JP2004107489A - ポリエステル製シール材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】共重合ポリエステルを主たる構成成分とするポリエステルからなり、前記ポリエステルが、これを溶融成形して得られる未延伸シ−トの弾性率が1500MPa以下、広角X線で測定した結晶化指数Xcが5%以上、かつ前記シ−トのヘイズ(100μm換算)が15%以下であるポリエステルであることを特徴とするポリエステル製シール材。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル製のシール材に関する発明であり、さらに詳しくは、柔軟で透明性を有するポリエステル製のシール材に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種蓋付き容器、各種配管、装置等には、機密性をもたせるためシール材が使用されることが多い。シール材としては、コルク、天然や合成のゴム、シリコンゴム、発泡樹脂、軟質塩化ビニルなどが用いられていた。
【0003】
これらの中でも、ガラス容器、透明樹脂容器の場合にはシール材も透明なことが要求されることも多い。実用的な透明シール材として軟質塩化ビニルがあるが、軟質塩化ビニルは可塑剤による内容物の汚染、や廃棄時の環境汚染、廃棄時に焼却し難いなどといった問題を有していた。
【0004】
一方、軟質塩化ビニル以外では、ダイマー酸を共重合させたポリエステルが透明で柔軟性のポリエステルとして提案されたが(例えば、特許文献1参照)このものは成形後は非晶質であるため透明ではあるが、熱履歴がかかると結晶白化することがあり、これを防ぐためには成形後に特定条件で熱処理する必要があり、生産性の面で劣るものであった。
【0005】
また、ポリエステル樹脂製容器では、近年ポリエステルをリサイクル使用する運動があるが、この場合にシール材を取り外す必要があった。
【0006】
また、、近年、ボトルは、ガラス、金属製等のボトルから重合体、特に熱可塑性重合体製のボトルが耐破壊性、軽量性、透明性等が優れることから年々使用量が増加してきている。特に、飲料分野での重合体ボトル化は目覚ましく、小型ボトルから大型ボトルまで大量に使用されている。その中でも、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするボトル(以下「PETボトル」と略称する。)の使用量の伸びは著しい。
特に、PETボトルのリサイクルへの関心は大きくリサイクルシステムの早期の確立が必要とされている。
【0007】
近年、展示会等においては、インキ層を容易に除去することのできるポリエステル製のラベルをボトルに装着し、アルカリ温湯中でラベルのインキ層を除去した後、ラベルとボトルとを分離せず再生する方法が提案された。
【0008】
この方法により、回収ボトルの再生ペレット化は容易になり、着色の問題も無くなったが、依然として、ボトルの回収工程では人手によりキャップを取り除くという作業が残り、この手間やコストのため、最終の再生ペレットの価格が割高になり、再生ペレットが普及しない原因となっていた。また、一般消費者にとっては、ボトルからキャップを取り外してキャップは廃棄し、ボトルは回収業者に渡すといった手間を強いるものであり、PETボトルの回収率が上がらない原因となっていた。
【0009】
キャップにポリエステル系の樹脂を用いる提案もあるが、シール材もポリエステル製にする必要があり、柔軟なポリエステル系のシール材が望まれていた。
ポリエステルボトル用のポリエステル性シール材としては、ポリエステルエラストマーを用いたものが提案されているが(例えば、特許文献2参照)、透明性は低いものであった。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−180761号公報
【特許文献2】
特開2001−58621号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、柔軟であり、可塑剤等の溶出がなく、成形後熱処理することなく透明性を維持できるポリエステル系のシール材を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステル製シール材は、共重合ポリエステルを主たる構成成分とするポリエステルからなり、前記ポリエステルが、これを溶融成形して得られる未延伸シ−トの弾性率が1500MPa以下、広角X線で測定した結晶化指数Xcが5%以上、かつ前記シ−トのヘイズ(100μm換算)が15%以下であるポリエステルであることを特徴とするポリエステル製シール材である。
