JPH10140046A - 表面を光触媒的に親水性にする方法、および、光触媒性親水性表面を備えた複合材、および、基材の表面に親水性被膜を形成するコーティング組成物 - Google Patents

表面を光触媒的に親水性にする方法、および、光触媒性親水性表面を備えた複合材、および、基材の表面に親水性被膜を形成するコーティング組成物

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JPH10140046A
JPH10140046A JP9137823A JP13782397A JPH10140046A JP H10140046 A JPH10140046 A JP H10140046A JP 9137823 A JP9137823 A JP 9137823A JP 13782397 A JP13782397 A JP 13782397A JP H10140046 A JPH10140046 A JP H10140046A
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titania
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hydrophilic
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Atsushi Kitamura
厚 北村
Makoto Hayakawa
信 早川
Toshiya Watabe
俊也 渡部
Akira Fujishima
昭 藤嶋
Kazuhito Hashimoto
和仁 橋本
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Toto Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基材の表面を高度に親水化する親水化する方
法および該方法を用いて基材の表面を高度に親水化した
親水性表面を呈する複合材を提供することを目的とす
る。 【解決手段】基材の表面を光触媒作用により親水化する
方法。基材は光触媒性チタニアコーティング(10)によ
って被覆される。光触媒性コーティング(10)の表面に
は、その固/気界面における表面エネルギの水素結合成
分(γS h)を増加させる固体酸が担持させてある。光触
媒を光励起すると、光触媒作用により光触媒性コーティ
ング(10)の表面エネルギの水素結合成分(γS h)が増
大し、これにより、表面のチタン原子に結合したターミ
ナルOH基(12)およびブリッジOH基(14)の水素原
子に雰囲気中の水分子が水素結合(16)により物理吸着
するのが促進される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒の作用によ
り物品の表面を親水化する(即ち、親水性にする)方法
に関する。本発明は、また、光触媒で形成された親水性
の表面を備えた複合材に関する。本発明は、物品の防
曇、汚れ防止、自己浄化、その他の用途に利用すること
ができる。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】本発
明者は、先に、光触媒の作用により物品の表面を高度に
親水化する方法を提案した(国際公開公報WO96/2937
5)。この方法に従えば、物品の表面はアナターゼ型チ
タニアのような半導体光触媒のコーティングによって被
覆される。この光触媒性コーティングに光を照射するこ
とにより光触媒を充分な照度で充分な時間にわたり光励
起すると、光触媒性コーティングの表面は水との接触角
が約0度になる程度に高度に親水化される。
【0003】WO96/29375に開示されているように、この
ように高度に親水化可能な光触媒性コーティングは、防
曇、汚れ防止、自己浄化、その他種々の目的で種々の物
品に適用することができる。例えば、車両の風防ガラ
ス、建物の窓ガラス、眼鏡のレンズ、或いは鏡のような
透明物品を光触媒性コーティングで被覆した場合には、
光触媒の光励起に伴いコーティングの表面は高度に親水
化され、その結果、物品が凝縮湿分や湯気で曇ったり付
着水滴で翳ったりするのが防止される。或いは、屋外に
配置された建物や物品が光触媒性コーティングで被覆さ
れている場合には、親水化された表面に付着した親油性
又は疎水性の煤塵や汚染物は降雨の都度雨水により洗い
流され、表面は自己浄化される。光触媒を光励起するた
めには、半導体である光触媒のバンドギャップエネルギ
よりも高いエネルギをもった光を照射する種々の光源が
利用される。チタニアのように光励起波長が紫外線領域
にある光触媒の場合には、その光励起には紫外線を要す
る。その場合、物品が太陽光の照射を受けるような条件
では、有利なことに光触媒は太陽光に含まれる紫外線に
よって光励起される。光励起が継続する限りは、光触媒
性コーティングの表面は恒久的に親水性に維持される。
光励起を中断すると、表面の親水性は次第に低下する。
これは、光触媒性コーティングの表面が疎水性の物質に
よって次第に汚染されるからであると考えられる。しか
し、光触媒を再び光励起すれば、親水性は回復する。太
陽光によって光触媒を光励起する場合のように、光励起
が断続的に行われる場合には、光励起の中断に伴い表面
の親水性は減衰し、光励起の再開に伴い親水性は回復す
るので、親水性の減衰と回復が交互に繰り返されること
になる。
【0004】本発明の主たる目的は、 上記方法を改良
し、より容易に表面を親水化することの可能な方法を提
供することである。本発明の他の目的は、上記方法を改
良し、より微弱な、即ち、照度のより小さな光でもって
しても表面を高度に親水化することの可能な方法を提供
することである。本発明の他の目的は、光励起を中断し
たり物品が暗闇に置かれた時でも、表面の高度の親水性
をできるだけ長時間持続させることの可能な方法を提供
することである。また、本発明の他の目的は、光励起中
断後再び光励起した時に、短時間で或いは微弱な光で表
面の親水性を回復させることの可能な方法を提供するこ
とである。他の観点においては、本発明の目的は、上記
方法の実施に使用する複合材を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】固体と気体との界面にお
ける表面エネルギγSは、分子分散力成分γS dと双極子
成分γS pと水素結合成分γS hの3成分で構成されること
が知られている。本発明者は、光触媒の光励起に伴い光
触媒性コーティングの表面が親水化されたときには、表
面エネルギγSの上記3成分のうちで水素結合成分γS h
のみが顕著に増加することを発見した。本発明者は、更
に、光触媒性コーティングの親水化は、その表面に光触
媒作用により水が物理吸着されることに因るものである
ことを発見した。本発明は斯る発見に基づくもので、本
発明に従えば、基材は光触媒を含有する光触媒性コーテ
ィングによって被覆される。光触媒性コーティングに光
を照射することにより光触媒を光励起すると、光触媒作
用により光触媒性コーティングの固/気界面における表
面エネルギγSの水素結合成分γS hが増加し、これによ
り、光触媒性コーティングの表面に水分子が水素結合に
より物理吸着するのが促進され、表面には高密度の物理
吸着水層が形成される。このように、光触媒性コーティ
ングの表面に物理吸着水層が形成されるので、光触媒性
コーティングは容易に高度に親水化される。この物理吸
着水層があるので、光励起が中断した後でも表面の親水
性は長時間持続し、親水性の減衰は最小限となる。ま
た、再び光励起した時には、短時間で或いは微弱な光で
