリは撹拌装置20によって撹拌されてもよい。その後、結晶を含む引抜スラリはポンプ22によってスラリ排出配管34を通して脱水装置14に送液され、脱水装置14において脱水される(脱水工程)。脱水された結晶は水等の溶媒等により洗浄され(洗浄工程)、必要に応じて再び脱水されて回収結晶が得られる。洗浄工程及び脱水工程は必要に応じて繰り返してもよい。
原水、晶析剤、pH調整剤の晶析反応槽10への添加、引抜スラリの結晶スラリ槽12、脱水装置14への添加は、原水、晶析剤、pH調整剤、引抜スラリを晶析反応槽10、結晶スラリ槽12、脱水装置14に添加できるものであれば任意の態様が可能である。
本実施形態において、晶析反応工程において生成した結晶を含むスラリの少なくとも一部を引抜き、その引抜いたスラリを脱水、洗浄することにより、回収した難溶性塩の結晶に含まれるイオン類の量を低減することができる。
結晶の引抜きは通常、晶析反応槽10内の結晶が大きくなってくると晶析反応槽10の反応域44と連通した沈殿域46の結晶の界面48が上昇してくるので、沈殿部46に設置した界面計等によりその界面48を検知し、晶析反応槽10の下部のバルブ18から引抜く操作を行う方法が用いられる。
脱水装置14としては、フィルタプレス型、遠心脱水型などが採用されるが、生成する結晶粒子の粒径は数十μmと大きく脱水性が良いので、遠心力、圧力などのほか重力を利用したろ過式脱水装置(不織布など)なども採用される。
脱水した結晶を洗浄するための洗浄手段としては、結晶を脱水装置14から洗浄槽に移送して洗浄槽において洗浄水で洗浄しても良いが、脱水装置14において洗浄水で洗浄するように洗浄手段を設けるのが好ましい。
洗浄溶媒としては水、エタノール等の有機溶媒が挙げられるが、通常は水である。洗浄水としては、導電率が500μS/cm以下の低塩濃度の水で洗浄するのが好ましい。洗浄水の導電率が500μS/cmを超えると、回収結晶に含まれるイオン類の量を十分に低減できない場合がある。また、10mg/L以下の塩素(Cl)濃度が低い水で洗浄することが好ましい。洗浄水の塩素濃度が10mg/Lを超えると、回収結晶に含まれる塩素濃度を十分に低減できない場合がある。
また、脱水工程の前段において、引抜スラリを中和する(中和工程)ことが好ましい。図2に本発明の実施形態に係る晶析反応装置の他の例の概略を示す。図2の晶析反応装置3は、図1の構成に加えて、中和槽36を備える。
図2の晶析反応装置3において、中和槽36には結晶スラリ槽12からのスラリ排出配管34がポンプ22を介して接続されており、撹拌装置38が設置されている。脱水装置14には、中和槽36からのスラリ排出配管42がポンプ40を介して接続されている。
晶析反応槽10内の難溶性塩の結晶がある程度大きく成長すると、バルブ18が開状態とされ、晶析反応槽10内からスラリ排出配管32を通して難溶性塩の結晶を含むスラリの少なくとも一部が引抜かれる(引抜工程)。引抜かれた引抜スラリは、結晶スラリ槽12に貯留される。結晶を含む引抜スラリはポンプ22によってスラリ排出配管34を通して中和槽36に送液され、中和槽36において中和される(中和工程)。中和された中和スラリはポンプ40によってスラリ排出配管42を通して脱水装置14に送液され、脱水装置14において脱水される(脱水工程)。脱水された結晶は水等の溶媒等により洗浄され(洗浄工程)、必要に応じて再び脱水されて回収結晶が得られる。
中和処理を行うことにより、回収した難溶性塩の結晶に含まれる塩素イオン等のイオン類の量をさらに低減することができる。また、後段の洗浄工程において用いられる洗浄水の量を低減することができる。さらに、例えば引抜スラリが酸性のまま脱水処理を行うと、脱水装置14の腐蝕や脱水後の結晶の取り扱いが困難となる場合があるが、中和処理を行うことにより、脱水装置14の腐蝕を防止することができ、結晶の取り扱いが容易となりやすい。
中和は、酸またはアルカリを添加することにより中性、例えばpH6〜8の範囲になるように行われる。
添加する酸は特に限定されるものではないが、難溶性塩が生成せず、十分洗浄することで得られる回収結晶の純度への影響を低減できる等の点から塩酸が好ましい。
添加するアルカリは特に限定されるものではないが、難溶性塩が生成せず、十分洗浄することで得られる回収結晶の純度への影響を低減できる等の点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましい。
本実施形態に係る晶析反応方法により、回収結晶の純度を例えば95%以上、塩素等のイオン類の含有量を例えば200ppm以下、好ましくは100ppm以下に低減することができる。