【0013】
この場合において、前記ポリエステルが、ハ−ドセグメントとソフトセグメントからなり、そのハ−ドセグメントを構成するジカルボン酸成分の少なくとも70モル%以上が、テレフタル酸(TPA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDA)、4,4′−ビフェニルジカルボン酸(BPA)の少なくとも1種以上であるポリエステルであることができる。
【0014】
この場合において、前記ポリエステルが、そのハ−ドセグメントを構成するグリコ−ル成分が、1,4−テトラメチレングリコ−ル(TMG)及びエチレングリコ−ル(EG)を含み、かつハ−ドセグメントを構成する全グリコ−ル成分に対する組成比が、TMGが20〜95モル%で、かつEGが5〜80モル%であるポリエステルであることができる。
【0015】
この場合において、前記ポリエステルが、そのソフトセグメントを構成するソフト成分が、ダイマ−ジオ−ル(DDO)であり、かつポリエステルの全グリコ−ル成分に対するDDOの組成比が1〜60モル%であるポリエステルであることができる。
【0016】
この場合において、前記ポリエステルが、そのソフトセグメントを構成するソフト成分が、ダイマ−ジオ−ル(DDO)であり、かつポリエステルの全グリコ−ル成分に対するDDOの組成比が1〜60モル%であるポリエステルであることができる。
【0017】
この場合において、前記ポリエステルが、周期律表第I−a属または第II−a属の金属元素を有する金属塩化合物を、ポリエステルに対して金属元素として0.5〜5.0重量%含有してなるポリエステルであることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステル製シール材の実施の形態を具体的に説明する。
本発明のシール材の素材であるポリエステルは、共重合ポリエステルを主たる構成成分とする透明柔軟ポリエステルである。共重合ポリエステルとしては、ハ−ドセグメントとソフトセグメントからなる共重合ポリエステルであることが好ましい。ハ−ドセグメントをポリエステル分子鎖に導入する目的は、ポリエステルにブロッキング性と透明性とを付与することにある。一方、ソフトセグメントをポリエステル分子鎖に導入する目的はポリエステルに柔軟性を付与することにある。
【0019】
本発明に係る透明柔軟ポリエステルは、透明柔軟ポリエステルを溶融成形して未延伸シ−トとした際の弾性率が1500MPa以下であることから、柔軟性に優れている。
【0020】
また、本発明に係る透明柔軟ポリエステルは、広角X線で測定した結晶化指数Xcが5%以上であるため、ハンドリング性に優れている。さらに、該透明柔軟ポリエステルを溶融成形した未延伸シ−トのヘイズが、シート厚み100μm換算で15%以下であるため、透明性に優れている。
【0021】
(ハ−ドセグメント)
透明性、柔軟性、ハンドリング性の3つの性能をいずれも兼備する透明柔軟ポリエステルを開発するにあたって、最も困難な技術課題は透明性とハンドリング性の両立である。そのためには、ソフトセグメントを拘束するハ−ドセグメントの設計が重要である。
【0022】
結晶の観点からは、透明性とハンドリング性とは二律背反する特性である。なぜなら、結晶化の進行とともに透明性は悪くなるのに対し、ハンドリング性は逆に向上する。すなわち、透明性とハンドリング性という相反する特性をいかに両立させるかが、本発明における最も重要な技術課題である。
【0023】
一般に、結晶化速度の遅いPETは成形時に、溶融状態から急冷して過冷却状態(アモルファス)にすると、透明な成形体が得られる。ところが、得られた成形体をTg以上の温度下で放置すると結晶化が進行し白化する。この現象は、結晶化の進行とともに結晶が成長した結果である。従って、透明性を良好にする為には、結晶のサイズを限りなく小さくすること、つまり微結晶とする必要がある。
【0024】
一方、ハンドリング性、つまり、レジン乾燥時のブロッキングや成形・加工時の金型やロ−ラ−からの解離性、さらには成形体同士の接着等は、結晶サイズとは無関係に、結晶化の度合、換言すれば結晶化度によって支配される。結晶化度は、結晶の数と結晶サイズの積で定義される。
【0025】
以上のことから、結晶相でのハ−ドセグメントを構成する場合、透明性の観点から、結晶のサイズを微結晶とすること、かつ、結晶化度に支配されるハンドリングの観点からは、微結晶の数を多くすること、の2要件が必要不可欠である。そのためには、ハ−ドセグメントを構成するポリマ−構造の選択が非常に重要である。
【0026】