表面の親水性は容易に回復する。本発明者の知見によれ
ば、光触媒性コーティングの表面の親水性は、表面エネ
ルギの水素結合成分γS hに関連がある。そこで、本発明
の好適な実施態様においては、光触媒性コーティングに
は、その固/気界面における表面エネルギの水素結合成
分γS hを増加させる固体物質を担持させる。このように
すれば、光触媒性コーティングの表面エネルギの本来の
(即ち、光触媒の非励起時における)水素結合成分γS h
が高くなるので、光触媒を光励起した時の表面エネルギ
の水素結合成分はそれに応じて一層高まる。その結果、
光触媒作用による物理吸着水層の形成が一層促進され
る。更に、光励起を中断した時に物理吸着水層が減少す
るのが遅延される。
【0006】光触媒性コーティングの表面エネルギの水
素結合成分γS hを増加させる物質には、陽子供与体(ブ
レンステッド酸)若しくは電子受容体(ルイス酸)とし
て働く固体酸、或いは、電子供与体(ルイス塩基)若し
くは陽子受容体(ブレンステッド塩基)として働く固体
塩基がある。かかる固体酸又は固体塩基は、それ自体、
水素結合成分γS hが大きいので、光触媒性コーティング
の表面に担持させると光触媒性コーティングの表面の水
素結合成分γS hを増加させる。固体酸には、例えば、硫
酸担持金属酸化物、硝酸担持金属酸化物、金属酸化物複
合体、又はAl2O3・SiO2がある。金属酸化物複合体は、酸
化物超強酸、TiO2/WO3、WO3/ZrO2、又は WO3/SnO2
含む。酸化物超強酸は、100%硫酸よりも強い酸強度を
有する固体酸化物と定義され、ハメットの酸度関数Hoで
表してHo≦−11.93の酸強度を持つ固体酸化物である。
【0007】本発明者は、また、光触媒性コーティング
の表面エネルギの水素結合成分γS hが増加すると、それ
に対応して水中における固体表面の油との接触角が増加
することを発見した。従って、他の観点においては、本
発明は、基材の表面の水中における撥油性を向上させる
方法を提供する。本発明に従えば、基材は光触媒を含有
する光触媒性コーティングによって被覆される。光触媒
性コーティングに光を照射することにより光触媒を光励
起すると、光触媒作用により光触媒性コーティングの固
/気界面における表面エネルギγSの水素結合成分γS h
が増加し、これにより、基材の表面の水中における撥油
性が向上する。表面の水中撥油性を向上させるこの方法
は、油で汚れた基材を清浄化するのに利用することがで
きる。即ち、油が付着した光触媒性コーティングを水中
に浸漬し或いは水で濡らしたときには、油汚れは容易に
表面から釈放され、洗剤を使用することなく除去され
る。本発明の上記特徴や効果、並びに他の特徴や効果
は、以下の実施例の記載につれて明らかとなろう。
【0008】
【発明の実施の形態】親水性の光触媒性コーティングは
目的に応じて種々の物品に設けることができる。湿分凝
縮水や水滴の付着による光学障害を防止する防曇の目的
のためには、建物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空
機、船舶、潜水艇のような乗り物の窓ガラスおよび風防
ガラス;車両用バックミラー、浴室用又は洗面所用鏡、
歯科用歯鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レン
ズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズのよう
なレンズ; 防護用又はスポーツ用ゴグル又はマスク
(潜水用マスクを含む)のシールド;ヘルメットのシー
ルド; 計測機器のカバーガラスを親水性光触媒性コー
ティングで被覆することができる。屋外に曝露される建
造物、建築物、機械装置や物品の表面を親水性光触媒性
コーティングで被覆すれば、それらの表面はセルフクリ
ーニングされる。或いは、煤塵や排気ガスが接触するお
それのある物品を光触媒性コーティングで被覆すれば、
その表面に疎水性の煤塵が付着するのを防止することが
できる。光触媒性コーティングの水中撥油性を利用し、
油汚れを簡単に除去するためには、機械や部品、食器、
台所用品、その他油で汚れやすい物品を光触媒性コーテ
ィングで被覆することができる。
【0009】光触媒 光触媒性コーティングに用いる光触媒としては、チタニ
ア(TiO2)が最も好ましい。チタニアは、無害であり、
化学的に安定であり、かつ、安価に入手可能である。更
に、チタニアはバンドギャップエネルギが高く、従っ
て、光励起には紫外線を必要とし、光励起の過程で可視
光を吸収しないので、補色成分による発色が起こらな
い。従って、ガラスやレンズや鏡のような透明部材にコ
ーティングするのに特に適している。ルチル型チタニア
も使用可能であるが、アナターゼ型チタニアの方が好ま
しい。アナターゼ型チタニアの利点は、非常に細かな微
粒子を分散させたゾルを市場で容易に入手することがで
き、非常に薄い薄膜を容易に形成することができること
である。高度に親水化可能な光触媒性コーティングを得
るためには、硝酸解膠型のチタニアゾルを使用するのが
好ましい。使用可能な他の光触媒としては、ZnO、Sn
O2、SrTiO3、WO3、Bi2O3、Fe2O3のような金属酸化物が
ある。これらの金属酸化物光触媒は、チタニアと同様
に、表面に金属元素と酸素が存在するので、表面が親水
化しすいと考えられる。
【0010】光触媒性コーティングの形成 光触媒性コーティングはWO96/29375に開示されている種
々のやり方で基材に被着することができ、その開示はこ
こに援用する。単に概略的に述べるに、基材が金属、セ
ラミックス、ガラスのような耐熱性の材料で形成されて
いる場合には、水との接触角が0゜になる程度の高度の
親水性を呈する耐摩耗性に優れた光触媒性コーティング
を形成する好ましいやり方の1つは、例えばテトラエト
キシチタンのような有機チタン化合物の加水分解と脱水
縮重合により先ず基材の表面を無定形チタニアで被覆
し、次いで400〜600Cの温度で焼成することにより無定
形チタニアを結晶性チタニア(アナターゼ)に相変化さ
せることである。水との接触角が0゜になる程度の高度
の親水性を呈する耐摩耗性に優れた光触媒性コーティン
グを形成する他の好ましいやり方は、光触媒性チタニア
にシリカ又は酸化錫を配合することである。基材がプラ
スチックスのような非耐熱性の材料で形成されている場
合や、基材が有機塗料で塗装されている場合には、水と
の接触角が0゜になる程度の超親水性を呈する光触媒性
コーティングを形成する更に他の好ましいやり方は、未
硬化の若しくは部分的に硬化したシリコーン(オルガノ
ポリシロキサン)又はシリコーンの前駆体からなる塗膜
形成要素に光触媒の粒子を分散させてなる塗料用組成物
を用いることである。WO96/29375に開示したように、こ
の塗料用組成物を基材の表面に塗布し、塗膜形成要素を
硬化させてシリコーン塗膜を形成した後、光触媒を光励
起すると、シリコーン分子のケイ素原子に結合した有機
基は光触媒の光触媒作用により水酸基に置換され、光触
媒性コーティングの表面は超親水化される。
【0011】表面エネルギ増強剤の担持 光触媒性コーティングの表面エネルギの水素結合成分を
増加させ、もって、水の物理吸着を促進するため、光触
媒性コーティングには固体酸又は固体塩基を担持させる
ことができる。例えば、固体酸として硫酸又は硝酸を担
持させる場合には、基材を光触媒性チタニアコーティン
グで予め被覆し、その上に硫酸又は硝酸を塗布し、次い
で約400〜600。Cの温度で熱処理する。これにより、チタ
ニアの表面のチタン原子にスルホン酸基又はニトロ基が
