JP2004109716A - トナー - Google Patents
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Abstract
【課題】異なる環境下にあっても、印字濃度が高く、カブリの発生がなく、感光体上のトナーを確実に転写材に転写することのできるトナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂、着色剤及び粉体比抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子を含有するトナーであって、体積平均粒径が3〜10μm、フロー式粒子像分析で測定される平均円形度が0.94〜0.995であるトナー。
【選択図】 なし
【解決手段】結着樹脂、着色剤及び粉体比抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子を含有するトナーであって、体積平均粒径が3〜10μm、フロー式粒子像分析で測定される平均円形度が0.94〜0.995であるトナー。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法等によって形成される静電潜像を現像するための重合トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置において、感光体上に形成される静電潜像は、先ず、トナーにより現像される。次いで、形成されたトナー像は、必要に応じて紙等の転写材上に転写された後、加熱、加圧または溶剤蒸気などの種々の方式により定着される。
トナーとしては、一般に、結着樹脂成分となる熱可塑性樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、離型剤等を溶融混合して均一に分散させて組成物とした後、該組成物を粉砕、分級することにより着色粒子を得る粉砕トナー、結着樹脂の原料である重合性単量体中に着色剤、帯電制御剤、離型剤等を溶解あるいは分散させ、重合開始剤を添加後、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させ、所定温度まで加温して重合を開始し、重合終了後に濾過、洗浄、脱水、乾燥することにより着色粒子を得る懸濁重合トナー、乳化重合により得た極性基を含有する結着樹脂の粒子と、着色剤並びに帯電制御剤を含有してなる粒子とを、結着樹脂のガラス転移温度より高い温度で攪拌して会合させた粒子を、濾過、洗浄、脱水、乾燥することにより着色粒子を得る乳化重合トナーが使用されている。
【0003】
このようなトナーは、画像形成装置に形成される静電潜像の帯電極性に対応して、正又は負に帯電するように構成する必要がある。トナーを帯電させるためには、トナーの主成分である結着樹脂の摩擦帯電性を利用することもできるが、これだけではトナーの帯電性は低いものとなってしまう。そこで、トナーに所望の摩擦帯電性を付与するために、帯電制御剤をトナー中に含有させたり、トナー表面に被覆又は固着させたりすることが行われている。このような帯電制御剤を含有するトナーは高い摩擦帯電性を示すが、帯電量を制御するために、帯電制御剤の種類や量、結着樹脂の種類及びトナーに含有させる他の材料の選択等を考慮する必要がある。従って、帯電量の微妙な制御が難しいという問題を有している。
【0004】
この問題を解決するために、疎水化処理したシリカや酸化チタン等の導電性無機微粒子を外添剤としてトナー粒子に添加することが一般に行われている。
特開平10−39534号公報には、アミノシランで疎水化処理したシリカ微粒子を外添したトナーが、特開平6−19186号公報には、シリコーンオイルまたはシリコンワニスで疎水化処理した酸化チタンを外添したトナーが、また、特開平10−83096号公報には、導電性酸化チタン及びシリカ微粒子を外添したトナーが開示されているが、高温高湿下での厳しい環境下に置かれた場合に帯電量の低下が起こり、カブリが発生し、印字濃度が低下することがある。
【0005】
一方、トナー粒子内部に導電性無機微粒子を含有させて、トナー特性を向上させようとする検討も行われている。
特開昭57−40259号公報には、トナー用結着樹脂に酸化スズ系の無機酸化物を含有させることにより、摩擦帯電特性が改良されたトナーが開示されている。また。特開平8−202078号公報には、硫酸バリウムなどの母体粒子表面に結晶性の低抵抗酸化スズ被膜が形成され、その酸化スズに含有されるアンチモンやリンが100ppm以下の微粉体を含有するトナーが開示されている。しかしながら、本発明者が検討したところ、これらのトナーは、粒子の表面に無機酸化物が露出しているために、異なる環境下で帯電量を制御できずに、低温低湿下では印字濃度が低下し、高温高湿下ではカブリが発生することが分かった。
特開平5−216267号公報には、シリカ微粒子を内添することにより、帯電能が高く、連続印刷を行っても印字ムラが起こることのないトナーが開示されている。しかしながら、本発明者が検討したところ、このトナーは、各環境下での帯電量を全体的に上昇させることはできるが、異なる環境下で帯電量を制御できずに、低温低湿下では印字濃度が低下し、高温高湿下ではカブリが発生することが分かった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭57−40259号公報
【特許文献2】
特開平8−202078号公報
【特許文献3】
特開平5−216267号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、異なる環境下にあっても、印字濃度が高く、カブリの発生がなく、感光体上のトナーを確実に転写材に転写することのできるトナーを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、この目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、特定の導電性無機微粒子を分散させた特定特性のトナーにおいて、上記目的が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、結着樹脂、着色剤及び粉体比抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子を含有するトナー粒子と外添剤とからなる、体積平均粒径(Dv)が3〜10μm、フロー式粒子像分析装置で測定される平均円形度が0.94〜0.995であるトナーが提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明のトナーは、結着樹脂と着色剤と電気抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子を含有するトナー粒子と外添剤からなる。
【0010】
結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の従来からトナーに広く用いられている樹脂を挙げることができる。
【0011】
着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、磁性粉、オイルブラック、チタンホワイトの他、あらゆる顔料および/または染料を用いることができる。黒色のカーボンブラックは、一次粒径が20〜40nmであるものが好適に用いられる。粒径がこの範囲にあることにより、カーボンブラックをトナー中に均一に分散でき、カブリも少なくなるので好ましい。
【0012】
フルカラートナーを得る場合、通常、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤およびシアン着色剤を使用する。
イエロー着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、83、90、93、97、120、138、155、180、181、185および186等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントレッド31、48、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、251、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物等が利用できる。具体的にはC.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、および60等が挙げられる。
こうした着色剤の量は、結着樹脂100重量部に対して、通常1〜10重量部である。
【0013】
この導電性無機微粒子は、粉体比抵抗が1×104Ω・cm以下であり、0.1〜1×104Ω・cmであると好ましく、1〜1×103Ω・cmであると更に好ましい。導電性無機微粒子の粉体比抵抗が1×104Ω・cmより大きくなると、低温低湿下で帯電量が大きくなり、印字濃度が低くなることがあり、逆に低いと高温高湿下で帯電量が小さくなり、カブリが発生することがある。
【0014】
本発明に用いる粉体比抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子としては、酸化スズ微粒子、酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子、アンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子(例えば、チタン工業社製「EC−100」及び「EC−300」、ジェムコ社製「W−P」等)、アンチモンがドープされた酸化インジウムで表面処理された酸化チタン微粒子(例えば、チタン工業社製「EC−500」)、アンチモンがドープされた酸化インジウムで表面処理された酸化アルミニウム微粒子(例えば、チタン工業社製「EC−700」)、アンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化ケイ素微粒子(例えば、チタン工業社製「ES−650」)、スズ−アンチモン複合酸化物微粒子(例えば、ジェムコ社製「T−1」)、インジウム−スズ複合酸化物微粒子(例えば、ジェムコ社製「ITO」)等が挙げられる。
【0015】
この導電性無機微粒子は、一次粒子の体積平均粒径が、通常0.01〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μmである。粒径がこの範囲にあると、異なる環境下であっても、トナーが適度な帯電特性を持つことができるので好ましい。
また、この導電性無機微粒子は、シランカップリング剤や高級脂肪酸金属塩等で疎水化処理したもの好ましい。疎水化処理することにより、高温高湿下でのカブリが小さくなる。特に、メタノール法で測定される疎水化度が、通常、5〜90、好ましくは10〜80、更に好ましくは20〜70である。
【0016】
本発明では、トナーの帯電量を制御する目的で、通常使用されている帯電制御剤をトナー粒子に含有させることが好ましい。帯電制御剤の中でも、結着樹脂との相溶性が高く、無色であり高速でのカラー連続印刷においても帯電性が安定したトナーを得ることができるので、帯電制御樹脂を含有させることが好ましい。帯電制御樹脂は、特開昭63−60458号公報、特開平3−175456号公報、特開平3−243954号公報、特開平11−15192号公報などの記載に準じて製造される4級アンモニウム(塩)基含有共重合体や、特開平1−217464号公報、特開平3−15858号公報などの記載に準じて製造されるスルホン酸(塩)基含有共重合体を用いる。
この共重合体に含有される4級アンモニウム(塩)基またはスルホン酸(塩)基を有する単量体単位は、共重合体中に0.5〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。含有量がこの範囲にあると、トナーの帯電量を制御し易く、カブリの発生を少なくすることができる。
【0017】
帯電制御樹脂の重量平均分子量は、通常2,000〜50,000、好ましくは4,000〜40,000、さらに好ましくは6,000〜30,000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、カラートナーの彩度や透明性を維持することができる。
帯電制御樹脂のガラス転移温度は、通常40〜80℃、好ましくは45〜75℃、さらに好ましくは45〜70℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、トナーの保存性と定着性をバランスよく向上させることができる。
帯電制御樹脂の量は、結着樹脂100重量部に対して、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0018】
