JP2003038963A - 可視光線応答型光触媒 - Google Patents

可視光線応答型光触媒

Info

Publication number
JP2003038963A
JP2003038963A JP2001230628A JP2001230628A JP2003038963A JP 2003038963 A JP2003038963 A JP 2003038963A JP 2001230628 A JP2001230628 A JP 2001230628A JP 2001230628 A JP2001230628 A JP 2001230628A JP 2003038963 A JP2003038963 A JP 2003038963A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
visible light
metal fluoride
titanium oxide
photocatalyst
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001230628A
Other languages
English (en)
Inventor
Tsutomu Ubukata
勉 生方
Minoru Enomoto
實 榎本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ichikoh Industries Ltd
Original Assignee
Ichikoh Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ichikoh Industries Ltd filed Critical Ichikoh Industries Ltd
Priority to JP2001230628A priority Critical patent/JP2003038963A/ja
Publication of JP2003038963A publication Critical patent/JP2003038963A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Surface Treatment Of Glass (AREA)
  • Catalysts (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、可視光線領域の光も利用でき優れ
た光触媒性を有する可視光線応答型光触媒を得ることを
目的とする。また、この可視光線応答型光触媒層を基材
表面に設けることによって、セルフクリーニング性を有
するとともに、長期間親水性を保ち続けることができる
透明性の高い被膜を提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明の可視光線応答型光触媒1は、基
材2上に、酸化チタン層3、金属フッ化物層4、及び酸
化ケイ素層5とが順に積層されたものであり、特に好ま
しい金属フッ化物としてCaFなどが挙げられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可視光線応答型光
触媒に関する。また、本発明は、基材表面に可視光線応
答型光触媒層を形成することにより、可視光域の光によ
り光触媒性を示し、これによりセルフクリーニング性と
長期間親水性が保持できる性質とを基材に付与できる被
膜と、これらの被膜を設けた応用製品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、光触媒としては、アナターゼ型の
酸化チタンが注目されており、このものに380nmよ
りも波長の短い紫外線を照射すると、例えば水の分解反
応などの酸化還元反応を起すことは「本多−藤嶋効果」
として知られている。また、この効果に基づき、基材表
面に酸化チタン被膜あるいは薄膜を設けた種々の応用製
品も試みられ、一部は実用化されている。
【0003】しかしながら、この酸化チタンの光触媒性
は、太陽光などの自然光に含まれる僅かな紫外線を吸収
して酸化分解反応を誘起できるものではあるが、利用で
きる光の波長は酸化チタンのバンドギャップ(約3.2
eV)に基づく約380nm以下の波長の紫外線に限ら
れる。
【0004】従って、この利用できる光の波長を可視光
域にも広げることができれば、紫外線を含まない光線
(例えば、紫外線カットガラスが設置された室内や蛍光
灯下)でも光触媒機能を有し、肉眼で明るい場所であれ
ば利用可能となることから、可視光線応答型光触媒の作
製が試みられている。
【0005】このようなものとしては、酸化チタンなど
の酸化物半導体に水素イオンやアルカリ金属イオンをイ
オン注入し、酸化チタンの酸素を欠損させた可視光線応
答型の光触媒がある(特開2000−1023647号
公報)が、この可視光線応答型は酸化チタンを成膜後イ
オン注入して作製するため透明性が低く、透明性が必要
なガラスやミラーに適用するには不向きである。また、
そのほかにも、TiO へのCrイオンドーピング法や
イオン注入法などが研究され、発表されているが、現在
のところ技術的に確立されているものではない(例え
ば、表面科学、20巻、2号、60〜65頁(199
9)など)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、可
視光線領域の光も利用できる、優れた光触媒性を有する
可視光線応答型光触媒を提供することを目的とする。
【0007】また、本発明は、この可視光線応答型光触
媒層を基材表面に設けることによって、基材に、可視光
