JP2004105930A - 可視光線応答型光触媒 - Google Patents

可視光線応答型光触媒 Download PDF

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【課題】本発明は、可視光線領域の光も利用できる優れた光触媒性を有する可視光線応答型光触媒を得ることを目的とする。また、この可視光線応答型光触媒層を基材表面に設けることによって、セルフクリーニング性を有するとともに、長期間親水性を保ち続けることができる透明性の高い被膜を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の可視光線応答型光触媒は、アナターゼ型の多結晶構造を有する酸化チタンであって、X線回折パターンにおいて、少なくとも、(101)面の回折ピークと、(211)面の回折ピークと、(105)面の回折ピークとを有し、(105)面の回折ピークに対する(211)面の回折ピークの強度の比が1.5以上であることを特徴とする。このような可視光線応答型光触媒は、PVD法により水または/および高周波プラズマの存在下で薄膜を形成することにより得ることができる。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可視光線応答型光触媒に関する。また、本発明は、基材表面に可視光線応答型光触媒層を形成することにより、可視光領域の光により光触媒性を示し、これによりセルフクリーニング性と長期間親水性が保持できる性質とを基材に付与できる被膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光触媒としては、アナターゼ型の酸化チタンが注目されており、このものに390nmよりも波長の短い紫外線を照射すると、例えば水の分解反応などの酸化還元反応を起こすことは「本多−藤嶋効果」として知られている。また、この効果に基づき、基材表面に酸化チタン被膜あるいは薄膜を設けた種々の応用製品も試みられ、一部は実用化されている。
【0003】
しかしながら、この酸化チタンの光触媒性は、太陽光などの自然光に含まれる僅かな紫外線を吸収して酸化分解反応を誘起できるものではあるが、利用できる光の波長は酸化チタンのバンドギャップ(約3.2eV)に基づく約390nm以下の波長の紫外線に限られる。
【0004】
従って、この利用できる光の波長を可視光域にも広げることができれば、紫外線を含まない光線(例えば、紫外線カットガラスが設置された室内や蛍光灯下)でも光触媒機能を有し、肉眼で明るい場所であれば利用可能となることから、可視光線応答型光触媒の作製が試みられている。
【0005】
このようなものとしては、酸化チタンにクロムや鉄などのイオンをドーピングした光触媒がある(特開平9−192496号公報、特開平11−333300号公報)が、その性能は充分なものとはいえない。また、そのほかにも、TiOへのCuイオンドーピング法やイオン注入法などが研究され、発表されているが、現在のところ技術的に確立されているものではない(例えば、表面化学、20巻、2号、60〜65頁(1999)など)。
【0006】
さらに、酸化チタンなどの酸化物半導体に水素イオンやアルカリ金属イオンをイオン注入し、酸化チタンの酸素を欠損させた可視光線応答型の光触媒がある(特開2000−103647号公報、特開2000−157841号公報)が、この可視光線応答型は酸化チタンを成膜後イオン注入して作製するため透明性が低く、透明性が必要なガラスやミラーに適用するには不向きである。
【0007】
また、金属イオンをドープしたもの以外の可視光線応答型光触媒としては、TiOにX線照射処理を施したもの(工業材料、48巻、6号、42〜44頁(2000))や、酸化チタン上に酸化チタンと酸化ケイ素との混合層を設けたもの(特開2002−28495号公報)などが知られている。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−192496号公報(特許請求の範囲など)
【0009】
【特許文献2】
特開平11−333300号公報(特許請求の範囲など)
【0010】
【特許文献3】
特開2000−103647号公報(特許請求の範囲など)
【0011】
【特許文献4】
特開2000−157841号公報(特許請求の範囲など)
【0012】
【特許文献5】
特開2002−28495号公報(特許請求の範囲など)
【0013】
【非特許文献1】
安保正一ら、表面化学、20巻、2号、60〜65頁(1999年)
【0014】
【非特許文献2】
