JP2004114557A - インクパッケージの包装体 - Google Patents
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Abstract
【課題】インクパッケージと包袋との間に容易に減圧空間を形成し、インクパッケージの脱気度を保持、促進させることができるインクパッケージの包装体を提供すること。
【解決手段】インクパッケージ2を収納した収納ケース3を内包した状態で包袋4の内部を減圧すると、側壁10の縁部によって形成されている開口部11を介して、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に形成された空間に存在する空気が引き抜かれる。よって、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に容易に減圧空間が形成され、この減圧空間によって、インクパッケージ2の脱気度を維持、促進することができる。
【選択図】 図5
【解決手段】インクパッケージ2を収納した収納ケース3を内包した状態で包袋4の内部を減圧すると、側壁10の縁部によって形成されている開口部11を介して、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に形成された空間に存在する空気が引き抜かれる。よって、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に容易に減圧空間が形成され、この減圧空間によって、インクパッケージ2の脱気度を維持、促進することができる。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクパッケージの包装体に関し、特に、インクパッケージと包袋との間に容易に減圧空間を形成し、インクパッケージの脱気度を保持、促進させることができるインクパッケージの包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平11‐129489号公報に開示されているように、インクジェット記録装置に用いられるインクを密閉して構成されるインク袋が知られている。このインク袋の開口周縁には筒状部材が固着されており、その筒状部材内には、インク袋体の外部と内部との連通を遮断する弾性シール材が嵌挿されている。このインク袋は、筒状部材をカートリッジケースの側面から露出するように固定しつつ、カートリッジケースの内部に収納された状態でインクジェット記録装置に装着される。カートリッジケースが装着されると、インクジェット記録装置側のインク供給針によって、筒状部材に嵌挿されている弾性シール材が突き破られる。こうしてインク袋に密封されたインクは、インク供給針に連設するチューブを介して、インクを被記録媒体に吐出する記録ヘッドに供給される。
【0003】
ここで、このインクジェット記録装置に用いられるインクは、原材料を溶解する工程と濾過工程とによって製造されるが、製造したインクをそのままインク袋に充填して使用すると、インク中に溶存している窒素、酸素、炭酸ガス等の各種のガスが記録ヘッド内において気泡を発生させ、記録ヘッドからインク滴を吐出できなくり、印字不良を引き起こす。そのため、インク袋にインクを充填する前にインク中の溶存ガスを減らす脱気処理を行っている。この脱気処理の方法としては、インクを圧力容器中で減圧しながら攪拌する方法や、気体分離膜を用いた脱気装置により脱気する方法などが採用されている。
【0004】
しかし、脱気処理をした脱気インクをインク袋内に密封し、そのインク袋を輸送する場合や、未使用のまま長期間保存する場合には、その間に空気中の酸素等が再びインク中に溶存することになる。そこで、特公平3−61592号公報には、空気中の酸素等が再びインク中に溶存するのを防止するために、脱気インクを充填した袋体をインク容器内に収納し、更に、そのインク容器を真空チャンバー内にて、プラスチックまたはゴム容器あるいは缶状の金属容器等の密閉容器に収納して密閉することにより、インク容器を大気圧より低い減圧状態下で輸送、保存等する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11‐129489号公報(図1等)
特公平3−61592号公報(第4列第4行目〜7行目等、図1等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように、脱気インクを充填した袋体をインク容器内に収納した場合、インク容器は略密閉状態にあるため、密封容器とインク容器との間は容易に大気圧より低い減圧状態にできても、袋体とインク容器との間を大気圧より低い減圧状態するのは困難であり、依然として、袋体とインク容器との間に存在する空気が袋体に充填されたインクに溶け込み、インクの脱気度が劣化するという問題点があった。