線により光分解性を発揮し、セルフクリーニング性を有
するとともに、長期間親水性を保ち続けることができる
特性を付与する、可視光に対する透明性が高い被膜を提
供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、酸化チタン
の光吸収領域を可視光線領域まで広げることについて鋭
意研究を重ねた結果、酸化チタン上に金属フッ化物層を
設けることにより上記課題を達成できることを見出し、
この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】すなわち、本発明の可視光線応答型光触媒
は、光触媒機能を有する酸化チタン上に、金属フッ化物
層、及び酸化ケイ素層とが順に積層されていることを特
徴とし、また、本発明のセルフクリーニング性を有する
親水性被膜は、基材上に光触媒機能を有する酸化チタン
層、金属フッ化物層、及び酸化ケイ素層とが順に積層さ
れていることを特徴とするものである。
【0010】さらに、本発明の可視光線応答型光触媒及
び親水性被膜は、上記金属フッ化物層の厚さが、5〜1
20nm、好ましくは5〜50nmであり、上記酸化ケ
イ素層の厚さが5〜50nm、好ましくは10〜30n
mであることも特徴とする。
【0011】なお、上記の親水性被膜は膜厚により制限
されるものでははなく、一般に、膜厚が1μm以下のい
わゆる薄膜と称されるものや、膜厚が数μm以上の塗膜
あるいはコーティング膜と称されるものも包含される概
念である。
【0012】本発明の金属フッ化物層は、チタン以外の
異種金属元素のフッ化物により形成された層であり、金
属フッ化物層は1種類の金属フッ化物により構成されて
いてもよく、2種類以上の金属フッ化物の混合フッ化物
により構成されていてもよい。
【0013】本発明は、酸化チタン上に金属フッ化物が
積層され、酸化チタン層との間で界面を形成することが
基本となるもので、界面が存在すればよく、これにより
酸化チタン触媒の可視光線応答化が達成されるもので、
金属フッ化物層の膜厚には制限を受けるものではない。
しかしながら、現実に酸化チタン層上に異種金属フッ化
物層を積層する場合には、酸化チタンの表面構造や実際
的な成膜操作の面からみると、10nm程度以上の膜厚
とすることによって、ほぼ完全に酸化チタン層上を金属
フッ化物層で覆うことができる場合が多い。本発明で
は、この異種金属フッ化物層の厚さとしては、一般に
は、5〜120nm、好ましくは、5〜50nm程度の
膜厚とすることが、成膜操作面及び触媒性能の面から好
ましい結果が得られる。
【0014】このような構成により得られる可視光線応
答型光触媒は、酸化チタン層の上に、チタンとは異なる
異種の金属フッ化物層を積層することにより、この金属
フッ化物層と酸化チタン層との界面に電位勾配(ショッ
トキーバリヤー)を生じるとともに界面準位を形成し、
その結果可視光線(400〜500nm程度)で励起可
能なトラップ準位が形成されるものと考えられる。
【0015】以上のようなメカニズムにより空間電位が
生じた結果、可視光線領域の光を吸収し、励起された酸
化チタンにより発生した正孔(h)が、薄膜化した金
属フッ化物及び酸化ケイ素層中を拡散し、最表面の水と
反応することによりヒドロキシルラジカル(・OH)を
生じ、最表面に付着した有機物などを酸化分解すること
になる。
【0016】従って、光触媒機能には、最上層の酸化ケ
イ素層はほとんど寄与していない可能性があるが、金属
フッ化物が露出していると、金属フッ化物の種類によっ
ては耐摩耗性、耐汚染性、耐水性、耐薬品性などに問題
があることがあり、実用的見地からみて表面に酸化ケイ
素層を設け、これらの諸問題を改善することが好まし
い。なお、最上層に設ける酸化ケイ素のバンドギャップ
は5eV以上であり、可視光ないし紫外光に対して透明
であり、本発明の可視光線応答型光触媒の光吸収性には
影響を与えることはないが、酸化チタンから生じる正孔
の拡散性を考慮すると、この酸化ケイ素層はあまり厚く
ない方が好ましく、一般に、5〜50nm程度、好まし
くは、10〜30nm程度の膜厚である。
【0017】以上のように表面の酸化ケイ素層は可視光
線応答型光触媒機能に直接関与するものではないが、本
発明の可視光線応答型光触媒を用いて親水性被膜を形成
する場合には、表面に酸化ケイ素層を有することが好ま
しいものである。これは、正孔による水の酸化で生じた
ヒドロキシルラジカルは、有機物の酸化分解ばかりでな
く、被膜表面では、TiやSiと結合し、「Ti−O
H」や「Si−OH」のような状態で存在し、これらの
ヒドロキシ化された状態が親水性付与に深く寄与してい
るものと考えられる。そして、これらの親水性に寄与す
る「Ti−OH」と「Si−OH」との安定性を比較す
ると「Si−OH」の安定性が格段に高い。
【0018】従って、一旦「Si−OH」が生じると、
長期間この状態のままで存在し、基材表面の親水性を維
持できるが、これに対して「Ti−OH」の場合には、
短期間のうちに消失してしまい基材表面の親水性も得ら
れなくなり、基材表面の親水性を回復するためには、再
度光を照射して「Ti−OH」を形成してやることが必
要となる。つまり、酸化ケイ素の表面層を設けること
は、仮に光が当たらない状態に長期間おかれたとして
も、親水性を長期間維持できる被膜が得られるという点
で好ましいものとなる。
【0019】本発明に用いる光触媒機能を有する酸化チ
タンはアナターゼ型が好ましく、このような結晶系の酸
化チタンは比較的低温(100〜850℃)で酸化チタ
ン層を形成することにより得られ、アナターゼ型の酸化
チタンであることは、X線回折などにより2θ=25.