工業材料、48巻、6号、42〜44頁(2000年)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、可視光線領域の光も利用できる優れた光触媒性を有する新規な可視光線応答型光触媒を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、この可視光線応答型光触媒層を基材表面に設けることによって、基材に、可視光線により光分解性を発揮し、セルフクリーニング性を有するとともに、長期間親水性を保ち続けることができる特性を付与する、可視光に対する透明性が高い被膜を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者は酸化チタンの光吸収領域を可視光線領域まで広げることについて鋭意研究を重ねた結果、アナターゼ型の多結晶構造を有する酸化チタンのうち特定のX線回折パターンを有する酸化チタンが、可視光線を吸収して光触媒作用を発揮することを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0018】
すなわち、本発明の可視光線応答型光触媒は、X線回折法により測定したX線回折パターンにおいて、少なくとも、(101)面の回折ピーク(本願明細書記載の測定条件では2θ=25.3°、以下2θについては同様である)と、(211)面の回折ピーク(2θ=55.1°)と、(105)面の回折ピーク(2θ=53.9°)とを有し、(105)面の回折ピーク(2θ=53.9°)に対する(211)面の回折ピーク(2θ=55.1°)の強度の比が1.5以上であるアナターゼ型の多結晶構造を有する酸化チタンを主成分とすることを特徴とするものである。「主成分とする」とは、本発明の可視光線応答性が損なわれない限り、多少の結晶形の異なる酸化チタンやその他の不純物を含むことを許容することを意味するものである。
【0019】
また、本発明のセルフクリーニング性を有する親水性被膜は、X線回折法により測定したX線回折パターンにおいて、少なくとも、(101)面の回折ピーク(2θ=25.3°)と、(211)面の回折ピーク(2θ=55.1°)と、(105)面の回折ピーク(2θ=53.9°)とを有し、(105)面の回折ピーク(2θ=53.9°)に対する(211)面の回折ピーク(2θ=55.1°)の強度の比が1.5以上であるアナターゼ型の多結晶構造を有する可視光線応答型の酸化チタンを基材上に積層してなることを特徴とするものである。
【0020】
また、上記の可視光線応答型光触媒あるいはセルフクリーニング性を有する親水性被膜は、蒸着法、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法などにより酸化チタン薄膜を形成することにより製造することができ、蒸着等により酸素ガス存在下で成膜をする際に、蒸着装置の真空槽(チャンバー)内に、水を導入し水の存在下で酸化チタン薄膜を基板上に形成するか、あるいは、高周波(RF)プラズマを印加し高周波プラズマ中で酸化チタン薄膜を基板上に形成するか、さらに、この両者を組み合わせ、水を導入し水の存在下において、高周波(RF)プラズマを印加し高周波プラズマ中で酸化チタン薄膜を基板上に形成するかなどの方法により製造することができる。
【0021】
このような方法で製造した酸化チタンは、この酸化チタンのX線回折(XRD)を測定すると、成膜条件あるいは測定条件により若干の幅があるが、X線回折パターンにおいて、ほぼ2θが25.3°(101)面、37.8°(004)面、38.6°(112)面、 48.0°(200)面、53.9°(105)面、55.1°(211)面、62.7°(204)面などに回折ピークを有するもので、特に、2θ=53.9°(105)面と55.1°(211)面とに近接した回折ピークを有し、しかもこれらの回折ピークにおいて、2θ=53.9°(105)面の回折ピークに対する2θ=55.1°(211)面の回折ピークの強度の比が1.5以上であるようなアナターゼ型の多結晶構造を有する酸化チタンが得られ、このような2θ=53.9°(105)面の回折ピークに対する2θ=55.1°(211)面の回折ピークの強度の比、すなわち、[(211)面の回折ピーク(2θ=55.1)強度/(105)面の回折ピーク(2θ=53.9°)強度]で示される強度の比が1.5以上であるとき、得られた酸化チタンは、後述するように可視光領域の波長の光(400〜450nm程度)を吸収することができ、これにより光触媒作用(例えば、水や有機物の分解反応など)を示すものとなることがわかった。
【0022】
すなわち、酸化チタンの結晶が、上記のように面指数(101)、(004)、(200)、(105)、(211)、(204)などに回折ピークを有する多結晶体となることで、バンドギャップに歪みや格子欠陥などが生じ可視光線で励起可能なトラップ準位が形成されたものと考えられる。
【0023】
以上のようなメカニズムにより空間電位が生じた結果、可視光線領域の光を吸収し、励起された酸化チタンにより発生した正孔(h)が酸化ケイ素層中を拡散し、最表面の水と反応することによりヒドロキシルラジカル(OH・)を生じ、このヒドロキシルラジカル(OH・)が最表面に付着した有機物などを酸化分解することになる。
【0024】
本発明のアナターゼ型酸化チタンを含む多結晶層から構成される酸化チタン層の厚みは特に制限はないが、オイルや油脂などの有機物の分解性など触媒性能を考慮すると100nm以上の膜厚であることが好ましく、被膜を形成する場合の実用性の面からいえば、一般に150nm〜1000nm程度であることが好ましい。