【0007】
本発明は、この問題を解消すべくなされたものであって、インクパッケージと包袋との間に容易に減圧空間を形成し、インクパッケージの脱気度を保持、促進させることができるインクパッケージの包装体を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために請求項1記載のインクパッケージの包装体は、柔軟性を有する袋体の内部にインクを密封するインクパッケージと、そのインクパッケージを内包する包袋とを備え、前記インクパッケージを内包した状態で前記包袋の内部を減圧して構成されるものであり、前記包袋に内包され、前記インクパッケージと前記包装との間に、前記インクパッケージを脱気するための減圧空間を形成する減圧空間形成部材を備えている。
【0009】
この請求項1記載のインクパッケージの包装体によれば、柔軟性を有する袋体の内部にインクを密封するインクパッケージを内包した状態で包袋の内部を減圧した場合、減圧空間形成部材によって、インクパッケージと包装との間には、インクパッケージを脱気するための減圧空間が形成される。
【0010】
請求項2に記載のインクパッケージの包装体は、請求項1に記載のインクパッケージの包装体において、前記減圧空間形成部材は、前記インクパッケージを収納可能な収納容器であって、その収納容器には収納容器の内部空間と前記包袋とを連通させる連通口が形成されており、前記減圧空間は、前記連通口を介して減圧される前記収納容器の内部空間によって形成される。
【0011】
請求項3に記載のインクパッケージの包装体は、請求項2に記載のインクパッケージの包装体において、前記収納容器は、前記インクパッケージの幅広面を支持する底壁と、その底壁の縁部から立設された側壁と、その側壁の縁部によって形成される開口部とによって構成されており、前記連通口は、前記開口部によって構成されている。
【0012】
この請求項3に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項2に記載のインクパッケージの包装体と同様に作用する上、連通口は側壁の縁部によって形成されているので、包袋の内部を減圧した場合、底壁に支持されているインクパッケージの幅広面とは反対側の幅広面が、包袋の内側面によって押圧される。
【0013】
請求項4に記載のインクパッケージの包装体は、請求項3に記載のインクパッケージの包装体において、前記側壁の高さは、前記インクパッケージの幅広面を前記底壁に載置した状態の高さ以上に構成されている。
【0014】
この請求項4に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項3に記載のインクパッケージの包装体と同様に作用する上、包袋の内部を減圧した場合、底壁に載置されているインクパッケージの幅広面とは反対側の幅広面を押圧しようとする包袋の内面は、側壁の縁部によって係止される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例であるインクパッケージの包装体1の斜視図である。図2(a)は、インクパッケージ2の平面図であり、(b)はインクパッケージ2の正面図であり、(c)はインクパッケージ2の断面側面図である。図3は、インクパッケージ2と収納ケース3とを示す斜視図である。図4はインクパッケージ2を収納した収納ケース3と包袋4とを示す斜視図である。
【0016】
インクパッケージの包装体1は、インクパッケージ2の脱気度を保持、促進するためのものである。インクパッケージの包装体1は、脱気処理をした脱気インクを密封するインクパッケージ2と、そのインクパッケージ2を収納する収納ケース3と、インクパッケージ2を収納した収納ケース3を内包する包袋4とを備えており、収納ケース3を内包した状態で包袋4の内部を減圧して構成されている。
【0017】
インクパッケージ2は、複数枚のフィルムシートを積層して構成される積層構造を有する2枚のシート材料を、一部に開口部を残すように周縁部同士を溶着して袋状に形成され、その内部に脱気処理された脱気インクを充填する袋体5と、その袋体5の開口部内に挟まれた状態で、開口部を形成する袋体5の周縁部の内面に、その外周面を溶着され、袋体5の内部と外部とを連通させる連通路6を有するスパウト7と、そのスパウト7の連通路6に圧入され、袋体5の内部と外部とを遮断するキャップ8とによって構成されている。
【0018】