3°に表れる(101)面からのピークの存在により確
認することができる。このようなアナターゼ型酸化チタ
ンを含む多結晶層から構成される酸化チタン層の厚みは
特に制限はないが、油脂などの有機物の分解性など触媒
性能を考慮すると100nm以上の膜厚であることが好
ましく、被膜を形成する場合の実用性の面からいえば、
一般に150nm〜1000nm程度であることが好ま
しい。
【0020】また、被膜を形成する基材としては、特に
制限はなくガラス、セラミックス、磁器、金属、樹脂
(耐熱性有するものが好ましい)などがあり、これらの
基材表面に本発明の、「酸化チタン/金属フッ化物/酸
化ケイ素」被膜を形成することにより可視光線による光
触媒活性を付与することができ、セルフクリーニング性
を有し、親水性の透明性が高い被膜が形成されたものが
得られる。
【0021】本発明の被膜が適用される製品としては、
例えば車両関連製品としては、車両用バックミラーやヘ
ッドランプのレンズやリフレクター、光源(バルブ)な
どがあり、その他エアコンフィルター、空気清浄機、蛍
光灯、室内照明器具を始め建材用ガラス、外壁など種々
のものがあるが、これらには限定されない。
【0022】なお、基材として一般のガラス(ソーダラ
イムガラス)を用いる場合には、約400℃以上での成
膜中にガラス中のナトリウムイオンが酸化チタン膜中に
拡散して、NaTi層を形成し、この層が電子
−正孔対の再結合中心として作用し、光触媒活性が損な
われる場合がある。これを防止するには、特に、基材と
なるガラスと酸化チタン層の間に酸化ケイ素層などのバ
リヤー層を介在させることが好ましい。
【0023】一方、本発明で酸化チタン層上に積層され
る金属フッ化物層を構成する金属フッ化物としては、一
種類の金属のフッ化物で構成されても、あるいは、二種
類以上の金属のフッ化物で構成された混合フッ化物であ
ってもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の可視光線応答型光触媒
は、酸化チタン上に、金属フッ化物層、及び酸化ケイ素
層とを順に積層したものであるが、種々の方法で製造す
ることができる。このような製造法としては、真空蒸着
やスパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD
法、イオンアシストを付加した真空蒸着及びスパッタリ
ング、ゾル−ゲル法などで成膜できる。これらのいずれ
かの方法により、基板上に酸化チタン層(膜)、金属フ
ッ化層(膜)、及び酸化ケイ素層(膜)を順次積層する
ことにより製造することができる。図1に、このように
して得られた可視光線応答型光触媒を模式的に示した。
本発明の可視光線応答型光触媒1は、基板2上に、Ti
層3、金属フッ化物層4、SiO層5が順に積層
されたものである。
【0025】本発明では、酸化チタン層(膜)の上に異
種の金属フッ化物層(膜)を積層することが重要であ
り、この金属フッ化物層(膜)には少なくとも一種以上
の金属のフッ化物が含まれている。このような金属フッ
化物層(膜)を積層するには、一種類の金属成分を単独
で、あるいは二種以上の金属成分が同時に含まれるよう
な状態で成膜すればよく、例えば、真空蒸着では、金属
フッ化物(CaF、MgF、CeF)を蒸発さ
せ、基板上に蒸着させるか、スパッタリング法では、タ
ーゲットとして金属フッ化物(CaF、MgF、C
eF)を用いて気化させ基板上に堆積させることによ
り得ることができる。
【0026】一方、二種以上の金属フッ化物を含有する
混合フッ化物層とするには、真空蒸着の際に、二種以上
の金属フッ化物を用いて同時に蒸発させ基板上に蒸着さ
せるか、あるいはスパッタリングの際にターゲットとし
て二種以上の金属あるいは金属フッ化物を用いて気化さ
せ基板上に堆積させることにより得ることができる。こ
のような混合フッ化物層内における、各金属元素の存在
割合は、各金属あるいは金属フッ化物に対して、真空蒸
着の際の蒸発量を変えることにより、また、スパッタリ
ングの際の気化量を変えることにより、任意に調整でき
る。混合フッ化物層内の各金属フッ化物の存在割合は、
単独の金属フッ化物による場合に比べて、混合フッ化物
とした場合の効果が認められる範囲に調整することが好
ましい。
【0027】また、CVD法を用い基板上に1種もしく
は2種以上の金属成分を供給し反応させることにより、