結合し、表面エネルギの水素結合成分が増加する。硫酸
や硝酸に代えて、スルホン酸やピクリン酸を用いてもよ
い。或いは、固体酸として金属酸化物複合体又はAl2O3
SiO2を担持させてもよい。その際、 TiO2/WO3は600〜8
00Cの温度で焼成したときに最も酸度が大きく、ハメッ
トの酸度関数HoはHo=−13〜−14になる。WO3/SnO2は9
00〜1100Cの温度で焼成したときに最も酸度が大きく、
Ho=−13〜−14になる。WO3/ZrO2は700〜900Cの温度
で焼成したときに最も酸度が大きく、Ho=−13〜−15に
なる。WO3/Fe2O3は600〜800Cの温度で焼成したときに
最も酸度が大きく、Ho=−12〜−13になる。Al2O3・SiO2
は400〜600Cの温度で焼成したときに最も酸度が大き
く、Ho=−12〜−13になる。従って、酸度の大きさの観
点からは、TiO2/WO3、WO3/ZrO2、WO3/SnO2が好まし
い。他方、光触媒性コーティングをガラス基材上に形成
する場合には、ガラス基材に顕著な軟化が生じない400
〜600Cの温度で焼成したときに最も酸度が大きなAl2O3
・SiO2が好ましい。固体酸として金属酸化物複合体を担
持させる場合には、金属酸化物複合体を構成する金属元
素の少なくとも一部を含む酸化物粒子又は金属酸を使用
することができる。基材を光触媒性チタニアコーティン
グで予め被覆し、その上にこの酸化物粒子又は金属酸を
塗布し、次いで金属酸化物複合体が強い酸度を示す温度
で焼成する。
【0012】光触媒励起用光源 光触媒性コーティングの光触媒を光励起するためには、
半導体である光触媒のバンドギャップエネルギより高い
エネルギの波長の光を照射しなければならない。ある種
の光触媒の励起には紫外線を要する。例えば、アナター
ゼ型チタニアは波長387nm以下、ルチル型チタニアは413
nm以下、酸化錫は344nm以下、酸化亜鉛は387nm以下の紫
外線で光励起される。チタニアのように励起波長が紫外
線領域に位置する光触媒の場合には、紫外線光源として
は、紫外線ランプ、水銀灯、メタルハライドランプなど
を使用することができる。蛍光灯や白熱電灯のような室
内照明灯に含まれる微弱な紫外線でも光触媒を励起する
ことができる。建物の窓ガラスや車両のバックミラーや
屋外に配置された物品のように、物品が太陽の照射を受
ける条件では、太陽光に含まれる紫外線により光触媒を
光励起するのが有利である。
【0013】表面の親水化 光触媒性コーティングに光を照射することにより光触媒
を光励起すると、光触媒性コーティングの表面は高度に
親水化される。光励起を中断すると親水性は次第に減衰
するが、再び光励起すると親水性は回復する。例えば、
光触媒を太陽光によって励起する場合には、日中は太陽
の照射により光触媒性コーティングの表面は親水化さ
れ、夜間には親水性は低下しながらも或る程度のレベル
を持続し、再び太陽が昇ると親水性は回復する。こうし
て、物品の表面は高度の親水性を維持する。従って、建
物窓ガラス、乗り物の窓ガラスおよび風防ガラス、鏡、
レンズ、ゴグルやヘルメットのシールド、又は計測機器
のカバーガラスのような物品を光触媒性コーティングで
被覆した場合には、空気中の湿分や湯気が結露しても、
凝縮水は個々の水滴を形成することなく一様な水膜にな
るので、表面には光散乱性の曇りは発生しない。同様
に、窓ガラスや車両用バックミラーや車両用風防ガラス
や眼鏡レンズやヘルメットのシールドが降雨や水しぶき
を浴びても、表面に付着した水滴は速やかに一様な水膜
に広がるので、離散した目障りな水滴が形成されない。
従って、高度の視界と可視性を確保することができ、車
両や交通の安全性を保証し、種々の作業や活動の能率を
向上させることができる。建物や屋外に配置された機械
装置や物品を光触媒性コーティングで被覆した場合に
は、光触媒は日中は太陽の照射により光励起され、光触
媒性コーティングの表面は親水化される。さらに、物品
は時折降雨にさらされる。親水化された表面には疎水性
の煤塵や汚染物質よりも水の方が馴染みやすく、疎水性
の煤塵や汚染物質は水により表面から遊離されるので、
親水化された表面が降雨を受ける都度、表面に付着した
煤塵や汚染物質は雨水により洗い流され、表面はセルフ
クリーニングされる。また、親水性の光触媒性コーティ
ングの表面には親油性の煤塵は付着しにくい。機械やそ
の部品、食器、台所用品、その他油で汚れやすい物品を
光触媒性コーティングで被覆した場合には、光触媒作用
により表面の水中撥油性が向上する。従って、油や脂肪
で汚れたこれらの物品を水に浸漬し、水で濡らし、又は
水で濯ぐと、光触媒性コーティングの表面は油を弾くの
で、油汚れは表面から釈放され、容易に除去される。従
って、例えば、油や脂肪で汚れた物品を洗剤を使用する
ことなく洗浄することができる。
【0014】
【実施例】以下の実施例は本発明を種々の観点から示
す。
【0015】実施例1(光触媒作用による親水化現象) エタノールの溶媒86重量部に、テトラエトキシシランSi
(OC2H5)4(和光純薬、大阪)6重量部と純水6重量部と
テトラエトキシシランの加水分解速度調整剤として36%
塩酸2重量部を加えて混合し、シリカコーティング溶液
を調製した。混合により溶液は発熱するので、混合液を
約1時間放置冷却した。この溶液をフローコーティング
法により10cm四角のソーダライムガラス板の表面に塗
布し、80Cの温度で乾燥させた。乾燥に伴い、テトラエ
トキシシランは加水分解を受けて先ずシラノールSi(OH)
4になり、続いてシラノールの脱水縮重合により無定形
シリカの薄膜がガラス板の表面に形成された。次に、テ
トラエトキシチタンTi(OC2H5)4(Merck)1重量部とエ
タノール9重量部との混合物に加水分解速度調整剤とし
て36%塩酸を0.1重量部添加してチタニアコーティン
グ溶液を調製し、この溶液を前記ガラス板の表面に乾燥
空気中でフローコーティング法により塗布した。塗布量
はチタニアに換算して45μg/cm2とした。テトラエトキ
シチタンの加水分解速度は極めて早いので、塗布の段階
でテトラエトキシチタンの一部は加水分解され、水酸化
チタンTi(OH)4が生成し始めた。次に、このガラス板を
1〜10分間約150Cの温度に保持することにより、テ
トラエトキシチタンの加水分解を完了させると共に、生
成した水酸化チタンを脱水縮重合に付し、無定形チタニ
アを生成させた。こうして、無定形シリカのベースコー
トの上に無定形チタニアのトップコートが形成されたガ
ラス板を得た。この試料を500Cの温度で焼成して、無
定形チタニアをアナターゼ型チタニアに変換させ、#1
試料を得た。
【0016】#1試料を数日間暗所に放置した後、20W
のブラックライトブルー(BLB)蛍光灯(三共電気、FL2
0BLB)を用いて試料の表面に0.5mW/cm2の紫外線照度
(アナターゼ型チタニアのバンドギャップエネルギより
高いエネルギの紫外線−387nmより短い波長の紫外線
−の照度)で約1時間紫外線を照射し、#2試料を得
た。比較のため、シリカおよびチタニアのコーティング
を施さないガラス板を数日間暗所に放置した後、#3試
料とした。#2試料と#3試料の水との接触角を接触角
測定器(埼玉県朝霞市の協和界面科学社製、形式CA-X15
0)により測定した。この接触角測定器の低角度側検出
限界は1゜であった。接触角は、マイクロシリンジから
試料表面に水滴を滴下した後30秒後に測定した(以下の
実施例でも同じ)。#2試料の表面の水に対する測定器
の読みは0゜であり、超親水性を示した。これに対し、
#3試料の水との接触角は30〜40゜であった。このこと
は、チタニアコーティングの表面がチタニアの光触媒作