袋体5を構成するシート材料は、例えば、アルミニウム合金層を中心に、一側に接着層及びナイロン層(外面層)を、他側に接着層,ポリエチレンテレフタラート層、接着層及びポリプロピレン層(内面層)を順に積層して構成されている。このような積層構造を有するシート材料を用いることによって耐久性に優れ、特に、内面層にポリプロピレン層を配置することによって、袋体5の内部に充填されるインクに対する耐インク性に優れ、また、中間層としてアルミニウム合金層を配置することによって、新たな空気が袋体5を透過するのを遮断して、インクの脱気度が劣化するのを防止することができる。
【0019】
スパウト7は、筒状体に形成されており、耐インク性に優れるポリプロピレンを主成分とする材料によって構成されている。即ち、袋体5の内面層を構成するポリプロピレン層と、その主成分を同一とするため、スパウト7の外周面を袋体5の内面に強固に溶着することができる。よって、袋体5とスパウト7との溶着部分から新たな空気が袋体5を透過するのを遮断して、インクの脱気度が劣化するのを防止することができる。
【0020】
キャップ8は、弾性復元力を有するゴム状の材料で構成され、例えばブチルゴムまたはそれに近い材料で構成されている。キャップ8は、インク抽出針17を突き刺したり抜いたりしてもインクを濡らさないように復元力を有する。
【0021】
収納ケース3は略箱状に形成され、インクパッケージ2の幅広面を支持する底壁9と、その底壁9の縁部から立設された側壁10と、その側壁10の縁部によって形成される開口部11とによって構成されている。
【0022】
底壁9は、インクパッケージ2の幅広面と略同様な大きさに構成されている。側壁10の一部には、インクパッケージ2に溶着されたスパウト7を固定するための切り欠き部10aが備えられている。スパウト7は、この切り欠き部10aに嵌り込み、スパウト7の連通路6に圧入されたキャップ8は、収納ケース3の側壁10から露出している状態になる。
【0023】
また、側壁10の高さはインクパッケージ2の幅広面を底壁9に載置した状態の高さ以上に構成されている。よって、側壁10の縁部によって形成される開口部11から、インクパッケージ2を、その幅広面が底壁9に載置するように収納ケース3の内部に収納した場合には、インクパッケージ2と収納ケース3との間には空間が形成される。
【0024】
上述したように構成されたインクパッケージ2と収納ケース3とは、収納ケース3の内部にインクパッケージ2を収納した状態で、収納ケース3よりひとまわり大きい袋状に形成された包袋の内部に収納される。この状態で包袋4の内部を真空ポンプ等によって減圧(インクを脱気処理する場合より低い圧力)して、インクパッケージの包装体1を構成する。包袋4は、袋体5と同様の積層シート材料を用いて構成され、内部の空気を遮断する。
【0025】
図5は、図1のインクパッケージの包装体1におけるIV−IV断面図である。上述のように構成されたインクパッケージの包袋1によれば、収納ケース3を内包した状態で包袋4の内部を真空ポンプ等によって減圧すると、側壁10の縁部によって形成されている開口部11を介して、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に形成された空間に存在する空気が引き抜かれる。よって、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に容易に減圧空間が形成され、この減圧空間によって、インクパッケージ2の脱気度を維持、促進することができる。
【0026】
また、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に形成された空間が減圧されるにつれて、底壁9とは反対側のインクパッケージ2の幅広面(以降、インクパッケージ2の上面という)は、対峙する包袋4の内面によって押圧される。この圧力によってインクパッケージ2は圧縮されるので、インクパッケージ2の脱気を一層、促進することができる。
【0027】
更に、側壁10の高さは、インクパッケージ2の幅広面を底壁9に載置した状態の高さ以上に構成されているので、包袋4の内部が減圧されるにつれて、包袋4の内面が、インクパッケージ2の上面を押圧する圧力は大きくなるが、その圧力は側壁10の縁部によって吸収される。よって、包袋4によってインクパッケージ2が押し潰されるのを防止することができる。
【0028】
インクパッケージ2は、その広幅面を収納ケース3の底壁9に当てて両面接着テープ等で固定しておくことで、包袋4から収納ケース3を出してそのままの状態で、インクジェット記録装置本体に着脱することができる。つまり、柔軟なインクパッケージでなく収納ケースを手に持って取り扱うことができる。図6はインクパッケージ2を収納した収納ケース3をインクジェット記録装置本体に装着する状態を示す。収納ケース3をインクジェット記録装置本体に設けたガイド面(図示せず)に沿わせて挿入し、キャップ8にインク抽出針17を突き刺し、チューブ等の供給路16を経てインクジェットヘッドにインクを供給する。
