JP2004154980A - インクパッケージの包装体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】包袋4の内部は、大気圧より減圧状態にされている。この減圧状態は、包袋4が収納ケース12の外面に付着する程度である。よって、減圧による収納ケース12の変形を防止できる。また、収納ケース12の内部には、補強部材23が配設されているので、包袋4の圧力は補強部材23により吸収され、確実に減圧による変形を防止できる。更に、包袋4の内部はヘリウムガスで充填されている。よって、減圧の程度が弱くても、ヘリウムガスはインクに対する溶解度が空気よりも小さいので、インクに溶解するヘリウムの量は空気よりも減少し、インクの脱気度の劣化を抑制することができる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクパッケージの包装体に関し、特に、減圧によるインクパッケージの変形を防止することができると共に、インクの脱気度の劣化を抑制することができるインクパッケージの包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平11‐129489号公報に開示されているように、インクジェット記録装置に用いられるインクを密閉して構成されるインク袋が知られている。このインク袋の開口周縁には筒状部材が固着されており、その筒状部材内には、インク袋体の外部と内部との連通を遮断する弾性シール材が嵌挿されている。このインク袋は、筒状部材をカートリッジケースの側面から露出するように固定しつつ、カートリッジケースの内部に収納された状態でインクジェット記録装置に装着される。カートリッジケースが装着されると、インクジェット記録装置側のインク供給針によって、筒状部材に嵌挿されている弾性シール材が突き破られる。こうしてインク袋に密封されたインクは、インク供給針に連設するチューブを介して、インクを被記録媒体に吐出する記録ヘッドに供給される。
【0003】
ここで、このインクジェット記録装置に用いられるインクは、原材料を溶解する工程と濾過工程とによって製造されるが、製造したインクをそのままインク袋に充填して使用すると、インク中に溶存している窒素、酸素、炭酸ガス等の各種のガスが記録ヘッド内に浸入して気泡を発生させ、記録ヘッドからインク滴を吐出できなくり、印字不良を引き起こす。そのため、インク袋にインクを充填する前にインク中の溶存ガスを減らす脱気処理を行っている。この脱気処理の方法としては、インクを圧力容器中で減圧しながら攪拌する方法や、気体分離膜を用いた脱気装置により脱気する方法などが採用されている。
【0004】
しかし、脱気処理をした脱気インクをインク袋内に密封し、そのインク袋を輸送する場合や、未使用のまま長期間保存する場合には、その間に空気中の酸素等が再びインク中に溶解することになる。そこで、特公平3−61592号公報には、空気中の酸素等が再びインク中に溶解するのを防止するために、脱気インクを充填した袋体をインク容器内に収納し、更に、そのインク容器を真空チャンバー内にて、プラスチックまたはゴム容器あるいは缶状の金属容器等の密閉容器に収納して密閉することにより、インク容器を大気圧より低い減圧状態下で輸送、保存等する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11‐129489号公報(図1等)
【特許文献2】
特公平3−61592号公報(第4列第4行目〜7行目等、図1等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した通り、インクジェット記録装置に用いられるインクは、印字不良を防止するために、高い脱気度を維持しておく必要がある。一方、特公平3−61592号公報に記載された技術によっても、高いインクの脱気度を維持することはできるものの、例えば、キャリッジ上に複数個搭載される小型のインク容器の場合には、プラスチックで成形したとしても筐体を構成する各面が比較的小さいために、該インク容器を密閉容器に収納して減圧状態にしたとき、その減圧によって筐体がわずかに潰れるが、実用上支障がでるほどではない。しかし、インク容器の容量を大きくしたり、筐体を扁平形状にしたりすると、筐体を構成する面が大きくなって、減圧によって変形してしまい、記録装置本体への装着ができなくなったり、インク容器からインクが漏れるという問題点があった。
【0007】
本発明は、この問題を解消すべくなされたものであって、特に、減圧によるインクパッケージの変形を防止することができると共に、インクの脱気度の劣化を抑制することができるインクパッケージの包装体を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために請求項1記載のインクパッケージの包装体は、インクを密封するインクパッケージと、そのインクパッケージを内包する包袋とを備え、前記インクパッケージを内包した前記包袋の内部は、その包袋の内面が前記インクパッケージの外面に付着する程度に大気圧より減圧状態にされ、且つ、インクに対する溶解度が空気よりも小さい不活性ガスで充填されている。