本発明では、トナー粒子に更に離型剤を含有させることが好ましい。離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックスおよびその変性ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステートなどの多官能エステル化合物;などが挙げられる。
これらは1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
これらの離型剤のうち、合成ワックス、多官能エステル化合物が好ましい。これらのなかでも示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が30〜150℃、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは50〜80℃の範囲にある多官能エステル化合物が、トナーとして、定着時の定着−剥離性バランスの良いので好ましい。特に、分子量が1000以上であり、25℃でスチレン100重量部に対し5重量部以上溶解し、酸価が10mg/KOH以下であるものは定着温度低下に顕著な効果を示すので更に好ましい。吸熱ピーク温度は、ASTM D3418−82によって測定された値である。
上記離型剤の量は、結着樹脂100重量部に対して、通常0.5〜50重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0020】
トナー粒子は、粒子の内部(コア層)と外部(シェル層)に異なる二つの重合体を組み合わせて得られる、所謂コアシェル型(または、「カプセル型」ともいう。)の粒子とすることができる。コアシェル型粒子では、内部(コア層)の低軟化点物質をそれより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができるので好ましい。
通常、このコアシェル型粒子のコア層は前記結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂及び離型剤で構成され、シェル層は結着樹脂のみで構成される。
【0021】
コアシェル型粒子の場合、コア粒子の体積平均粒径は3〜10μm、好ましくは4〜9μm、更に好ましくは5〜8μmである。また、体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)の比である粒径分布(dv/dp)が1.0〜1.3であると好ましく、1.0〜1.2であると更に好ましい。
コアシェル型粒子のコア層とシェル層との重量比率は特に限定されないが、通常80/20〜99.9/0.1で使用される。
シェル層の割合を上記割合にすることにより、トナーの保存性と低温での定着性を兼備することができる。
【0022】
コアシェル型粒子のシェル層の平均厚みは、通常0.001〜1.0μm、好ましくは0.003〜0.5μm、より好ましくは0.005〜0.2μmであると考えられる。厚みが大きくなると定着性が低下し、小さくなると保存性が低下する恐れがある。なお、コアシェル型のトナー粒子を形成するコア粒子はすべての表面がシェル層で覆われている必要はなく、コア粒子の表面の一部がシェル層で覆われていればよい。
コアシェル型粒子のコア粒子径およびシェル層の厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作為に選択した粒子の大きさおよびシェル厚みを直接測ることにより得ることができ、電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子の粒径およびトナー製造時に用いたシェルを形成する単量体の量から算定することができる。
【0023】
本発明で用いる外添剤としては、通常、流動性や帯電性を向上させる目的で使用されている無機粒子や有機樹脂粒子が挙げられる。外添剤として添加するこれらの粒子は、トナー粒子よりも平均粒径が小さい。例えば、無機粒子としては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられ、有機樹脂粒子としては、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体で、シェルがメタクリル酸エステル重合体で形成されたコアシェル型粒子などが挙げられる。これらのうち、シリカ粒子や酸化チタン粒子が好適であり、この表面を疎水化処理した粒子が好ましく、疎水化処理されたシリカ粒子が特に好ましい。外添剤の量は、特に限定されないが、トナー100重量部に対して、通常、0.1〜6重量部である。
【0024】
本発明のトナーは、体積平均粒径(dv)が3〜10μm、好ましくは4〜9μm、更に好ましくは5〜8μmである。粒径が小さいと流動性が低下して、転写性が低下したり、カスレが発生したりし、また印字濃度が低下する。逆に大きいと、画像の解像度が低下する。
体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)の比である粒径分布(dv/dp)が1.0〜1.3であり、1.0〜1.2であると更に好ましい。粒径分布が大きいとカスレが発生したり、転写性、印字濃度及び解像度の低下が起こったりする。
トナーの体積平均粒径及び粒径分布は、例えば、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)などを用いて測定することができる。
【0025】
本発明のトナーは、フロー式粒子像分析装置で測定される平均円形度が0.94〜0.995であり、好ましくは0.95〜0.99である。平均円形度が0.94より小さくなると、転写性が低下することがある。
平均円形度とは、次式:円形度=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
により算出される値を、以下の式(1)により平均した値である。
【数1】
「粒子の投影面積に等しい円の周囲長」および「粒子投影像の周囲長」は、フロー式粒子像分析装置を用いて水分散系で測定を行って得られる値をもって示している。1に近い程、真円に近いことを示している。このように平均円形度は、「粒子の投影面積に等しい円の周囲長」および「粒子投影像の周囲長」から求められるため、当該値はトナー粒子の形状、すなわち粒子表面の凹凸状態を正確に反映する指標となる。フロー式粒子像分析装置としては、例えば、東亞医用電子株式会社製のFPIA−1000またはFPIA−2000等を例示することができる。
この平均円形度は、例えば、転相乳化法、溶解懸濁法及び重合法等を用いることにより容易に上記範囲とすることができる。
【0026】
本発明のトナーは、それをイオン交換水煮沸抽出法によって抽出して得た抽出液のpHが4.0〜7.5であると好ましく、4.5〜7.0であると更に好ましい。
pHが4.0に満たない場合やpHが7.5を超える場合、トナー帯電量の環境依存性が大きくなり、環境変化による画質の低下が生じるようになる。
また、本発明のトナーは、これをイオン交換水煮沸抽出法によって抽出して得た抽出液の導電率σ2が20μS/cm以下、好ましくは15μS/cm以下であり、イオン交換水の導電率σ1と抽出液の導電率σ2との差(σ2−σ1)が10μS/cm以下、好ましくは7μS/cm以下である。
抽出液の導電率σ2が20μS/cmより大きいと、高温高湿下でカブリ易くなることがある。また、このイオン交換水の導電率と抽出液の導電率との差(σ2−σ1)が10μS/cmより大きいと高温高湿下でカブリ易くなることがある。
ここでいうイオン交換水煮沸抽出法は、室温(約25℃)にて、トナー6gを、陽イオン交換処理と陰イオン交換処理によってpHが7となった導電率σ1のイオン交換水100mlに分散し、これを加熱して、煮沸させ、煮沸状態を10分間保持(10分間煮沸)することによってトナーからの水溶性成分を抽出し、引き続き、室温(約25℃)まで冷却した後、これに、別途前記イオン交換水を10分間煮沸して室温まで冷却したものを追加して煮沸前の容量に戻して、抽出液を得る方法である。また、この方法により得られた抽出液のpHは、例えば、pHメーター「D−14」(堀場製作所製)などを用いて測定することができる。また、イオン交換水及び上記抽出液の導電率は、例えば、導電率計「ES−12」(堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0027】
本発明では、トナー粒子は、乳化重合法や懸濁重合法などの重合法により製造することが好ましい。特に懸濁重合法により得られた実質的に球状のトナー粒子が好ましい。粒子を球状にすることにより、画像形成装置内でトナーが割れることによって、流動性が低下するようなことが無くなる。また、懸濁重合法では、親水性の高い導電性無機微粒子が、トナー粒子の表面には露出しないが、表面近傍に均一分散するため、少量の添加でも効率良く、トナーの帯電量を制御することができる。
【0028】
以下、懸濁重合法によるトナー粒子の製造方法について説明する。
結着樹脂原料である重合性単量体、着色剤、電気抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子、帯電制御剤及び離型剤をボールミルなどのメディア型分散機を用いて均一に混合して、重合性単量体組成物を得、分散安定剤を含有する水分散媒体中に該組成物を添加した後、攪拌して液滴を形成し、次いで重合開始剤を添加した後、高速回転する攪拌機を用いて、所望のトナー粒子の粒径となるように攪拌速度及び時間を調整して、更に小さな液滴を形成する。液滴を形成するときの温度は、水分散媒体の温度は、通常10〜40℃、好ましくは20〜30℃の範囲内に調整して行う。
次に、分散して液滴が分離や沈降しない程度の攪拌を維持しながら、所定の温度に昇温して重合を開始し、一定時間重合を継続した後、反応を停止してトナー粒子の水分散液を得る。その後、必要に応じて水分散液からトナー定着時に臭気の問題となる未反応の重合性単量体を除去し、更に重合時に使用した分散安定剤をトナー粒子から除去するために、洗浄と脱水を繰り返し行った後、乾燥することによって、トナー粒子を得る。重合性単量体組成物の重合温度は、通常、40〜100℃、好ましくは50〜90℃であり、重合時間は、1〜20時間、好ましくは2〜10時間である。また、トナー粒子の乾燥温度は、通常、30〜60℃、好ましくは40〜55℃である。
【0029】
本発明では、予め着色剤と帯電制御樹脂を混合して製造した帯電制御樹脂組成物を使用することが好ましい。その際、着色剤は、帯電制御樹脂100重量部に対して、通常10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部である。
帯電制御樹脂組成物の製造には、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤を用いることで、帯電制御樹脂が柔らかくなり、着色剤と混合し易くなる。有機溶剤を用いない場合は、樹脂が柔らかくなる程度の温度まで、加温して混合する必要がある。有機溶剤を用いる場合、特に有機溶剤の沸点が低いときには、加温すると有機溶剤が蒸発することがあるので、室温で、あるいは冷却して行なう方が好ましい。尚、トナー中に有機溶剤が残存していると臭気の問題が発生することがあるので、有機溶剤は、帯電制御樹脂組成物の製造過程又はトナーの製造過程のいずれかで除去されることが好ましい。
有機溶剤の量は、帯電制御樹脂100重量部に対して0〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部であり、この範囲にあると分散性と加工性のバランスが優れる。また、このとき、有機溶剤は、一度に全量を添加しても、あるいは混練状態を確認しながら、何回かに分割して添加しても良い。
【0030】
有機溶剤を用いる場合は、その溶解度係数(以下、SP値という。)が8〜15[cal/cm3]1/2であり、沸点が50〜150℃の範囲のものが好ましい。SP値が8[cal/cm3]1/2より小さいと極性が小さくなって帯電制御樹脂を溶解させることができないことがあり、また逆にSP値が15[cal/cm3]1/2より大きいと極性が高くなって帯電制御樹脂を溶解させることができないことがある。一方、沸点が50℃より低いと混練により発生する熱で有機溶剤が蒸発することがあり、逆に150℃より高いと混練後、有機溶剤を除去することが困難になることがある。