本実施形態における晶析対象物質含有原水は、晶析処理により除去される晶析対象物質を含むものであれば、如何なる由来の原水であっても良く、例えば、半導体関連産業をはじめとする電子産業、発電所、アルミニウム工業等から排出される原水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
原水中の晶析対象物質としては、晶析反応により晶析し、原水中から除去可能である任意の元素が挙げられ、特に限定されるものではない。また、晶析対象物質となる元素の種類は1種類であっても良いし、2種類以上であっても良い。特に、原水中における存在が問題となるという観点から、本実施形態における晶析対象物質としては、フッ素、リンおよび重金属元素、カルシウム並びにこれらの混合物が挙げられる。また、重金属元素としては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、Cd、Hg、Sn、Pb、Te等が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましくは、晶析対象物質はフッ素である。
晶析対象物質となる元素は、晶析反応により晶析するのであれば、任意の状態で原水中に存在することが可能である。原水中に溶解しているという観点から、晶析対象物質はイオン化した状態であるのが好ましい。晶析対象物質がイオン化した状態としては、例えば、F-、Cu2+等をはじめとする原子がイオン化したもの、メタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸、亜リン酸等をはじめとする晶析対象物質を含む化合物がイオン化したもの、また、重金属等の錯イオン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
フッ素を含む原水は、アルミの電解精錬工程、製綱工程等からも排出されるが、特に半導体工場において大量に排出される。半導体シリコンウェーハの洗浄等に濃厚フッ酸が用いられ、フッ素含有量が%オーダーの濃厚フッ酸廃液として排出される。このとき、アンモニアや過酸化水素、リン酸等も洗浄剤として用いられるため、それらを含む排水となることがある。また、半導体シリコンウェーハ上に残存するフッ酸の洗浄、パーフルオロ化合物(PFCs)分解後のガスに含まれるHFの洗浄等に大量の水が使用され、希薄系のフッ素含有原水としても排出される。本方法は、フッ酸(フッ化水素)を含む原水中からフッ素を除去するために特に好適に適用しうる。
原水に含まれる晶析対象物質の量は、特に限定されるものではないが、例えば、晶析対象物質がフッ素の場合、5000mg/L〜100000mg/Lの範囲、リンの場合、500mg/L〜5000mg/Lの範囲である。
晶析対象物質がフッ酸含有原水中のフッ素であり、晶析剤であるカルシウム剤と反応させてフッ化カルシウムを回収する場合や、晶析対象物質がリン酸含有原水中のリンであり、晶析剤であるカルシウム剤と反応させてリン酸カルシウムを回収する場合、晶析剤としては塩化カルシウム、消石灰等が用いられる。
晶析対象物質が水中の重金属であり、晶析剤と反応させて難溶性塩を回収する場合、晶析剤としては硫化ソーダ、炭酸ソーダ等が用いられる。晶析対象物質が水中のカルシウムであり、晶析剤と反応させて炭酸カルシウムを回収する場合、晶析剤としては炭酸ソーダ等が用いられる。
本実施形態においては、晶析用薬液として消石灰と酸とを混合したカルシウム溶液等が使用されてもよい。本明細書における「カルシウム溶液」とは、消石灰(水酸化カルシウム)に酸を添加して得られた液体であって、一定範囲のpHを有する液体である。「カルシウム溶液」は、消石灰が完全に溶解された溶液状態であっても良く、消石灰の固体粒子が含有されていても良い。消石灰への酸の添加は、消石灰に酸が添加されるのであれば任意の、公知の方法による添加が可能であり、例えば、消石灰スラリに酸を添加する態様、消石灰の乾燥固体に酸を添加する態様またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。消石灰への酸の添加の好ましい態様は、消石灰スラリに酸を添加する態様である。