用により高度に親水化されたことを示している。同様に
して、ソーダライムガラス板の表面を無定形チタニアの
薄膜で被覆し、このガラス板を500。Cの温度で焼成して
無定形チタニアをアナターゼ型チタニアに変換させるこ
とにより#4試料を得た。#4試料をデシケータ(温度
24C、湿度45〜50%)内に配置し、0.5mW/cm2の照度
で、水との接触角が3゜になるまで紫外線を照射した。
次に、#4試料を暗所に放置し、異なる時間間隔で#4
試料を暗所から取り出し、水との接触角をその都度測定
した。接触角の変化を次表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】表1は、光触媒の光励起を中断すると、時
間の経過につれて次第に親水性が減衰することを示して
いる。これは、光触媒性コーティングの表面が疎水性の
物質によって汚染されるからであると考えられる。
【0019】実施例2(励起波長の影響) アナターゼ型チタニアゾル(大阪の石原産業、STS-11)
を15cm四角の施釉タイル(東陶機器、AB02E01)の表
面にスプレーコーティング法により塗布し、800Cの温
度で10分間焼成し、#1試料を得た。この試料と、比
較のためチタニア被覆のない施釉タイルを10日間暗所
に放置した後、Hg−Xeランプを用いて次表2の条件で単
色紫外線を照射しながら水との接触角の時間的変化を計
測した。
【0020】
【表2】
【0021】測定結果を第1(a)図から第1(c)図
のグラフに示す。これらのグラフにおいて、白点でプロ
ットした値は#1試料の水との接触角を表し、黒点でプ
ロットした値はチタニア被覆のない施釉タイルの接触角
を表す。第1(c)図のグラフから分かるように、アナ
ターゼ型チタニアのバンドギャップエネルギに相当する
波長387nmより低いエネルギの紫外線(387nmより長い波
長の紫外線)では、紫外線を照射しても親水化が起こら
ない。それに対して、第1(a)図および第1(b)図
のグラフに示すように、アナターゼ型チタニアのバンド
ギャップエネルギより高いエネルギの紫外線では、紫外
線照射に応じて表面が親水化されることが分かる。以上
のことから、表面の親水化は半導体光触媒が光励起され
なければ起こらないのであり、表面の親水化は光触媒作
用に起因することが確認された。なお、この実施例の試
料の水との接触角が0゜にならなかったのは、実施例1
に較べ、この実施例ではガラス基材とチタニア層との間
にシリカの層が介在させてないので、800Cでの焼成中
にナトリウムのようなアルカリ網目修飾イオンがタイル
釉薬からチタニアコーティング中に拡散し、アナターゼ
の光触媒活性を阻害したものと考えられる。
【0022】実施例3(光触媒作用による水の物理吸
着) アナターゼ型チタニアの粉末(日本エアロゾル社製、P-
25)をプレスして3個のディスク状の試料を製作した。
これらの試料を夫々下記の試験1〜試験3に付し、試料
の表面をフーリエ変換型赤外分光計(FTS-40A)を用い
てフーリエ変換型赤外分光分析(FT-IR)により検査し
た。各試験において紫外線照射には波長366nmの紫外線
ランプ(UVL-21)を用いた。赤外吸収スペクトルの分析
に際しては、吸収帯は次のように割り当てた。 波数3690cm-1の鋭い吸収帯:化学吸着水のOH結合の伸
縮 波数3300cm-1の広い吸収帯:物理吸着水のOH結合の伸
縮 波数1640cm-1の鋭い吸収帯:物理吸着水のHOH結合の曲
がり 波数1700cm-1、1547cm-1、1475cm-1、1440cm-1、1365cm
-1の吸収帯:試料表面への汚染物質の吸着により形成し
たカルボン酸錯体
【0023】試験1 先ず、プレス直後のチタニア・ディスクについて赤外分
光分析を行った。プレス直後のディスクの吸収スペクト
ルを第2(a)図および第2(b)図のグラフに#1カ
ーブで示す。次に、シリカゲルの乾燥剤を入れたドライ
ボックス中にチタニア・ディスクを17時間保管した後、
吸収スペクトルを検出した。吸収スペクトルを第2
(a)図および第2(b)図に#2カーブで示す。#1
スペクトルと#2スペクトルを対比すれば分かるよう
に、#2スペクトルでは波数3690cm-1の吸収が激減して
おり、化学吸着水が減少したことを示している。同様
に、#2スペクトルでは波数3300cm-1および1640cm-1
吸収が激減しており、物理吸着水もやはり減少したこと
を示している。このことから、乾燥空気中での17時間の
保管により化学吸着水と物理吸着水のいづれもが減少し
たことが分かる。これに対し、カルボン酸錯体に因る波
数1300cm-1〜1700cm-1の吸収は増加しており、保管中に
試料表面に吸着された汚染物質により表面が汚染された
ことを示唆している。試料がチタニア粉末をプレス成形
した多孔質のディスクであるためディスク表面の水との
接触角を測定することはできなかったが、汚染に伴いチ
タニア粉末の表面は疎水化され、表面の水との接触角は
増加しているものと考えられる。次に、ドライボックス
中でチタニアディスクに約0.5mW/cm2の紫外線照度で
約1時間紫外線を照射した後、吸収スペクトルを検出し
た。吸収スペクトルを第2(a)図および第2(b)図
のグラフに#3カーブで示す。#3スペクトルから分か
るように、波数3690cm-1の吸収はほぼ回復している。ま
た、波数3300cm-1および1640cm-1の吸収も元通りに回復
している。従って、紫外線照射により化学吸着水の量と
物理吸着水の量のいづれもが元通りに回復したことが分
かる。前述の実施例1から推測されるように、紫外線照
射によりチタニア粉末の表面は親水化され、水との接触
角は減少しているものと考えられる。次に、試料を大気
に連通する暗室中に24時間保管した後、吸収スペクトル
を検出した。線図が過剰に錯綜するのを避けるため、吸
収スペクトルを第2(a)図および第2(b)図とは別
の第3(a)図および第3(b)図のグラフに#4カー
ブで示す。なお、対比の便宜上、第3(a)図および第
3(b)図のグラフには#2スペクトルが再現してあ
る。#4スペクトルが示すように、波数3690cm-1および
1640cm-1の吸収は若干減少するにとどまり、波数3300cm
-1の吸収には変化はない。従って、紫外線照射後の試料
を大気中の湿分の存在下で暗室中に保管しても化学吸着
水および物理吸着水はそれ程減少しないことが分かる。
しかし、波数1300cm-1〜1700cm-1の吸収は増加してお
り、ディスクが更に汚染されたことを示している。汚染
に伴い水との接触角は増加しているものと考えられる。
最後に、同じく大気に連通する暗室中でチタニアディス
クに再び0.5mW/cm2の紫外線照度で約1時間紫外線を
照射した後、赤外分光分析に付した。吸収スペクトルを
第3(a)図および第3(b)図のグラフに#5カーブ
で示す。グラフに示されているように、波数3690cm-1
の吸収には変化はないが、波数3300cm-1の吸収は急増
し、波数1640cm-1の吸収は増加している。従って、紫外
線の再度の照射により化学吸着水の量は変化しなかった
が、物理吸着水の量は増加したことが分かる。他の吸着
種(汚染物質)の量には変化が無く、紫外線照射によっ
て除去されていない。
【0024】試験2 先ず、プレス直後のチタニア・ディスクについて赤外吸
収スペクトルを測定した(第4(a)図および第4
(b)図のグラフの#1スペクトル)。次に、ディスク
に約0.5mW/cm2の照度で1時間紫外線を照射した後、
吸収スペクトルを検出した(第4(a)図および第4
(b)図の#2スペクトル)。ディスクに同じ照度で更
に1時間(計2時間)、更に1時間(計3時間)、およ