【0025】
また、被膜を形成する基材としては、特に制限はなくガラス、セラミックス、磁器、金属、樹脂(耐熱性有するものが好ましい)などがあり、これらの基材表面に本発明の酸化チタン層(薄膜)を積層することにより、可視光線による光触媒活性を付与することができ、セルフクリーニング性を有し、親水性の透明性が高い被膜が形成されたものが得られる。
【0026】
なお、このような被膜においては、被膜表面に酸化チタンが露出していると、耐摩耗性、耐汚染性、耐水性、耐薬品性に問題があることがあり、実用的見地からみて表面に酸化ケイ素層を設けることができる。また、このような表面の酸化ケイ素層では、正孔による水の酸化で生じたヒドロキシルラジカルによりTiやSiがヒドロキシ化された「Ti−OH」と「Si−OH」とにおいて、「Si−OH」の安定性が「Ti−OH」に比べ格段に高いため、「Si−OH」が残存し、これによる被膜表面の親水性を長期間にわたって維持できるという点からも好ましいものである。
【0027】
このような酸化ケイ素層を酸化チタン上に設ける場合、酸化ケイ素のバンドギャップは5eV以上であり、可視光ないし紫外光に対して透明であり、本発明の可視光線応答型光触媒の光吸収性には影響を与えることはないが、酸化チタンから生じる正孔の拡散性を考慮すると、この酸化ケイ素層はあまり厚くない方が好ましく、一般に、5〜60nm程度、好ましくは5〜50nm程度、さらに好ましくは10〜30nm程度の膜厚である。
【0028】
本発明の被膜が適用される製品としては、例えば車両関連製品としては、車両用バックミラーやヘッドランプのレンズやリフレクター、光源(バルブ)などがあり、その他エアコンフィルター、空気清浄機、蛍光灯室内、照明器具を始め建材用ガラス、外壁など種々のものがあるが、これらには限定されない。
【0029】
なお、基材として一般のガラス(ソーダライムガラス)を用いる場合には、約400℃以上の成膜中にガラス中のナトリウムイオンが酸化チタン膜中に拡散して、NaTi層を形成し、この層が電子−正孔対の再結合中心として作用し、光触媒活性が損なわれる場合がある。これを防止するには、特に、基材となるガラスと酸化チタン層の間に酸化ケイ素層などのバリヤー層を介在させることが好ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の可視光線応答型光触媒として、あるいは親水性被膜として用いる酸化チタンは、これを本願明細書記載のとおりのX線回折法により結晶構造を測定した際、結晶構造を示すX線回折パターンにおいて、ほぼ2θが25.3°(101)面、37.8°(004)面、38.6°(112)面、48.0°(200)面、53.9°(105)面、55.1°(211)面、62.7°(204)面などに回折ピークを有し、特に、2θ=53.9°(105)面と55.1°(211)面とに近接した回折ピークを有するものであって、これらの回折ピークのうち、2θ=53.9°(105)面の回折ピークに対する2θ=55.1°(211)面の回折ピークの強度の比[(211)面の回折ピーク(2θ=55.1)強度/(105)面の回折ピーク(2θ=53.9°)強度]が1.5以上であるようなアナターゼ型の多結晶構造を有する酸化チタンである。
【0031】
このような酸化チタンは、真空蒸着、スパッタリングあるいはイオンプレーティング法のようないわゆるPVD法により調製することができ、これらの方法により酸化チタン薄膜を形成する際に、蒸着装置やスパッタリング装置などの真空槽内に、酸素ガスとともに、水を導入し、酸素と水の存在下で酸化チタン薄膜を形成するか、あるいは、真空槽内に例えば、13.56MHzの高周波(RF)プラズマを生成させ、酸素ガスの存在下高周波(RF)プラズマ中で酸化チタンの薄膜を形成するか、さらには、両者を組み合わせ、酸素ガスおよび水の存在下において、高周波(RF)プラズマ中で酸化チタン薄膜を形成することにより製造することができる。
【0032】
次に、上記の各製造方法の具体例として真空蒸着法の場合について示す。
【0033】
(1)水の存在下で酸化チタン薄膜を形成する方法
まず、蒸発源を備える真空蒸着装置の真空槽内に、蒸着材料である、酸化チタンを形成するための金属チタンあるいは酸化チタンをセットするとともにガラス基板をセットし、真空槽内の圧力を真空ポンプで3×10−6Torr程度まで排気し、それと同時にガラス基板を所定の設定温度にヒーターで加熱(一般に、200℃以上500℃以下)し、真空環境を作る。ついで、酸素ガス(純度99.9%程度)を真空圧力計を確認しながら所定の圧力(一般に、1×10−4〜5×10−4Torr程度)まで導入し、水(HO)ガスを所定の圧力(酸素分圧に対して5〜40%程度)となるように導入する。圧力と温度条件が整った後、金属チタンあるいは酸化チタンにエレクトロンビームを照射し、金属チタンあるいは酸化チタンを加熱し、シャッターを開け蒸着を開始する。蒸着膜厚は光学式膜厚計または水晶式膜厚計などにより監視し、設定膜厚となったところでシャッターを閉じ蒸着を終了し、基材上に形成された酸化チタン層を得る。