有機溶剤としては、具体的に(SP値/沸点)、メタノール(14.5/65℃)、エタノール(10.0/78.3℃)、プロパノール(11.9/97.2℃)、ジエチルケトン(8.8/102℃)、ジ−n−プロピルケトン(8.0/144℃)、ジ−i−プロピルケトン(8.0/124℃)、メチル−n−プロピルケトン(8.3/102℃)、メチル−i−プロピルケトン(8.5/95℃)、メチル−n−ブチルケトン(8.5/127℃)、メチル− iso−ブチルケトン(8.4/117℃)、トルエン(8.9/110℃)、テトラヒドロフラン(9.1/65℃)、メチルエチルケトン(9.3/80℃)、アセトン(9.9/56℃)、シクロヘキサノン(9.9/156℃)などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。この中でも帯電制御樹脂への溶解性や混練後の除去を考慮して、ジエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルエチルケトン/メタノール混合溶媒、トルエン/エタノール混合溶媒及びトルエン/プロパノール混合溶媒が好ましい。
【0031】
混合は、ロール、ニーダー、一軸押出機、二軸押出機、バンバリー、ブス・コニーダー等を用いて行うことができる。有機溶剤を用いる場合は、臭気や毒性の問題が有るので、有機溶剤が漏れない密閉系の混練機が好ましい。
また、混合機にはトルクメーターが設置されていることが、トルクのレベルで分散性を管理することができるので好ましい。
【0032】
結着樹脂を得るための重合性単量体として、モノビニル単量体、架橋性単量体、マクロモノマー等を挙げることができる。この重合性単量体が重合され、結着樹脂成分となる。
モノビニル単量体としては、具体的にはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;等が挙げられる。
モノビニル単量体は、単独で用いても、複数の単量体を組み合わせて用いても良い。これらモノビニル単量体のうち、芳香族ビニル単量体単独、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸の誘導体との併用などが好適に用いられる。
【0033】
モノビニル単量体と共に、架橋性単量体及び重合体を用いるとホットオフセットが有効に改善される。架橋性単量体は、2個以上のビニル基を有する単量体である。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のビニル基を2個有する化合物、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルやトリメチロールプロパントリアクリレート等のビニル基を3個以上有する化合物等を挙げることができる。架橋性重合体は、重合体中に2個以上のビニル基を有する重合体のことであり、具体的には、分子内に2個以上の水酸基を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びポリエチレングリコール等の重合体と、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸単量体を縮合反応することにより得られるエステルを挙げることができる。これらの架橋性単量体及び架橋性重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。使用量は、モノビニル単量体100重量部当たり、通常10重量部以下、好ましくは、0.1〜2重量部である。
【0034】
また、モノビニル単量体と共に、マクロモノマーを用いると、保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。数平均分子量が上記範囲にあると、マクロモノマーの溶融性を損なうことなく、定着性および保存性が維持できるので好ましい。
【0035】
マクロモノマーは、前記モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも、高いガラス転移温度を有する重合体を与えるものが好ましい。本発明に用いるマクロモノマーの具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独でまたは2種以上を重合して得られる重合体、ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマーなどを挙げることができるが、その中でも、親水性のもの、特にメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを単独でまたはこれらを組み合わせて重合して得られる重合体が好ましい。
【0036】
マクロモノマーを使用する場合、その量は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好適には0.03〜5重量部、さらに好適には0.05〜1重量部である。マクロモノマーの使用量が上記範囲にあると、保存性を維持したままで、定着性が低下することがないので好ましい。
【0037】
また、重合に際して、分子量調整剤を使用することが好ましい。分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは重合途中に添加することができる。分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0038】
分散安定剤としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;などの金属化合物や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができ、これらは、単独で用いても、2種類以上を組み合わせても良い。
これらのうち、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、また分散安定剤の洗浄後の残存性が少なく、画像を鮮明に再現できるので好ましい。
【0039】
難水溶性金属水酸化物のコロイドは、その粒径分布において、小粒径側から起算した個数累計が50%である粒径Dp50が0.5μm以下で、90%である粒径Dp90が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると重合の安定性が崩れ、またトナーの保存性が低下する。
【0040】
分散安定剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用する。この割合が上記範囲にあることで、充分な重合安定性が得られ、重合凝集物の生成が抑制され、所望の粒径のトナーを得ることができるので好ましい。
【0041】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。
【0042】
こうした中でも特に、使用される重合性単量体に可溶な油溶性の重合開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の重合開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部用いる。
重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加することができるが、懸濁重合の場合は重合性単量体組成物の液滴形成工程終了後の懸濁液、乳化重合の場合は乳化工程終了後の乳化液に、直接添加することもできる。
【0043】
上述した、好ましいコアシェル型トナー粒子を製造する方法としては、スプレイドライ法、界面反応法、in situ重合法、相分離法などの方法が挙げられる。具体的には、粉砕法、重合法、会合法又は転相乳化法により得られたトナー粒子をコア粒子として、それに、シェル層を被覆することによりコアシェル型トナー粒子が得られる。この製造方法の中でも、in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0044】
in situ重合法によるコアシェル型トナー粒子の製造方法を以下に説明する。
コア粒子が分散している水系分散媒体中に、シェルを形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型トナー粒子を得ることができる。
シェルを形成する具体的な方法としては、コア粒子を得るために行った重合反応の反応系にシェル用重合性単量体を添加して継続的に重合する方法、または別の反応系で得たコア粒子を仕込み、これにシェル用重合性単量体を添加して段階的に重合する方法などを挙げることができる。
シェル用重合性単量体は反応系中に一括して添加しても、またはプランジャポンプなどのポンプを使用して連続的もしくは断続的に添加してもよい。
【0045】
シェル用重合性単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が80℃を超える重合体を形成する単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
シェル用重合性単量体を添加する際に、水溶性の重合開始剤を添加することがコアシェル型トナー粒子を得やすくなるので好ましい。シェル用重合性単量体の添加の際に水溶性重合開始剤を添加すると、シェル用重合性単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に水溶性重合開始剤が進入し、コア粒子表面に重合体(シェル)を形成しやすくなると考えられる。
【0047】
水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等のアゾ系開始剤などを挙げることができる。水溶性重合開始剤の量は、シェル用単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部である。
【0048】
懸濁重合後に得られるトナー粒子の水分散液は、酸又はアルカリを添加して、分散安定剤を水に溶解して、除去することが好ましい。分散安定剤として、難水溶性金属水酸化物のコロイドを使用した場合には、酸を添加して、水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、蟻酸、酢酸などの有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0049】
本発明においては、この濾過用重合体粒子からなる濾過ケーキ層を通して濾過脱水することが好ましい。濾過ケーキ層の厚さは、通常2〜20mmであり、好ましくは5〜15mmである。
【0050】
濾過脱水の方法は特に制限されない。例えば、遠心濾過法、真空濾過法、加圧濾過法などを挙げることができる。これらのうち遠心濾過法が好適である。濾過脱水装置としては、ピーラーセントリフュージョン、サイホンピーラーセントリヒュージョンなどを挙げることができる。遠心濾過法においては、遠心重力を、通常、400〜3000G、好ましくは800〜2000Gに設定する。脱水後の含水率は、通常、5〜30重量%、好ましくは8〜25重量%である。含水率が高いと乾燥工程に時間を要するようになり、また水中の不純物濃度が低くても含水率が高いと乾燥によって不純物が濃縮され、現像剤の環境依存性が大きくなる。
なお、ここでいう含水率は含水粒子2gをアルミ皿に採取し、それを精秤(W0[g])し、105℃に設定した乾燥機に1時間放置し、冷却後、精秤(W1[g])し、以下の式で計算した値である。
含水率=((W0−W1)/W0)×100
【0051】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
本実施例では、以下の方法で評価した。
【0052】
1.導電性無機微粒子の特性
(1)導電性無機微粒子の比抵抗値
試料8gを直径1インチの塩ビ管に入れ、電極をあてた状態にて、東洋プレス(株)製T−1型油圧プレス機にて10kg/cm2の荷重をかけ、その状態で横河−HEWLETT−PACKARD社製4261A LCR METERを用い、30秒経過後の抵抗(R)を測定した。そして、試料の全長Lを測定し、次式により、粉体の比抵抗R(Ω・cm)を算出した。
粉体の比抵抗(Ω・cm)= (2.54/2)2π/(L−11.35)
(2)導電性無機微粒子の平均粒子径
試料6.0gを0.05%のメタリン酸ナトリウム溶液300mlに加え、ジュースミキサーを用いて3分間撹拌する。その後、撹拌液を0.05%のメタリン酸ナトリウム溶液500ml中に適量加えて希釈し、堀場製作所社製CAPA−700型粒度分布測定装置を用いて、回転速度3000回転で粒度分布を測定した。
【0053】
2.トナー特性
(1)トナーの平均粒径と粒径分布
トナーの体積平均粒径(dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、濃度10%、測定粒子個数:100000個の条件で行った。
(2)平均円形度