一般に、ポリエステルは、ポリマ−構造によって結晶性が大きく異なる。例えば、代表的なPETとPBTではその結晶性が大きく異なり、PBTは結晶化速度が非常に速い。結晶相に求められる性質としては、透明性とハンドリング性の両立の観点から、微結晶でしかも数が多いことである。
【0027】
これらの要件を満足できるポリエステルの組成としては、例えば、下記の2つの条件を満たすハ−ドセグメントを用いることにより、透明性とハンドリング性の両立を兼備したポリエステルが得られる。
【0028】
(1)ハ−ドセグメントを構成するポリエステルのグリコ−ル成分として、1,4−テトラメチレングリコール(TMG)及びエチレングリコール(EG)を含み、かつハ−ドセグメントを構成するポリエステルの全グリコ−ル成分に対する組成比が、TMGが20〜95モル%で、かつEGが5〜80モル%であること。
【0029】
(2)ハ−ドセグメントを構成するポリエステルのジカルボン酸成分として、テレフタル酸(TPA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDA)、4,4′−ビフェニルジカルボン酸(BPA)から選ばれた少なくとも1種を70モル%以上含有すること。
【0030】
前記2条件を充足しない場合は、結晶が微結晶とはならず白化して透明性が無くなったり、軟化点が低下して接着性が増し、レジンの乾燥時や成形時のハンドリング性が悪くなるなど、実用的価値が無くなる場合がある。
【0031】
ハ−ドセグメントを構成するポリエステルの組成は、グリコ−ル成分として、TMG/EGが23〜94モル%/77〜6モル%であることがさらに好ましく、特に好ましくはTMG/EGが25〜93モル%/75〜7モル%である。一方、ジカルボン酸成分として、TPA、NDA、BPAから選ばれた少なくとも1種が75モル%以上であることがさらに好ましく、特に好ましくは80モル%以上である。
【0032】
ハ−ドセグメントを構成するポリエステルは、前記ジカルボン酸以外に、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などのジカルボン酸、またグリコ−ル成分としては、1,3−トリメチレングリコ−ル、1,5−ペンタメチレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサメチレンジメタノ−ル、等のグリコ−ルを共重合成分として使用することも可能である。
【0033】
更に、微結晶化に対しては、金属塩化合物を結晶化促進剤として併用することが有効であり、透明性の点からさらに好ましい。
特に、本発明に係る透明柔軟ポリエステルに対しては、周期律表第I−a属、または第II−a属に属する金属元素を有する金属塩化合物が好ましい。なかでも、脂肪族カルボン酸あるいはリン化合物のLi、Na、K、Ca塩が好ましい。
【0034】
金属塩化合物の含有量はポリエステルの組成によっても異なるが、ポリエステルに対して金属元素として0.5〜5.0重量%を含有させることが効果的である。ポリエステルに対する金属塩化合物の含有量が0.5重量%未満では結晶化促進効果が小さく、逆に5.0重量%を越えるとポリエステルへの分散性が悪くなるばかりでなく、成形性の悪化や物性低下が著しい。金属塩化合物の含有量は、下限値がポリエステルに対して0.8重量%であることがさらに好ましく、特に好ましくは1.0重量%である。また、金属塩化合物の含有量は、上限値がポリエステルに対して4.5重量%であることがさらに好ましく、特に好ましくは4.0重量%である。
【0035】
(ソフトセグメント)
ソフトセグメントはポリエステルに柔軟性を付与するために不可欠であり、エントロピ−弾性を有することが重要である。好適なソフト成分としては、ポリアレキレンオキシドグリコ−ル、脂肪族ポリエステル、長鎖脂肪族ジカルボン酸、長鎖脂肪族グリコ−ル等が挙げられる。
【0036】
ソフト成分として、長鎖脂肪族ジカルボン酸や長鎖脂肪族グリコ−ルを用いた場合には、数平均分子量が100未満では充分な柔軟性が得られにくい。一方、数平均分子量が1,000を越えると、ハ−ドセグメントとの相溶性が悪くなり透明性が低下しやすくなる。また、ポリアルキレンオキシドグリコ−ルを用いた場合は、数平均分子量の範囲が500未満、または4,000を越える場合には、いずれも目的とする透明柔軟ポリエステルとなりにくい。
【0037】
