JP2004115982A - コーティング布帛の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】防水性、透湿性に優れ、かつ結露抑制効果が大きくて、快適な着用感を与えるスポーツ衣料用に適したコーティング布帛を得ることを目的とする。
【解決手段】凝固価が9.0〜11.0(%水)であるポリウレタン樹脂(A)の水混和性有機溶剤溶液と、凝固価が2.0〜8.5(%水)である疎水性ポリウレタン樹脂(B)の水混和性有機溶剤溶液に、凝固価が5.5〜10.0(%水)のポリウレタン樹脂(C)の水混和性有機溶剤溶液を相溶化剤として混合した混合溶液を、予め撥水加工を施した繊維基材の片面にコーティングしたのち、水中に浸漬して水混和性有機溶剤を抽出し、乾燥することによって防水性、透湿性に優れ、結露抑制効果の大きいコーティング布帛を得る。
【選択図】 なし
【解決手段】凝固価が9.0〜11.0(%水)であるポリウレタン樹脂(A)の水混和性有機溶剤溶液と、凝固価が2.0〜8.5(%水)である疎水性ポリウレタン樹脂(B)の水混和性有機溶剤溶液に、凝固価が5.5〜10.0(%水)のポリウレタン樹脂(C)の水混和性有機溶剤溶液を相溶化剤として混合した混合溶液を、予め撥水加工を施した繊維基材の片面にコーティングしたのち、水中に浸漬して水混和性有機溶剤を抽出し、乾燥することによって防水性、透湿性に優れ、結露抑制効果の大きいコーティング布帛を得る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はコーティング布帛の製造方法に係り、詳しくは防水性、透湿性、結露抑制性を有し、スポーツウエア等の衣料用素材として快適な着用感を与えることのできるコーティング布帛の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、衣服を着用した時の快適性に関しては、水分移動特性を中心として数多くの研究がなされている。直接皮膚に接する肌着材料について、その着用快適性を皮膚側と外側の繊維組成から見ると、その衣服の繊維組成が親水性、疎水性のどちらがより快適性を有するかは、着用する季節から来る外的要因と運動等から来る衣服内気候の変化により一定でないことが論じられている(非特許文献1)。また、機能性繊維材料としては、吸湿吸水性の視点から、親水性繊維と疎水性繊維からなる多層構造ニットの快適性に関する評価が繊維メーカー各社から報告されている(非特許文献2)。
【0003】
一方、ポリウレタン樹脂を主体とした皮膜を湿式凝固法にて形成した透湿性防水布帛に関しては、その製造方法を中心として透湿性能および耐水圧性能等の機能向上を主目的とした検討が数多くなされている。
【0004】
その代表的なものとしては、ポリウレタン樹脂よりなる微多孔質皮膜を被覆した布帛がある。その製造方法としては、繊維基材にポリウレタン樹脂の水混和性溶媒溶液を塗布し、次いで水浴中に浸漬することによって微多孔質皮膜を形成する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
さらには、フッ素変性ポリウレタン樹脂あるいはフッ素変性ポリアミノ酸樹脂を用いたコーティング布帛(特許文献2)や、フッ素変性ポリウレタン樹脂とフッ素樹脂溶液を用いたコーティング布帛(特許文献3)も知られているが、これらの布帛は性能面から見たとき、JIS L 1092 B法の静水圧法における耐水圧(以下、単に耐水圧という)30kPa程度で、JIS L 1099塩化カルシウム法(A−1法)における24h換算の透湿度(以下、A−1透湿度という)が9000〜10000g/m2 ・24h程度である。
【0006】
また、ポリアミノ酸樹脂/ウレタン樹脂溶液を用い、湿式凝固によって皮膜を形成したコーティング布帛においては、耐水圧が30kPa程度でA−1透湿度が10000g/m2 ・24h程度の性能を有するものが知られている。
【0007】
また、近年は、結露による不快感を取り除くという観点から、繊維/湿式凝固されたポリマー/繊維の三層構造として快適素材を改良することが、さきに挙げた非特許文献1のp.181に示され、あるいは親水化されたポリマーによる結露性の改良も報告されている(非特許文献3)。
【0008】
さらに、衣類の着用快適性を評価する手段として有効であるISO 11092で得られるRet(透湿抵抗)と、JIS L 1099 酢酸カリウム法(B−1法)における24h換算の透湿度(以下、B−1透湿度という)が、負の相関性を有することから、このB−1透湿度を向上させた湿式凝固法による透湿性防水布帛として、湿式凝固法により得られた微多孔質膜の含水率が170%以上であるとするものも提案されている(特許文献4)。
【0009】
これによると、A−1透湿度とB−1透湿度との間には、相関性が認められないとされ、湿式凝固時に微多孔質膜に含むことができる水の量(含水率)が、湿式凝固後に生成される微多孔質の空孔率に比例するという仮定の上で、微多孔質膜の含水率とB−1透湿度、さらには微多孔質の空孔率とB−1透湿度が比例関係にあると述べている。これら上記の先行技術の知見に対して本発明者らは、長年の研究の結果から、着用快適性を有する透湿性防水布帛のあるべき断面構成として、次のような結論を得た。
【0010】
即ち、スポーツウエア等の衣料素材として用いられる、湿式凝固法によって皮膜形成して得た透湿性防水布帛について、その断面構成を水分移動特性の面からみた場合、皮膚側を疎水性の皮膜状にすると好ましくないのは当然であるが、親水性とした場合であっても、発汗に伴う水分の吸水効果が逆に肌着等へ濡れ感を与えることになり、さらには、運動後の冷えによる不快感をもたらすことを考えねばならない。従って、皮膚側を疎水性ネット状態に、中間を実質的には疎水性であるが、皮膚側および外側との相対比較において親水性に、外側を最も疎水性にすることにより、積極的な水分移動を可能とし、吸汗速乾機能をもった、即ち結露値、吸水値の低い衣料素材とすることが着用快適感を有して望ましいと考えられる。
【0011】
このような考え方に基づいて本発明者らは、ポリウレタン樹脂と、それよりも疎水性のポリウレタン樹脂以外の有機高分子樹脂とからなり、湿式凝固法を用いることによる着用快適性を有する透湿性防水布帛の製法をさきに提案した(特許文献5)。しかしながら、この発明では、ポリウレタン樹脂以外の有機高分子樹脂に起因する種々の問題により、着用快適性を示す代用値としての透湿性能、結露抑制性能、耐水性能等を同時に高水準に保つことが困難であった。
【0012】
さらに本発明者らは、ポリウレタン樹脂と、それよりも疎水性のポリウレタン樹脂とからなる湿式凝固法による透湿性防水布帛について提案した(非特許文献4)が、用いる二種のポリウレタン樹脂の相溶性の点で工業的な量産化には不適当であった。
【0013】
【特許文献1】
特公昭60−47955号公報
【特許文献2】
特開平3−27184号公報
【特許文献3】
特開平3−8874号公報
【特許文献4】
特開平11−61648号公報
【特許文献5】
特開平9−41275号公報
【非特許文献1】
日本繊維製品消費科学会誌、日本繊維製品消費科学会発行、1995
年、第36巻、p.60、181
【非特許文献2】
日本繊維製品消費科学会誌、日本繊維製品消費科学会発行、1989
年、第30巻、p.197
【非特許文献3】
繊維学会誌、繊維学会発行、1992年、第48巻、p.411
【非特許文献4】
日本繊維機械学会誌、日本繊維機械学会発行、1997年、第50巻
、p.T−233
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記した従来のコーティング布帛とは全く異なった素材を用い、且つ異なった手段によって、上述した皮膚側から相対比較において、疎水性−親水性−疎水性の三層構造を有したコーティング布帛を量産可能とし、その結果得られる着用快適性を示す代用値としては、耐水圧100kPa以上で、かつA−1透湿度とB−1透湿度が共に10000g/m2 ・24h以上という、従来にない高耐水圧、高透湿性能を有し、さらに結露抑制性が大きくて、スポーツウェア等の衣料に用いた時に快適な着用感を与えることのできる疎水性から親水性へと断面構造において傾斜構造を有するコーティング布帛を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、凝固価が9.0〜11.0(%水)であるポリウレタン樹脂(A)の水混和性有機溶剤溶液と、凝固価が2.0〜8.5(%水)である疎水性ポリウレタン樹脂(B)の水混和性有機溶剤溶液に、相溶化剤としてポリウレタン樹脂(C)の水混和性有機溶剤溶液を混合し、この混合溶液を、予め撥水加工を施した繊維基材の片面にコーティングした後、水中に浸漬して水混和性有機溶剤を抽出し、乾燥することを特徴とするもので、これによって防水性、透湿性、結露抑制性にすぐれた快適な着用感を与えるコーティング布帛を得ようとするものである。
【0016】
また、請求項2の発明は、請求項1にいて、ポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)溶液の混合比が、樹脂分比でポリウレタン樹脂(A)60〜94重量%、疎水性ポリウレタン樹脂(B)39.5〜1重量%、およびポリウレタン樹脂(C)0.5〜5重量%であることを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2において、相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)のポリオール成分が、分子量400〜4000のポリアルキレンエーテルグリコール30〜70重量%、末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリ−ε−カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール等の単独或いはそれらの混合物70〜30重量%からなり、平均分子量が20000〜120000、凝固価が5.5〜10.0(%水)であることを特徴とするものである。
【0018】