金属フッ化物層を形成することもできる。
【0028】次に、具体例として真空蒸着法について示
す。まず、複数の蒸発源を備える真空蒸着装置内に、蒸
着材料である酸化チタン、酸化ケイ素及び金属フッ化物
層を形成するための金属あるいは金属フッ化物をセット
する(混合フッ化物層を形成する場合には、二種類以上
の金属あるいは金属フッ化物をそれぞれセットする)と
ともにガラス基板をセットし、真空槽内の圧力を真空ポ
ンプで3×10−3Pa程度まで排気し、それと同時に
ガラス基板を所定の設定温度にヒーターで加熱する。圧
力と温度条件が整った後、酸化チタンにエレクトロンビ
ームを照射し、酸化チタンを加熱し、シャッターを開け
蒸着を開始する。蒸着膜厚は光学式膜厚計または水晶式
膜厚計などにより監視し、設定膜厚となったところでシ
ャッターを閉じ蒸着を終了し、酸化チタン層を形成す
る。
【0029】その後、金属フッ化物層を形成するための
金属あるいは金属フッ化物に(混合フッ化物層を形成す
る場合には、セットしたそれぞれの金属あるいは金属フ
ッ化物の両方に、または、これらの金属あるいは金属フ
ッ化物を混合した混合物に)エレクトロンビームを照射
し、既に形成されている酸化チタン層の上に金属フッ化
物を(あるいは二種類以上の金属フッ化物を同時に)蒸
着し、金属フッ化物層を形成する。次いで、同様にして
酸化ケイ素のみにエレクトロンビームを照射し、酸化ケ
イ素を加熱し、金属フッ化物層の上に酸化ケイ素層を形
成することにより、得ることができる。
【0030】本発明の可視光線応答型光触媒または親水
性被膜は上述のようにして得られるが、これを種々の基
材に適用することにより、各種の応用製品が得られる。
その一例として、車両搭載用のミラーの場合について説
明する。
【0031】車両搭載用のミラーは、ミラー表面に本発
明の親水性被膜を形成することにより得られるもので、
まず、ガラス表面にCrなどの金属を蒸着あるいはスパ
ッタリングし反射面を形成し、次いで、このCr層の上
に本発明の親水性被膜を設けるか、あるいは、Cr層を
形成した面とは逆のガラス表面上に本発明の親水性被膜
を設けることにより製造することができる。なお、後者
の場合、ガラス基材として、一般のガラス(ソーダライ
ムガラス)を用いる場合には、ガラス基板上に酸化ケイ
素などのバリヤー層を設け、その上に本発明の親水性被
膜を設けることが、ソーダライムガラス中のNaによる
光触媒活性の失活を防止する上で好ましい。
【0032】なお、他の製品、例えば、車両用のヘッド
ランプのレンズやリフレクター、光源(バルブ)をはじ
めとする種々の製品、エアコンフィルター、空気清浄
機、蛍光灯、室内照明器具を始め建材用ガラス、外壁な
どの場合も同様に基材表面に本発明の親水性被膜を形成
することにより製造することができる。
【0033】次に、本発明を実施例によってさらに詳し
く説明する。
【0034】
【実施例】本発明の可視光線対応型光触媒をガラス基板
上に形成し、得られた触媒被膜について、可視光線によ
る光触媒活性を、被膜と水との接触角を測定することに
より評価した。
【0035】(1)可視光線対応型光触媒の調製
【0036】実施例1 以下の手順に従い、可視光線応答型光触媒を作製した。 (1) 真空蒸着装置内に、蒸着材料となるTiO、Ca
及びSiOとをセットするとともに、ガラス基板
をセットした。 (2) 真空蒸着装置の扉を閉じ、真空槽内を真空ポンプで
3×10−3Paまで排気するとともに、ガラス基板を
ヒーターで250℃に加熱した。 (3) 圧力と温度条件が整った後、真空槽内に酸素
(O)ガスを2.6×10 Paまで導入した。 (4) TiOにエレクトロンビーム(EB)を照射し、
加熱した後、シャッターを開き蒸着を開始し、膜厚が3
00nmに達した時点でシャッターを閉じ、Oガスの
導入を停止した。 (5) 蒸着材料をCaFに代えて、この材料にEBを照
射し、加熱した後、シャッターを開きTiO層の上に
CaF層を成膜した。膜厚が40nmに達した時点で
シャッターを閉じた。 (6) 蒸着材料をSiOに代えて、この材料にEBを照
射し、加熱した後、シャッターを開き、CaF層の上
にSiO層を成膜した。膜厚は20nmとした。得ら
れた可視光線対応型光触媒は、「TiO(300n
m)/CaF(40nm)/SiO(20nm)」
という構成のものである。