本明細書において、「消石灰スラリ」とは、消石灰の乾燥固体に水または水溶液を添加して形成されるスラリをいい、使用される水としては、蒸留水、精製水、水道水等任意のソースの水が可能であり、また、水溶液としては、前記水に、酸、アルカリ、これらの塩等任意の化合物が添加された水溶液が可能である。また、本明細書における「消石灰の乾燥固体」とは、前記消石灰スラリに対する概念を示すものであり、スラリを形成していない、粉体、顆粒、塊状物等の固体であれば良く、化合物としての無水物を意味するものではない。
カルシウム溶液の調製に使用される消石灰としては、任意のグレードの消石灰を使用することができ、特に限定されるものではない。カルシウム溶液の調製に使用される酸としては、特に限定されるものではなく、任意の酸を使用可能である。好ましくは、カルシウムと難溶性の塩を形成させる成分を含まない任意の酸であり、例えば、塩酸等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。より好ましくは、酸は塩酸である。使用される酸は1種類であっても良いし、複数種類の酸が使用されても良い。使用される酸の濃度、添加量等は、カルシウム溶液が所望のpHとなるように適宜設定される。例えば、工場内の処々の設備で中和用等に使用される目的で、水と混合して工場内を循環している消石灰スラリを用いると利便性が良い。
本実施形態における、カルシウム溶液のpH範囲は好ましくはpH9以下であり、より好ましくは、pH8以下であり、さらに好ましくは、pH8〜4の範囲であり、特に好ましくは、pH7〜5の範囲である。カルシウム溶液のpHを、上記範囲に調節することにより、消石灰をある程度溶解させることが可能となる。ここで、消石灰スラリが完全な溶解が達成されるような条件、すなわちpHが低い方が晶析処理において良好であると考えられる。しかし、本発明者らは、晶析処理によって得られる処理水中の晶析対象成分の濃度をより低減させるためには、カルシウム溶液のpHを所定の範囲に設定するのが有効であることを見出した。すなわち、カルシウム溶液のpHをpH4未満に低下させるよりも、上述のようにpH8〜4の範囲、さらには、pH7〜5の範囲にすることにより、処理水中の晶析対象成分の濃度を顕著に低減できる。上記至適pHの存在は、pHを一定範囲にすることにより消石灰の微粒子を完全に溶解させるのではなく、一定量の消石灰微粒子をカルシウム溶液中に残存させることにより、晶析反応槽内において、該微粒子によって晶析反応の反応面積を増大させて晶析反応効率を向上させ、処理水中の晶析対象成分の濃度を低減させるためであると考えられる。
生成する難溶性塩としては、フッ素含有原水とカルシウム剤とを反応させて生成するフッ化カルシウムの他、例えば、リン含有原水とカルシウム剤とを反応させて生成するリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト等や、フッ素及びリン含有原水とカルシウム剤とを反応させて生成するフルオロアパタイト等もこれに含まれる。
晶析反応槽10は、原水中の晶析対象物質と晶析剤とが反応して難溶性塩の結晶を析出させて、晶析対象物質が低減された処理水を生じさせうる反応槽であればよく、長さ、内径、形状等については任意の態様が可能であり、特に限定されるものではない。
本実施形態においては、原水と晶析剤とを晶析反応槽10に添加する前に、あらかじめ、晶析反応槽10に種晶が存在していてもよいし、あらかじめ晶析反応槽10内に種晶が存在していなくても良い。安定した処理を行うためには、晶析反応槽10にあらかじめ種晶が存在していることが好ましい。晶析反応槽10に充填される種晶の充填量は、晶析対象物質を晶析反応により除去できるのであれば特に限定されるものではなく、原水中の晶析対象物質濃度、晶析剤の濃度、また、晶析反応装置1の運転条件等に応じて適宜設定される。
種晶は、その表面に生成した難溶塩の結晶を析出させることができるものであれば良く、任意の材質が選択可能であり、例えば、ろ過砂、活性炭、およびジルコンサンド、ガーネットサンド、サクランダム(商品名、日本カートリット株式会社製)などをはじめとする金属元素の酸化物を含んで構成される粒子、並びに、晶析反応による析出物である難溶塩を含んで構成される粒子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。より純粋な難溶塩をペレット等として入手できるという観点から、晶析反応による析出物である難溶塩を含んで構成される粒子(例えばフッ化カルシウムの場合は蛍石)が好ましい。種晶の形状、粒径は、晶析反応槽10内の流速、晶析対象物質および晶析剤の濃度等に応じて適宜設定され、特に限定されるものではない。