び更に2時間(計5時間)紫外線を照射した後、吸収ス
ペクトルを夫々検出した(夫々、第5(a)図および第
5(b)図の#3、#4、および#5スペクトル、)。
#1スペクトルと#2スペクトルを対比すれば分かるよ
うに、最初に紫外線を照射したときには、化学吸着水お
よび物理吸着水の量は共に増加した。その間にカルボン
酸錯体の付着量は僅かに増加した。紫外線照射に伴い水
との接触角は減少するであろう。更に1時間(計2時
間)紫外線を照射したときには、化学吸着水の量はやや
減少したが、物理吸着水の量は変化しなかった(#2ス
ペクトルと#3スペクトル対比)。カルボン酸錯体の付
着量は僅かに増加した。物理吸着水の量に変化がなかっ
たのは、物理吸着水が飽和したためと考えられる。水と
の接触角は不変に維持されると考えられる。更に1時間
(計3時間)、および、更に2時間(計5時間)紫外線
を照射すると、化学吸着水の量は更に減少したが、物理
吸着水の量は変化しなかった(#4および#5スペクト
ル参照)。カルボン酸錯体の付着量は増加した。水との
接触角は不変であると考えられる。
【0025】試験3 この試験は試験1に似ており、主な相違点は紫外線照度
を小さくしたことである。先ず、プレス直後のチタニア
・ディスクについて赤外吸収スペクトルを測定した(第
6(a)図および第6(b)図のグラフの#1スペクト
ル)。次に、試料を大気に連通する暗室中に34時間保管
した後、吸収スペクトルを検出した(第6(a)図およ
び第6(b)図の#2スペクトル)。次に、同じ暗室中
でチタニアディスクに0.024 mW/cm2の照度で約2時間
紫外線を照射した後、吸収スペクトルを検出した(第6
(a)図および第6(b)図の#3スペクトル)。グラ
フから分かるように、大気中の湿分の存在下で暗室中に
ディスクを放置することにより、化学吸着水および物理
吸着水の量は共に減少する。カルボン酸錯体の付着量は
増加しているので、水との接触角は増加すると考えられ
る。紫外線照射に応じて、化学吸着水の量はやや増加
し、物理吸着水の量は元通りに回復するまでに増加して
いる。その間にカルボン酸錯体の付着量はやや増加して
いる。水との接触角は増加すると考えられる。
【0026】評価 以上の試験の結果を次表3にまとめた。
【0027】
【表3】
【0028】表3から良く分かるように、物理吸着水の
量の増加は紫外線照射に良く対応している。この点に関
し、第7図の上部に示したように、チタニアコーティン
グ10のチタニア結晶の結晶面では、1個のチタン原子
にはターミナルOH基12が結合し、隣接する2個のチ
タン原子にはブリッジOH基14が結合し、これらのO
H基が化学吸着水の層を形成していると考えられる。大
気中の湿分の存在下で紫外線を照射すると、第7図の下
部に示したように、水分子がターミナルOH基およびブ
リッジOH基の水素原子に水素結合16により物理吸着
し、物理吸着水の層18を形成すると考えられる。前述
したように、物理吸着水量の増加は紫外線照射に良く対
応しているので、この実施例は、物理吸着水層16の生
成はチタニアの光触媒作用によって引き起こされること
を示している。この物理吸着水層16の存在によりチタ
ニアの表面の親水性が向上すると解される。これに対
し、カルボン酸錯体の付着量は空気との接触時間が増大
するに応じて増加するように見受けられる。光触媒を光
励起すれば、カルボン酸錯体の付着量の増加にも拘わら
ず、表面の親水性が向上すると考えられる。
【0029】実施例4(表面エネルギと親水性) エタノールの溶媒86重量部に、テトラエトキシシラン
(和光純薬)6重量部と純水6重量部とテトラエトキシ
シランの加水分解速度調整剤として36%塩酸2重量部を
加えて混合してシリカコーティング溶液を調製し、1時
間放置後、ソーダライムガラスにフロー・コーティング
法により塗布し、無定形シリカのベースコートで被覆さ
れた2枚のガラス板を得た。次に、テトラエトキシチタ
ン(Merck)1重量部とエタノール9重量部との混合物
に加水分解速度調整剤として36%塩酸を0.1重量部添
加してチタニアコーティング溶液を調製し、この溶液を
前記ガラス板の表面に乾燥空気中でフローコーティング
法により塗布した。塗布量はチタニアに換算して45μg
/cm2とした。次に、このガラス板を乾燥空気中で1〜1
0分間約150Cの温度に保持することにより、無定形チ
タニアのトップコートで被覆された2枚のガラス板を得
た。更に、これらのガラス板を夫々440Cおよび550Cの
温度で焼成して無定形チタニアをアナターゼ型チタニア
に変換させ、#1試料と#2試料を夫々得た。これらの
試料の表面の水との接触角を測定した。さらに、表面エ
ネルギの各成分が既知の液体として、ホルムアミド、β
−チオジグリコール、エチレングリコール、α−ブロモ
ナフタレン、ヘキサクロロブタジエン、ヨウ化メチレン
を選び、これらの液体との接触角を夫々測定した。次
に、これらの試料の表面にブラックライトブルー蛍光灯
(FL20BLB)を用いて0.5mW/cm2の紫外線照度で約1
時間紫外線を照射した後、再び、水、ホルムアミド、β
−チオジグリコール、エチレングリコール、α−ブロモ
ナフタレン、ヘキサクロロブタジエン、ヨウ化メチレン
との接触角を夫々測定した。紫外線照射の前後で測定さ
れた各液体との接触角を次表4に示す。特に、#1試料
が高度に親水化され、水との接触角が0゜になっている
のが注目される。
【0030】
【表4】
【0031】次に、斯く測定された接触角に基づいて、
以下のやり方でチタニアコーティングの表面自由エネル
ギを求めた。先ず、固体表面に液体を滴下したときに液
体が固体表面に対して成す接触角θは、固体と気体との
界面におけるギブスの自由エネルギをγS、液体と気体
との界面におけるギブスの自由エネルギをγL、固体と
液体との界面におけるギブスの自由エネルギをγSLとし
たときに、次のヤングの式(1)が成立することが知ら
れている。 γL・cosθ = γS − γSL (1) また、液体と固体が接触する時に放出されるギブスの自
由エネルギは接着仕事(WSL)と言われ、次のデュブレ
の式(2)で与えられる。 WSL = γS + γL − γSL (2) さらに、畑および北崎氏の拡張Fowkes式(日本接着協会
誌8、131、1972)によれば、
【0032】
【数1】 (3)
【0033】(式中、添字dは表面エネルギの分子分散
力成分を表し、添字pは表面エネルギの双極子成分を表
し、添字hは表面エネルギの水素結合成分を表す)式
(1)および式(2)より、 WSL = (1+ cosθ)・γL (4) 式(3)および式(4)より、
【0034】
【数2】 (5)
【0035】が得られる。或る液体Lの表面エネルギの
分子分散力成分γL d、双極子成分γL p、および水素結合
成分γL hが既知であり、かつ、接触角θが既知である場
合には、式(5)から最小二乗法により或る固体Sの3
つのパラメータγS d、γS p、およびγS hを求めることが
できる。ところで、水、ホルムアミド、β−チオジグリ
コール、エチレングリコール、α−ブロモナフタレン、
ヘキサクロロブタジエン、およびヨウ化メチレンの表面
エネルギの3成分γL d、γL p、およびγL hは次表5に示
すように知られている(原崎勇二『わかりやすいコーテ
ィング技術』、理工出版、93頁)。
【0036】
【表5】
【0037】表4に示した接触角θの実測値と表5に示
した種々の液体の表面エネルギの既知の3成分γL d、γ
L p、およびγL hを式(5)に代入し、最小二乗法により
チタニアコーティングの表面エネルギの各成分γS d、γ