容器中に予めイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更にトナー0.02gを加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機60w、3分間分散処理を行った。この分散液を、測定時のトナー濃度が3000〜10000個/μlと成るよう調整して、フロー式粒子像分析装置(FPIA−1000;東亞医用電子株式会社製)を用いて、トナーの粒子数を1000から10000個の間で計測した。このデーターを用いて平均円形度を求めた。
【0054】
(3)帯電量
温度10℃、湿度20%の(L/L)環境、温度23℃、湿度50%の(N/N)環境、温度35℃、湿度80%の(H/H)環境下における帯電量を測定した。
トナーの帯電量は、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(沖データ社製、商品名「マイクロライン3010C」)にトナーを入れ、前記環境下で1昼夜放置後、ハーフトーンの印字パターンを5枚印字し、その後、現像ローラ上のトナーを吸引式帯電量測定装置に吸引し、帯電量と吸引量から単位重量当たりの帯電量を測定した。
【0055】
(4)トナーの水抽出液のpH及び導電率
トナー6gを、導電率σ1が8.3μS/cmのイオン交換水100gに分散させ、加熱して10分間煮沸した後、これに、別途煮沸した導電率σ1のイオン交換水を加え、蒸発水分を補充して元の容量に戻し、更に室温まで冷却して抽出液を得た。この抽出液のpHは、pHメーター「D−14」(堀場製作所製)を用いて、イオン交換水及び上記抽出液の導電率は、導電率計「ES−12」(堀場製作所製)を用いて測定した。
【0056】
2.画質評価
(1)印字濃度
前述したプリンターに印字用紙をセットし、現像装置にトナーを入れ、温度10℃、湿度20%の(L/L)環境、温度23℃、湿度50%の(N/N)環境、及び温度35℃、湿度80%の(H/H)環境下で一昼夜放置後、5%濃度で初期から連続印字を行い、10枚目印字時にベタ印字を行い、カラー反射型濃度計(X−ライト社製、機種名「404A」)を用いて、印字濃度を測定した。
(2)カブリ
前述したプリンターを用いて、温度10℃、湿度20%の(L/L)環境、温度23℃、湿度50%の(N/N)環境、及び温度35℃、湿度80%の(H/H)環境下で一昼夜放置後、5%濃度でハーフトーンの印字パターンを5枚印字した後に、白ベタ印字を行い、印字を途中で停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製、スコッチメンディングテープ810−3−18)で剥ぎ取り、それを新しい印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の色調(B)を、前記分光色差計で測定し、同様にして、粘着テープだけを貼り付けた印字用紙の色調(A)を測定し、それぞれの色調をL*a*b*空間の座標として表し、色差ΔE*を算出して、カブリ値とした。この値の小さい方が、カブリが少ないことを示す。
【0057】
(3)転写残
前述したプリンターを用いて、温度10℃、湿度20%の(L/L)環境、温度23℃、湿度50%の(N/N)環境、及び温度35℃、湿度80%の(H/H)環境下で一昼夜放置後、5%濃度でハーフトーンの印字パターンを5枚印字した後に、ベタ印字を行い、印字を途中で停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製、スコッチメンディングテープ810−3−18)で剥ぎ取り、それを新しい印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の色調(B)を、前記分光色差計で測定し、同様にして、粘着テープだけを貼り付けた印字用紙の色調(A)を測定し、それぞれの色調をL*a*b*空間の座標として表し、色差ΔE*を算出して、転写残値とした。この値の小さい方が、転写後に感光体上に残存するトナーが少ないことを示す。
【0058】
(実施例1)
スチレン82部、アクリル酸ブチル11部及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸7部からなる単量体混合物を重合してなる帯電制御樹脂(重量平均分子量1.8万、ガラス転移温度67℃)100部に、メチルエチルケトン24部、メタノール6部を分散させ、冷却しながらロールにて混練した。帯電制御樹脂がロールに巻き付いたところで、マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122)100部を徐々に添加して、1時間混練を行い、帯電制御樹脂組成物を製造した。この時、ロール間隙は、初期1mmであり、その後徐々に間隙を広げ、最後は3mmまで広げ、有機溶剤(メチルエチルケトン/メタノール=4/1混合溶剤)は、帯電制御樹脂の混練状態に合わせ何回か追加した。
帯電制御樹脂組成物の一部を取り出した後、トルエンを加えて溶解させ、トルエンの帯電制御樹脂組成物の5%溶液にした。ガラス板上に間隙が30μmのドクターブレードで混合溶液を塗布、乾燥させ、シ−トを作製した。このシートを光学顕微鏡にて観察したところ、100μm平方に存在する、長径が0.2μm以上の着色剤粒子は存在しなかった。
【0059】
イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.8部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.9部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。調整したコロイドの粒径分布を測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累計値)が0.38μmで、D90(個数粒径分布の90%累計値)が0.82μmであった。
【0060】
スチレン80.5部、アクリル酸ブチル19.5部及びポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」)0.25部からなるコア用重合性単量体と、上述した帯電制御樹脂組成物12部、粉体比抵抗が40Ω・cmであるアンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子(チタン工業社製、商品名「EC−300」)1部、t−ドデシルメルカプタン3部及びジペンタエリスリトールヘキサミリステート10部を攪拌、混合して、均一分散し、コア用重合性単量体組成物を得た。
一方、メタクリル酸メチル1部と水100部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水分散液を得た。シェル用重合性単量体の液滴の粒径は、(SALD2000A型、島津製作所株式会社製)で測定したところ、D90が1.6μmであった。
【0061】
前記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、前記コア用重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで攪拌し、そこにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製「パーブチルO」)6部を添加後、エバラマイルダーを用いて15,000rpmの回転数で30分間高剪断攪拌して、更に小さい単量体混合物の液滴を形成させた。このコア用重合性単量体組成物の水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、90℃で重合反応を開始させ、重合転化率がほぼ100%に達したときに、サンプリングし、コアの粒径を測定した。この結果、7.4μmであった。前記シェル用重合性単量体の水分散液、及び蒸留水10部に溶解した2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド(和光純薬社製、商品名「VA−086」)0.1部を反応器に入れた。8時間重合を継続した後、反応を停止し、pH9.5のトナー粒子の水分散液を得た。
【0062】
上記により得たコアシェル型の現像剤用重合体粒子の水分散液を撹拌しながら、硫酸により系のpHを約5.5にして酸洗浄(25℃、10分間)を行った。次いで、連続式ベルトフィルター(住友重機械工業社製、商品名「イーグルフィルター」)をもちいて、脱水し、脱水後、洗浄水を振りかけて水洗浄を行った。
水洗浄後、現像剤用重合体粒子を再度水に分散させ、次いで、サイホンピーラーセントリフュージ(三菱化工機社製、商品名「HZ40Si」)を用いて、遠心重力1200G、層圧10mmで、層面積0.25m2の濾過ケーキ層を用いて、洗浄剤用イオン交換水40部/時間、水分散液の供給量120部/時間の条件で遠心濾過脱水して含水率15%の現像剤用重合体粒子を分離し、最後に乾燥機にて45℃で2昼夜乾燥を行い、トナーを得た。
【0063】
乾燥したトナーを取り出し、測定した体積平均粒径(dv)は7.4μmであり、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は1.23であり、フロー式粒子像分析で測定した平均円形度は0.95であった。
前記により得られたトナー100部に、疎水化処理されたシリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「RX−200」)0.6部を添加して、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。このとき、トナーの水抽出液のpHは6.5であり、導電率σ2は12.6μS/cmであった。
【0064】
(実施例2)
実施例1において、導電性無機微粒子として用いた電気抵抗が40Ω・cmであるアンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子の表面をメトキシシランで疎水化処理したもの1部を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。得られたトナーの特性、画質評価の結果を表1に示す。
このとき、この導電性無機微粒子の粉体比抵抗は、120Ω・cmであった。また、このとき、トナーの水抽出液のpHは6.5であり、導電率σ2は12.2μS/cmであった。
【0065】
(比較例1)
実施例1において、導電性無機微粒子として粉体比抵抗が1×1016Ω・cmである疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「R−972」)1部を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。得られたトナーの特性、画質評価の結果を表1に示す。
【0066】
(比較例2)
スチレン・ブタジエン樹脂(日本ゼオン社製、商品名「ニポール2007J」)50部、塩素化パラフィン(東ソー社製、商品名「トヨパラックス」)50部、粉体比抵抗が5Ω・cmであるアンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子(三菱マテリアル社製、商品名「W−P」)0.2部、マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122)6部、負帯電制御剤(オリエント化学工業社製、商品名「E−84」)1部をヘンシェルミキサーで予備混合した。ロールミルで混練後、冷却、粗粉砕機で粗粉砕し、さらにジェットミルで粉砕し、その後、分級機で粗粉と微粉を分離して、7.3μmのトナーを得た。得られたトナー100部に、疎水化処理されたシリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「RX−200」)0.6部を添加して、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1のトナーの評価結果から、以下のことがわかる。
粉体比抵抗が、本発明で規定した範囲より大きい導電性無機微粒子を使用した比較例1のトナーは、L/L環境で印字濃度が低く、更にH/H環境下でカブリが発生し易く、転写後に感光体上に残存するトナーが多いことがわかる。
平均円形度が、本発明で規定した範囲より小さい比較例2のトナーは、L/L環境で印字濃度が低く、カブリも発生し易く、更にH/H環境下でカブリが発生し易く、転写後に感光体上に残存するトナーが多いことがわかる。
これに対して、本発明の実施例1〜2のトナーは、L/L環境、N/N環境及びH/H環境のいずれの環境下においても、印字濃度が高く、カブリが発生し難く、転写後に感光体上に残存するトナーが少ないことがわかる。
【0069】
【発明の効果】