【0029】
図7は、他の実施の形態を示すもので、インクパッケージ2の幅広面の両側から一対のケース体12,12を重ね合わせて箱状の収納ケースを構成している。包袋4は、一対のケース体12,12を収納できる大きさとする。この場合、ケース体12,12内が密閉されないように適宜開口12aまたは隙間を予め形成しておくことで、包袋4内を減圧したとき、ケース体12,12内を減圧空間とする。
【0030】
以上説明したように、インクパッケージの包装体1内の収納ケース23によってインクパッケージ2と包袋4との間に減圧空間を形成することで、によって、インクパッケージ2を輸送する場合や、未使用のまま長期間保存する場合にも、インクパッケージ2の脱気度を維持、促進できる。また、インク中に発生する気泡によって印字不良を引き起こすことを抑制でき、好適な印字状態を維持することができる。
【0031】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0032】
例えば、本実施例のインクパッケージの包装体1では、収納ケース3をカートリッジケース12の一方のケース体で代用する場合について説明した。しかしながら、収納ケース3に関しては側壁10に備えられた切り欠き部10aは、必ずしも必要な構成ではないため、収納ケース3は単なる箱状体であっても良い。また、収納ケース3に設けられる開口部11は、収納ケース3とインクパッケージ2との空間を容易に減圧でき、更に、包袋4の内面によってインクパッケージ2を押圧できる程度の開口であれば、側壁10の縁部によって形成される開口部11に限定されるものではない。
【0033】
【発明の効果】
請求項1に記載のインクパッケージの包装体によれば、柔軟性を有する袋体の内部にインクを密封するインクパッケージを内包した状態で包袋の内部を減圧した場合、インクパッケージと包装との間には、減圧空間形成部材によって、インクパッケージを脱気するための減圧空間が形成される。よって、インクパッケージの脱気度を保持、促進することができるという効果がある。
【0034】
請求項2に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項1記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、減圧空間は、連通口を介して減圧される収納容器の内部空間によって形成されるので、インクパッケージの周囲に容易に減圧空間を形成することができるという効果がある。
【0035】
請求項3に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項2に記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、連通口は側壁の縁部によって形成されているので、包袋の内部を減圧した場合、底壁に支持されるインクパッケージの幅広面の反対側の幅広面が、包袋の内側面によって押圧される。よって、インクパッケージは圧縮され、インクパッケージの脱気を促進させることができるという効果がある。
【0036】
請求項4に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項3に記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、包袋の内部を減圧した場合、底壁に載置されているインクパッケージの幅広面の反対側の幅広面を押圧しようとする包袋は、側壁の縁部によって係止される。よって、包袋の内面がインクパッケージを押圧する圧力が側壁の縁部によって吸収される。従って、包袋の内面によってインクパッケージが押し潰されるのを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるインクパッケージの包装体の斜視図である。
【図2】(a)はインクパッケージ2の平面図であり、(b)はインクパッケージ2の正面図であり、(c)はインクパッケージ2の断面側面図である。
【図3】インクパッケージと収納ケースとを示す斜視図である。
【図4】インクパッケージを収納した収納ケースと包袋とを示す斜視図である。
【図5】図1のインクパッケージの包装体1におけるV−V断面図である。
【図6】収納ケースとインク抽出針とを示す拡大図である。
【図7】インクパッケージとケース体とを示した斜視図である。
【符号の説明】
1 インクパッケージの包装体
2 インクパッケージ
3 収納ケース(収納容器)
4 包袋
5 袋体
6 連通路
7 スパウト
8 キャップ
9 底壁