晶析反応槽10にあらかじめ種晶が充填されている場合は、例えば、原水へ晶析剤を晶析反応槽10において添加し、晶析反応槽10内で、種晶上に難溶性塩を析出させてペレットを形成させ、晶析対象物質が低減された処理水を生じさせる。これに対して、晶析反応槽10にあらかじめ種晶が存在していない場合には、原水へ晶析剤を添加することにより晶析反応槽10内で析出する難溶性塩がペレットを形成し、成長することとなる。いずれの場合も、晶析反応槽10内の結晶がある程度大きく成長すると、晶析反応槽10内から一部の結晶を引抜く引抜操作と、引抜いた結晶よりも小粒径の種晶を新たに補充する補充操作を繰り返し行うことで、連続的に結晶を得るような方法が採用される。
晶析反応槽としては、図1のように晶析反応槽10内に、撹拌羽根等の撹拌装置16を設置し、該撹拌装置16により晶析反応槽10内を撹拌してペレットを流動させる撹拌式の晶析反応槽が挙げられる。撹拌羽根は晶析反応槽10内で内容物を撹拌できるものであればよく、撹拌羽根の設置態様、撹拌羽根の大きさ等は特に限定されるものではない。
また、撹拌式の晶析反応槽10としては、晶析反応槽10の周壁に対向させて内周壁を配置して、この内外周壁間を処理水排出路とし、難溶性塩粒子と処理水との分離能を向上させ、処理水中に難溶性塩粒子が流出するのを防止する分離ゾーンを有するものであってもよい。この態様においては、処理水排出路の上部に処理水排出配管30が接続されるような態様が好ましい。また、この処理水排出路には、ペレットの分離能を向上させるために、処理水排出路の入口部分に複数枚のじゃま板で構成したバッファ板や、複数枚の整流板で構成したバッファ板を位置させていてもよい。この態様の詳細は特開2005−230735号および特開2005−296888号に記載されており、これらの特許文献に記載される晶析反応槽も本実施形態において使用可能である。
また、晶析反応槽としては、晶析反応槽内で上向流を形成し、該上向流によってペレットが流動する流動床式の晶析反応槽も挙げられる。
カルシウム溶液等の晶析剤溶液中のカルシウム剤等の晶析剤の濃度は、原水の晶析対象物質濃度、晶析反応槽10の処理能力等に応じて適宜設定され、特に限定されるものではない。晶析対象物質がフッ素でフッ化カルシウムを生成させる場合、カルシウム注入量としては、化学当量としてフッ素の1倍〜2倍までが良いが、1倍〜1.2倍がより良い。カルシウムの化学当量が原水のフッ素の化学当量の2倍より多いとフッ化カルシウムが種晶上に析出せずに微粒子として生成しやすく、処理水にフッ化カルシウムが混入する場合があり、1倍より少ないと原水中のフッ素の全量がフッ化カルシウムとならず、処理水にフッ素が混入する場合がある。同様に晶析対象物質がリンでリン酸カルシウムを生成させる場合、カルシウム注入量としては、化学当量としてリンの1倍〜2倍までが良いが、1倍〜1.2倍がより良い。
本実施形態においては、カルシウム剤を用いて晶析反応槽10内でpH2〜11の条件下で難溶性塩を析出させることが好ましい。フッ化カルシウムを析出させる場合には、pH2〜11、微粒子生成抑制等の点から好ましくはpH2〜3の条件下でフッ化カルシウムを析出させることが好ましい。フッ化カルシウムの生成反応に伴ってpHが変化する場合は、晶析反応槽10にpH調整剤を適宜添加しうるように構成することが望ましい。フッ化カルシウム析出の際のpHは、pHメータ等のpH測定手段を用いて、晶析反応槽10内の反応場のpHを測定し、測定されたpHに応じて、酸またはアルカリ等のpH調整剤を槽内に添加することにより、pHを制御することができる。pHメータは、フッ化カルシウム析出反応の反応場のpHをモニタできるのであれば、晶析反応槽10のいずれの部分に設置されても良く、原水の導入部付近、晶析反応槽10からの処理水の出口付近等特に限定されるものではない。同様にリン酸カルシウムを析出させる場合には、pH6〜13、微粒子生成抑制等の点から好ましくはpH6〜8の条件下でリン酸カルシウムを析出させることが好ましい。
pH調整剤を晶析反応槽10へ添加するpH調整剤添加手段は、pH調整剤を晶析反応槽10に添加できるものであれば任意の態様が可能である。pH調整剤貯留槽からpH調整剤添加配管を介して、pH調整剤が晶析反応槽10に添加されてもよい。pH調整剤添加手段としては、pH調整剤添加配管を晶析反応槽10の任意の部位に接続し、当該配管を介してpH調整剤を晶析反応槽10の任意の部位に直接添加する態様であっても良いし、原水添加配管または晶析剤添加配管の少なくとも1つにpH調整剤を添加する態様であっても良い。
pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の酸または水酸化ナトリウム等のアルカリ等を用いることができる。
原水添加配管24、晶析剤添加配管26及びpH調整剤添加配管28は晶析反応槽10の任意の部分に接続することができる。図1のような撹拌式の晶析反応槽の場合は、原水添加配管24、晶析剤添加配管26及びpH調整剤添加配管28は、析出物およびペレットと処理水の分離という観点から、晶析反応槽10の上部に接続されるのが好ましい。また、図1においては、原水添加配管24、晶析剤添加配管26及びpH調整剤添加配管28はそれぞれ1つであるが、これに限定されるものではなく、これらが複数設けられていても良い。流動床式の晶析反応槽の場合は、晶析反応槽内に上向流を形成すると効率的に晶析反応を行うことができるという観点から、原水添加配管、晶析剤加配管及びpH調整剤添加配管は晶析反応槽の下部、特に底部に接続されるのが好ましい。
晶析反応槽10内または処理水中の溶解性のフッ素濃度等の晶析対象物質濃度を測定するために、フッ素濃度計等の晶析対象物質濃度測定手段を晶析反応槽10または処理水排出配管30に設置してもよい。また、晶析反応槽10内または処理水中の溶解性カルシウム等の晶析剤濃度を測定するために、カルシウム濃度計等の晶析剤濃度測定手段を晶析反応槽10または処理水排出配管30に設置してもよい。晶析反応槽10内でのフッ素濃度計、カルシウム濃度計等の設置位置は特に限定されるものではないが、例えば、処理水中の濃度を測定する場合には、晶析反応槽10の出口付近に設置することができる。
晶析反応槽10において晶析反応により生じる晶析対象物質が低減された処理水は晶析反応槽10の外部に排出される。処理水は、晶析反応槽10における液体の流れに従って任意の部分から排出されうる。図1では、晶析反応槽10の上部から排出される処理水は、処理水排出配管30を通って最終的に系外に排出される。また、流動床式の晶析反応槽内で上向流が形成される場合には、晶析反応槽の上部から処理水が排出される。晶析反応槽10の後段に処理水貯留槽を設置しても良い。
得られる処理水において、例えばフッ素濃度はフッ化カルシウム等の非溶解性フッ素を含む全フッ素として通常500mg−F/L以下、溶解性のフッ素イオンとして通常50mg−F/L以下程度であり、リン濃度はリン酸カルシウム等の非溶解性リンを含む全リンとして通常50mg−P/L以下、溶解性のリン酸イオンとして通常5mg−P/L以下程度である。カルシウム濃度は、晶析対象物質がフッ素の場合はpH2〜3で、溶解性のカルシウムイオンとして通常50mg−Ca/L程度であり、晶析対象物質がリンの場合はpH6〜8で、溶解性のカルシウムイオンとして通常10mg−Ca/L程度であるが、これらに限定されるものではない。
原水を処理して得られた処理水をさらに沈殿槽において処理してもよい。沈殿槽においては、例えば晶析対象物質がフッ素の場合、pHを3〜12、好ましくは4〜11とすることでフッ化カルシウムを生成させて、フッ素を沈殿除去することにより、さらにフッ素濃度が低減された上澄水を得ることができる。例えば晶析対象物質がリンの場合、pHを8〜13、好ましくは9〜12とすることでリン酸カルシウムを生成させて、リンを沈殿除去することにより、さらにリン濃度が低減された上澄水を得ることができる。
本実施形態に係る晶析反応装置及び晶析反応方法により、晶析反応槽10内で難溶性塩の結晶を析出させることにより、原水中の晶析対象物質が難溶性塩の結晶として回収され、晶析対象物質が低減された処理水が生じる。本実施形態においては、晶析対象物質素の回収率(1−(処理水中の晶析対象物質量/原水中の晶析対象物質量))として、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上を達成できる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
原水:フッ酸含有排水
晶析剤:塩化カルシウム
晶析反応槽直径:440mmφ
晶析反応槽高さ:620mmH
晶析反応槽pH:2.5±0.5
pH調整剤:水酸化ナトリウム
フッ酸含有原水のフッ素濃度:10000mg/L
フッ酸含有原水流量:25L/H
<脱水装置>
310mm×1室 単式フィルタプレス
ろ過面積:0.087m2
ろ過容積:1.2L
ろ室厚み:30mm
洗浄水:純水(導電率1.4μS/cm、塩素濃度0.1mg/L)