S p、およびγS hを計算した。その結果を次表6に示す。
【0038】
【表6】
【0039】表6から分かるように、#1試料および#
2試料のいづれにおいても、紫外線照射に伴い表面エネ
ルギの水素結合成分γS hが著しく増加していることが発
見された。これに対し、表面エネルギの分子分散力成分
γS dおよび双極子成分γS pには明確な変化は観察されな
い。このことから、光触媒の光励起により起こる光触媒
作用により光触媒性コーティングの表面エネルギの水素
結合成分γS hが増加し、これが水分子の物理吸着を促進
し、その結果物理吸着水の量が増加して表面が高度に親
水化されるものと考えられる。
【0040】実施例5(水中における撥油性) この実施例は、光触媒性コーティングの表面エネルギの
水素結合成分γS hが増加すると、それに対応して表面の
水中における撥油性が向上するという発見に関する。実
施例4の#1試料と#2試料の表面の水中撥油性を紫外
線照射の前後で検査した。このため、慣用のやり方に従
い、油を代表する液体としてヨウ化メチレンを選んだ。
紫外線照射の前後の#1試料と#2試料の表面にヨウ化
メチレンを滴下し、試料表面を水平姿勢に保持しながら
水槽に満たした水中に浸漬した。紫外線照射前の#1試
料および#2試料では、ヨウ化メチレンは光触媒性コー
ティングと水との界面にレンズ状に付着したままであっ
た。横から写真を撮り、写真に基づいて水中における光
触媒性コーティング表面のヨウ化メチレンとの接触角を
測定したところ、接触角は#1試料では80゜、#2試料
では70゜であった。紫外線照射後の#1試料および#2
試料では、水中に浸漬したところ、光触媒性コーティン
グの表面はヨウ化メチレンを良く弾き、ヨウ化メチレン
は丸まって油滴となり、間もなく試料表面から遊離して
浮上した。従って、接触角を測定することができなかっ
た。そこで、水中におけるヨウ化メチレンとの接触角を
以下のようにして計算により求めた。一般に、固体表面
に油を滴下して水中に浸漬したときの油と固体表面との
接触角θ(即ち、水中における固体表面の油との接触
角)については、固体と水の界面におけるギブスの自由
エネルギをγSW、油と水との界面におけるギブスの自由
エネルギをγLW、固体と油との界面におけるギブスの自
由エネルギをγSLとすると、ヤング式より、次式が適用
する。 γLW・cosθ = γSW − γSL (6) よって、 cosθ = (γSW − γSL) / γLW (7) また、畑および北崎氏の拡張Fowkes式によれば、γSW
γSL、γLWは、夫々、
【0041】
【数3】 (8)
【0042】
【数4】 (9)
【0043】
【数5】 (10)
【0044】(ここで、γWは水と気体との界面におけ
るギブスの自由エネルギ) 従って、油の種類が決定されれば、式(8)、(9)、
(10)より、γSW、γSL、γLWが求まり、それらを式
(7)に代入すれば、水中における固体表面の油との接
触角θを算出することができる。実施例4の#1試料と
#2試料について、前掲表5に記載した紫外線照射の前
後におけるデータと、表4に示した水およびヨウ化メチ
レンの表面エネルギの各成分の既知の値を式(8)〜式
(10)に代入することにより、自由エネルギγSW、γ
LW、γSLを求め、次いで式(7)により水中における光
触媒性コーティング表面のヨウ化メチレンとの接触角θ
を計算した。結果を次表7に示す。
【0045】
【表7】
【0046】表7から分かるように、#1試料と#2試
料のいづれにおいても、紫外線照射後のヨウ化メチレン
との接触角θは大幅に増加している。これは、前記実験
において水中で光触媒性コーティングの表面がヨウ化メ
チレンを良く弾いたことに一致している。これは、ま
た、油が付着した光触媒性コーティングを水中に浸漬し
或いは水で濡らしたときには、油汚れは簡単に取り除か
れることを意味している。この現象を考察するに、前掲
表5から分かるように、水と油とで表面エネルギの値に
最も差があるのは表面エネルギの水素結合成分である。
即ち、ヨウ化メチレンで代表される油では表面エネルギ
の水素結合成分γL hは一般に小さくゼロに近いのに対し
て、水では表面エネルギの水素結合成分γW hは42.4と大
きい。このため、式(8)では、γS hが増加すると が
大きく増加し、γS Wが減少する。これに対し、式(9)
では、γS hが増加するとその分γSは増加するが、γL h
がゼロに近いので は変化せず、結局γSLは増加する。
従って、式(7)から分かるように、光触媒性コーティ
ング表面の表面エネルギの水素結合成分γS hが増加する
と、水中における固体表面の油との接触角θが増加し、
光触媒性コーティングの表面は水中において撥油性を呈
するものと考えられる。
【0047】実施例6(水中における撥油性−オレイン
酸) 実施例4と同様のやり方で無定形シリカのベースコート
と無定形チタニアのトップコートで被覆されたガラス板
を得た。このガラス板を475。Cの温度で焼成することに
より無定形チタニアをアナターゼ型チタニアに変換させ
た。次に、この試料の表面にブラックライトブルー蛍光
灯(FL20BLB)を用いて0.5mW/cm2の紫外線照度で約
1時間紫外線を照射した。この試料と、光触媒性コーテ
ィングなしのソーダライムガラス板とに、空気中でオレ
イン酸を滴下し、夫々の試料の表面のオレイン酸との接
触角を測定した。空気中でのオレイン酸との接触角はい
づれの試料も35゜であった。次に、夫々の試料を水中に
浸漬し、水中でのオレイン酸との接触角を測定した。水
中でのオレイン酸との接触角は、光触媒性コーティング
付きのガラス板では85゜、光触媒性コーティングなしの
ガラス板では38.5゜であった。このことから、光励起さ
れた光触媒性コーティングは水中で撥油性を示すことが
確認された。
【0048】実施例7(光触媒含有シリコーン被膜の水
中撥油性) 10cm四角のアルミニウム板を使用した。基材の表面を
平滑化するため、予めシリコーン樹脂被膜で被覆した。
次に、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化
学、TA-15、平均粒径0.01μm)にシリコーン前駆体で
あるトリメトキシメチルシラン(日本合成ゴムの塗料用
組成物“グラスカ”のB液)を、チタニアとシリコーン
との固形分重量和に対しチタニアの割合が50重量%にな
るように添加し、プロパノールで希釈した後、硬化剤を
添加してチタニア含有シリコーン塗料を調製した。この
チタニア含有シリコーン塗料をアルミニウム板に塗布し
て150。Cの温度で硬化させ、アナターゼ型チタニア粒子
がシリコーン被膜中に分散されたトップコートを形成し
た。この試料にブラックライトブルー蛍光灯(FL20BL
B)を用いて0.5mW/cm2の紫外線照度で約1日間紫外
線を照射した。得られた試料の吸水率は1%未満であっ
た。この試料と、チタニア含有シリコーン被膜なしのア
ルミニウム板とに、空気中でサラダ油を滴下し、夫々の
試料の表面のサラダ油との接触角を測定した。空気中で
のサラダ油との接触角は、チタニア含有シリコーン被覆
試料では22゜、チタニア含有シリコーン被膜なしの試料
では39゜であった。次に、夫々の試料を水中に浸漬し、
水中でのサラダ油との接触角を測定した。水中でのサラ
ダ油との接触角は、チタニア含有シリコーン被覆のガラ
ス板では105゜、チタニア含有シリコーン被覆なしのガ
ラス板では35゜であった。チタニア含有シリコーンで被
覆された試料を指で弾いて振動を与えると、表面に付着
していたサラダ油はサンプル表面を離れて浮上した。し
かし、チタニア含有シリコーン被覆のない試料では、サ