10 側壁
11 開口部(連通口)
17 インク抽出針
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクパッケージの包装体に関し、特に、インクパッケージと包袋との間に容易に減圧空間を形成し、インクパッケージの脱気度を保持、促進させることができるインクパッケージの包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平11‐129489号公報に開示されているように、インクジェット記録装置に用いられるインクを密閉して構成されるインク袋が知られている。このインク袋の開口周縁には筒状部材が固着されており、その筒状部材内には、インク袋体の外部と内部との連通を遮断する弾性シール材が嵌挿されている。このインク袋は、筒状部材をカートリッジケースの側面から露出するように固定しつつ、カートリッジケースの内部に収納された状態でインクジェット記録装置に装着される。カートリッジケースが装着されると、インクジェット記録装置側のインク供給針によって、筒状部材に嵌挿されている弾性シール材が突き破られる。こうしてインク袋に密封されたインクは、インク供給針に連設するチューブを介して、インクを被記録媒体に吐出する記録ヘッドに供給される。
【0003】
ここで、このインクジェット記録装置に用いられるインクは、原材料を溶解する工程と濾過工程とによって製造されるが、製造したインクをそのままインク袋に充填して使用すると、インク中に溶存している窒素、酸素、炭酸ガス等の各種のガスが記録ヘッド内において気泡を発生させ、記録ヘッドからインク滴を吐出できなくり、印字不良を引き起こす。そのため、インク袋にインクを充填する前にインク中の溶存ガスを減らす脱気処理を行っている。この脱気処理の方法としては、インクを圧力容器中で減圧しながら攪拌する方法や、気体分離膜を用いた脱気装置により脱気する方法などが採用されている。
【0004】
しかし、脱気処理をした脱気インクをインク袋内に密封し、そのインク袋を輸送する場合や、未使用のまま長期間保存する場合には、その間に空気中の酸素等が再びインク中に溶存することになる。そこで、特公平3−61592号公報には、空気中の酸素等が再びインク中に溶存するのを防止するために、脱気インクを充填した袋体をインク容器内に収納し、更に、そのインク容器を真空チャンバー内にて、プラスチックまたはゴム容器あるいは缶状の金属容器等の密閉容器に収納して密閉することにより、インク容器を大気圧より低い減圧状態下で輸送、保存等する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11‐129489号公報(図1等)
特公平3−61592号公報(第4列第4行目〜7行目等、図1等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように、脱気インクを充填した袋体をインク容器内に収納した場合、インク容器は略密閉状態にあるため、密封容器とインク容器との間は容易に大気圧より低い減圧状態にできても、袋体とインク容器との間を大気圧より低い減圧状態するのは困難であり、依然として、袋体とインク容器との間に存在する空気が袋体に充填されたインクに溶け込み、インクの脱気度が劣化するという問題点があった。
【0007】
本発明は、この問題を解消すべくなされたものであって、インクパッケージと包袋との間に容易に減圧空間を形成し、インクパッケージの脱気度を保持、促進させることができるインクパッケージの包装体を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために請求項1記載のインクパッケージの包装体は、柔軟性を有する袋体の内部にインクを密封するインクパッケージと、そのインクパッケージを内包する包袋とを備え、前記インクパッケージを内包した状態で前記包袋の内部を減圧して構成されるものであり、前記包袋に内包され、前記インクパッケージと前記包装との間に、前記インクパッケージを脱気するための減圧空間を形成する減圧空間形成部材を備えている。
【0009】
この請求項1記載のインクパッケージの包装体によれば、柔軟性を有する袋体の内部にインクを密封するインクパッケージを内包した状態で包袋の内部を減圧した場合、減圧空間形成部材によって、インクパッケージと包装との間には、インクパッケージを脱気するための減圧空間が形成される。
【0010】
請求項2に記載のインクパッケージの包装体は、請求項1に記載のインクパッケージの包装体において、前記減圧空間形成部材は、前記インクパッケージを収納可能な収納容器であって、その収納容器には収納容器の内部空間と前記包袋とを連通させる連通口が形成されており、前記減圧空間は、前記連通口を介して減圧される前記収納容器の内部空間によって形成される。