【0034】
(2)高周波(RF)プラズマ中で酸化チタン薄膜を形成する方法
まず、蒸発源を備える真空蒸着装置の真空槽内に、蒸着材料である、酸化チタンを形成するための金属チタンあるいは酸化チタンをセットするとともにガラス基板をセットし、真空槽内の圧力を真空ポンプで3×10−6Torr程度まで排気し、それと同時にガラス基板を所定の設定温度にヒーターで加熱(一般に、200℃以上500℃以下)し、真空環境を作る。ついで、酸素ガス(純度99.9%程度)を真空圧力計を確認しながら所定の圧力(一般に、1×10−4〜5×10−4Torr程度)まで導入する。ついで、高周波(RF)プラズマを真空槽内に発生させる。圧力と温度条件が整い、発生させた高周波(RF)プラズマが安定した後、金属チタンあるいは酸化チタンにエレクトロンビームを照射し、金属チタンあるいは酸化チタンを加熱し、シャッターを開け蒸着を開始する。蒸着膜厚は光学式膜厚計または水晶式膜厚計などにより監視し、設定膜厚となったところでシャッターを閉じ蒸着を終了し、基材上に形成された酸化チタン層を得る。この場合、薄膜堆積速度は、0.7nm/s以下に制御することが好ましい。なお、この高周波(RF)プラズマを用いる製造方法は、一般にRFイオンプレーティング法とも呼ばれている方法である。
【0035】
(3)水の存在下、高周波(RF)プラズマ中で酸化チタン薄膜を形成する方法
まず、蒸発源を備える真空蒸着装置の真空槽(チャンバー)内に、蒸着材料である、酸化チタンを形成するための金属チタンあるいは酸化チタンをセットするとともにガラス基板をセットし、真空槽内の圧力を真空ポンプで3×10−6Torr程度まで排気し、それと同時にガラス基板を所定の設定温度にヒーターで加熱(一般に、200℃以上500℃以下)し、真空環境を作る。ついで、酸素ガス(純度99.9%程度)を真空圧力計を確認しながら所定の圧力(一般に、1×10−4〜5×10−4Torr程度)まで導入し、水(HO)ガスを所定の圧力(酸素分圧に対して5〜40%程度)となるように導入する。ついで、上記と同様にエレクトロンビームをトリガーとして、高周波(RF)プラズマを真空槽内に発生させる。圧力と温度条件が整い、発生させた高周波(RF)プラズマが安定した後、金属チタンあるいは酸化チタンにエレクトロンビームを照射し、金属チタンあるいは酸化チタンを加熱し、シャッターを開け蒸着を開始する。蒸着膜厚は光学式膜厚計または水晶式膜厚計などにより監視し、設定膜厚となったところでシャッターを閉じ蒸着を終了し、基材上に形成された酸化チタン層を得る。
【0036】
以上のようにして作製された酸化チタンについて、走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて表面状態を観察したところ、いずれの場合も酸化チタンは柱状構造を有するものであったが、酸化チタンのグレインサイズに変化が認められた。すなわち、水を導入せず、高周波プラズマも印加せずに形成した酸化チタン薄膜はグレインサイズが約50nmであったのに対し、高周波(RF)プラズマを印加(600W)して形成した酸化チタン薄膜では、グレインサイズが約25nmと小さくなる一方、水を導入するとグレインサイズは大きくなり、例えば、水を酸素分圧に対して20%添加し、高周波(RF)プラズマを印加(400W)して形成した酸化チタンでは、グレインサイズは50〜60nmのものであった。
【0037】
本発明の可視光線応答型光触媒または親水性被膜は上述のようにして得られるが、これを種々の基材に適用することにより、各種の応用製品が得られる。その一例として、車両搭載用のミラーの場合について説明する。
【0038】
車両搭載用のミラーは、ミラー表面に本発明の親水性被膜を形成することにより得られるもので、まず、ガラス表面にCrなどの金属を蒸着あるいはスパッタリングし反射面を形成し、次いで、このCr層の上に本発明の親水性被膜を設けるか、あるいは、Cr層を形成した面とは逆のガラス表面上に本発明の親水性被膜を設けることにより製造することができる。なお、後者の場合、ガラス基材として、一般のガラス(ソーダライムガラス)を用いる場合には、ガラス基板上に酸化ケイ素などのバリヤー層を設け、その上に本発明の親水性被膜を設けることが、ソーダライムガラス中のNaによる光触媒活性の失活を防止する上で好ましい。
【0039】
なお、他の製品、例えば、車両用のヘッドランプのレンズやリフレクター、光源(バルブ)をはじめとする種々の製品、エアコンフィルター、空気清浄機、蛍光灯室内、照明器具を始め建材用ガラス、外壁などの場合も同様に基材表面に本発明の親水性被膜を形成することにより製造することができる。
【0040】
次に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0041】
【実施例】
まず、本発明の可視光線対応型光触媒をガラス基板上に形成し、得られた触媒被膜について、可視光線による光触媒活性を、被膜と水との接触角を測定することにより評価した。