上記した請求項1〜3の発明によれば、ポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)溶液の三者を、特定した混合比で混合した均一混合溶液を用いることによって、防水性、透湿性、結露抑制性にすぐれて快適な着用感を与える、特にスポーツ衣料用として好適なコーティング布帛を提供することができるのである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を詳細に説明する。
まず、この発明で上記のように(A)、(B)および(C)としてそれぞれ使用するポリウレタン樹脂は、凝固価(Coagulation Value)と平均分子量で規定される。この凝固価は、湿式凝固の速度を示す尺度であると同時に、ポリウレタン樹脂の親水性、疎水性の範囲を定めるものでもある。この凝固価については、その定義と測定法が高分子学会発行の高分子論文集、第39巻、535〜542頁、(1982)に述べられているが、この発明で使用するポリウレタン樹脂は、その溶液粘度が非常に高くて上記の測定法によることが困難であるため、次のような方法で測定した。
【0020】
まず、合成したポリウレタン樹脂溶液をDMFで固形分濃度1重量%に希釈し、この希釈溶液約30gを秤取した後、溶液温度を30〜30.5℃に保ち、マグネチックスターラーで撹拌しながら溶液中に非溶剤として水/DMF=40/60の混合液を滴下し、肉眼で判定した白濁開始点と終点の中間点を非溶剤の滴下量とした。そして、この操作を3回繰り返して得た滴下量の平均値を用いて次式によって凝固価を算出した。
凝固価(%水)=|0.4b/(a+b)|×100
(上式において、aはDMF希釈による1重量%濃度の樹脂溶液のg数、bは滴下量(ml)×0.985から算出されるg数である。)
【0021】
上記にて測定の結果、この発明で使用するポリウレタン樹脂(A)の凝固価(C.V.)は9.0〜11.0(%水)、また疎水性ポリウレタン樹脂(B)の凝固価(C.V.)は2.0〜8.5(%水)と、ポリウレタン樹脂(A)のそれと比べて、より疎水性であることが必要である。また、相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)の凝固価は、ポリウレタン樹脂(A)と疎水性ポリウレタン樹脂(B)の凝固価の中間値として、5.5〜10.0(%水)が必要である。
【0022】
この発明において、ポリウレタン樹脂(A)溶液と、ポリウレタン樹脂(A)溶液に比べてより疎水性を呈する疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)溶液とからなる混合溶液を予め撥水加工した疎水性繊維基材の片面にコーティングして水中に浸漬すると、繊維基材の撥水効果により湿式凝固は繊維面とは逆の湿式樹脂加工表面方向へのみ進む、いわゆる片面凝固が進む。これによって、ポリウレタン樹脂の(A)、(B)、(C)溶液が共に凝固沈積するが、その際に、主材成分であるポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液の挙動に着目すると、凝固価の小さい疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液のほうが凝固価の大きいポリウレタン樹脂(A)溶液より早く凝固沈積し、水中に浸漬されてから時間とともに水混和性有機溶剤が凝固表面に抽出される際に、疎水性ポリウレタン樹脂(B)が湿式樹脂加工表面方向に導かれ集中する。
【0023】
即ち、ポリウレタン樹脂(A)/疎水性ポリウレタン樹脂(B)からなる布帛の断面構造を、実質的には疎水性であるが、その相対比較において親水性、疎水性で表現すると、衣料素材となった場合、皮膚側となる湿式樹脂加工表面が疎水性ポリウレタン樹脂(B)の集中により疎水性の微多孔網状構造を形成し、湿式樹脂内部はポリウレタン樹脂(A)の比率が高い多孔体構造を形成し、外側となる繊維は疎水性繊維であるから、布帛の断面はその相対比較において疎水性−親水性−疎水性の三層構造を形成していることになる。
【0024】
上記のように、この発明のコーティング布帛は、これをスポーツウエア等の衣料に加工して着用した時、皮膚側となる湿式樹脂加工表面において、疎水性ポリウレタン樹脂(B)による疎水性微多孔網状構造を形成させることが重要で、この疎水性微多孔網状構造の間隙から体内において発生した発汗等に伴う水蒸気を、疎水性ポリウレタン樹脂(B)に比べて親水性であるポリウレタン樹脂(A)がポンプアップ的に吸湿吸水し、次いで疎水性繊維に移動して拡散し乾燥するという水分の移行が適正に行われる、即ち高耐水圧、高透湿性、結露抑制性を有して、着用時の快適感を向上させる効果を奏するコーティング布帛を得ることができるのである。
【0025】
また、この発明では、コーティング液の主材であるポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液にポリウレタン樹脂(C)溶液を相溶化剤として加えて均一に混和させてコーティング液を得ているので、液の保存安定性が良好となり、このコーティング液を用いて工業的に多量生産する場合でも安定した品質のコーティング布帛を得ることができる。
【0026】
この発明において用いるポリウレタン樹脂の構成成分としては、一般にポリウレタン樹脂、ポリウレタン尿素樹脂といわれるもので、分子量400〜4000のポリアルキレンエーテルグリコールまたは末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリε−カプロラクトンポリオール、またはポリカーボネートジオール等の単独あるいは混合物を有機ジイソシアネートと反応させて得られるもので、必要に応じて2個あるいは3個以上の活性水素を有する化合物で鎖延長させて得られるものが好ましい。
【0027】
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンプロピレンオキシド付加物、末端にエチレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール、ビニルモノマーグラフト化ポリエーテルポリオール等がある。また、ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類とコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、トリメリット酸等のカルボン酸類とを末端がヒドロキシル基となるように反応して与えられるものがよく、さらに必要であれば、アルキレングリコール類としてジメチロールプロピオン酸、アミノエタンスルホン酸へのエチレンオキサイド付加物等の親水性向上を可能とするグリコール類を併用してもよい。
【0028】
次いで、有機イソシアネートとしては、2,4−及び2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5′−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族イソシアネート類があり、これらは単独あるいは混合して使用される。
【0029】
さらに、鎖延長剤としては、ヒドラジン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、水、ピペラジン、イソホロンジアミン、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等、あるいはジメチロールプロピオン酸、アミノエタンスルホン酸へのエチレンオキサイド付加物等の親水性向上を可能とするグリコール類、ジアミン類が単独または混合して使用される。また、用いるポリウレタン樹脂の溶液粘性を非ニュートン粘性とする目的で、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能あるいはそれ以上の活性水素を有する化合物を単独または混合して使用してもよい。
【0030】
また、この発明におけるポリウレタン樹脂(A)、疎水性ポリウレタン樹脂(B)および相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)は、それら樹脂の凝固価によって規定されるが、この凝固価は使用するポリオール成分の親水性あるいは疎水性によって大きく左右される。例えば、親水性のポリエチレンエーテルグリコール、疎水性のポリテトラメチレンエーテルグリコールあるいはそれらの中間の位置にあるポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールなどの使用比率によって凝固価の調整が可能であり、またポリウレタン樹脂中の窒素含有量などの増減によっても調整することができる。
【0031】
ポリウレタン樹脂(A)としては、上記した原料を末端にイソシアネート基が残存せぬよう配合、反応して平均分子量120000〜350000の範囲としたものが望ましく、その凝固価は9.0〜11.0(%水)、好ましくは9.5〜10.5(%水)であり、この範囲外では湿式凝固性が著しく低下する。
【0032】
疎水性ポリウレタン樹脂(B)としては、上記ポリウレタン樹脂(A)と同様に配合、反応して得られるもので、平均分子量が120000〜350000、その凝固価は2.0〜8.5(%水)、好ましくは2.5〜8.0(%水)が適当であり、この範囲外では加工した布帛の断面構造において、微多孔網状構造を形成せず、2.0(%水)より低い場合は、湿式樹脂加工最表面で疎水化フィルム形成の方向に進み、また8.5(%水)より高い場合は、その相対比較において、疎水性微多孔網状構造を有する湿式凝固表面層から親水性ポリウレタン樹脂で構成される多孔質層へ移るという傾斜構造をとらず、寧ろ均一系に近い方向に進み、その結果、ともに透湿性能および結露抑制効果が低下する。
【0033】
また、相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)としては、そのポリオール成分が分子量400〜4000のポリアルキレンエーテルグリコール30〜70重量%(好ましくは40〜60重量%)、末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリε−カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール等の単独あるいは混合物70〜30重量%(好ましくは60〜40重量%)であって、このポリオールとジイソシアネートとの加熱反応物で、その平均分子量が20000〜120000、好ましくは40000〜100000で、凝固価が5.5〜10.0(%水)、好ましくは6.5〜9.0(%水)のものが適当である。