【0009】
この請求項1記載のインクパッケージの包装体によれば、インクを密封するインクパッケージを内包した包袋の内部は、その包袋の内面がインクパッケージの外面に付着する程度に大気圧より減圧状態にされ、且つ、インクに対する溶解度が空気よりも小さい不活性ガスで充填されている。よって、減圧程度が弱くインクパッケージの変形を抑えながらインクの脱気度を長期にわたって維持することができる。
【0010】
請求項2に記載のインクパッケージの包装体は、請求項1に記載のインクパッケージの包装体において、前記不活性ガスはヘリウムガスで構成されている。
【0011】
請求項3に記載のインクパッケージの包装体は、請求項1又は2に記載のインクパッケージの包装体において、前記包袋の内部は、大気圧より略−20kpaから略−60kpaの範囲で減圧状態にされている。
【0012】
請求項4に記載のインクパッケージの包装体は、請求項1から3のいずれかに記載のインクパッケージの包装体において、前記インクパッケージは、柔軟性を有し、その内部にインクを密封する袋体と、その袋体を収納する収納空間を有する収納ケースとによって構成されており、前記減圧状態において、前記収納空間が押し潰されるのを防止するために、前記収納ケースの内面と前記袋体の外面との間に介在する補強部材を備えている。
【0013】
この請求項4に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項1から3のいずれかに記載のインクパッケージの包装体と同様に作用する上、インクは柔軟性を有する袋体の内部に密閉される。袋体は収納ケースの収納空間に収納される。この袋体を収納した収納ケースが包袋の内部に内包される。ここで、収納ケースの内面と袋体の外面との間には、補強部材が介在しているため、包袋の内部を大気圧より低い減圧状態にした場合、収納ケースに対する包袋の内面の圧力は補強部材によって吸収される。
【0014】
請求項5に記載のインクパッケージの包装体は、請求項4に記載のインクパッケージの包装体において、前記収納空間は、前記袋体の形状に沿って形成されている。
【0015】
請求項6に記載のインクパッケージの包装体は、請求項4又は5に記載のインクパッケージの包装体において、前記補強部材は、前記袋体の一の幅広面側を包み込むための第1凹部を有し井桁状に構成された第1井桁部材と、前記袋体の他の幅広面側を包み込むための第2凹部を有し井桁状に構成された第2井桁部材とを重合させて構成されている。
【0016】
この請求項6記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項4又は5に記載のインクパッケージの包装体と同様に作用する上、第1井桁部材と第2井桁部材とは、第1凹部と第2凹部とが対向するように重合され、袋体は第1凹部と第2凹部とによって形成される空間に収納される。包袋の内部を大気圧より低い減圧状態にすると、包袋の内面によって収納ケースの外面は押圧されるものの、その圧力は、収納ケースの第1井桁部材と第2井桁部材とによって吸収される。
【0017】
請求項7に記載のインクパッケージの包装体は、請求項6に記載のインクパッケージの包装体において、前記袋体の周縁部を、前記第1井桁部材と前記第2井桁部材とによって挟み込むために、前記第1凹部囲む周縁部と前記第2凹部を囲む周縁部とは、前記袋体の周縁部と略同様な大きさに構成されている。
【0018】
この請求項7記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項6に記載のインクパッケージの包装体と同様に作用する上、袋体の周縁部は、第1凹部を囲む周縁部と第2凹部を囲む周縁部と略同様な大きさに構成されているので、袋体は、その周縁部を第1凹部の周縁部と第2凹部の周縁部とによって挟み込まれた状態で、第1凹部と第2凹部とによって形成される空間に収納される。
【0019】
請求項8に記載のインクパッケージの包装体は、請求項4から7のいずれかにに記載のインクパッケージの包装体において、前記袋体は、その周縁部の内面に外周面を固着され、インクパッケージの内部と外部とを連通する連通路を有するスパウトと、そのスパウトの連通路に圧入されるキャップとを備えており、前記収納ケースは前記スパウトを固定する固定部を有し、前記収納空間は、前記固定部とは反対側の端部から、前記固定部に向かって広がるように断面視テーパー状に構成されている。
【0020】