【0011】
請求項3に記載のインクパッケージの包装体は、請求項2に記載のインクパッケージの包装体において、前記収納容器は、前記インクパッケージの幅広面を支持する底壁と、その底壁の縁部から立設された側壁と、その側壁の縁部によって形成される開口部とによって構成されており、前記連通口は、前記開口部によって構成されている。
【0012】
この請求項3に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項2に記載のインクパッケージの包装体と同様に作用する上、連通口は側壁の縁部によって形成されているので、包袋の内部を減圧した場合、底壁に支持されているインクパッケージの幅広面とは反対側の幅広面が、包袋の内側面によって押圧される。
【0013】
請求項4に記載のインクパッケージの包装体は、請求項3に記載のインクパッケージの包装体において、前記側壁の高さは、前記インクパッケージの幅広面を前記底壁に載置した状態の高さ以上に構成されている。
【0014】
この請求項4に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項3に記載のインクパッケージの包装体と同様に作用する上、包袋の内部を減圧した場合、底壁に載置されているインクパッケージの幅広面とは反対側の幅広面を押圧しようとする包袋の内面は、側壁の縁部によって係止される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例であるインクパッケージの包装体1の斜視図である。図2(a)は、インクパッケージ2の平面図であり、(b)はインクパッケージ2の正面図であり、(c)はインクパッケージ2の断面側面図である。図3は、インクパッケージ2と収納ケース3とを示す斜視図である。図4はインクパッケージ2を収納した収納ケース3と包袋4とを示す斜視図である。
【0016】
インクパッケージの包装体1は、インクパッケージ2の脱気度を保持、促進するためのものである。インクパッケージの包装体1は、脱気処理をした脱気インクを密封するインクパッケージ2と、そのインクパッケージ2を収納する収納ケース3と、インクパッケージ2を収納した収納ケース3を内包する包袋4とを備えており、収納ケース3を内包した状態で包袋4の内部を減圧して構成されている。
【0017】
インクパッケージ2は、複数枚のフィルムシートを積層して構成される積層構造を有する2枚のシート材料を、一部に開口部を残すように周縁部同士を溶着して袋状に形成され、その内部に脱気処理された脱気インクを充填する袋体5と、その袋体5の開口部内に挟まれた状態で、開口部を形成する袋体5の周縁部の内面に、その外周面を溶着され、袋体5の内部と外部とを連通させる連通路6を有するスパウト7と、そのスパウト7の連通路6に圧入され、袋体5の内部と外部とを遮断するキャップ8とによって構成されている。
【0018】
袋体5を構成するシート材料は、例えば、アルミニウム合金層を中心に、一側に接着層及びナイロン層(外面層)を、他側に接着層,ポリエチレンテレフタラート層、接着層及びポリプロピレン層(内面層)を順に積層して構成されている。このような積層構造を有するシート材料を用いることによって耐久性に優れ、特に、内面層にポリプロピレン層を配置することによって、袋体5の内部に充填されるインクに対する耐インク性に優れ、また、中間層としてアルミニウム合金層を配置することによって、新たな空気が袋体5を透過するのを遮断して、インクの脱気度が劣化するのを防止することができる。
【0019】
スパウト7は、筒状体に形成されており、耐インク性に優れるポリプロピレンを主成分とする材料によって構成されている。即ち、袋体5の内面層を構成するポリプロピレン層と、その主成分を同一とするため、スパウト7の外周面を袋体5の内面に強固に溶着することができる。よって、袋体5とスパウト7との溶着部分から新たな空気が袋体5を透過するのを遮断して、インクの脱気度が劣化するのを防止することができる。
【0020】
キャップ8は、弾性復元力を有するゴム状の材料で構成され、例えばブチルゴムまたはそれに近い材料で構成されている。キャップ8は、インク抽出針17を突き刺したり抜いたりしてもインクを濡らさないように復元力を有する。
【0021】
収納ケース3は略箱状に形成され、インクパッケージ2の幅広面を支持する底壁9と、その底壁9の縁部から立設された側壁10と、その側壁10の縁部によって形成される開口部11とによって構成されている。
【0022】