本発明において、透明柔軟ポリエステルのソフト成分としては、長鎖脂肪族グリコ−ルであるダイマージオール(DDO)が透明性の点から最も有効である。DDOの組成比は、所望する柔軟性によって異なるが、ポリエステルの全グリコール成分に対して1〜60モル%が好ましく、より好ましくは2〜58モル%であり、特に好ましくは3〜55モル%である。DDOの組成比が1モル%未満では、柔軟性が不十分となり硬くなる。一方、60モル%を超えると、Tgが低くなり過ぎて、成形・加工性やハンドリング性が悪化しやすくなる。
【0038】
(共重合ポリエステルの重合)
共重合ポリエステルの重合方法は、従来公知の方法が適用できる。例えば、芳香族ジカルボン酸及びその低級アルキルエステルと、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオールなどのジオールとのエステル化反応またはエステル交換反応により低分子量体を生成する初期反応と、この低分子量体を重縮合させ高分子量とする後期反応によって製造する方法が最も一般的である。
【0039】
共重合ポリエステルの製造には、エステル交換触媒として、従来公知のチタン、亜鉛、マンガン、コバルト、鉛、カルシウム、マグネシウムなどの金属化合物を適用することができる。また重縮合触媒としては、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、スズ等の金属化合物を適用することができる。これらの触媒以外に、熱酸化安定剤やリン化合物の添加もまた可能である。
【0040】
(金属塩化合物の溶融混合)
金属塩化合物のポリエステルへの混合は、一軸押出機、二軸押出機、あるいは成形加工時のポリエステルへの溶融工程への添加等によって行うことができる。一例として、二軸押出機を使用して金属塩化合物をポリエステルへ混合する場合について述べる。
【0041】
金属塩化合物の混合には、二軸押出機(東芝機械(株)製、TEM−37BS)を使用する。混合時の樹脂温度250℃、スクリュー回転数100rpm、ベント真空度1〜5hPa、フィ−ド量15kg/hrの条件で金属塩化合物をポリエステルに均一混合した後ストランド状に押出し、水冷下チップ状にカッティングする。また、金属塩化合物の混合時に、紫外線吸収剤や透明性に悪影響のない顔料等も同時にブレンドすることも可能である。
【0042】
(特性値)
本発明ではポリエステルの特徴を弾性率、結晶化指数Xc、ヘイズという特性値を用いて表現している。
本発明のシール材は、成形後、冷却するだけでも、特に加熱結晶化処理をすることなく、弾性率、結晶化指数Xc、ヘイズという特性値を満たす。
【0043】
弾性率は、透明柔軟ポリエステルの柔軟性を表す指標である。柔軟性は、例えば、ハ−ドセグメントの構造、使用するソフトセグメントの種類や量によって制御することができる。弾性率は、その値が大きくなるとともに硬く、逆に小さくなるとともに柔らかくなる。一般的に、ポリエステルは弾性率を1500MPa以下とすることで柔軟性を示すが、好ましくは1200MPa以下であり、特に好ましくは1100MPa以下である。一方、弾性率の下限値は成形性の点から10MPaであることが好ましく、さらに好ましくは11MPaであり、特に好ましくは12MPaである。弾性率が10MPa未満であると、成形することが困難になるばかりでなく、取り扱い難くなり、実用的でない。さらに、ソフトセグメントの組成比が高くなるので、コスト的にも不利になる。
【0044】
結晶化指数Xcは、微結晶化の度合いを示す尺度であり、ハンドリング性および加熱処理時の白化に対して重要な指標である。Xcは、例えば、ハ−ドセグメントの構造によって制御することができる。ハンドリング性や白化の点からは、Xcは大きければ大きいほどよく、5%以上とすることが必要であり、好ましくは6%以上であり、特に好ましくは7%以上である。一方、結晶化指数Xcが55%を越えるようにすることはポリマー構造の面で技術的に困難である。結晶化指数Xcが55%以下であっても5%以上あれば一般的には十分なハンドリング性を有しているので、結晶化指数Xcを積極的に55%を越えるようにすることは技術的な困難さを考慮するとあまり実用的でない。
【0045】
本発明のポリエステル製シール材においては、透明性は高い程好ましい。したがって、そのポリエステルをフィルム賭した場合のヘイズは低い程好ましい。食品容器に用いられるシール材の場合、滅菌処理する手法として沸騰水滅菌法があるが、このように加熱されても、本発明のシール材は白化することがない。
そのためには、シール材の素材であるポリエステルをシートとした場合に、沸騰水浸漬後の100μm換算のヘイズが5%以下であるものが好ましい。
【0046】