【0034】
上記したポリウレタン樹脂(C)は、ポリウレタン樹脂(A)、疎水性ポリウレタン樹脂(B)に相溶化剤として加えることによって、得られるコーティング液の液保存安定性を良好にする。そして、このコーティング液を塗布した基布を湿式凝固してコーティング布帛を得る際に、その相対比較において、コーティング液の主材であるポリウレタン樹脂(A)、疎水性ポリウレタン樹脂(B)による疎水性微多孔質の網状構造から親水性多孔質層へ移行するという傾斜二層構造の形成をポリウレタン樹脂(C)が阻害しないことが必要である。
【0035】
この観点から、コーティング液を得る際の相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)の使用量は、樹脂分比でポリウレタン樹脂(A)と(B)の合計量95〜99.5重量%に対して5〜0.5重量%が好ましい。
【0036】
さらに、ポリウレタン樹脂(C)を上記した平均分子量或いは凝固価の範囲内に調製しても、使用したポリオール比が上記の範囲外であるならば、これを相溶化剤に用いて調製したコーティング液は、その液保存安定性が好ましくなく、数時間で液分離を起こす。また、逆に使用したポリオール比が上記の範囲内であっても、その平均分子量や凝固価が上記の範囲外であれば、そのようなポリウレタン樹脂(C)を相溶化剤としたコーティング液も数時間で液分離を引き起こす。
【0037】
その他、湿式樹脂加工表面の面滑性を向上させるために、必要に応じてポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂などのポリウレタン樹脂と相溶性のある樹脂を水混和性有機溶剤溶液として併用してもよい。
【0038】
その他、コーティング液と基材との接着性を向上させるために、多官能ポリイソシアネート(例えば、商品名コロネートHX、コロネートHL、日本ポリウレタン工業社製)等を添加剤として用いてもよい。また湿式凝固における脱溶剤の速度調整剤としてノニオン系界面活性剤の添加も有効である。
【0039】
水混和性有機溶剤としては、代表的なものとしてジメチルホルムアミド(DMF)があるが、この他にジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の単独またはそれらの混合物を使用することもでき、ポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液、相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)溶液を、これらの溶剤で混和均一化した混合溶液を水中に浸漬すると、溶剤のみが水に溶解し、樹脂が水中にて凝固してくる。
【0040】
この発明でポリウレタン樹脂(A)溶液、疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)溶液を用いるに当たって、その混合比率としては、樹脂分比でポリウレタン樹脂(A)60〜94%、疎水性ポリウレタン樹脂(B)39.5〜1%、ポリウレタン樹脂(C)0.5〜5%が、得られる布帛の耐水圧、透湿性、結露抑制性において良好で好ましい。最適条件下で得られる布帛は、A−1透湿度11000g/m2 24h、B−1透湿度13000g/m2 24h、耐水圧140kPa、結露値9.2g/m2 ・hを示し、不均一な塗工面も生じず、その結果、上記性能は塗工面全面に亘って均一に得ることができる。また、上記の混合比率によれば、得られるコーティング液の液保存安定性も極めて良好である。
【0041】
上記混合比率のポリウレタン樹脂(A)溶液、疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤のポリウレタン樹脂(C)溶液の混合方法は、常温で均一となるまで撹拌すればよいが、40〜60℃の加熱撹拌下で混合してもよい。混合溶液を繊維基材に塗布するには通常のコーティング法によればよく、その塗布厚は10〜300μmが適当である。
【0042】
上記の厚さの樹脂皮膜を形成した繊維基材を水中に浸漬する時の水温は、0〜30℃が好ましく、30℃以上では樹脂皮膜に生成する多孔質層の孔が大きくなり、耐水圧が低下する。また、浸漬時間は30秒以上が必要である。30秒以下では樹脂の凝固が不十分となって好ましくない。なお、残留している有機溶剤を完全に除去するために、30〜80℃の温水中で3〜10分の湯洗を行ってもよい。また、湯洗後乾燥して得られたコーティング布帛にさらに撥水剤を付与することにより、耐水圧の向上をはかることができる。撥水剤としては、パラフィン系、シリコーン系、フッ素系等の各種があり、用途に応じて適宜選択すればよく、またその付与は通常の方法で行えばよい。
【0043】
かくして得られるこの発明のコーティング布帛は、ゴルフウエア、スキーウエア等のスポーツウエア等の衣料用素材として広く使用することができる。
【0044】
【実施例】
次に、この発明を実施例により詳細に説明する。なお、この発明はこれらの実施例に限定されるものではない。部数は全て重量部である。
【0045】
実施例1
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量4000のエチレンブチレンアジペート996部、エチレングリコール108.5部、DMF2850部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。そして、この混合物に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)500部を加え、加熱反応させた後DMFで希釈して固形分濃度22%のDMF溶液で30℃における粘度が95000mPa・sを有する平均分子量296000のポリウレタン樹脂溶液(A−1)を得た。この溶液(A−1)の凝固価を上述の方法で測定したところ、9.9(%水)の値を得た。
【0046】
次に、両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のエチレンブチレンアジペート91.8部、平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール91.8部、エチレングリコール9.5部、DMF382.5部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。そして、この混合物にMDI61.2部を加え、加熱反応させた後、DMFで希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で30℃における粘度が89000mPa・sを有する平均分子量174000のポリウレタン樹脂溶液(B−1)を得た。この溶液(B−1)の凝固価は7.3(%水)であった。
【0047】
また、上記と同じ配合で加熱反応を行い、DMF希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で3000mPa・s/30℃の粘度になった時点でメタノールを加えて反応を停止し、平均分子量54000のポリウレタン樹脂溶液(C−1)を得た。この溶液の凝固価は7.8(%水)であった。
【0048】
上記で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)409.1部、ポリウレタン樹脂溶液(B−1)31.3部、ポリウレタン樹脂溶液(C−1)2.0部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX、日本ポリウレタン工業社製)4.4部、DMF177部を混和均一化し、コーティング溶液を調製した。
【0049】
一方、疎水性繊維基材として、異形(三角)断面を持つナイロンフィラメントの平織物(縦糸、横糸ともに78dtex/34f、縦糸密度120本/2.54cm、横糸密度95本/2.54cm)を用意し、フッ素系撥水剤で撥水加工を行ってからカレンダー加工を行った。この基材に上記で得たコーティング溶液を調製直後に脱泡し、ベーカー式アプリケータを用いて150g/m2 (wet)塗布した後、20℃の水浴中に2分間浸漬し、樹脂分を凝固させた。その後、50℃の温水中に10分間浸漬し、DMFを十分に抽出した。続いて乾燥を行い、その後、再度繊維基材側のみフッ素系撥水剤で撥水加工を行って、この発明のコーティング布帛を得た。
【0050】
実施例2
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)272.7部とポリウレタン樹脂溶液(B−1)118.3部、ポリウレタン樹脂溶液(C−1)15.0部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF213部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じようにして基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0051】
実施例3
平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール183.6部、エチレングリコール9.5部、DMF382.5部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。その後この混合物にMDI61.2部を加えて加熱反応させた後、DMFで希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で19000mPa・s/30℃の粘度を有する平均分子量129000のポリウレタン樹脂溶液(B−2)を得た。この溶液の凝固価は2.8(%水)であった。
【0052】
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)426.1部、上記で得たポリウレタン樹脂溶液(B−2)4.2部、実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(C−1)16.7部、DMFで固形分濃度5%に調製したアクリロニトリル−スチレン共重合体溶液22部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF173部を混和均一化し、コーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じように処理してコーティング布帛を得た。