本発明のトナーは、異なる環境下にあっても、印字濃度が高く、カブリの発生がなく、感光体上のトナーを確実に転写材に転写することのできる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法等によって形成される静電潜像を現像するための重合トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置において、感光体上に形成される静電潜像は、先ず、トナーにより現像される。次いで、形成されたトナー像は、必要に応じて紙等の転写材上に転写された後、加熱、加圧または溶剤蒸気などの種々の方式により定着される。
トナーとしては、一般に、結着樹脂成分となる熱可塑性樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、離型剤等を溶融混合して均一に分散させて組成物とした後、該組成物を粉砕、分級することにより着色粒子を得る粉砕トナー、結着樹脂の原料である重合性単量体中に着色剤、帯電制御剤、離型剤等を溶解あるいは分散させ、重合開始剤を添加後、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させ、所定温度まで加温して重合を開始し、重合終了後に濾過、洗浄、脱水、乾燥することにより着色粒子を得る懸濁重合トナー、乳化重合により得た極性基を含有する結着樹脂の粒子と、着色剤並びに帯電制御剤を含有してなる粒子とを、結着樹脂のガラス転移温度より高い温度で攪拌して会合させた粒子を、濾過、洗浄、脱水、乾燥することにより着色粒子を得る乳化重合トナーが使用されている。
【0003】
このようなトナーは、画像形成装置に形成される静電潜像の帯電極性に対応して、正又は負に帯電するように構成する必要がある。トナーを帯電させるためには、トナーの主成分である結着樹脂の摩擦帯電性を利用することもできるが、これだけではトナーの帯電性は低いものとなってしまう。そこで、トナーに所望の摩擦帯電性を付与するために、帯電制御剤をトナー中に含有させたり、トナー表面に被覆又は固着させたりすることが行われている。このような帯電制御剤を含有するトナーは高い摩擦帯電性を示すが、帯電量を制御するために、帯電制御剤の種類や量、結着樹脂の種類及びトナーに含有させる他の材料の選択等を考慮する必要がある。従って、帯電量の微妙な制御が難しいという問題を有している。
【0004】
この問題を解決するために、疎水化処理したシリカや酸化チタン等の導電性無機微粒子を外添剤としてトナー粒子に添加することが一般に行われている。
特開平10−39534号公報には、アミノシランで疎水化処理したシリカ微粒子を外添したトナーが、特開平6−19186号公報には、シリコーンオイルまたはシリコンワニスで疎水化処理した酸化チタンを外添したトナーが、また、特開平10−83096号公報には、導電性酸化チタン及びシリカ微粒子を外添したトナーが開示されているが、高温高湿下での厳しい環境下に置かれた場合に帯電量の低下が起こり、カブリが発生し、印字濃度が低下することがある。
【0005】
一方、トナー粒子内部に導電性無機微粒子を含有させて、トナー特性を向上させようとする検討も行われている。
特開昭57−40259号公報には、トナー用結着樹脂に酸化スズ系の無機酸化物を含有させることにより、摩擦帯電特性が改良されたトナーが開示されている。また。特開平8−202078号公報には、硫酸バリウムなどの母体粒子表面に結晶性の低抵抗酸化スズ被膜が形成され、その酸化スズに含有されるアンチモンやリンが100ppm以下の微粉体を含有するトナーが開示されている。しかしながら、本発明者が検討したところ、これらのトナーは、粒子の表面に無機酸化物が露出しているために、異なる環境下で帯電量を制御できずに、低温低湿下では印字濃度が低下し、高温高湿下ではカブリが発生することが分かった。
特開平5−216267号公報には、シリカ微粒子を内添することにより、帯電能が高く、連続印刷を行っても印字ムラが起こることのないトナーが開示されている。しかしながら、本発明者が検討したところ、このトナーは、各環境下での帯電量を全体的に上昇させることはできるが、異なる環境下で帯電量を制御できずに、低温低湿下では印字濃度が低下し、高温高湿下ではカブリが発生することが分かった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭57−40259号公報
【特許文献2】
特開平8−202078号公報
【特許文献3】
特開平5−216267号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、異なる環境下にあっても、印字濃度が高く、カブリの発生がなく、感光体上のトナーを確実に転写材に転写することのできるトナーを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、この目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、特定の導電性無機微粒子を分散させた特定特性のトナーにおいて、上記目的が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、結着樹脂、着色剤及び粉体比抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子を含有するトナー粒子と外添剤とからなる、体積平均粒径(Dv)が3〜10μm、フロー式粒子像分析装置で測定される平均円形度が0.94〜0.995であるトナーが提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明のトナーは、結着樹脂と着色剤と電気抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子を含有するトナー粒子と外添剤からなる。
【0010】
結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の従来からトナーに広く用いられている樹脂を挙げることができる。
【0011】
着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、磁性粉、オイルブラック、チタンホワイトの他、あらゆる顔料および/または染料を用いることができる。黒色のカーボンブラックは、一次粒径が20〜40nmであるものが好適に用いられる。粒径がこの範囲にあることにより、カーボンブラックをトナー中に均一に分散でき、カブリも少なくなるので好ましい。
【0012】
フルカラートナーを得る場合、通常、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤およびシアン着色剤を使用する。
イエロー着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、83、90、93、97、120、138、155、180、181、185および186等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントレッド31、48、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、251、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物等が利用できる。具体的にはC.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、および60等が挙げられる。
こうした着色剤の量は、結着樹脂100重量部に対して、通常1〜10重量部である。
【0013】
この導電性無機微粒子は、粉体比抵抗が1×104Ω・cm以下であり、0.1〜1×104Ω・cmであると好ましく、1〜1×103Ω・cmであると更に好ましい。導電性無機微粒子の粉体比抵抗が1×104Ω・cmより大きくなると、低温低湿下で帯電量が大きくなり、印字濃度が低くなることがあり、逆に低いと高温高湿下で帯電量が小さくなり、カブリが発生することがある。
【0014】
本発明に用いる粉体比抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子としては、酸化スズ微粒子、酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子、アンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子(例えば、チタン工業社製「EC−100」及び「EC−300」、ジェムコ社製「W−P」等)、アンチモンがドープされた酸化インジウムで表面処理された酸化チタン微粒子(例えば、チタン工業社製「EC−500」)、アンチモンがドープされた酸化インジウムで表面処理された酸化アルミニウム微粒子(例えば、チタン工業社製「EC−700」)、アンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化ケイ素微粒子(例えば、チタン工業社製「ES−650」)、スズ−アンチモン複合酸化物微粒子(例えば、ジェムコ社製「T−1」)、インジウム−スズ複合酸化物微粒子(例えば、ジェムコ社製「ITO」)等が挙げられる。
【0015】
この導電性無機微粒子は、一次粒子の体積平均粒径が、通常0.01〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μmである。粒径がこの範囲にあると、異なる環境下であっても、トナーが適度な帯電特性を持つことができるので好ましい。
また、この導電性無機微粒子は、シランカップリング剤や高級脂肪酸金属塩等で疎水化処理したもの好ましい。疎水化処理することにより、高温高湿下でのカブリが小さくなる。特に、メタノール法で測定される疎水化度が、通常、5〜90、好ましくは10〜80、更に好ましくは20〜70である。
【0016】
本発明では、トナーの帯電量を制御する目的で、通常使用されている帯電制御剤をトナー粒子に含有させることが好ましい。帯電制御剤の中でも、結着樹脂との相溶性が高く、無色であり高速でのカラー連続印刷においても帯電性が安定したトナーを得ることができるので、帯電制御樹脂を含有させることが好ましい。帯電制御樹脂は、特開昭63−60458号公報、特開平3−175456号公報、特開平3−243954号公報、特開平11−15192号公報などの記載に準じて製造される4級アンモニウム(塩)基含有共重合体や、特開平1−217464号公報、特開平3−15858号公報などの記載に準じて製造されるスルホン酸(塩)基含有共重合体を用いる。
この共重合体に含有される4級アンモニウム(塩)基またはスルホン酸(塩)基を有する単量体単位は、共重合体中に0.5〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。含有量がこの範囲にあると、トナーの帯電量を制御し易く、カブリの発生を少なくすることができる。
【0017】
帯電制御樹脂の重量平均分子量は、通常2,000〜50,000、好ましくは4,000〜40,000、さらに好ましくは6,000〜30,000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、カラートナーの彩度や透明性を維持することができる。
帯電制御樹脂のガラス転移温度は、通常40〜80℃、好ましくは45〜75℃、さらに好ましくは45〜70℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、トナーの保存性と定着性をバランスよく向上させることができる。
帯電制御樹脂の量は、結着樹脂100重量部に対して、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0018】
本発明では、トナー粒子に更に離型剤を含有させることが好ましい。離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックスおよびその変性ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステートなどの多官能エステル化合物;などが挙げられる。
これらは1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
これらの離型剤のうち、合成ワックス、多官能エステル化合物が好ましい。これらのなかでも示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピーク温度が30〜150℃、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは50〜80℃の範囲にある多官能エステル化合物が、トナーとして、定着時の定着−剥離性バランスの良いので好ましい。特に、分子量が1000以上であり、25℃でスチレン100重量部に対し5重量部以上溶解し、酸価が10mg/KOH以下であるものは定着温度低下に顕著な効果を示すので更に好ましい。吸熱ピーク温度は、ASTM D3418−82によって測定された値である。