以上の条件で、およそ300時間通水後の、引抜ペレット1L(約2kg)をサンプルとして脱水洗浄を行った。引抜ペレットを脱水処理後、脱水装置において洗浄水量を1,2,5,10,15,20,30,40Lと変化させて洗浄を行った。洗浄後、再び脱水処理を行った。回収して得られたCaF2の純度及び含有塩素濃度を表1に、洗浄水量と洗浄水中の塩素濃度の関係を図3に示す。なお、回収して得られたCaF2の純度は、JIS K 1468−2に従って測定した。また、CaF2の含有塩素濃度は、硝酸銀を添加して塩化銀を生成させ、532nm吸光度を測定することによって求めた。洗浄水中の塩素濃度はイオンクロマト装置(DIONEX社製、DX−120型)を用いて測定した。
(実施例2)
引抜ペレットの脱水処理前に中和処理を行った以外は実施例1と同様にして脱水洗浄を行った。中和処理は水酸化ナトリウム水溶液によりpHを7±0.3に調整することによって行った。中和ペレットを脱水処理後、脱水装置において洗浄水量を1,2,5,10,15,20,30,40Lと変化させて洗浄を行った。洗浄後、再び脱水処理を行った。結果を表1及び図3に示す。
(比較例1)
引抜ペレットの洗浄処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして脱水洗浄を行った。結果を表1に示す。
Figure 2009119382
表1から分かるように、実施例1,2のように、晶析反応工程において生成した結晶を含むスラリの少なくとも一部を引抜き、その引抜いたスラリを脱水、洗浄することにより、回収した難溶性塩の結晶に含まれるイオン類の量を低減することができ、純度を向上させることができた。また、図3から分かるように、中和処理後に洗浄を行うことによって、回収した難溶性塩の結晶に含まれるイオン類の量をさらに低減することができ、純度をさらに向上させることができた。
本発明の実施形態に係る晶析反応装置の一例を示す概略構成図である。 本発明の実施形態に係る晶析反応装置の他の例を示す概略構成図である。 本発明の実施例1,2における洗浄水量と洗浄水中の塩素濃度の関係を示す図である。 従来の晶析反応装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1 晶析反応装置、10 晶析反応槽、12 結晶スラリ槽、14 脱水装置、16 撹拌装置、18 バルブ、20,38 撹拌装置、22 ポンプ、24 原水添加配管、26 晶析剤添加配管、28 pH調整剤添加配管、30 処理水排出配管、32,34 スラリ排出配管、36 中和槽、40 ポンプ、42 スラリ排出配管、44 反応域、46 沈殿域、48 界面、50 晶析反応装置、52 晶析反応槽、54 結晶スラリ槽、56 脱水装置。

Claims (5)

  1. 晶析対象物質を含む原水に晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応装置であって、
    前記原水に前記晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させるための晶析反応槽と、
    前記晶析反応槽において生成した結晶を含むスラリの少なくとも一部を引抜く引抜手段と、
    前記引抜いた引抜スラリを脱水する脱水手段と、
    前記脱水した結晶を洗浄する洗浄手段と、
    を有することを特徴とする晶析反応装置。
  2. 請求項1に記載の晶析反応装置であって、
    前記脱水手段が前記洗浄手段を具備することを特徴とする晶析反応装置。
  3. 請求項1または2に記載の晶析反応装置であって、
    前記引抜スラリを中和する中和手段を有し、前記脱水手段は前記中和した中和スラリを脱水することを特徴とする晶析反応装置。
  4. 晶析対象物質を含む原水に晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応方法であって、
    前記原水に前記晶析剤を添加して難溶性塩の結晶を生成させる晶析反応工程と、
    前記晶析反応工程において生成した結晶を含むスラリの少なくとも一部を引抜く引抜工程と、
    前記引抜いた引抜スラリを脱水する脱水工程と、
    前記脱水した結晶を洗浄する洗浄工程と、
    を含むことを特徴とする晶析反応方法。
  5. 請求項4に記載の晶析反応方法であって、
    前記引抜スラリを中和する中和工程を含み、前記脱水工程において前記中和した中和スラリを脱水することを特徴とする晶析反応方法。
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