底壁9は、インクパッケージ2の幅広面と略同様な大きさに構成されている。側壁10の一部には、インクパッケージ2に溶着されたスパウト7を固定するための切り欠き部10aが備えられている。スパウト7は、この切り欠き部10aに嵌り込み、スパウト7の連通路6に圧入されたキャップ8は、収納ケース3の側壁10から露出している状態になる。
【0023】
また、側壁10の高さはインクパッケージ2の幅広面を底壁9に載置した状態の高さ以上に構成されている。よって、側壁10の縁部によって形成される開口部11から、インクパッケージ2を、その幅広面が底壁9に載置するように収納ケース3の内部に収納した場合には、インクパッケージ2と収納ケース3との間には空間が形成される。
【0024】
上述したように構成されたインクパッケージ2と収納ケース3とは、収納ケース3の内部にインクパッケージ2を収納した状態で、収納ケース3よりひとまわり大きい袋状に形成された包袋の内部に収納される。この状態で包袋4の内部を真空ポンプ等によって減圧(インクを脱気処理する場合より低い圧力)して、インクパッケージの包装体1を構成する。包袋4は、袋体5と同様の積層シート材料を用いて構成され、内部の空気を遮断する。
【0025】
図5は、図1のインクパッケージの包装体1におけるIV−IV断面図である。上述のように構成されたインクパッケージの包袋1によれば、収納ケース3を内包した状態で包袋4の内部を真空ポンプ等によって減圧すると、側壁10の縁部によって形成されている開口部11を介して、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に形成された空間に存在する空気が引き抜かれる。よって、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に容易に減圧空間が形成され、この減圧空間によって、インクパッケージ2の脱気度を維持、促進することができる。
【0026】
また、インクカートリッジ2と収納ケース3との間に形成された空間が減圧されるにつれて、底壁9とは反対側のインクパッケージ2の幅広面(以降、インクパッケージ2の上面という)は、対峙する包袋4の内面によって押圧される。この圧力によってインクパッケージ2は圧縮されるので、インクパッケージ2の脱気を一層、促進することができる。
【0027】
更に、側壁10の高さは、インクパッケージ2の幅広面を底壁9に載置した状態の高さ以上に構成されているので、包袋4の内部が減圧されるにつれて、包袋4の内面が、インクパッケージ2の上面を押圧する圧力は大きくなるが、その圧力は側壁10の縁部によって吸収される。よって、包袋4によってインクパッケージ2が押し潰されるのを防止することができる。
【0028】
インクパッケージ2は、その広幅面を収納ケース3の底壁9に当てて両面接着テープ等で固定しておくことで、包袋4から収納ケース3を出してそのままの状態で、インクジェット記録装置本体に着脱することができる。つまり、柔軟なインクパッケージでなく収納ケースを手に持って取り扱うことができる。図6はインクパッケージ2を収納した収納ケース3をインクジェット記録装置本体に装着する状態を示す。収納ケース3をインクジェット記録装置本体に設けたガイド面(図示せず)に沿わせて挿入し、キャップ8にインク抽出針17を突き刺し、チューブ等の供給路16を経てインクジェットヘッドにインクを供給する。
【0029】
図7は、他の実施の形態を示すもので、インクパッケージ2の幅広面の両側から一対のケース体12,12を重ね合わせて箱状の収納ケースを構成している。包袋4は、一対のケース体12,12を収納できる大きさとする。この場合、ケース体12,12内が密閉されないように適宜開口12aまたは隙間を予め形成しておくことで、包袋4内を減圧したとき、ケース体12,12内を減圧空間とする。
【0030】
以上説明したように、インクパッケージの包装体1内の収納ケース23によってインクパッケージ2と包袋4との間に減圧空間を形成することで、によって、インクパッケージ2を輸送する場合や、未使用のまま長期間保存する場合にも、インクパッケージ2の脱気度を維持、促進できる。また、インク中に発生する気泡によって印字不良を引き起こすことを抑制でき、好適な印字状態を維持することができる。
【0031】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0032】
例えば、本実施例のインクパッケージの包装体1では、収納ケース3をカートリッジケース12の一方のケース体で代用する場合について説明した。しかしながら、収納ケース3に関しては側壁10に備えられた切り欠き部10aは、必ずしも必要な構成ではないため、収納ケース3は単なる箱状体であっても良い。また、収納ケース3に設けられる開口部11は、収納ケース3とインクパッケージ2との空間を容易に減圧でき、更に、包袋4の内面によってインクパッケージ2を押圧できる程度の開口であれば、側壁10の縁部によって形成される開口部11に限定されるものではない。