ラダ油は表面に付着したままであり、かえってサラダ油
は表面に広がった。以上から、光触媒を配合したシリコ
ーン被覆に光を照射し、光触媒を光励起すると、光触媒
作用により表面が親水化して表面エネルギの水素結合成
分が増加し、水中における撥油性が増加するものと考え
られる。
【0049】実施例8(硫酸担持光触媒性コーティン
グ) 実施例1と同様のやり方で無定形シリカのベースコート
と無定形チタニアのトップコートで被覆された2枚のソ
ーダライムガラス板を調製した。一方のガラス板の表面
に5重量%硫酸水溶液を約0.8ml塗布した後、約525。Cの
温度で焼成することにより、#1試料を得た。焼成によ
り、無定形チタニアはアナターゼ型チタニアに変換する
と共に、チタニアの表面のチタン原子には第8図に示し
たようにスルホン酸基が結合し、硫酸担持チタニアが形
成される。比較のため、硫酸を塗布しない他方のガラス
板を同様に約525。Cの温度で焼成することにより、無定
形チタニアをアナターゼ型チタニアに変換させ、#2試
料を得た。夫々の試料を2日間暗所に放置しながら、試
料表面の水との接触角を測定した。接触角の変化を第9
図に示す。第9図のグラフから分かるように、硫酸を表
面に担持させた#1試料では、硫酸無担持の#2試料に
較べ、暗所に放置したときの接触角の増加の度合いが小
さく、製造直後の親水性がより良く維持される、つま
り、疎水化が遅いことが注目される。次に、2日間暗所
に放置した後の#1および#2試料の表面にブラックラ
イトブルー蛍光灯(FL20BLB)を用いて0.5mW/cm2
紫外線照度で紫外線を照射し、照射時間に対する試料表
面の水との接触角の変化を測定した。結果を第10図に
示す。第10図のグラフから分かるように、硫酸無担持
の#2試料では水との接触角が3゜未満になるまで親水
化するのに2時間かかるのに対して、硫酸を表面に担持
させた#1試料では1時間で同レベルまで親水化されて
いる。このことから、表面に硫酸を担持させると、暗所
放置後に光触媒を光励起したときの光触媒性コーティン
グの親水化が促進されることが分かる。スルホン酸基の
存在により、第11図に示したようにチタニア表面のブ
リッジOH基の水素原子がブレンステッド酸点(陽子供
与点)として働いて水分子の物理吸着を促進するか、或
いは、第12図に示したように表面のチタン原子がルイ
ス酸点(電子受容点)として働いて水分子の物理吸着を
促進し、それにより表面の物理吸着水の量が増大すると
考えられる。
【0050】実施例9(TiO2/WO3担持光触媒性コーテ
ィング) アンモニア解膠型アナターゼゾル(大阪の石原産業、ST
S-11)1gと、タングステン酸を溶解させた25%アンモ
ニア水2gを混合し、さらに2gの蒸留水を加えてコー
ティング液を得た。コーティング液中のチタニア粒子と
タングステン酸のモル比は10:1であった。次いで5
×10cmの施釉タイル(東陶機器、AB02E11)に、こ
のコーティング液を塗布し、700℃の温度で30分焼成し
て、TiO2/WO3を担持したアナターゼ型チタニアのコー
ティングで被覆された#1試料を得た。なお、表面コー
ティングによる発色は認められなかった。比較のため、
同様の施釉タイル( AB02E11)にチタニアゾル( STS-1
1)を塗布し、700℃の温度で30分焼成して、チタニアの
みのコーティングで被覆された#2試料を得た。焼成直
後の各々の試料の表面の水との接触角を測定したとこ
ろ、#2試料では9゜であったのに対し、#1試料では
1゜と低い値を示した。従って、 TiO2/WO3担持チタニ
アコーティングは、製造直後において高度の親水性を呈
することが分かる。次に、夫々の試料を暗所に1日放置
し、試料表面の水との接触角の変化を測定した。#2試
料では水との接触角は40゜まで上昇したのに対し、#1
試料では5゜未満と低い値に維持された。#1試料を暗
所に更に4日放置したが、水との接触角は5゜程度に維
持された。次に、ブラックライトブルー蛍光灯(FL20BL
B)を用いて、0.5mW/cm2の照度で紫外線を約2時間
#1試料表面に照射した。その結果、#1試料の表面は
水との接触角が0゜になるまで超親水化された。次に、
#1試料と#2試料の表面にオレイン酸を塗布し、中性
洗剤でこすり、水道水及び蒸留水で濯いだ後、乾燥器に
より50℃で30分乾燥させることにより、表面を故意に汚
染させた。その結果、水との接触角は30〜40゜まで上昇
した。次に、ブラックライトブルー蛍光灯を用い、0.
3mW/cm2の照度で紫外線を約2時間#1試料の表面に
照射した。その結果、水との接触角は0゜まで超親水化
された。#2試料の表面に0.3mW/cm2の照度で紫外線
を約1日間照射したが、水との接触角は9゜であった。
【0051】実施例10(TiO2/WO3担持コーティング
−焼成温度) 焼成温度を除いては実施例9と同じ方法でTiO2/WO3
持アナターゼ型チタニアコーティングで被覆された2枚
のタイルを調製した。#1試料の焼成温度は600℃と
し、#2試料の焼成温度は750℃とした。いづれの試料
においても、焼成直後の水との接触角は1゜と低い値を
示した。暗所に1日放置した後の試料表面の水との接触
角は5゜未満と低い値に維持された。次に、これらの試
料を実施例9と同様にオレイン酸と中性洗剤で故意に汚
染させたところ、水との接触角は#1試料では50゜、#
2試料では60゜まで上昇した。次に、0.3mW/cm2の照
度で紫外線を約2時間照射したところ、いづれの試料の
表面も水との接触角が0゜になるまで超親水化された。
【0052】実施例11(TiO2/WO3担持コーティング
− TiO2/WO3の割合) 実施例9と同様の方法で、タングステン酸の割合の異な
る4種のコーティングを調製し、タイルに塗装した後焼
成して、TiO2/WO3担持アナターゼ型チタニアコーティ
ングで被覆された4枚のタイル#1〜#4を調製した。
用いたコーティング液中のチタニア粒子とタングステン
酸のモル比は、#1試料では20:1、#2試料では10
0:1、#3試料では200:1、#4試料では1000:1で
あった。いづれの試料も焼成は700℃の温度で行った。
焼成直後の夫々の試料を実施例9と同様にオレイン酸と
中性洗剤で故意に汚染させた後、0.3mW/cm2の照度で
紫外線を約1日間照射したところ、いづれの試料でも表
面の水との接触角は1゜と低い値を示した。次に、各試
料を暗所に1日放置した後、試料表面の水との接触角を
測定した。水との接触角は、#1試料と#2試料では10
゜未満、#3試料では8゜、#4試料では9゜と低い値
に維持された。この実施例は、光触媒性コーティングに
金属酸化物複合体であるTiO2/WO3を担持させた場合に
は、光触媒の光励起を中断しても親水性が維持されるこ
とを示している。
【0053】実施例12(スパッタリングによる光触媒
性コーティングの形成) 10cm角のソーダライムガラス板の表面に電子ビーム蒸
着法により無定型チタニア膜を被着し、その後500℃の
温度で焼成することにより、無定型チタニアを結晶化さ
せてアナターゼ型チタニアを生成させた。アナターゼ型
チタニア被膜の膜厚は100 nmであった。アナターゼ型チ
タニア被膜の上に25%アンモニア水に溶解させたタング
ステン酸を、タングステン酸重量に換算して0.6μg/cm
2の割合で塗布した後、500℃の温度で焼成し、試料を得
た。焼成直後の試料表面の水との接触角は2゜と低い値
を示した。次に、暗所に1日放置し、試料表面の水との
接触角の変化を測定したところ、9゜と低い値に維持さ
れていた。次に、照度0.3mW/cm2で紫外線を1日試料
の表面に照射した。水との接触角を測定したところ0゜