ヘイズはポリエステル製シール材の透明性を表す指標である。ヘイズは小さければ小さいほど透明性に優れ、シール材に用いられるポリエステルを厚み100μmのシ−トとした際に15%以下とすることが重要であり、好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下である。ヘイズが15%を超えると、白化が著しく、もはや透明性があるとは言えなくなる。一方、ヘイズの下限は0.1%とすることが好ましい。ヘイズを0.1%未満としても目視評価による透明性に大きな差異がなく、ヘイズを積極的に0.1%未満とすることは技術的困難さを考慮するとあまり実用的でない。
【0047】
更に、ヘイズは本発明にある金属塩化合物を含有させることによってさらに改善され、透明性が一層良好となる。金属塩化合物の含有によるヘイズの改善効果は、金属塩化合物を含有しない場合のヘイズと比較して、0.2%以上小さくなることが好ましい。ヘイズの改善効果が0.2%以下では、視覚的にみて透明性に殆ど差は見られない。好ましいヘイズの改善効果は、0.3%以上、特に好ましくは0.4%以上である。
【0048】
一般的に、柔軟性を有するポリエステルのTgは常温以下であり、Tgが高くなると通常の使用条件では柔軟性が不十分となる。本発明に係る透明柔軟ポリエステルもTgは低い。このため、溶融成形によって得られた成形体は、成形直後は透明であってもTg以上の雰囲気下に放置しておくと、結晶が徐々に成長し白化のため透明性が悪化することがある。この現象は、溶融状態から急冷することによって、過冷却状態(アモルファス状態)にあったものが、Tg以上の温度雰囲気下で結晶化が進行したことを意味する。
【0049】
ところが、本発明のシール材に用いられる透明柔軟ポリエステルは、これを溶融状態から急冷して得られる成形体が、この冷却過程で既に微結晶化しているため、Tg以上の温度雰囲気下で放置しても、もはや結晶が成長することはなく、白化しない。
【0050】
この透明柔軟ポリエステルには、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、離型剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を本発明の目的とする特性を損なわない範囲で適宜添加することができる。
【0051】
(ポリエステル製シール材)
まず、本発明のポリエスエル製シール材は、お互いに接する構成部材の間に装着して、構成部材の間からの漏れを防止する役割と、外部からの異物の侵入を防止する役割を持つものであれば、その形状、および装着される対象物を限定するものではなく、ガスケット、パッキン、Oリングなど、すべてを含む。
シール材が設置される対象物としては、各種容器、配管類、装置、構造物などがある。容器としては、食品容器、飲料品容器、医薬品用容器、燃料用容器、防水用のハウジング、などがある。配管類としては、液体、気体の配管類があり、装置、構造物では防水、防ガス、防埃性を要求される部分等が挙げられる。
本発明のポリエステル製シール材は、透明性、柔軟性および加熱処理による白化がないことなどの特徴から食品、医療用途など、加熱殺菌されるもののシール材に好適に用いられる。また、高い透明性から、透明な部材に装着されるシール材として好適に用いられる。
また、ポリエステル中空成形体のキャップ部のシール材としても好適に用いられる。
【0052】
本発明のシール材は、例えばシート状に押出し、このシートから所望のシール材の形状に切り取る方法、シール材形状の金型に射出成形する方法や、キャップ部のシール材等では、キャップ底部内部に、押し出し機等から溶融状態で適量滴下させ、これを押しつけシール材を装着したキャップとすることもできる。
また、その条件としては、シート状に押し出す場合、通常押出温度は融点+10〜融点+80℃の温度範囲であり、また、冷却温度は5〜90℃の範囲、好ましくは10〜50℃の範囲であると好ましい。
【0053】
本発明のシール材に用いられるポリエステルは、前述のように、溶融後急冷することのみでも微細結晶化が可能であるため、シール材も透明にすることができ、また、シール材を切り抜く前のシートやシール材同士が接触した場合のブロッキングを防止することができる。また、冷却条件を変えることにより、ヒートシール部を白化させ、目立たせることもできる。
【0054】
本発明のポリエステル製シール材は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートなどの他の熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも一層その片面に積層して用いてもよい。積層方法としては、ヒートシール法、接着法、共押出法などが挙げられる。