【0033】
【発明の効果】
請求項1に記載のインクパッケージの包装体によれば、柔軟性を有する袋体の内部にインクを密封するインクパッケージを内包した状態で包袋の内部を減圧した場合、インクパッケージと包装との間には、減圧空間形成部材によって、インクパッケージを脱気するための減圧空間が形成される。よって、インクパッケージの脱気度を保持、促進することができるという効果がある。
【0034】
請求項2に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項1記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、減圧空間は、連通口を介して減圧される収納容器の内部空間によって形成されるので、インクパッケージの周囲に容易に減圧空間を形成することができるという効果がある。
【0035】
請求項3に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項2に記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、連通口は側壁の縁部によって形成されているので、包袋の内部を減圧した場合、底壁に支持されるインクパッケージの幅広面の反対側の幅広面が、包袋の内側面によって押圧される。よって、インクパッケージは圧縮され、インクパッケージの脱気を促進させることができるという効果がある。
【0036】
請求項4に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項3に記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、包袋の内部を減圧した場合、底壁に載置されているインクパッケージの幅広面の反対側の幅広面を押圧しようとする包袋は、側壁の縁部によって係止される。よって、包袋の内面がインクパッケージを押圧する圧力が側壁の縁部によって吸収される。従って、包袋の内面によってインクパッケージが押し潰されるのを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるインクパッケージの包装体の斜視図である。
【図2】(a)はインクパッケージ2の平面図であり、(b)はインクパッケージ2の正面図であり、(c)はインクパッケージ2の断面側面図である。
【図3】インクパッケージと収納ケースとを示す斜視図である。
【図4】インクパッケージを収納した収納ケースと包袋とを示す斜視図である。
【図5】図1のインクパッケージの包装体1におけるV−V断面図である。
【図6】収納ケースとインク抽出針とを示す拡大図である。
【図7】インクパッケージとケース体とを示した斜視図である。
【符号の説明】
1 インクパッケージの包装体
2 インクパッケージ
3 収納ケース(収納容器)
4 包袋
5 袋体
6 連通路
7 スパウト
8 キャップ
9 底壁
10 側壁
11 開口部(連通口)
17 インク抽出針
Claims (4)
- 柔軟性を有する袋体の内部にインクを密封するインクパッケージと、そのインクパッケージを内包する包袋とを備え、前記インクパッケージを内包した状態で前記包袋の内部を減圧して構成されるインクパッケージの包装体において、
前記包袋に内包され、前記インクパッケージと前記包装との間に、前記インクパッケージを脱気するための減圧空間を形成する減圧空間形成部材を備えていることを特徴とするインクパッケージの包装体。 - 前記減圧空間形成部材は、前記インクパッケージを収納可能な収納容器であって、その収納容器には収納容器の内部空間と前記包袋とを連通させる連通口が形成されており、
前記減圧空間は、前記連通口を介して減圧される前記収納容器の内部空間によって形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクパッケージの包装体。 - 前記収納容器は、前記インクパッケージの幅広面を支持する底壁と、その底壁の縁部から立設された側壁と、その側壁の縁部によって形成される開口部とによって構成されており、
前記連通口は、前記開口部によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載のインクパッケージの包装体。 - 前記側壁の高さは、前記インクパッケージの幅広面を前記底壁に載置した状態の高さ以上に構成されていることを特徴とする請求項3に記載のインクパッケージの包装体。
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