【0042】
(1)可視光線対応型光触媒の調製
実施例1〜4 水の存在下で薄膜形成
以下の手順に従い、可視光線応答型光触媒を作製した。
【0043】
(1) 真空蒸着装置内に、蒸着材料となるTi(商品名、OS50:オプトロン社製)をセットするとともに、ガラス基板をセットした。
【0044】
(2) 真空蒸着装置の扉を閉じ、真空槽内を真空ポンプで1×10−6Torrまで排気するとともに、ガラス基板をヒーターで約330℃に加熱した。
【0045】
(3) 圧力と温度条件が整った後、マスフローコントローラー(FCS)を用いて、真空槽内に酸素(O)ガスを3×10−4Torrまで導入し、ついで水(HO)ガスを酸素ガス分圧に対して、10〜40%となるように導入した。
【0046】
(4) Tiにエレクトロンビーム(EB)を照射し、加熱した後、シャッターを開き蒸着を開始し、300nmに達した時点でシャッターを閉じ、TiOの蒸着を終了させ、ガラス基板上の膜厚約300nmの酸化チタン薄膜を得た。なお、TiOの蒸着速度は水晶式膜厚計(XTC)で0.5nm/sに設定し、全体の膜厚は光学式膜厚計(OPM)で監視した。
【0047】
実施例5〜8 高周波(RF)プラズマ中での薄膜形成
以下の手順に従い、可視光線応答型光触媒を作製した。
【0048】
(1) 真空蒸着装置内に、蒸着材料となるTi(商品名、OS50:オプトロン社製)をセットするとともに、ガラス基板をセットした。
【0049】
(2) 真空蒸着装置の扉を閉じ、真空槽内を真空ポンプで1×10−6Torrまで排気するとともに、ガラス基板をヒーターで約330℃に加熱した。
【0050】
(3) 圧力と温度条件が整った後、マスフローコントローラー(FCS)を用いて、真空槽内に酸素(O)ガスを3×10−4Torrまで導入し、ついで、エレクトロンビームをトリガーとして、高周波(RF)プラズマを発生させ、100〜600Wの出力で印加した。
【0051】
(4) Tiにエレクトロンビーム(EB)を照射し、加熱した後、シャッターを開き蒸着を開始し、300nmに達した時点でシャッターを閉じ、TiOの蒸着を終了させ、ガラス基板上の膜厚約300nmの酸化チタン薄膜を得た。なお、TiOの蒸着速度は水晶式膜厚計(XTC)で0.5nm/sに設定し、全体の膜厚は光学式膜厚計(OPM)で監視した。
【0052】
実施例9〜15 水の存在下、高周波(RF)プラズマ中でので薄膜形成
以下の手順に従い、可視光線応答型光触媒を作製した。
【0053】
(1) 真空蒸着装置内に、蒸着材料となるTi(商品名、OS50:オプトロン社製)をセットするとともに、ガラス基板をセットした。
【0054】
(2) 真空蒸着装置の扉を閉じ、真空槽内を真空ポンプで1×10−6Torrまで排気するとともに、ガラス基板をヒーターで約330℃に加熱した。
【0055】
(3) 圧力と温度条件が整った後、マスフローコントローラー(FCS)を用いて、真空槽内に酸素(O)ガスを3×10−4Torrまで導入し、ついで水(HO)ガスを酸素ガス分圧に対して、10%および20%となるように導入し、さらに、エレクトロンビームをトリガーとして、高周波(RF)プラズマを発生させ、それぞれ200〜600Wおよび100〜600Wの出力で印加した。
【0056】
(4) Tiにエレクトロンビーム(EB)を照射し、加熱した後、シャッターを開き蒸着を開始し、300nmに達した時点でシャッターを閉じ、TiOの蒸着を終了させ、ガラス基板上の膜厚約300nmの酸化チタン薄膜を得た。なお、TiOの蒸着速度は水晶式膜厚計(XTC)で0.5nm/sに設定し、全体の膜厚は光学式膜厚計(OPM)で監視した。
【0057】
比較例1
上記の工程(3)において、水を導入せず、高周波(RF)プラズマを印加しなかった以外、(1)〜(4)と同様にして、ガラス基板上の膜厚約300nmの酸化チタン薄膜を得た。
【0058】
(2)X線回折による評価
上記の実施例1〜15および比較例1により得られた酸化チタン薄膜をX線回折法により結晶構造を評価した。測定は、試料ホルダーにガラス基板上に蒸着した酸化チタンをセットし、X線回折装置(RINT2000縦型ゴニオメータ、理学電機社製)を用い、次の条件でX線回折測定を行った。
【0059】
X線:Cu−Kα
管電圧/管電流:40kV/200mA
スキャンスピード:4.0°/分
スキャンステップ:0.02°
測定範囲:5°〜80°
得られたX線回折パターンの一例を図1〜図3に示した。図1の(a)は、蒸着時に水を酸素分圧に対して20%添加して形成した酸化チタン薄膜のX線回折パターンであり(実施例2)、(b)は、水を添加せず、高周波(RF)プラズマも印加せずに形成した酸化チタン薄膜のX線回折パターン(比較例1)を示したものである。図2は、蒸着時に高周波(RF)プラズマを印加して形成した酸化チタン薄膜のX線回折パターンであり(実施例5〜8)、図3は、蒸着時に水を酸素分圧に対して20%添加して形成し、印加する高周波(RF)プラズマを出力を100W〜600Wと変化させた場合の酸化チタン薄膜のX線回折パターンを示している。