【0037】実施例2 実施例1の蒸着する金属フッ化物をMgFの替え、
(1)〜(6)と同様な操作をして、ガラス基板上にTiO
層300nmとMgF層40nmとを成膜し、その上
にSiO層20nmを成膜した。
【0038】比較例1 実施例1の(1)〜(4)と同様にして、ガラス基板上にTi
層のみ300nmを成膜した。
【0039】比較例2 実施例1の(1)〜(5)と同様にして、ガラス基板上にTi
層300nmとCaF層40nmとを成膜した。
【0040】比較例3 実施例1の(1)〜(4)及び(6)と同様にして、ガラス基板
上にTiO層300nmとSiO層20nmを成膜
した。
【0041】(2)可視光線応答型光触媒能の評価
【0042】次に、得られた可視光線応答型光触媒の活
性及び得られた被膜の親水性を、エンジンオイルを塗布
した可視光線応答型光触媒膜上で水滴が形成する接触角
により、評価した。接触角は固体と液体の濡れ性の程度
を示す指標であり、接触角が小さいほど、固体表面は濡
れやすく、親水性を有していることになる。そして、光
照射により触媒膜上に塗布したエンジンオイルが分解さ
れれば、エンジンオイルに起因する触媒膜上の撥水性が
消失することになり接触角は減少することから、光触媒
活性を評価することができる。
【0043】1.紫外線照射での光触媒能の検証 まず、上記実施例及び比較例で得られた可視光線応答型
光触媒が、通常のTiO触媒と同様に紫外線照射によ
り光触媒性を有することを確かめるため、以下の実験を
行った。
【0044】すなわち、実施例及び比較例で得られた各
試料(光触媒膜)の表面にエンジンオイル(キャッスル
モーターオイル)0.1wt%ジクロロメタン溶液を塗
布した後、ブラックライト(フナコシ社製、UVL−5
6)を用いて24時間照射(紫外線量、1mW/c
)し、成膜後と、エンジンオイル塗布時(初期値)
と、及び照射後との接触角を接触角計(協和界面科学社
製、CA−X)を用いてそれぞれ測定し、紫外線に対す
る触媒活性を評価した。結果を表1に示した。
【0045】
【表1】
【0046】表1によれば、次のことがわかる。 (i)成膜後のすべての試料は水との接触角が5°以下で
あり親水性を示している。 (ii)紫外線照射後の接触角は低下し、光触媒活性による
触媒表面の親水性化が確認された。
【0047】以上により、TiO層を有する試料が光
触媒として機能することがわかる。
【0048】2.可視光線照射での光触媒能の検証
【0049】次に、可視光線照射による光触媒能を、以
下のようにして評価した。 (1) 紫外線照射による光触媒活性を検証した上記実施例
及び比較例の各試料に高圧水銀灯を用いて紫外線を照射
し、水との接触角を5°以下の接触角計の測定限界以下
まで低下させ、各試料表面の汚れを分解除去した。 (2) 上記処理した各試料に、再度エンジンオイル(キャ
ッスルモーターオイル)0.025wt%ジクロロメタ
ン溶液を塗布した。 (3) 可視光線照射は、光源として、蛍光灯(ナショナル
パルック 18W、昼光色)の光を紫外線カットガラス
(ラミレックスUV FL3+FL3、セントラルガラ
ス社製)を介して2cmの距離をおいて照度14000
Lux(トプコン社製 IM−3)にて各試料に照射し
た。 (4) 蛍光灯の光の照射を開始してから、経時的に接触角
を測定した。なお、各試料表面における紫外線量を、紫
外線線量計UVR−1(受光部UVR−36、トプコン
社製)を用いて測定し、紫外線量が0mW/cmであ
ることを確認した。接触角の測定結果を、表2に示し
た。
【0050】
【表2】
【0051】表2によると次のことがわかる。 (i)実施例1及び実施例2における接触角の低下は、T
iO層と金属フッ化物層との界面で電位勾配(ショッ
トキーバリヤー)を生じ、界面準位を形成し、これによ
り可視光線で励起可能なトラップ準位が作られたことに
よるものである。また、発生した正孔が水と反応して生
じるヒドロキシラジカルが、触媒層最表層のSiO
結合し、水と親和性のあるシラノール基(Si−OH)
を形成するため、接触角が大きく低下したと思われる。 (ii)比較例1及び比較例3では、TiO層上に金属フ
ッ化物層が存在しないため、可視光線による励起が起こ
らず、接触角の低下はほとんど見られなかった。 (iii)一方、TiO層上にCaF層のみを設けた試
料(比較例2)では、TiO層とCaF層との界面