【0053】
実施例4
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のエチレンブチレンアジペート93.9部、両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のブチレンアジペート93.9部、ジシクロヘキシルメタン4,4′−ジイソシアネート12.3部を窒素気流下で均一に混合して加熱反応後、エチレングリコール17.5部、グリセリン0.3部、DMF450部、MDI82.2部を加えて加熱反応を行った。その後DMFで希釈して固形分濃度22%のDMF溶液で108000mPa・s/30℃の粘度を有する平均分子量334000のポリウレタン樹脂溶液(A−2)を得た。この溶液の凝固価は9.1(%水)であった。
【0054】
上記で得たポリウレタン樹脂溶液(A−2)363.6部と実施例3で得たポリウレタン樹脂溶液(B−2)50部、実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(C−1)16.7部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF189.7部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じようにして基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0055】
実施例5
平均分子量3000のポリカプロラクトンポリオール139部、エチレングリコール0.7部、ジシクロヘキシルメタン4,4′−ジイソシアネート30.4部を窒素気流下で均一に混合して加熱反応後、DMF300部、イソホロンジアミン9.9部を加えて加熱反応を行った。その後、残存イソシアネート基に当量のモルホリンを加えて消失させ、DMFで希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で80000mPa・s/30℃の粘度を有する平均分子量168000のポリウレタン樹脂溶液(B−3)を得た。この溶液の凝固価は4.5(%水)であった。
【0056】
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)409.1部、上記で得たポリウレタン樹脂溶液(B−3)16.7部、実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(C−1)16.7部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHL、日本ポリウレタン工業社製)5.0部、DMF177部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じように処理してコーティング布帛を得た。
【0057】
実施例6
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のエチレンブチレンアジペート93.9部、平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール93.9部、ジシクロヘキシルメタン4,4′−ジイソシアネート12.3部を窒素気流下で均一に混合して加熱反応後、エチレングリコール17.5部、DMF450部、MDI82.2部を加えて加熱反応を行った。その後DMFで希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で30℃における粘度が5000mPa・sになった時点でメタノールを加えて反応を停止し、平均分子量115000のポリウレタン樹脂溶液(C−2)を得た。この溶液の凝固価は9.3(%水)であった。
【0058】
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)363.6部と実施例3で得たポリウレタン樹脂溶液(B−2)63.3部、上記で得たポリウレタン樹脂溶液(C−2)3.3部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF189部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。この溶液を用いて実施例1と同じようにして基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0059】
比較例1
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)のみを用い、この溶液454.6部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF163部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じように処理してコーティング布帛を得た。
【0060】
比較例2
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)363.6部と実施例3で得たポリウレタン樹脂溶液(B−1)66.7部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF187部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。この溶液を用いて実施例1と同じようにして基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0061】
比較例3
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)227.3部とポリウレタン樹脂溶液(B−1)150部、ポリウレタン樹脂溶液(C−1)16.7部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF225部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じように基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0062】
上記実施例1〜6および比較例1〜3で得たコーティング布帛について、耐水圧、透湿度、結露値等の性能を測定したところ、表1の結果が得られた。なお、透湿度の測定はJIS L 1099に準拠して行い、耐水圧はJIS L 1092 B法の静水圧法に準拠して測定した。また、結露値は次のような容器および算出法にて測定した。
【0063】
即ち、口内径が6cmで容量が500ccの円筒状ガラス瓶の外側に発泡スチロールを厚さ約1cmに巻きつけ、この瓶内にその口上端から2cmまで40℃の水を入れて密封し、これを10℃×60%RHの恒温室に1時間放置した時、瓶内の水温が30±1℃に保温できる物を測定容器とした。
【0064】
上記の容器に40℃の水を口上端から2cmまで入れ、次いで容器の上部に上記実施例1〜6および比較例1〜3で得たコーティング布帛を予め120℃で10分乾燥したのち、それぞれ直径10cmの円形に切り取った布帛試片の湿式樹脂加工表面を水面に向けて載せ、周囲を留め具で固定した後、10℃×60%RHの恒温室に1時間放置した。かくして放置前後の試片の重量変化から次式によって結露値を算出した。
結露値(g/m2 ・h)=(m1 −m2 )/(0.032 π)
〔式中、m1 は測定直後の布帛試片の重量、m2 はm1 測定直後の試片表面の結露水を濾紙で吸い取った後の重量である。〕
【0065】
また、表1には上記実施例1〜6および比較例1〜3で使用したコーティング液の液保存安定性に関する評価も示した。この評価は、コーティング液を25℃で12時間放置した後の状態を、○:液外観に全く変化なし、△:僅かに液分離が認められる、×:液が完全に二層に分離している、の3段階で判定したものである。
【0066】
【表1】
【0067】
上記表1から、この発明の方法により得られたコーティング布帛は、透湿度、耐水圧が良好で、なおかつ、結露値についても低い数値を示し、透湿性能と結露抑制性能、耐水性能を高水準に、かつ同時に満足させていることが認められた。そして、使用したコーティング液も何ら異状のない良好な液保存安定性を示した。これに対して、比較例1はコーティング液としてポリウレタン樹脂溶液のみを用いたものであるので、液の保存安定性はよいが、得られた布帛の結露抑制性が劣った。また比較例2は、実施例とほぼ同等の性能を示しているが、これは調製直後のコーティング溶液を用いた結果であって、相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)を使用していないので、液保存安定性が悪く、その後のコーティングは不可能であった。比較例3は、ポリウレタン樹脂(A)および疎水性ポリウレタン樹脂(B)の混合割合が本発明の範囲外であって、耐水圧に劣り、また液保存安定性にも欠けるものであった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明は、特定した範囲の凝固価を有するポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(A)に比べてより疎水性を呈する疎水性ポリウレタン樹脂(B)と、この両者を混和均一化するための相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)の三者を特定の範囲で混合した均一混合溶液を用いてコーティング布帛を得たことによって、上記した良好な性能を具備していることから、このコーティング布帛をゴルフウエア、スキーウエア等のスポーツウエアの衣料素材として用いたとき、発汗に伴う水分移動特性が良好で、肌着等へ濡れ感を与えることなく、そのために運動後の冷えによる不快感もない快適な着用感、いわゆる吸汗速乾機能を与え、また均一混合溶液が液保存安定性に優れるという効果を奏するのである。