上記離型剤の量は、結着樹脂100重量部に対して、通常0.5〜50重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0020】
トナー粒子は、粒子の内部(コア層)と外部(シェル層)に異なる二つの重合体を組み合わせて得られる、所謂コアシェル型(または、「カプセル型」ともいう。)の粒子とすることができる。コアシェル型粒子では、内部(コア層)の低軟化点物質をそれより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができるので好ましい。
通常、このコアシェル型粒子のコア層は前記結着樹脂、着色剤、帯電制御樹脂及び離型剤で構成され、シェル層は結着樹脂のみで構成される。
【0021】
コアシェル型粒子の場合、コア粒子の体積平均粒径は3〜10μm、好ましくは4〜9μm、更に好ましくは5〜8μmである。また、体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)の比である粒径分布(dv/dp)が1.0〜1.3であると好ましく、1.0〜1.2であると更に好ましい。
コアシェル型粒子のコア層とシェル層との重量比率は特に限定されないが、通常80/20〜99.9/0.1で使用される。
シェル層の割合を上記割合にすることにより、トナーの保存性と低温での定着性を兼備することができる。
【0022】
コアシェル型粒子のシェル層の平均厚みは、通常0.001〜1.0μm、好ましくは0.003〜0.5μm、より好ましくは0.005〜0.2μmであると考えられる。厚みが大きくなると定着性が低下し、小さくなると保存性が低下する恐れがある。なお、コアシェル型のトナー粒子を形成するコア粒子はすべての表面がシェル層で覆われている必要はなく、コア粒子の表面の一部がシェル層で覆われていればよい。
コアシェル型粒子のコア粒子径およびシェル層の厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作為に選択した粒子の大きさおよびシェル厚みを直接測ることにより得ることができ、電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子の粒径およびトナー製造時に用いたシェルを形成する単量体の量から算定することができる。
【0023】
本発明で用いる外添剤としては、通常、流動性や帯電性を向上させる目的で使用されている無機粒子や有機樹脂粒子が挙げられる。外添剤として添加するこれらの粒子は、トナー粒子よりも平均粒径が小さい。例えば、無機粒子としては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられ、有機樹脂粒子としては、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体で、シェルがメタクリル酸エステル重合体で形成されたコアシェル型粒子などが挙げられる。これらのうち、シリカ粒子や酸化チタン粒子が好適であり、この表面を疎水化処理した粒子が好ましく、疎水化処理されたシリカ粒子が特に好ましい。外添剤の量は、特に限定されないが、トナー100重量部に対して、通常、0.1〜6重量部である。
【0024】
本発明のトナーは、体積平均粒径(dv)が3〜10μm、好ましくは4〜9μm、更に好ましくは5〜8μmである。粒径が小さいと流動性が低下して、転写性が低下したり、カスレが発生したりし、また印字濃度が低下する。逆に大きいと、画像の解像度が低下する。
体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)の比である粒径分布(dv/dp)が1.0〜1.3であり、1.0〜1.2であると更に好ましい。粒径分布が大きいとカスレが発生したり、転写性、印字濃度及び解像度の低下が起こったりする。
トナーの体積平均粒径及び粒径分布は、例えば、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)などを用いて測定することができる。
【0025】
本発明のトナーは、フロー式粒子像分析装置で測定される平均円形度が0.94〜0.995であり、好ましくは0.95〜0.99である。平均円形度が0.94より小さくなると、転写性が低下することがある。
平均円形度とは、次式:円形度=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
により算出される値を、以下の式(1)により平均した値である。
【数1】
「粒子の投影面積に等しい円の周囲長」および「粒子投影像の周囲長」は、フロー式粒子像分析装置を用いて水分散系で測定を行って得られる値をもって示している。1に近い程、真円に近いことを示している。このように平均円形度は、「粒子の投影面積に等しい円の周囲長」および「粒子投影像の周囲長」から求められるため、当該値はトナー粒子の形状、すなわち粒子表面の凹凸状態を正確に反映する指標となる。フロー式粒子像分析装置としては、例えば、東亞医用電子株式会社製のFPIA−1000またはFPIA−2000等を例示することができる。
この平均円形度は、例えば、転相乳化法、溶解懸濁法及び重合法等を用いることにより容易に上記範囲とすることができる。
【0026】
本発明のトナーは、それをイオン交換水煮沸抽出法によって抽出して得た抽出液のpHが4.0〜7.5であると好ましく、4.5〜7.0であると更に好ましい。
pHが4.0に満たない場合やpHが7.5を超える場合、トナー帯電量の環境依存性が大きくなり、環境変化による画質の低下が生じるようになる。
また、本発明のトナーは、これをイオン交換水煮沸抽出法によって抽出して得た抽出液の導電率σ2が20μS/cm以下、好ましくは15μS/cm以下であり、イオン交換水の導電率σ1と抽出液の導電率σ2との差(σ2−σ1)が10μS/cm以下、好ましくは7μS/cm以下である。
抽出液の導電率σ2が20μS/cmより大きいと、高温高湿下でカブリ易くなることがある。また、このイオン交換水の導電率と抽出液の導電率との差(σ2−σ1)が10μS/cmより大きいと高温高湿下でカブリ易くなることがある。
ここでいうイオン交換水煮沸抽出法は、室温(約25℃)にて、トナー6gを、陽イオン交換処理と陰イオン交換処理によってpHが7となった導電率σ1のイオン交換水100mlに分散し、これを加熱して、煮沸させ、煮沸状態を10分間保持(10分間煮沸)することによってトナーからの水溶性成分を抽出し、引き続き、室温(約25℃)まで冷却した後、これに、別途前記イオン交換水を10分間煮沸して室温まで冷却したものを追加して煮沸前の容量に戻して、抽出液を得る方法である。また、この方法により得られた抽出液のpHは、例えば、pHメーター「D−14」(堀場製作所製)などを用いて測定することができる。また、イオン交換水及び上記抽出液の導電率は、例えば、導電率計「ES−12」(堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0027】
本発明では、トナー粒子は、乳化重合法や懸濁重合法などの重合法により製造することが好ましい。特に懸濁重合法により得られた実質的に球状のトナー粒子が好ましい。粒子を球状にすることにより、画像形成装置内でトナーが割れることによって、流動性が低下するようなことが無くなる。また、懸濁重合法では、親水性の高い導電性無機微粒子が、トナー粒子の表面には露出しないが、表面近傍に均一分散するため、少量の添加でも効率良く、トナーの帯電量を制御することができる。
【0028】
以下、懸濁重合法によるトナー粒子の製造方法について説明する。
結着樹脂原料である重合性単量体、着色剤、電気抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子、帯電制御剤及び離型剤をボールミルなどのメディア型分散機を用いて均一に混合して、重合性単量体組成物を得、分散安定剤を含有する水分散媒体中に該組成物を添加した後、攪拌して液滴を形成し、次いで重合開始剤を添加した後、高速回転する攪拌機を用いて、所望のトナー粒子の粒径となるように攪拌速度及び時間を調整して、更に小さな液滴を形成する。液滴を形成するときの温度は、水分散媒体の温度は、通常10〜40℃、好ましくは20〜30℃の範囲内に調整して行う。
次に、分散して液滴が分離や沈降しない程度の攪拌を維持しながら、所定の温度に昇温して重合を開始し、一定時間重合を継続した後、反応を停止してトナー粒子の水分散液を得る。その後、必要に応じて水分散液からトナー定着時に臭気の問題となる未反応の重合性単量体を除去し、更に重合時に使用した分散安定剤をトナー粒子から除去するために、洗浄と脱水を繰り返し行った後、乾燥することによって、トナー粒子を得る。重合性単量体組成物の重合温度は、通常、40〜100℃、好ましくは50〜90℃であり、重合時間は、1〜20時間、好ましくは2〜10時間である。また、トナー粒子の乾燥温度は、通常、30〜60℃、好ましくは40〜55℃である。
【0029】
本発明では、予め着色剤と帯電制御樹脂を混合して製造した帯電制御樹脂組成物を使用することが好ましい。その際、着色剤は、帯電制御樹脂100重量部に対して、通常10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部である。
帯電制御樹脂組成物の製造には、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤を用いることで、帯電制御樹脂が柔らかくなり、着色剤と混合し易くなる。有機溶剤を用いない場合は、樹脂が柔らかくなる程度の温度まで、加温して混合する必要がある。有機溶剤を用いる場合、特に有機溶剤の沸点が低いときには、加温すると有機溶剤が蒸発することがあるので、室温で、あるいは冷却して行なう方が好ましい。尚、トナー中に有機溶剤が残存していると臭気の問題が発生することがあるので、有機溶剤は、帯電制御樹脂組成物の製造過程又はトナーの製造過程のいずれかで除去されることが好ましい。
有機溶剤の量は、帯電制御樹脂100重量部に対して0〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部であり、この範囲にあると分散性と加工性のバランスが優れる。また、このとき、有機溶剤は、一度に全量を添加しても、あるいは混練状態を確認しながら、何回かに分割して添加しても良い。
【0030】
有機溶剤を用いる場合は、その溶解度係数(以下、SP値という。)が8〜15[cal/cm3]1/2であり、沸点が50〜150℃の範囲のものが好ましい。SP値が8[cal/cm3]1/2より小さいと極性が小さくなって帯電制御樹脂を溶解させることができないことがあり、また逆にSP値が15[cal/cm3]1/2より大きいと極性が高くなって帯電制御樹脂を溶解させることができないことがある。一方、沸点が50℃より低いと混練により発生する熱で有機溶剤が蒸発することがあり、逆に150℃より高いと混練後、有機溶剤を除去することが困難になることがある。
有機溶剤としては、具体的に(SP値/沸点)、メタノール(14.5/65℃)、エタノール(10.0/78.3℃)、プロパノール(11.9/97.2℃)、ジエチルケトン(8.8/102℃)、ジ−n−プロピルケトン(8.0/144℃)、ジ−i−プロピルケトン(8.0/124℃)、メチル−n−プロピルケトン(8.3/102℃)、メチル−i−プロピルケトン(8.5/95℃)、メチル−n−ブチルケトン(8.5/127℃)、メチル− iso−ブチルケトン(8.4/117℃)、トルエン(8.9/110℃)、テトラヒドロフラン(9.1/65℃)、メチルエチルケトン(9.3/80℃)、アセトン(9.9/56℃)、シクロヘキサノン(9.9/156℃)などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。この中でも帯電制御樹脂への溶解性や混練後の除去を考慮して、ジエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルエチルケトン/メタノール混合溶媒、トルエン/エタノール混合溶媒及びトルエン/プロパノール混合溶媒が好ましい。
【0031】
混合は、ロール、ニーダー、一軸押出機、二軸押出機、バンバリー、ブス・コニーダー等を用いて行うことができる。有機溶剤を用いる場合は、臭気や毒性の問題が有るので、有機溶剤が漏れない密閉系の混練機が好ましい。
また、混合機にはトルクメーターが設置されていることが、トルクのレベルで分散性を管理することができるので好ましい。
【0032】
結着樹脂を得るための重合性単量体として、モノビニル単量体、架橋性単量体、マクロモノマー等を挙げることができる。この重合性単量体が重合され、結着樹脂成分となる。