この請求項8記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項4から7のいずれかに記載のインクパッケージの包装体と同様に作用する上、袋体を収納する収納空間は、収納ケースのスパウトを固定する固定部とは反対側の端部から、固定部に向かって広がるように断面視テーパー状に構成されている。よって、袋体に密封されるインクは、スパウトが固着されている側に集中するように密封される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例であるインクパッケージの包装体1の斜視図であり、図2は、図1のII−II断面線におけるインクパッケージの包装体1の断面図である。図3は、インクパッケージ2と補強部材23とを示す分解斜視図である。図4(a)は、インクパッケージの袋体5の正面図であり、(b)は、(a)のIV−IV断面線における袋体5の断面図である。
【0022】
インクパッケージの包装体1は、上述したように脱気処理した脱気インクを密封する扁平形状のインクパッケージ2と、そのインクパッケージ2を内包する包袋4とによって構成され、その包袋4の内部は、その包袋4の内面がインクパッケージ2の外面に付着する程度に大気圧より減圧状態にされ、且つ、インクに対する溶解度が空気よりも小さい不活性ガスで充填されている。
【0023】
インクパッケージ2は、インクを密封する袋体5と、収納ケース12とからなり、袋体5は、図4に示すように、複数枚のフィルムシートを積層して構成される積層構造を有する2枚のシート材料を、一部に開口部を残すように周縁部同士を溶着して袋状に形成され、その内部に脱気インクを充填する。その袋体5の開口部5aには、袋体5の内部と外部とを連通させる連通路6を有するスパウト7が、その外周面を開口部5aの内面に溶着して固着され、また、スパウト7の連通路6には、袋体5の内部と外部とを遮断するキャップ8が圧入されている。
【0024】
袋体5を構成するシート材料は、例えば、アルミニウム合金層を中心に、一側に接着層及びナイロン層(外面層)を、他側に接着層,ポリエチレンテレフタラート層、接着層及びポリプロピレン層(内面層)を順に積層して構成されている。このような積層構造を有するシート材料を用いることによって耐久性に優れ、特に、内面層にポリプロピレン層を配置することによって、袋体5の内部に充填されるインクに対する耐インク性に優れ、また、中間層としてアルミニウム合金層を配置することによって、新たなガスが袋体5を透過するのを遮断して、インクの脱気度が劣化するのを防止することができる。
【0025】
袋体5の開口部5aに溶着されるスパウト7は筒状に形成され、耐インク性に優れるポリプロピレンを主成分とする材料によって構成されている。即ち、袋体5の内面層を構成するポリプロピレン層と、その主成分を同一とするため、スパウト7の外周面に形成した複数のリブ7aを袋体5の内面に強固に溶着することができる。よって、新たなガスが袋体5とスパウト7との溶着部から侵入するのを抑制して、インクの脱気度が劣化するのを防止することができる。スパウト7を貫通する連通路6の両端からそれぞれ所定距離をおいた中間部には、連通路6の両端部の連通路18、19よりも内径を大きく形成され、キャップ8を収納する収納部21が形成されている。
【0026】
キャップ8は、例えばブチルゴムまたはそれに近い材料で構成され、後述するインク抽出針17の抜き刺しによってもインクを密閉する弾性復元力を有している。このキャップ8は、連通路6に形成された収納部21に圧入される。よって、このキャップ8にインク抽出針17を突き刺した場合であっても、連通路6の一端である連通路18によってキャップ8が、袋体5の内側に移動するのを防止できる。逆に、キャップ8からインク抽出針17を引き抜く場合には、連通路6の一端である連通路19によってキャップ8が、袋体5の外側に移動するのを防止できる。
【0027】
袋体5を収納する収納ケース12は、図3に示すように、扁平状に形成された一対のケース体を、袋体5の両幅広面側から重ね合わせ、その内部に袋体5と補強部材23とを収納できるように構成されている。一対のケース体は互いに略同様に構成されており、袋体5の幅広面側を支持する底壁9と、その底壁9の縁部から立設された側壁10と、その側壁10の縁部によって形成される開口部11とによって構成されている。
【0028】
底壁9は、補強部材23の周縁部の大きさと略同様な大きさに構成されている。側壁10の一部には、袋体5に溶着されたスパウト7を固定するための切り欠き部10aが備えられている。スパウト7は、この切り欠き部10aに嵌り込み、袋体5は収納ケースに固定される。スパウト7の連通路6に圧入されたキャップ8は、収納ケース12の側壁10から露出している状態になる。
【0029】
収納ケース12の内部であって、袋体5の外面と収納ケース12の内面との間には、補強部材23が介在している。補強部材23は、収納ケース12を内包した包袋4の内部を、大気圧より低い減圧状態にした場合に、収納ケース12の外面に包袋4を介して作用する大気圧を吸収し、収納ケースが変形するのを防止するためのものである。