で電位勾配(ショットキーバリヤー)を生じ、界面準位
を形成し、これにより可視光線で励起可能なトラップ準
位が作られるが、SiO層が無いため、発生した正孔
が効率よくヒドロキシラジカルへ変換されないためか、
接触角の低下はほとんど見られなかった。
【0052】以上のことから、本発明の可視光線応答型
光触媒は、TiO層上にCaFなどの金属フッ化物
層を設けることにより、TiO光触媒の吸収波長が可
視光線域まで拡張した結果、可視光線の照射により光触
媒として機能し、触媒(被膜)表面上のエンジンオイル
を分解し、清浄な表面を形成するとともに、最上層に設
けられたSiO層により触媒(被膜)表面の親水性が
高められていることがわかる。なお、本評価で使用した
ように、汚染後再生した触媒であっても、何ら問題なく
使用できるものであることもわかる。
【0053】3.親水性維持性の評価
【0054】次に、触媒(被膜)表面の親水性の維持機
能について、評価した。 (1) 新たに調製した実施例及び比較例の各試料に高圧水
銀灯により光を照射し、表面の汚れを完全に除去した。
得られた各試料の接触角を測定したところ、すべて5°
以下であり接触角計の測定限界以下の値(初期値)を示
した。 (2) 上記の各試料を、窓のない恒温槽中に、暗所、無風
の状態で室温下30日間静置した後、接触角を測定し
た。結果を、表3に示した。
【0055】
【表3】
【0056】表3によると、次のことがわかる。 (i)触媒(被膜)表面が完全にSiO層で覆われてい
る試料(実施例1、2及び比較例3)は、暗所で長期間
放置した場合であっても、初期の親水性を維持してい
る。以上のことより、親水性の維持には、最表面にある
SiO層が重要で、前述のようにSiO表面に形成
されるシラノール基(Si−OH)が親水性の維持に大
きく寄与していることがわかる。すなわち、金属フッ化
物層の上にSiO層を形成することにより、光のない
暗所であっても長期間親水性が維持される、セルフクリ
ーニング性を有する親水性被膜が得られることがわか
る。
【0057】4.CaF層の膜厚の検討 次に、金属フッ化物層の厚さと可視光線による光触媒活
性能との関係を、CaF層の膜厚を変えた試料を作製
し、以下のように検討した。 実施例3〜4 CaF層の膜厚を20nm、80nmに変更したほか
は、実施例1と同様に操作し、実施例3〜4を作製し
た。TiO層及びSiO層の厚さも、実施例1と同
様、それぞれ300nm、20nmとした。
【0058】比較例4 CaF層の厚さを140nmとしたほかは、実施例1
と同様な操作を行い、TiO層300nm、SiO
層20nmの試料を作成した。
【0059】上記、実施例1及び実施例3〜4、並びに
比較例3〜4の各試料に高圧水銀灯の光を照射し、接触
角が5°以下であることを確認した後、エンジンオイル
(キャッスルモーターオイル)0.025wt%ジクロ
ロメタン溶液を塗布し、前述のように紫外線をカットし
た蛍光灯を用い、2cmの距離をおいて各試料に可視光
線を照射し、接触角を経時的に測定した。照射時間21
6時間の場合について図2に結果を示した。
【0060】図2より、実施例1及び実施例3〜4は、
紫外線をカットした蛍光灯の光を照射することにより接
触角が大きく低下し、可視光線に対し高い触媒活性を示
した。一方、金属フッ化物層を設けていない比較例3
は、紫外線をカットした蛍光灯の光を照射しても、接触
角の低下は僅かであり、可視光線に対する触媒活性をほ
とんど示さなかった。また、CaF層の膜厚が140
nmの比較例4の場合、金属フッ化物層が厚いためTi
層とCaF層との界面で発生した正孔が、SiO
層表面に到達する前にトラップされ失活してしまうた
めか、接触角の低下を示さなかった。従って、CaF
層の膜厚は5〜120nm程度が好ましく、特に好まし
いCaF層の膜厚としては5〜50nmであることが
わかる。
【0061】次に、上記の検討が終了した各試料に、高
圧水銀灯の光を照射することにより、水との接触角が5
°以下の接触角計の測定限界以下とした後、これらの試
料を窓のない恒温槽中に、暗所、無風の状態で室温下3
0日間静置した後、接触角を測定したところ、いずれの
試料も5°以下であり、長期間親水性を保持しているこ
とが確認された。
【0062】
【発明の効果】通常の酸化チタン光触媒が約380nm
以下の紫外光しか利用出来なかったのに対し、本発明の