モノビニル単量体としては、具体的にはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;等が挙げられる。
モノビニル単量体は、単独で用いても、複数の単量体を組み合わせて用いても良い。これらモノビニル単量体のうち、芳香族ビニル単量体単独、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸の誘導体との併用などが好適に用いられる。
【0033】
モノビニル単量体と共に、架橋性単量体及び重合体を用いるとホットオフセットが有効に改善される。架橋性単量体は、2個以上のビニル基を有する単量体である。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のビニル基を2個有する化合物、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルやトリメチロールプロパントリアクリレート等のビニル基を3個以上有する化合物等を挙げることができる。架橋性重合体は、重合体中に2個以上のビニル基を有する重合体のことであり、具体的には、分子内に2個以上の水酸基を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びポリエチレングリコール等の重合体と、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸単量体を縮合反応することにより得られるエステルを挙げることができる。これらの架橋性単量体及び架橋性重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。使用量は、モノビニル単量体100重量部当たり、通常10重量部以下、好ましくは、0.1〜2重量部である。
【0034】
また、モノビニル単量体と共に、マクロモノマーを用いると、保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。数平均分子量が上記範囲にあると、マクロモノマーの溶融性を損なうことなく、定着性および保存性が維持できるので好ましい。
【0035】
マクロモノマーは、前記モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも、高いガラス転移温度を有する重合体を与えるものが好ましい。本発明に用いるマクロモノマーの具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独でまたは2種以上を重合して得られる重合体、ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマーなどを挙げることができるが、その中でも、親水性のもの、特にメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを単独でまたはこれらを組み合わせて重合して得られる重合体が好ましい。
【0036】
マクロモノマーを使用する場合、その量は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好適には0.03〜5重量部、さらに好適には0.05〜1重量部である。マクロモノマーの使用量が上記範囲にあると、保存性を維持したままで、定着性が低下することがないので好ましい。
【0037】
また、重合に際して、分子量調整剤を使用することが好ましい。分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは重合途中に添加することができる。分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0038】
分散安定剤としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;リン酸カルシウムなどのリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;などの金属化合物や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等水溶性高分子;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができ、これらは、単独で用いても、2種類以上を組み合わせても良い。
これらのうち、金属化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散安定剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、また分散安定剤の洗浄後の残存性が少なく、画像を鮮明に再現できるので好ましい。
【0039】
難水溶性金属水酸化物のコロイドは、その粒径分布において、小粒径側から起算した個数累計が50%である粒径Dp50が0.5μm以下で、90%である粒径Dp90が1μm以下であることが好ましい。コロイドの粒径が大きくなると重合の安定性が崩れ、またトナーの保存性が低下する。
【0040】
分散安定剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用する。この割合が上記範囲にあることで、充分な重合安定性が得られ、重合凝集物の生成が抑制され、所望の粒径のトナーを得ることができるので好ましい。
【0041】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。
【0042】
こうした中でも特に、使用される重合性単量体に可溶な油溶性の重合開始剤を選択することが好ましく、必要に応じて水溶性の重合開始剤をこれと併用することもできる。上記重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部用いる。
重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加することができるが、懸濁重合の場合は重合性単量体組成物の液滴形成工程終了後の懸濁液、乳化重合の場合は乳化工程終了後の乳化液に、直接添加することもできる。
【0043】
上述した、好ましいコアシェル型トナー粒子を製造する方法としては、スプレイドライ法、界面反応法、in situ重合法、相分離法などの方法が挙げられる。具体的には、粉砕法、重合法、会合法又は転相乳化法により得られたトナー粒子をコア粒子として、それに、シェル層を被覆することによりコアシェル型トナー粒子が得られる。この製造方法の中でも、in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0044】
in situ重合法によるコアシェル型トナー粒子の製造方法を以下に説明する。
コア粒子が分散している水系分散媒体中に、シェルを形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型トナー粒子を得ることができる。
シェルを形成する具体的な方法としては、コア粒子を得るために行った重合反応の反応系にシェル用重合性単量体を添加して継続的に重合する方法、または別の反応系で得たコア粒子を仕込み、これにシェル用重合性単量体を添加して段階的に重合する方法などを挙げることができる。
シェル用重合性単量体は反応系中に一括して添加しても、またはプランジャポンプなどのポンプを使用して連続的もしくは断続的に添加してもよい。
【0045】
シェル用重合性単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が80℃を超える重合体を形成する単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
シェル用重合性単量体を添加する際に、水溶性の重合開始剤を添加することがコアシェル型トナー粒子を得やすくなるので好ましい。シェル用重合性単量体の添加の際に水溶性重合開始剤を添加すると、シェル用重合性単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に水溶性重合開始剤が進入し、コア粒子表面に重合体(シェル)を形成しやすくなると考えられる。
【0047】
水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等のアゾ系開始剤などを挙げることができる。水溶性重合開始剤の量は、シェル用単量体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部である。
【0048】
懸濁重合後に得られるトナー粒子の水分散液は、酸又はアルカリを添加して、分散安定剤を水に溶解して、除去することが好ましい。分散安定剤として、難水溶性金属水酸化物のコロイドを使用した場合には、酸を添加して、水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸、蟻酸、酢酸などの有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0049】
本発明においては、この濾過用重合体粒子からなる濾過ケーキ層を通して濾過脱水することが好ましい。濾過ケーキ層の厚さは、通常2〜20mmであり、好ましくは5〜15mmである。
【0050】
濾過脱水の方法は特に制限されない。例えば、遠心濾過法、真空濾過法、加圧濾過法などを挙げることができる。これらのうち遠心濾過法が好適である。濾過脱水装置としては、ピーラーセントリフュージョン、サイホンピーラーセントリヒュージョンなどを挙げることができる。遠心濾過法においては、遠心重力を、通常、400〜3000G、好ましくは800〜2000Gに設定する。脱水後の含水率は、通常、5〜30重量%、好ましくは8〜25重量%である。含水率が高いと乾燥工程に時間を要するようになり、また水中の不純物濃度が低くても含水率が高いと乾燥によって不純物が濃縮され、現像剤の環境依存性が大きくなる。
なお、ここでいう含水率は含水粒子2gをアルミ皿に採取し、それを精秤(W0[g])し、105℃に設定した乾燥機に1時間放置し、冷却後、精秤(W1[g])し、以下の式で計算した値である。
含水率=((W0−W1)/W0)×100
【0051】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
本実施例では、以下の方法で評価した。
【0052】
1.導電性無機微粒子の特性
(1)導電性無機微粒子の比抵抗値
試料8gを直径1インチの塩ビ管に入れ、電極をあてた状態にて、東洋プレス(株)製T−1型油圧プレス機にて10kg/cm2の荷重をかけ、その状態で横河−HEWLETT−PACKARD社製4261A LCR METERを用い、30秒経過後の抵抗(R)を測定した。そして、試料の全長Lを測定し、次式により、粉体の比抵抗R(Ω・cm)を算出した。
粉体の比抵抗(Ω・cm)= (2.54/2)2π/(L−11.35)
(2)導電性無機微粒子の平均粒子径
試料6.0gを0.05%のメタリン酸ナトリウム溶液300mlに加え、ジュースミキサーを用いて3分間撹拌する。その後、撹拌液を0.05%のメタリン酸ナトリウム溶液500ml中に適量加えて希釈し、堀場製作所社製CAPA−700型粒度分布測定装置を用いて、回転速度3000回転で粒度分布を測定した。
【0053】
2.トナー特性
(1)トナーの平均粒径と粒径分布
トナーの体積平均粒径(dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、濃度10%、測定粒子個数:100000個の条件で行った。
(2)平均円形度
容器中に予めイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更にトナー0.02gを加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機60w、3分間分散処理を行った。この分散液を、測定時のトナー濃度が3000〜10000個/μlと成るよう調整して、フロー式粒子像分析装置(FPIA−1000;東亞医用電子株式会社製)を用いて、トナーの粒子数を1000から10000個の間で計測した。このデーターを用いて平均円形度を求めた。
【0054】
(3)帯電量
温度10℃、湿度20%の(L/L)環境、温度23℃、湿度50%の(N/N)環境、温度35℃、湿度80%の(H/H)環境下における帯電量を測定した。
トナーの帯電量は、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(沖データ社製、商品名「マイクロライン3010C」)にトナーを入れ、前記環境下で1昼夜放置後、ハーフトーンの印字パターンを5枚印字し、その後、現像ローラ上のトナーを吸引式帯電量測定装置に吸引し、帯電量と吸引量から単位重量当たりの帯電量を測定した。
【0055】
(4)トナーの水抽出液のpH及び導電率