【0030】
この補強部材23は、袋体5の一方の幅広面側を包み込む凹部を有する第1井桁部材23a(図3における下方)と、他方の幅広面側を包み込む凹部を有する第2井桁部材23b(図3における上方)とによって構成されている。第1井桁部材23aと第2井桁部材23bとは同様に構成されているため、第2井桁部材23bについての詳細な説明は省略する。
【0031】
第1井桁部材23aは、袋体5の一方の幅広面側を包み込むための凹部を形成する支持板24と、その支持体24の収納ケース12の内面に対峙する面に形成された井桁体25とによって構成されている。
【0032】
支持板24は、薄板形状をなし、インクを充填した状態の袋体5の一方の広幅面に対応した凹面形状に湾曲された凹部24cを有し、その両側に平坦な周辺部24a、およびスパウト7側の端部に立ち上がる壁部24bを備えている。凹部24cは、後述するように2つの井桁部材を対向させたとき、図2に示すようにスパウト7が位置する側へ拡大する空間を形成するように、スパウト7が位置する側が深く、他端に向けて漸次浅くなるように湾曲形成されている。支持板24は、袋体5とほぼ同じかそれよりもやや大きい平面形に形成されている。
【0033】
井桁体25は、袋体5と反対側の支持板4の面から直角に立ち上がった板状の複数枚の板状部材を縦方向と横方向とに井桁状に組み合わせて構成されている。袋体5と反対側の井桁部材25の面は収納ケース12(底壁9)の内面と略平行になるように形成されている。支持板4と井桁体25は樹脂材料により一体に成形することができるが、井桁体25を紙製の材料(段ボール)で構成しても良い。尚、本補強部材23にかえて、井桁体25を一体に収納ケース12の内面に形成しても良い。
【0034】
上述のように構成された第1井桁部材23aと第2井桁部材23bとは、袋体5を挟むように重合される。支持板24は、袋体5の周縁部の大きさと同様に構成されているので、袋体5の周縁部は、両部材23a,23bの周縁部24aに挟まれた状態となる。また、スパウト7の連通孔6を有する筒状部分は、両部材23a,23bの壁板24bによって囲まれている状態になる。一方、袋体5の外面と収納ケース12の内面との間には、第1井桁部材23aと第2井桁部材23bの井桁体25が介在する。
【0035】
この収納ケース12を内包する包袋4は、袋体5と同様の空気を透過しない積層構造のシート材料を2枚重ね、その周縁部どうしを熱溶着することによって構成されている。よって、新たな空気が包袋4を透過して包袋4の内部に侵入し、更に、袋体5を透過して、インクに溶解し、インクの脱気度を劣化させるのを抑制することができる。
【0036】
インクパッケージ2を内包する包袋4の内部は、大気圧より略−20kpaから略−60kpaの範囲で減圧状態にされ、好ましくは大気圧より−40kpaの状態にされ、且つ、ヘリウムガスが充填されている。収納ケース12内も、一対のケース体の接合部の隙間を通して減圧され且つヘリウムガスが充填された状態にある。この範囲の程度の減圧状態にすれば、包袋4は収納ケースの外面に付着する程度となり、減圧による収納ケース12の変形を防止することができる。
【0037】
また、本実施例においては、収納ケース12の底壁9が他の面に比べて大きく形成されているため、特に、その底壁9の中央部が包袋4を介して作用する大気圧によって変形する可能性があるものの、収納ケース12の内部には、底壁9の内面と対峙するように、補強部材23が配設されているので、包袋4を介して作用する大気圧は、補強部材23により吸収される。よって、面積の大きい収納ケース12の底壁9であっても、減圧による変形を防止することができる。
【0038】
また、袋体5は、補強部材23に包み込まれているので、上述のように補強部材23に大気圧が作用しているが、その圧力は、袋体5には影響を及ぼさない。よって、袋体5が破裂し、内部のインクが漏れ出すという弊害を防止することができる。
【0039】
一方、包袋4の内部を大気圧より−40kpaの状態にした程度では、長期にわたってインクの脱気度を維持することは困難である。しかし、本実施例においては、包袋4の内部の残留空気はヘリウムガスに置換されている。よって、収納ケース12内にも、該収納ケース12を構成する一対のケース体間の隙間からそのヘリウムガスが充満することになる。従って、たとえヘリウムガスが袋体5を透過しても、ヘリウムガスはインクに対する溶解度が空気よりも小さいので、袋体5に密閉されたインクに溶解するヘリウムの量は空気よりも減少し、インクの脱気度の劣化を抑制することができる。
【0040】