光触媒は酸化チタン層、金属フッ化物層、及び酸化ケイ
素層とを順に積層することにより、吸収域が可視光域に
まで拡がった可視光線応答型光触媒が得られた。また、
本発明の可視光線応答型光触媒で形成した被膜は、セル
フクリーニング性を有し、長期間親水性を維持できると
いう優れた効果を奏するものであった。すなわち、本発
明の可視光線応答型光触媒を利用すると、紫外線が無い
所(例えば、紫外線カットガラス付きの車両室内や、室
内の蛍光灯下)でも光触媒機能を発現できるため、肉眼
で明るい場所であれば利用可能となる。また、本発明の
可視光線応答型光触媒は、本来の紫外線での光触媒機能
も併せ持つので、その応用範囲は極めて広いものとな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可視光線応答型光触媒の構成を模式的
に示した図である。
【図2】本発明の可視光線応答型光触媒の、可視光線に
よるエンジンオイルの酸化分解能と金属フッ化物層の厚
さとの関係を、水に対する接触角を指標として示したグ
ラフである。
【図3】紫外線カットガラスを介した蛍光灯の分光放射
特性を示した図である。
【符号の説明】
1 可視光線応答型光触媒 2 基材 3 TiO層 4 金属フッ化物層 5 SiO
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G059 AA01 AC21 AC22 EA04 EA05 EA09 EB03 GA02 GA04 GA12 4G069 AA03 AA08 BA02A BA02B BA04A BA04B BA48A BB08A BB08B BC09A BC09B BC10A BC10B CA10 CA11 DA06 EA08 FA03 FB02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化チタン上に、金属フッ化物層、及び
    酸化ケイ素層とが順に積層され、前記金属フッ化層の厚
    さが5〜120nmである可視光線応答型光触媒。
  2. 【請求項2】 前記酸化ケイ素層の厚さが5〜50nm
    である請求項1に記載の可視光線応答型光触媒。
  3. 【請求項3】 前記金属フッ化物層がCaF、MgF
    、CeFのいずれかである請求項1〜請求項2のい
    ずれかに記載の可視光線応答型光触媒。
  4. 【請求項4】 前記金属フッ化物層がCaFである請
    求項3記載の可視光線応答型光触媒。
  5. 【請求項5】 基材上に、酸化チタン層、金属フッ化物
    層、及び酸化ケイ素層とを順に積層し、前記金属フッ化
    物層の厚さが5〜120nmであるセルフクリーニング
    性を有する親水性被膜。
  6. 【請求項6】 前記酸化ケイ素層の厚さが5〜50nm
    である請求項5に記載のセルフクリーニング性を有する
    親水性被膜。
  7. 【請求項7】 前記金属フッ化物層が、CaF、Mg
    、CeFのいずれかである請求項5〜請求項6の
    いずれかに記載のセルフクリーニング性を有する親水性
    被膜。
  8. 【請求項8】 前記金属フッ化物層が、CaFである
    請求項7記載のセルフクリーニング性を有する親水性被
    膜。
JP2001230628A 2001-07-30 2001-07-30 可視光線応答型光触媒 Pending JP2003038963A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001230628A JP2003038963A (ja) 2001-07-30 2001-07-30 可視光線応答型光触媒

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001230628A JP2003038963A (ja) 2001-07-30 2001-07-30 可視光線応答型光触媒

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003038963A true JP2003038963A (ja) 2003-02-12

Family

ID=19062805