【0055】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法や評価法を以下に説明する。
【0056】
(1)測定試料の作成
得られたレジンを70℃で一昼夜減圧乾燥した後、以下の操作によって厚みが約100μmの未延伸シートを作成した。
平担な金属板の上に厚さ126μmのカプトンフィルム(東レ・デュポン社製)、15cm×15cmの型にくり抜いた金属製スペーサーの順に置き、さらに、その型が満たされるだけの樹脂ペレットを型に入れ、その上に再び同じカプトンフィルム、金属板の順に重ねた。これらを油圧プレス(神藤金属工業所社製、シンドー式F型)のプレス面に移し、融点よりも20〜30℃高い温度で4分間溶融後、同温度で9.8MPa(100kgf/cm2)で1分間プレスした。プレス後5秒以内にシートを氷水中に移し急冷した。急冷後、シート表面に付着した水を直ちに拭き取り、25℃のドライオーブン中にて24時間保管した。
【0057】
(2)弾性率、降伏強度、破断強度、及び破断伸度
ドライオーブン中で保管した測定用試料を室温下で30分間以上放置した後、ASTM−D638に準じて、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、RTC−1150A)を用い、測定温度23℃、試料長(チャック間距離)60mm、試料幅10mm、引張速度50mm/分、フルスケール2〜40kg、の条件下でシートの弾性率(MPa)、降伏強度(MPa)、破断強度(MPa)、及び破断伸度(%)を測定した。なお、サンプルは(1)で得られたシートをダンベル形状(くびれ部分の幅10mm、長さ60mm)に切り取ったものを用いた。
【0058】
(3)結晶化指数Xc
試料を20mm×18mmの大きさに切り出し、広角X線回折用測定試料とした。X線回折の測定は、「X線解析の手引き 改訂第3版、84頁、1985.6.30発行、理学電機株式会社」に記載の方法に順じて下記に示す測定条件で、2θ−X線強度のプロファイルを反射法により求めた。
【0059】
【0060】
(結晶化指数Xcの定義)
結晶化指数Xcの定義を、図1を用いて説明する。
まず、X線測定で得られた2θ−X線強度のプロファイルの移動平均近似線(区間:30)を求めた。
縦軸のX線強度は、試料厚さ、粗さ等により変化するので、伸縮してもピ−ク高さの比率は変わらないとして、各移動平均近似線が2θ=13°におけるX線強度が250cpsとなるように、各値を1次変換した。次に、この移動平均近似線の2θが9°と35°における2点を結びベ−スラインCとし、2θが9°から35°までの範囲の移動平均近似線とベ−スラインで囲まれた面積Sを求めた。
【0061】
この際、ハ−ドセグメントのグリコ−ル成分がEG100モル%の時の散乱プロファイル(具体例として、下記試料A)を非晶構造由来とし、ソフトセグメントの組成比を一定にしたまま、ハ−ドセグメントのグリコ−ル組成を変化させた時の散乱プロファイル(具体例として、下記試料B)との差が結晶構造由来によるものとして、結晶化指数Xcを下記の如く定義した。
結晶化指数Xc(%)=((SBC−SAC)/SAC)×100
上式で、SACは非晶構造に起因する散乱プロファイルの面積を示し、SBCは結晶構造に起因する散乱プロファイルの面積を示す。
【0062】
(試料A、Bの作成)
実施例1で得た共重合ポリエステルを70℃で一昼夜減圧乾燥した後、以下の方法によって厚みが約100μmの未延伸シート(試料B)を作成した。
また、実施例1において、ハードセグメントのグリコール成分をEG100モル%に変更したこと以外は前記試料Bの作成方法と同様にして厚みが約100μmの未延伸シート(試料A)を作成した。
【0063】
平担な金属板の上にカプトンフィルム(東レ・デュポン社製)、所望の型にくり抜いた金属製スペーサーの順に置き、さらに、その型が満たされるだけの樹脂ペレットを型に入れ、その上に再びカプトンフィルム、金属板の順に重ねた。これらを油圧プレス(神藤金属工業所社製、シンドー式F型)のプレス面に移し、融点よりも20〜30℃高い温度で4分間溶融後、同温度で9.8MPa(100kgf/cm2)で1分間プレスした。プレス後5秒以内にシートを氷水中に移し急冷した。急冷後、シート表面に付着した水を直ちに拭き取り、25℃のドライオーブン中にて24時間保管した。
【0064】
(4)ヘイズ
測定用試料を保管容器から取り出し室温下に放置した後、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、Model NDH2000)にて測定した。測定値は下記式により、シート厚み100μmのヘイズ値に換算した。