また、例えば、包袋4の内部にヘリウムガスを大気圧以上に充填させることによってインクの脱気度の劣化を抑制することも考えられる。しかし、かかる場合には、包袋4が膨張し、インクパッケージの包装体1が嵩張り、輸送、保存等に不都合であるという問題がある。また、ヘリウムガスを大気圧と略同等に充填した場合には、インクパッケージの包袋体1の取り扱いにより、包袋4に穴が開き、その穴からヘリウムガスが漏れても、ヘリウムガスは大気圧と略同等に充填されているため、ヘリウムガスの漏れ、すなわち包袋4の内部に空気が侵入し、インクの脱気度が劣化してしまっていることを発見しにくいという問題がある。
【0041】
しかし、本実施例においては、ヘリウムガスは大気圧より減圧された状態下(−40kpa)で充填されているため、インクパッケージの包装体1は嵩張らず、コンパクトであり、また、たとえ、インクパッケージの包袋体1の取り扱いにより、包袋4に穴が開いてしまった場合には、その穴から空気が侵入し、包袋4はインクパッケージ2との密着から離れるので、包袋4に穴が開いてしまったことを容易に発見することができ、不良品をいち早く分離することができる。
【0042】
尚、包袋4の内部に充填するガスとしては、ヘリウムガスに限定されるものでなく、インクに対する溶解度が空気よりも小さい不活性ガスであれば、ネオンガス等の希ガスを用いることもできる。
【0043】
次に、図5を参照して、上述したインクパッケージの包装体1の製造方法を説明する。図5は、インクパッケージの包装体1の製造方法を説明するための図である。
【0044】
まず、収納ケース12に収納した袋体5の内部にスパウト7の連通路6を介して、インクが充填される。この際、インクはスパウト7の連通路6まで達しない位置まで袋体5の内部に充填される。よって、スパウト7の連通路6にインクが付着して、キャップ8を圧入した際に、連通路6に付着したインクによってキャップ8と連通路6との密着性が劣化するのを防止することができる。一方、インクがスパウト7の連通路6まで達しない位置までしか袋体5の内部に充填されないため、袋体5の内部には空間22が形成されることになる。
【0045】
次に、上述のようにインクが充填されたインクパッケージ2は、キャップ8がスパウト7の連通路6に圧入される前に、包袋4の内部に収納される。そして、インクパッケージ2を収納した包袋4は、封止されないまま真空チャンバー21の内に入れられ、袋体5内部に形成された空間22と、包袋4の内部とを減圧した状態にする。
【0046】
このように、袋体5内部に形成された空間22と、包袋4の内部とを減圧した状態にした後に、真空チャンバー21内を大気圧より−40kpa程度の圧力になるまでヘリウムガスで充填して、袋体5内部に形成された空間22と、包袋4の内部とを、ヘリウムガスで充填する。その後、真空チャンバー21内において、キャップ8をスパウト7の連通路6に圧入すると共に、包袋4の開口部を熱溶着によりを封止して、インクパッケージの包装体1を製造する。
【0047】
こうして、製造されたインクパッケージの包装体1によれば、上述した効果に加え、更に、スパウト7の連通路6に達しない位置までしかインクを充填しない場合であっても、袋体5の内部の空間は、ヘリウムガスで充填されているので、袋体5に密封されているインクに溶解するヘリウムガスの量は空気よりも減少し、一層、インクの脱気度の劣化を抑制することができる。
【0048】
また、上記の製造方法においては、袋体5の内部に形成された空間22を、包袋4の内部と同様にヘリウムガスで充填する場合について説明したが、真空チャンバー21内にヘリウムガスを充填する前に、スパウト7の連通路6にキャップ8を圧入すれば、包袋4の内部はヘリウムガスで充填され、袋体5の内部に形成された空間22は、大気圧より低い真空になる。このようにインクパッケージの包装体1を構成しても、袋体5の内部に形成された空間22は、大気圧より低い真空になるので、袋体5の内部に残留する空気によってインクの脱気度が劣化するのを防止することができる。
【0049】
上述のように構成されたインクパッケージの包装体1をインクジェット記録装置に装着する場合には、包袋4を開封してインクパッケージ2を取り出し、図5に示すように、収納ケース12をインクジェット記録装置に設けたガイド面(図示せず)に沿わせて挿入し、キャップ8にインク抽出針17を突き刺し、チューブ等の供給路16を経てインクジェットヘッドにインクを供給する。
【0050】
この場合、収納ケース12に収納されている袋体5が包み込まれる空間は、図2に示すように、収納ケース12の切り欠き部10aに向かって広がるように断面視テーパー状に構成されている。よって、袋体5に密封されるインクは、スパウト7が固着されている側に集中した状態で、収納ケース12の内部に収納される。従って、収納ケース12からインクを抽出する際には、袋体5から円滑にインクを抽出することができる。
【0051】