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001230628A Pending JP2003038963A (ja) 2001-07-30 2001-07-30 可視光線応答型光触媒

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003038963A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015227267A (ja) * 2014-05-30 2015-12-17 株式会社村上開明堂 親水性部材およびその製造方法並びに親水性部材のメンテナンス方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015227267A (ja) * 2014-05-30 2015-12-17 株式会社村上開明堂 親水性部材およびその製造方法並びに親水性部材のメンテナンス方法
US9873106B2 (en) 2014-05-30 2018-01-23 Murakami Corporation Hydrophilic member, method for manufacturing same and hydrophilic member maintenance method

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100417610B1 (ko) 가시광선 응답형 광촉매
KR101265729B1 (ko) 광촉매 코팅을 구비한 기판
US6090489A (en) Method for photocatalytically hydrophilifying surface and composite material with photocatalytically hydrophilifiable surface
CA2314381C (en) Article having photocatalytic activity
US20100130348A1 (en) Photocatalytic composition for anti-reflection and the glass substrate coated with the composition
US20060225999A1 (en) Ti oxide film having visible light-responsive photocatalytic activites and process for its production
JP5252757B2 (ja) 親水性材料
JPWO2003028885A1 (ja) 光触媒体、光触媒体の製造方法及び光触媒体の製造装置
JP2000239047A (ja) 親水性光触媒部材
US6878450B2 (en) Composite element and method for preparation thereof
JPWO2002100633A1 (ja) 防曇素子及びその形成方法
JP4042509B2 (ja) 可視光線応答型光触媒
JPH10140046A (ja) 表面を光触媒的に親水性にする方法、および、光触媒性親水性表面を備えた複合材、および、基材の表面に親水性被膜を形成するコーティング組成物
JP2003038963A (ja) 可視光線応答型光触媒
JP2004255332A (ja) 可視光線応答型光触媒
JP2002191983A (ja) 可視光線応答型光触媒
PT101879B (pt) Painel envidracado dotado de propriedades de proteccao contra a radiacao solar
JPH0820569B2 (ja) 多層干渉膜
JPH10330131A (ja) 親水性薄膜及びその親水性薄膜を使用した車両用ミラー並びにガラス製品
JP3400259B2 (ja) 親水性被膜およびその製造方法
JPH09230105A (ja) 防曇方法及びそれを施した設備
KR20070108604A (ko) 차량용 친수성 반사경 제조방법
KR20030012537A (ko) 자동차 사이드 미러 코팅용 광촉매 조성물 및 이의 이용
JP2002317260A (ja) 光触媒性薄膜
JP2004073937A (ja) 光触媒体及びその製造方法