ヘイズ(%)= Hz(%)×100(μm)/A(μm)
ここで、Hz(%)は測定試料の実測ヘイズ値であり、Aは測定試料の実測厚み(μm)を示す。
【0065】
(5)還元粘度
還元粘度(ηsp/C)は試料0.1gを25mlのフェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶液に溶解し、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した。
【0066】
(6)ポリエステルの融点
示差走査型熱量計(島津製作所(株)社製、DSC−50)、試料10mgをアルミ製のパンに充填し、窒素雰囲気下20℃/分の昇温速度で290℃まで昇温し、同温度で3分間保持した後、アルミパンを液体窒素中に投じ急冷した。急冷したアルミパンを再度示差走査型熱量計にセットし、20℃/分の昇温速度で昇温した時に出現する吸熱ピークのピーク温度を融点とした。
【0067】
(7)沸騰水処理
沸騰水に30分間浸漬処理した。
【0068】
(8)融着性
フイルム状物を後記の(9)の方法で製膜し、製膜後重ね合わせて室温で放置し、一日放置後の剥離状態を次のように定性的に評価した。
○ : 融着せず、簡単に分離できる。
△ : 融着しているが、手で分離できる。
× : 融着して一体となり、分離不可能。
【0069】
(9)フイルム状物の製膜
得られた柔軟ポリエステルを70℃で一昼夜減圧乾燥した後、ニ軸押出機(池貝鉄工社製、PCM−30)を使用して、樹脂温度220℃(または融点+20℃)、スクリュー回転数150rpmで溶融し、T−ダイスより表面温度30℃のチルロール上に押出し、未延伸シートを得た。
(実施例1)
ジメチルテレフタレート(DMT)44000重量部、EG 4900重量部、TMG24000重量部、DDO(ユニケマ社製、PRIPOL2033)60000重量部を用いて、エステル交換および重縮合を行い、還元粘度0.75dl/g、融点123℃、のポリエステルを得た。ポリエステルの組成は、EG成分が1モル%、TMG成分が49モル%、DDO成分が50モル%であった。
これを(1)の方法で測定用試料を作成し、特性を評価した。ヘイズは100μm換算で1.5%、結晶化指数は19%、弾性率は20MPaであった。
さらに、(9)の方法で製膜して厚み500μmの透明なフイルム状物を得た。フイルム状物のヘイズは100μm換算で1.0%であった。 (9)の方法により融着試験を行ったが、「○」で問題なかった。
この厚さ500μmのシートを内径(直径)10cm、外径(直径)12cmのドーナツ状に切り取り、ふた付きガラス瓶(ガラス製ふた付きの密封瓶)のシール材とした。シール材は透明であるため、外見上シール材の目立たない密封容器となった。
ガラス瓶に食用油をいれ、瓶を横倒しにしたが、内容物の漏れは認められなかった。
ガラス瓶ごと沸水中に30分間放置したが、シール材の白化は認められなかった。
【0070】
(実施例2)
実施例1で製造した樹脂を用いてプレス成形により、線径(半径)1mm、半径10cmのOリングを得た。
このOリングを容器本体、蓋ともポリエチレンテレタレート製の透明容器(密封可能な弁当箱型)に設置した。Oリングは透明で目立たなかった。
容器に水をいれて蓋をし、容器を傾けたが内容物の漏れは認められなかった。また、Oリングを沸水中に30分間放置したが、シール材のヘイズ低下は認められなかった。
【0071】
(実施例3)
ジメチルテレフタレート(DMT)68300重量部、EG 22700重量部、TMG30000重量部、DDO(ユニケマ社製、PRIPOL2033)30000重量部を用いて、エステル交換および重縮合を行い、還元粘度0.75dl/g、融点171℃、のポリエステルを得た。ポリエステルの組成は、EG成分が18.5モル%、TMG成分が65.5モル%、DDO成分が16モル%であった。
これを(1)の方法で測定用試料を作成し、特性を評価した。ヘイズは100μm換算で0.8%、結晶化指数は30%、弾性率は190MPaであった。これを(8)の方法により融着試験を行ったが、「○」で問題なかった。
PETボトル用金属製スクリューキャップ内の底部に得られた樹脂0.5gを二軸押し出し機より滴下し、すぐにキャップ底部に平坦にシール材(インナーシール)が設置されるよう押しつけ、キャップを得た。
得られたキャップを水入りの500mlPETボトルに取り付け、ボトルを横倒しにしたが、内容物の漏れは認められなかった。
【0072】
(比較例1)