【発明の属する技術分野】
この発明はコーティング布帛の製造方法に係り、詳しくは防水性、透湿性、結露抑制性を有し、スポーツウエア等の衣料用素材として快適な着用感を与えることのできるコーティング布帛の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、衣服を着用した時の快適性に関しては、水分移動特性を中心として数多くの研究がなされている。直接皮膚に接する肌着材料について、その着用快適性を皮膚側と外側の繊維組成から見ると、その衣服の繊維組成が親水性、疎水性のどちらがより快適性を有するかは、着用する季節から来る外的要因と運動等から来る衣服内気候の変化により一定でないことが論じられている(非特許文献1)。また、機能性繊維材料としては、吸湿吸水性の視点から、親水性繊維と疎水性繊維からなる多層構造ニットの快適性に関する評価が繊維メーカー各社から報告されている(非特許文献2)。
【0003】
一方、ポリウレタン樹脂を主体とした皮膜を湿式凝固法にて形成した透湿性防水布帛に関しては、その製造方法を中心として透湿性能および耐水圧性能等の機能向上を主目的とした検討が数多くなされている。
【0004】
その代表的なものとしては、ポリウレタン樹脂よりなる微多孔質皮膜を被覆した布帛がある。その製造方法としては、繊維基材にポリウレタン樹脂の水混和性溶媒溶液を塗布し、次いで水浴中に浸漬することによって微多孔質皮膜を形成する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
さらには、フッ素変性ポリウレタン樹脂あるいはフッ素変性ポリアミノ酸樹脂を用いたコーティング布帛(特許文献2)や、フッ素変性ポリウレタン樹脂とフッ素樹脂溶液を用いたコーティング布帛(特許文献3)も知られているが、これらの布帛は性能面から見たとき、JIS L 1092 B法の静水圧法における耐水圧(以下、単に耐水圧という)30kPa程度で、JIS L 1099塩化カルシウム法(A−1法)における24h換算の透湿度(以下、A−1透湿度という)が9000〜10000g/m2 ・24h程度である。
【0006】
また、ポリアミノ酸樹脂/ウレタン樹脂溶液を用い、湿式凝固によって皮膜を形成したコーティング布帛においては、耐水圧が30kPa程度でA−1透湿度が10000g/m2 ・24h程度の性能を有するものが知られている。
【0007】
また、近年は、結露による不快感を取り除くという観点から、繊維/湿式凝固されたポリマー/繊維の三層構造として快適素材を改良することが、さきに挙げた非特許文献1のp.181に示され、あるいは親水化されたポリマーによる結露性の改良も報告されている(非特許文献3)。
【0008】
さらに、衣類の着用快適性を評価する手段として有効であるISO 11092で得られるRet(透湿抵抗)と、JIS L 1099 酢酸カリウム法(B−1法)における24h換算の透湿度(以下、B−1透湿度という)が、負の相関性を有することから、このB−1透湿度を向上させた湿式凝固法による透湿性防水布帛として、湿式凝固法により得られた微多孔質膜の含水率が170%以上であるとするものも提案されている(特許文献4)。
【0009】
これによると、A−1透湿度とB−1透湿度との間には、相関性が認められないとされ、湿式凝固時に微多孔質膜に含むことができる水の量(含水率)が、湿式凝固後に生成される微多孔質の空孔率に比例するという仮定の上で、微多孔質膜の含水率とB−1透湿度、さらには微多孔質の空孔率とB−1透湿度が比例関係にあると述べている。これら上記の先行技術の知見に対して本発明者らは、長年の研究の結果から、着用快適性を有する透湿性防水布帛のあるべき断面構成として、次のような結論を得た。
【0010】
即ち、スポーツウエア等の衣料素材として用いられる、湿式凝固法によって皮膜形成して得た透湿性防水布帛について、その断面構成を水分移動特性の面からみた場合、皮膚側を疎水性の皮膜状にすると好ましくないのは当然であるが、親水性とした場合であっても、発汗に伴う水分の吸水効果が逆に肌着等へ濡れ感を与えることになり、さらには、運動後の冷えによる不快感をもたらすことを考えねばならない。従って、皮膚側を疎水性ネット状態に、中間を実質的には疎水性であるが、皮膚側および外側との相対比較において親水性に、外側を最も疎水性にすることにより、積極的な水分移動を可能とし、吸汗速乾機能をもった、即ち結露値、吸水値の低い衣料素材とすることが着用快適感を有して望ましいと考えられる。
【0011】
このような考え方に基づいて本発明者らは、ポリウレタン樹脂と、それよりも疎水性のポリウレタン樹脂以外の有機高分子樹脂とからなり、湿式凝固法を用いることによる着用快適性を有する透湿性防水布帛の製法をさきに提案した(特許文献5)。しかしながら、この発明では、ポリウレタン樹脂以外の有機高分子樹脂に起因する種々の問題により、着用快適性を示す代用値としての透湿性能、結露抑制性能、耐水性能等を同時に高水準に保つことが困難であった。
【0012】
さらに本発明者らは、ポリウレタン樹脂と、それよりも疎水性のポリウレタン樹脂とからなる湿式凝固法による透湿性防水布帛について提案した(非特許文献4)が、用いる二種のポリウレタン樹脂の相溶性の点で工業的な量産化には不適当であった。
【0013】
【特許文献1】
特公昭60−47955号公報
【特許文献2】
特開平3−27184号公報
【特許文献3】
特開平3−8874号公報
【特許文献4】
特開平11−61648号公報
【特許文献5】
特開平9−41275号公報
【非特許文献1】
日本繊維製品消費科学会誌、日本繊維製品消費科学会発行、1995
年、第36巻、p.60、181
【非特許文献2】
日本繊維製品消費科学会誌、日本繊維製品消費科学会発行、1989
年、第30巻、p.197
【非特許文献3】
繊維学会誌、繊維学会発行、1992年、第48巻、p.411
【非特許文献4】
日本繊維機械学会誌、日本繊維機械学会発行、1997年、第50巻
、p.T−233
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記した従来のコーティング布帛とは全く異なった素材を用い、且つ異なった手段によって、上述した皮膚側から相対比較において、疎水性−親水性−疎水性の三層構造を有したコーティング布帛を量産可能とし、その結果得られる着用快適性を示す代用値としては、耐水圧100kPa以上で、かつA−1透湿度とB−1透湿度が共に10000g/m2 ・24h以上という、従来にない高耐水圧、高透湿性能を有し、さらに結露抑制性が大きくて、スポーツウェア等の衣料に用いた時に快適な着用感を与えることのできる疎水性から親水性へと断面構造において傾斜構造を有するコーティング布帛を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、凝固価が9.0〜11.0(%水)であるポリウレタン樹脂(A)の水混和性有機溶剤溶液と、凝固価が2.0〜8.5(%水)である疎水性ポリウレタン樹脂(B)の水混和性有機溶剤溶液に、相溶化剤としてポリウレタン樹脂(C)の水混和性有機溶剤溶液を混合し、この混合溶液を、予め撥水加工を施した繊維基材の片面にコーティングした後、水中に浸漬して水混和性有機溶剤を抽出し、乾燥することを特徴とするもので、これによって防水性、透湿性、結露抑制性にすぐれた快適な着用感を与えるコーティング布帛を得ようとするものである。
【0016】
また、請求項2の発明は、請求項1にいて、ポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)溶液の混合比が、樹脂分比でポリウレタン樹脂(A)60〜94重量%、疎水性ポリウレタン樹脂(B)39.5〜1重量%、およびポリウレタン樹脂(C)0.5〜5重量%であることを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2において、相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)のポリオール成分が、分子量400〜4000のポリアルキレンエーテルグリコール30〜70重量%、末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリ−ε−カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール等の単独或いはそれらの混合物70〜30重量%からなり、平均分子量が20000〜120000、凝固価が5.5〜10.0(%水)であることを特徴とするものである。
【0018】
上記した請求項1〜3の発明によれば、ポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)溶液の三者を、特定した混合比で混合した均一混合溶液を用いることによって、防水性、透湿性、結露抑制性にすぐれて快適な着用感を与える、特にスポーツ衣料用として好適なコーティング布帛を提供することができるのである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を詳細に説明する。
まず、この発明で上記のように(A)、(B)および(C)としてそれぞれ使用するポリウレタン樹脂は、凝固価(Coagulation Value)と平均分子量で規定される。この凝固価は、湿式凝固の速度を示す尺度であると同時に、ポリウレタン樹脂の親水性、疎水性の範囲を定めるものでもある。この凝固価については、その定義と測定法が高分子学会発行の高分子論文集、第39巻、535〜542頁、(1982)に述べられているが、この発明で使用するポリウレタン樹脂は、その溶液粘度が非常に高くて上記の測定法によることが困難であるため、次のような方法で測定した。
【0020】
まず、合成したポリウレタン樹脂溶液をDMFで固形分濃度1重量%に希釈し、この希釈溶液約30gを秤取した後、溶液温度を30〜30.5℃に保ち、マグネチックスターラーで撹拌しながら溶液中に非溶剤として水/DMF=40/60の混合液を滴下し、肉眼で判定した白濁開始点と終点の中間点を非溶剤の滴下量とした。そして、この操作を3回繰り返して得た滴下量の平均値を用いて次式によって凝固価を算出した。
凝固価(%水)=|0.4b/(a+b)|×100
(上式において、aはDMF希釈による1重量%濃度の樹脂溶液のg数、bは滴下量(ml)×0.985から算出されるg数である。)