以上説明したように、本インクパッケージの包装体1によれば、減圧状態でインクパッケージ2を輸送する場合や、未使用のまま長期間保存する場合、減圧状態は、包袋4の内面がインクパッケージの外面に付着する程度に調節されるので、減圧によりインクパッケージ2が変形し、インクパッケージ2が記録装置本体へ装着不能になるのを防止することができる。また、たとえ、そのインクパッケージ2が大きな面を有していても、収納ケース12の内部には、補強部材23が配置されているので、包袋4を介して作用する大気圧は、その補強部材23に吸収される。よって、確実にインクパッケージ2の変形を防止することができる。更に、包袋4の内部はヘリウムガスが充填されている。よって、上記のように減圧程度が弱くても、ヘリウムガスは空気よりもインクに対する溶解度が小さいため、インクの脱気度の劣化が抑制される。従って、インク中に発生する気泡によって印字不良を引き起こすことを抑制でき、好適な印字状態を維持することができる。
【0052】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0053】
例えば、上記実施例では、インクパッケージ2を、インクを収納する袋体5とそれを内包する収納ケース12とで構成したが、収納ケース12内に直接インクを収納し、その収納ケースを補強部材23で包み込むようにしても良いし、収納ケース12を排除して袋体5を包袋4に直接収納し、その袋体5を補強部材23で包み込むようにしても良い。
【0054】
【発明の効果】
請求項1に記載のインクパッケージの包装体によれば、インクを密封するインクパッケージを内包した包袋の内部は、その包袋の内面がインクパッケージの外面に付着する程度に大気圧より減圧状態にされ、且つ、インクに対する溶解度が空気よりも小さい不活性ガスで充填されている。よって、減圧状態によるインクパッケージの変形が抑制され、インクパッケージが記録装置本体へ装着不能になったり、インクパッケージからのインクが漏れ出すのを防止することができると共に、インクに溶解するガス量は空気よりも減少されるので、インクの脱気度の劣化を抑制することができるという効果がある。
【0055】
また、ヘリウムガスは減圧状態下で充填されているので、例えば、ヘリウムガスを大気圧以上の圧力まで充填することによって包装の内部が膨張する場合に比べて、インクパッケージの包装体をコンパクトにすることができるという効果がある。
【0056】
請求項2に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項1記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、不活性ガスはヘリウムで構成されているので、材料コストを削減でき、製造コストの増加を抑制することができるという効果がある。
【0057】
請求項3に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項1または2に記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、包袋の内部は、大気圧より略−20kpaから略−60kpaの範囲で減圧状態にされている。かかる範囲の程度の減圧状態であれば、減圧によるインクパッケージの変形を抑制することができるという効果がある。
【0058】
請求項4に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項1から3のいずれかに記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、収納ケースの内面と袋体の外面との間には、補強部材が介在している。よって、減圧状態にした場合の収納ケースに対する包袋の内面の圧力を補強部材により吸収することができる。従って、大きな面を有するインクパッケージであっても、確実に減圧によるインクパッケージの変形を抑制することができるという効果がある。
【0059】
請求項5に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項4に記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、収納空間は袋体の形状に沿って形成されているので、収納ケースの強度を向上させることができるという効果がある。
【0060】
請求項6に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項4又は5に記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、袋体の外面と収納ケースの内面との間には、補強部材としての井桁状に構成された第1井桁部材と第2井桁部材とが介在している。よって、収納ケースと袋体との間を補強部材で埋め尽くす場合に比べて、補強部材を軽量に構成することができるという効果がある。
【0061】