【0060】
図1〜図2によると、水を添加せず、高周波(RF)プラズマも印加しないで酸化チタン薄膜(比較例1)のX線回折パターンは、(105)面(2θ=53.9°)のみ結晶が成長し、(211)面(2θ=55.1°)の成長が認められないのに対して、水を添加、あるいは高周波(RF)プラズマを印加したものでは、(105)面(2θ=53.9°)のみならず、(211)面(2θ=55.1°)の成長が認められ、しかも(105)面(2θ=53.9°)の回折強度に対して、(211)面(2θ=55.1°)の回折強度が強いことがわかる。また、この回折強度の変化は、添加する水の量あるいは印加する高周波(RF)プラズマの出力によって変化し、添加する水の量が増加すると、(211)面のピーク強度が高くなる傾向を示し、印加する高周波(RF)プラズマの出力が増加しても(211)面のピーク強度が高くなる傾向が認められる。
【0061】
また、図3によれば、水を添加するとともに高周波(RF)プラズマを印加したものも同様なX線回折パターンを示し、(105)面(2θ=53.9°)の回折強度に対する(211)面(2θ=55.1°)の回折強度は、印加する高周波(RF)プラズマの出力が大きくなるにつれて、前記同様、強度の比が大きくなる傾向があることがわかる。
【0062】
得られたX線回折パターンより、(105)面(2θ=53.9°)の回折ピーク強度に対する(211)面(2θ=55.1°)の回折ピーク強度の比(表中に「(211)/(105)」として表示した)を求め、成膜条件と共に表1に示した。
【0063】
【表1】
Figure 2004105930
(3)可視光線応答型光触媒能の評価
次に、得られた可視光線応答型光触媒の活性および得られた被膜の親水性を、エンジンオイルを塗布した可視光線応答型光触媒膜上で水滴が形成する接触角により、評価した。接触角は固体と液体の濡れ性の程度を示す指標であり、接触角が小さいほど、固体表面は濡れやすく、親水性を有していることになる。そして、光照射により触媒膜上に塗布したエンジンオイルが分解されれば、エンジンオイルに起因する触媒膜上の撥水性が消失することになり接触角は減少することから、光触媒活性を評価することができる。
【0064】
1.紫外線照射での光触媒能の検証
まず、上記実施例および比較例で得られた可視光線応答型光触媒が、通常のTiO触媒と同様に紫外線照射により光触媒性を有することを確かめるため、以下の実験を行った。
【0065】
すなわち、実施例1〜15および比較例1で得られた各試料(光触媒被膜)の表面にエンジンオイル(キャッスルモーターオイル)0.025wt%ジクロルメタン溶液を塗布した後、ブラックライト(フナコシ社製、UVL−56)を用いて4時間照射(紫外線量、1mW/cm)し、エンジンオイル塗布時(初期値)と、照射後との接触角を接触角計(協和界面科学社製、CA−X)を用いて、純水による液滴についてそれぞれ測定し、紫外線に対する触媒活性を評価した。その結果、いずれの場合も、初期値として40°〜60°程度であったものが、紫外線照射4時間経過後には5°以下となり、得られた酸化チタンが光触媒として機能するものであることが確認された。
【0066】
2.可視光線照射での光触媒能の検証
次に、可視光線照射による光触媒能を、以下のようにして評価した。
【0067】
(1) 紫外線照射による光触媒活性を検証した上記試料のうち、実施例5、9〜11を除く各試料に高圧水銀灯を用いて紫外線を照射し、水との接触角を5°以下の接触角計の測定限界以下まで低下させ、各試料表面の汚れを分解除去した。
【0068】
(2) 上記処理した各試料に、再度エンジンオイル(キャッスルモーターオイル)0.025wt%ジクロルメタン溶液を塗布した。
【0069】
(3) 可視光線照射は、光源として、蛍光灯(ナショナルパルック 18W、昼光色)の光を紫外線カットガラス(ラミレックスUV FL3+FL3、セントラルガラス社製)を介して3cmの距離をおいて、各試料に照射した。照射光の分光特性を図4に示した。
【0070】
(4) 蛍光灯の光を照射を開始してから、経時的に接触角を測定した。なお、各試料表面における紫外線量を、紫外線線量計UVR−1(受光部UVR−36、トプコン社製)を用いて測定し、紫外線量が0mW/cmであることを確認した。
【0071】
接触角の測定結果を、水の存在下で酸化チタン薄膜を形成したもの(実施例1〜4)、高周波(RF)プラズマ中で酸化チタン薄膜を形成したもの(実施例6〜8)および水の存在下で高周波(RF)プラズマを印加して酸化チタン薄膜を形成したもの(実施例12〜15)について、比較例1のものととともにそれぞれ図5〜図7に示した。なお、比較例1の試料については、実験条件をそろえ比較検討するため、それぞれの実験で重複して行った。
【0072】