トナー6gを、導電率σ1が8.3μS/cmのイオン交換水100gに分散させ、加熱して10分間煮沸した後、これに、別途煮沸した導電率σ1のイオン交換水を加え、蒸発水分を補充して元の容量に戻し、更に室温まで冷却して抽出液を得た。この抽出液のpHは、pHメーター「D−14」(堀場製作所製)を用いて、イオン交換水及び上記抽出液の導電率は、導電率計「ES−12」(堀場製作所製)を用いて測定した。
【0056】
2.画質評価
(1)印字濃度
前述したプリンターに印字用紙をセットし、現像装置にトナーを入れ、温度10℃、湿度20%の(L/L)環境、温度23℃、湿度50%の(N/N)環境、及び温度35℃、湿度80%の(H/H)環境下で一昼夜放置後、5%濃度で初期から連続印字を行い、10枚目印字時にベタ印字を行い、カラー反射型濃度計(X−ライト社製、機種名「404A」)を用いて、印字濃度を測定した。
(2)カブリ
前述したプリンターを用いて、温度10℃、湿度20%の(L/L)環境、温度23℃、湿度50%の(N/N)環境、及び温度35℃、湿度80%の(H/H)環境下で一昼夜放置後、5%濃度でハーフトーンの印字パターンを5枚印字した後に、白ベタ印字を行い、印字を途中で停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製、スコッチメンディングテープ810−3−18)で剥ぎ取り、それを新しい印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の色調(B)を、前記分光色差計で測定し、同様にして、粘着テープだけを貼り付けた印字用紙の色調(A)を測定し、それぞれの色調をL*a*b*空間の座標として表し、色差ΔE*を算出して、カブリ値とした。この値の小さい方が、カブリが少ないことを示す。
【0057】
(3)転写残
前述したプリンターを用いて、温度10℃、湿度20%の(L/L)環境、温度23℃、湿度50%の(N/N)環境、及び温度35℃、湿度80%の(H/H)環境下で一昼夜放置後、5%濃度でハーフトーンの印字パターンを5枚印字した後に、ベタ印字を行い、印字を途中で停止させ、現像後の感光体上にある非画像部のトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製、スコッチメンディングテープ810−3−18)で剥ぎ取り、それを新しい印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の色調(B)を、前記分光色差計で測定し、同様にして、粘着テープだけを貼り付けた印字用紙の色調(A)を測定し、それぞれの色調をL*a*b*空間の座標として表し、色差ΔE*を算出して、転写残値とした。この値の小さい方が、転写後に感光体上に残存するトナーが少ないことを示す。
【0058】
(実施例1)
スチレン82部、アクリル酸ブチル11部及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸7部からなる単量体混合物を重合してなる帯電制御樹脂(重量平均分子量1.8万、ガラス転移温度67℃)100部に、メチルエチルケトン24部、メタノール6部を分散させ、冷却しながらロールにて混練した。帯電制御樹脂がロールに巻き付いたところで、マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122)100部を徐々に添加して、1時間混練を行い、帯電制御樹脂組成物を製造した。この時、ロール間隙は、初期1mmであり、その後徐々に間隙を広げ、最後は3mmまで広げ、有機溶剤(メチルエチルケトン/メタノール=4/1混合溶剤)は、帯電制御樹脂の混練状態に合わせ何回か追加した。
帯電制御樹脂組成物の一部を取り出した後、トルエンを加えて溶解させ、トルエンの帯電制御樹脂組成物の5%溶液にした。ガラス板上に間隙が30μmのドクターブレードで混合溶液を塗布、乾燥させ、シ−トを作製した。このシートを光学顕微鏡にて観察したところ、100μm平方に存在する、長径が0.2μm以上の着色剤粒子は存在しなかった。
【0059】
イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.8部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.9部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。調整したコロイドの粒径分布を測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累計値)が0.38μmで、D90(個数粒径分布の90%累計値)が0.82μmであった。
【0060】
スチレン80.5部、アクリル酸ブチル19.5部及びポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」)0.25部からなるコア用重合性単量体と、上述した帯電制御樹脂組成物12部、粉体比抵抗が40Ω・cmであるアンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子(チタン工業社製、商品名「EC−300」)1部、t−ドデシルメルカプタン3部及びジペンタエリスリトールヘキサミリステート10部を攪拌、混合して、均一分散し、コア用重合性単量体組成物を得た。
一方、メタクリル酸メチル1部と水100部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水分散液を得た。シェル用重合性単量体の液滴の粒径は、(SALD2000A型、島津製作所株式会社製)で測定したところ、D90が1.6μmであった。
【0061】
前記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、前記コア用重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで攪拌し、そこにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製「パーブチルO」)6部を添加後、エバラマイルダーを用いて15,000rpmの回転数で30分間高剪断攪拌して、更に小さい単量体混合物の液滴を形成させた。このコア用重合性単量体組成物の水分散液を、攪拌翼を装着した反応器に入れ、90℃で重合反応を開始させ、重合転化率がほぼ100%に達したときに、サンプリングし、コアの粒径を測定した。この結果、7.4μmであった。前記シェル用重合性単量体の水分散液、及び蒸留水10部に溶解した2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド(和光純薬社製、商品名「VA−086」)0.1部を反応器に入れた。8時間重合を継続した後、反応を停止し、pH9.5のトナー粒子の水分散液を得た。
【0062】
上記により得たコアシェル型の現像剤用重合体粒子の水分散液を撹拌しながら、硫酸により系のpHを約5.5にして酸洗浄(25℃、10分間)を行った。次いで、連続式ベルトフィルター(住友重機械工業社製、商品名「イーグルフィルター」)をもちいて、脱水し、脱水後、洗浄水を振りかけて水洗浄を行った。
水洗浄後、現像剤用重合体粒子を再度水に分散させ、次いで、サイホンピーラーセントリフュージ(三菱化工機社製、商品名「HZ40Si」)を用いて、遠心重力1200G、層圧10mmで、層面積0.25m2の濾過ケーキ層を用いて、洗浄剤用イオン交換水40部/時間、水分散液の供給量120部/時間の条件で遠心濾過脱水して含水率15%の現像剤用重合体粒子を分離し、最後に乾燥機にて45℃で2昼夜乾燥を行い、トナーを得た。
【0063】
乾燥したトナーを取り出し、測定した体積平均粒径(dv)は7.4μmであり、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は1.23であり、フロー式粒子像分析で測定した平均円形度は0.95であった。
前記により得られたトナー100部に、疎水化処理されたシリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「RX−200」)0.6部を添加して、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。このとき、トナーの水抽出液のpHは6.5であり、導電率σ2は12.6μS/cmであった。
【0064】
(実施例2)
実施例1において、導電性無機微粒子として用いた電気抵抗が40Ω・cmであるアンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子の表面をメトキシシランで疎水化処理したもの1部を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。得られたトナーの特性、画質評価の結果を表1に示す。
このとき、この導電性無機微粒子の粉体比抵抗は、120Ω・cmであった。また、このとき、トナーの水抽出液のpHは6.5であり、導電率σ2は12.2μS/cmであった。
【0065】
(比較例1)
実施例1において、導電性無機微粒子として粉体比抵抗が1×1016Ω・cmである疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「R−972」)1部を用いた以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。得られたトナーの特性、画質評価の結果を表1に示す。
【0066】
(比較例2)
スチレン・ブタジエン樹脂(日本ゼオン社製、商品名「ニポール2007J」)50部、塩素化パラフィン(東ソー社製、商品名「トヨパラックス」)50部、粉体比抵抗が5Ω・cmであるアンチモンがドープされた酸化スズで表面処理された酸化チタン微粒子(三菱マテリアル社製、商品名「W−P」)0.2部、マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122)6部、負帯電制御剤(オリエント化学工業社製、商品名「E−84」)1部をヘンシェルミキサーで予備混合した。ロールミルで混練後、冷却、粗粉砕機で粗粉砕し、さらにジェットミルで粉砕し、その後、分級機で粗粉と微粉を分離して、7.3μmのトナーを得た。得られたトナー100部に、疎水化処理されたシリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名「RX−200」)0.6部を添加して、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1のトナーの評価結果から、以下のことがわかる。
粉体比抵抗が、本発明で規定した範囲より大きい導電性無機微粒子を使用した比較例1のトナーは、L/L環境で印字濃度が低く、更にH/H環境下でカブリが発生し易く、転写後に感光体上に残存するトナーが多いことがわかる。
平均円形度が、本発明で規定した範囲より小さい比較例2のトナーは、L/L環境で印字濃度が低く、カブリも発生し易く、更にH/H環境下でカブリが発生し易く、転写後に感光体上に残存するトナーが多いことがわかる。
これに対して、本発明の実施例1〜2のトナーは、L/L環境、N/N環境及びH/H環境のいずれの環境下においても、印字濃度が高く、カブリが発生し難く、転写後に感光体上に残存するトナーが少ないことがわかる。
【0069】
【発明の効果】
本発明のトナーは、異なる環境下にあっても、印字濃度が高く、カブリの発生がなく、感光体上のトナーを確実に転写材に転写することのできる。
Claims (5)
- 結着樹脂、着色剤及び粉体比抵抗が1×104Ω・cm以下である導電性無機微粒子を含有するトナー粒子と外添剤とからなる、体積平均粒径(Dv)が3〜10μmであり、フロー式粒子像分析装置で測定される平均円形度が0.94〜0.995であるトナー。
- 着色粒子が、更に帯電制御樹脂を含有する請求項1記載のトナー。
- 着色粒子が、コアシェル構造を有するものである請求項1または2記載のトナー。
- トナーを、下記の処理に付して得たトナー抽出液のpHが4〜7.5である請求項1〜3記載のトナー。
室温で、6gのトナーを導電率σ1のイオン交換水100mlに分散し、加熱して10分間煮沸して、室温まで冷却した後、これに、別途導電率σ1のイオン交換水を煮沸して室温まで冷却したものを加え、蒸発水分を補充して元の容量に戻して抽出液を得る。 - 上記請求項4記載の処理に付して得たトナー抽出液の導電率σ2が20μS/cm以下であり、且つイオン交換水の導電率σ1と抽出液の導電率σ2との差(σ2−σ1)が10μS/cm以下である請求項1〜4記載のトナー。
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