であり、表面は高度に親水化された。
【0054】実施例13(アルコキシドによる光触媒性
コーティングの形成) エタノールにシリカ前駆体としてのテトラエトキシシラ
ンと加水分解抑制剤としてのエタノールアミンを添加
し、テトラエトキシシラン濃度3.5重量%のシリカコー
ティング溶液を調製した。この溶液に10cm角のソーダ
ライムガラス板を浸漬した後、毎分24cmの速度で引き上
げて、溶液をディップコーティング法によりガラス板の
表面に塗布し、乾燥させた。これにより、テトラエトキ
シシランは加水分解を受けてまずシラノールになり、続
いてシラノールの脱水縮重合により無定型シリカの薄膜
がガラス板の表面に形成された。また、エタノールにチ
タニア前駆体としてのテトラエトキシチタンと加水分解
抑制剤としてのエタノールアミンを添加し、テトラエト
キシチタン濃度3.5重量%のチタニアコーティング溶液
を調製した。次に、無定型シリカの薄膜で予め被覆され
たガラス板をこのチタニアコーティング溶液に浸漬した
後、毎分24cmの速度で引き上げて、チタニアコーティン
グ溶液をディップコーティング法により表面に塗布し、
乾燥させた。これにより、テトラエトキシチタンは加水
分解を受けてまず水酸化チタンになり、続いて水酸化チ
タンの脱水縮重合により無定型チタニアの薄膜(膜厚50
nm程度)が表面に形成された。次に、25%アンモニア水
溶液にタングステン酸を0.25重量%の濃度で溶解させた
水溶液にガラス板を浸漬後、毎分24cmの速度で引き上げ
て、溶液をディップコーティング法により表面に塗布し
た。これを500℃で焼成して、#1試料を得た。焼成に
より無定型チタニアが結晶化してアナターゼ型チタニア
が生成した。同時に、少なくともチタニア膜とタングス
テン酸膜との界面においては、TiO2/WO3複合酸化物が
生成していると考えられる。比較のため、タングステン
酸水溶液を塗布しないガラス板を500℃で焼成して、#
2試料を得た。焼成により無定型チタニアが結晶化して
アナターゼ型チタニアが生成した。焼成直後の#1試料
及び#2試料の表面にオレイン酸を塗布し、中性洗剤で
こすり、水道水及び蒸留水で濯いだ後、乾燥器により50
℃で30分乾燥させることにより、表面を故意に汚染させ
た。次に、これらの試料表面に0.3mW/cm2の照度で紫
外線を1日間照射した後、試料表面の水との接触角を測
定したところ、水との接触角は共に1゜と低い値を示し
た。次に、暗所に6時間放置し、試料表面の水との接触
角の変化を測定した。その結果、#2試料では22゜まで
上昇したのに対し、#1試料では7゜と低い値に維持さ
れた。
【0055】実施例14(硫酸およびTiO2/WO3担持光
触媒性コーティング) 実施例13と同様のやり方でソーダライムガラス板を先
ず無定型シリカの薄膜で、次いで無定型チタニアの薄膜
で被覆した。次に、0.25重量%のタングステン酸と0.33
重量%の硫酸アンモニウムを溶解させた1%アンモニア
水溶液にガラス板を浸漬した後、毎分24cmの速度で引き
上げて、溶液をディップコーティング法により表面に塗
布した。これを500℃で焼成して、試料を得た。焼成に
より無定型チタニアが結晶化し、アナターゼからなる光
触媒性コーテイングが表面に生成した。同時に、光触媒
性コーテイングの表面には、TiO2/WO3複合酸化物が生
成すると共に、チタニアの表面のチタン原子にはスルホ
ン酸基が結合したと考えられる。焼成直後の試料の表面
を実施例13と同様のやり方でオレイン酸と中性洗剤で
故意に汚染させたところ、水との接触角は35゜まで上昇
した。次に、試料の表面に0.3mW/cm2の照度で紫外線
を1日間照射した後、試料表面の水との接触角を測定し
たところ、水との接触角は0゜と低い値を示した。次
に、暗所に1日間放置し、試料表面の水との接触角の変
化を測定したところ、9゜と低い値に維持されていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】異なる波長の紫外線を光触媒性コーティングの
表面に照射したときの水との接触角の時間的変化を示す
グラフである。
【図2】光触媒性コーティングの表面の赤外分光スペク
トルを示す。
【図3】光触媒性コーティングの表面の赤外分光スペク
トルを示す。
【図4】光触媒性コーティングの表面の赤外分光スペク
トルを示す。
【図5】光触媒性コーティングの表面の赤外分光スペク
トルを示す。
【図6】光触媒性コーティングの表面の赤外分光スペク
トルを示す。
【図7】光触媒性コーティングの固/気界面を顕微鏡的
に拡大して示す模式的断面図で、光触媒作用により表面
に水分子が物理吸着される様子を示す。
【図8】硫酸担持光触媒性コーティングの固/気界面を
顕微鏡的に拡大して示す模式的断面図である。
【図9】或る実施例における硫酸担持或いは硫酸無担持
の光触媒性コーティングを暗所に放置したときの水との
接触角の時間的変化を示すグラフである。
【図10】光触媒性コーティングを再び光励起したとき
の水との接触角の時間的変化を示すグラフである。
【図11】第8図同様の図で、硫酸担持チタニアの表面
のブリッジOH基に水分子が物理吸着されたところを示
す。
【図12】第8図同様の図で、硫酸担持チタニアの表面
のチタン原子に水分子が結合したところを示す。
【符号の説明】
10: チタニアコーティング 12: ターミナルOH基 14: ブリッジOH基 18: 物理吸着水の層
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年9月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 表面を光触媒的に親水性にする方法、
および、光触媒性親水性表面を備えた複合材、および、
基材の表面に親水性被膜を形成するコーティング組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08J 7/06 C08J 7/06 Z (31)優先権主張番号 特願平8−257304 (32)優先日 平8(1996)8月22日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平8−275193 (32)優先日 平8(1996)9月10日 (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 藤嶋 昭 神奈川県川崎市中原区中丸子710―5 (72)発明者 橋本 和仁 神奈川県横浜市栄区飯島2037番地2 ニュ ーシティ本郷台D棟213号

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材の表面を親水化する方法であって:
    光触媒を含む層で被覆された基材を準備する工程と;前
    記光触媒を光励起することにより光触媒の光触媒作用に
    より前記層の表面に水分子を物理吸着させ、もって、表
    面を親水化する工程;からなる方法。
  2. 【請求項2】 親水性表面を呈する複合材であって:基
    材と、 前記基材の表面に形成された光触媒を含む層と、 前記光触媒の光励起に応じて前記層の表面に物理吸着さ
    れた水分子の層、からなり、親水性表面を呈する複合
    材。
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JP8-202726 1996-06-27
JP25730496 1996-08-22
JP8-257304 1996-08-22
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