照射した光は図4に示すように400nm以下の紫外線がカットされたものである。そして、図5〜図7によると、比較例1の酸化チタン薄膜のエンジンオイル塗布時の接触角が約44°程度であり、150時間照射した後の水の接触角が約40°とほとんど変化がないものであるのに対して、実施例の酸化チタン薄膜は、初期の水の接触角が30°〜40°と小さいものがあるものの(実施例4、7および8)、いずれの場合でも150時間照射したものの水の接触角は30°以下に低下しており、可視光線を吸収して光触媒作用によりエンジンオイルを分解していることがわかる。本発明の酸化チタン薄膜が可視光線を吸収し光触媒作用を奏する理由は、現在のところ定かではないが、酸化チタンを多結晶体とすることにより、バンドギャップに歪みや格子欠陥などが生じ、可視光線で励起可能なトラップ準位が形成された結果であると推測される。
【0073】
加えて、本実験で使用したように、汚染後再生した触媒であっても、何等問題なく使用できるものであることもわかる。
【0074】
3.エンジンオイル分解の確認
次に、光による有機物の分解作用について実施例14の試料を用いて検証した。すなわち、新しく作製した試料にエンジンオイル(キャッスルモーターオイル)0.025wt%ジクロルメタン溶液を表面に塗布したものについて、触媒表面をXPSを用いて、触媒表面から数nm程度の原子の存在比を、光電子スペクトルを測定し、触媒表面に存在するエンジンオイルに由来する炭素の量「C1s」と、触媒表面のチタンの量「Ti2p」および酸素の量「O1s」とを測定した。チタンの量「Ti2p」や酸素の量「O1s」に対して炭素の量「C1s」が減少すれば、それだけエンジンオイルが分解が進んでいることが示される。紫外光を6分間照射した時の結果を、エンジンオイル塗布時のものとともに図8に示した。図8によると、光照射後のもの(b)は、エンジンオイル塗布時のもの(a)に比較して、炭素の量「C1s」が減少しており、紫外光によって、エンジンオイルが分解されたことがわかる。
【0075】
(4)熱吸収分光法(PCS)法による光吸収の評価
熱吸収分光法(PCS:Photo−Calorimetric Spectoscopy)法は、極低温中である量の分光した光を試料にあて、光吸収によって試料から発生した微量な熱を測定するものである。この測定方法の温度の検出限界は2°Kにおいて、10μ°Kであり、熱量の検出限界は6.2×10−12Jである。
【0076】
PCS測定システムの概略は図9に示すとおりのものであり、この装置を用いて、2°Kで、5×5mmの試料に、φ3.0mmの光をあて、実施例7および実施例14と同様な条件にてマイカ基板に5λ(約1000nm)のTiO膜を形成して作製した試料を用いて、熱吸収スペクトルを測定した。得られた結果を図10に示した。図10によると、いずれの試料(酸化チタン薄膜)も、450nm(2.75eV)付近の可視光より応答していることが確認された。すなわち、本発明の可視光線応答型光触媒は、通常の酸化チタンが吸収する紫外領域の光のみならず、450nmの可視光領域の波長にまで、その光吸収が拡大されており、このような可視光線を吸収し、光触媒作用(例えば、水や有機物の分解など)を発揮するものであることがわかる。
【0077】
【発明の効果】
通常の酸化チタン光触媒が約380nm以下の紫外光しか利用出来なかったのに対し、本発明の光触媒はアナターゼ型の多結晶体であり、バンドギャップに歪みや格子欠陥などが生じ、可視光線で励起可能なトラップ準位が形成されているために、吸収域が可視光域にまで拡がった可視光線応答型光触媒が得られた。
【0078】
また、本発明の可視光線応答型光触媒で形成した被膜は、セルフクリーニング性を有し、長期間親水性を維持できるという優れた効果を奏するものであった。
【0079】
すなわち、本発明の可視光線応答型光触媒を利用すると、紫外線が無い所(例えば、紫外線カットガラス付きの車両室内や、室内の蛍光灯下)でも光触媒機能を発現できるため、肉眼で明るい場所であれば利用可能となる。また、本発明の可視光線応答型光触媒は、本来の紫外線での光触媒機能も併せ持つので、その応用範囲は極めて広いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可視光線応答型光触媒のX線回折パターンを示した図であり、図中(a)は、蒸着時に水を添加して形成した酸化チタン薄膜のX線回折パターンであり、(b)は、水を添加せず、高周波(RF)プラズマも印加せずに形成した酸化チタン薄膜のX線回折パターンである。
【図2】本発明の可視光線応答型光触媒のX線回折パターンを示した図であり、蒸着時に高周波(RF)プラズマを印加して形成した酸化チタン薄膜のX線回折パターンを示している。
【図3】本発明の可視光線応答型光触媒のX線回折パターンを示した図であり、蒸着時に水を添加するとともに、高周波(RF)プラズマを印加して形成した酸化チタン薄膜のX線回折パターンを示している。
【図4】可視光線照射による光触媒活性を評価するために照射した照射光の分光特性を示す図である。
【図5】本発明の可視光線応答型光触媒の可視光線によるエンジンオイルの酸化分解および触媒(被膜)表面の親水性の程度を、水に対する接触角を指標として示すグラフである。図に示した可視光線応答型光触媒は、水の存在下で酸化チタン薄膜を形成したものであり、図中、「■」、「▲」、「×」および「○」は酸素ガス分圧に対して水をそれぞれ10%、20%、30%および40%導入して形成したもの(実施例1〜4)を示し、「◆」は、水を導入せずに形成したもの(比較例1)を示している。