【0021】
上記にて測定の結果、この発明で使用するポリウレタン樹脂(A)の凝固価(C.V.)は9.0〜11.0(%水)、また疎水性ポリウレタン樹脂(B)の凝固価(C.V.)は2.0〜8.5(%水)と、ポリウレタン樹脂(A)のそれと比べて、より疎水性であることが必要である。また、相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)の凝固価は、ポリウレタン樹脂(A)と疎水性ポリウレタン樹脂(B)の凝固価の中間値として、5.5〜10.0(%水)が必要である。
【0022】
この発明において、ポリウレタン樹脂(A)溶液と、ポリウレタン樹脂(A)溶液に比べてより疎水性を呈する疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)溶液とからなる混合溶液を予め撥水加工した疎水性繊維基材の片面にコーティングして水中に浸漬すると、繊維基材の撥水効果により湿式凝固は繊維面とは逆の湿式樹脂加工表面方向へのみ進む、いわゆる片面凝固が進む。これによって、ポリウレタン樹脂の(A)、(B)、(C)溶液が共に凝固沈積するが、その際に、主材成分であるポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液の挙動に着目すると、凝固価の小さい疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液のほうが凝固価の大きいポリウレタン樹脂(A)溶液より早く凝固沈積し、水中に浸漬されてから時間とともに水混和性有機溶剤が凝固表面に抽出される際に、疎水性ポリウレタン樹脂(B)が湿式樹脂加工表面方向に導かれ集中する。
【0023】
即ち、ポリウレタン樹脂(A)/疎水性ポリウレタン樹脂(B)からなる布帛の断面構造を、実質的には疎水性であるが、その相対比較において親水性、疎水性で表現すると、衣料素材となった場合、皮膚側となる湿式樹脂加工表面が疎水性ポリウレタン樹脂(B)の集中により疎水性の微多孔網状構造を形成し、湿式樹脂内部はポリウレタン樹脂(A)の比率が高い多孔体構造を形成し、外側となる繊維は疎水性繊維であるから、布帛の断面はその相対比較において疎水性−親水性−疎水性の三層構造を形成していることになる。
【0024】
上記のように、この発明のコーティング布帛は、これをスポーツウエア等の衣料に加工して着用した時、皮膚側となる湿式樹脂加工表面において、疎水性ポリウレタン樹脂(B)による疎水性微多孔網状構造を形成させることが重要で、この疎水性微多孔網状構造の間隙から体内において発生した発汗等に伴う水蒸気を、疎水性ポリウレタン樹脂(B)に比べて親水性であるポリウレタン樹脂(A)がポンプアップ的に吸湿吸水し、次いで疎水性繊維に移動して拡散し乾燥するという水分の移行が適正に行われる、即ち高耐水圧、高透湿性、結露抑制性を有して、着用時の快適感を向上させる効果を奏するコーティング布帛を得ることができるのである。
【0025】
また、この発明では、コーティング液の主材であるポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液にポリウレタン樹脂(C)溶液を相溶化剤として加えて均一に混和させてコーティング液を得ているので、液の保存安定性が良好となり、このコーティング液を用いて工業的に多量生産する場合でも安定した品質のコーティング布帛を得ることができる。
【0026】
この発明において用いるポリウレタン樹脂の構成成分としては、一般にポリウレタン樹脂、ポリウレタン尿素樹脂といわれるもので、分子量400〜4000のポリアルキレンエーテルグリコールまたは末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリε−カプロラクトンポリオール、またはポリカーボネートジオール等の単独あるいは混合物を有機ジイソシアネートと反応させて得られるもので、必要に応じて2個あるいは3個以上の活性水素を有する化合物で鎖延長させて得られるものが好ましい。
【0027】
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンプロピレンオキシド付加物、末端にエチレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール、ビニルモノマーグラフト化ポリエーテルポリオール等がある。また、ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類とコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、トリメリット酸等のカルボン酸類とを末端がヒドロキシル基となるように反応して与えられるものがよく、さらに必要であれば、アルキレングリコール類としてジメチロールプロピオン酸、アミノエタンスルホン酸へのエチレンオキサイド付加物等の親水性向上を可能とするグリコール類を併用してもよい。
【0028】
次いで、有機イソシアネートとしては、2,4−及び2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5′−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族イソシアネート類があり、これらは単独あるいは混合して使用される。
【0029】
さらに、鎖延長剤としては、ヒドラジン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、水、ピペラジン、イソホロンジアミン、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等、あるいはジメチロールプロピオン酸、アミノエタンスルホン酸へのエチレンオキサイド付加物等の親水性向上を可能とするグリコール類、ジアミン類が単独または混合して使用される。また、用いるポリウレタン樹脂の溶液粘性を非ニュートン粘性とする目的で、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能あるいはそれ以上の活性水素を有する化合物を単独または混合して使用してもよい。
【0030】
また、この発明におけるポリウレタン樹脂(A)、疎水性ポリウレタン樹脂(B)および相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)は、それら樹脂の凝固価によって規定されるが、この凝固価は使用するポリオール成分の親水性あるいは疎水性によって大きく左右される。例えば、親水性のポリエチレンエーテルグリコール、疎水性のポリテトラメチレンエーテルグリコールあるいはそれらの中間の位置にあるポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールなどの使用比率によって凝固価の調整が可能であり、またポリウレタン樹脂中の窒素含有量などの増減によっても調整することができる。
【0031】
ポリウレタン樹脂(A)としては、上記した原料を末端にイソシアネート基が残存せぬよう配合、反応して平均分子量120000〜350000の範囲としたものが望ましく、その凝固価は9.0〜11.0(%水)、好ましくは9.5〜10.5(%水)であり、この範囲外では湿式凝固性が著しく低下する。
【0032】
疎水性ポリウレタン樹脂(B)としては、上記ポリウレタン樹脂(A)と同様に配合、反応して得られるもので、平均分子量が120000〜350000、その凝固価は2.0〜8.5(%水)、好ましくは2.5〜8.0(%水)が適当であり、この範囲外では加工した布帛の断面構造において、微多孔網状構造を形成せず、2.0(%水)より低い場合は、湿式樹脂加工最表面で疎水化フィルム形成の方向に進み、また8.5(%水)より高い場合は、その相対比較において、疎水性微多孔網状構造を有する湿式凝固表面層から親水性ポリウレタン樹脂で構成される多孔質層へ移るという傾斜構造をとらず、寧ろ均一系に近い方向に進み、その結果、ともに透湿性能および結露抑制効果が低下する。
【0033】
また、相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)としては、そのポリオール成分が分子量400〜4000のポリアルキレンエーテルグリコール30〜70重量%(好ましくは40〜60重量%)、末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリε−カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール等の単独あるいは混合物70〜30重量%(好ましくは60〜40重量%)であって、このポリオールとジイソシアネートとの加熱反応物で、その平均分子量が20000〜120000、好ましくは40000〜100000で、凝固価が5.5〜10.0(%水)、好ましくは6.5〜9.0(%水)のものが適当である。
【0034】
上記したポリウレタン樹脂(C)は、ポリウレタン樹脂(A)、疎水性ポリウレタン樹脂(B)に相溶化剤として加えることによって、得られるコーティング液の液保存安定性を良好にする。そして、このコーティング液を塗布した基布を湿式凝固してコーティング布帛を得る際に、その相対比較において、コーティング液の主材であるポリウレタン樹脂(A)、疎水性ポリウレタン樹脂(B)による疎水性微多孔質の網状構造から親水性多孔質層へ移行するという傾斜二層構造の形成をポリウレタン樹脂(C)が阻害しないことが必要である。
【0035】
この観点から、コーティング液を得る際の相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)の使用量は、樹脂分比でポリウレタン樹脂(A)と(B)の合計量95〜99.5重量%に対して5〜0.5重量%が好ましい。
【0036】
さらに、ポリウレタン樹脂(C)を上記した平均分子量或いは凝固価の範囲内に調製しても、使用したポリオール比が上記の範囲外であるならば、これを相溶化剤に用いて調製したコーティング液は、その液保存安定性が好ましくなく、数時間で液分離を起こす。また、逆に使用したポリオール比が上記の範囲内であっても、その平均分子量や凝固価が上記の範囲外であれば、そのようなポリウレタン樹脂(C)を相溶化剤としたコーティング液も数時間で液分離を引き起こす。