請求項7に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項6に記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、袋体の周縁部は、第1凹部を囲む周縁部と第2凹部を囲む周縁部と略同様な大きさに構成されているので、袋体は、その周縁部を第1凹部の周縁部と第2凹部の周縁部とによって挟み込むれた状態で、第1凹部と第2凹部とによって形成される空間に収納される。よって、袋体の周縁部のために両凹部を大きくする必要がなく袋体を包み込む空間を小さくでき、ひいては、インクパッケージの大型化を抑制することができるという効果がある。
【0062】
請求項8に記載のインクパッケージの包装体によれば、請求項4から7のいずれかに記載のインクパッケージの包装体の奏する効果に加え、袋体を収納する収納空間は、収納ケースのスパウトを固定する固定部とは反対側の端部から、固定部に向かって広がるように断面視テーパー状に構成されている。よって、袋体に密封されるインクは、スパウトが固着されている側に集中した状態で密封されている。従って、インクパッケージからインクを円滑に抽出させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるインクパッケージの包装体を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II断面線におけるインクパッケージの包装体の断面図である。
【図3】インクパッケージの分解斜視図である。
【図4】(a)は袋体の正面図であり、(b)は(a)のIV−IV断面線における袋体の断面図である。
【図5】インクパッケージの包装体の製造方法を説明するための図である。
【図6】収納ケースとインク抽出針とを示す拡大図である。
【符号の説明】
1 インクパッケージの包装体
2 インクパッケージ
4 包袋
5 袋体
6 連通路
7 スパウト
8 キャップ
12 収納ケース
17 インク抽出針(インク抽出部材)
23 補強部材
23a 第1井桁部材
23b 第2井桁部材
Claims (8)
- インクを密封するインクパッケージと、そのインクパッケージを内包する包袋とを備えたインクパッケージの包装体において、
前記インクパッケージを内包した前記包袋の内部は、その包袋の内面が前記インクパッケージの外面に付着する程度に大気圧より減圧状態にされ、且つ、インクに対する溶解度が空気よりも小さい不活性ガスで充填されていることを特徴とするインクパッケージの包装体。 - 前記不活性ガスはヘリウムガスで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクパッケージの包装体。
- 前記包袋の内部は、大気圧より略−20kpaから略−60kpaの範囲で減圧状態にされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクパッケージの包装体。
- 前記インクパッケージは、柔軟性を有し、その内部にインクを密封する袋体と、その袋体を収納する収納空間を有する収納ケースとによって構成されており、
前記減圧状態において、前記収納空間が押し潰されるのを防止するために、前記収納ケースの内面と前記袋体の外面との間に介在する補強部材を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクパッケージの包装体。 - 前記収納空間は、前記袋体の形状に沿って形成されていることを特徴とする請求項4に記載のインクパッケージの包装体。
- 前記補強部材は、前記袋体の一の幅広面側を包み込むための第1凹部を有し井桁状に構成された第1井桁部材と、前記袋体の他の幅広面側を包み込むための第2凹部を有し井桁状に構成された第2井桁部材とを重合させて構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のインクパッケージの包装体。
- 前記袋体の周縁部を、前記第1井桁部材と前記第2井桁部材とによって挟み込むために、前記第1凹部を囲む周縁部と前記第2凹部を囲む周縁部とは、前記袋体の周縁部と略同様な大きさに構成されていることを特徴とする請求項6に記載のインクパッケージの包装体。
- 前記袋体は、その周縁部の内面に外周面を固着され、インクパッケージの内部と外部とを連通する連通路を有するスパウトと、そのスパウトの連通路に圧入されるキャップとを備えており、
前記収納ケースは前記スパウトを固定する固定部を有し、
前記収納空間は、前記固定部とは反対側の端部から、前記固定部に向かって広がるように断面視テーパー状に構成されていることを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載のインクパッケージの包装体。
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