【図6】本発明の可視光線応答型光触媒の可視光線によるエンジンオイルの酸化分解および触媒(被膜)表面の親水性の程度を、水に対する接触角を指標として示すグラフである。図に示した可視光線応答型光触媒は、高周波(RF)プラズマ中で酸化チタン薄膜を形成したものであり、図中、「▲」、「■」および「○」は印加した高周波(RF)プラズマの出力がそれぞれ200W、400Wおよび600Wであるものを(実施例6〜8)を示し、「◆」は、高周波(RF)プラズマを印加せず形成したもの(比較例1)を示している。
【図7】本発明の可視光線応答型光触媒の可視光線によるエンジンオイルの酸化分解および触媒(被膜)表面の親水性の程度を、水に対する接触角を指標として示すグラフである。図に示した可視光線応答型光触媒は、酸素分圧に対して20%の水の存在下で高周波(RF)プラズマを印加して酸化チタン薄膜を形成したものであり、図中、「■」、「▲」、「×」および「○」は印加した高周波(RF)プラズマの出力がそれぞれ100W、200W、400Wおよび600Wであるものを(実施例12〜15)を示し、「◆」は、水を導入せず、しかも高周波(RF)プラズマを印加せず形成したもの(比較例1)を示している。
【図8】本発明の可視光線応答型光触媒の可視光線によるエンジンオイルの酸化分解に関して、光触媒表面について、炭素の量「C1s」と、チタンの量「Ti2p」および酸素の量「O1s」とを光照射の前後について測定した光電子スペクトルである。図中、(a)は、エンジンオイル塗布時のものを示し、(b)は、光照射後のものである。
【図9】極低温中で光吸収による熱発生を検出するための熱吸収分光法(PCS)法の測定システムの概要を示す図である。
【図10】上記のPCS法で測定した熱吸収スペクトルを示す図である。

Claims (8)

  1. X線回折パターンにおいて、少なくとも、(101)面の回折ピークと、(211)面の回折ピークと、(105)面の回折ピークとを有し、(105)面の回折ピークに対する(211)面の回折ピークの強度の比が1.5以上であるアナターゼ型の多結晶構造を有する酸化チタンを主成分とする可視光線応答型光触媒。
  2. 蒸着法、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法により酸化チタン薄膜を形成する際に、真空槽内に水を導入し、水の存在下で酸化チタン薄膜を基板上に形成することを特徴とする、請求項1記載の可視光線応答型光触媒の製造方法。
  3. 蒸着法、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法により酸化チタン薄膜を形成する際に、高周波プラズマを印加し、高周波プラズマ中で酸化チタン薄膜を基板上に形成することを特徴とする、請求項1記載の可視光線応答型光触媒の製造方法。
  4. 蒸着法、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法により酸化チタン薄膜を形成する際に、真空槽内に水を導入し、さらに高周波プラズマを印加し、水の存在下、かつ高周波プラズマ中で酸化チタン薄膜を基板上に形成することを特徴とする、請求項1記載の可視光線応答型光触媒の製造方法。
  5. X線回折パターンにおいて、少なくとも、(101)面の回折ピークと、(211)面の回折ピークと、(105)面の回折ピークとを有し、(105)面の回折ピークに対する(211)面の回折ピークの強度の比が1.5以上であるアナターゼ型の多結晶構造を有する可視光線応答型の酸化チタンを基材上に積層してなるセルフクリーニング性を有する親水性被膜。
  6. 蒸着法、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法により酸化チタン薄膜を形成する際に、真空槽内に水を導入し、水の存在下で酸化チタン薄膜を基板上に形成することを特徴とする、請求項5記載のセルフクリーニング性を有する親水性被膜の製造方法。
  7. 蒸着法、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法により酸化チタン薄膜を形成する際に、高周波プラズマを印加し、高周波プラズマ中で酸化チタン薄膜を基板上に形成することを特徴とする、請求項5記載のセルフクリーニング性を有する親水性被膜の製造方法。
  8. 蒸着法、スパッタリング法あるいはイオンプレーティング法により酸化チタン薄膜を形成する際に、真空槽内に水を導入し、さらに高周波プラズマを印加し、水の存在下、かつ高周波プラズマ中で酸化チタン薄膜を基板上に形成することを特徴とする、請求項5記載のセルフクリーニング性を有する親水性被膜の製造方法。
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