【0037】
その他、湿式樹脂加工表面の面滑性を向上させるために、必要に応じてポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂などのポリウレタン樹脂と相溶性のある樹脂を水混和性有機溶剤溶液として併用してもよい。
【0038】
その他、コーティング液と基材との接着性を向上させるために、多官能ポリイソシアネート(例えば、商品名コロネートHX、コロネートHL、日本ポリウレタン工業社製)等を添加剤として用いてもよい。また湿式凝固における脱溶剤の速度調整剤としてノニオン系界面活性剤の添加も有効である。
【0039】
水混和性有機溶剤としては、代表的なものとしてジメチルホルムアミド(DMF)があるが、この他にジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の単独またはそれらの混合物を使用することもでき、ポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液、相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)溶液を、これらの溶剤で混和均一化した混合溶液を水中に浸漬すると、溶剤のみが水に溶解し、樹脂が水中にて凝固してくる。
【0040】
この発明でポリウレタン樹脂(A)溶液、疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)溶液を用いるに当たって、その混合比率としては、樹脂分比でポリウレタン樹脂(A)60〜94%、疎水性ポリウレタン樹脂(B)39.5〜1%、ポリウレタン樹脂(C)0.5〜5%が、得られる布帛の耐水圧、透湿性、結露抑制性において良好で好ましい。最適条件下で得られる布帛は、A−1透湿度11000g/m2 24h、B−1透湿度13000g/m2 24h、耐水圧140kPa、結露値9.2g/m2 ・hを示し、不均一な塗工面も生じず、その結果、上記性能は塗工面全面に亘って均一に得ることができる。また、上記の混合比率によれば、得られるコーティング液の液保存安定性も極めて良好である。
【0041】
上記混合比率のポリウレタン樹脂(A)溶液、疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤のポリウレタン樹脂(C)溶液の混合方法は、常温で均一となるまで撹拌すればよいが、40〜60℃の加熱撹拌下で混合してもよい。混合溶液を繊維基材に塗布するには通常のコーティング法によればよく、その塗布厚は10〜300μmが適当である。
【0042】
上記の厚さの樹脂皮膜を形成した繊維基材を水中に浸漬する時の水温は、0〜30℃が好ましく、30℃以上では樹脂皮膜に生成する多孔質層の孔が大きくなり、耐水圧が低下する。また、浸漬時間は30秒以上が必要である。30秒以下では樹脂の凝固が不十分となって好ましくない。なお、残留している有機溶剤を完全に除去するために、30〜80℃の温水中で3〜10分の湯洗を行ってもよい。また、湯洗後乾燥して得られたコーティング布帛にさらに撥水剤を付与することにより、耐水圧の向上をはかることができる。撥水剤としては、パラフィン系、シリコーン系、フッ素系等の各種があり、用途に応じて適宜選択すればよく、またその付与は通常の方法で行えばよい。
【0043】
かくして得られるこの発明のコーティング布帛は、ゴルフウエア、スキーウエア等のスポーツウエア等の衣料用素材として広く使用することができる。
【0044】
【実施例】
次に、この発明を実施例により詳細に説明する。なお、この発明はこれらの実施例に限定されるものではない。部数は全て重量部である。
【0045】
実施例1
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量4000のエチレンブチレンアジペート996部、エチレングリコール108.5部、DMF2850部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。そして、この混合物に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)500部を加え、加熱反応させた後DMFで希釈して固形分濃度22%のDMF溶液で30℃における粘度が95000mPa・sを有する平均分子量296000のポリウレタン樹脂溶液(A−1)を得た。この溶液(A−1)の凝固価を上述の方法で測定したところ、9.9(%水)の値を得た。
【0046】
次に、両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のエチレンブチレンアジペート91.8部、平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール91.8部、エチレングリコール9.5部、DMF382.5部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。そして、この混合物にMDI61.2部を加え、加熱反応させた後、DMFで希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で30℃における粘度が89000mPa・sを有する平均分子量174000のポリウレタン樹脂溶液(B−1)を得た。この溶液(B−1)の凝固価は7.3(%水)であった。
【0047】
また、上記と同じ配合で加熱反応を行い、DMF希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で3000mPa・s/30℃の粘度になった時点でメタノールを加えて反応を停止し、平均分子量54000のポリウレタン樹脂溶液(C−1)を得た。この溶液の凝固価は7.8(%水)であった。
【0048】
上記で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)409.1部、ポリウレタン樹脂溶液(B−1)31.3部、ポリウレタン樹脂溶液(C−1)2.0部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX、日本ポリウレタン工業社製)4.4部、DMF177部を混和均一化し、コーティング溶液を調製した。
【0049】
一方、疎水性繊維基材として、異形(三角)断面を持つナイロンフィラメントの平織物(縦糸、横糸ともに78dtex/34f、縦糸密度120本/2.54cm、横糸密度95本/2.54cm)を用意し、フッ素系撥水剤で撥水加工を行ってからカレンダー加工を行った。この基材に上記で得たコーティング溶液を調製直後に脱泡し、ベーカー式アプリケータを用いて150g/m2 (wet)塗布した後、20℃の水浴中に2分間浸漬し、樹脂分を凝固させた。その後、50℃の温水中に10分間浸漬し、DMFを十分に抽出した。続いて乾燥を行い、その後、再度繊維基材側のみフッ素系撥水剤で撥水加工を行って、この発明のコーティング布帛を得た。
【0050】
実施例2
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)272.7部とポリウレタン樹脂溶液(B−1)118.3部、ポリウレタン樹脂溶液(C−1)15.0部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF213部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じようにして基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0051】
実施例3
平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール183.6部、エチレングリコール9.5部、DMF382.5部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。その後この混合物にMDI61.2部を加えて加熱反応させた後、DMFで希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で19000mPa・s/30℃の粘度を有する平均分子量129000のポリウレタン樹脂溶液(B−2)を得た。この溶液の凝固価は2.8(%水)であった。
【0052】
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)426.1部、上記で得たポリウレタン樹脂溶液(B−2)4.2部、実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(C−1)16.7部、DMFで固形分濃度5%に調製したアクリロニトリル−スチレン共重合体溶液22部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF173部を混和均一化し、コーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じように処理してコーティング布帛を得た。
【0053】
実施例4
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のエチレンブチレンアジペート93.9部、両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のブチレンアジペート93.9部、ジシクロヘキシルメタン4,4′−ジイソシアネート12.3部を窒素気流下で均一に混合して加熱反応後、エチレングリコール17.5部、グリセリン0.3部、DMF450部、MDI82.2部を加えて加熱反応を行った。その後DMFで希釈して固形分濃度22%のDMF溶液で108000mPa・s/30℃の粘度を有する平均分子量334000のポリウレタン樹脂溶液(A−2)を得た。この溶液の凝固価は9.1(%水)であった。
【0054】
上記で得たポリウレタン樹脂溶液(A−2)363.6部と実施例3で得たポリウレタン樹脂溶液(B−2)50部、実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(C−1)16.7部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF189.7部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じようにして基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0055】