ジメチルテレフタレート(DMT)65700重量部、EG 38900重量部、TMG 14100重量部、ダイマー酸(ユニケマ社製)14100重量部を用いて、エステル交換および重縮合を行い、還元粘度0.75dl/g、融点170℃のポリエステルを得た。ポリエステルの酸成分の組成は、DMT成分が84モル%、ダイマー酸成分が16モル%、グリコール成分の組成は、EG成分が72モル%、TMG成分が28モル%であった。
(1)の方法で得たフイルム状物のヘイズは4.0%、結晶化指数は4%、弾性率は60MPaであった。(8)の方法により融着試験を行ったが、「×」であった。
これを(9)の方法で製膜して厚み500μmの透明な基材シートを得た。このシートのヘイズヘイズは6.0%、結晶化指数は4%、弾性率は60MPaであった。(9)の方法により融着試験を行ったが、「×」であった。
このシートを用いて実施例1と同様にしてガラス瓶のシール材を製作、取り付け、沸水処理したが、シール材が白化した。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、本発明のポリエステル製シール材は、柔軟性、透明性ともに優れた柔軟ポリエステルからえることができ、ポリマーが可塑剤を含有しないためそのブリードアウトの問題がなく、沸騰水浸漬後にも、十分に低いヘイズに抑えることができ、極めて高い透明性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶化指数Xcを定義するための説明図である。
【符号の説明】
A ハードセグメントのグリコール成分がEG100モル%の時の2θ−X線強度プロファイルの移動平均近似線
B ソフトセグメントの組成比を一定にしたまま、ハードセグメントのグリコール組成を変化させた時の2θ−X線強度プロファイルの移動平均近似線
C 移動平均近似線(AまたはB)の2θが9°と35°における2点を結んだベースライン
SAC 非晶構造に起因する散乱プロファイルの面積
SBC 結晶構造に起因する散乱プロファイルの面積
Claims (5)
- 共重合ポリエステルを主たる構成成分とするポリエステルからなり、前記ポリエステルが、これを溶融成形して得られる未延伸シ−トの弾性率が1500MPa以下、広角X線で測定した結晶化指数Xcが5%以上、かつ前記シ−トのヘイズ(100μm換算)が15%以下であるポリエステルであることを特徴とするポリエステル製シール材。
- 共重合ポリエステルが、ハ−ドセグメントとソフトセグメントからなり、そのハ−ドセグメントを構成するジカルボン酸成分の少なくとも70モル%以上が、テレフタル酸(TPA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDA)、4,4′−ビフェニルジカルボン酸(BPA)の少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル製シール材。
- 共重合ポリエステルのハ−ドセグメントを構成するグリコ−ル成分が、1,4−テトラメチレングリコ−ル(TMG)及びエチレングリコ−ルことを特徴とする請求項2に記載のポリエステル製シール材。
- 共重合ポリエステルのソフトセグメントを構成するソフト成分が、ダイマ−ジオ−ル(DDO)であり、かつポリエステルの全グリコ−ル成分に対するDDOの組成比が1〜60モル%であることを特徴とする請求項2または3に記載のポリエステル製シール材。
- 周期律表第I−a属または第II−a属の金属元素を有する金属塩化合物を、ポリエステルに対して金属元素として0.5〜5.0重量%含有してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル製シール材。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009138681A (ja) * | 2007-12-07 | 2009-06-25 | Toyoda Gosei Co Ltd | 自動車部品用防音カバー |
JP2020022684A (ja) * | 2018-08-08 | 2020-02-13 | 共同印刷株式会社 | 針刺検知用シート |
JP7432492B2 (ja) | 2020-12-11 | 2024-02-16 | 日本化薬株式会社 | 液晶滴下工法用液晶シール剤 |
-
2002
- 2002-09-18 JP JP2002272058A patent/JP2004107489A/ja active Pending
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