実施例5
平均分子量3000のポリカプロラクトンポリオール139部、エチレングリコール0.7部、ジシクロヘキシルメタン4,4′−ジイソシアネート30.4部を窒素気流下で均一に混合して加熱反応後、DMF300部、イソホロンジアミン9.9部を加えて加熱反応を行った。その後、残存イソシアネート基に当量のモルホリンを加えて消失させ、DMFで希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で80000mPa・s/30℃の粘度を有する平均分子量168000のポリウレタン樹脂溶液(B−3)を得た。この溶液の凝固価は4.5(%水)であった。
【0056】
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)409.1部、上記で得たポリウレタン樹脂溶液(B−3)16.7部、実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(C−1)16.7部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHL、日本ポリウレタン工業社製)5.0部、DMF177部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じように処理してコーティング布帛を得た。
【0057】
実施例6
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のエチレンブチレンアジペート93.9部、平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール93.9部、ジシクロヘキシルメタン4,4′−ジイソシアネート12.3部を窒素気流下で均一に混合して加熱反応後、エチレングリコール17.5部、DMF450部、MDI82.2部を加えて加熱反応を行った。その後DMFで希釈して固形分濃度30%のDMF溶液で30℃における粘度が5000mPa・sになった時点でメタノールを加えて反応を停止し、平均分子量115000のポリウレタン樹脂溶液(C−2)を得た。この溶液の凝固価は9.3(%水)であった。
【0058】
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)363.6部と実施例3で得たポリウレタン樹脂溶液(B−2)63.3部、上記で得たポリウレタン樹脂溶液(C−2)3.3部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF189部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。この溶液を用いて実施例1と同じようにして基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0059】
比較例1
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)のみを用い、この溶液454.6部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF163部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じように処理してコーティング布帛を得た。
【0060】
比較例2
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)363.6部と実施例3で得たポリウレタン樹脂溶液(B−1)66.7部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF187部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。この溶液を用いて実施例1と同じようにして基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0061】
比較例3
実施例1で得たポリウレタン樹脂溶液(A−1)227.3部とポリウレタン樹脂溶液(B−1)150部、ポリウレタン樹脂溶液(C−1)16.7部、白色カラートーナー22部、多官能性ポリイソシアネート(コロネートHX)4.4部、DMF225部を混和均一化してコーティング溶液を調製した。得られた溶液を用いて実施例1と同じように基材に処理してコーティング布帛を得た。
【0062】
上記実施例1〜6および比較例1〜3で得たコーティング布帛について、耐水圧、透湿度、結露値等の性能を測定したところ、表1の結果が得られた。なお、透湿度の測定はJIS L 1099に準拠して行い、耐水圧はJIS L 1092 B法の静水圧法に準拠して測定した。また、結露値は次のような容器および算出法にて測定した。
【0063】
即ち、口内径が6cmで容量が500ccの円筒状ガラス瓶の外側に発泡スチロールを厚さ約1cmに巻きつけ、この瓶内にその口上端から2cmまで40℃の水を入れて密封し、これを10℃×60%RHの恒温室に1時間放置した時、瓶内の水温が30±1℃に保温できる物を測定容器とした。
【0064】
上記の容器に40℃の水を口上端から2cmまで入れ、次いで容器の上部に上記実施例1〜6および比較例1〜3で得たコーティング布帛を予め120℃で10分乾燥したのち、それぞれ直径10cmの円形に切り取った布帛試片の湿式樹脂加工表面を水面に向けて載せ、周囲を留め具で固定した後、10℃×60%RHの恒温室に1時間放置した。かくして放置前後の試片の重量変化から次式によって結露値を算出した。
結露値(g/m2 ・h)=(m1 −m2 )/(0.032 π)
〔式中、m1 は測定直後の布帛試片の重量、m2 はm1 測定直後の試片表面の結露水を濾紙で吸い取った後の重量である。〕
【0065】
また、表1には上記実施例1〜6および比較例1〜3で使用したコーティング液の液保存安定性に関する評価も示した。この評価は、コーティング液を25℃で12時間放置した後の状態を、○:液外観に全く変化なし、△:僅かに液分離が認められる、×:液が完全に二層に分離している、の3段階で判定したものである。
【0066】
【表1】
【0067】
上記表1から、この発明の方法により得られたコーティング布帛は、透湿度、耐水圧が良好で、なおかつ、結露値についても低い数値を示し、透湿性能と結露抑制性能、耐水性能を高水準に、かつ同時に満足させていることが認められた。そして、使用したコーティング液も何ら異状のない良好な液保存安定性を示した。これに対して、比較例1はコーティング液としてポリウレタン樹脂溶液のみを用いたものであるので、液の保存安定性はよいが、得られた布帛の結露抑制性が劣った。また比較例2は、実施例とほぼ同等の性能を示しているが、これは調製直後のコーティング溶液を用いた結果であって、相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)を使用していないので、液保存安定性が悪く、その後のコーティングは不可能であった。比較例3は、ポリウレタン樹脂(A)および疎水性ポリウレタン樹脂(B)の混合割合が本発明の範囲外であって、耐水圧に劣り、また液保存安定性にも欠けるものであった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明は、特定した範囲の凝固価を有するポリウレタン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(A)に比べてより疎水性を呈する疎水性ポリウレタン樹脂(B)と、この両者を混和均一化するための相溶化剤としてのポリウレタン樹脂(C)の三者を特定の範囲で混合した均一混合溶液を用いてコーティング布帛を得たことによって、上記した良好な性能を具備していることから、このコーティング布帛をゴルフウエア、スキーウエア等のスポーツウエアの衣料素材として用いたとき、発汗に伴う水分移動特性が良好で、肌着等へ濡れ感を与えることなく、そのために運動後の冷えによる不快感もない快適な着用感、いわゆる吸汗速乾機能を与え、また均一混合溶液が液保存安定性に優れるという効果を奏するのである。
Claims (3)
- 凝固価が9.0〜11.0(%水)であるポリウレタン樹脂(A)の水混和性有機溶剤溶液と、凝固価が2.0〜8.5(%水)である疎水性ポリウレタン樹脂(B)の水混和性有機溶剤溶液に、相溶化剤としてポリウレタン樹脂(C)の水混和性有機溶剤溶液を混合し、この混合溶液を、予め撥水加工を施した繊維基材の片面にコーティングした後、水中に浸漬して水混和性有機溶剤を抽出し、乾燥することを特徴とする防水性、透湿性、結露抑制性にすぐれたコーティング布帛の製造方法。
- ポリウレタン樹脂(A)溶液と疎水性ポリウレタン樹脂(B)溶液および相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)溶液の混合比が、樹脂分比でポリウレタン樹脂(A)60〜94重量%、疎水性ポリウレタン樹脂(B)39.5〜1重量%、およびポリウレタン樹脂(C)0.5〜5重量%であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング布帛の製造方法。
- 相溶化剤として用いるポリウレタン樹脂(C)のポリオール成分が、分子量400〜4000のポリアルキレンエーテルグリコール30〜70重量%、末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリ−ε−カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール等の単独或いはそれらの混合物70〜30重量%からなり、その平均分子量が20000〜120000、凝固価が5.5〜10.0(%水)であることを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング布帛の製造方法。
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